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「研究の山脈を作る」

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Academic year: 2021

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研究の山脈を作る

金 原 和 秀 昨年富士山は世界文化遺産に登録されました。富士山は見るのは美しいですが,厳しい山です。学生の頃 山岳部に所属していましたが富士山は登ったことはありません。夏は一般客が多いので登りたくないし,冬 は厳しすぎてプロの世界でした。研究も同じです。すごい成果は見ると美しいですが,それを究めるのは厳 しい時を求められます。 今,研究のやり方がどんどん様変わりしています。ゲノム配列の解析が当たり前のようになり,得られる 情報量が飛躍的に増えています。しかし,情報が増えてもサイエンスはそれほど進展していません。得られ た情報から何を見出すのか?我々研究者が,まだまだ分からないことだらけだからです。どうしたらブレー クスルーできるのか?一人の天才か?集団か?富士山は独立峰ですが,研究も独立峰もあれば山脈もありま す。これからの研究スタイルは,違う個性のぶつかり合いから,次のブレークスルーを生む,山脈のように 集団で解決するのが主流になると思っています。皆の意見を戦わせ,協同し,生み出す時代です。 環境微生物系学会合同大会 2014 の実行委員長を仰せつかっていますが,各学会で少しずつ合同大会に対 する思いが異なることも見えてきました。もちろん,環境微生物を研究している根っこは同じです。日本の 微生物研究は発酵微生物の研究から始まっていますが,北は北海道から南は沖縄,果ては日本海溝まで,さ まざまな自然環境がある日本は,環境微生物の宝庫です。それを見極めたいという研究者の情熱はどの学会 でも同じように伝わってきます。米国微生物学会(ASM)は,病原微生物の研究がほぼ 3 分の 2 を占めま す。これは,研究に対するスタンスが大きく異なるからです。また,メタゲノム解析を中心とした,絨毯爆 撃的な研究は,アメリカ中心です。しかし,網羅的に解析しても,不明な点は不明です。真の自然の姿,そ の中での生物の生きざま,その営みの中での微生物の役割,まだまだ分か来ことだらけです。富士山頂から 見ると四方が見渡せます。しかし,細かいところは分かりません。山脈の尾根を縦走していると,あれが頂 上かと思える偽のピークがいくつも出てきます。苦しくて,あれがピークだと思って歩いているのに,頂上 までまだまだ歩くということがしばしばあります。研究も同じです。これで完成と思った瞬間に,これは違 うのではないかとがっかりする。また新たな視点でやり直す。この粘り強さが次の頂上に達する力です。研 究が細分化してくると,全体を見渡すのはなかなか難しいです。全体を見渡して,自分の位置を確認し,こ れからの研究を考える機会とするためにも,学会が合同して大会を開く意義があると思います。いろいろな 考えを束ねて研究の山脈を築き,環境微生物学の新たなパラダイムを築き世に出る。浜松から次の微生物研 究の種が生まれると信じます。 本合同大会は,環境微生物をキーワードにして,「いろいろな観点から研究を見直す」「視点の異なる考え 方から,さらに異なる視点で物事を考える」,ブレーンストーミングを行う機会に出来ればよいと考えます。 分子生物学の基本的な考え方を著した「生命とは何か」は理論物理学者のシュレーディンガーが書いていま す。生物学者が生物学のみにとらわれている時代ではありません。我々はなぜ微生物学を志しているのか? 何に挑戦して,何を目指すのか?今こそ,環境微生物研究を総動員させて,次の世代へ続く持続的発展につ なげましょう。その起爆剤となるよう本大会を開催します。皆様の参加をお待ちしております。 (環境微生物系学会合同大会 2014 実行委員長,本誌編集委員長)

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