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心理劇の第三相における心理劇の第三相におけるディレクターの展開とシェアリング体験様相関連の展開 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)心理劇の第三相におけるディレクターの展開とシェアリング体験の様相との関連 キーワード:心理劇,シェアリング,Dir.の意図,メンバーの認知. 人間共生システム専攻 臨床心理学指導・研究コース 2HE10020K 瀬里 和花 1.問題と目的. つ目は, 「気持ち・考えの表出」である。シェアリング場面. 1)心理劇におけるディレクターの役割. では「一人一人の共感性,感受性が触発され,メンバーの. 長谷川ら(1986)によれば, ディレクター(以下,Dir.). 感情が解放される(増野,1990) 」ため,感情を表出しやす. には,二つの担うべき責任がある。一つは,劇を演出する. い状態にあり,同時に心理劇の終結・統合にあたって感情. という役割であり、メンバーの自発性を発揮させ,円滑に. の表出により参加者は現実の世界へと戻ることができると. 心理劇が進行するための演出は Dir.が行なわなければなら. 考えられる。三つ目は, 「自己への気づき」 ,四つ目は「他. ない。もう一つは,メンバー個々人の心理劇おける援助者. 者への理解の深まり」である。シェアリングを通して劇化. という役割であり、Dir.は心理劇の実施の目的やねらいを明. 体験を振り返ったり他者の考えや気持ちを聞き,劇化体験. 確に持ち,その遂行のための援助者となる必要がある。. を深めたり他者や他の役割について考えることで,自己に. 2)役割と心理劇における体験の関連. 対する気づきが生じ,他者への理解が深まると考えられる。. 心理劇においてテーマや役割の設定は,内的な体験を劇 化の初期段階で方向づけるものとなる(平山,2004) 。. また平山(2004)は,劇化体験にはテーマや役割そのも のよりも,それらをどのように認知しているかという場面. 針塚・岡嶋(1997,1999)は大学生における調査で,演. 特性の認知が深く関わっていると主張している。それを考. 者と観客の体験に異なる 4 側面があることを示しており,. 慮すると,シェアリング場面では Dir.の展開意図に対する. それぞれが「劇の場と自己との関わり」の状態の違いとし. メンバーの認知がシェアリング体験に関連すると思われる。. ている。つまり演者と観客は同じ場面や時間を共有しなが. そのため,シェアリング場面におけるメンバーの Dir.の展. ら,それぞれの役割によって異なる体験をしており,それ. 開意図の認知や Dir.の展開意図自体について検討する必要. は劇化のみならずシェアリングにおいても同じであるとい. があると考える。. える。しかし,観客体験は「観客の自発性の発揮はあくま. 4)本研究の目的. でも主役が自発性を発揮するための条件でしかない(磯田,. 本研究では,シェアリング場面における参加者の体験の. 1994) 」と位置づけられるように,演者体験と比べて重視さ. 内容を明らかにし,心理劇におけるシェアリングの意義に. れていないことが多い。. ついて検討,考察を行なうこととそれを通して,Dir.のシェ. 3)第三相シェアリング. アリングにおける援助の知見を得ることを目的とする。. 心理劇は一般的に,第一相ウォーミングアップ,第二相 劇化,第三相シェアリングから構成される。第三相は,長. 3.方法. 谷川ら(1986)が「シェアリングの存在によって,心理劇. 1)調査時期. がまさに集団精神療法であることが強調される」と述べて. 2)調査対象者 A 大学に在籍し,心理劇の授業を履修した. いるように,心理劇において重要な要素の一つである。心. 大学 2~4 年生 52 名(男性 13 名,女性 39 名)で,17~. 理劇は架空性と現実性の上に成り立っており,参加者はそ. 18 名程の 3 つのグループに分けられた。各グループには 1. の両者の間を行きかいながら,劇化の体験を深め,その中. ~2 名の大学院生が授業の補助として参加。また,Dir.とし. で自己理解や他者理解を深めていくと考えられる。その際. て,普段臨床場面において Dir.経験のある大学院生 3 名に. の重要な役割を担うのが「架け橋」としてのシェアリング. 調査協力を依頼。. であるといえる(Blatner,1973;武藤,1997) 。. 3)調査手続き. X 年 12 月。. 先行研究を概観すると, シェアリングの体験には大きく 4. 質問紙は授業中の心理劇の劇化直後のシェアリング終了. つの体験があると考えられる。まず一つ目は, 「体験・感情. 時に Dir.によって配布し,記入後その場で回収した。また,. の共有」であり,シェアリングの第一の目的は「体験を分. Dir.に対する調査は授業終了後のミーティング時に配布し,. かち合うこと(長谷川ら,1986) 」であると考えられる。二. 記入後筆者が回収した。なお,心理劇中のグループの様子.

(2) はビデオにて記録した。 調査実施においては, 「主役をたてる」 「観客をつくる」 「舞 台を設ける」 「一つのテーマを取り上げる」という形式は統 一し,主役・演者の選出やウォーミングアップ・劇化・シ ェアリング時の展開については統一しなかった。 各回のテーマ,劇化内容,配役を,Table 1 に示す。. 2)メンバーの Dir.の意図認知,役割とシェアリング体験と の関連 メンバーによる Dir.の意図の認知と役割によるシェアリ ング体験の差の検討をするために,メンバーによる Dir.の 意図の認知の程度(2 水準)と役割(3 水準)を独立変数, シェアリング体験の各因子得点の平均を従属変数として,2 4)質問紙の内容. ×3 の 2 要因分散分析を行なった。結果を Table.5 に示す。. メンバー用の質問紙を Table 2‐1 に示す。同様に,Dir. 用の質問紙は Table 2‐2 に示す。. ⅰ) 「気持ち・考えの表出」体験に関連する要因について まず,主役・演者と観客に「気持ち・考えの表出」体験 シェアリング体験尺度:メンバーのシェアリングでの体験. に差が示されたことから,シェアリング場面において気持. をを測定する尺度として,先行研究(重橋,2006)を参考. ちや考えを表現したかどうかということが「気持ち・考え. に, 「気持ち・体験の共有」 「気持ち・考えの表出」 「自己へ. の表出」体験に関連していると考えられる。観客の表出の. の気づき」 「他者への理解の深まり」の計 4 因子を想定し,. 少なさの要因としては,主役・演者に比べて積極的な感情. 13 項目のシェアリング体験尺度を作成した。. の表出や発言の生じにくさと併せて,個々のメンバーへの. Dir. の意図(の認知) :シェアリング時の Dir.の展開意図を. 発言の促しの曖昧さが考えられる。. 測定するため,予備調査で得られた回答をもとに筆者が独. 次に,メンバーの Dir.の意図認知と「気持ち・考えの表. 自に作成。同様の内容で語尾を「~と思う」に修正し,メ. 出」体験の関連について述べる。3 つの意図を認知すること. ンバーにも回答を求めた。内容を Table 3 に示す。. はメンバーが“Dir.に気持ちや考えの表出を求められてい る”と意識することにつながり,その結果シェアリング場面 における表出が促されると考えられる。一方「役割感情表 出」意図の認知との関連は示されなかった。このことから. それぞれの意図を「役割感情表出」 「観客からのフィード バック(以下,FB) 」 「役割体験の感想表出」とした。. メンバーは役割としての「気持ち・考え」を自分自身の「気 持ち・考え」と捉えていない可能性が考えられる。 ⅱ) 「自己への気づき」体験に関連する要因について. 4.結果と考察 1)シェアリング体験尺度の検討. まず, 「役割体験の感想表出」意図の認知と関連について 述べる。役割体験の感想を述べるにあたっては,一旦役割. メンバーのシェアリング体験に関する質問項目 13 項目に. から離れ,“役を演じた自分”“劇を見ていた自分”として劇化. ついて因子分析を行なった(重み付けのない最小二乗法,. で感じたことや考えたことを振り返る作業が伴うと考えら. プロマックス回転) 。結果を Table.4 に示す。. れる。その際に,過去や現在の自分自身の体験と照らし合 わせたり未経験の事柄について自分だったらどうするだろ.

(3) うかと自分に置き換えて考えてみることは「自己への気づ. えられ,Dir.の意図とメンバーの Dir.の意図認知の間には. き」体験につながる可能性が考えられる。. Dir.の意図認知に影響を及ぼす別の要因が介在していると. また, 「観客からの FB」意図, 「役割感情表出」意図の認. 考えられる。. 知と関連が示されなかったことから, 「観客からの FB」意. さらに,Dir.の展開意図には今回の調査想定した 3 つの意. 図の認知は,FB をする側も受ける側も“他者の視点での体. 図以外にも多くの意図が存在する可能性がある。Dir.の展開. 験・考え”であると意識することになると考えられ, 「自己. 意図の達成に関する自由記述においても, 「気持ちに焦点を. への気づき」体験に直接的に結びつていると捉えられてな. あてる関わりはできていた」という記述が見られるなど,. いと考えられる。一方「役割感情表出」は基本的に劇化の. 想定した 3 つの意図以外に関する記述もあり,意図の多様. 役割のまま, 「いま,ここで」体験したことを表出すること. 性が窺われ,その水準も様々である可能性が考えられる。. である。そのため, 「役割感情表出」の際にメンバーは劇化. ⅲ)シェアリング場面の逐語データから見た Dir.の意図と. を通して今感じている気持ちに意識を向けると思われ,役 を離れて劇化での体験を振り返える作業がなされず, 「自己. シェアリング体験 逐語データの分析における意図に基づく Dir.の促し回数. への気づき」体験につながりにくいと考えられる。. とメンバーの応答数については,筆者を含む心理劇参加経. ⅲ) 「他者への理解の深まり」体験に関連する要因について. 験のある 3 名の大学院生による評定を行ない,各回数を算. まず, 「観客からの FB」意図の認知との関連について述. 出した。各セッションごとの意図に基づく Dir.の促しの内. べる。 「観客からの FB」意図の認知は,FB する側も受ける. 訳と評定の一致率を Table.6,メンバーの応答の内訳と評定. 側も“他者の視点での体験・考え”を意識することと考えられ,. の一致率を Table.7 それぞれに示す。なお,評定が不一致. 「他者への理解の深まり」体験につながると考えられる。. であった項目については項目ごとに同じ評定者 3 名で協議. 次に, 「役割体験の感想表出」意図の認知との関連につい. し,一致させた。前述した 3 セッションのシェアリング場. て述べる。主役と演者において「役割体験の感想表出」意. 面における Dir.の促しとメンバーの Dir.の意図認知,メン. 図の認知の程度によって体験に違いがある可能性が窺われ. バーの応答の検討から,Dir.の意図の促しとメンバーによる. た。役割体験の感想を述べる際には,前述したような作業. Dir.の意図の認知には関連はないが,Dir.の意図の促しとメ. が伴うと考えられ,役割から離れて今の自分(の立場)か. ンバーの応答は対応があることが窺われた。. ら演じた役やその際の行演について考えることが「他者へ の理解の深まり」体験につながると考えられる。 3)Dir.の意図とメンバーの Dir.の意図認知,シェアリング 体験の関連 ⅰ)分析対象データ 3名のDir.から得られた3セッション分の逐語データを分 析した。それぞれの Dir.にテーマの設定を依頼した 3 回目 の各グループにおけるセッションを分析対象とした。 ⅱ)Dir.の意図とメンバーの意図認知の関連 Dir.の意図によるメンバーの Dir.の展開意図の認知に偏. メンバーの Dir.の意図認知に関連がある要因を検討した 結果,各意図の促しとメンバーの応答の回数と,メンバー のDir.の意図認知には回数との関連は見いだされなかった。. りがあるかを検討するためFisher の直接法による検討を行. どのタイミングでどの意図を促すかという Dir.の促しの. なった。その結果, 「観客からの FB」と「役割体験の感想. パターンを見てみると,どの Dir.も各幕終了後,おおむね. 表出」の両者において有意な偏りは見られず、Dir.の「観客. 初めに主役に「役割感情表出」を促し、続いて演者に「役. からの FB」と「役割体験の感想表出」とメンバーの Dir.. 割感情表出」を促す。そして最後の幕の終了後に主役,演. の意図認知との間に関連はないことが示された。 (X2=1.60,. 者の順で「役割感情表出」を促し,続いて観客に「観客か. n.s.,. X2=2.09,n.s.) 。なお, 「役割感情表出」意図に関し. らの FB」または「役割体験の感想表出」を促し,最後に主. ては,Dir.全員が「当てはまる」のみの回答であったため,. 役に「役割体験の感想表出」を促していた。また,Dir.の促. 検討が出来なかった。. しを見ていくと, 「役割感情表出」意図と「役割体験の感想. Dir.は心理劇全体を通して,意図性をもって適宜介入し場. 表出」意図のどちらにでも捉えられる促しや「役割体験の. 面を展開していると言え,Dir.は意図をもってメンバーに関. 感想表出」意図と「観客からの FB」意図のどちらとも捉え. わると考えられる。しかし,上記の結果から,メンバーの. られる促しなど曖昧さが見られるものがある一方で,メン. Dir.の意図認知と Dir.の意図には直接的な関連がないと考. バーが Dir.の言った言葉をそのまま答えるようもののよう.

(4) に回答に自由度がないものもあり,促し方は様々であった。 Dir.の促しに対するメンバーの応答はおおむね Dir.の促し. 2)シェアリングにおけるディレクターの展開のあり方 本研究で得られた知見をもとにシェアリング場面におけ. と対応していたものの, 「役割感情表出」と「役割体験の感. る Dir.の有効な展開のあり方について述べる。. 想表出」の両方を行なっているものや「役割体験の感想表. ①観客の表出が重要であると思われる場合には,観客役割. 出」と「観客からの FB」の両方を行なっているものもあっ. のメンバー全体に対してだけでなく,個人に焦点化した促. た。以上のことから,Dir.の促しの仕方やパターンも様々で. しや表出内容の方向づけが必要となると考えられる。. あり,促し方についても意図があると思われ,今回想定し. ②Dir.の意図の促しにおいては,1 つの意図の促しに終始す. た3つの意図以外にも様々な水準の意図の存在が窺われた。. るのではなく, 3 つの意図を適宜織り交ぜながら促す必要. さらに,その意図の伝え方によってもメンバーの Dir.の意. があると考えられる。しかし,その順序や促しの回数は対. 図認知は異なると思われる。. 象者や心理劇実施のねらいによって様々であると思われる。. また,シェアリング時の Dir.の進め方について感じたこ. ③Dir.の意図には,シェアリング場面特有の意図から心理劇. とや考えたことに関する自由記述では, 「感想を丁寧に聞い. 全体における意図など様々な種類と水準があると考えられ,. てくれた」などの Dir.の聞き方や態度に言及した回答が多. Dir.はそれぞれを明確に意識しておく必要があると考えら. く,Dir.の態度もメンバーのシェアリングでの表出を促す上. れる。そして,それらの意図の伝え方についても注意を払. で重要な要素であることが窺われた。. う必要があると思われる。つまり,それぞれの意図に基づ きメンバーの体験を方向づける展開は必要だが,メンバー. 5.総合考察. の自発性が阻害されるような展開にならないよう注意が必. 1)シェアリング体験に関連する要因. 要であると考えられる。しかしながら,認知機能に重篤な. 役割や劇化テーマによるシェアリング体験の差がほとん. 障害があるメンバーなど対象者によっては,明確に意図を. ど見られていないことから,シェアリング体験には劇化体. 言語化し,意識化させた方が心理劇における体験がより鮮. 験に左右されない体験があると考えられる。シェアリング. 明になる場合もあり,対象によって意図の伝え方,展開の. 体験に関連する要因と考えられるメンバーの Dir.の意図認. 仕方も考慮する必要があろう。. 知が考えられる。今回の調査から, 「観客からの FB」 「役割. 3)今後の展望. 体験の感想表出」意図の認知とシェアリング体験との関連. 今回の調査では,想定していた Dir.の意図とメンバーの. が示された。一方, 「役割感情表出」意図の認知との関連は. Dir.の意図認知との関連は示されなかった。その要因として,. 示されなかった。. 意図の多様性と意図と意図認知との間に介在する要因の精. 「観客からの FB」 「役割体験の感想表出」と同様に「役. 査と検討が十分に行なえなかったことが考えられる。その. 割感情表出」においても「自己への気づき」や「他者への. ため,今後は,シェアリング時の Dir.の意図と Dir.の展開. 理解の深まり」を体験すると考えられる。しかし,今回の. の仕方とメンバーへの意図の伝え方について詳細な検討が. 結果では, 「役割感情表出」とシェアリング体験との関連は. 必要であると思われる。. 示されていないが,Dir.の促しではもっとも多くなっている。. また,今回は大学生を対象として調査を行なったが,対. それは, 「役割感情表出」では「いま,ここで」の体験の表. 象が変われば意図や展開の仕方も変わると思われる。その. 出を促しており,メンバーは今体験され感じたことに目を. ため,本研究で得られた Dir.の有効な展開のあり方の知見. 向けるため,繰り返し促されていても「自己への気づき」. を臨床現場に適用するためには,対象を変え,更なる検討. や「他者への理解の深まり」の体験を認知しづらいと考え. を行なうことが必要であると思われる。. られる。一方で, 「観客からの FB」 「役割体験の感想表出」 の両者の Dir.による促し回数は少ない。しかし,この両者. 6.主な引用文献. の促しは繰り返し行われる「役割感情表出」の促しにより. 長谷川行雄・磯田雄二郎・成沢博子・高良聖 1986 心理. 自ずと体験されている事柄を,明確化し意識させると考え. 劇の実際 台利夫・増野肇(監) 金剛出版. られる。3 つの意図の促しにより促される行為が相互に作用. 平山篤史 2004 ロールプレイ場面のテーマ・役割の認知. し合い,それぞれのシェアリング体験をもたらすと考えら. が演者の体験に及ぼす影響 心理劇研究 第 28 巻,第 2. れる。また今回の調査では Dir.の意図とメンバーの Dir.の. 号,p.13-26. 意図認知に関連が見られていないことから,意図の伝え方. 岡嶋一郎・針塚進 1997 心理劇の場面構造と演者・観客. によってもメンバーの Dir.の意図認知は異なると考えられ. の意識的体験-心理劇の体験的現実性の視点から- 心. る。. 理劇 第 2 巻,第 1 号,p.49-60.

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