大学生における親からの期待に対する役割緊張とアイデンティティ形成との関連 [ PDF
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(2) 調査内容. 点から役割対処可能性得点を引いたものを, 「自立対処困難. Ⅰ.フェースシート :性別・年齢・学年・居住形態の記入. 性得点」 「家族対処困難性得点」 「友人関係対処困難性得点」. Ⅱ.親からの役割期待尺度の項目 (5件法)(27項目) :期待されてるか. 「生活態度対処困難性得点」 「相談相手対処困難性得点」と. Ⅲ.親からの役割応答尺度の項目 (5件法)(27項目) :応えられるか. し算出した.. Ⅳ.役割重要性尺度の項目 (5件法 )(27項目) :自分にとって重要か. 同一性地位判定尺度 加藤(1983)にならい下位項目を「現. Ⅴ.青年用適応感尺度(大久保,2005)(5件法)(19項目). 在の自己投入」 「過去の危機」 「将来の自己投入の希求」と. Ⅵ.同一性地位判定尺度 (加藤,1983)(5件法)(12 項目). 命名した.. 3.結果. 青年用適応感尺度因子分析と得点化 目的に沿って,青年. (1)尺度の検討. 用適応感尺度(大久保,2005)の 30 項目を因子分析(最尤法. 親からの役割期待尺度の因子分析 目的に沿って,予備調. 法・Promax 回転)し,先行研究と構造が同じであったた. 査を参考に作成した 27 項目に対して因子分析(最尤法・. め,先行研究に準じ「居心地の良さの感覚因子(α=.95)」 ,. Promax 回転)したところ「自立期待因子」(8 項目,α=.83). 「被信頼・受容感因子(α=.88)」 , 「課題・目的の存在因子(α. 「家族親和性期待因子」(4項目,α=.81)「 友人関係期待. =.93)」 , 「劣等感のなさ因子(α=.86)」と命名された.. 因子」(3項目,α=.83) 「生活態度期待因子」(3項目,α. (2)役割対処困難性と適応感・同一性達成地位との関連. =.72) 「相談相手期待因子」 (2項目,α=.76)の解釈可能な. 役割対処困難性の高低によって適応感が異なるかを検討. 5因子が抽出された .因子数は固有値の落ち込み,累積寄. するために,下位尺度得点から 3 分の1を基準に役割対処. 与率から5因子が適当であると判断された.結果を Table1. 困難性得点を高・中・低の3群に分割し,役割対処困難性3. に示す.. 群を独立変数とし,適応感得点を従属変数とした1要因3. Table 1. 親からの役割期待尺度因子分析結果. 水準の分散分析を行った .その結果, 「居心地の良さの感覚」 (F(2, 578.56)= 7.53,p<.01) 「課題・目的の存在」 (F. 因子 1. 【自立期待】. 2. 3. 4. 5. α. α. α. α. α. =.83. =.81. =.83. =.72. =.76. 共通. (2, 268.34)=10.26,p<.01) 「被信頼・受容感」 (F(2,. 性. 自分のことは自分でできるようになってほ しい. .90. 家事をきちんとできるようになってほしい. .70. .67. 将来,自立して生活してほしい. .61. .45. 将来,安定した職業についてほしい. .57. .37. 就職(進学)してほしい. .52. .53. きちんと単位を取ってほしい. .52. .70. 体調を崩すことなく健康であってほしい. .47. .28. 1 人で生活できるようになってほしい. .41. .39. .48. 165.24)=6.50,p<.01) 「劣等感のなさ」 (F(2, 165.24) =6.50,p<.01)において役割対処困難性の効果は有意であ り,HSD 法に基づく多重比較の結果,低群と中群,中群と高. 【家族親和期待】 家族と密にコミュニケーションをとってほ. .92. しい 家族と円満な関係でいてほしい. .61. .66. い) 多くの時間を一緒にすごしてほしい. また,同一性地位判定下位尺度において「現在の自己投. .78. .69. 家にできるだけいてほしい(帰省してほし. 群においてそれぞれ平均に有意差があった.. .40. 入」に対して役割対処困難性の効果は有意であり(F(2,. .36. .52. 【友人関係期待】 友人関係を長く続けてほしい. .82. .37. 幅広く友人関係をつくってほしい. .75. .43. 信頼しあえる友人関係を築いてほしい. .63. .90. 87.32)= 8.79,p<.01) ,さらに,HSD 法に基づく多重比較の 結果,低群と中群,低群と高群それぞれに平均に有意差が. 【生活態度期待】 真面目に勉強してほしい. .77. .49. できるだけ良い成績をとってほしい. .71. .68. 真面目な友人と付き合ってほしい. .50. あった.「過去の危機」(F(2, 1.27)= 0.22,n.s.) 「将. .35. 【相談相手期待】 相談をしてきてほしい 相談にのってほしい. .91. .48. .61. .66. 来の自己投入の希求」 (F(2, 8.39)= 1.07,n.s.)に有意 差はみられなかった .. 因子相関行列 因子. 1. 1. 1.00. .38. .52. .49. .28. 2. .38. 1.00. 2. 3 .48. 4 .44. .57. 5. 3. .52. .48. 1.00. .33. 4. .49. .44. .33. 1.00. .26. 5. .28. .57. .43. .26. 1.00. よって,役割対処困難性得点の高い学生は,役割対処困. .43. 難性得点の低い学生に比べ,「居心地の良さの感覚」「課. 役割対処可能性尺度 目的に沿って,親からの役割期待尺. 題・目的の存在」「被信頼・受容感」「劣等感の無さ」「現. 度の因子構造にあわせ「自立期待対処可能性因子(α=.81)」. 在の自己投入」が低いことが示された.. 「家族親和性期待対処可能性因子(α=.72)」 「友人関係期待. (3)役割対処困難性と役割重要性によるクラスタ分析. 対処可能性因子 (α=.80)」 「生活態度期待対処可能性因子(α. 役割対処困難性得点と役割重要得点に基づいてユークリ. =.58)」 「相談相手期待対処可能性因子(α=.83)」とした.. ッド距離を用いた,Ward 法によるクラスタ分析を行った.. 役割重要性尺度 目的に沿って,親からの役割期待尺度の. その結果,4つのクラスタに分類することが最も妥当な解. 因子構造にあわせ「自立重要性因子(α=.79)」 「家族親和性. 釈ができると考えられた.Figure1に Z 得点を示す.. 重要性因子(α=.82)」 「友人関係重要性因子(α=.75)」 「生. クラスタⅠ(n=57)は役割対処困難性が低く,役割重要. 活態度重要性因子(α=.66)」「相談相手重要性因子(α. 性の高い群である.役割は重要だと考えており役割に対応. =.79)」と命名した.. できている群である. 「役割対処群」と命名された.. 役割対処困難性得点 目的に沿って,親からの役割期待得. クラスタⅡ(n=67)は役割対処困難性も役割重要性も最. 2.
(3) も高い群である.役割の重要性を感じているが期待に対応. あった.よって,役割回避群は他のクラスタにくらべ「居. はできないと考えている群である.そのことから, 「役割葛. 心地の良さの感覚 」 「課題・目的の存在」 「被信頼・受容感」. 藤群」と命名された .. を低く認知している 事が示された.. クラスタⅢ(n=166)は役割対処困難性が高く,役割重要. 適応感得点の「劣等感のなさ」 (F(3, 47.50)=2.07,n.s.). 性は低い群である .役割期待に対応できないと考えている. においてクラスタ間の効果は有意でなかった.その結果を. が,役割は重要でないとしている群である.そのことから. Table3.に示す.よって,クラスタ間における「劣等感のな. 「役割回避群」と命名された.. さ」の違いはみられなかった. (Figure.2) Table 3 各クラスタの適応感. クラスタⅣ(n=35)は役割対処困難性も役割重要性も最 も低い群である .役割期待に対応できると考えていて,役 割も重要だと考えていない群である.そのことから「役割. 独立変数. 各群における「適応感因子(居心地の良さの感覚)」得点の平 均値と標準偏差. 居心地の良. 役割対処群. 役割葛藤群. 役割回避群. 役割意識希薄群. さの感覚. (n=57). (n=67). (n=166). (n=35). 44.23. 意識希薄群」とした.. (SD=6.83) 課題・目的の 役割対処群 存在 (n=57) 29.72. 42.97 (SD=9.39) 役割葛藤群 (n=67) 27.75. 4.67 被信頼・受容 役割対処群 感 (n=57) 20.72. 4.93 役割葛藤群 (n=67) 19.85. 5.08. 4.96. 37.78. 41.97. (SD=8.84) 役割回避群 (n=166). (SD=7.73) 役割意識希薄群 (n=35). 25.03. 27.49. 5.07 役割回避群 (n=166). 4.87 役割意識希薄群 (n=35). 17.00. 19.74. 4.94. 4.11. 劣等感のな. 役割対処群. 役割葛藤群. 役割回避群. 役割意識希薄群. さ. (n=57). (n=67). (n=166). (n=35). 19.82. 19.00. 18.69. 20.66. 4.98. 4.86. 4.80. 4.28. F値. 群間差(Tukey) 3<1・2・4**. F(3, 835.33)= 11.47 3<1・2・4** F(3, 359.0)= 14.62 3<1・2・4** F(3, 276.71)= 11.57 n.s. F(3, 47.50)= 2.07. **<.01. Figure1 クラスタ分析の結果 Table 2. 各クラスタの役割重要性・役割対処可能性. 独立変数. F値 役割過少群(n. 役割葛藤群. 役割回避群(n. 役割意識希薄群. =57). (n=67). =166). (n=35). 群間差(Tukey) 3・4<1<2**. 役割重要性. 80.02. 84.97. 69.66. 67.11. 5.601. 4.345. 6.692. 3.833. 役割対処困難. 役割過少群(n. 役割葛藤群. 役割回避群(n. 役割意識希薄群. 性. =57). (n=67). =166). (n=35). 「居心地の良さの感覚」. 「課題・目的の存在」. 「被信頼・受容感」. 「劣等感のなさ」. F(3, 4958.90)= 146.14. 4<1<2<3**. -.82. 17.33. 11.87. -9.40. 4.412. 7.760. 7.542. 4.864. F(3, 7760.45)= 163.31. **<.01. (5)各クラスタと適応感尺度・同一性地位判定得点の関連 適応感 各クラスタに属する対象者の適応感を検討するために,. Figure2 各群における適応感得点. 各クラスタを独立変数とし,適応感の各因子を従属変数と. その結果,適応感得点の「居心地の良さの感覚」 (F(3,. した1要因4水準の分散分析を行った.その結果を Table3.. 835.33)=11.47,p<.01) 「課題・目的の存在」 (F(3, 359.0). に示す.. =14.62,p<.01) 「被信頼・受容感」 (F(3, 276.71)=11.57,. その結果,適応感得点の「居心地の良さの感覚」 (F(3,. p<.01)においてクラスタ間の効果は有意であった.さら. 835.33)=11.47,p<.01) 「課題・目的の存在」 (F(3, 359.0). に,HSD 法に基づく多重比較の結果,役割回避群と役割対処. =14.62,p<.01) 「被信頼・受容感」 (F(3, 276.71)=11.57,. 群・役割葛藤群・役割意識希薄群において平均に有意差が. p<.01)においてクラスタ間の効果は有意であった.さら. あった.よって,役割回避群は他のクラスタにくらべ「居. に,HSD 法に基づく多重比較の結果,役割回避群と役割対処. 心地の良さの感覚 」 「課題・目的の存在」 「被信頼・受容感」. 群・役割葛藤群・役割意識希薄群において平均に有意差が. を低く認知している 事が示された.. 3.
(4) 適応感得点の「劣等感のなさ」 (F(3, 47.50)=2.07,n.s.). 割重要性の視点から考察すること,またそれが適応感・ア. においてクラスタ間の効果は有意でなかった.その結果を. イデンティティ形成とどのように関連しているかについて. Table4.に示す.よって,クラスタ間における「劣等感のな. 本人の感じる役割の重要性の要因も交え検討することを目. さ」の違いはみられなかった. (Figure.2). 的とした.役割期待に応えられないと感じる程度と役割を. 同一性地位判定尺度下位尺度. どの程度重要と考えているかによって,群分けを行った結. 分散分析の結果,現在の自己投入(F(3, 86.95)=8.97,p. 果「役割対処群」 「役割葛藤群」 「役割回避群」 「役割意識希. <.01)においてクラスタ間の効果は有意であった(Table4). 薄群」の4つの群に分けられた.役割緊張を「役割関係の. HSD 法に基づく多重比較の結果,役割回避群と役割対処. 中で人々が経験する,他者からの役割期待に応えられるか. 群・役割意識希薄群において平均に有意差があった.役割. に関する不安」と本論文では定義している為, 「役割葛藤群」. 回避群と役割葛藤群において平均に有意な傾向があった.. と「役割回避群」が役割緊張を持つ群だと考えられた.. よって役割回避群は他のクラスタにくらべ「現在の自己投. さらに,役割期待に応えられないと思っていても,期待. 入」得点が低いことが示された. 「過去の危機」 (F(3, 1.32). を受けている当人が役割を重要だと思っていない「役割回. =0.23,n.s.)「将来の自己投入の希求」(F (3, 9.94)=. 避群」では役割緊張は強くならず心理適応もよく,逆に期. 1.28,n.s.)においてクラスタ間の効果は有意でなかった.. 待を受けている当人が役割を重要だと思っている「役割葛. その結果を Table4.に示す.よって,クラスタ間における「過. 藤群」の場合,期待に応えられないと感じることは葛藤を. 去の危機」 「将来の自己投入の希求」の違いはみられなかっ. 生じ,役割緊張が強く心理的適応を低く認知するであろう. た. (Figure.3). という仮説をたてた .. したがって,役割回避群が他のクラスタにくらべて 同一性. しかし,本研究では「役割回避群」において適応感の「居. 地位判定下位尺度得点の「現在の自己投入」の得点が低い. 心地の良さの感覚」 「課題・目的の存在」 「被信頼感・受容. ことが示された.. 感」を低く認知する結果となった.. Table 4. 各クラスタの同一性地位下位尺度得点. 従来の役割緊張研究では,役割緊張を高く認知する人は, 心理的適応を低く認知する傾向があったが,本研究では従 来役割緊張を感じるとされている群の中でも, 「役割葛藤 群」のように役割期待に応えられないと思っていても,そ の役割を重要だと思っていれば,心理的適応を高く認知す ることが示唆された. また, 「役割回避群」において「現在の自己投入」が低い 事が示唆された.下山(1995)のいう大学生としての役割か ら回避している一般学生の無気力に近い群とも考えられる .. **<.01. しかし,今回の役割期待には学業だけでなく対人的側面も 含まれるため,スチューデントアパシーも含まれている可 能性がある.今後明らかにする必要があるだろう. 「過去の危機」 「将来の自己投入の希求」に関して差が無 い点は,役割緊張はあくまで現在の期待に関するものだか らではないかと考えられた. 「現在の自己投入」. 今後の研究では「役割葛藤群」 「役割回避群」が役割緊張. 「過去の危機」. をどのように認知しているかについても面接調査などの調 査により明らかにする必要があるだろう. 引用文献 Fenzel,L.M.1992 The effect of relative age on selfesteem, role strain, GPA, and anxiety. Journal of Early Adolescence, 211226. 「将来の自己投入の希求」. Figure3 各群における同一性地位下位尺度得点. 大久保・加藤 2005 青年における個人―環境の適合の良. 4.考察. さの仮説の検証 教育心理学研究 53(3), 368-380. 本研究では,役割緊張を役割期待と役割対処可能性,役. 4.
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