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民家の可変性と持続性-浮羽町新川田篭地区における民家の地域資源化に関する基礎的研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)民家の可変性と持続性 -浮羽町田篭地区における民家の地域資源化に関する基礎的研究ー. 天満 類子 1. 研究の背景. 山 肌 に 形 成 し た 2 集 落( 山 口, 美 住 ) で 構 成 さ れ て い た. 山村地域の集落では, 設備の導入などが進み, 生活の. が, 世 帯 数 の 減 少 に よ り 現 在 は 山 口 が 馬 場 に, 小 間 坊,. 近代化が著しいが, 高齢化, 過疎化といった問題が依然. 市ヶ瀬が日森園に入り、 現在は 5 集落である。 山肌に築. として非常に厳しいことにはかわりがない。 そんな中, 都. かれた棚田を耕し, 農業を主産業としてきたが, 副業とし. 市にはない農村の魅力を見出し, 新たな地域の活力とし. て林業が明治より盛んであった。 地区の 7 割以上が山林. ていこうという動きがでてきている。 こうした地域資源を模. でそのほとんどは人工林である。 林業が盛況だった昭和. 索する諸活動は, グリーンツーリズムといった観光資源と. 40 年頃は,山主,出し方,馬車引きといった,農業以外を. して活用される場合が多く, 全国でも多くの自治体が, 集. 主な家計とする家も多数あったという。 明治維新後に増. 落景観や民家を地域資源として考えている。 民家や集落. 加した世帯数は, 大正初めには 140 戸までに達し, 以後. を観光資源として活用する際には, その基礎的な調査が, 1965 年までは戸数を維持していたが, その後急減し現在 今後の運営は元より存在意義を確かめる上でも大変重要. は 70 世帯程度にとどまり,さらに減少傾向にある ( 図 2)。. と考えるが, 実際は民俗学的研究が大半を占め, 集落景. 3. 宅地の変遷よりみる集落の柔軟性. 観を考える上で重要となるフィジカルな事象を扱った基礎. 3.1 現在の民家の残存状況. 研究は十分ではなく, 情報が乏しい地域がほとんどである。 対象地には 85 戸の民家があり, そのうち茅葺などの草 地域固有の魅力を見出すという地域資源化の本来の意. 葺はわずか 6 戸しかないが,トタン被せ,ツウガエ 1)といっ. 図を考える上では, 活用・運営の方針を画策する以前に, た草葺の軸組を継承する民家は 51 戸と, 全体の 6 割以 その場所に対応した学術的な研究が基本になるべきだと. 上に達し, 古い架構を持つ民家がかなり多く残っていると. 考える。. いえる(図 1)。 それらの創建年代を見ると(図 2), 明治以. 本研究で対象とする浮羽町は, 以前から棚田を中心と. 前のものが多いが, 大正になって瓦葺が建てられ始めて. した農業体験型の観光を実施し, 積極的に地域資源の開. からも戦前までは,半数が草葺で建て続けられた。. 発に取り組んでいる。 茅葺民家が多数残存するこの山村. 3.2 集落景観のダイナミズム. 地域では, 近年は民家の地域資源化に関心が高まってき. 現存する民家の地目の変遷を辿ると, 明治初期から常. ている。 しかし一方で, この地域はもとより, 九州本土で. に宅地だったものは 45 筆にとどまり, 全体の約半数が新. の民家・集落研究は実績が浅く, 明らかになっていない点. しい宅地であった。 さらに消滅した宅地を調査すると, 現. が多いのが実情である。 早急に調査し, 地域の特色を明. 存の筆数とほぼ同じ 106 筆存在し, 一度宅地になっても. らかにすることが求められる。. 農地に戻るケースが高い割合で起こっている。 つまり一. 2. 対象地の概要. 草葺軸組民家 (51戸) その他の住宅(34戸) 馬場. 浮羽町田篭地. 度宅地になったからといってそれ以降固定的な宅地とし て受け継がれるとは限らず, この地域の住宅の立地はか. (小間坊). なり流動的だといえる(図 3)。 住宅を構える都度に宅地. 区 は, 福 岡 県 南 (市ヶ瀬). 部にある耳納連. 12戸. 山の奥深く, 大分. 160戸. 草葺軸組民家 その他の住宅. 美住. (山口). 140. 10 日森園. 120. 県境に位置して. 8. い る。 筑 後 川 の. 6. 100. 世帯数. 80. 中村. 支流である隈上. 4. 川に沿った6集落. 2. ( 馬 場, 小 間 坊,. 0. 60 40. 中 村, 注 連 原 ) と. 0. 200. 400m. 注連原. 洪水. 図 1 浮羽町田篭地区. 洪水. 図 2 現存民家の創建年代と世帯数. 10-1 その他 2%. 瓦葺 37%. 草葺 7% トタン被せ 24%. 2000. 1995. 1990. 1985. 1980. 1975. 1970. 1965. 1960. 1955. 1950. 1945. 1940. 1935. 1930. 1925. 1920. 1905. 1915. 1900. 1910. 1895. 1890. 1875. 1880. 1885. 0. 藩政期. 市 ヶ 瀬, 日 森 園,. 20.

(2) が選定されている状況が予想される。. 動に注目すると, 分家時に新築した民家に, 違う家系が. 3.3. 分家し住替する例, 本家が家を分けた後に地区外へ転居. 移住と住替え. そのような宅地の流動性がどのようなプロセスで起こっ. し空屋になった民家に他の家系が分家する例, また本家. ているかを明らかにするため, 居住者に対して移住歴の. を第三者に売り移築する例など多様にあり, 規則性が存. 調査を行った。 その結果, 分家や転居をする場合, 新た. 在しているわけではない。 本家や分家でもってイエを守. に家を新築したもの〈新築〉が 21 例だったのに対し, 既存. り継いでいくという一般的な土地や民家の継承性は薄く,. の民家に移り住んだもの〈住替〉は 27 例とむしろ多かった。 むしろここでは自由な宅地, あるいは居住形式が選択で これらをさらに移住が行われる範囲で傾向を分析すると, きる柔軟さがあると考えられる。 このような自由な選択, あ 集落内に分家する場合は新築する傾向があり, 地区外か. るいはそれを許すフレキシビリティが, 結果的には集落景. ら転居する場合は既存の民家に住み替える傾向が強く現. 観をダイナミックに改変するような動機となっている。. れた(表 1)。 しかしさらに注目すべきは, 田篭地区内で. 4. 民家の空間の可変性. 移住する場合は, 分家・転居に関係なく住替が頻繁に起. 4.1 間取りの復原と室の特徴 2). こっていることである。 また, 集落内に分家するケースは. 田 篭 ・ 新 川 地 区 の う ち 民 家 24 事 例 に つ い て 実 測 調. 明治以前, 地区外から既存民家に転居・住替するケース. 査を行った。 図 5 はそれらの遺構と住民に対するヒアリン. は 1965 年以降という時代的な傾向があるのに対し, 田篭 地区内での住替えは古くから継続して行われていることが. 馬場 (小間坊). 分かった(表 2)。 また, 住替・新築とは別に〈移築〉という移住形式も 7 例 確認された。 地区外から, あるいは地区外へ移築する場 合は, 以前の居住者ではない第三者に民家が売却され. (市が瀬) (山口). 美住. ているが, 地区内で移築する場合は居住者と一緒に移動 日森園. している。 移築も 1899 年から 1970 年まで継続して確認 された。. (堤ケ迫). 妹川へ. 3.4. 居住者の変動と宅地の流動性 (杉の窪). これら民家の住替例と移築例を空間的に表したものが 図 3 である。 分家は限定的な場所で本家を中心として発. 中村. 葛篭へ 吉井へ. 散するように起こっているのに対し, 住替は方向性がなく,. 0. またかなり広い範囲で起こっている。 また, 地目の履歴. 200. 400m. 住替と移築. 地目の変化と筆数. に注目すると, たとえ宅地や民家が明治以前からの古い. 45筆. 住替. 農地→宅地. 53. 移築. 宅地→農地. 106. 計. 204. 常に宅地. ものであっても, 関係なく住替が起こっているのがわかる。 図 4 は以上の移住例をモデル的に示したものである。 横. 注連原. 軸は民家の存続と移動を示すが, ひとつの民家で移住や. 柚木より. 図 3 地区内の住替と地目の変化. 移築が繰り返し起こっているのがわかる。 また家系の変 1880. 表 1 移住の形式と移動範囲 集落内 地区内 地区外 分家・新築 転居・新築. 屋根形態. 分家・住替. 草葺. 転居・住替. トタン被せ. 転居・移築 1). ツウガエ. 地区外に移築 計瓦葺. 12 戸数1 4 3 4 14 2 5 2 23. 計. 5 21 3 建築年代 戸数 4 1 27 明治以前 8 3 11 ~1900 8 1 7 ~1930 5 4 ~1960 16 16 55 3. 表 2 移住の発生年代 1868. 集落内 分家・新築 地区内 住替 地区外 転居・住替 . 1890. 1910. 1930. 1950. 1890. 1900. 1910. 1920. 1930. 1940. 1950. 1960. 1970. 1980. 1990. 2000. 本家 D. 1970. 1990. 分 家 時 $ 住 替. 本 家 ( 移 築. 分 家 $ 住 替. 本 家 $ 分 家. 分家 D. 本家 H. !" 地区外へ Y. 分家 H 分家 H 分家 H 分家 F. Z. O. 分家 F 分家 W. 本家 F 本家 W. 分家 W 隠居 B. W. 本家 B. 分移 家築 (    分住 家替 $ 住 替. 本家 K. 本 家 ( 移 築. 本家 M. 分 家 時 $ 住 替. S 分家 K !". 本家 I. 分家 I. R. A. C U. 本家 D. 分家 D !" 地区外へ 地区外 !" 分家 M. !". 本家 T J. 分家 T. 民家の存続. 居住者の変更. 図 4 移住モデル. 10-2.

(3) グ よ り 建 築 当 時 の 平 面 を 復 原 し, 類 型 化 し た も の で あ る。 4.2 増改築 ・ 改装による空間の改変とその特徴 ゴ. ザ. C D E B 一般的に田の字型が多いとみられていた本対象地であっ ナ ナ ダ ダ ナ (3) (2) (9) (3). 現在の状況と復原の間取りを比較すると, かなりの部分 F. ても, 定着するのはむしろ昭和に入ってからであることが ザ. ゴ. ゴ. ザ. ゴゼン,オモテ ザシキ ブツマ ナンド,ネマ ナカエ,ダイドコロ. 列型>  ンとザシキの. 桁×梁. ナ. ゴ. ザ. (1). ダ. ナ. で, また相当な規模で手が加えられている(図 6)。 こうし ブ. ザ. 分かり, それ以前は様々な間取りがあることが明らかにな. は事例数. ダ. ゴ. た空間の改変は, 民家の間取りが時代的な変遷でもって ザ. C' D' った。 しかしこのような多彩な平面であっても, 表 3 Eに示 ナ. ダ. すようなゴゼン・ザシキ・ナカエ ( ダイドコロゴ ) ・ナンド・ドマ ゴ ザ. 性を含み, 民家が変わってゆくプロセスを明らかにする上 ゴ ザ ザ. (1). ダ. (1). ダ. ナ. 空間を獲得していくという以上に,複雑な平面改変の可能 ナ. (1). ザ. F. ブ. (1) で鍵となると考える。. という空間の種類やそれらの機能,室同士のつながりには. ゴ <二室型>  <横食い違い型>  <縦食い違い型> <田の字型> ダ 強い共通点が見られる。 一方で間取りにはきまった型や 実測調査を行った民家の改変部分を分析すると, その ナ 神棚・仏壇を備 手前のザシキとゴゼンが ザシキの列の手前と後 室が食い違わない. えたザシキと 奥のナンドとダイドコロ ろの間に壁がない. ダイドコロがドマと続 変遷がはっきりしないことから, ここの間取りは家全体から すべての民家で何らかの改変が行われており, 約 60 種 食事・睡眠をす とずれる. ドマに板縁が飛び出て いているものと続いて <その他> るナンドがドマ ダイドコロの上がり口に いる. いないものがある. みたときの分配で決まるのではなく, 単純に室の組み合わ 212 箇所の改変行為が確認された。 鉤屋 に面する. 建具がない.. せと空間のつながりによって決まっているといえる。 4~4.5×3.5 6~7.5×4 6.5~8×4~4.5. もっとも改変が激しい部位はドマ 5.5~7×3.5. (28 例 ) で, 壁で空間. 表 3 室の特徴. を仕切り内風呂, 部屋, 炊事場, 玄関を設けたり, 中 2 階. ゴゼン  客を出迎える空間で,一般的な接客が行われる。行事の際はザシキと一体 的に使われる場合がある。大きな神棚,差鴨居,高い丸竹天井,塗りの板戸, サマンコ窓,と座敷とは異なるが意匠性の高い空間である。6~12.5帖と広 にばらつきがある。 ザシキ  ほぼすべて6~8帖の広さで安定している。竿縁天井であるが,長押は後で 付けられた場合が多い。ブツマがない場合は,ゴゼン正面のトコの隣に仏 壇を据える。長押をもつようなザシキには1間の平書院や付け書院がつく が,そうでなくとも半間の平書院がつく場合が多い。 ナカエ  ダイドコロとも言い,食事や親しい人を接客する空間である。もともとは ドマとの境界に建具はなく,炊事場と連続的な使われ方をしていた。 ナンド  閉鎖的な部屋で,寝間とも呼ばれる。天井がなく小屋裏まで筒抜けの場合 もあるが,根太天井を渡し,物置として中2階を作っている事例もある。 ドマ  ニワとも呼ばれ,手前には根太天井を渡して中2階を物置として使い,天井 のない奥はクドを置き,炊事場として使っていた。ナカエから直接炊事で きるゴゼンクドを置く場合もある。. の物置を部屋やザシキに改造している。 炊事空間はもと. <一列型> . Ⅰ (1). ゴ. <二室型>  ザ. Ⅱ (3). <横食い違い型>  ナ. Ⅲ (3). ザ. Ⅲ' (1). ( )は事例数 ゴ ゴゼン,オモテ ザ ザシキ ブ ブツマ ナ ナンド,ネマ ダ ナカエ,ダイドコロ. ゴゼンとザシキの み.   桁×梁. ナ. ゴ. ザ. ゴ. 神棚・仏壇を備 えたザシキと 食事・睡眠をす るナンドがドマ に面する. 4~4.5×3.5. ナ. ら切り離され, クドから煙を直接屋根裏に通すこともなくな った。 さらに 1970 年頃から近代的なキッチンが導入され るとドマが床上化され,境界に建具が設けられた。 新しい 空間には一般的にダイニングテーブルがおかれるが, 食 事はそれまで通りナカエ ( イマ ) で行う家が多いようである。 戦前はゴゼンで養蚕が行われたため, 炉を切って暖をと り丸竹天井の下に竿縁天井を設けて熱効率を上げた (13. Ⅳ (2). Ⅳ' (1). ダ. <田の字型>. ダ. ナ. ゴ. ザ. ナ ゴ. ザ. 手前のザシキとゴゼンが 奥のナンドとダイドコロ とずれる. ダイドコロの上がり口に 建具がない. 6~7.5×4. 及すると,下屋が増築されてそこに移り (10 例 ),ナカエか. <縦食い違い型>. ダ. ダ. からドマにあったが, 1940 年頃から煙突付きのカマドが普. ザ. Ⅴ (9). <その他> ダ. ナ. ゴ. ザ. ダ. ナ. ゴ. ザ. Ⅵ (1). ナ. ダ. ブ. ゴ. ザ. Ⅴ' (1). ブ. ザシキの列の手前と後 ろの間に壁がない. ドマに板縁が飛び出て いる.. 室が食い違わない. ダイドコロがドマと続 いているものと続いて いないものがある.. 6.5~8×4~4.5. 5.5~7×3.5. ザ. Ⅵ (1) ダ. ゴ ナ. 鉤屋. 図 5 間取りの復原と類型 ゴゼン  客を出迎える空間で,一般的な接客が行われる。行事の際はザシキと一体 的に使われる場合がある。大きな神棚,差鴨居,高い丸竹天井,塗りの板戸, サマンコ窓,と座敷とは異なるが意匠性の高い空間である。6~12.5帖と広 にばらつきがある。 ザシキ  ほぼすべて6~8帖の広さで安定している。竿縁天井であるが,長押は後で 付けられた場合が多い。ブツマがない場合は,ゴゼン正面のトコの隣に仏 壇を据える。長押をもつようなザシキには1間の平書院や付け書院がつく が,そうでなくとも半間の平書院がつく場合が多い。 ナカエ  ダイドコロとも言い,食事や親しい人を接客する空間である。もともとは ドマとの境界に建具はなく,炊事場と連続的な使われ方をしていた。 ナンド  閉鎖的な部屋で,寝間とも呼ばれる。天井がなく小屋裏まで筒抜けの場合 もあるが,根太天井を渡し,物置として中2階を作っている事例もある。 ドマ  ニワとも呼ばれ,手前には根太天井を渡して中2階を物置として使い,天井 図 6 現在の間取りと増築部分 のない奥はクドを置き,炊事場として使っていた。ナカエから直接炊事で きるゴゼンクドを置く場合もある。. 10-3. 1階平面図 1:600.

(4) 例 )。 また, 明治前後から林業が盛んになり, 文机を置い. 民家の存続を, 実線は現在の家系の居住歴を示し, 民家. て勘定などの書き物をする空間としてカンジョウマがゴゼ. の創建順に上から並べている。 これらによると, まず改変. ンの外側に作られた (11 例 )。 現在は子どもの勉強部屋, 行為が近世から現代まで継続して起こっていることが注目 さ れ る。 さ ら に ひ と つ の 民 家 で 注 目 す る と, e, f の 設 備, 仕事部屋, 化粧部屋, 押入等になっている。 さらに, ドマ との境界に以前からの建具を利用した押入がドマに突き. 内装の改変行為は繰り返し起こるが, 6時代で波があるの. 出して付加される場合があり (9 例 ), 中には一面押入を. に対し, b, c の床面積を広げる行為は一定の期間を経て. 付加することによって, ドマとの往来を完全に断ち切った. 繰り返す傾向がある。 ま た 特 徴 的 な も の を 挙 げ る と, e の〈 内 装 の 改 変 〉 は,. ものもある。 ゴゼンもまた機能的な理由で大幅に改変さ れやすいといえる。 一方で, ナンド・ナカエは裏方向や座. 民家の古さに関係なく 1960 年以降に頻発し, 現在も続. 敷方向に半間程度の下屋を出し, 部屋を拡張する傾向が. いており, fの〈設備の導入〉もまた, 近世以降に発生し現. ある (17)。 また, ナンドを分割して 2 部屋にしたり, 下屋. 在まで連続して行われている。 一方で a の〈境界の改変〉. を出して部屋を増築している例もある。. は, f と同様に民家が存続する限り近世から継続してさか. 4.3 改変の類型から見る民家の変容モデル. んに起こっていたが, 1985 年を境に途絶えている。 さら. 以上のような改変行為を, 表 4 のように建築的な操作. にbの〈空間の拡張〉は, 比較的新しい民家で起こりやす. で分類し, 民家との関係を時系列で示す(図 7)。 点線は. いという特徴が別にあるが, a と同様に継続していた傾向. 表 4 改変事例. が, 1990 年を境に終息している。 この結果は,設備や内. 類型 数 a:境界の変更 a (21). 例. 装といった機能や付加価値がはっきりしているものに対し. 建具・間仕切りの設置,境界の移動,部屋の分化. ae (15) af (20). ドマを仕切り部屋の増築 室の境界に押入を設置,ドマを仕切り玄関・風呂・便所・炊事場の 設置. て手を加える行為は現在まで続いており, また同じ機能を. 下屋増築によるナカエ・ナンドの拡張. 一方で, 部屋の拡張や縮小, あるいは部屋と部屋との境. 持 つ も の で も 繰 り 返 し 改 善 が 行 わ れ 続 け て い る こ と 示 す。. 56 b:空間の拡張 b (6) bf (14). 下炊事場の拡張,風呂・廊下の拡張. 界を, 開閉や移動によりつながりを操作し空間自体をダ. 20 c:室の増築. c (16). 2階部屋・応接間・ナンドなどの室の増築. cf (59). イナミックに改変させるといった行為は, 近世から継続し. カンジョウマ・ザシキベンジョ・風呂・炊事場・縁・玄関の増築. て起こっていたことが明らかになったが, この 20 年でなく. 75 d:離れの追加 15 隠居屋の増築,付属屋に部屋を設置 e:内装の改変 e (28) 天井の張替え・新設,出窓・掃き出しマドの設置,座敷内装の改変 ef (4). ドマの床上げ,廊下の改装. を何回も繰り返しながら空間が少しずつ改変され, しかも. 32 f:設備の導入 合計. なっていることが注目される。 このように, 微妙な増改築. 14 囲炉裏の設置・廃止,便所・風呂の改善 212. 継続して変化し続けた結果, 現在の民家があるといえる。 現在の姿を一見すると, 四つ間取りが基本構成であるか. 1870. 1880. 1890. 1900. 1910. 1920. 1930. 1940. 1950. 1960. 1970. 1980. 1990. 2000. のように見えるこれらの民家も, そのプロセスは実に多様 であることが明らかになった。 5. まとめ 以上の分析によって, この地域の民家は, 住替が頻繁 に, しかも継続的に起こっており, それらは家系に関係な. fの分布域. く自由に発生するため, 地区の広範囲で居住者の入れ替 e:内装の改変 f:設備の導入. えが起こっていることが明らかになった。 さらに, そうして eの分布域. 住み始められた民家は, 様々な手法で手を加えられ, 変 化し続けることがわかった。 このように, この地域の民家. 1870. 1880. 1890. 1900. 1910. 1920. 1930. 1940. 1950. 1960. 1970. 1980. 1990. 2000. は居住地として選択される時, さらに住みながらも, 居住 者の都合に合わせてフレキシブルに対応しているといえ る。 そのような融通性が多種多様な民家形態を生み出し てきたひとつの要因といえるが, また民家が居住者に対し. aの分布域. て柔軟に対応してきたからこそ, 現在まで維持されてきた といえる。 一方で、 こうした柔軟性に価値を置かなくなっ a:境界の変更 b:空間の拡張. た現代においては、 ここで維持されてきたような仕組みは bの分布域. 有効に活用されず見過ごされつつある。 図 7 改変事例の変遷. 1) 軸部を変えず小屋組だけを組み替え瓦に葺き替える構法 2) 隣接する新川地区は昨年の調査により同様の傾向が明らかになっている。. 10-4.

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