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盲点における知覚的フィリングインの時空間特性 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)盲点における知覚的フィリングインの時空間特性 Key Word:充填,異方性,空間分解能,誘導場. 行動システム専攻 大隈. はじめに 網膜上,視神経乳頭(optic disc)には視細胞が欠如して. 峰人. 眼帯を利用した. 刺激線分(Target line)が左眼盲点領域に,基準線分(Com. いる(盲点(blind spot))にも関わらず,われわれが視覚世界. parable line)が他眼の盲点対応領域に提示された(Fig.1.1).. に奇妙なギャップを知覚することはない.これは視覚系. 独立変数は,線分方位(水平・垂直),幅(Narrow/Middle/Wi-. が盲点周辺の情報に基づいて知覚的な書き込み(充填)を. de),提示時間(100/200/500ms)であった.刺激線分と基. 行っているからだと考えられる(Le Grand, 1967).. 準線分は同率(0.1°/space key)で伸縮した.提示法は,. 盲点における充填機能に関しては,17 世紀にフランス. 上昇法(短い線分から長い線分へ)と下降法(長い線分から. のEdme Mariotte によって盲点の存在が確認されて以来,. 短い線分へ)から成り,試行数は合計で,方位 2 水準×幅. 多くの知見(たとえば,Kawabata, 1982: Ramachadran &. 3 水準×提示時間 3 水準×提示法 2 水準=36 試行×2 セッ. Gregory, 1991)が積み重ねられてきた.Paradiso & Naka-. ト=72 試行であった.線分幅の詳細はつぎの通り.Narrow. yama(1991)による充填のマスキング現象の報告以降,盲. (0.2)・Middle(1.2-1.7)・Wide(2.2-3.2)(単位はすべて視角).. 点における充填は面の知覚(surface interpolation)機能の. 実験は準暗室(9.31Lx)でおこなわれ,刺激の輝度は 41.5. 現れとして捉えられており,盲点における充填研究は,. cd/㎡であった.. 対象の弁別や同定に重要な役割を果たす面の知覚の機序 解明へと繋がるものと思われる.. Display. 上述したように,こうした精力的な研究が数多く積み 重ねられてきたにも関わらず,盲点における充填を規定. Target line. する刺激特性あるいはその神経基盤などに関してはまだ 完全に解明されているとはいえない. そこで本研究では,線分刺激を用いて,盲点における. Blind spot. Distance=40cm. Fixation Comparable line. 充填の時空間特性を調べ,そこから充填を成立させる神 経基盤について考察することを目的とする.. Experiment 1 1.1 目的 Kawabata(1982)によると,盲点の中心を原点とした座. Occuluder. Left eye Right eye. (Fig.1.1) Experimental Condition. 標系で少なくとも 2 象限に視覚情報がないと充填は完成. 1.2.3 手続き. しない.そこで実験 1 では,盲点を挟むように線分を提. 実験の前に,各被験者の左眼盲点領域が測定された.. 示することによって,線分刺激の方位(水平・垂直),幅,. 視距離 40cm の位置でバイトボードを噛み,右眼には眼. 提示時間が充填に与える効果について調べた.. 帯を着用した.被験者は,刺激線分が基準線分と同様に. 1.2 方法 1.2.1 被験者. 1 本の繋がった線分として知覚された点(上昇法)および 刺激線分が基準線分と異なり 2 本の分離した線分として. 正常な視力を有する成人 8 名.. 知覚された点(下降法)で反応した.. 1.2.2 装置および刺激. 1.3 結果および考察. 刺激の作成・制御および提示には,パーソナル・コンピ. 線分の方位,幅,提示時間で 3 要因分散分析を行った. ュータ(X68030)とディスプレイ(Sharp CZ 621D)を用い. 結果,各要因で主効果[F(1, 7)=13.197, p<.01:F(2, 14)=19.. た.眼球位置の固定にはバイトボードを,右眼遮蔽には. 780, p<.001: F(2, 14)=5.070, p<.05]が見られたので多重.

(2) 比較を行ったところ, 幅 Wide 条件と Narrow/Middle 条件. てプロットされたそれを方位別に,Fig.1.4 に,提示時間. の間および提示時間 100ms 条件と 200/500ms 条件の間. の関数としてプロットされたそれを方位別に示した.. で有意差が得られた.また,幅と提示時間の交互作用[F. 結果を要約する.(a)水平方位に比べて垂直方位で充填 に要する線分の長さが長い.(b)幅 Wide 条件で,充填に. (4, 28)=3.44, p<.05]が見られた.. Line Length for Filling-in (deg). 要する線分の長さが長くなる.(c)提示時間 100ms で充填 6. に要する線分の長さが長くなる.(b)の結果は,盲点領域. 5. 外に位置した線分の角(corner)情報が充填を疎外した結 果であると考えられる.(a)の結果と盲点領域の関係を調. 4 Horizontal. 3. Vertical. べるため,被験者ごとに充填に要した線分の長さの水平・ 垂直比と盲点の水平・垂直比を算出し,被験者群間で積率. 2. 相関係数を求めた結果,(a)の結果は盲点の水平・垂直比に. 1. 依存した結果ではなかった(r=.11).. 0 Horizontal. Experiment 2. Vertical. 2.1 目的. Orientation of Line Stimulus. 網膜偏心度(eccentricity)が同じであれば,注視点から水 (Fig.1.2) Line Length for Filling-in ~Orientation~. 平方位に離れた地点よりも垂直方位に離れた地点の空間. Line Length for Filling-in(deg). 分解能のほうが低い(Mcilwain, 1996)ことから,実験 1 で 6. 観察された充填の異方性は,この空間分解能の異方性に. 5. 基づく結果である可能性が考えられる. そこで実験 2 では,充填の異方性が空間分解能の異方. 4 Horizontal. 3. Vertical. 2. 性を反映したものかどうかを調べることを目的とした.. 2.2 方法 2.2.1 被験者. 1. 正常な視力を有する成人 9 名.. 0. 2.2.2 装置および刺激 Narrow. Middle. 装置は実験 1 とまったく同じであった.. Wide. 実験 1 と同様,刺激線分が被験者の左盲点領域に提示. Width of Line Stimulus. された.線分の幅は実験 1 の Middle 条件に等しく,提示 (Fig.1.3) Line Length for Filling-in ~Width~. 時間は 200ms であった.実験 1 との相違点は,2 本の刺. Line Lenght for Filling-in(deg). 激線分のうち一方の線分の長さが一定値をとった点であ った(固定線分).. 6. 独立変数は,固定線分の長さ(Short/Half/Long)と固定線. 5. 分の網膜投射部位(水平: Near/Far, 垂直: Upper/Lower)で. 4 Horizondal. 3. Vertical. あった.Near 条件はエキセントリシティが小さく,網膜 投射領域が大きい(=高解像度).Far 条件はエキセントリ. 2. シティが大きく,網膜投射領域が小さい(=低解像度).Up-. 1. per 条件と Lower 条件はエキセントリシティがほぼ等し く,網膜投射領域ひいては空間分解能に大差はないもの. 0 100ms. 200ms. 500ms. Duration of Line Stimulus. と考える.試行数は,合計で,方位 2 水準×長さ 3 水準 ×網膜投射部位 4 水準×提示法 2 水準=48 試行×2 セッ ト=96 試行であった.固定線分の長さの詳細はつぎの通. (Fig.1.4) Line Length for Filling-in ~Duration~. 方位の関数としてプロットされた充填に要する線分の 長さの平均を Fig.1.2 に示す.Fig.1.3 に,幅の関数とし. り.Short(1.7-2.2),Half(2.8-4.0),Long(3.9-5.7)(単位は すべて視角).実験は準暗室(9.31Lx)で行われ,刺激の輝 度は 41.5cd/㎡であった..

(3) Experiment 3. 2.2.3 手続き. 3.1 目的. 実験 1 とまったく同じであった.. 2.3 結果および考察. 実験 1 で確認された充填の異方性は,線分刺激の量的. 水平・垂直条件ごとに,固定線分の長さと網膜投射部位. 特性に着目した結果であった.つまり,充填の異方性は,. の 2 要因分散分析を行った結果,両条件で長さに主効果. 充填に要する線分刺激の長さの差分として表現された.. [H: F(2, 16)=28.650, p<.001, V: F(2, 16)=11.623, p<.001]. しかし,この結果だけから充填の異方性の存在を主張す. が見られたので多重比較を行ったところ,両条件,すべ. るには論拠に乏しい.. ての長さの間に有意差が得られた.また,水平条件で固. では,水平・垂直両方位に充填可能な刺激パタンを提示. 定線分の長さと網膜投射部位の交互作用が有意であった. したとき,視覚系はどのような充填を完成させるのか.. [F(4, 28)=3.44, p<.05].. そこで,実験 3 では Fig.3.1 にある刺激パタンを提示し,. Fig.2.1 に,水平条件で充填に要した線分の長さを網膜 投射部位別に,Fig.2.2 に,垂直条件で充填に要したそれ を網膜投射部位別に示した.. 異方性を別の視点から検討した.. 3.2 方法 3.2.1 被験者 正常な視力を有する成人 8 名.. Line Lenght for Filling-in(deg). 3.2.2 装置および刺激 刺激の作成・制御および提示には,パーソナル・コンピ. 5. ュータ(Gateway Performance 1000)と 21inch ディスプ. 4. レイを用いた.眼球位置の固定にはバイトボードを,左. 3. Far Near. 2. 眼遮蔽には眼帯を利用した. すべての刺激パタンを Fig.3.1 に示す.独立変数は,線 分の方位(水平・垂直)と個数(Few/Middle/Many)であった.. 1. 線分の長さは 7°,幅は 1.5°で,Few 条件では両方位で. 0 Short. Half. 確実に線分充填が起きるようにした.. Long. Line Length of a constant line. Horizontal. Line Length for Filling-in(deg). (Fig.2.1) Line Length for Filling-in ~Horizontal~ 7. 7deg. 6. Blind spot. Vertical. 5 4. Lower. 3. Upper. 7deg. 2 1 0. Few Short. Half. Middle. Many. Long. (Fig.3.1) Stimulus Pattern. Line Length of a constant line. 3.2.3 手続き (Fig.2.2) Line Length for Filling-in ~Vertical~. 実験の前に,各被験者の左眼盲点領域が測定された.. 結果を要約する.(a)両方位で,充填に要する線分の長. 視距離 30cm の位置でバイトボードを噛み,左眼には眼. さは網膜投射部位の違いによる影響を受けない.(b)固定. 帯を着用した.被験者は,刺激パタンを構成する線分が. 線分の長さが長くなると,充填に要する線分の長さは短. 部分的にでも繋がって見えたら(線分充填)ブザーを 1 回,. くなる.(a)の結果から,充填の異方性は空間分解能の異. まったく繋がって見えなかったら(短冊充填)ブザーを 2. 方性によるものではないといえる.(b)の結果は,盲点の. 回押した.. 充填が高次領野のグローバル処理を経ることを示唆する.. 3.3 結果および考察 線分数と方位で 2 要因分散分析を行った結果,線分数・.

(4) 方位それぞれで主効果[F(2, 14)=23.297, p<.001: F(1, 7)=. あれば,歪み無しの報告も(Tripathy & Levi, 1995)もあり,. 13.307, p<.01]が見られたので多重比較を行ったところ,. 必ずしも結果に一致をみない.ここで注目すべきは,歪. 線分数 Few,Middle,Many 条件すべての間で有意差が. み有りの報告の多くが盲点を挟む水平方位に刺激を提示. 得られた.また,線分数と方位の交互作用が有意であっ. しているのに対し, 歪み無しの最新の報告である Tripathy. た[F(2, 14)=8.976, p<.005].. & Levi(1995)の報告が盲点を挟む垂直方位に線分を提示. Fig.3.2 に,線分充填が生起した百分率を線分数の関数 として方位別に示した.. している点である.もしかしたら水平方位の知覚空間に 歪みが生じる一方,垂直方位では歪みが生じておらず,. Percentage for LineFilling-in(%). この異方性が充填の異方性を生み出したのかもしれない. 120. もうひとつ,本研究における異方性を生み出す可能性. 100. のある理論として,Motokawa(1950)の誘導場(induction field)理論がある.誘導場とは,視知覚においてある刺激. 80 Horizontal. 60. Vertical. のもたらす興奮が周囲に波及(誘導)する場のことで,感電 性(光覚を生じさせる閾値の逆数)の等高線として表現さ. 40. せる.この誘導場には異方性が確認されており,垂直方. 20. 位より水平方位の誘導マグニチュードが明らかに大きい (Michaels, 1960).つまり,垂直方位よりも水平方位にプ. 0 Many. ロットされた刺激間のほうがより強く影響しあうといえ. The Number of Line Stimulus. る.誘導場の存在を直接裏づける生理学的知見は得られ. Few. Middle. ていないが,網膜誘導場現象との関連性などは実証され (Fig.3.2) Percentage for Line Filling-in. 結果を要約する.(a)線分数 Few 条件では,確実に線分 充填が起きる.(b)水平条件では,線分数が多くなっても. ており, 充填が V1 での神経表象を得ることが指摘される 今日,充填の異方性と誘導場の異方性が密接に繋がる可 能性は十分にあるものと思われる.. 線分充填が起きる.(c)垂直条件では,線分数が多くなる と短冊充填が起きる.(a)の結果は,提示した刺激線分が. 引用文献. 両方位で十分に線分充填を引き起こす条件を満たしてい. Campbell & Andrew(1991)Images at the blind spot. Natu-. たことを意味する.(b)と(c)の結果は,同一条件下で視覚 系が水平方位の充填を優位に完成させることを示唆する.. re 353, 308 Kawabata( 1982) Visual information processing at the blind spot. Perceptual Motor Skill 55, 95-104. 全体的考察 3 つの実験を要約する.実験 1 では,線分の方位・幅・ 提示時間が充填に及ぼす効果について調べた.興味深い 結果は,充填に必要な最短線分の長さが垂直方位で水平. Le Grand(1967)Form and space vision. Bloomington Indiana University Pre. Mcilwain( 1996) An Introduction to The Biology of Vision. Cambridge Uni. 方位より有意に長いことであった.これは盲点の水平・. Michaels( 1960) Anisotropy and interaction of field of spa-. 垂直比を反映した結果ではなかった.実験 2 では,充填. cial induction. Journal of Experimental Psychology 60,. の異方性と空間分解能の異方性の関係を調べた.網膜投. 235-241. 射部位が充填に及ぼす効果をみた結果,充填の異方性は 空間分解能の異方性によるものではないことがわかった. 実験 3 では,別の刺激パタンでも充填の異方性が確認さ れ,視覚系は同一条件下で,垂直方位よりも水平方位の 充填を優位に完成させることがわかった. 本研究の結果だけから異方性の原因を解明することは できない.以下,異方性の原因について 2 つの可能性を. Motokawa(1950)Field of retinal induction and optical illusion. Neurophysiology 13, 414-426 Paradiso & Nakayama( 1991) Brightness perception and filling-in. Vision Research 31,1221-1236 Ramachandran & Gregory( 1991) Perceptual filling-in of artificially induced scotomas in human vision. Nature 350, 699-702. 考察する.まず,異方性を示す可能性のある報告に盲点. Tripathy & Levi( 1995) Perceived length across the physi-. 周辺の知覚空間の歪み問題(distortion)がある.これまでの. ological blind spot. Visual Neuroscience 12, 385-402. 研究では,歪み有りの報告(Campbell & Andrew, 1991)も.

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