長 崎 大 学 教 育 学 部 自然 科 学 研 究 報 告 第32号115〜129(1981)
九 州北西部 におけ る内湾堆 積物 のCHN組 成
近 藤 寛
長 崎大 学 教 育 学 部 地学 教 室 (昭和55年10月31日 受 理)
CHN Contents of the Bay Sediments, Northwestern Kyushu, Japan
Hiroshi KONDO
Department of Geology, Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki, Japan
(Received Oct. 31, 1980)
Abstract
Eighty three bottom sediment samples were collected from the Imari Bay, Omura Bay and Ariake Sea, northwestern Kyushu. These samples and the sand, silt and clay fractions were analyzed for the organic carbon, total hydrogen and total nitrogen. The following resurts were obtained.
1) In the sandy sediments, the clay fractions contained the C, H, N more than the sand and silt fractions. Conversely, in the muddy sediments, the clay
fractions contained the C, H, N less than the other fractions.
2) The contents of C, N in the sand fractions decrease with an increase in the amount of the sand. In the same way, the contents of C, N in the clay fractions decrease with an increase In the amount of the clay. It seems that the sand dilute the contents of C, H, N in the sand fractions and the clay also dilute them in the clay fractions.
3) The C/N ratio varied between 9.02 and 13.52 in the muddy sediments which contain a great amount of C, N, and between 7.52 and 10.38 in the sandy sediments. The C/N ratio of the sand, silt and clay fractions are generally higher in the muddy sediments than the sandy sediments.
116 近藤 寛
1.ま え が き
海底堆積物の粒度組成,生物遣骸群集,有機物組成などの特徴は,その沈積地域のあらゆる 海洋環境に支配されているので,それらの特徴をもって海洋環境特性の指標とする目的で,昭 和52〜54年度に鎌田泰彦(長崎大・教育学部)を代表者とするr西日本周辺大陸棚の堆積物と ベントスの定量的研究」(文部省科学研究費・一般研究B)が行なわれた。筆者は,その研究 分担者として主に有機物を構成するCHNの組成分析とその解析を行なった。
九州北西部の内湾において,河口付近,湾奥部の浅所,湾央部の深所に分布する堆積物は一 般にC HN量に富むことや,かつての炭鉱地帯に隣接する沿岸堆積物においては,石炭微粒子 の混入の影響により異常に高いC/N比を示すことなどを明らかにした。また,内湾堆積物の CHN量はEMERY and UcHuPI(1972)がすでに指摘したように堆積物の含泥量と正の相関 があることや,C/N比は一部の堆積物を除き,ARRHENIus(1950),BADER(1955)が指摘
したように含泥量が高い有機物に富む堆積物において高い値を示すことが認められた(鎌田・
近藤・堤,1980)。このことは,堆積物の有機物の性質を示すC H N量やC/N比が一般に堆 積物の粒度組成と関係することを示している。そこで異なった運搬型式で運ばれて沈積する 砂,シルト,粘土の各粒径区分に分類される砕屑性鉱物質の量を示す粒度組成と,それらに伴 うC H N組成の量的関係を明らかにすることが本研究の目的である。このため,全試料および 砂・シルト・粘土分として各粒径区分に分離した試料についてC HN含有量を求めて,それぞ れの区分における含有量の比較検討を行なった。
本研究を進めるにあたり,当初から研究上の指針を与えられ,終始御指導と御鞭達をいただ いている鎌田泰彦教授に厚く感謝の意を表する。堆積物に含まれる有機物の分析方法などにつ いては大阪市立大学理学部市原優子博士に
御教示をうけ,東北大学理学部佐々木清隆 。 博士に有益な御助言をいただいた。試料採
取の際には,西海区水産研究所の井上尚文 海洋部第1研究室長,佐賀県有明水産試験 場山下康夫氏,福岡県有明水産試験場藤田 孟男氏の方々に多くの便宜を計って頂い た。これらの方々に心から厚くお礼申し上
げます。
本研究では研究代表者の鎌田泰彦に与え られた文部省科学研究費(一般研究B,
:No.248029)を使用したことを明記する。
2.試料の採取
昭和52〜54年度の文部省科学研究費によ るr西日本周辺大陸棚の堆積物とベントス の定量的研究」においては,内湾水域のモ デル地域とした伊万里湾,大村湾,有明海 北部の干潟より堆積物を採取し,その底質 試料を室内実験に使用した(第1図)。伊
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129。
第1図位置図
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九州北西部における内湾堆積物のCHN組成 117 万里湾では,昭和53年3月9,10日に緯度・経度1 間隔の格子の交点を採泥地点とし,湾内 の19地点と湾外の11地点から30試料を採取した。大村湾においては,昭和53年3月20日に緯 度・経度2 間隔の格子の交点を採泥地点とし,湾内より21試料を採取した。両湾における採泥 には鎌田式ドレッジ型採泥器を用いた。有明海では,北部の広大な干潟に設けた測点より,昭 和53年5月22日の大潮時に佐賀県有明水産試験場によって99試料が採取され,また5月10日〜
7月7日までの間に福岡県有明水産試験場によって44試料が採取された。その合計143試料に ついては粒度分析を行ない,そのうち32試料を選び有機物分析に使用した。なお採取した底質 試料は,研究室にて5℃以下の冷蔵庫に入れ保存した。
3,分 析 方法
海底堆積物を異なる粒径ごとに分離し,有機物の測定を行なった例はいくつか報告されてい るが,浜口・太田・板谷・島田(1953)は駿河湾の底質中の有機炭素とケルダール窒素を測定 し,また浜田・浜田(1963)は東シナ海・黄海の底質中の有機炭素と強熱減量を測定した。小 野ご小野寺(1976)は宍道湖および中海の底質試料の炭素を測定する際,沈降法により粘土を 分離し,砂とシルトとの分離には200メッシュの舗を用いている。粘土分回収のためには,懸 濁液に硫酸アルミニウム(10%溶液)1−2mlを加え,凝集・沈澱させている。筆者はこれ
らの方法を参考にして,次の様な分析方法で試料の処理を行なった。
試料の懸濁液を250メッシュの箭に通し,泥を分離する。別にシュウ酸ナトリウムを加え分 散させた懸濁液から沈降法により粘土を分離する。泥と粘土の懸濁液に硫酸アルミニウム(10
%溶液)を加え泥,粘土を凝集・沈澱させ,上澄液を除去し3G4のガラスフィルターで泥,
粘土を回収した。全試料および回収した泥,粘土試料に5%塩酸を加え炭酸塩類を除去する処 理を行なった。なお有明海干潟の全試料は2mm以上の礫を除去したものであるが,伊万里湾,
大村湾の全試料は礫を含んでいる。
試料のC HN含有量の測定は,C H:Nアナライザー(柳本製作所MT−500S型)による乾式 燃焼法を用い,測定条件は鎌田・近藤・津留(1979)が行なった条件と同一である。
全試料および泥,粘土試料のC H N含有量から,次の式を用い計算によって砂とシルトの C含有量を求めた。HとNについても同じである。
砂(シルト)のC一全試料(泥)のC×10 縄のC×含泥(粘土)量
この式に用いた含砂量,含泥量は炭酸塩類を含んだ底質試料の粒度分析で得た値である。砂の C HN含有量を求める計算では,何個かの試料において計算値が負となるため,C HN含有量 が求められなかった。この原因として,含砂量・含泥量が炭酸塩類を含んだ試料の値であるこ と,全試料と泥を分離した試料とは別であるために生じた試料間の誤差,C HNアナライザー の分析誤差などが考えられ,今後検討を要する。なお,全試料から砂を分離して砂のC H:N含 有量の測定は今回は行なっていない。
4.堆積物の概要
堆積物の分類方法には,砂・シルト・粘土の構成比や各種の統計値が用いられる。なかでも 浅海域の砕屑性堆積物の分類方法として中央粒径値Mdに対する分級度So(σφ)とMdに対 する対称度Sk(αφ)の関係図から識別される堆積型によって堆積環境の設定が行なわれてい
工18 近藤 寛
る(INMAN and CHAMBERLAIN,1955;鎌田,1967)。この方法はそれぞれ特有な海況をもつ 内湾である伊万里湾,大村湾,有明海北部干潟の地域の堆積物の分類にも適用されている(鎌 田・近藤・西岡・山田・山下・藤田,1979;鎌田・近藤・堤,1980)。これらの湾の底質の概 要は次のようにまとめられる。
3つの内湾における堆積物に共通な堆積型は礫質のV型,砂質の∬,皿a型,泥質の皿,
皿b型,粘土質のIV型である。伊万里湾ではIV型,大村湾ではV,皿型,有明海北部干潟域で はV型の堆積物試料を欠いている。湾によって異なる海況特性のため,同一の堆積型であっ ても,それぞれの湾で堆積物のMdφ,σφ,αφの値の範囲はやや異なるが,皿a,皿,皿b,
lVの各型の境は共通なMdの4φ,6φ,8φでそれぞれ区分されている。
V型はMd<Oφの貝殻片に富む礫質堆積物である。砂質堆積物はMdが2〜3φ付近に集 まり,分級良好な■型とMdがほぼ2〜4φの範囲で分散し,分級が悪く,細かい泥の方に粒 度組成が著しく歪む(αφ<0)皿a型がある。泥質堆積物はMdが4ん6φで皿aの型に比べ 分級がやや良い皿:型とMdが6〜8φで分級が皿型より良く,正規分布に近い(αφ一〇)粒 度分布をなす皿b型である。IV型はMdが8φ以上のシルト質粘土であり,分級は皿b型より 良好となるが,対称度は正(αφ>0)を示す。
伊万里湾の湾外には皿a型の砂質堆積物が広く分布し,炭酸塩砕屑物に富む。湾内には皿b 型の泥質堆積物が広く分布する。大村湾の大部分の地域にはIV型のシルト質粘土が分布する が,湾口近くの潮流が強い所にはH,皿a型の砂質堆積物が分布する。有明海北部の干潟で は,東側の筑後川デルタ地域は主に∬,皿a,皿型の砂質〜泥質堆積物よりなるが,西側の鹿 島沖泥質平坦地にはII【b,IV型の泥質〜シルト質粘土の堆積物が広く分布する。
5.CHN量の測定結果
A 砂・シルト・粘土量と砂・シルト・粘土分のC H N量
鎌田・近藤・堤(1980)は,大村湾,伊万里湾において採取した炭酸塩類を含む砕屑性堆積 物の粒度組成,および,炭酸塩類を除去した試料で測定したC H N量を炭酸塩類の量で補正し て炭酸塩類を含む堆積物中のC H N量を求めた。そして,含泥量とC E N量は強い正の相関が あることを報告している。筆者は炭酸塩類を除去した大村湾,伊万里湾の試料のCHN量と炭 酸塩類を含む堆積物における含泥量の関係を検討したが,両者は正の相関があるのを認めた。
これは含泥量が高い泥質堆積物ではC HN量が高いことでも示される(第1表)。これは,炭 酸塩類を含む試料の砂・シルト・粘土量と炭酸塩類を除去した試料の砂・シルト・粘土量に大 きな相違がないことを示すと考えられる。
堆積物の砂・シルト・粘土量と砂・シルト・粘土分のC,N量の関係を調べた。伊万里湾,
有明海干潟の堆積物において,砂量とC量,砂量とN量は負の相関を示している(第2図)。
両湾の堆積物のシルト量とC量,有明海干潟堆積物のシルト量とN量は弱い正の相関を示す が,伊万里湾ではシルト量とN量は相関がみられない(第3図)。伊万里湾,大村湾,有明海 干潟堆積物の粘土量とC量,粘土箪とN量は負の相関を示す(第4図)。これらのことは,含 砂量が少ない泥質堆積物の砂のC,N量は,含砂量が高い砂質堆積物の砂のC,N量よりも高
く,含泥量が高い泥質堆積物の粘土のC,N量は含泥量が低い砂質堆積物の粘土のC,N量よ り低いことを示す。またシルト量が高くなるに従い,シルトのC,N量が高くなる傾向も示し
ている。
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伊万里湾,有明海干潟の堆積物におけ るシルト量とシルトのC,N量の関係
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一般に,細粒な堆積物には有機物が多いので,有機物量と含泥量,有機物量と中央粒径値を 関係づけた議論がなされている。また,岩渕(1962)が庄内沖の堆積物中の有機物は淘汰が悪 い堆積物に多いと報告したので,有機物量は,堆積物の分級度にも関係して変る堆積物の対称
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第8図 有明海干潟堆積物における全試料,シルト,粘.LのC量とN量の関係 (A)全試料 (B)シルト (C)粘土
度とも関係すると考えられる。このため堆積物の分類は,中央粒径値,分級度,対称度から識 別される堆積型を用いる方法で行なった。第2表に砂・シルト・粘土分のC H N量を平均値と して堆積型別に示す。各湾の砂・シルト・粘土分のC H N量を同じ堆積型で比較する。伊万里 湾のC HN量は全体的にみて有明海干潟のC H N量の約2倍であり,大村湾の粘土分のC,N 量は伊万里湾と有明海干潟の粘土分のC,N量の間に入る値を示している。このように砂・シ ルト・粘土分のCHN量は同じ堆積型でも地域ごとに異なっている。次に泥質と砂質の堆積物 における砂・シルト・粘土分のCHN量を比較する。伊万里湾,有明海干・潟の皿,皿a型の砂 質堆積物では粘土分のC H N量が最も高く,伊万里湾の皿b型,有明海干潟の皿,皿b,IV型 の泥質堆積物では砂に含まれるCHN量が最も高い。
砂に含まれるC H N量は伊万里湾,有明海干潟では大部分が豆→皿a一>皿→皿b一〉IV型の堆 積型の順に増加し,皿b,W型のC量は著しく高い。粘土に含まれるCEN量は3つの湾では 大部分が豆→皿a→皿→皿b一>IV型の堆積型の順に減少する。シルトのCHN量は伊万里湾 では丑→皿a}>皿型の順に減少し,皿b型で高くなり,有明海干潟ではH型よりIV型に至るま で殆んど増加を続ける。次に砂・シルト・粘土分のC量とN量の関係を図示する。図には各試 料の堆積型を表示する記号を入れている。伊万里湾,有明海千潟における全試料のC量とN量 の関係図において,且型の砂質堆積物に含まれるC,N量は最も少なく,皿b型の泥質堆積物 に含まれるC,N量は最大である(第7図A,8図A)。全試料のC,N量の図と同様に堆積 型で示した試料がほぽ同じ順序で配列しているのは,有明海千潟堆積物では砂とシルトのC,
N量の図(第6図B,8図B)であり,伊万里湾積の堆物では砂のC,N量の図(第5図)であ る。これは全試料のC,N含有量の特徴は砂,シルトのC,N含有量に現われることを示して いる。両湾の皿b,IV型の泥質堆積物は,全試料,シルト,粘土のC,N量の図上でおおよそ
九州北西部における内湾堆積物のCHN組成 123
C量,:N量が等しい所に位置するが砂のC,N量の図上ではC量,N量が共に高い所に位置し
ている。
伊万里湾では全試料,砂,シルト,粘土のC,N量の関係図に,皿b型の泥質堆積物の一部 にC量が目立って高い試料が認められる。これは,かって操業した炭鉱の洗炭汚水により運ば れた石炭微粒子の影響を示している。
C 全試料のC H:N量を構成する砂・シルト・粘土分のCHN量
全試料のC H N量は,堆積物の砂・シルト・粘土分のC EN量と砂・シルト・粘土量により 構成されるので,砂,シルト,粘土のC量に砂・シルト・粘土量をそれぞれ乗じて全試料のC 量を構成する砂,シルト,粘土のC量を求めた。N量についても同様に計算を行なった。第3 表に各堆積型の試料別に求めた平均値を示した。伊万里湾,有明海干潟の全試料のC,N量を 構成する砂,シルト,粘土のC,:N量を三角ダイヤグラムに表示した(第9図)。第3表にお いて,II,皿a型の砂質堆積物のCHN量を砂のCHN量が主に構成するが,シルト,粘土の CHN量が構成する割合は比較的高い。皿1,皿b型の泥質堆積物のCH:N量を伊万里湾の皿型 をのぞき,砂のC H N量が構成する割合は比較的低く,シルトと粘土分のC H:N量が大部分を 構成している。いずれの堆積型においても,全試料のC HN量を粘土のCが25.78〜65.08,
粘土のHが19.96〜65.95,Nが23.60〜65.67彪を構成する。
n,皿a型の砂質堆積物では,シルト・粘土量は低いが,全試料のC,N量を構成するシル ト・粘土分のC,N量は高く,皿型の泥質堆積物では粘土量は低いが,粘土のC,N量の構成 する割合は高い(第9図)。
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第9図 伊万里湾,有明海干潟の堆積物のSand−silt−clay ratioと全試料の C,N量を構成する砂・シルト・粘土分のC,N量
(A)(D)Sand−silt−clay ratio (B)(E)C量 (C)(F)N量
124 近藤 寛
第3表全試料のCHN量を構成する砂・シルト・粘土のCHN量の平均値(%)
地 堆積型 Organic C Total H Total N
域 (試料数) Sand Silt Clay Sand Silt Clay Sand Silt Clay
伊 V (1) 85.56 14.44 一 『 一 一 一 一
万 II (2) 29.95 42.52 27.54 53.82 18.88 27.31 46.14 13.65 40.21 m a(7) 54.42 19.28 26.29 57.22 19.78 22.90 53.06 18.63 28.31 里 皿 (4) 39.98 20.65 42.38 33.63 25.06 41.32 29.31 19.39 48.79
湾 HI b(16) 13.67 51.35 34.96 6.86 49.91 43.23 7.80 46.63 45.57
大 II (1) 74.22 25.78 80.04 19.96 76.40 23.60
村 皿a(1)b(4) 67.88 5.46
32.12 4.54
68.81 5.32
31.19 4.68
67.18 4.57
32.82 5.43
湾 W (15) 34.92 65.08 34.05 65.95 34 33 65.67
有明 II(8)
a(9)
44.48 8.14
17.73
8.56 37.80
3.30 68.66
4.25 11.26
1.27 20.09
4.48 39.12
4.72 14.25
0.85 46.63
4.43 海 皿 (5) 19.94 41.52 38.54 15.27 43.91 40.82 6.19 44.09 49.72
干潟 皿b(9)
V (1)
11.96
.02 42.05
8.43 45.99
8.55
5.85 40.94 53.21 3.87 38.64 57.49
D C/N比(炭素率ン
第1,2表に全試料および砂・シルト・粘土のC/N比を堆積型別に平均値で示した。伊万 里湾,大村湾の砂質堆積物のC/N比は7.52〜9.31であり,泥質堆積物の9,02〜12,42に比べ 低い。有明海干潟では,豆型の砂質堆積物のC/N比は8.59であり,皿a,W型の砂質と泥質 堆積物のC/N比10.38〜13.52より低い。全体として,C,N量が高い堆積物の堆積型のC/N 比は高い(第1表)。
砂と粘土のC/N比はゴ全試料にみられた傾向と同じく砂質堆積物では低く,泥質堆積物で は高い。シルトのC/N比は9.23〜17.90の範囲にあり,堆積型による変化の傾向が認められ
ない。
6.考
察九州北西部の内湾堆積物において,砂の量が増加するに従い,砂の中のC,N量は減少し,
粘土量が増加するに従い粘土のC,N量は減少する。シルト量が増加すれば,シルトのC,N 量は増す傾向が認められた。浜口・太田・板谷・島田(1953)が粗粒な堆積物中の有機物は,
多量の無機性沈積物によって著しく稀釈されていると指摘したように,砂量の増加は砂の中の 有機物を稀釈し,その結果として砂に含まれるC,N量を減少させると考えられる。また多量 の粘土粒径の鉱物が供給されて粘土量が増加すれば,有機物は稀釈されるため粘土のC,N量 が減少すると考えられる。これにより砂質堆積物の粘土のCHN量は,泥質堆積物の粘土のC HN量より高いことの一部が説明づけられると考えられる。
伊万里湾,有明海干潟における全試料と砂・シルト・粘土分のC量とN量の関係において,
全試料のC,N含有量の特徴は砂,シルト中のC,N含有量に現われている。このことは,小 野・小野寺(1976)が,堆積物のC量を支配し,地域性を反映させるのはシルト中のC量であ
九州北西部における内湾堆積物のCHN組成 125 ると報告したこととほぼ一致すると考えられる。
全試料のC HN量を規定するのは,堆積物を構成する砂・シルト・粘土量と砂・シルト・粘 土分に含まれるC H N量であるので,堆積型の異なる堆積物では,全試料のC H N量に対して 砂・シルト・粘土のCHN量が構成する割合は異なると考えられる。伊万里湾,有明海干潟に おいて,砂質堆積物のC,N量は主に砂のC,:N量が構成するが,シルト・粘土のC,N量に 影響される。泥質堆積物のC,N量は,主にシルト・粘土のC,N量が構成し,砂のC,N量 の影響は一般に少ない。このように堆積物の粒度組成が異なれば,全試料のC,N量を異なっ た割合で砂,シルト,粘土のC,N量が構成する。粘土のCHN量はいずれの堆積型において も約20%以上の率で全試料のCHN量を構成する。このことは堆積物中の有機物に対する粘土 の有機物の寄与が大きいことを示している。
伊万里湾と有明海干潟における皿b型の泥質堆積物より分離した砂のC/N比が目立って高 いものがある。これは両湾とも炭鉱の洗炭汚水により運ばれた石炭微粒子の影響を受けた結果 生じた高いC量のためと考えられる。また,流れの静かな湾奥部では河川から供給された植物 破片が泥と共に沈積したことも関係するであろう。両湾の泥質堆積物を250メッシュの舗に通 すとしばしば箭上に多くの植物破片が残るのが観察されることがある。また有明海沿岸の泥質 な干潟堆積物のコアー調査においても植物破片がかなり普通に観察されている(鎌田・近藤・
津留,!979)。
7.ま と め
伊万里湾,大村湾,有明海干潟の堆積物および堆積物より分離した砂・シルト・粘土分の C HN組成,ならびに,これらのCHN組成と砂・シルト・粘土量で示される堆積物の粒度組 成との関連性を検討した。その結果を要約すると次の通りである。
1) 伊万里湾,有明海干潟の異なる粒度組成をもつ堆積物中のC,N量を比較すると,泥質 堆積物の全試料,砂・シルト分のC,N量は砂質堆積物の全試料,砂・シルト分のC,N量よ
りそれぞれ高い。しかし,泥質堆積物より分離した粘土のC,N量は,砂質堆積物の粘土の C,N量より低い。
2) 堆積物の砂の量が増加するに従い,砂の中のC,N量は減少し,堆積物の粘土量が増加 するに従い,粘土のC,N量は減少する。この原因は,前者は堆積物中の多量の砂による砂の 中の有機物の稀釈,後者は多量の粘土による粘土の中の有機物の稀釈であると考えられる。こ のことより,砂質堆積物の砂のC HN量は低く,その粘土のC HN量は高いことが一部説明さ
れる。
3) 砂質堆積物のC,N量は主に砂のC,N量が構成するが,シルト,粘土のC,N量がそ れを構成する割合は比較的高い。泥質堆積物のC,N量はシルトと粘土のC,N量が大部分を 構成するが,砂のC,N量がそれを構成する割合は一般に低い。いずれの堆積物においても全 試料のC,N量に対し粘土のCが25.78〜65.08彩,N量が23.60〜65.67%を構成している。
4)砂質堆積物のC/N比は,全試料3.52〜IO.38,砂6.18〜10.10,シルト9.23〜17.90,粘 土7.68〜8.71であり,泥質堆積物におけるC/N比の値,全試料9.02〜13.52,砂9.07〜47.93、
シルト10。24〜14.44,粘土8。08〜9。14よりいずれも低い。全試料,砂,シルト,粘土におい て,それぞれC,N量が高い泥質堆積物のC/N比は一般に高い。
126 近 藤 寛
参 考 文 献
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九州北西部における内湾堆積物のCHN組成 127 付表1 伊万里湾堆積物のCHN組成
〈全試料> 〈礫・砂〉
Elementarycomposition% Total Elementarycomposition% Tota1 Org.C 地点 Organic Total CHN Org.Cota1N 堆積型 地 点 Organic Total CHN Tota1N
C H N % C H N %
1 1.98 0.61 0,219 2,809 9.04 IIla 1 1.76 0.55 0,184 2,494 9.57
2 0.48 0.19 0,067 0,737 7.16 II 2 0.21 0.11 0,034 0,354 6.18
3 1.32 0.41 0,170 1,900 7.77 ma 3 0.81 0.29 0,110 1,210 7.36
4 1.08 0.39 0,137 1,607 7.88 皿a 4 0.53 0.26 0,067 0,857 7.91
5 2.08 0.57 0,266 2,916 7.82 ma 5 1.61 0.42 0,208 2,238 7.74
6 1.95 0.53 0,233 2,713 8.37 m 6 1.24 0.32 0,131 1,691 9.47
7 1.30 0.45 0,204 1,954 6.37 V 7 1.17 0.42 0,188 1,778 6.22
8 1.64 0.44 0,189 2,269 8.68 HI 8 1.16 0.29 0,120 1,570 9.67
9 2.39 0.62 0,282 3,292 8.48 III 9 1.81 0.40 0,191 2,401 9.48
10 1.63 0.45 0,184 2,264 8.86 IHa 10 1.14 0.33 0,120 1,590 9.50
11 0.71 0.20 0,062 0,972 11.45 II 11 0.18 0.15 一 『 一
12 2.47 0.81 0,214 3,494 11.54 Hlb 12 6.59 0.26 0,098 6,948 67.25 13 3.07 0.84 0,222 4,132 13.83 IIlb 13 9.83 O.78 0,317 10,927 31.01 14 2.90 0.84 0,203 3,943 14.29 皿b 14 19.98 4.25 0,559 24,789 35.74 15 5.19 1.05 0,296 6,536 17.53 mb 15 59.64 6.66 1,881 68,181 31.71
16 4.72 1.01 0,305 6,035 15.48 Illb 16 22.88 5.46 0,992 29,332 23.07 17 3.32 0.90 0,251 4,471 13.23 IIlb 17 24.95 1.27 0,787 27,007 31.70 19 2.77 0.78 0,216 3,766 12.82 IIlb 19 2.79 0.48 0,179 3,449 15.59 20 1.99 0.58 0,175 2,745 11.37 Hla 20 1.66 0.47 0,139 2,269 11.94 21 2.92 0.81 0,181 3,911 16.13 HIb 21 5.13 0.71 0,159 5,999 32.26
22 2.92 0.79 0,213 3,923 13.71 皿b 22 2.54 0.28 0,067 2,887 37.91
23 3.09 0.87 0,339 4,299 9.12 IHb 23 4.35 0.30 0,378 5,028 11.51
24 2.53 0.74 0,271 3,541 9.34 111a 24 2.26 0.63 0,228 3,118 9.91
25 3.51 1.02 0,366 4,896 9.59 IIlb 25 14.44 3.40 0,588 18,428 24.56
26 3.25 0.94 o.31≧δ 4,518 9.91 IIlb 26 9.07 1.08 一 一 一
27 3.40 0.92 0,306 4,626 11.11 IIIb 27 5.55 一 一 一 一
28 2.63 0.72 0,214 3,564 12.29 皿 28 2.28 0.57 0,143 2,993 15.94
29 3.67 0.82 0,278 4,768 13.2σ 皿b 29 5.73 0.61 0,228 6,568 25.13
30 2.00 0.81 0,227 3,037 8.81 Hlb 30 1.06 0.88 一 一 一
31 2.06 0.80 0,243 3,103 8.48 Hlb 31 1.50 1.14 0,347 2,987 4.32
〈シルト〉 〈粘土>
Elementarycomposition% Total Elementarycomposition% Total
地 点 Organic Tota1 CHN Org.CotalN 地 点 Organic Total CHN Org.C
C H N % C H N % Tota1N
1 1.89 0.53 0,231 2,651 8.18 1 4.42 1.30 O,555 6,275 7.96
2 1.82 0.77 0,198 2,788 9.19 2 5.35 1.33 0,696 7,376 7.69
3 2.35 0.65 0,275 3,275 8.55 3 5.41 1.36 0,682 7,452 7.93
4 1.76 0.56 0,208 2,528 8.46 4 6.14 1.43 0,806 8,376 7.62
5 1.06 0.53 0,122 1,712 8.69 5 6.04 1.41 0,777 8,227 9.06
6 1.22 0.44 0,148 1,808 8.24 67 5.78 1.42 0,743 7,943 7.78
一 一 一 一 一
7 一 一 一 一 一
8 0.68 0.35 0,077 1,107 8.83 8 5.53 1.30 0,703 7,533 7.87
9 1.60 0.54 0,186 2,326 8.60 9 5.61 1.34 0,720 7,670 7.79
10 2.22 0.61 0,257 3,087 8.64 10 5.22 1.37 0,655 7,245 7.97
11 3.61 0.72 0,277 4,607 13.03 11 5.89 1.33 0,768 7,988 7.67
12 1.90 0.74 0,163 2,803 11.66 12 2.63 0.97 0,297 3,897 8.86
13 2.69 0.78 0,191 3,661 14.08 13 2.56 0.99 0,265 3,815 9.66
14 2.60 0.69 0,167 3,457 15.57 14 2.49 0.96 0,257 3,707 9.69
15 5.01 0.91 0,232 6,152 21.60 15 3.42 1.05 0,330 4,800 10.36
16 4.57 0.75 0,237 5,557 19.28 16 3.67 1.11 0,364 5,144 10.08
17 2.34 0.71 0,140 3,190 16.71 17 3.50 1.16 O,389 5,049 9.00
19 2.40 0.72 0,147 3,267 16.33 19 3.53 1.17 O,393 5,093 8.98
20 2.49 0.71 0,191 3,391 13.04 20 3.76 1.20 0,438 5,398 8.58
21 2.51 0.74 0,154 3,404 16.30 21 2.99 1.15 0,300 4,440 9.97
22 2.77 0.74 0,187 3,697 14.81 22 3.49 1.20 0,355 5,045 9.83
23 2.46 0.78 0,262 3,502 9.39 23 4.62 1.31 O,561 6,491 8.24
24 2.42 0.76 0,267 3,447 9.06 24 4.16 1.25 0,494 5,904 8.42
25 2.77 0.76 0,271 3,801 10.22 25 4.13 1.29 0,499 5,915 8.28
26 2.60 0.70 0,275 3,575 9.46 26 3.83 1.30 0,464 5,594 8.25
27 2.87 0.78 0,243 3,894 11.81 27 3.89 1.24 0,452 5,582 8.61
28 2.31 0.47 0,151 2,931 15.30 28 3.56 1.23 0,401 5,191 8.88
29 3.21 0.61 0,202 4,022 15.89 29 3.66 1.22 0,414 5,294 8.84
30 2.17 0.62 0,218 3,008 9.95 30 2.14 1.08 0,289 3,509 7.41
31 1.96 0.59 0,202 2,752 9.70 31 2.27 1.08 0,292 3,642 7.77