播磨灘、大阪湾、紀伊水道の海底表層堆積物中の粘
土鉱物組成
著者
青木 三郎
雑誌名
東洋大学紀要 自然科学篇
号
54
ページ
161-166
発行年
2010-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00004079/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaAbstract
The total 69 surface sediment samples from Harima-Nada, Osaka Bay and Kii-Strait are analyzed by X-ray diffraction method for clay mineral investigation. Chlorite and illite are the most abundant constituent, kaolinite is next abundant and smectite is the least one in the four clay mineral assemblage in respective study area. However, smec-tite abundance tends to decrease from Harima-Nada toward Osaka Bay and Kii-Strait where the distribution by granite and its clastic rocks are less influencial. Kaolinite dis-tribution shows a similar tendency to smectite.
キーワード:粘土鉱物組成、X 線回折計、播磨灘、大阪湾、紀伊水道
はしがき
筆者らはかって論文の中で記載できなかった海底堆積物中の粘土鉱物組成データについ てのみ報告したことがある(例えば、Oinuma and Aoki, 1976)。その分析方法は一貫し ている(Oinuma, 1968)。今回、論文としてもデータとしても報告していない、播磨灘、 大阪湾、紀伊水道で採取された 3 海域の表層堆積物中の粘土鉱物組成データを報告する。 このデータが関連する研究者の参考資料となれば幸いである。
サンプルと分析の方法
今回分析に供した 3 海域のサンプル採取地点を Fig. 1 に示す。播磨灘から 43 サンプル、 大阪湾から 10 サンプル、紀伊水道から 16 サンプル合計 69 地点の表層堆積物である。す べてのサンプル処理方法と分析方法はこれまで筆者が実施してきた内容と同じである。そ播磨灘、大阪湾、紀伊水道の海底表層堆積物中の
粘土鉱物組成
青 木 三 郎
Clay Mineral Composition in Surface Sediments of
Harima-Nada, Osaka Bay and Kii-Strait
162 青 木 三 郎
の具体的な記述は和文では(例えば青木、2004)英文では(例えば Oinuma and Aoki, 1977)に紹介した。
分析結果
播磨灘 43 地点から採取されたサンプルを分析した。分析結果を Table 1 に示した。同定され た 4 種類の粘土鉱物の平均含有率はクロライトとイライトがほぼ同率の 38%と 37%で、 カオリナイトが 17%、スメクタイトは最小含有率の 8%である。 大阪湾 今回の分析サンプルは、前回報告した(青木ら、1990)サンプルとは異なる別の 10 地 点から採取されたサンプルである。分析結果を Table 2 に示した。同定された 4 種類の平 均含有率は、クロライト 41%、イライト 39%、カオリナイト 14%、スメクタイト 6%で ある。 紀伊水道 16 地点から採取されたサンプルを分析した。分析結果を Table 3 に示した。各粘土鉱Table 1 Clay mineral composition in surface sediments of Harima-Nada
播磨灘 Smectite Chlorite Illite Kaolinite
1 0% 48% 42% 10% 2 5 47 38 10 3 1 45 35 9 5 6 40 29 25 6 0 39 41 20 7 3 41 32 24 8 6 44 37 13 9 4 47 39 10 10 2 49 40 9 11 10 41 35 14 13 17 23 32 28 15 10 29 34 27 17 13 30 36 21 18 0 38 29 33 19 9 37 30 23 20 9 37 31 23 21 5 40 34 17 22 12 37 34 17 23 12 34 40 14 24 6 48 35 11 25 9 35 38 18 26 5 31 38 26 29 6 38 37 19 30 8 9 47 36 31 6 40 39 15 32 13 23 36 28 33 11 37 36 16 34 7 42 35 16 35 9 41 36 14 37 5 35 39 21 38 9 41 36 14 39 9 36 39 16 40 0 53 40 7 41 0 51 36 13 42 8 42 36 14 43 7 46 36 11 44 6 46 38 10 46 11 24 46 19 47 15 34 37 14 48 13 37 34 16 49 6 38 40 16 51 13 30 40 17 52 17 23 41 19
164 青 木 三 郎 物の平均含有率はクロライトとイライトが同率の 46%で、次にカオリナイトが 7%、ス メクタイトは最小の 1%である。
結果に対する考察
播磨灘から 43 サンプル、大阪湾から 10 サンプル、紀伊水道の 16 サンプルの合計 69 サンプルの分析結果では、3 海域ともクロライトとイライトが最高含有率を示し、次にカ オリナイト、スメクタイトは最小含有率を示した。クロライトやイライトの砕屑性粘土鉱 物がこれらの海域で最高含有率を示したことは、周辺の地質、土壌特性と密接に関係して いると考えられる。すなわち、クロライトとイライトは堆積岩類と一部変成岩類に由来し ている。一方、カオリナイトが播磨灘で 17%と日本周辺の海底堆積物中よりも含有率がTable 2 Clay mineral composition in surface sediments of Osaka Bay.
大阪湾 Smectite Chlorite Illite Kaolinite
55 12% 32% 37% 19% 62 10 35 34 20 65 13 35 32 20 68 8 39 34 19 70 5 47 39 9 71 3 46 42 9 73 5 39 42 14 75 3 44 42 11 76 2 43 43 12 82 2 44 45 9
Table 3 Clay mineral composition in surface sediments of Kii-Strait.
紀伊水道 Smectite Chlorite Illite Kaolinite
85 0% 45% 50% 5% 87 0 54 45 5 89 0 52 42 6 90 0 49 45 6 91 0 49 45 6 92 0 44 50 6 93 0 46 47 7 94 0 42 51 7 98 10 38 43 9 99 0 42 47 11 100 0 54 38 8 102 0 43 52 5 104 0 42 50 8 105 0 50 44 6 106 0 51 43 6 107 0 49 46 5
高いのは、瀬戸内海周辺に分布している花崗岩及びその砕屑物に由来した結果と考えられ る。それが大阪湾では 14%、紀伊水道では 7%と含有率が低くなっているのは花崗岩類 由来の影響が小さくなっていることを示していると考えられる。スメクタイトが 3 海域と も最小含有率を示し、特に紀伊水道では含有率が 1%となっているのはこの海域の粘土鉱 物組成のきわだった特徴である。大阪湾では 6%と幾分高めとなっているが、先に青木ら (1990)が大阪湾全域から採取した 41 サンプル中の平均含有率(10%)に比べても低い。 一般的に、スメクタイトは火山岩及びその砕屑物に由来する粘土鉱物で、3 海域で最小の 含有率を示しているのは後背地からの供給が少ないことに加えて、クロライトおよびイラ イトによる薄め効果によると考えられる。筆者(2009)が最新のデータとして報告した 青森県陸奥湾堆積物 69 サンプル中のスメクタイトの平均含有率は、同定された 4 種類中 最も高く 48%で、これは陸奥湾をとりまく地質環境が火山岩およびその砕屑物に強く影 響されていることを指摘した(青木、2009)。また、同湾のカオリナイト含有率も日本周 辺海底堆積物中よりも若干高く(平均含有率 14%)、これも火山地域におけるスメクタイ ト化していないカオリン鉱物が影響していることが考えられる。 3 海域で播磨灘サンプルが最もカオリナイト含有率が高い(平均含有率 17%)のは、 播磨灘周辺に広く分布する花崗岩およびその砕屑物に由来した結果と考えられる。
まとめ
播磨灘、大阪湾、紀伊水道の互いに隣接する 3 海域の海底堆積物中の粘土鉱物組成を分 析した。得られた結果はクロライトとイライトがほぼ同率の平均含有率で最高含有率を示 し、次に、カオリナイト含有率は、播磨灘、大阪湾、紀伊水道サンプルの順で低い。スメ クタイト含有率もカオリナイト含有率と同じく播磨灘、大阪湾、紀伊水道サンプルの順に 低い。これらの結果から、これら 3 海域の海底堆積物中の粘土鉱物組成は、堆積岩、一部 変成岩とそれらの砕屑物に由来したクロライトとイライトが 92%~75%を占めている。 一方、カオリナイト及びスメクタイト含有率が播磨灘、大阪湾、紀伊水道の順にその含有 率が減少しているのは、花崗岩及びその砕屑物に由来する影響の強弱の差によることが考 えられる。 謝辞:今回及びこれまでの研究を進めるにつき、東洋大学名誉教授の生沼 郁先生の変わ らぬご指導・ご鞭撻に心から感謝いたします。また、今回の 3 海域の海底堆積物サンプル は元通産省地質調査所の有田正史博士から供与されたものである。ここに記して感謝申し 上げます。 文 献 青木三郎・生沼郁・星野透(1990)大阪湾堆積物中の粘土鉱物の分布。東洋大学紀要(自然科学 篇)、第 34 号、1~18. 青木三郎(2002)海底堆積物中の粘土鉱物─近海及び遠洋堆積物を例として─。粘土科学、第166 青 木 三 郎
42 巻、2 号、97-102.
青木三郎(2009)青森県陸奥湾表層堆積物中の粘土鉱物の分布。東洋大学紀要(自然科学篇)、 53 号、127~138.
Oinuma, K.(1966)Method of quantitative estimation of clay minerals in Sediments by X-ray diffraction analysis. J. Toyo Univ.(General Educ.), 10, 1-15.
Oinuma, K. and Aoki, S.(1976)Analytical data on clay mineral compositions of the surface sediments samples from the seas around the Japanese Islands. J. Toyo Univ.(General Educ.), 19, 7~21.