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経済発展の初期条件と構造的パラメーター

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経済発展の初期条件と構造的パラメーター 187

経済発展の初期条件と構造的パラメーター

 およそ低開発地域の諸問題を取扱っ一ている理論的,実証的研究において,経済発展の地 域的格差(ないし国際的格差)幽という事実について深い関心を示していないものはないで あろう。たしかに今日ほど世界経済の開発問題に関連して国際的ないし地域的経済不平等 の認識と関心の深い時代はないといってもよい。ところで,近代経済学自体は,この経済 発展の格差という問題について十分の説明的武器を提供したであろうか。周知のごとく,

ケインズ革命を経験した現代の巨視的経済学論は,長;期成長の理論分野において飛躍的発 展を示している。しかし,その多くの成長理論は,高度に成長した経済における恒常的均 衡成長の条件吟味に重点をおいており,そこから低開発地域の成長問題にたいする政策的 含意をくみ取る・ことはきわめて困難である。この問題に対する近代理論家の無関心につい ては既に経済理論家の側からも若干の批判があたえられている。例えば,ハ{ベルモーは つぎのように述べている。 「われわれが現在の国際統計によってつなぎうる世界経済の画 像においては,おそらく最も著しい特徴は,経済的格差ということである。i数百万のひと びとが餓死する地域がある一方,このような経験は既に遠い昔に忘れられてしまっている 地域がある。その生産力が道具や技術的改良の不足によって阻害されている地域があり,

また,おびただしい図書や雑誌の量が発行されている国があるのにたいして,他方国民大 衆が無学文盲である国がある。また,他の地域のひとびとよりも,動物の方がより十分な 医薬上の手当を受けているような地域がある。」また,ハーベルモーは「相隣接する国々で        (1)

もその生活水準には数世紀にわたって著しい差異があった。ある国では,一人あたりの所 得が過去百年間に二倍になり三倍になったのにたいして,他の国では僅かに上昇レたか或 いは沈滞していた。しかるに,今日においてなお短期均衡とか進歩した工業国の国民所得 の10%の減退というような変動を分析する書物が多い割合に,上のような不可思議な現象 については近代経済理論はそれほど多くの頁をさいていないのである。一般的経済進歩と いう広般な問題に関連する初期経済理論家達の大胆かつ構想に富んだ思索は,少なくとも 最近にいたるまでは近代的分析上の洗練という形では,比較的結実するところがなかった のである。」同じ意味の批判はまたミユルダールによってもあたえられている。「経済理論

    (2)

一般は,大きなそして益々大きくなる経済的不平等や,低開発ならびに開発の動態的過程 の現実を理解するように発展しなかった。経済理論はまったく生産要因の相対的欠乏の大 きな格差や,生活水準及び全体の文化的構成の著しい格差に対応する生産技術問の,また

(2)

事実,生産力函数それ自体の間の大きな格差に関連した問題に焦点を合わせることがなか った。」この批判はまた成長問題に関する伝統的な均衡理論の応用にたいするミュルダール   (3)       

批判に通ずる。後進諸国の低所得水準均衡について新マルサス的な成長モデルを展開した      (4)

ラィベンシュタインもまたつぎのように述べている。rかような顕著な事実 (経済的不平 等)があるにもかかわらず,また一部のひとびとがなぜ終始飢餓に瀕しながら生活せねば ならないかを理解しようとする世間一般の人道主義的関心があるにもかかわらず,最近10 年間まで近代の経済学者はこのジレンマをおしはかることについてほとんどなすところが なかったことは興味ある問題である。このような軽視は,ひとつには,人間生活の他の側 面と同じように,経済学的研究も流行に左右されるという事実によるものであった。また ひとつには,この問題が本来的に著しく困難だという事実のためでもあったであろう。」わ        (5)

れわれもまた経済発展の格差という問題についての体系的な理論研究の貧困は,この問題 の多面的な性格に由来する困難から派生したものと理解したい。

 経済発展の地域的格差は,それぞれの地域が示す時間的成長パターンの差異による。さ らに,成長パターンはそれぞれの地域がもつ構造的パラメーターと歴史的時点において経 験した初期条件の差異によって決定される。

 この小論の目的は経済発展のプロセスについてもつ初期条件と経済的構造のパラメータ ーの意義を吟味することにある。

 経済成長の動学的モデルにおいては,通常,初期条件は観察の出発点t誠0における地 域の経済的特質によって決定される。その資本ストックの量と質,自然資源の量と質,労 働力の大きさとその質,社会的文化的特性等によって示される。これらはわれわれの経済 史の出発点において,その地域が過剰人口であるか過少人口であるかを反映し,他の資源 にたいして相対的に高度の熟練と技術をもつかどうか,或いはまた高い資本労働比率をも っているかどうか,経済発展を可能ならしめる高い水準の文化的制度的要因をもっている かを反映している。

       (6)

 いま動学的モデルの解について考えている。構造的パラメーターを所与として初期条件 と動的解との関係はつぎのように示される。

 ① 体系は一意的な定常解をもつ。

初期条件によって発生せしめられる一般的解は安定解と不安定解とに区分される。安定解 の漸近線的性質は初期条件に依存しない。即ち,かかる体系における二つの経済が異なっ た初期条件をもつならば,安定解であれば,同一の定常的水準に向って漸次近づく。

 ②体系は複数的な定常解をもつ。

初期条件によって発生せしめられる一般的解はいろいろなクラスに分類しうる。あるもの は安定解から,他のものは不安定解からなる。初期条件の値にしたがって解は安定解のク

(3)

経済発展の初期条件と構造的パラメーター 189 ラスに属したり,不安定解のクラスに属したりする。そこでこの体系における二つの経済 が初期条件を異にすれば,それに対応して異なった発展のパターンを示すことになるb  ③体系はなんらの定常解をもたない。

この場合でさえ,一・寛解の中のあるものは安定的でもありうるし,他は不安定的でありう る。以上の観察から,二つの経済が初期条件においてのみ相違する場合でも,きわめて異 なった発展パターンを示すかも知れないことが明らかである。初期条件の差異によってき わめて相違した歴史的行動のタイフ。を示すかもしれない。初期条件の差異のみによって現

実の燵的繍と低開発的経済の間における繍的格塾謝るに足るものである♂・

 構造的パラメーターはハーベルモーによってつ書のように類型化される。

      (8)

 ① 自然的条件ともいうべきもので,:地域の広さ,利用可能な自然資源,気候条件を示 すパラメーター。

 ② 投入産出の技術的関係を示すパラメーター。

 ③人間の態度と行動を述べるパラメーターで,これには労働性向,消費性向,人口増 殖性向のごとき内生的行動の特徴を示すパラメーター。

 ④他の地域の行動と決定によって受ける影響を示すいわば外生的なパラメーター。

 構造的パラメーターは客観的な経済的可能性に対する社会の量的反晦ヵを測る。勿論?

それは体系が異なるごとに変化するから,それに対応して人間行動の非類以性を皮映する。

これらの経済的反応における差異は亦t=Ql以前に生じたところの発展的過程によるもの でもある。即ち,この経済的反応の笹野は当該地域の経済的,社会的歴史における過去の 差異に由来する。この観点では,過去において経済に与えられた刺戟はまた,将来の刺戟 に』たいする経済の反応のタイプを条件づけるものと考えることができる。それ故に,経済 が過去においてもっていた経済的且物理的環境の性質それ自体がまた新しい環境に対する 量的且質的反応の仕方に影響するであろう。この点で地域間において構造係数が異なる理 由を説明せんとするならば,それは,経済学と歴史,社会心理学,人類学,社会学,政治 学との統合を必要とすることは明らかである。

 初期条件において差異がなくとも,経済の行動的パラメーターに差異がある場合には,

勿論,経済発展の径路もまた異なるであろう。構造係数は経済変数が定常状態においてと る数値に影響するだけでなく,動学的解の安定性,その循環的変動の振幅,その均衡解の 一意性にも影響する。

 以上のように経済発展の動学的モデルがあたえられたとき,もしその体系の解がいろい ろな構造的パラメーターの値と初期条件とによって一意的にきまるならば,経済発展の地 域的格差はかかる構造的パラメーターと初期条件の差異の結果として生ずるものと考える

ことができる。われわれはまず構造的パラメーターの差異によって経済発展度の格差を生 ずるところの簡単なモデルを示そう。第一地域の資本成長はつぎの式で示される。

      K1=・Alealt十B1      (1)

(4)

第二地域の資本成長はつぎの式で示される。

      K2麟A2ea2t十B2       (2)

ここでABはそれぞれ正の常i数を示す。またa1>0,a2>0とする。さらにこれはa1>

a,二つめ地域の貯蓄性向と考えてよい。この行動・性向を示すパラメーターの僅少な差異 も時間的経過とともに益々 (K:1−K2)の差を大ならしめることは明らかである。グラフ を使用しで確認しよう。

Kt轄

C1 E1

A1

E2

。£2

B2

D乳

Kエ

』K2

O K1。 K。晒1 K・・K。      Kc

異によるものである。これだけの観察でほ,初期条件よりも各地域のもつ構造的係数の差 異が特に重要であることが強調されるであろう。しかし,われわれはそのような係数の値 が多分に初期の資本ストックの大小に依存するものであることを忘れてはならない。初期 条件あもつ意義を過少評価してはならない。適当な初期条件を確保することによって発展 に有利な構造係数の改善を意函することすら可能なのである。かつてハーベルモーはつぎ のように述べた。「動学的モデルの分析にたずさわる多数の経済学者の中には,動学体系 の初期条件はある意味でモデルの構造的性質ほど理論的には重要でなく,また興味もない という奇妙な考え方がおこなわれている。とのような考え方は恐らく簡単なリニヤー体系 の研究から派生したものであろう。」初期条件が経済発展のプロセスにとっていかに決定的       (9)

重要な役割を演ずるかをつぎのモデルで明らかにしよう。このモデルは本質的にライベン シュタインによる後進地域の新マルサス的モデルに準拠している。

      (1①

 生存水準としての平均所得水準一マルサス的均衡所得水準一をy。で示し,コンス タントと仮定する。各回の現実平均所得水準をy,で示そう。現実の平均所得と生存水準 との差を9tで示すと

      9t=・yt− yo      (3)

9の一部分は貯蓄され投資されるとする。

      1亀=・St=・sgt      (4)

   Kloは出発点における第一地域の資

45。   本ストック,:K1、はt出1期の資本    ストック,K21はt出2期の資本ス

   トックを示し,:K。。・は出発点におけ    る第二地域の資本ストック,:K鍛は    t呂1における資本ストック,K22は    t=2におけるその地域の資本ストッ    クを示す。0期では第二地域の方が大    なる資本ストックをもつが,第二期に    到ると,第一地域の資本ストックの方    がより大となっている。このことは基    本的に体系の構造的パラメーターの差

(5)

経済発展の初期条件と構造的パラメーター      191 t期の投資は(t+1)期において利用しうる資本ストックKの増大を意味し,これは平均 所得水準を上昇せしめる。いま人口をP,資本を:Kとすると,

      yt=f(Pt,Kt)       (5)

人口を一定と仮定すれば,正の投資によりて9は上昇する。即ち9,+、>g、となる。マル サス的モデルでは人口は平均所得水準の増加函数と看倣さるべきであり,人口変数を体系 の内生的変数として導入するところに特徴があるから,人口をコンスタントとした場合を 区別するためにこの場合の9をGとして示そう。Gは人口を一定とした場合の超過平均所 得水準である。

      Gt+1=MGt      (一6)

ここでMはつぎのことを示す。It=sG,であるから,

      Gt+1−Gt

      =B      (7)

        It

とおくと,

     一 Gt+1鴇Gt十BIt       (8)

      Gt+1=Gt+sBGt       (9)

      Gt+1冒(1十sB)Gt       (10)

そこで

      M自1十sB      (1D

乗数Mは貯蓄率と投資の平均所得上昇効果を示す係数に依存する。貯蓄性向,所得上昇係 数は共に構造的パラメーターである。さて,人口を内生的変数に変換する。人口増加率r は一定の水準にいたるまでは9の単調増加率と仮定しよう。

      rt== φ (9L)       (12)

t期と次期との間の人口増加はrtPtで示される。人口増加は平均所得水準を引下げる。

いま人口増加による平均所得水準減退効果を

      Dt+1冨dtrtPt       (13)

で示そう。ここでdは常数である。投資によって誘発された平均所得水準上昇の純効果は,

      9t+1=・Gt+1−Dt+1       .   (14)

以上の方程式より平均所得水準の動的時間経路が求められる。9tが時間の経過とともに零 に近づくならば体系は安定的であり,g,がますます大きくなる体系は不安定的である。い ま出発点としてマルサス的な生存水準としての所得水準をとる。第一期で投資が体系に導 入されたとする。平均所得水準は生存水準を越える。

      91 =盟 y1 − yo      .       G5)

g、のうち一部分は貯蓄され投資される。この投資によって第ご期の平均所得水準は更に 上昇する。しかし,9の存在は人口増加を誘発鷺レめるから2第二期における平均所得の 純上昇効果は,

(6)

      g2雪g1(1+sB)一 drlP1       (16)

rは既述のごとく,ある平均所得水準までは単調増加函数であるが,ここでは既に極大値 に達しコンスタントと仮定しよう。さらにsとBとはコンスタントと仮定する。同じ

推理で第三;期でも,

      g3=配g2(1十sB)一 drP2       (16)

翫一 o翫(1+曲一鵡}(1+醐一嶋

      g3==g1(1十sB)2− drP1(1十sB)一 drP2 そこで・一般的にt;期では

      9t=91(1十sB)t−1−drP1(1十sB)t−2−drP2(1十sB)t−3       −drP3(1十sB)t−4……一drPt_2(1十sB)一drPt_1 この式を更につぎのように書き直そう。いま(1+r)=mとおいて,

      P2=・mPl

      P3=mP 2      ・

      P3=m2Pl

      Pt=mト1P1

の関係が成立するから,(19)式に代入して,

一(1+醐…一 o畝(圃…+血m馬(1+酬

       、

+d「m2P・(1+sB)t−4+ +d「mt−3P・(1+sB)+d「mt一2P・ P

(17)

(18)

(19)

(20)

(21)

 翫(1+曲…一側{(圃…+m(1+醐一(1+畔

……{が(1+・B)+m・一・

p   (22)

千こでd「P・は第四の平均所得水準の上昇による人噸加ρ結果生じ鵬瑚の平均所 得水準の減退効果を示す。いま人口増加による最初の十月所得の減退と最初の生存水準よ

りの離退との比を        dr.P1

       =Z      (23)

        91 とおくと(22)式は,

一綱一Z翫{(圃…+m(1+曲…蜘+畔

……

{一圃+が p   (24)

(7)

経済発展の初期条件と構造的パラメーター この式をつぎのごとく整理する。

この式の〔

Sn=・

一{(1+・B)ローZ〔(1+・B)…+(1+・B)…((1恐B))

       

+(1+・B)回((1恐B))一・+(1+・B)《(1轟B))岡+

(1+・B)囲((1轟B))回

l}   (25)

(1+ ((1稗B))

〕の申!ま幾何級数の和を示す。

         牝1}

193

       もヘユ

(1+・B)回((1恐B))一(1+・B)ト2

      一1

(1+sB)

m三(1十sB)

G+sB)

       セ ユ

(1+・B)t一1 i(1恐B))一(1+・B)レ1mレ・一(1+、B)・一・

(26)

m一 (1十sB) m一(1十sB)

翫…

o圃…一z〔mレ1一(1十sB)t一1 m一(1十sB)〕}

翫…

o(1+・B)・一・〔1+_(旱+、B)〕一m・一・〔m一(そ+、B)〕}

(27)

(28)

この方程式をわれわれの体系の基本方程式とよぶことができる。初期の投資導入によりて 生ずる最初の平均所得水準の生存水準よりの離脱と, W数Z,s, B,血とが, g、の時 間的経路を決定する。

 この体系の構造的パラメーターについていろいろな仮定をあたえ,g,の時間的経路を吟 味しよう。

 (1);n≡>G+sB)の場合,即ち人口増加率が平均所得水準の上昇率より大なる場合を考 えよう。一般的に9tの経路については三つの可能性が考えられる。

 ① 9tは最初から逓減的で時間の経過とともに零に近づく。この場合体系は平均所得水   準に限って安定的であるということである。

 ② g、はある水準までは逓増的で,それ以後は逓減傾向を示し,漸次零に近づく。この   場合も体系は安定的である。

 ③ g、は最初から逓増的で時問の経過とともに益々増大し,生存水準の平均所得水準   Y・より離れてゆく。この場合,体系は不安定的であるgm>1,(1+sB)>1,Z>0,

  g1>0であるから,

(8)

1+m一(ZP+sB)〉・ (29)

       Z

       >0      (30)

        m一(1十sB)

そこでtの値が大きくなるとG+sB)t−1, mt一1,は益々大きくなり,9、の値にとって益 々決定的なものとなる。仮定により時間の経過とともにmレ1が圧倒的な支配力をもつに 到る。そこで,②の場合はじめは9tは上昇的であっても,やがて9tの上昇は止み下降 に転ずる一点が存在するであろう。ここで注意すべきはZの存在である。下降転回点は部 分的にZの値に依存する。Zの値が大であるほど, g、の下降転回点は早く生ずる。 Zの 値が小であるほど下降転回点の到来はおくれる。Zは(23)式により.g、の値に依存する。

即ちg1の値を十分に大きくすることによってZの値を十分に小さくすることができる。

従ってg、の下降転回点の生ずるのをおくらすことができる。g、は最初の投資導入によ る平均所得の離脱であるから,この意味で初期条件としての投資導入額が成長経路にとっ て重要な意味をもつことは明らかである。初期条件が動的発展のパターンにとって重要な

ことが理解される。認る期間の持続的成長が体系の構造係数を発展に有利な方向に改変せ しめることが可能であれば,有利な初期条件確保の重要性はさらに強められる。①の場合 はZ>sBであれば生ずる。

      g2=自g1(1+sB)一 drP1      (31)

      g2==g1(1+sB)一Zg1      .     (32)

      g2=・g1(1+ sB− Z)       (33)

そこで最初に導入される投資がZ<sBならしめるほど十分に大きくなければ平均所得水 準は第一期以後直に低下する。投資の平均所得上昇効果が人口増加の平均所得減退効果に 最初から圧倒されているのである。

 (2)(1+sB)>mの場合,即ち,平均所得の上昇率が人口増加率より大である場合であ る。この場合,

         Z

      <0      (34)

      m一(1十sB)

となる。

一㎡d km一(舞、B)〕〉・ (35)

となり,(34)式の左辺が絶対値で1より小であると,

〔1+_(Z1+sB)〕〉・ (36)

また絶対値が1にひとしければ,

(9)

経済発展の初期条件と構造的パラメーター 195

      〔1+m一(そ+、B)〕一・     (37)1

となる。そこで9tは時間の経過とともに益々上昇する。もし,(34)式の左辺が絶対値に おいて1より大であれば,

(1+・B)…(1+_(御、B))<・ (38)

となり,これがtの全ての値についてg、の係数を支配する。そこで,体系が不安定的で あるためには,一持続的な9の上昇を確保するためには一①(1+sB)>m,②Z<G+

sB)一mの二つの条件が必要となる。このことは,たとえ,投資の平均所得水準乗数(1+

sB)が人口増加の乗数G+r)より大であるという状態の下でさえ,初期条件としての投 資投入による最初の平均所得水準の上昇が十分に大きいものでなければなら ぬことを意味 する。最初の生存水準よりの離脱が非常に大きくなければ,恒常的な発展を確保すること ができない。構造係数が経済発展に有利なものであっても,初期における投資導入額が critical minimumに達しなければ経済発展の果実はみのらない。

        1}

 (3)m蟹(1+sB)の場合。この場合,

一{G一一z〔(1十sB)ト2十G十sB)t−2十……十(1十sB)司}

(39)

翫一9・〔(1+・B)…一Z(t−1)(1+・B)…〕 (40)

9由一9・〔(1+・B)・一Z・(1+・B)レ・〕

師一議o〔(1十sB)一Zt〕圃…}

(41)

(42)

そこでtの増大とともに(1+sB)レ1の係数は益々小となり, tのある値にとってはこの 係数は零となる。既述のごとく,第一期以後において9が上昇するためには,Z<sBの条 件が必要であった。Z<sBであるとこの場合でも平均所得はある;期間上昇する。しかし,

tがある値に達すると平均所得水準の上昇は停止し,y。の水準に向って下降する。この 場合でもZの値が小であるほど下降転回点の到来はそれだけおくれることになる。即ち,

初期の投資導入が大きく,:最切の平均所得水準の上昇が十分に大きければ,それだけ平均 水準の下降転回点はおくれる。

 以上の考察は人口増加率が極大値に達し,その水準でコンスタントであると仮定してい る。そこでrが或る水準の所得をこえると減退傾向を示すとすると,m<(1+sB)の場合 と同様,体系は平均所得水準については不安定であるQしかしm>q+sB)の場合体系

(10)

が安定的であったとしても,rが減退傾向を示すと(1+sB)>mとなる平均所得水準が存 在する。そこでG+sB》mの範囲内に体系が入り得るほど大きな初期の離脱があるなら ば,体系はその点で不安定的となる。

 以上われわれは主としてライベンシュタインのモデルに準拠して初期条件の重要性を吟 味した。 ここで初期条件とは外生的な投資の導入によって生じた所得水準の上昇的離脱を 意味する。ライベンシュタインは初期条件の重要性をつぎのように明示している。 「後進 的な状態から脱して,堅実な長期成長を期待しうるいっそう発展した状態に移行するのに 灰功するためには・必要条件として一一必ずしも十分条件ではないが・ある点でまたある 期間には,その経済に臨界的な最小規模より大きい成長への刺戟をうけねばならぬ。」これ

瘤      働 はラィベンシュタインのCritical MinimUm Effort The『isとして知られるものであ

る。またガーレンソン=ライベンシュタインの再投資率基準として知られている投資配分 基準もまた発展過程の出発点で可及的に高い再投資率を確保しうるような配分計画をたて るべきであるとする。このことは初期において発展に有利な条件を確保することが以後に         (13)

おける成長経路の決定にとってきわめて重要であることを意味する。

 経済体系の持続的発展の可能性を決定するものは,その体系の構造的パラメーーターと初        し 期条件である。「構造的係数の変化は進歩と沈滞,急速な進歩と緩慢な進歩,ある時点に おける舜の高野と低い値との差異を離する.し滅たとえ二つの体系仁つの地

域)が同一の値の構造的パラメーターをもつとしても,初期条件の差異は一つの地域が累 進的に発展するか,他の地域が沈滞に向って動くか,あるいは一地域の進歩が他地域の進 歩より早いかを決定する。」出発点においておくれをとるということはそれ以後の発展にと        (14)

って致命的に不利な立場をあたえる可能性がある。 「ある地域が人口過剰の状態であり,

その資本量はきわめて少なく,したがって,そゆ生産攣もまたきわめて低い状態に達して        レ

いるとすると,この状態は人口数を突然に減少せしめることによって容易に改善しうるよ うなものではない。そのような環境が歴史的にある時点であたえられているという事実は,

長期的にでさえその環境の改善に障害となる。経済的格差は初期条件の差異によるという 仮説を別の言葉で述憤れば,一地域はゆきづまる以前に利口となったのであり,他の地域 は利口となる以前にゆきづまってしまったのだということができる。」一地域がひとたび過       ㈲

剰人口,小量の資本,低い生産性の状態に達すれば人口の大きさを突然減少せしめるだけ ではこの状態を容易に改善せしめうるものではない。一

 各経済体系の構造係数には他の経済体系の行事と決意によって受ける、影響を示すパラメ ーターが含まれる。多数の地域ないし経済がその発展過程において示すところの相互依存 関係は,経済発展の地域的格差を理解する上に重要なファクターである。既述のミユルダ

F一汲ヘζの地域的格差の発生を説明する原理として地域間における逆流効果,波及効果を

(11)

経済発展の初期条件と構造的パラメFター 197 唱導した。 ミユルダールは低開発地域の低経済水準を導代経済理論における安定均衡の考

訪麟除し,循環的因果縣の齢より説明する。この思考はゆイベンシュタィンが

安定均衡の概念を積極的に援用するのと対照的である。

 ミユルダールによれば逆流効果backwash effectsとは後進的な地域ないし経済が先 進的な地域ないし経済よりうける不利な影響をさしている。 「私はその場所以外で起るあ らゆる意味ある反対の変動を,ある場所の経済的拡大への逆流効果とよぼう。私はこのラ ベルのもとに,移住,資本移動および交易を通じての効果,その他のあらゆる社会関係を 通じてのあらゆる効果を含ませるのであるから,その言葉は「経済外的ならびに経済的な あらゆる要因の間の循環的因果関係の過程より生ずる全体の累積的効果にかかわる。」ミユ        (1㊦

ルダールのいう波及効果spread effectsとは市場の拡大等によって発展地域ないし経済 が他の地域ないし経済に有利の効果をあたえることをさしている。 「経済的拡張中心から 他の:地域に対する拡張惰性のある種の遠心的波及効果がある。拡張の結節中心点をめぐる 全地域が農産物のはけ口の増加によって利益をえ,そして常に技術的進歩の刺激をうける ことは当然である。」波及効果は一国の地域間だけでなく国際間でも作用する。しかし,ミ         (17)

ユルダールによれば低開発地域ないし経済の宿命的な特徴は波及効果が弱いということで ある。国際間の弱い波及効果は低開発国自体の内部における:地域的な弱い波及効果の反映 にすぎない。波及効果が逆流効果より弱いかぎり,発展の地域的ないし国際的格差は増大

する。

 ミュルダールの波及効果,逆流効果というすぐれた着想を論評することは小論の主題で はない。ここで問題なのはこのミユルダール的思考を動学的モデルの構造的係数にどのよ うな形で関係づけるかということである。われわれはここでバートル的な分析方法を取上 げる。いま二地域の(ないし二国の)経済発展の相互依存関係をつぎの連立定差方程式を

 (18}

あたえよう。

      Y1(t)目al 1Y1(t−1)十a21Y2(t−1)

      Y2(t)=隔a22Y1(t−1)+a,2Y1(t−1)      (43)

上の式でY、(t)はt期の第1地域(国)の所得,Y2(t)はt期の第2地域(国)の所得 を示す。パラメーターauは第1:地域にとって直接的衝撃係数とよばれるもので,(t−

1)期の所得水準がt期の所得水準にあたえる影響を示す。a22は第2地域 (国)の直接 的衝撃効果を示す係数である。a2、とa、。は間接的衝撃効果を示す係数で,前者は(t−

1)期の第2地域の所得水準がt期の第1地域の所得水準にあたえる影響を示し,後者は,

(t−1>、期の第1地域の所得水準がt期の第2地域の所得水準にあたえる影響を示す。例 えばa、、一1.10とし, (t−1)期の所得Y=100とするとY、(t)は110となる。 (a2、

=0として)累積的な成長プロセスを示す。(t−1)期の所得の一回分が貯蓄され,投資さ れることによりてより高いY、(t)が結果する。このa11はまたつぎのような係数から構 成される考えるζとができよう9

(12)

街・一

kCIS1(1−m12     η1)+1〕

(44)

上式でC1は資本産出比率, S1は貯蓄係数, m12は第1地域における第2地域の商品に 対する限界消費性向,η1は第1地域の商品に対する需要の価格弾力盤を示す係数である。

a22についても同様に推理しうるであろう。 パラメーターa2、は例えば地域間ないし国 際間の資本移動を示す係数と考えることができる。第2地域で(t−D期の所得が増加し,

第↑地域でより多く投資されると,第1地域のt期の所得が増加する。例えば,第2地域 で△Y2=20であって,その結果として第1地域に投資増加が生じ, t期の第1地域の所 得が10単位増加するとすればa2、は施となる。この場合, この係数は,資本移動や,

投資の所得造出効果を示す係数から構成されていると考えることができる。 ミユルダール の逆流効果と波及効果の強弱はこの間接的衝撃係数によって示される。

 いま上述の連立定差方程式体系を解いてみよう。(43)式より,

      Y1(t)一allY1(t−1)

      Y2(t−D=

       (45)

      a21

       Y1(t十1)一a11Yl(t)

      Y2(t)鶉

       a21

(45)式と(46)式を(43)式に代入すると,

      Y1(t)=(a11+a22)Y1(t−1)+(a12a21−alla22)Y1(t−2)

      Y2(t)冨(a11+a22)Y2(t−1)+(a12a21−alla2藷)Y2(t−2)

(47)式と(48)式とはつぎのごとき特性方程式をもつ。

      X2瓢(a11十a22)X十(a12a21−alla22)

この式より二つの特性根が求められる。

   (。、、+。,,)±ゾ(。、、+両,)・一4(。、、a,ジ。画)

X=

(46)

(47)

(48)

(49)

2

(50)

整理して二つの根は,

   (。、1+。。,)千ゾ(。u一。,2)・+4。、,恥1

×1=

      2

       /

         (au+a,。)一γ(au−a,,)・+4a、,a。、

      X2=

      2

そこで,Xt1, Xt2はいつれも(45)式と(46)式を満足せしめるから,

式で満足せしめられる。

      CIXぜ十C2×2t

(51)

(52)

この二式は二つぎの

(46)

(13)

経済発展の初期条件と構造的パラメータ門 199

ここでC、とC2とは初期条件によってきまる未定係数である。 X、は特性根の申で最大 であるから成長プロセスはX1の値によって支配される。三つの場合が想定される。

 (1)独立的関係。a、、>1, a22>1であれば,たとえa、2a2、が零であったとしても各 地域は独立的に発展しうる。X1>1であると時間の経過とともXltは益々大きくなる。

そしてa11>1であると,たとえa12a21〈1あるいはa12a21昌0であってもX1は1よ り大となる。同じ結果はa22についてもあてはまる。      、

 (2)衛星的関係a11>1, a22<1そしてX1>1である場合にこの関係が成立する。 a22

〈1であるから第2地域は自力では発展しえない。第2地域はa、2とa2、とを通じて第 1地域に依存する。X、>1であるから,第1地域,第2地域は ともに発展しうるが,第2 地域の発展は第1地域の発展に依存する。

 (3)共生体的関係,a11<1, a22<1そしてX、>1の場合にこの関係が発生する。第1 地域,第2地域ともに自力では発展しえない。しかレ,a、2a2、がk、を1より大ならし

める効果によって両地域は共生体的にのみ発展しうる。

 さて,ミユルダールの場合で逆流効果が波及効果よりも強力であれば,或る地域(ない し国)の成長はヒ域(ない咽1の成長にマイ榊効脚たえる・その飴

aユ2,a21のいつれがマイナスで,2γa12腕1>(ali−a22)であれば, X1とX2とは 複素根となる。そこで第1地域では,

Y・(t)一M・ kC・c・・tθ+C・sintθ〕 (47)

をうる。この式で,

・M弓ノ(a、・+a・・)2一(a・ぺa・・)・+4恥。a,、、

〃イ・、、a,。+・、,恥、

(48)

(49)

またθについては,

    a11十a22 COSθ=

      2M (50)

      副」緬一価、一恥。)・   (51)

   「       2M

とおいて正弦余弦の表から求められる。a、2<0であり, M>1, a、、>a22であれば,第 1地域の所得は上昇傾向を示し,第2地域の所得は低落傾向を示す。C、とC2とを確定 せしめよう。t=0においては, sinO富0, cosO=1であるから, Y1(0)=・Cl t冒1におい

ては,

      Y1(1)=M(Clcosθ+C2sinθ)        (52)

(14)

そこで未定係数は,

      C1=Y1(0)

      C。_Y・(1)一MY・(0)…θ             Msinθ

        2Y1(1)一Y、(0)(a11+a碧2)

      〃ニ=

         一 一 一 『         一    一     一      一  _  _ 一 一  一  一 一

        ノ

         4a1。a2ド(a、、一a22)2

第1地域の成長過程でパラメーターがコンスタントであれば,

      Y1(t)=a11Y1(0)十a21Y2(0)

であるから,

      C。=Y・(0)(皇ユ1−a」2)+2a鷲1Y2(0)、

(53)

(54)

(55)

(56)

》4…a2一(…一a22)・

そこで(47)式より

砥(t)一Mk葛(・){一+ (a11−a22)sintθ ノ4。、画一(au−a22)・

      + .2工・(0堕窪・sin並       /   1

       》4a12a2、一(a、、一a22)2 そこで,costθ>0の領域では,

(57)

Y・(・)〔ノ4・四一(・、、一・,,)・〕+〔(…一恥・)Y・(・)+2Y・(・)・』・〕tantθ〉・

       (58)

であれば,Y、(t)は上昇的である。また, costθが正の領域ではtantθは零から無限大 の範囲にあるから,(58)の左辺で第2項が第1項を圧倒するであろう。そこでY、(t)の 符号は,終極的には第1地域では,

      (a11−a22)Y1(0)+2Y2(0)a21       (59)

によりて,第2:地域にとっては,      ト

      (a22−a11)Y2(0)十2Y1(0)a12      (60)

によってきまるであろう。もし;au>a22でa12〈0であると,(59)式は正となり(60)

式は負となる。まさしく,第1地域の発展は第2地域に強い逆流効果をあたえる。しかし,

以上は勿論,costO>0の領域においてのみあてはまり,costθ<0となれば第2地域の所得 は結果的に零となり,マイナスとなることを意味する。その影響はまた第1地域の所得を

もマイナスならしめるであろう。このことはきわめて非現実的である。そこで,costθ<0

(15)

経済発展の初期条件と構造的パラメ・一タF 20i の場合は考察の対象から除くことができる。ところで,Y1(1), Y2(1)を, Y1(0), Y2(0)

に関係なく十分に大きくとるとcostθ>0の範囲で, C2が十分に大きな値をとり, C2si ntθがC、costθを圧倒するならば, Y、(t), Y2(t)は共に正であることは明らかである。

体系の変数における突然の外生的変化を初期条件の変化と考えることができる。投資計画 の初期において,経済をbig pushするに足る十分に大きな投資導入を確保することの 必要性は,既にライベンシュタインにおける critical minimum effort の命題とし て示されている。この命題の教えるところは,今日においてなお多くの低開発地域が経済 的後進状態に停滞しているのは,過去においてその経済にあたえられた刺激が臨界的最小 努力以下であったがためであり,今日の先進国が持続的成長を経験しつつあるのは,過去 におけるある時点またはある期間にあたえられた刺激が臨界的最小努力以上の大きさのも のであったということである。持続的成長に有利な初期条件の確保がまず第1に重要であ

ることを指摘してるいのである。

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

(9)

(1①

ω

(1鋤

(1の

(1③

(1④

u鋤

T.Haavelmo, A Study in The Theory of Economic Evolution,1954, Pj.

T.Haavelmo, ibid., P。4.

G.Myrdal, Economic Theory and Under・Developed Regions,1957. P.15.

G.Myrdal, ibid., chap.12.

H.Leibenstein, Economic Backwardness and Economic Growth,1957, P.2.

Irma Adelman, Theories of Economic Growth and Development,1961,P.19.

T.Haav皇lmo, ibid., P.60.

T.Haavelmo, ibid., P.47.

T.Eaavelmo, ibid., P.57.

H.L eibenstein, A Theory of Economic・Demographic Development,1954, P.43.

H.Leibenstein, Economic Backwardness and Economic Growth, P.g4.

      もH.Leibenstein, i1)id., P.16.

拙稿「経済成長と投資基準一再投資率基準をめぐって」 (東南アジア研究所年報第2集)参照。

T.1{aavelmo, ibid., P.47.

T.Haavelmo, ibid., P.62.

G.Myrdal, ibid., P.30.

G.Myrdal, ibid., P.31.

J.Burtle, Parametric Maps of Different Types of Economic Development,,, The Review of Economics and Statistics,1960, PP.44〜55.

参照

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