,籔遼多島⑨8
別紙様式1
修士 学位論文
諭 文 題 名
(注:学位論文題名が欧文の場合は和訳をつけること。)
健常者における寝返り動作の定量的類型化
平成 25年 1月 10 日 提出
首都大学東京大学院
人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻
理学療法科 学域 学修番号:11895608
氏 名:三木 啓嗣
(指導教員名: 新田 牧 )
【要旨】
寝返り動作はベッド上での移動性スキルの重要な要素であり,理学療法場面においても 評価や治療,動作指導がしばしば行われている.しかし,起立や歩行などの他の基本動作 とは異なり,定量的データに基づいた正常動作の運動学的特性は明らかにされていない.
そこで,本研究の目的は健常者を対象として寝返り動作を定量的データに基づき類型化し,
各動作パターンの特徴を明らかにすることとした.対象は健常者30名とし,各3試行の 寝返り動作を三次元動作解析装置にて計測した.頭部,上部体幹,骨盤の関節角度を算出
した後,クラスター分析を用いて動作パターンを類型化し,各類型の特徴を統計学的に明 らかにした.その結果,寝返り動作を3群に類型化し,体幹の回旋と屈曲伸展の特徴を定 量的に明らかにすることができた.これは,定量的データを用いた根拠に基づく大分類で あり,臨床的に活用可能な寝返り動作評価の指標を示すものと考えられた.
【キーワード】寝返り,定量的分析,類型化,三次元動作解析,クラスター分析
【はじめに】
寝返り動作はベッド上での移動性スキルの重要な要素であり,臥位一座位行動や臥位一立 位行動の一部で,多くの運動課題に不可欠な構成要素である1).離床や起居動作,日常生 活活動能力向上において非常に重要であるが,全身の複雑な制御を必要とする姿勢変換運 動であるため,臨床場面において寝返り動作が困難な患者を多く経験する.また,理学療 法場面において神経疾患や整形疾患を有する患者に対して,寝返り動作の評価や動作指導 が多く行われている.さらに,寝返り動作は低重心で安定しており2),全身の反応と活動 性を刺激すると言われており3),理学療法治療においてもよく用いられている.なかでも,
寝返り動作に必要な機能として頭頸部コントロールや体幹の立ち直り反応,体軸内回旋な どの体幹機能が重要視されており2)4)17),体幹機能促通を目的として寝返り動作を治療に 応用することもしばしばである.その際,寝返り動作の可否だけでなく動作の質やパフォ ーマンスを評価した上で,動作指導や治療につなげるという手続きが非常に重要であると 考えられる.そのためには,寝返り動作の正常動作パターンや正常動作の理解が必要不可 欠であり,寝返り動作の標準・基準に基づいて動作分析や評価,治療が行われることが理 想的である.つまり,正常動作の運動学的特性を明らかにすることは適切な理学療法介入 には不可欠である.
先行研究において,他の基本動作である起立や歩行動作では,動作パターンや重心移動,
床反力,関節角度,関節モーメントなどの運動学的・運動力学的特性が諸家により明らか になりつつある5−9).しかし,寝返り動作においては理学療法領域における重要性に比し て研究が少なく,定量的な分析が不十分である.健常成人における寝返り動作を類型化し た研究として,Richterら10)は上肢や下肢,頭部体幹それぞれの動きから7群に,角ら11)
は体幹運動パターンを9パターン,寝返り動作パターンを19パターンに類型化した.寝 返り動作の多様性を示した上に類型化した点では非常に意義深いが,これらはいずれもビ
1
デオカメラを用いた定性的研究であり,定量的解析の点において不十分である.また,近 年の動作解析機器を用いた研究の発展に伴い,定量的研究として寝返り動作時の床反力作 用点と重心移動の関係を検討した研究12)や,三次元動作解析装置を用いて寝返り動作中の 脊柱回旋角度や股関節角度,床反力などを分析した研究などが散見される13)14).しかし,
これらは症例数が少なかったり,限定した動作パターンや動作方法であったり,多様な動 作パターンを有する寝返り動作の運動学的・運動力学的記述は十分とは言い難い.
寝返り動作の定量的研究が難しい理由として,1つは動作パターンが多種多様であり 1)10)11),若年成人では動作ごとに戦略が異なる10)ことが考えられる.さらに1つは,三次 元で複雑な動きを伴い,定量的な測定・評価を行いにくく,三次元動作解析装置による計 測では,寝返り動作中に赤外線反射マーカーが隠れてしまうといった計測上の困難さがあ り難しいと考えられる.つまり,定量的分析により健常者の寝返り動作を類型化して,各 動作パタ』ンの運動学的特性を明らかにした研究は今までにない.
そこで,本研究の目的は健常者における寝返り動作を定量的データに基づき類型化し,
各動作パターンの特徴を明らかにすることとした.
【対象と方法】
1.対象
整形外科的・神経学的疾患または既往のない健常男性30名とした.対象の属性に関し て,平均年齢(年齢幅)は21.6(19〜30)歳,平均身長(標準偏差)は171.9(6.3)cm,
平均体重(標準偏差)は62.9(7.8)kgであった.
なお,本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認(承認番号11053)
を得た上で実施し,研究対象者には実験開始前に書面および口頭にて本研究の目的と内 容に関する説明を行い,書面にて同意を得た.
2.方法 1)課題動作
課題動作は背臥位から腹臥位までの右回りの寝返り動作とし,動作方法などの特別な 指示は行わず数回の練習を行った後,言語的合図のみで寝返り動作を3試行実施した.
なお,動作速度は各対象者の至適速度とし,データ補正のために課題動作計側前に静止 立位の計側を行った.
2)測定装置
測定には三次元動作解析装置(VlCON社製NEXUS1.7.1)を使用し,赤外線カメラ8台 と直径10mmの赤外線反射マーカー(以下,マーカー)を用いて行った.マーカーは体表 面上の所定の位置に静止立位時39個,動作計測時27個の標点を設置・貼付し,三次元動 作解析装置にて課題動作中のマーカー位置を計測して,測定したデータをサンプリング周 波数100Hzでパーソナルコンピューターに同期して取り込んだ.各計測動作におけるマー カーの標点は,左右の側頭部(外耳孔直上),肩峰,肘関節肘窩前面中央,尺骨茎状突起,
上前腸骨棘,上後腸骨棘,股関節(大転子と上前腸骨棘を結んだ大転子側3分の1の位置),
2
内・外側膝関節(内・外側膝関節裂隙の高さで膝蓋骨を除く前後径の中点),内・外果,第 1・5中足趾節間関節,さらに頭頂部(左右の側頭部マーカーを結んだ線上がっ正中の位置),
胸骨柄,胸骨剣状突起,左胸部乳頭上部の計30個と,寝返り動作時に隠れるマーカーを 補正するために,骨盤前面と両下腿前面にそれぞれ三角形を作るようにマーカーを3個す っ計9個貼付し,合計39個とした(図1).なお,寝返り動作計測時に下側になり隠れて
しまう計12個のマーカー(左右の上後腸骨棘,内・外果と右側の肩峰,上前腸骨棘,股 関節,内・外側膝関節,左内側膝関節)は課題動作計測時には外して行った(図2).
図1 静止立位時マーカー貼付位置 図2 寝返り動作時マーカー貼付位置 3)解析方法
データ解析には,プログラミングソフト(VlCON社製BODY BUlLDER)を使用し,マ ーカー補正と関節角度の算出を行った.まず,マーカー補正に関しては,静止立位データ から仮想マーカーを設定して寝返り動作計測時に外したマーカーの補正を行った.次に,
関節角度の算出には各体節のセグメント定義を行った後,頭部,上部体幹,骨盤のオイラ ー角の算出を行った.なお,データ解析区間は動作開始から骨盤が床面に対して90o回旋 位に至るまでとし,1動作を100%として時間を正規化した.
算出パラメータは,前述した各関節の最大!最小!平均関節角度[。]と,最大!最小関節 角度に到達した時間(最大!最小関節角度到達時間)[%]とした.
4)関節角度,到達時間の算出方法(図3,表1)
頭部,上部体幹,骨盤それぞれの関節角度算出において,頭部関節角度は上部体幹セグ メントに対する頭部セグメントの相対角度であり,同様に上部体幹関節角度は骨盤セグメ ントに対する上部体幹セグメントの相対角度,骨盤関節角度は上部体幹セグメントに対す る骨盤セグメントの相対角度である.
また,最大1最小!平均関節角度に関しては,各セグメントの3軸上の動きである屈曲伸 展,側屈,回旋におけるそれぞれの最大/最小値と,1動作における平均角度を算出した.
なお,各関節の屈曲伸展角度は伸展が正の値,屈曲が負の値で示され,屈曲伸展最大値 は最大伸展角度,最小値は最大屈曲角度として示した.同様に側屈では左側屈が正の値,
右側屈が負の値で示され,側屈最大値は最大左側屈角度,最小値は最大右側届角度として 示した.さらに回旋では,左回旋が正の値,右回旋が負の値で示され,回旋最大値は最大 左回旋角度,最小値は最大右回旋角度として示した.ただし,最大!最小値の両方ともに同 3
一符号の場合には原点からの距離に基づく絶対値にて最大値,最小値を抽出し,最小値を 最小関節角度として示した.
さらに,平均角度とは屈曲伸展,左右側屈!回旋の相対する角度を正負符号に置き換えた 値の平均であり,動作中,屈曲伸展あるいは左右側屈1回旋どちらの領域となることが多い かの指標とした.到達時間の算出に関しては,1動作を100%として時間を正規化した後,
各セグメントにおいて最大/最小関節角度に至った時間を到達時間とした.
表1 各セグメントにおけるパラメータと算出方法
セグメント パラメータ 算出方法
頭部 最大1最小!平均関節角度 上部体幹セグメントに対する頭部セグメントの相対角度 最大/最小関節角度到達時間 最大!最小関節角度に至った時間
上部体幹 最大/最小ノ平均関節角度 骨盤セグメントに対する上部体幹セグメントの相対角度 最大!最小関節角度到達時間 最大!最小関節角度に至った時間
骨盤 最大/最小/平均関節角度 上部体幹セグメントに対する骨盤セグメントの相対角度 最大!最小関節角度到達時間 最大!最小関節角度に至った時間
。・・■・・… 一… .■一・・■・・・… ・・… 、
;最大伸展角度到達時間1
L___一一____一__一一__一___一_____J
最大神属角度
伸展渕 タ亀免
套畿へし1夕∴∴\、
I
。 .一州
二、・ ・。
も
ぺ毎ω㌣;1 ・・1..
、
1 年一平均角度 一一一一}一r一一一_一一〉
\1 10 1 ■㌔
屈曲ユ。 ; 1\一削岨杣ター
右側屈 1 1
........辿......................
右回旋.拠
最大屈曲角度 ζ最大屈曲角度到達時間1
1 1
伸展(十)/屈曲(一)
_…. カ側屈(十)/右側屈(一)
一… カ回旋(十)/右回旋O
図3 パラメータと算出方法の側 5)統計学的検討
先行研究より健常者では寝返り動作の戦略は多種多様であり,個人内においても一定せ ず多様な動作パターンを呈すると報告されている1)10).このことから,本研究においては 対象者30名における各3試行の寝返り動作,計90試行を変数として分析対象とした.
統計解析は,まず関節角度と到達時間に関するパラメータを変数とした多変量解析(ク ラスター分析)により寝返り動作を類型化した.次に,類型化された各群がどのような特 徴を示すかを検討するため,各パラメータを従属変数,寝返り動作の各類型を独立変数と して一元配置分散分析を行い,有意差を認めた場合はScheffeによる多重比較検定により 各類型の特徴抽出を行った.なお,統計学的処理にはlBM SPSS Statistics Ver.20を使用
し,有意水準は5%とした.
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【結果】
1.寝返り動作の類型化
対象者30名における各3試行の寝返り動作,計90 試行のクラスター分析の結果,2群に分割され,この内 の1群がさらに2群に分割される構造が示され,計3 群に類型化することができた.3群をそれぞれA群,B 群,C群とすると,A群に属するものが56試行(62.2%)
で最多となり,同様にB群が17試行(18.9%),C群が 17試行(18.9%)であった(図4).
A書
15嚇行(年2.2%)
い 8群 …
1峨紬8幽)
1;、1,C群
1ユ72式くテ( 8,996)
図4 クラスター分析による類型化 2.各動作パターンの特徴項目
一元配置分散分析と多重比較検定の結果から,A・B・C群それぞれ3群間で有意差を認 め,かつ他2群ともに有意差を認めた項目を抽出した(表2).
表2 一元配置分散分析と多重比較検定により有意差を認めたパラメータ
セグメント 角度[。] 到達時間[%]
A群 上部体幹 最大屈曲15.2(14.1)H 最大右側屈8.6(8.8)H 平均屈曲0.1(9.2)H
最大屈曲73.1(13.9)
最大右側屈68.8(38.6)H
8群 頭部 最大左回旋11.7(10.5)H 平均右回旋2.1(7.4)L 上部体幹
骨盤 平均左側屈0.6(5.4)
最小伸展38,2(17.8)L 最大伸展93.6(11.1)H 最小前傾38.6 (18.3)L 最大前傾74.5(37.4)H
C群 頭部
上部体幹 最小左回旋6.0(5.5)L 最大左回旋46.8(14.9)H 平均左回旋21.9(8.6)
骨盤 最小右回旋5.5(6.0)H 最大右回旋47.1(15.0)H 平均右回旋21.6(8.8)
最大左側屈94.2(11.3)H 最大右回旋71.2(26.8)H
最小左回旋20.4(9.9)L 最大左回旋92.1(10.9)H 最大屈曲92.7(9.9)H 最大左側屈73.4(14.0)H 最小右回旋21.1(10.2)L 最大右回旋91.9(10.8)H 最大右側屈67.6(15.1)H
※平均値(標準偏差)
※3群間で有意差を認めたもののみ記載(H:有意に高値,L:有意に低値)
5
以下に各動作パターンの特徴を順に示す.
2−1)A群(図5,6)
上部体幹のみで他2群と比して有意差を認めたパラメータが抽出された.角度・到達時 間のパラメータにおいて,回旋のパラメータが抽出されなかったことから上部体幹一骨盤 間の回旋をほとんど伴わないパターンであることがわかった.また,角度のパラメータに おいて,上部体幹最大屈曲角度15.2(14.1)。,上部体幹平均角度が屈曲0.1(9.2)。,
上部体幹最大右側屈角度8.6(8.8)。であったことから屈曲,右側屈に特徴を示すパター ンであることがわかった.それに加え,到達時間のパラメータにおいて,上部体幹最大屈 曲73.1(13.9)%,最大右側屈68.8(38.6)%であったことから,徐々に上部体幹屈曲・
右側屈角度が増大して寝返り後半にピークを迎える動作パターンであることがわかった.
以上の結果から,A群を『体幹屈曲パターン(体幹回旋最小)』とした.
15
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ヨ 、8 ・・・… 左側屈(十)/右側屈(一)
一251 )
1 一一左回旋(・)/右回旋←)
一35
図5 A群における上部体幹関節角度の時系列変化(代表例)
図6 A群の寝返り動作パターン 2−2)B群(図7,8)
頭部,上部体幹,骨盤において他2群と比して有意差を認めたパラメータが抽出された.
上部体幹,骨盤におけるパラメータの中に回旋のパラメータがなかったことから,A群と 同様に上部体幹一骨盤間の回旋をほとんど伴わないパターンであることがわかった.また,
頭部最大左回旋角度11.7(10.5)。であったことから,頭部が寝返り動作における回旋の 6
補助的役割を果たしていたと考えられる.また,到達時間のパラメータにて上部体幹最小 伸展38.2(17.8)%,上部体幹最大伸展93.6 (11.1)%,骨盤最小前傾38.6 (18.3),
骨盤最大前傾74.5(37.4)%であったことから常に上部体幹伸展位,骨盤前傾位であり,
徐々にこれらの角度が増大していくことがわかった.
以上の結果から,B群を『体幹伸展パターン(体幹回旋最小)』とした.
(。)25
15
伸展(十)/屈曲(一)
・・・…@左側屈(十)/右側屈(一)
ダ ≡ち
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タ 穐
綬 亀
5
・. 夢桑
一州 カ回旋(十)/右回旋(一)
、一(・)
一5
図7 B群における上部体幹関節角度の時系列変化(代表例)
図8 B群の寝返り動作パターン 2−3)C群(図9,10)
頭部,上部体幹,骨盤全てで他2群と比較して有意差を認めたパラメータが抽出された.
角度のパラメータでは上部体幹,骨盤ともに抽出されたパラメータ金てが回旋であり,到 達時間のパラメータもほとんどが回旋であった.さらに,課題動作は右側への寝返りであ ったことから,右回旋の項目である骨盤の回旋が上部体幹の回旋に先行して寝返り動作が 始まっていることがわかった.さらに,骨盤最小右回旋角度5.5(6.0)。・到達時間21,1
(10.2)%,骨盤最大右回旋角度47.1(15.0) 。・到達時間91.9(10.8)%,骨盤平均 右回旋角度21.6(8.8)。であったことから,寝返り動作開始から約20%の時点で骨盤右 回旋にて骨盤が先行し,約90%の時点で骨盤最大右回旋約47。となり,上部体幹一骨盤 間の回旋を伴い寝返り動作を行うパターンであることがわかった.
以上の結果から,C群を『体幹回旋パターン(骨盤先行)』とした.
7
(。)60
50…
伸展(十)/屈曲(一)
301
・・・…@左側屈(十)/右側屈(一)
20
左回旋(十)/右回旋(一)
10
0
一10
図9
\し帯 ノ
φ・州・.20.§0405060708090(%)
C群における上部体幹関節角度の時系列変化(代表例)
図10 C群の寝返り動作パターン 3.寝返り動作の類型化と各動作パターンの特徴
健常者の寝返り動作を定量的データに基づき類型化した結果,クラスター分析にて3 群に類型化することができ,A群が最多パターンを示した.次に,各動作パターンの特 徴を分析した結果,体幹回旋と体幹屈曲伸展の2つがそれら3群を分ける要素として抽
出された.
まず,体幹回旋の有無によりA・B群とC群の2群に分類でき,A・B群では約10。
の最小限の体幹回旋角度なのに対し,C群では体幹最大回旋角度が約50◎であった.次 に,体幹の屈曲伸展に着目することによりA群とB群を2群に分類することができ,計 3群に類型化することができた.
つまり,C群はA・B群と比べて体幹回旋角度が有意に大きく(46.8。),さらにA・B 群に関して,A群は体幹屈曲角度が有意に大きく(15.2。),B群は体幹が屈曲せず常に 伸展位であるという特徴がそれぞれ抽出された(図11).
8
癖え、
∴62・砕 屈曲二
蛆
なし
8群、
I斗8.9%
i、酵
.鳩.眺
伸展 体幹が屈曲しない
亙 雌
図11 寝返り動作の類型化と各動作パターンの特徴
【考察】
1)寝返り動作の類型化
本研究では,健常者の寝返り動作を3群に類型化することができた.A群は体幹届 曲パターン(体幹回旋最小)であり,全体の62.2%を占め最多であった.同様に,B 群は体幹伸展パターン(体幹回旋最小)で全体の18.9%,C群は体幹回旋パターン(骨 盤先行)で全体の18.9%であった.
先行研究において,健常者の寝返り動作を類型化した研究は散見されるが,いずれ もデジタルビデオカメラを用いた定性的研究である.Richterら10〕は健常成人の寝返り 動作を頭部体幹,上肢,下肢の3つの身体部位の動きから定性的データを用いて類型 化し,最多パターンでも全体の11.9%に留まり,全体の5%以上ある動作パターンを7 群に類型化した.また,角ら川は健常者の寝返り動作を体幹運動パターンと下肢の動 きの関係から定性的指標を用いて分類し,19種類に類型化した.これら2つの先行所 究と本研究を比較すると,A群はRichterらの最多パターン(11.9%),角らの2番目 に多いパターン(21.9%)と類似したパターンであり,B群はRichterらの2番目(11.4%),
角らの最多パターン(25.2%),C群はRichterらの5番目(7.5%),角らの3番目(7.2%)
に多いパターンとそれぞれ類似した傾向を示した.先行研究は定性的研究であり,一 概に本研究と比較することは出来ないが,先行研究と類似した傾向を示した.
しかし,先行研究と本研究の大きな違いとして,本研究は定量的データを用いた研 究であり,先行研究で7群以上あった動作パターンを,体幹に着目して定量的に分類 することで,3群に類型化することができた.
今後分析対象を増加させた場合,今回の類型を大分類とした上で,さらに詳細な分 類が見いだされる可能性がある.このことを考慮すれば今回の類型が先行研究と矛盾 するものではないと考える.運動パターンは極言すると,動作ごとにパターンが異な ることにもなり得る.臨床的に汎化することを考慮すると,一定程度の大分類を採用 することが重要であると考えられ,本研究による類型はこの意味で評価指標となり得
る.
9
2)各動作パターンの特徴
一元配置分散分析と多重比較検定の結果から,各動作パターンの特徴的な体幹角度 のパラメータとして,A群は体幹屈曲15.2。,B群は体幹が屈曲せず常に伸展位,C 群は体幹回旋46.8。であった.ゆえに,A群は体幹屈曲パターン(体幹回旋最小),B 群は体幹伸展パターン(体幹回旋最小),C群は体幹回旋パターン(骨盤先行)とした.
つまり,体幹回旋と屈曲伸展が3群を分ける要素であった.
健常者の寝返り動作において体幹に着目した研究は非常に少なく,さらに定量的デ ータを用いて寝返り動作時の体幹の動きを研究したものはほとんどない.寝返り動作 における体幹機能の重要性に比して,多様な動作パターンにおける体幹の詳細な動き は明らかにされていない.寝返り動作時の体幹回旋に関しては,多くの健常若年成人 では肩甲帯と骨盤間の回旋を示さないということが不変的特徴であると言われている が1),中島らは体幹の回旋は必ず出現すると報告しており15),意見が分かれている.
本研究では,3群とも上部体幹一骨盤間の回旋を認めており,中島らの報告を支持する 結果となった.また,寝返り動作パターンとその特徴に関して,先行研究では床を押 して寝返るパターンにおける股関節角度は力学的に最壷であるという報告や14),骨盤 帯からの寝返りより肩甲帯からの寝返り動作において脊柱回旋角度が増大したという 報告13),さらには下肢での床押し力,胸腰椎部側屈角度が寝返り動作時の体幹パター ンに影響するといった報告16)がある.しかし,いずれも動作パターンの限定や動作速 度の制約をしており,健常者が日常的に行っている寝返り動作を定量的データから総 合的に類型化して特徴を抽出するような解析や検討は行われていない.
本研究で示された3つの寝返り動作パターンの特徴として,まずB群の体幹伸展パ ターンは,上側下肢で床面を蹴ることにより寝返り動作時の回旋力を生み出している と考えられ,その回旋力を体幹伸展により頭側方向に伝え,さらに頭部が回旋の補助 的役割となることで,体幹を回旋せずに一体となって寝返ることができる動作パター ンであったと考えられる.また,A群の体幹屈曲パターンは,伸展パターンとは逆で,
全身が一体となって屈曲し,船底様になることにより体軸内で回旋が生じ,回転力を 生み出して寝返る動作パターンであったと考えられる.さらに,C群の体幹回旋パタ ーンは,まず骨盤が回旋して先行して,上部体幹一骨盤間が十分に捻れてから,体幹 の減稔性立ち直り反応により体軸内回旋の切り替えが生じることで17),上部体幹が回 施して寝返る動作パターンであったと考えられる.
以上より,三次元動作解析により定量的データを用いて寝返り動作を分析した結果,
各動作パターンにおいて具体的な指標となる角度を抽出することができ,各動作パタ ーンの特徴を明らかにすることができた.このことは,多様な動作パターンを呈して おり不変的特性が明らかではない寝返り動作において,不変的特性を明らかにする一 助になったと考えられる.
3)臨床的意義
体幹機能に着目し定量的に類型化することで,寝返り動作パターンの分類が可能と なり,さらに理学療法評価・治療に有用な運動学的指標になりうると考えられ,臨床 的に活用可能な大分類と運動学的指標を明らかにすることができたと考える.
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4)研究の限界と発展性
本研究では男性健常者30名を対象にした解析であったが,今後は女性を含めた解析 など被験者数を増やして解析を行っていく必要があると考えられる.また,今回は体幹 の動きに着目したが,今後は四肢の運動パターンを含めた類型化や,重心や加速度など 他の運動学的データを含めた解析も検討していくべきであると考える.さらに,起立動 作や歩行など他の移動性スキルでは明らかになりつつある動作の不変的要件に関して,
寝返り動作では明らかにされておらず,床反力や重心位置などの運動力学的解析を含め た検討が必要であると考えられる.また,疾患と寝返り動作パターンとの関係や,歩行 など他の移動性スキルとの関係も臨床場面においては非常に重要であると考えられる.
【結語】
健常者における寝返り動作を定量的データに基づき類型化し,各動作パターンの特徴を 明らかにすることを目的に三次元動作解析装置を用いて定量的に分析を行った.その結果,
3群に類型化でき,各動作パターンの特徴を明らかにすることができた.ゆえに,寝返り 動作において体幹の動きに着目することによって,臨床的に活用可能な大分類と運動学的 指標を抽出することができた.
【引用文献】
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Quantitativeana1ysisofrolling motion in normal adults −Classification ofpatterns by cluster analysis一 【Abstract】
Ro11ing over is an important part ofbed mobility ski11s,and is often done in evaluating physical therapy and teaching.However,it is different from other basic motions;the kinematiccharacteristics ofnormal ro11ing overmovementbased on quantitativedata arg unknown.Thus,the purpose of this study was to c1assify the patterns of ro11ing over movements ofhea1thy individuals and toclarifyits kinematiccharacteristics.Thirty hea1thy subjects were measured in three tria1s of rolling over by using three dimensiona1motion analysis systems.After analyzing the joints angle of head,upPer trunk and pe1vis,the movement patterns were classified by means of cluster ana1ysis;in addition,the characteristics of each movement patterns were clarified by statistical analysis.The findings showed that rolling over movement in healthy individuals could be classified into three movement patterns,and thecharacteristics ofeach pattern were clarified.Thus,in rolling over movement,by focusing attention on the trし1nk motion,it is possible to d6termine major classification of patterns,and a1so the kinematic characteristics which indicate the beneficial effect of physical therapy、
【Key Words】rolling over,quantitative ana1ysis,c1assification of patterns,three dimensiona1motion analysis,clusteranalysis
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