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小型無人ティルトウィング機の設計製作

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Academic year: 2021

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小型無人ティルトウィング機の設計製作

著者 宮野 智行, 羽場崎 祥, 堤野 雅貴

雑誌名 東京都立産業技術高等専門学校研究紀要

13

ページ 59‑62

発行年 2019‑03

URL http://id.nii.ac.jp/1282/00000239/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

(2)

[29] 青木繁・渡辺武,非対称履歴特性を有する連続体 の強制振動,日本機械学会論文集(C 編),63-610 pp.35-401997

[30] Aoki,S., Watanabe,T., Some Aspects of Response of Continuous Systems with Nonlinear Boundary Conditions, Proceedings of the Asia-Pacific Vibration Conference ’99, 1, pp.418-423, 1999

[31] 青木繁,はりのやや複雑な衝突振動,東京都立工 業高等専門学校研究報告,35pp.1-42000 [32] 青木繁・酒井康徳,非対称履歴特性を有する連続

体の定常衝突振動解析,日本機械学会論文集(C 編),76-767pp. 1692-16992010

[33] 青木繁,衝突を伴う1自由度系の定常振動解析,

東京都立産業技術高等専門学校研究紀要,5CD- ROM2011

[34] Aoki,S., Watanabe,T., Forced Vibration Analysis of a Beam with a Nonlinear Support, Proceedings of the 6th International Conference on Structural Dynamics : Recent Advances, 1, pp.847-861, 1997 [35] 青木繁・渡辺武,非線形サポートを有する配管系

の定常振動応答解析法,日本機械学会論文集(C 編),65-634pp.2181-21871999

[36] Aoki,S., Watanabe,T., Various Aspects of Forced Response of Piping System with Elasto-Plastic Damper, Proceedings of the Fifth International Conference on Motion and Vibration Control, 2, pp.761-766, 2000

[37] Aoki,S., Watanabe,T., Effect of Impact Vibration Absorber with Hysteresis Damping to Nonstationary Random Excitation, Proceedings of the 2nd World Conference on Structural Control, 2, pp.1521-1528, 1998

[38] Aoki,S., Random Vibration of Structure with Asymmetric Hysteretic Restoring Force- Deformation Relation, Proceedings of the 6th International Conference on Structural Safety and Reliability, 3, pp.2273-2276, 1993

[39] 青木繁,非対称履歴復元力特性をもつ付加構造物 系の地震応答特性,第 9回日本地震工学シンポジウ ム論文集,2pp.1651-16561994

[40] 青木繁・中西佑二・西村惟之・富永一利・大高武 士・稲垣光義・金澤光雄・川口澄夫・吉田智基,摩 擦軸受を利用した機械構造物の地震応答低減装置の 開発,東京都立産業技術高等専門学校研究紀要,1 pp.1-42007

[41] Aoki,S., Kurita,K., Response Characteristics of Base Isolation System with Friction, Proceedings of International Conference on Mechanical, Electrical and Medical Inteligent System 2018, CD-ROM, 2018

[42] 青木繁・栗田勝実・野村幸一,振動体を介して土 台部と天井を連結する住宅用オイルダンパの性能に関 する検討(振動体の形状による有効性の検討),日本 地震工学会論文集,18-5pp.78-872018

[43] Nomura,K., Aoki,S., Kurita,K., Miyata,N., Damping Performance of Evaluation of Eddy Current Damper, Information, 19-6(B), pp.2341- 2348, 2016

[44] 青木繁・平井聖児・香村誠・Vichai Saechout・菅 谷諭・堀内勉・佐久間茂・栗田勝実・池田宏,加圧 溶解法で発生したマイクロバブルの基礎特性,東京 都立産業技術高等専門学校研究紀要,11CD-ROM pp.7-142017

[45] 青木繁・栗田勝実・池田宏・平井聖児,マイクロ バブルと超音波振動を併用した金属板表面における洗 浄効果の基礎的研究,日本機械学会論文集,80-813 Web DSM01342012

[46] 青木繁・山田栄一・塩崎恵一・稲垣恭次・松島 穆・神野学,振動防止法の基礎試験,日本機械学会第 70 期通常総会講演会講演論文集,930-9()pp.58- 601993

[47] 青木繁・田中匡・武田敏郎・神野学・塩崎恵一・

稲垣恭次・松島穆,振動防止法の基礎試験(室内にお ける振動・騒音防止効果),日本機械学会機械力学・

計測制御講演会講演論文集,930-42 Bpp.221-225 1993

[48] Narizawa,T., Aoki,S., Uncertainty Analysis for Control of Single-Degree-of-Freedom Manipulators, Proceedings of the 2nd International Conference on Motion and Vibration Control, 1, pp.210-215, 1994 [49] 青木繁・成澤哲也・上保徳彦・長野将也・明石和

也,FRP材料を用いた構造物の成形に関する研究

(第1報,製造法および強度),日本機械学会関東 支部第11期総会講演会講演論文集,050-1pp.403- 4042005

[50] 青木繁・成澤哲也・上保徳彦・明石和也・長野将 也,FRP材料を用いた構造物の成形に関する研究

(第2報,振動特性),日本機械学会関東支部第11 期 総 会 講 演 会 講 演 論 文 集 ,050-1pp.405-406 2005

1) 東京都立産業技術高等専門学校 ものづくり工学科

航空宇宙工学コース

小型無人ティルトウィング機の設計製作

Development of an unmanned aerial vehicle with tilt-wing

宮野 智行1)

羽場崎 1)

堤野 雅貴1)

Tomoyuki MIYANO, Akira HABAZAKI, Masataka TSUTSUMINO

Abstract : Various drone had become widely used for many applications. Unmanned aircrafts are desired to be used in wide range and for long distance flights, and a drone equipped with tilt-wings could realize these requirements. This paper presents development of a quad-rotor aerial vehicle with tilt-wing and the gain determination process. The flight control system of the tilt-wing drone is required to be developed originally.

Flight experiments were performed to verify the validity of the gain determination process. Consequently the process is enough stable to control our developing unmanned aerial vehicle with tilt-wing.

Key Words : drone, flight control, PID, tilt-wing

1 はじめに

無人航空機は,航空の用に供することができる飛行機,

回転翼機,滑空機等であり,構造上人が乗る事できないも のの中で遠隔操作もしくは自動操縦できる航空機である.

無人航空機は地震や火災等の災害支援活動に用いられる 他,海外では注文した商品を運搬する宅配トラックに代わ って無人航空機による宅配を行っている実績がある.ドロ ー ン と い う 言 葉 が 広 ま っ た の は 2010 Parrot 社 の

A.R.Droneが発表されてからである.iPhoneをコントロー

ラとして使用し,また撮影した映像を iPhone で見ること ができるようになっていた.その後,スマートフォンの発 展・普及と共にジャイロセンサや加速度センサ,GPSモジ ュール等が安く大量に製造されるようになり,ドローンは 個人で楽しめるまでに普及した.今日ではオープンソース の飛行制御プログラムが幾つか存在し,個人でも製作する ことが可能となっている.しかし,我が国では2015年に 航空法が改正され,屋外で飛行するためには許可が必要と なり,個人の操縦は制限されるようになった.無人機に対 する需要は高まっているが,飛行の機会が減少していると いう現状もある.

近年,ドローンを含む小型無人航空機の分野において,

可倒式の主翼を装備し,垂直に離着陸可能なドローンが上 空では航空機のように主翼に発生する揚力を得て,水平に 飛行することが可能となる無人航空機が研究されている [1].このような機能を持つ主翼はティルトウィングと呼ば れ,ビル街や屋内では垂直に離着陸し,空中での静止が可 能なドローンとして活動を行い,長距離の移動に際して障 害物の存在しない高度では固定翼のように高速飛行を行 うことが可能となる.固定翼機と比べて滑走路がなくても 離着陸でき,ドローンと比べて最高速度が高く,航続距離

が長い等の利点があるため,ドローンに求められるように なった,より活動範囲を広め,より高速に移動するという 要求を満たすことができる.

しかしながら,ティルトウィング機構を備えた無人航空 機の飛行制御についての研究や,飛行制御プログラムのゲ イン調整についての研究例は少ない[2][3].通常のドロー ンやラジコンのような模型飛行機,回転翼機については,

知識や飛行技術が広く知られており,誰でも製作が可能と なっているが,ティルトウィング機に供する汎用の飛行制 御プログラムはなく,ドローンと比較して個人で製作する ことは困難を要する.

本研究では,ドローン向けに供給されている汎用の飛行 制御プログラムを使用し,クワッドコプターを改修してテ ィルトウィング機の試作を行った.さらに,ティルトウィ ング機の製作者において,それぞれ機体と用途に合わせた 最適な飛行制御プログラムが利用できるように,部分的モ デルマッチング法を用いてゲイン調整を行った[4].飛行実 験を実施し,飛行制御プログラムおよびティルトウィング 実験機の検証を行った結果を示す.

2 ティルトウィング機の試作

本研究では前項に記したドローンや回転翼機への要求 に答えるため,回転翼機と固定翼機の両方の特性を併せ持 つティルトウィング機の試作を行った.実験機はティルト ウィング機の機体特性のデータ取得,検証を目的としてい る.機体製作にあたり,次に挙げる目標性能やその実現に 向けた機体コンセプトを定めて,これを設計製作の指標と した.

(3)

(1) 垂直離着陸が可能であること.

(2) ペイロードを含む機体総重量に対して十分な揚力を 発生できる主翼を装備し,プロペラ及び主翼のティ ルト機構を有すること.

(3) 通常のドローン及びラジコン機と同様の操縦が行え ること.

(4) 搭載機器のデータが取得できること.

試作したティルトウィング機を図1に示す.図2にティ ルト角を垂直(90度)にした状態と,水平(0度)にした 状態を示す.離着陸時は翼を垂直(90度)に設定し,水平 方向に長距離移動する時は水平(0度)に設定する.

図1 試作したティルトウィング機

図2 ティルト角 垂直(90度)と水平(0度)

小型無人航空機の製作にあたって,制御方式はその飛行 特性を決定付ける重要な要素である.ドローンは複数ある モータの回転数を変化させ,推力に偏りを生じさせて姿勢 を変化させるが,姿勢を安定させるためには,機体の姿勢 角,姿勢角レートから各モータ最適な回転数を算出し制御 するというプロセスを継続して行わなければならない.一 般的なドローンはこの制御をフライトコンローラと呼ば れるマイコンによって実現している.ドローン向けのフラ イトコンローラは幾つか市販されているものがあるが,本 試作ではドローンと固定翼機の両方の特性を併せ持つク アッドティルトウィング機の飛行制御として最適な開発 環境が提供されており,飛行制御プログラムの汎用性,実 用性と書き換えが可能であるという点から Multi-wiiを採 用することとした.同コントローラはArudinoのプラット フォームをベースにしているマルチロータモデルを制御 することが可能なシステムである.今回,搭載した計算機

ボード CRIUS ALL IN ONE PRO V2.0 は,三軸ジャイロス

コープ,加速度センサ,気圧センサ等を標準で装備してい る.飛行制御プログラムはオーンソースであるため,C 語で書かれており必要に応じて変更することが可能であ る.同システムはジャイロセンサ,磁気加速度等,ドロー ンを安定的に操縦する際に必要となるセンサ,及び,モー タに送られる信号の最適な処理が行える.また,PID制御 のコントローラには比例ゲインKP,微分ゲインKD,積分 ゲインKIの3つのゲインを設定することができる.

3 飛行制御プログラムの改修と確認実験

飛行制御プログラムを今回製作したティルトウィング 機に対応させるために,ロータを備えた実験機のモデル化 を行った.主翼のモデルを図3に示す.主翼のロール軸方 向の回転について運動方程式立ててラプラス変換し,伝達 関数を求めた.実験機について式を立てるに際し,以下に 示す方法によりPID制御のゲイン値を決定した.

(1) 機体の慣性モーメントI,減衰係数c,質量M,中心から モータまでの距離 L,回転軸から重心までの距離 x,推 力係数kの値,むだ時間を測定する.

(2) 測定した値を式(3)~式(5)に代入し,部分的モデルマッ チング法によりゲイン値を決定する.

(3) 上記で求めたゲイン値を地上実験機に適用し,実験デ ータを取得する.

(4) 地上実験機で得られた応答を解析値と比較し,モデル や機体計測,実験データについて評価する.

図3 ゲイン調整のための実験モデル I:機体の慣性モーメント c:機体の減衰係数 M:機体の質量 L:中心からモータまでの距離 θ:機体の傾斜角 x:回転軸から重心までの距離

F:モータの推力 k:推力係数

𝐼𝐼𝜃𝜃̈ + c𝜃𝜃̇ + M g x θ = L (F1 - F2 ) (1)

ここで,F=kVとすると,伝達関数 G(s)は式(2)となる.

G(s) =

𝑉𝑉1(𝑠𝑠)−𝑉𝑉2(𝑠𝑠)𝛩𝛩(𝑠𝑠)

=

𝐼𝐼𝑠𝑠2+𝑐𝑐𝑠𝑠+𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑘𝑘𝑘𝑘 (2)

(3)~式(5)PID制御のゲイン値は部分的モデルマッチ ング法による.決定した値を表1に示す.

I

a

0

K

(3)

1 2

0

P

a

K L

a  

  

(4)

2 0 1 2

1 3 0

0 0

2 2

2

D P P

L a a L a

K a

K K L a

a a

  

   

      

 

(5)

表1 部分的モデルマッチング法によるゲイン値

KP KI KD

PID 0.052 1.108 22.3

θ

表1に示したゲイン値を確認するために,今回製作した 実験機を用いて,飛行中のロール,ピッチ,ヨー軸への入 力に対する応答の確認を行った.実験機の諸元を表2に示 す.

表2 実験機の緒元

全幅 1695mm 全高 200mm

全長 320mm 機体全重量 1146.6g

翼弦長 200mm 翼幅 520mm

翼面積 1040cm2×4 主翼重量 221.0g×4

ロータを上方に向けたティルト角垂直(90 度)の状態 では,機体重量に対する十分な推力を確保することによっ て,主翼を外した状態と同様に垂直離着陸が可能であった.

しかし,ロール軸については,標準のゲインでは主翼を外 した状態と比較すると水平姿勢への復元に時間を要し,操 縦に注意が必要となるものであった.主翼を装備した形態 は,左右方向へ機体幅の増加と主翼の質量によるロール軸 回りの慣性モーメントが増加していることによる.これに は前節で示した方法により得られたゲイン値(表1)を飛 行制御プログラムに設定することによって対応した.設定 後のロール角制御の実験結果を図4に示す.

図4 ロール角制御 (波線:目標値,実線:ロール角)

4 ティルトウィング機の飛行実験

飛行実験は,ロータを上方に向けたティルト角垂直(90 度)で離陸した後,上空で主翼をティルト角水平(0 度)

に移行させて水平飛行する方法で行った(図5).垂直離 陸時に,ピッチ,ヨー方向への操作を加えても機体高度が 変化しないことを確認した.推力不足は見られず,操作性 は安定していた.ロール方向に関してはピッチ,ヨーと比 較すると操作に対する応答が少し大きいが,短時間で振動 が抑制され収束していた.十分な推力によって高度が安定 し,姿勢変動にも瞬時に水平に復元することが確認できた ため,垂直離陸から水平飛行への移行実験を行い,状態遷 移時における機体の挙動を確認した.

水平飛行への移行実験のデータを図6に示す.主翼を垂 直(90度)から水平(0度)に傾斜させ,高度一定のまま 20 mの水平飛行を確認した.これにより水平飛行に必 要な機速が得られ,主翼が発生する揚力により高度を維持 することができた.さらに,水平飛行中の主翼が上方に反 っていることが確認され,揚力により機体が支えられ,推 力を遮断した後も機体が滑空することを確認した.また, フライトデータから,移行に要した時間は約2.5秒であっ た.水平飛行中,機体に僅かなロール軸の揺れが見られた が,これは揚力により翼が反る量が左右均一でなかったた めと推定している.

図5 垂直離陸から水平飛行への実験

time (sec)

図6 水平飛行への移行実験

0 3 6 9 12

altitude (m)

機体高度 操作量

ロール角 目標値

(4)

(1) 垂直離着陸が可能であること.

(2) ペイロードを含む機体総重量に対して十分な揚力を 発生できる主翼を装備し,プロペラ及び主翼のティ ルト機構を有すること.

(3) 通常のドローン及びラジコン機と同様の操縦が行え ること.

(4) 搭載機器のデータが取得できること.

試作したティルトウィング機を図1に示す.図2にティ ルト角を垂直(90度)にした状態と,水平(0度)にした 状態を示す.離着陸時は翼を垂直(90度)に設定し,水平 方向に長距離移動する時は水平(0度)に設定する.

図1 試作したティルトウィング機

図2 ティルト角 垂直(90度)と水平(0度)

小型無人航空機の製作にあたって,制御方式はその飛行 特性を決定付ける重要な要素である.ドローンは複数ある モータの回転数を変化させ,推力に偏りを生じさせて姿勢 を変化させるが,姿勢を安定させるためには,機体の姿勢 角,姿勢角レートから各モータ最適な回転数を算出し制御 するというプロセスを継続して行わなければならない.一 般的なドローンはこの制御をフライトコンローラと呼ば れるマイコンによって実現している.ドローン向けのフラ イトコンローラは幾つか市販されているものがあるが,本 試作ではドローンと固定翼機の両方の特性を併せ持つク アッドティルトウィング機の飛行制御として最適な開発 環境が提供されており,飛行制御プログラムの汎用性,実 用性と書き換えが可能であるという点から Multi-wiiを採 用することとした.同コントローラはArudinoのプラット フォームをベースにしているマルチロータモデルを制御 することが可能なシステムである.今回,搭載した計算機

ボード CRIUS ALL IN ONE PRO V2.0 は,三軸ジャイロス

コープ,加速度センサ,気圧センサ等を標準で装備してい る.飛行制御プログラムはオーンソースであるため,C 語で書かれており必要に応じて変更することが可能であ る.同システムはジャイロセンサ,磁気加速度等,ドロー ンを安定的に操縦する際に必要となるセンサ,及び,モー タに送られる信号の最適な処理が行える.また,PID制御 のコントローラには比例ゲインKP,微分ゲインKD,積分 ゲインKIの3つのゲインを設定することができる.

3 飛行制御プログラムの改修と確認実験

飛行制御プログラムを今回製作したティルトウィング 機に対応させるために,ロータを備えた実験機のモデル化 を行った.主翼のモデルを図3に示す.主翼のロール軸方 向の回転について運動方程式立ててラプラス変換し,伝達 関数を求めた.実験機について式を立てるに際し,以下に 示す方法によりPID制御のゲイン値を決定した.

(1) 機体の慣性モーメントI,減衰係数c,質量M,中心から モータまでの距離 L,回転軸から重心までの距離 x,推 力係数kの値,むだ時間を測定する.

(2) 測定した値を式(3)~式(5)に代入し,部分的モデルマッ チング法によりゲイン値を決定する.

(3) 上記で求めたゲイン値を地上実験機に適用し,実験デ ータを取得する.

(4) 地上実験機で得られた応答を解析値と比較し,モデル や機体計測,実験データについて評価する.

図3 ゲイン調整のための実験モデル I:機体の慣性モーメント c:機体の減衰係数 M:機体の質量 L:中心からモータまでの距離 θ:機体の傾斜角 x:回転軸から重心までの距離

F:モータの推力 k:推力係数

𝐼𝐼𝜃𝜃̈ + c𝜃𝜃̇ + M g x θ = L (F1 - F2 ) (1)

ここで,F=kVとすると,伝達関数 G(s)は式(2)となる.

G(s) =

𝑉𝑉1(𝑠𝑠)−𝑉𝑉2(𝑠𝑠)𝛩𝛩(𝑠𝑠)

=

𝐼𝐼𝑠𝑠2+𝑐𝑐𝑠𝑠+𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑘𝑘𝑘𝑘 (2)

(3)~式(5)PID制御のゲイン値は部分的モデルマッチ ング法による.決定した値を表1に示す.

I

a

0

K

(3)

1 2

0

P

a

K L

a  

  

(4)

2 0 1 2

1 3 0

0 0

2 2

2

D P P

L a a L a

K a

K K L a

a a

  

   

      

 

(5)

表1 部分的モデルマッチング法によるゲイン値

KP KI KD

PID 0.052 1.108 22.3

θ

表1に示したゲイン値を確認するために,今回製作した 実験機を用いて,飛行中のロール,ピッチ,ヨー軸への入 力に対する応答の確認を行った.実験機の諸元を表2に示 す.

表2 実験機の緒元

全幅 1695mm 全高 200mm

全長 320mm 機体全重量 1146.6g

翼弦長 200mm 翼幅 520mm

翼面積 1040cm2×4 主翼重量 221.0g×4

ロータを上方に向けたティルト角垂直(90 度)の状態 では,機体重量に対する十分な推力を確保することによっ て,主翼を外した状態と同様に垂直離着陸が可能であった.

しかし,ロール軸については,標準のゲインでは主翼を外 した状態と比較すると水平姿勢への復元に時間を要し,操 縦に注意が必要となるものであった.主翼を装備した形態 は,左右方向へ機体幅の増加と主翼の質量によるロール軸 回りの慣性モーメントが増加していることによる.これに は前節で示した方法により得られたゲイン値(表1)を飛 行制御プログラムに設定することによって対応した.設定 後のロール角制御の実験結果を図4に示す.

図4 ロール角制御 (波線:目標値,実線:ロール角)

4 ティルトウィング機の飛行実験

飛行実験は,ロータを上方に向けたティルト角垂直(90 度)で離陸した後,上空で主翼をティルト角水平(0 度)

に移行させて水平飛行する方法で行った(図5).垂直離 陸時に,ピッチ,ヨー方向への操作を加えても機体高度が 変化しないことを確認した.推力不足は見られず,操作性 は安定していた.ロール方向に関してはピッチ,ヨーと比 較すると操作に対する応答が少し大きいが,短時間で振動 が抑制され収束していた.十分な推力によって高度が安定 し,姿勢変動にも瞬時に水平に復元することが確認できた ため,垂直離陸から水平飛行への移行実験を行い,状態遷 移時における機体の挙動を確認した.

水平飛行への移行実験のデータを図6に示す.主翼を垂 直(90度)から水平(0度)に傾斜させ,高度一定のまま 20 mの水平飛行を確認した.これにより水平飛行に必 要な機速が得られ,主翼が発生する揚力により高度を維持 することができた.さらに,水平飛行中の主翼が上方に反 っていることが確認され,揚力により機体が支えられ,推 力を遮断した後も機体が滑空することを確認した.また,

フライトデータから,移行に要した時間は約2.5秒であっ た.水平飛行中,機体に僅かなロール軸の揺れが見られた が,これは揚力により翼が反る量が左右均一でなかったた めと推定している.

図5 垂直離陸から水平飛行への実験

time (sec)

図6 水平飛行への移行実験

0 3 6 9 12

altitude (m)

機体高度 操作量

ロール角 目標値

(5)

5 むすび

本研究ではティルトウィングを備えた小型無人航空機 の設計製作を行い,ドローンにティルトウィングを装備す る際に必要となる設計上考慮すべき点や操縦性などのデ ータについて,飛行実験を実施して取得した.実験結果よ り,製作したティルトウィング機は,垂直に離陸した後,

主翼を水平に移行して水平飛行が行えることを確認した.

今後,水平飛行時の操縦系やロータ用のモータを主翼内蔵 式に変更する等の機体改修,飛行制御プログラムの改良し,

小型無人ティルトウィング機の開発を行う.

参考文献

[1] 浦久保孝光,"VTOL型ドローンの研究開発-次世代ドロー ンの実現に向けて,”システム/制御/情報,Vol.60No.10 pp437-4422016

[2] 三鑰善裕,"災害用無人ティルトローター機の研究,”高知工 科大学大学院 工学研究科 基盤工学専攻 修士論文,2011 [3] 宮野智行,植原雅貴,中島正樹,"限界感度法を用いたドロー ンの飛行制御に関する一手法,”東京都立産業技術高等専門 学校研究紀要,12, pp.68-70, 2018.

[4] 北森俊行,"制御対象の部分的知識に基づく制御系の設計法, SICE論文集,154pp.549-5551972

4.

教育論文(教育研究分野)

参照

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