(1β3)1
道路整備の経済成長に及ぼす効果
植 村 福,七
1.この研究ほ昭和35年皮建設省建設技術研究補助金に.よるものである。
2.この研究は第一部理論的研究と第二部実証的研溌堪分けた。理論的研究においてこほ道
路整備の経済成長に及ぼす効果に関する経済理論一古典学派より近代理論まで一につヤ、
て紹介し,輸送高度化理論と経済成長との関係に関する私見を述べた。第二部実証的研 究に.おいてほ,わが国道路整備の概況,道路整備の経済効果,輸送構造変化と道路投資
に.つ}、て論述したが,道路投資算出方式については将来なお研究の余地がある0 3.この研究に.関して既に発表した論文ほ次の如くである。
1「四国一本土間客貸の流動構造分析と将来輸送鼠の推計並びに瀾戸大橋の経済効果 に.ついて」香大経済論叢,欝33巻滞2号
2 「道路整備の国民経濁へ及ぼす効果一輪送高変化理論の展開.」′「建設」1960,9月号 3 「輸送構造の変化と道路投資1「 道路」19612月号
4 「小豆島有料道路経済調査報告沓_l道路公団19615月 5「四国●本土間海上貨物流動状況」国鉄四国支社19由.4月
6 planningandDcvelopmentinUrbanTfan寧poratation,1959,翻訳
7 TravelCharacteIisics of TwoSanDiego,SubdivisionDevelopmennts,1959,
翻訳
8 StudiesofTrip Generationin theNationIs Cqpital,1959.翻訳
2(164)
次 序 口
欝山部 理論的研究
§王 道路整備と経済成長に関する経済理論 1,古典学派
2,歴史学派
3,LaIdneI,Dupuit,Sax 4,新古典学派一古典的外部経済論 5,近代理論一近代的外部経済論
頁 l l ⊥ 3
§Ⅱ 輸送高度化理論 1,概 論 2,輸送高度化理論
3、輸送高度化の国民経済的効果 1 市場に及ぼす効果 2 価格紅及ぼす効果 3 産業立地紅及ぼす効果 欝二部 実証的研究
§工 道路整備の概況
=Ⅰ道路投塵の経済効果 1,道路投資の現状 2,道路投資の需要効果
3,走行費の節減 48
§Ⅱ、輸送構造変化と道路投資 1..所得倍増計画の概要 2,経済水準と成長率
50 5
3,輸送規模の拡大 4,輸送構造の変化 5,道路投資穿出方式 6,結 論
(錘5)3
第一部・理 論 的 研 究 S王 道路盤備と経済成長に関する理論
1.古 典 学 派
−・般的に言って,古典学派の経済学者達は経済の発展に関心をもってい た。また,彼等ほ交通技術の進歩又は変革が,どのような影響を経済成長 に及ばすかについても関心をもっていた。ただ,古典学派の人々ほAdam 声mitllを除けぼ経済成長と交通変革の関係を断片的に述べているに過ぎな い。
A心血Smitbよりも70年以上も早く「諸国属の富」という言葉をつかつ たD8nielDefoe ほ.交通機関の役割を強調して『河川と道路ほ,富を血液 のよ.うに世界のあらゆる地方へ伝達する脈管である。そうしてこの富こそ 諸々の王国や都市の生命であり,それらの民の支柱であり,それらの力の 試金石である』と.述べてこいる。更に彼はターンパイク制度を強調して,そ れ、ほ諸取引を促進させるであろうとし,『すべての種類の草屋貨物の運送 ほは.るかに.容易となり,荷馬車業者ほ今までより少い時間で仕事をする か,もしくは,同盈の貨物を少い馬匹で運搬するであろう。駄馬ほ従来よ
り重い荷物を運ぶか,一・日に余計遠方へ進むことによって前より少い時間 で仕事を果すであろう。これらすべては遍送料金を減少せしめる働きを
し,かくて商品を一層廉価に市場へ搬曙させるであろう0
これらのタ−ンパイクの利益ほ今や非常に大きいと思われ,人々もあら ゆ去ところでそれを感知し始めている。また,タンーパイクが一層完成し
た地方ではそれが既に大きな効果を取引にもたらしている。 』 と述べて:いる。(TouI・,Vol.Ⅱ,pp.118−29)
18世紀の後半,紀行文学者Young は農村から都会への人口移動ほターー ソパイクの改良によってほ.じまるという事実に注目して,『新らしい人間 一新らしい思想や新らしい活動⊥すべての産業部門への新らしい活気
そうして香惨や消費や勤勉のあらゆる生活,気九生命,そうして精力,
これら首都と諸地方とに自由な交通があるところどこでも全王国に横溢し
4(166)
でいる』と述べた。(Youn紳On,Pd岳Sibilitie畠∴1・仙・p.32rfつ このように,交通特に道路の整備が経済発達に寄与するという考え方は
,Adam Smith以前からイギリスに存在して:いた。これらの考えを組織的 に述べたのはAdam Smithであった。Smithにとって交通の第一Lの意義 は分業を促進すること.によって労働生産力(PtoductivePoweI?f−LaboI)を 増大せしめる点にある。即ら労働の生産力を増大する主要要因である分業
は市場の広さによって制約され,この市場の拡大は交通の便宜に依存す る。
この場合Smithの交通概念ほGoodIOads 又ほ Water−CarIiageであつ た。交通の市場拡大性について Smitb は『良好な道路,運河及び可航河 川ほ運送費用を低減することによって僻遠地方をして都会附近の地方と殆 んど同列ならしめる。そ・れほ.常にこの国の最大の地域を占める僻遠地の耕 作を促進する。また,都市附近の地方の産物に多くの新市場が開かれるか
ら都市附近の地方にとっても有利である』と述べている。(A中m Smitも,
TheWeatbof Natiムns,Vol.Ⅰ.p.1娼)
Smi血の思想の中にほ,新古典学派の人々によって強調された「外部経 済」的考えが簡芽的に存在していた。「外部経済」は凝済環境の改善によ って,個々の企業の費用曲線が下方に移動するこ.とを意味㌻る。 ●
Smitbは展好なる道路,運河及び可航河川は「■商巣を便ならしめる諸施 設」in$titutions foIfacilitating commeICe Of the societyの一種と考えて
いた。(Adam smith,VolⅡ,p.215)
2,歴 史 学 派
歴央学派の人々はみな経済発展に関心をもっていた。何んとなれは,経 済」に対する歴史的制度的接近は,もともと経済が如何に発展して来たか
という問題を体系的に分析せんとするものであるからである。
まず,歴史学派の先駆者としてFIiedIicbList(1789−1846)は古典学 滞によって閑却された国民的発展という事実を取上げ,「国民的生産れ」
理論でもeムIieぬhoduktivenXI正teによって彼の経済学を特長づけた。
(16フ)5
彼ほ交通の発達ほ.輸送費め低下をもたらし,それほ消費増大せLめ,生 産増加をき・たす過程を明紅かにしている。即ら披ほ主著「国民体系」の序 文で次の如く述べている。『もと.もと私は運輸手段の畳要さを価値理論によ って教えられるままにしか知らなかった。私は運輸手段の作用をバラく に,そうして物質財の市場拡大と価格低下に関連してのみ考察した。今や 始めて,私はこれを生産力の理論の視点から,また国民交通組織としての 全影響の下において,考察し始めた。今や始めて私ほ如何なる相互作用が エ菜力と国民交通組織の問にあるかということ及びどこでも一つほ他なし に高い完成に到達しえないということを知った。』(F.List,Nationales SystemderlPolitischen Oekondmie,1840「■政治経済学の国民藤系」)
歴史学派経済学の創始者と.してⅩniesとRoseb即・をあげることができ る。まずRoscbeI(1817−94)ほ機械的交通は高度の集約的農業及び大工 業の・ための前提条件であるとし,『あらゆる種類の運輸手段ほ分業の主な 結果であると共にその促進手段である。・・…… かくして容易に平均 化され,全土ほいわぼ集結した−・つの都市の性格を帯びるようになる。』『
分業は市場の大さに制限されるが,市場は他の事情が等しい限り輸送能力 の自乗的割合で増大する』と述べている。(W.Roscher,GIundriss zu
Vorlestlngeni払er die Staat$Wirtschaft nach geschichtlicher.Methode,
Gottingen,1843)
次にKnies(1821−98)は交通を一山種の生産過程として把握している。こ れは彼が輸送費を生産費の山部と考え,また「運輸の生産力」または「運送 給付の生産」等の表現を用いていることから明らかである。彼の価値理論
一交通は物の素材価値及び形相価値lこ場所価値を附加するものであるとい う理論−は別に述べたのでここでは省略する。Eniesは交通の本質的級能 は速力の増大と輸送費の低減であるとみる。速力の増大は腐放し易い商品 の遠距離輸送を可能ならしめ,輸送費の低下は販売圏の拡大と従来高価な 輸送費に制限せられていた新らしい輸送対象の出現とによって当然交通盈 が増大する。しかして彼は「潜在的交通」lat占nteveIkehI・の解放なる概
6(168)
念を用い,輸送費の低減ほ「交通創出作用」Verke‡1ⅠSC払ffende Virkllng をもつことを定式化した。
3..LaIdneI・,D叩uit,Sax
1800年代にほ多くの秀れた交通学者が輩出した。そ・のうちLaIdneI,Sax の意見やDupuitの意見をみてみよう。
LaIdneI・(1793−1859)は「改良された逓送手段に伴う利益の中で,もつ とも顕著な一・つは,あらゆる消費市場におけるすべての商品の価格を低下 せしめ,生産を刺戟するということである。』『消費苗場である商品の価 格が,この原因のため引下げられると.もとの消費者ほより自由に,より 多量にそ・の商品を使用し,また以前はその高価な・ため使用を差しひかえて いた他の消費者層の手にとどく範囲内にその商品をおくノことによって,そ れに対する需要を増加させる。消費者層の拡大からする消費の増加ほ.一般 に価格の低下より割合ほ大きい。』またLaIdneIは交通の改善が市場圏の 拡大に及ぼす影響について含蓄ある意見を発表した。これはLaIdneIの運 送と取引に関する自乗の法則と.して他の箇所で紹介したので,こゝセは省 略する。(C.Lardne.r:Rai1way EconomY,1850)
フランスの技師J.bup血は1884年「公共事業の効用測定について」
という論文の申で,外部経済の充実,技術等新等で価格が下った場合(道 路整備による輸送費の低減と考えてよい)の便益額を次の如き消費者余剰
政論で説明し ている。消費 者余剰とほ消 費者がそのも のなしにすま すよりも,む しろ支払うこ とを辞せぬ価 格が,彼の実 Po=需要曲線 p
Pl=旧価格 P2ご新価格
PPla=Plの価格の時の 消費者余剰 Pp2b=P2の価格の時の
消費者余剰 PIP妻ab=消費者余剰の
拡大分 0 ql t】2 Q
(169)7 際に支払う価格を超える超過分と定義される。
ヰ肖費者余剰の概念は厚生経済学の発達に相当大きな影響を及ばしている。
軋 Saxは1878年と1879年に「国民経済並に国家経済における交通手段
」と題する二巻の労作を発表した。Saxはこれによって交通学を体系的に 雑織せんと.した。即ち彼は序文の中で『国民経済学の文献で,交通を対象
として,全面的体系的鞋取扱った最初のものであり,一般に認められでい た−・つの空隙をを充したものである』と自讃している。Saxは交通の激能 に関して:『人間の経済における交通の役割には二面ある。一層では運輸ね 生産と消費の単な畠補助手段であり,他面では自己目的即ち白のた鋸と」生 産せられ消費せられる一つの経済的給付である
具として着眼・する場合,交通手段は財貨交換の支柱と.して,また地域的分 業−その出現と成熟とほ本来の国民経済の成立上発展とをあらわす−・の前 提並びに担い手としてあらわれる』と述べている。更に彼は交通の改良は 造按的に商品格価の低下,販路拡大.拡大された市場内における商品価格 の場所的並びに時間的平衡作用をもたらし,間接的には生産の拡張,生産 の性格変化,局地的経済から世界経済への推移,流通機構の改良,労賃及 び地代の平軍化並.びに一腰文イヒの向上を招来するとしている。(EmilSax,
Die VekehemittelinVolks−ムnd−StaatswiItSChaft,2Bde.,1878−9)
4.新古典学派
,交通の発展と経済成長に関する新古典学派の考え方はMarsballの外部 経済論によって代表させることができる。
MaISIlallは,経済を一つの有機体と考え.,進歩や進化は単なる増大や減 少でなく,有機的成長であると考えた。また彼は経済内部の相互喀存的,
補完的関係を強調すると共に,企業のまわりの環境の変化にもとずく費用 曲線の下落を強調した。MaISballが外部経済の具体的事例として考えたの は,産業全体の規模の拡大によって生ずる技能の伝習,あるいは−・般に労 働力の供給における便宜の増進,補助産業の発煙,当該産業に対する一腰 的環境としての交通,運輸,通信,報道施設の進歩等であった。J.′VineI・
8−(170)
の「費用曲線と時給曲線」という論文によって言外部経済串個々の企業の産
業規模や生産費の低下との関係をみてみると.次の如ぐである0 一
次の図は任意の個別企其の均衡と産業全体にと.っての均衡条件を同時に あらわし■たものである。
DD亡・産集金体の需要曲線
NM==平均費用と限界費用の等しい市場価 格
Om=個別企菓の産出巌 OM=産集金体の産出藍 D′D′=新らしい需要曲線
産出規模の増大宰伴って,個々の企業の生産費ほ逓減し,平均費用及び 限界費用はそれぞれ下方へ移る。曲線ACほ産業規模の拡大に伴う生産費 の変化を示すもので,外部経済の存在で右下りとなる。AC線上の各点は,
それぞれの産出鼠に対応する個々の企業,したがって,ま■た産菓全体にと っての限界=平均生産費をあらわして:おり,産業全体にとっての供給曲線
と同ぢである。(J・VineI,J CostCuIVeSand SupplyCurves ,Reading inPIiceTbeoIy,edited by R.Ⅴ.Cleねens,1953Vol・2)
Pigouの厚生経済学ほ本質的にはMaIShallと同じであるが資療の「社
会的限界純生産物」概念を中心として行われた。源資の「社会的限界純 生堅産物」概念と.は,資源の社会的限界純生産物の価値がすべての用
途を通じて均等化痘られた状態が資源の最適配置であるどする考えであ る。
MaISba11とPigouの分析を更に発展せしめたのは瓦ahlnであるo EahlnはMaISball以来の特定企業中心の外部経済の考え方をとらず,経済 社会全般に対して波及せしめることのできる外部経済的効果に着目した。
Rahlnによれば,外部経済が産其の諸分野にどのように配属されるか は問題でなく,その総額のみが問題である。彼ほすべての産業をそれに結
(1フ1)9
びつく外部経済の大きさの順番に並べ,その産業の理想的産出屋と外部経 済の大きさの関係を追及して−,投資基準の問題に発展せしめた。(A.E.
Kahnn,J/Investemnt Cliteriain DevelopmentPrograms,//The QuaIterly Jou王nalofEconomics,Vol.LXV,Feb.,1951)
5..近代理論・一近代的外部経済論
近代的外部経済理論として興味深いのは,軋 Leit〉enSteinの 「大きな 押し」の理論である。
彼によれば経済を自己推進的な点までもっていくためには最低限度の投 資−一大きな押し−が必要である。その理論の骨子は次の如ぐである。
Ⅹt Xt 曲線は所得を増大せしめるすべての力をあらわし,Zt Zt曲線は 所得を ̄F■降せしめるすべての力をあらわす。誘発される増大と減少は45皮 線からほかられる。このようにしてⅩに等しい所得では所得上昇力はafで
あるが,所得減少力はbfであり,所得はEのとこまで逆戻りする。所得上
昇力と.所得下降力との関係から
−・人当Lり所得をGの水準まで上 げようとすれば,巨額の投資が
Ⅹ七
必要である。しかし,−たびG に達すると,経済成長は自己推 進的となる。しかしGまでの間 は絶えず初期の均衝点Eにもど
> ろうとする力が働くため,「大
.X
きな押し」が必要である。
Leibensteinの「大きな押し。」理論はわが国における道路投資にそのま ま言えることである。
次に社会的間接投資と直接的生産活動と関係をみるに,社会的間接投資
(SOC)の存在量を横軸にとり,直接的生産活動(DPA)による産出量を 生産するに要する総費用を縦軸にとる。
a曲線は一定のDAP投資からDAPのフル・キアパシティ産出巌を生産す
10(1フ2)
DPA,SOCの均衡成長と不均衡成長 る費用であって,SOGの存在魔の函 数である。b,C,d曲線は,いずれ
も,より高いDPA投資からのDPA 産出嵐の費用である。SDCが豊富で あるとき,Df,Aの費f削′ま.低い。SO∵
が附加されでもそれ以上DPAの費 用が下らない部分では,a,b,C,d 曲線ほ横軸に平行に近くなってい る。右方から左方へ敷くにしたが って,−・定のDPA産出の費用は,最
DPA産出鼠の総費用
SOCの存在藍と費用
初ほ緩慢に,やがて,もつと∴急速に 上昇する。最後に,費用曲線ははとんど垂直に近くなる。それは・一層のDPA 産出量を生産するためには,最低−・定のSOCが必要であるからである。
経済全体の立場から,最も望ましいこと.はDPA及びSocの両者に使用さ れる資源という単位で最小費用でもってDPAの産出騒が増加することであ
る。
したがって両軸の総封が最小であるとき,最も望ましい状態と・なる0 こ の図では原点を通る45皮線がa,も,C,d曲線の最高点を通るように描かれ
ている。したがって45度線はDPAとSOCの均衡成長理想を示している0 各段階において,両者がともに少しずつ増加することがその国の資源の もつと.も大きな経済となる。しかし問題ほ後進国の如く,(1)SOCとDPA は同時に拡張できない,(2)誘発されるデイジ汐ヨン・メイキングを鹿大に するような拡張過程が望ましい場合である。
第一・の条件のため,おれわれほ二つの発展過程の型をみることができ る。欝一・はSOCの供給増大から始まり,AAIBB2Cと進む過程であり,第二 はDPAから始まり,ABIBC.Cと進む過程である。啓一Lの過程をSbcの過剰 能力を通ずる発展と呼び,第二の過程をSOCの不足を通ずる発展と呼ぶこ
とができる。
(.173)11 第二の条件にしたがって,われわれは.どちらがより自己推進的であるか を考えてみよう。SOCを拡大すると現行のDPA生産の費用は低下し,DPA 投資家達ほ,投資増大への刺戟を受け,D‡〉A生産ほ拡大する。若しDPAの 拡大が最初に起ると,DP.A生産費ほ.上昇し,bpA生産者達は.,もつと大き なSOC設備があれば,相当程度の節約が可能と考えるであろう。その結果 SOC増大への圧力が加わり,次の段階に進むと.と∴になるかは,企業家の動 機の強さと.SOCに芸任がある官庁の圧力に対する反応度を比較検討しなけ ればならないが,SOCの増大を伴わないDPAの拡張ほ益々生産費を上昇せ
しめるだけであり,D‡)Aの追加的投資ほ止み,自巳推進的成長ほ停止す る。
特に国際的競争関係にある産共においては,先進国かSOC投資が充分で あるからeaIning poweIを持たなくなる。
DPA投資とSOC投資の不均衡成長が誘発的となり附加的投資またほ.産出 最を生み出すこと.に,なる。いま最初若干のSOCとDPAの投資決定が行われ たと仮定するそこでSOCのDPA産出鼠に.対する比率SOC/DPAが生れる。
横軸にSOC/DPA比率をとり,誘発されるDPA投資を縦軸の原点より上 に,誘発されるSOC投資を原点より下にとる。総誘発投資ほ誘発DPA投資 と−・致する点まで実線で上方に示されている。
横軸上の点Bは先掲図のa,、b.c点に当るもので均衡点である。したがつ て総誘発投資は均衡点Bにおいて極小となる。
SOC不足による誘発投資 誘発DPA投資
及び総投資
SOC/DPA比率かOBよりも小 さいならば,SOC投資が誘発さ れる。また,SOC′/DPA比率がO Bよりも大きいならば,D王,A投
資を誘発することになる。
しかし,現実には誘発DI〉A投 資と誘発SOCとが交草に起るの
ではなく,ある程度婁嬉して超 誘発SOC投資
12(1フ4)
ると考え.られる。
誘発DPA投資
及び総投資 即ちDPA投資家ほSOCの過剰
能力があらわれるに先立って追 加投資をするであろうし,SOC 投資機関もSOC不足があらわれ る以前に.投資を行うであろう。
左図の総誘発曲線上のF点は 将来への予見をもつ誘発投資の 極大点である。
\ 甘
′ 、・
〆  ̄ ̄…叩ノ
M S〈⊃C/DPA
誘発SOC投資
注・榊原脾夫「経済成長と交通政策」参照
§■Ⅱ 輸送高度化理論
−・般に道路の普及程度ほ道路密度こ= 自動車交通
であらわさ 面 積
れる。
また道路の整備状況は,道路整備密度=改良慧装道悪頓によって知るこ
とができる。しかし,これらほ道路と面積の平面的,静態的関係をあらわす だけで,道路と経済活動との立体的,動態的関係を知るためには,道路輸
車輌数
道路生舶=悪霊 送密度ニ1日平均自動貴通過台数,車輌密度==
人口 等の指標を用いることができる。道路輸送密度はその道路の輸送量 を,車輌密度は人口と自動車台数との相関関係を,また道路生産性は県民 所得に対する月勤番交通可能道路粁数との関係を示している。
各県別,車種別.車輌密度をみれほ,車輌密度の高い地方としては東
京,大阪,愛知,滋賀,静岡,和歌山等で,低い地方としてほ茨城,鹿児 島,長崎,岩手,新潟,等がある。
次に各県別,道路生産性をみれぼ道路生産性の高い地方ほ.東京(69.0百 万円)大阪(89り1百万円)福岡(42.0百万円)を中心としてこれらを結ぷ 太平洋沿岸,瀬戸内海沿岸に分布している。また,北海道,東北,山陰地 方は・一腰に低くなっている。この分布形態は大体工業地帯のそれと・一致し ている。
以上によって,経済の発達している地域は道路密度,輸送密度,車輌密
(175)13
度,道路生産性等道路経済上の諸指標がすべて一高く,経済後進地域は,低 いことがわかった。そこで道路整備と経済成長と如何なる関連性をもつか について原理的解明を行ってみる。
まず,輸送の本質ほ空間的離隔と障害(Ⅰゑumlicbe EntfeⅢngen und Hト ndeInisse)を克服する移動現象であるけれども,−・定の空間を克服するた めには何程かの時間を必要とするから,時間的離隔と.障害(z8itlicIlen En−
tferungen und Hindernisse)を克服する現象でもある。
即ち輸送の本質ほ空間問念(spatialeoncept)であると同時に時間概念
(time concept)であると.いうことである0
ドイツ鱒史学派経済学派経済学の創始者Kniesは輸送を一層の生産過 程として把握し,輸送費を生産費の∵部と考えた。彼が輸送を生産とみた 理論的根拠は価値の創出又は保存作用である○
彼によると経済的財質の価値即ち人間を欲望を充足させるための有用性 の程度は2つの要因の聞に依存する。要因の−−・つは人間の欲望の側におけ る事情で,他は蘭質の側における事情である。財貿側の諸条件の1部は素 材において,一・部ほ形態において,更に・一部は人間の欲望充足のために適
した対象の存在する場所において,即ち素材価値 Sto打weI止,形相価値 FoIm叩Itb,及び場所価値0Ⅰ腑eItもを認める。彼は原始生産が素材価値 を,工業が形相価値を,商業(輸送)が場所価値を創出すると主張する。
彼は,『商業(輸送)ほすでに素材及び形態の作り出されてある財貨を軍 楽又は営利手段としての消費の自然的立地のある場所,つまり・一般的見地 からいっても消費が最も有用であり最大の効果を実現する場所へ移転させ
る。商業の珪産活動は財貨において極めて明白な証拠手段をもっているの であるが,その財貨の場所価値の相違は価格の地方的な(勿論時にほ時間 的)差異−これからあらゆる商業は.その利益を得なけれほならない−とし
て現われる。運輸制度のすべての改良ほ二重の結果をもつ,即ちそれは輸 送費となるところの生産支出を一・般に減少せしめ且つ財貨の地方的価格差 を減少する』と述べている。彼ほ商業の申に輸送を包含する考え方,換言
14(176)
すれは商業と輸送の概念区分の不明確ほそ・の時代的背景一部ら運輸業が商 業より完全に独立していなかった・一によるものである。要するにKniesは 輸送を場所価値−−・人間の欲望に対する立地制鱒を克服して作り出される財 貨の場所的使尉軋−一一の創出又は増大という点で生産とみた。
しかし,輸送の本質は,空間概念であると同時に時間概念である。
Rniesも輸送概念の中に「■時間的障害」の克服を全然認めなかったわけでほ ないが,彼の価値理論には時間価値(時間的障害を克服することによって 創造又は増大する価値)は考慮されなかった。
また,BoI紳tも時間的障害の克服に論及したが,『それは本源的なもの もでなく,人や財貨が場所的に離隔されてこいるとJ、う事実から生ずる−−・結 果にすぎない。Denn sie$ind nithts UrspItingliches:Sie sindlediglich eine Folge deITatsacbe,daモiMenschen und G触ⅠⅠ如mlicb 酢tIennt
Sind, 』と述べている。
ぺンソルベニ.ヤ大学Wilson教授ほ生産を有形財の生産と用役の生産と に分ち,交通ほ交通用役(tIanSpOTtatidn seIVice)を生産し,輸送せられる 財貨に対して揚所的効用(place utility)と時間的効用(timeutility)を 附加せしめると主張している。TranspoItationIeSultsin thercreation of the placeutilty ofthe aIticles transported・Place utility may be descr−
ibed as the economic val11e Of a commodity cIeated by transportingit fⅠOmthe place oIaTeain wbichit baslittle usehlness toa pla甲0Ⅰpト a¢eSin wbicbit bas gIeateIuSef吊ness oIutility・Utility,aS t‡1e te王m beI・eis used,meanS t‡1e ability to seI・VeIluman WantS OI・needs.Place
utilityis measuIedin monetaly termS by the differncesin prlCe Of the commodity at the place wheIeitis produced,Where pIe$umablyit has
little utility.to the place wheIeitisIequiIed to serve human wants・
Tbeapility ofgoods to satis董■y bumanwantsisenbancedbytI・anSpOI血tion
by making goods available not only wheIe theyareneeded butwhenthey
(1フフ)15 are needed.This resultsin time utility.
またイギリスのケンプリツヂ大学Bonavia教授は『物質ほ.一つの形態の 方が他の形態におけるよりも望ましかったり,あるいほ有用であったりす
る。
ここで,人類ほ忙がしく造物主を激励したり授けたりして,種子を果実 に鉱石を金属に変化するのである。物質ほある場所でほ他の場所に在るよ
りも又ある時にほ他の時よりも望ましいということから,輸送と配給,そ うして全商業機構が発達する。
交通の機能は,財貨をその限廊効用が比較的低い所カ†ら高い所へ運ぶこ とである。この過程は物質的変化の過程と言わば交錯せられるもので,ど の財貨の最終効用(final11tility)も各種の効用−−形相的効用,時間的効用
の−・「諸層一」より成るものと考えられる』と述べている。MatteIis moIe
desiIable oIuSef ulin one f0Ⅰm than anot王1e工ノ:and aceo工diヱ1g王y ma‡1kindis busァstimtliating oIaSSisting natllI・e tO Cbange tIle Seed to the f工uit,t‡1e Ore tO tlle metal.MatteI・is moIe desiIable at one place tban anotbeI.
at one time than another:and thus tIanSPOI享and distribtltion,a‡】d the
Whole meIChanting mechanism are evoIved.The function of transportis
to caIIy COmmOdities fIOm POints their marginal11tilty,the signifitance OfLalittl¢mO王e.0Ialiモモlele5S,i8エe】ativelyi−i紳.でムe pIOCeSSisinteェ・1e・−
aved,aS aSit weIe,Witiltbe pIOCeSS Ofpbysi¢alcもange,SO t‡1at tbe fin&lutility of any commodity can be visualised as composed of ulay芦IS,ク Of diffic扇t utiユities−0董■董加m,Ofplace,and of time・
これを要するに,Wilson及びBonaviaの所論に明ら 価値形成課程において次の如く寄与する。
素 材 素顔価値(原始産業)
形相的変化…‥一・形相価値(製造工業)
場所的変化・1・−・‥場所価値(交通業)
16(1フ8)
時間的変化 ・時間価値(−交通及び商業)
最終価値=使用価値
かくの如く考察す−ると,交通機関が生産する交通用役は場所的効用と時間 的効用が大きければ大きい程価値の高いものと言える。また場所的効用と 時間的効用の高い交通機関がより多く利用されれほされる程,国民経済的 厚生度は高いとも言える。こうなることを輸送の高度化と呼ぶ。
註1,人口密度と自動車貨物輸送藍との関係については次の相関式がある。
(国鉄営業局「全国貨物自動尊実態調査分折衷(昭和3〇,10,27_j)
Tif川…隣り合った2つの都市(iとj)との内の貨物自動車輸送量 P: 都市人口
A:都市面積
‡ogT虐。・3411・0い3530Iog駐憲)、(T=…955)
2,:Knies,K.Die Eisenbahen undihre wirkungen,1853,S.,82
Ⅹnies,K…,Der・Telegraph als VerkehTSmittel,1857,S.5,16 3,WiIson,G:L.,The Elements of Transportion,195(〕,P.Ⅰ
4,Bonavia,M.R.,The Econom童cs of Transpott,1954,pp2−3小
Ⅱ 輸送高度化理論
今,ここに,2地点間に2つ以上の交通機関が存在するとすれば,その中 で距離投入鼠に対して場所的効用(P)と時間的効用(t)のより高いものが輸送 効用(T霊Pヰt)が高い卑のと言えるであろう。ここで距離投入鼠(distance input)とほ空間を移動する場合起る抵抗を克服するために必要とせられる努 力及びその他の要素用役で,単位重患が単位距離移動する場合トンキロで表 示される0しかして距離投入鼠で生産されるものが交通用役(tIanSpO申ti?n service)で,これに対する反対給付即ち価格が輸送費用である。従って2つ 以上の交通機関の輸送効用を比較する場合,それは(輸送費用十輸送時問(
和子費用の節減))の函数と考えることができる。
(.179)1フ
各々の交通放関にはそれぞれの経済特性があり,そ・の特性に応じた合‡翌的 輸送分野がある。かかる輸送分野の設定は国民経済的にほ輸送費用十輸送時 間の最も少ない即ち輸送効用函数によって定めなけれほならない。何となれ ば,輸送効用函数の高い輸送機関を用いる方が然らざる場合よりも経済厚生 度が高いからである。
ある輸送機関への需要を止めてイ由の輸送機関への需要に切換えると.いう転 換の問題が起るのは,それらの輸送機関が競争的,またほ代沓的関係になけ ればならない。。
従って輸送機関が相互に無関係,または,独立的関係にあれほ転換の問題
自動車貨物の距離的分布(全品目) は生じない。
即ち一・定地域におけ る輸送磯関のうち,独 立関係にあるものはす べて」徐外し代替関係に あるもののみカラ問題と なる。これを転換母体 という。
今仮に自動車輸送貨 物の距離的分布図をえ が次の如くである。
転換因子としては(1)
輸送費用,(2)所要輸送 時間,(3)距離,(4)快適 贋(利便度)等が挙げ 雛 られる。輸送費用は単 輸送覚
440
400
360
320
280
240
200
160
120
80
40
0
50 10q 200 350 500 600 700 800
に区間費のみならず,修繕費,荷造貴,保険料等を含み,ある輸送機関を利 用して,財を輸送するために要した社会的費用である。輸送時間の短縮は寓 が輸送過程にある時間の短縮であるので,利子費用の節減をもたらし,また
18(180)
生鮮食料品等はその鮮度を維持し市場における財の価値を高め,財の突発的
需要,即ち,商機の獲得を可能ならしめる。
利子費用の節減される分ほ輸送過程にある財の価値に比例するので,・一一般 的に短期利子率を用いて評価できる。次に輸送距離は輸送費用と輸送時間に
よって考慮されるので独立因子と考えなくて:もよい。
最後に快適琴叉ほ利便度ほ重要な輸送選好因子であるが数字は表わすこと
が困難なので,輸送費用と輸送時問を以て輸送選好の決定因子とする0
従って利用者ほ輸送費用と輸送時問とを勘案して協有利選択の原則(Tbe
pIincipleoftbebestaltelnative)によって輸送機関を選好する。
r
b‑
Y
Tニ=ある一定距離における輸送数愚
bニ道路
t t=Tを輸送する所要輸送時間 t
Ⅸ=Tを輸送する輸送費用 r=鉄道
kr kh
この場合kh=kr,th=trの場合,または Kh=Kr,th=tIの場合は一一方 的にbまたはⅠの輸送機関を利用することになる。しかしⅩb=KI,tll=tIの 場合には輸送鼠ほ両輸送機関に配分される。
即ち,横軸に輸送費用,縦軸に輸送時間をとって,個々の輸送需要の無差 別曲線はⅩⅩ/,YY′.ZZ′の如く右下りの曲線となる。ZZ′なる無差別曲線を
もつ輸送需要は道路を,ⅩⅩ′なる無産別曲線をもつ輸送需要は鉄道を選好 し,YY′なる無差別曲線をもつ輸送驚要は鉄道,道路を同時に利用するであ ろう。
競争関係にある二つの輸送機閑,例えば道路と鉄道の輸送塩配分比をT血/
TIで示すと,それぞれほ,輸送時聞及び輸送費用の相対的関係の函数として
(181)19 表わすことが出来る。
T‡l/TI=ニY tIl/tI≠訟Ⅹ
Kb/KI==Z
とおけば
Y=f(Ⅹ,Z) ・川・ ぺ1)
Yの変化物,即ち鉄道より道路への転換鼠は次の如く示される。
dY=・‥
・ ‥(2)
dでム;==dy.で‡
代替関係にある鉄道輸送鼠T=こ対する
自動.車輪送還恥は,それぞれの輸送時問と費用との比率tb/tI,Kb/瓜Ⅰに よって決定される。
Tb/TIヱf(tb′′tI,Ⅹも/KIう
さて tb/加,温も/EIほ独立変数であるのでどのように変化するかが問題 である。しかし他の条件の等しい限り両変数と.も距離の函数である。
以上ほ静態的分析であるが,動態的に考察すれば,輸送機関の技術革新と 制度慣習等の変化を考脚と入れなけれほならない。今仮に技術的条件乃至,
経済的条件の変化をMであらわす。そうすると.tb/tI,Rb/KIはMをパラメ 一夕ーと.する距離の函数である。距離をLで示す。
Y=董(Ⅹ,Z)
Ⅹ=g(L,M)
Z==b(L,M)
即ち,・・道路及び鉄道の輸送時問と運賃はそれぞれの輸送機関の技術的条件 と距離の函数である。
t‡1;=tIl(LIl,Mb)
tI・=tI(LI,MI)
温血ご鼠b(LIl,MIl)
RI=ⅩⅠ(LI,MI)
2ロ(182)
上の函数において−M簸びLが変化するのは道路についてのみと.する。即ち,
tI,KIはコンスタントと考える。
(1),(5),(6)からYの全教分を求めると,
dy=(器誌十話芸dlい(設蓋+話芸)dlb
(7)により(3)を用いて鉄道から道路への転換量及び転換率を求めることがで きる。(7)式の第1項は距離の変化による輸送時間と費用の輸送量の比率への 効果第2項は技術的発展による輸送時間と費用の輸送量の比率への効果を示
している。
更に転換決定因子である輸送費用と輸送時間に対して二分析してみよう。ま ず輸送費用揉拒離的費用(haulage cost)と場所的費用(terminalcost)に分 けることができる。前者ほ.区間輸送に要する費用であるから距離の函数であ り,後者は発着及び管理に要する費用であるから−一応距離にほ関係がない。
自動車輸送の場合の具体的内容を言えば,燃料費,\油脂費,タイヤ・チ・ユ
−・プ蟄等ほ前者で,人件乱管理費,仁 積卸艶色装乱保険料は後者である ■
包装費,保険料の如きは/むしろ品目の種類Cに依存する。従って:輸送費用 K=KL十鼠Cであらわすこと.ができる。
次に輸送時間ほ利子費用概念に置き換えることができる。即ち輸送時間中 の全貨物は在膵状態に置かれて∵いるので,利子費用が発生すると考えられる0
従って輸送時間の短縮は利子費用の節減と考えられる。
Pc(t) C品目のt時点における†・ン当り価格
tih.j b輸送機関によるij問輸送時間
P 時間利子率 平瑚
24時間
t痺=L榊 輸送時間=
vbはも輸送機関の平均時速Km′bouI
輸送単位当りの利子費用は次の式であらわすことができる。
Pc(t)・tii・P
(183)21
従って(輸送費用+輸送時間)ほ
Tご(klヰkc)ヰPc(t)・tiいP
であらわされ,Tの値が小なれぼ小なる程,輸送効用は大である。
Ⅱ 輸送高度化の国民経済的効果
道路の整備即ち輸送高度化の国民経済的効果を(1)市場に・及ぼす効果,(2)
価格に及ぼす効果,(3)エ業立地に及ばす効果の3つに分けて原理的究明を行 ってみる。
1,市場に及ぼす効果
こゝでいう市場とほwiItSChftsgeもiet(経済鞄域)又はwiItSCもaftskI・eis
(経済圏)というもので交通と分業協働とによって結ばれる経済的関連の 及ぶ地理的範囲である。Ritschlはこれを経済的関連の空間的地域(ほumlicあe GIundlage)と呼んだ。
又CouInOtほ『経済学者の意味する市場とほ売買が行われる成る場所を 指さすものでなく,諸々の部分が自由なる商業関係によって.結合せられ,
従って価格が容易迅速に総七を通じて,同一・一、の水準をとるが如き領域の全 部を指す』と定義している。
交通の発達と市場の拡大との関係に∵ついてほ多くの学者によって二論及さ れている。最も古くは Adam Smith は分業ほ市場の広さには ,つて制限せ
られ,市場は交通によって拡大されると説いている。
また,Oppenbeimer甲相対的運送障害の法則(Cesetzdes relativen TranspoItWideIStandes)は『貨物の価格に比し運送障害が大なれほ大なれ ば大なる程,その市場は小に,価格に比し運送障害が小なれば少なる程.
この市場は大である。』ことを教える。
しかしては彼は運送障害に物的運送障害と.政治的運送障害(例えば関税 の如き)があり,この両者が市場の大きさを決定すると述べている。
LaunbaIdt交通の発達を運賃率の低減とみ,それと市場との関係を次の 数式によって説明した。生産地を難れるに従って価格は輸遥費が加算され るから高くなる。従って需要ほ減じ,ある距難において零となる。これが
22(ユe4)
市場の限界点である。
次の条件の下においては p・・‥・・生,産地の価格
f・・・1キロ当り運賃率
ヱ 生産地より距離(キロ数)
p十f■z…Z地点における価格
a…州・…消費者が認めるその財1単位の効用
W ・い消費者が貨弊単位常.認める効用
zl州……市場の限界点即ち最終需要者を見出す極点
‥消費者がその財1単位に支払う最高価格,即らZIにおける価格 pl
最終需要者を見出す極点(Zl)ほ次の算式によって得られる0
=
謹W ㌫=W fzl=吉−p 言 fzl=pl−・p Zl=
即ち極点(Zl)は最高価格から生産価格を引き運賃率にて除して∴見出さ れる。従って.市場の広さは半径Zlによって−劃される円で確される。
耶12=花(苧J2
これによって市場の範囲は運賃率の自乗に反比例することが明かであ る。
以上の場合は財Ⅰ単位の市場の範囲を求めたが,財n偶の市場の範囲も 同様にしで求めることができる。
これらの古典的学者は交通の発達を主として輸送費用の低減という形で 考え輸送時間の短縮を看過した。ただLaIdneIは輸送時問と市場の関係に
つき含蓄ある説明をなしている。
即ち彼は都市に腐敗し易い食料を供給する菜園(Vegetaも1e㌍Iden)の 広さを問題に.して『輸送速度を2倍にする交通の改善はこの円の半径を2 倍にし,3倍にする改着ほこの半径を3倍にするであろう。
(185) 23 然るにかかる半径に∴含まれる実際の土地の広さ或は鼠は半径と同じ率で
増加せずして,その自乗の割合で増加する。が故に,2倍の速力は4倍の
供給圏を3倍の速力は9倍の供給圏を与えることになる』と述べた○ これ は算式であらわせば次の如くである。
S…・・ …・・…円の面積
汀叫小・ …円周率
Ⅰ………‥ 半 径
S=打Ⅰ2 S′=花・(2Ⅰう2=4方Ⅰ2 S′′=汀(3Ⅰ)2=9方Ⅰ・2
MaISballほこれを LaIdneIの名を冠して.「運送と.取引に関する自乗の法 則.」(LaIdner,sLawofspuaIeSintransportand trade)と呼んだ。
近代経済社会においてほ,輸送の高度化は輸送効用歯数f■(Ⅹ,t)によ って測定しなければならない。今,仮に
(1)Au B2つの輸送機関があり,そのA.B両地の生産原価はA車.=BNと する。
(2)(輸送費用・十輸送時間)ほ距離に正比例して「増加し,∂1く∂2 とする。
次の図において,
輸送時問十輸送費用の小な るA輸送機関の市場範囲は Aより差は勿論,Clより 左,C2より右へ無限に拡が っているのに対してB輸送
機関の市場限界点ほ Cl】∋C2に限定される。
更に上図を立体的に考察すれば,倒立した2つの直円A,Bがあり,01,
02を輸送費用+輸送時問と.
考える。
この場合2つの直円鍾の 交線の正射形が求める市場 Ⅹ 限界線である。
β1 β2
B Y
A
24(186)
以上は2つの異なる輸送機関の市場の大きさ即ち輸送効用歯数と市場と の関係を述べたのであるが,次に市場の大きさとその地域内に行なわれる 諸輸送量と.の関係をみてみよう。即ら,
OPを産地価格,Pより遠ざかるに従つ て,輸送費用十輸送時間だけ価格は高
くなり,需要ほ漸減し,Dに到って零 となる。
PDが市場の広がり得る範囲を示し ている。
従って,市場内における総輸送最は,
次の図に於てDD′需要曲線と.し D
三角形PD()をPqを軸として回転してできる 円鍾形の体秩,即ち回転体の体積と.して求 めることができる。若しこ.の場合PqDが正 三角形の場合は次の式によって体積を求め
ることができる。
冗・(PD)2×Pqx
これを要するに,輸送の高度化による市場に及ぼす影響は益々市場の範 囲を拡大し,各市場む・一・体し,そ・の市場内におけ■る諸取引妥を増大せしめ る槻能をもっている。これを輸送高度化の市場形成機能又は市場拡大機能 と呼ぷ。
2,価格に及ぼす影響
輸送の高度化が価格に及ぼす一・般的影響に関してはCouInOtの法則があ る◇
Co−ユⅠnOtの法則は最初独立しているa,もなる2つの市場を考え,a,b両 地の需要と供給は価格の画数であるので,それぞれF(P),¢(P)であら わし,a,も両市場を区別するため古と添字a,bを用いれば次の如くなる。
Fa(Pa)=如(Pa)
Fb(Pb)=¢も(Pb)
(1)
(ユ8フ)25
しかるに,両市場内に交通が開かれ,両市場が連繋すれほ,次の方程式 が成立する。
Fa(Pa)・+Fb(Pa′ヰ・e)=¢a(Pa′)十弗(Pa′十ど)
Pa′は輸出市場になったaの価格,どはaからBへ輸送費用を示す。
(2)の方程式がPa′及び(Pa′ヰど)の画数からなって∵いることは,より穿い 輸出市場の価格が基準となって,両地内の価格の差ほ輸送費用を出ないこ
とを示している。ノ即ち CouInOt の法則ほ『運送に耐える商品ほ必ずその 価格の小なる市場よりその価格の大なる市場へ流動して,遂に2市場内の 価格の相違は輸送費以上を示さざる点に至る。』と言うのであ。
これを要するにより安い鞄出市場が基準と・なって∴両市場の価格ほ1つ になる傾向をもつ』こと.を教えている。
Dupit の法則は『交通機関の究極的目的は輸送費の低減になく却って∴生 産費(従って■価格)の低減にある』と説いている。われわれがDupuitに 教えられることは輸送距離の延長は当該貨物の価格上昇を結果しないとい
うことである。
Bigbam教授ほ Dupuit の法則を極めて容易なる方法で説明して1、る。
今仮にA.B両地を生産地とし,C地を消彗地とし,A他における生産価格 を10ドル,B地における生産価格を7ドルとする。
しかして,AよりCまでの輸送盈を2ドル,BよりCまでの輸送費を6ド ルとすれば,C地にはA地より12ドル(輸送費2ドル)で供給される。若
し輸送機関が改善され輸送費が従来の半分になったとすれば,今度はC地 に.は月地より10ドル(輸送費3ドル)で供給されるであろう。そうすれば,
C地の消費者ほ輸送費として1ドル高く支払うが,価格としてほ2ドル低 減することになる。即ちDupuitの法則は輸送の高度化は財貨の最終価格 を低減せしめると説いている。
次に輸送の高度化即ち輸送効周歯数が上がり輸送費用+輸送時間が下が る場合における輸送需要に及ぼす弾力性についてみてみ.よう。
一般に需要の弾力性(elasticity ofdemand)とは価格の変化率に対する
26(188)
需要量の変化率の割合である。
縦軸POに(輸送費用+輸送時間)を,横軸Oqに輸送需要屋をとれば,需要 曲線DDほ上方に凹なる右下り の形をとる。輸送費周・十輸送時 間がNからN′へ低下すれほ,
送需要藍は血よ りM′へ増加す る。いま,qをPの画数とすれほ q=董(P)従って,PがP′に変化 P D
D
ゼ
発 するとき,qはq′に変化するか ら,P′−P△P′q′・−q=△qとすれ は,需要の弾力性nは∴次の式に
M′
M
よって.■求められる。
△旦
n=一 lim⊥一=− lim p△q−pdq
△p→0△p △p→Oq△p qdp
p
輸送需要の単力性はn>1によって二測定せられる。
<
即ち,n>1のときほ輸送需要の弾力牲ほ大で,
n=1のときほ不弾力的で,
nく1のときは非弾力的である。
以上の考察はすぺて短期的考察であるが,これを長期的にみれば一・般に 輸送需要の弾力性は短期におけるよりも長期の方が大きいのが原則であ
る。
注 佐波宣平「交通概論」,p.75参照
DDoを時間の経過を考慮に入れない需要曲線,DDlを1年後,DD2を2 年後の需要曲線とすれば,輸送費用十輸送時間の低減が輸送需要量に及 ぼす弾力性は大きく,輸送需要量もOMo,OMl,OM2と増加する。
これを要するに輸送の高度化が価格に及ぼす影響は価格の地域差を無く
(189)2フ
し,より低廉な価柊へ一億せし め(Co11InOtの法則),しかも財 貨の最終価格を引下げる機能を
もつ(Dupuitの法則)を明らか が。
にし得た。また輸送の高度化は,ポ1 輸送費用と輸送時問の節減を N2 通じて輸送密雲巌を更に増大せ
しめ,長期的にはこの傾向は益
O M。 MI M2
々大きくなること.を証明した。
3,産業立地に及ばす影響
WebeIの立地理論は工業における立地因子(StandoItS董 aktoIen)の牽引 力理論である。彼は一腰的立地因子として,材料価格,労働軌運送費を あげ,材料価格の差異はこれを運送費の差異にみてニ,独立の立地因子と考
え.ない。
即ち,材料価格が高ければ距離が遠く,材料価格が安けれほ距離が近い と.みた。従って彼の立地理論は運送費立地論と労働費立地論に分れる。
彼の運送費立地諭は輸送費のみを立地因子とする時,工業は如何に地理 的に分布されるかを検討するのである。彼ほ運送費を定める基本的要案と
して重畳と距離,即ち,トンキロ概念を以て:し,他の要素はこの2つの概念 に換算した。かく運送費の決定要素を重畳と岸巨離とし,一一方において原料 供給地(加工材料と動力材料)他方に製品の消費市場を考慮に入れて,生 産及び販売の全過程の上でトンキロの最も小さい地点が生産地と.なる。
Webe‡理論の特徴は立地決定に基礎となるべき立地図形(StandoItSf−iguI)
を考えることである。
(1)距離図形
若し立地図形を次の条件の下における三角形とすれば