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馬奈木昭雄弁護士オーラル・ヒストリー(二)廃棄物問題

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解   題   オーラル・ヒストリーは誰の言葉を記録するのか。御厨貴 は 、 か つ て 、 リ ン カ ー ン の 言 葉 を ヒ ン ト に 、「 公 人 の 、 専 門 家 に よ る 、 万 人 の た め の 口 述 記 録 」 と 定 義 し た ( 御 厨 貴 『 オ ー ラ ル ・ ヒストリー』中央公論新社、二〇〇二年、五頁) 。 「公人」と は多様な意味があるようだが、とりわけ公職に就いた政治家 と官僚のオーラル・ヒストリーが数多く実施されている。確 か に 、 政 策 形 成 の 中 心 と な っ た 元 首 相 や キ ャ リ ア 官 僚 の 話 を 記 録 す る こ と は 、 公 文 書 で は 明 ら か に な ら な い 実 際 の 政 策 過 程 を理解する上で有意義な研究といえるのかもしれない。他方 で、その政策の影響を受ける当事者の声、その政策を変えよ うとする人々の言葉はどのように記録されるのだろうか。

  弁 護 士 法 第 一 条 は 、「 弁 護 士 は 、 基 本 的 人 権 を 擁 護 し 、 社 会 正 義 を 実 現 す る こ と を 使 命 」 と し 、「 誠 実 に そ の 職 務 を 行 い 、 社 会 秩 序 の 維 持及 び 法 律 制 度 の 改 善に 努 力 し な けれ ばならな い 」 と 定 め て い る 。 半 世 紀 に わ た っ て 活 動 さ れて き た 馬 奈 木 弁 護 士 の お 話 か ら は 、 深 刻 な 被 害 を 受 け た 当 事 者 か ら 見 え た そ の 政 策 の 実 像 と 、 そ の 政 策 を 変 え る ため の 知 見 を 学 ぶ こ と が で き る の で は な い だ ろ う か 。

  さて、今回のテーマは廃棄物問題である。大量消費の帰結 として大量ゴミが発生する。ゴミ戦争といわれた一九九〇年 代、 馬 奈 木 弁 護 士 は 廃 棄 物 問 題 に 取 り 組 ま れ た。 「 弁 護 士 と しての取り組みでは一番面白かった時代」の話である。水俣 病も廃棄物が原因となって発生した。原発も廃棄物処理の問 題 を 抱 え て い る。 い ま ま さ に プ ラ ス チ ッ ク の 処 理 が 問 題 と なっている。本稿では、馬奈木弁護士の廃棄物問題のモノの 見方を読み解くことができるであろう。

  オーラル・ヒストリーの収録は今回も久留米第一法律事務 所において実施した(二〇一九年一一月一四日、同年一二月 一 二 日、 二 〇 二 〇 年 四 月 七 日、 同 年 六 月 一 九 日 ) 。 馬 奈 木 弁 護士には、長時間お付き合いいただいただけでなく、原稿に 目を通して、加除修正を施していただいた。古田順子さんに は、原稿の入力作業など、ご協力をいただいた。心より感謝 申し上げたい。 馬奈木昭雄弁護士オーラル・ヒストリー (二) 廃棄物問題

土   肥   勲   嗣

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ゴミ戦争   産 業 廃 棄 物( 以 下、 産 廃 ) が 全 国 的 に 問 題 に な る の は 一九九〇年代に入ってからですよね。ゴミ戦争といわれてい た。全国各地で問題になった。産廃処理の考え方は最終処分 場と焼却施設の両方あって、埋めて捨てるという考え方と燃 や し て し ま う と い う 考 え 方 が あ る。 最 初 は 埋 め て 捨 て る で やっていたわけですね。それも特別な処理はいらないという 考え方である。安定型処分場といいます。一定の処理が必要 だというのは管理型の処分場です。捨てられるゴミがそもそ も危険だから外部に漏らしてはならない、密閉してしまう遮 断型ですね。捨てるといった場合、この三つの処理の仕方が ある。原発の放射性物質の場合は本来遮断型に捨てるのだと 考えますが、とうてい対応できません。捨てる場所も、捨て る方法も明らかにせずに原発稼働を続けるおかしさのつけが 今問われています。

  福 岡 で い う と 筑 豊 に 次 々 と 産 廃 処理 場 が で き る 。 炭 鉱 跡 地 に バ ン バ ン 捨 て た 。 も う ひ と つ は 山 林 経 営 が つ ぶ れ て 、 山 の 土 地 が 処 理 の し よ う が な い と い い ま す か 。 だ か ら そ こ を 産 廃 業 者 が 目 を 付 け た わ け で す ね 。 山 林 経 営 の 放 棄 地 の 山 間 を買 い 叩 い た 。 日 本 中 の 山 が 産 廃 処 理 地 の 候 補 に な っ た 。 そ れ も 安 定 型 の 処 分 場 で す 。 福 岡 で い え ば 八 女 の 矢 部 、 上 陽 、 星 野 、 立 花 。 山 は み ん な 産 廃 処 分 場 の 捨 て 場 に な っ た わ け で す 。

  法律の建前からいうと、日本政府のものの言い方からする と、安定型処分場に捨てていいのは、安定して変化しない安 定 五 品 目 で す 。 ま っ た く 変 化 し な い か ら そ の ま ま 捨 て て い い 。 処分場というのは捨てたゴミそのものが流れだすのを防止す る。捨て場としてきちんと保全できればいいという考え方で す ね。 ゴ ミ そ の も の に は 何 の 危 険 性 も な い 。 だ か ら そ の ま ま バ ン バ ン 捨て て い い と い う こ と です 。 と こ ろ が 実 態 は、 変 化 し な い は ず の と こ ろ か ら 真 っ 黒 な 廃液 が 流 れ る 、 逆 に 真 っ 白 な 廃液 が 流 れ る 。 一 番 激 し い の は 処 分 場 で 火 が 出 て 燃え 出 す 、 と い う 騒 ぎ が 日 本 中 で 起 き た 。

  『 法 学 セ ミ ナ ー 』 が 一 九 九 七 年 に 「 水 源 地 に ひ ろ が る ゴ ミ 戦 争 」 と い う 特 集 を 組 ん で い る( 第 四 二 巻 第 七 号 ) 。 全 国 的 で話題になったのが御嵩町、一九九一年ですね。さらにその 前 に 東 京 の 日 の 出 町 が も っ と 話 題 に な っ た。 大 変 な 騒 ぎ に なったのは、目の前で汚い実体が見えるからですね。しかも 全国一斉だった。もうひとつは、業者のお行儀の悪さですよ ね。零細業者であると同時に、安定型の処分場は暴力団の資 金源になった。資金がいらないでしょう。空き地を買い叩い て、そこにゴミをボンボン捨てればいいわけですから。

  私が最初に取り組んだのが一九九二年の上陽町ですね。公 害問題は、まず四大公害訴訟で勝って、大阪空港訴訟で差止 めに道を拓いたわけですね。たとえば水俣病第一陣の勝訴判 決 の 判 例 時 報 の 解 説 に は、 「 被 害 が で て か ら で は も う 遅 い。 公害被害を止めるためには事前の差止めしかない。ところが 立法が整っていない」という指摘がある。判決を書いた齋藤

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次郎さんが自分で書いたというのが定説ですけど、これは原 告のわれわれが主張したことです。損害賠償から差止めへと いう流れになったわけですね。差止めを求める大きな流れを 受けて、大阪空港で午後八時以降に飛行機が飛ぶのを差止め る。大阪高裁でいったん勝って、最高裁で敗れるわけですけ ど、とにかく中心課題は差止め訴訟に移ったわけです。差止 め訴訟で勝った事例が出だしたのが、私が取り組んだ牛深の し 尿 処 理 場 、 そ の ほ か に も あ る 。 そ の あ と 勝 つ の が 大 勢 に な っ たのが産廃処分場です。

宮城県丸森町

  産廃処分場の差止が勝つようになったリーディングケース が一九九二年二月の仙台地裁、宮城県丸森町の事件です。い ま 丸 森 町 は 水 害 に 遭 っ て い る( 二 〇 一 九 年 一 一 月 現 在 ) 。 こ こで差止めの仮処分を初めてとった。

  裁判の流れは、最初に先頭をきった先人がどういう裁判を するかである意味運命が決まる。負けるとなると、ずっとそ れで負ける。勝つとなるとずっと勝つ。丸森町で住民側の増 田隆男弁護士が優秀だった。同時に協力した専門学者、京都 大学防災研究所の中川 鮮

あきら

先生がすごかった。中川先生は私も 一緒に取り組みました。

  法律の専門家にはいろいろな意見があるでしょうが、私の 意見では差止め訴訟で勝つ要件は二つだけです。ひとつは生 命身体健康に被害が及ぶことを立証すること。もうひとつは 現地で実際に止めていること。この二つの要件を満たさない と差止め訴訟は勝たないというのがわたしの意見です。これ は極めて正しいと思います。いままで勝った事件はみんな二 つの要件を満たしている。逆にこの要件を満たさない訴訟は 勝てない。牛深し尿処理場で勝ったのもそうです。し尿処理 場が危ないという立証ができていた。   丸 森 町 を や っ た 増 田 弁 護 士 と 中 川 先 生 が 具 体 的 な 事 実 提示 を 実 行 し た す ば ら し さ な ん で す 。 つ ま ら な い 理 屈 を 捏 ね回 さ な か っ た 。 ひ た す ら 現 場の 状 況 を 、 そ れこ そ 足 で 稼 い だ わ け です ね 。 徹 底 し て 産 廃 処 分 場 の 捨て 場 の 実 態 が 安 定 五 品 目し か 捨 て な い な ん て ち ゃ ん ち ゃら お か し い と い う 事 実 を 明 らか に し た わ け で す ね 。 各 地 の 処 分 場 の 資 料 が そ ろ っ て い る 。

  わ れ わ れ は 九 州 廃 棄 物 問 題 研 究 会 と い う 弁 護 士 の 勉 強 会 を つ く っ て 、 徹 底 し て 反 対 す る 。「 処 分 場 は ひ と つ も つ く ら せ な い」 と い う ス ロ ー ガ ン で 取 り 組 ん だ わ け で す 。 山 鹿 の 処 分 場 反 対 訴 訟 に 結 集 し た と き 、「 丸 森 町 の 産 廃 処 分 場 を 止 め た 仮 処 分 の 判 決 を 守 り 抜 く 」 と い う の が わ れ わ れ の 合 言 葉 だ っ た 。 見事に守り抜いたと思います。何でも捨てているから危ない に決まっているわけですけど、安定型処分場というだけで危 な い と い う と こ ろ ま で 追 い 込 ん だ。 だ か ら 日 弁 連 は、 「 安 定 型処分場は許可すべきではない、法改正すべきだ」という意 見書まであげています。

  山鹿で裁判をするときは、丸森の判決を守るというスロー

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ガ ン と 同 時 に、 丸 森 町 の 裁 判 の 資 料 を 全 部 も ら っ て き ま し た。 行 っ て コ ピ ー さ せ て も ら う。 「 全 国 各 地 で こ う な っ て い ます」と、その資料を裁判に全部出した。全国状況に詳しい のは中川先生で、現地の住民運動、裁判の仕方から証人尋問 の仕方まで意見を言っていた。専門は地質です。先生は大雨 のために、お年寄りの施設が土砂崩れに遭って、死傷者がで た事件で「危ないということが予見できた」と原告側につい て証言した。土木学会の最高権威が国側についていたがその 証言を破って見事に勝った。この人は勝てるんですよ。喧嘩 の仕方がわかっているから。いらん理屈はいわずにとにかく 危ないという事実をひたすら提示した。この正しさですね。

  文字通り足で稼ぐ、具体的事実で勝つというのは、四大公 害 裁 判 の 原 点 で す け ど ね 。 イ タ イ イ タ イ 病 の 弁 護 団 が 唱 え て 、 わ れ わ れ 水 俣 が そ れ を 受 け 継 い だ。 そ れ を 文 字 通 り 産 廃 で や っ て み せ た。 こ れ が 産 廃 の リ ー デ ィ ン グ ケ ー ス に な っ た。 だから産廃で勝つのが当たり前になった。とにかく安定型は 危ないといって勝った。

管理型処分場

  問題は管理型です。管理型は、有害物質を含んでいて危な いから、そのまま処理しない排水を流してはならない。もち ろん廃棄物自体が外に漏れてはならない。問題は廃棄物に触 れた水が未処理のままで外に出てはならないというルールで すね。原発も同じ論理になる。福島では汚染水を処理できな い ま ま、 海 に 放 流 し よ う と し て い る。 と ん で も な い こ と で す。そのルールを守っているかどうかという争いになるわけ ですね。守っているかどうかを判断する国の基準がある。そ の基準を実行すれば守っているというのが、国、県、業者も 全 部 同 じ 理 屈 で す。 わ れ わ れ は、 「 い や、 そ れ を 守 っ て い る ということを証明できていないよ」 、 「それを守っているから と い っ て 流 し て い な い こ と に は な ら な い よ 」 と い う 主 張 で す 。 こういう風にしなさいという国の設置の基準、構造の基準が ある。その通りの基準にしたから大丈夫だというけど、われ われは、その構造にしたからといって漏れないことにはなら ないよと主張した。   漏 れ な い よ う に す る 基 本 は シ ー ト を 敷 く。 「 シ ー ト を き ち んと敷いている。だからもれない」というわけですね。最初 の議論はシートが破れるかどうかという議論です。日の出町 の時代は、鉛筆の芯、先の尖ったもので突いたら破れる。鳥 が突いて破いたという有名な話がある。それくらい脆い。そ れはそうだということになって、それから厚いゴムシートに なる。ゴムシートだって破れるから最後はとうとう五層の構 造になった。シート自体は三層です。三層のシート間に遮断 する二層がはいる。それで五層になる。五層シートの間に緩 衝材がはいっている。それはもらさない緩衝材です。普通に 言 わ れ て い る の は 、 広 い 処 分 場 に 一 枚 で 引 く わ け に は い か な い 。 必ずつながないといけない。そのつなぎ目が破れる。

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  中川先生の話は極めて明快です。モノの考え方がむちゃく ちゃ面白い。処分場では山の谷間にシートを敷く。水が流れ 込むように中央に排水管が必ずある。ゴミは排水管の上にも 積まれる。排水管の上の部分とそれ以外のところではかかる 圧力が違う。一枚のシートの引っ張る力が排水管があるとこ ろ な い と こ ろ の 圧 力 が 異 な る こ と に よ っ て 管 の 周 辺 が 破 れ る。有名な話で関西空港は現在でもそれがドンドン沈んでい る。造ってから一メートル以上沈んでいます。全体として問 題にならないのは、同じ程度に平らに沈むからです。建物の 構造物としては傾いて沈んでいない。だからいけないのは沈 下そのものではなく、不等沈下、あるいは不同沈下。要する に同じでない沈下がいけないわけです。同じように沈下する の な ら い い。 と こ ろ が ゴ ミ が 同 じ で も 沈 み 方 が 違 っ て く る と、そこが破れるに決まっている。五層シートでもです。だ から処分場の構造上そうなっているから必ず破れる。中川理 論 の す ば ら し い と こ ろ で す ね。 尖 っ た も の で 押 さ な く て も、 不同沈下によって破れます。絶対に避けることができない。

環境ホルモン

  次の問題の方がわたしはより重要だと思っています。いま のは構造上漏れるという話です。今度はゴミに触れた水が流 されるとき、処理した水が実は安全には処理されていないと いうことです。これが鹿屋の処分場の判決です。その理屈は ふたつある。   ひとつは「処理した水は安全です」というけど、その意味 は国の排水基準値を満たした水が流れている。クリアしてい る。水俣病もそうでしたよね。国の基準値はクリアしていた よね。だけど有機水銀は規制をかけていなかった。規制をか け て い な い 物 質 が 流 れ る。 「 規 制 を か け た 物 質 が 基 準 値 内 で 流れている」といったってダメなんですよ。規制をかけてい ない危険物質がある。われわれが正面から打ち出したのがダ イオキンシン、ようするに環境ホルモンです。われわれは環 境ホルモンの危険性を正面から掲げてたたかった。これが大 成功した。一九九〇年代から二〇〇〇年にかけて環境ホルモ ン が 一 番 問 題 に な っ て い た。 特 に 九 州 で は カ ネ ミ 油 症 で す。 ダイオキシンによる被害と認められました。裁判所も特にダ イ オ キ ン シ ン は と い う 議 論 に な っ た。 「 ダ イ オ キ シ ン が で て い る よ 」、 「 規 制 を か け て い な い じ ゃ な い か 」 と い う 議 論 で す 。

  もうひとつの議論が、そもそも安全、安全でないという量 の 問 題 が あ っ た。 毒 劇 物 法 が 規 制 す る 法 律 の 根 幹 で す よ ね。 毒劇物法の規制の基準値の単位はミリグラムです。ミリグラ ムの単位で考えるときの危険のものの考え方は、 二十四時間、 四十八時間で発病する値です。百匹のマウスのうちの半数が 二十四時間、あるいは四十八時間で死ぬ量なんです。これは 単位がミリグラムなんです。同じ考え方で基準値が変わった のが水俣病です。水俣病はPPMで議論するでしょう。PP M 百 万 分 の 一 で は マ イ ク ロ グ ラ ム で す。 P P M と い う の は

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パ ー セ ン ト。 同 じ 単 位 な ん で す け ど。 一 グ ラ ム の 千 分 の 一。 単位は必ず十の三乗になります。ミリグラムは千分の一。マ イクロというのは百万分の一。その次の量がナノで十億分の 一。そしてついにわれわれの議論はピコまでいった。一兆分 の一。十の三乗、六乗、九乗、十二乗まできた。

  荒 っ ぽ く い う と 水 俣 病 も ミ リ か ら マ イ ク ロ、 P P M ま で いったのは、慢性水俣病の場合、原因物質が微量で長期に汚 染されて蓄積したからです。一回一回の排水量は問題になら ない量なんだけど、それが長期にわたって蓄積する。水俣病 の場合は食物連鎖によって濃縮する。濃縮し、かつ蓄積する ことによって排水では危険ではないと考えた量が人体に届く ときには危険量に達するというのが水俣病なんです。それで ミリからマイクロに危険物の単位が変わったわけですね。

  それがなぜ現在ナノにいくのかというと今度は環境ホルモ ンの議論になる。これまでは発病には一定の量があるという ものの考え方なんですよ。人体への影響が一定の量までこな いと発病しない。 これを 閾

いきち

値 といいます。 発病する量ですね。 水俣病でも汚染量と症状の関係で、汚染量が増えるとあると ころで発病する。汚染量が体内に取り込んだ量マイナス排出 量、これが蓄積量で、その量が一定の量にまで達した時発病 す る と い う の が 日 本 政 府 の 説 明 で す 。 わ た し は 嘘 だ と い う 。 出 て 行 っ た 量 を 単 純 に 引 い た ら い け な い。 体 の な か を 通 っ た のは悪さをして出ていっている。単純に引き算をしたらいけ ない。わたしの意見は積分した量だと思っています。   環境ホルモンの危険性はシングルヒットというものの考え 方 な ん で す。 汚 染 量 と 症 状 の 関 係 が 単 純 な 一 直 線 で は な い。 閾値があるという考え方は一塁ベースにいって、二塁ベース に い っ て も、 ま だ 三 塁 ベ ー ス、 ホ ー ム イ ン( す な わ ち 発 病 ) するまでには余裕がある。日本政府は、ダイオキシンは二塁 ベースを周ったあたりだといっていました。発病する量には ならない。日本政府の考え方だと入った量と排出量を引き算 しますから、一生取り続けていてもその範囲内だったら発病 しないという。発病しないとわかっていても毎日毎日、有害 と わ か っ て い る も の を 体 内 に 取 り 込 む 人 が ど こ に い る の か、 と私は思います。日本政府は「発病しません。一生大丈夫で す」といってもそれが本当であっても私はお断りします。   環境ホルモンの問題はこの国の考え方は決定的に間違いだ と突きつけた。環境ホルモンとは、人間のホルモン物質の作 用をかく乱する物質です。たとえ話でウグイスとカッコウの 話がある。 カッコウが卵をよそのウグイスの巣に産み付ける。 その卵は先に孵るようにつくられている。 一日先に孵化して、 自分が生き残るために、ウグイスの卵を巣から落とす。馬鹿 力を一定時間だけ働くというホルモン作用をもっている。そ の力を発揮できる限定された時間がある。その時間内にその ホルモン作用を撹乱する物質が入ったら、蓄積濃縮という概 念はいらず、極めて微量でもただちに影響が及んでしまう。   遠くに嫁に行った娘さんが産廃処分場の近くの実家に帰っ て一週間だけ羽を伸ばして帰った。産廃処分場の影響はその

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一週間だけです。ところがたまたま妊娠していた。たまたま 手足が成長する時期にそれを阻害する環境ホルモンの物質が きたら、手足が成長発達しない。一番わかりやすいのがベト ちゃんドクちゃんです。ちょうどその時期に成長するホルモ ンを阻害する物質が微量入った。

  こ れ が 環 境 ホ ル モ ン の 恐 ろ し い と こ ろ で す 。 閾 値 が な い 。 そ れ を シ ン グ ル ヒ ッ ト と 俗 に い う わ け で す 。 い ま まで は 蓄 積 濃 縮 し て 本 塁 ま で 帰 ら な い と 得 点 が は い ら な か っ た の が 、 一 塁 に 出 た だ け で 得 点 に な る ( す な わ ち 発 症 す る ) ル ー ル 。 ま っ た く 新 し い ル ー ル で わ れ わ れ は 危 険 性 に 直 面 し て い る 。 体 内 の ホ ル モ ンバ ラン ス を 乱 す 量 で い い 。 め ち ゃ く ち ゃ 微 量 で い い 。 そ れ で ナノ ま で き た 。 十 億 分 の 一 の 量 で も 危 ない 。 環 境 ホ ル モ ン と し て 働 く 物 質 が ま だ そ の 多 く が 特 定 で き て い な い 。 ダ イ オ キ シ ン と か 、 い ま 百 近 く 特 定 で き て い ま す け ど ね 。 ま だ ま だ わ た し た ち が 知 ら な い 未 知 の 物 質 が た く さ ん あ り ま す 。

  不幸なのが、この頃、環境ホルモンという話を全然聞かな い。一九七〇年代、四大公害裁判を始めたころは、カーソン の『沈黙の春』が問題を指摘した本でした。 『沈黙の春』は、 有機化学物質、とりわけ塩素を使った物質によって生物がみ んな死んでしまう。卵は孵らず、春に鳥がさえずらない。そ れ で『 沈 黙 の 春 』 、 有 機 化 学 物 質 の 恐 ろ し さ、 と り わ け 塩 素 化合物の恐ろしさを警告した本です。

  ところがその二〇年後『奪われし未来』という本になるわ けですね。これが環境ホルモンです。環境ホルモンによって わたしたちの子どもたちの未来が奪われた。ちょうど二〇年 の 間 に 危 険 性 が そ こ ま で き た。 そ の 本 の 序 文 を ゴ ア が 書 く。 これが大統領候補です。大統領選でたたかってブッシュに敗 れる。ゴアは環境ホルモンを徹底して規制するという姿勢を 打ち出していた。勝ったブッシュ側はそんなこと大嫌いなひ とたちのグループでしたので、環境ホルモンの話はどっかに 吹っ飛んだ。大統領が先導するような環境ホルモンの研究は なくなった。   しかし、危険なものは危険に決まっている。環境ホルモン は 廃 棄 物 の 裁 判 で は 裁 判 所 が 私 達 の 主 張 に わ り と の っ て き た。だからわれわれは安定型から管理型の処理場の差止まで 勝ち続けたわけです。敗れるようになったのが、行儀の悪い 業者から自治体に移ったからです。自治体に移ったらわれわ れの主張はまともに検討してもらえず、行政の裁量権がある という議論にすり替えられてしまった。久留米市にも簡単に 負ける。裁量権があるからという理由で危険性の判断をまと もにせず負ける。   もうひとつは、焼却施設です。焼却施設は危険な排出量が 微量も微量ですね。まだ希釈理論が生きているわけです。水 俣病の裁判のときも希釈理論、水処理というのは薄めればい い、閾値があるという考え方でした。閾値以下にすれば発病 しない。閾値以下にしても蓄積濃縮すると閾値に達するとい うのが水俣病です。そもそも閾値がないのが環境ホルモンで す。単位をミリからマイクロ百万分の一、そして十億分の一

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に い く わ け で す 。 し か し 危 険 な 量 が 十 億 分 の 一 ( ナ ノ ) に い っ て も 大 気 汚 染 は 違 う 。「 大 気 だ か ら 希 釈 さ れ る か ら 、 危 険 量 に は な ら ん で し ょ う が 」 と い う 。 こ れ が 突 破 で き な い わ け で す 。

規制の単位

  日弁連がダイオキシンを規制すべきだという意見書を出し た時に、日本政府は「ダイオキシンは危なくありません」と いった。それから一年ほどで規制し始めた。それが排出され るところでダイオキシンを八〇ナノで規制しました。環境ホ ルモンだから単位はナノです。あっという間の一年、二年で 規 制 を 厳 し く し ま す。 そ の 後 い く ら に な っ た と 思 い ま す か。 〇 ・ 四 ナ ノ で す。 す ご い で し ょ う。 ダ イ オ キ ン シ ン の 規 制 値 は外にでるときには〇 ・ 四ナノだった。

  久留米市の八丁島の焼却施設がその基準を超えたことがみ つ か っ た 。 い つ も 超 え て い る に 決 ま っ て い る と 思 っ て い ま す 。 しかし、年に一回測ればいいというおかしな法律で、常時測 れば超えているのに決まっているのに、計測するときだけ規 制値を超えないように操業する。計測するときだけ危ないも のを燃やさなければいい。絶対安全に決まっているものだけ を燃やせばいい。普通であれば計測で超えることはありえな い。 し か し 、 こ の 前 超 えた 。 な ぜ ば れ た か と い う と灰 の方 か ら ば れ た 。 灰 は さ す が に 調 べ ら れ ま す か ら。 煙 の 方 は 煙 突 か らでたら大気で無限に薄められてしまいます。   松葉のダイオキシン量を測っているデータがあります。な ぜ松葉かというと、すぐ入れ替わるから、最新の汚染のデー タがでてくる。久留米も危ない。理屈をいうひとがいて「発 生源は焼却施設とは限らないよね」といわれる。車のディー ゼルエンジンです。もちろん「ほかにも煙を出しているとこ ろ い っ ぱ い あ る、 焼 却 施 設 の せ い に さ れ た ら た ま り ま せ ん 」 という議論で、規制できない。   日 本 政 府 は せ いぜ い マ イ ク ロ の 単 位 で し か 危 険 を 考 え ませ ん 。 そ れ が な んで 世 界 的 に は ピ コ に な る の か 。 アメ リ カ は ピ コ で す 。 ち な み に ピ コ と い う 単 位 は 荒 っ ぽ く 言 う と 五 〇 メ ー ト ル プ ー ル に 目 薬 を 一 滴 落 と し た 程 度 の 量 で す 。 マ イ ク ロ 、 ナ ノ 、 ピ コ で そ れ ぞ れ 何 を 危 険 と 考 え るか 危 険 性 の概 念 が 変 わ り ま す 。今 度 は 発 がん 性 で も のを 考 える 。 十 万 人 に 一 人 発 病 す る 量 だ と ナ ノ の 議 論 な ん で す 。 ピ コ の 議 論 は 百 万 分 の 一 、 百 万 人 に 一 人 が 発 病 す る 量で す 。 な ん で ピ コ と い う 数 字 を 議 論 す るこ と に な っ た の か と い う と 、有 名 な 実 験 が あ っ て 、ダ イ オキ シ ン を 赤 毛 サ ル に 投 与 し た わ けで す 。 そ れ が ガ ン に な る 確 率 が 上 が っ た 。 ガ ン の 発 病 率 が 百 万 分 の 一 を 超 え る 量 が ピ コ で す 。 だ か ら ア メ リ カ は ピ コ の 単 位 で 規 制 し ま す 。

  廃棄物の議論ではナノの単位で考えるのは常識です。廃棄 物以外でその議論をしようとすると急にとんでもないことに なる。われわれがまずやったのが電磁波です。単位が排水と 電磁波では基本から違うという専門家の議論になるけど、考 え方は同じだとわたしは思っている。危険性をミリで考える

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か、マイクロで考えるか、ナノで考えるか。いまミリの単位 で議論されている話題の物質は何だかわかりますか。原発の 放 射 性 物 質 で す 。 現 場 で 働 く 労 働 者 が 即 座 に 発 病 す る 量 で す 。 電磁波ではミリで議論するのはとんでもない、ばかばかしい 危険極まりない話なのです。外国ではさすがにマイクロで議 論します。ミリでは議論しません。ところが日本の電磁波の 基準値(たとえば電子レンジ)が一〇〇〇マイクロです。す な わ ち 一 ミ リ な ん で す 。 電 磁 波 と い う の は 放 射 性 物 質 と 同 じ で す か ら ね 。 だ か ら ミリ で 議 論 し て 労 働 者 の 安 全 の 規 制 値 が 二 〇 ミ リ と い う の は 根 本 的 に お か し い。 と ん で も な く 危 険 だ と思います。

  規制値のものの考え方は誰に対して適用するのかという問 題でもある。福島の事故があってすぐに食料品の規制値が外 国と比べると日本の方が緩くなった。御用学者がテレビで思 わ ず 言 っ て し ま っ た。 「 チ ェ ル ノ ブ イ リ は 事 故 直 後 は も っ と 緩かったですよ。規制できるようになったから今の、より厳 し い 水 準 に な っ た ん で す よ 」 。 思 わ ず 本 音 が で た。 極 め て 正 し い 国 や 業 者 の 本 音 だ と 思 い ま す。 安 全 か ど う か で は な い。 外国のその数値だったらいま福島では適応できない、やれな い。 チ ェ ル ノ ブ イ リ は い ま や れ る と こ ろ ま で き た。 私 達 は 「基準値は厳しくなる一方で緩くなった例なんかないだろう、 だからいまの基準値が安全とはいえない」とずっと言ってき ま し た 。 と こ ろ が 福 島 事 故 で 初 め て 労 働 者 の 規 制 を 緩 く し た 。 本 当 に 安 全 性 で は な く 必 要 に 応 じ て。 そ う し な い と 働 け な い か ら で す。 従 来 の 基 準 値 だ と 現 場 で や っ て い る ひ と み ん な ひっかかってくる。緩めないと仕事ができない。食料品もみ んなひっかかる。そこでチェルノブイリよりはるかに緩い数 字です。   御 用 学 者 だ か ら あ る 意 味 で 正 確 に も の を い っ て い る。 「 た だちには発病しません」と。そうなんです。ミリというのは そういう単位なんですよ。ミリというのはただちに発病する 量なんですよ。十年後二十年後発病するというのがマイクロ です。環境ホルモンなみに染色体異常をきたす量がナノ、発 ガンまで考えたらピコです。放射性物質であろうが、電磁波 であろうが、 毒物であろうが、 単位はみんな同じ考え方です、 というのが私の意見です。実態にそくした意見です。廃棄物 をめぐっての論争の大きなものの考え方ですね。 未知の危険物質   九 州 廃 棄 物 問 題 研 究 会 は 、 基 本 は 水 俣 病 の 弁 護 団 で す か ら 、 水俣病のものの考え方が徹底している。それで組み立てたの でいままで勝ち続けてきた。いままで原発をやってきた弁護 士たちは原発の専門家なもんだから、ものの考え方が技術者 と同じ考え方をする方が多いようです。同じものの考え方を す る か ら そ れ を 疑 問 に 思 わ な い。 わ れ わ れ は ニ セ 科 学 論 争、 技術論争を否定する立場で出発していますから。

  廃棄物問題もゴミ弁連というのがありますけど、同じ産廃

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処 分 場 の 危 険 性 も、 構 造 上 漏 れ る 方 に ア ク セ ン ト が あ っ て、 「 処 理 で き な い で し ょ う、 特 に 環 境 ホ ル モ ン は だ あ だ あ 流 れ だよね」とわたしがいうほどには、あんまり強く主張されな い。 わ た し は「 む し ろ 処 理 し た 放 流 水 の 方 が 問 題 な ん で す よ 」 。 未 処 理 で 流 れ る の は い わ ば ア ク シ デ ン ト で 例 外 的 に 流 れ る 量 で す か ら。 「 処 理 水 は 流 れ て い る 方 が 正 常 の 量 で し ょ うから、毎日流れている方に含まれている毒が危ないでしょ う」というのがわたしの意見です。鹿屋の裁判は裁判所がそ う だ と、 「 基 準 値 内 に 処 理 し て い る 保 証 は な い 」 と い っ て、 われわれが勝つんですよね、放流水は処理できない。技術的 に も そ う な ん で す よ 。 廃 水 処 理 は 基 本は 薄 め ると い う 考 え 方 で す 。 薄 め て も ダ メ だ。 物 質 自 体 を 違 う 危 険 で は な い 形 に 変 えないといけないわけですね。その物質を違う物質に変える ということは化学的にはその物質が特定されているというこ となんです。特定されていない、未知の危険物質に対しては まったく手が打たれていないよね。

  未知の危険物質がそんなにあるわけではないといままでは 毒劇物法で考えてきたわけですけど、われわれが問題提起し た の が 有 機 化 合 物 の 危 険 性 で す。 つ ま り 自 然 界 に 存 在 し な かった、人間が造りだした毒物です。生命体が地球に誕生し て以来三十五億年以上営々として毒とたたかい続けてきた防 御体がある。自然界に存在する毒については抵抗力を持って いる。個体でいうと最も脳を守らないといけない。種でいう と胎児を守らないといけない。だから関門をつくった。脳関 門と胎盤で毒がいかないようにする。三十五億年以上かかっ て営々として防衛機能をつくりあげてきた。ところが水俣病 も カ ネ ミ 油 症 も ど っ ち も そ の 防 衛 機 能 を や す や す と 突 破 し た。脳がおかされ、かつ胎児がおかされた。なぜかというと 生物体が毒と思っていないから。生物体が知らない毒物、人 間が造り出した毒だから、防衛機能は働かない。新しい怖さ だと思います。 電磁波裁判   わたしの友達が九大の教授をしていた。磁石を使った実験 をやっている。強力な磁場をつくるそうです。私が「ピップ エレキバンはものすごくよく効くよ」といったら、 「そりゃ、 効 く く さ。 自 然 界 の 何 百 万 倍 の 磁 力 は 効 く に 決 ま っ て い る。 逆に効くということはいろんな影響を与えている。いい影響 しか考えてないかもしれないけど、悪い影響も一緒に与えて いる」と。有名な話で、伝書鳩が飛べなくなった、自分の位 置のバランスがとれなくて巣に帰れなくなるのは電磁波の影 響だと言われています。自然界の何百万倍の電磁波を浴びて いいわけがない。自分たちは実験をするときには厳重に完全 に防御して近くに寄らない。電磁波って怖いんだよ。その話 を聞いてからは電磁波は危ないと信じるようになった。やっ ている専門家がそういっている。

  電 磁 波 の 裁 判 を や る と、 「 電 磁 波 は 影 響 な い 」 と 業 界 の 専

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門家はいうけど、電磁波の機器を医薬品として有効だと認め ている商品がある。いい影響だけを認めて悪い影響を認めな い、そんな都合がいいことがあるのか。影響があるというこ と は 何 よ り の 証 拠 じ ゃ な い で す か と 裁 判 所 に い う ん だ け ど。 理屈からいえばそうに決まっている。危険性のものの考え方 の基本です。廃棄物では裁判所がのってきた。電磁波ではな ん で 危 険 だ と い う 考 え 方 に の ら な い の か。 ま し て い わ ん や もっと危険に決まっている原発でなんでのらないか。いみじ くも裁判所が判決でいっているのが正しいと思います。社会 通念という言葉です。

  電磁波が危ないという世界中の研究論文が集められている 報告書がある。EUで専門家が十人ばかり集まってそれぞれ の専門分野の信用できる論文だけを精査して一冊の報告書に した。この内容がすさまじい。危ないに決まっているとすぐ 理解できます。EUは面白いですね。EU議会がこの報告を とりあげた。子供の携帯電話の使用を禁止した。日本では子 供には安全のために持たせている。同じ資料をわれわれも当 然ながら裁判所に提出する。EUでは議会で正しいと、警告 を出して規制すべきだと決議をした。フランスの裁判所で携 帯電話の大きな会社の中継塔の移転と損害賠償を求めた訴訟 を起こした。その裁判は一審で勝ち、ベルサイユの高等裁判 所でも勝った。

  われわれが裁判所に準備書面をしっかり書いて正面から問 いかけた。同じ資料を使って、同じ議論をしている。そして 業者は同じ反論をしている。フランスの訴訟で住民側もこの 資料によって危ないと主張した。フランスの裁判所は危険性 を認め中継塔の移転を命じた。損害賠償も命じた。日本の裁 判 所 は 何 と 答 え た と 思 い ま す か。 「 日 本 と フ ラ ン ス は 法 制 度 が 違 い ま す か ら 」 。 結 論 の 違 い は、 そ う で は な く 危 な い と 思 うか思わないか。日本の裁判官は、同じ資料をみて、危ない と思わない。   裁 判 所 の 答 え は、 「 私 が 思 う か 思 わ な い か で は な い、 社 会 通 念 で 思 う か ど う か。 」 こ れ が 裁 判 官 が 本 音 で い い た い と こ ろです。社会一般で危ないと思っていないでしょう。フラン スで勝てるのは、社会一般で危ないというところまで来てい る。EU議会では危ないと思っている。日本の国会ではそう は思っていない、というのが本音で判決に書きたいところで す よ。 原 発 の 判 決 で は「 社 会 通 念 」 と は っ き り そ う 書 い た。 事故が起きると社会では思っていない。   私達が社会通念で勝ったのは水俣病の三次訴訟の第二陣判 決、国に責任があることは社会通念です、と言った。国に責 任があるとみんな思っているよ。三次訴訟の第一陣は私達が 主張したありとあらゆる法律で勝った。第二陣は国に責任が あるに決まっている。社会通念はそうだといって勝った。   原発でも私達はそういったわけですよ。ところが川内原発 で敗けた。社会通念で危ないと思われていないよといって負 けた。逆に使われた。私達法律関係者は皆怒ったけど、裁判 所から足元をみられているからしょうがないと私は受けとめ

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て い ま す。 一 番 足 元 を み ら れ た の は、 仮 処 分 を か け た と き、 九 電 が 仮 処 分 の 申 請 者 に 損 害 賠 償 の 脅 し を 打 ち 返 し て き た。 こんな恥ずかしいことがあるか。人の命がかかっているから 申請者、原告に対し損害賠償の脅しをかけるなんてとんでも ないと本格的に反撃しないといけない。しかしきちんと反撃 できなかった。それで裁判所に完全になめられたと思ってい ます。文句のいいようがないと思います。本当に危ないと思 うんだったらもっと日本中裁判が起きてもおかしくない。だ から私はあながち裁判所がとんでもない判断をしたとは思っ ていない。樋口元裁判官の講演はわたしと同じ結論だと思い ますよ。退職後、日本中で講演して回って危険性を説いてお られるのは立派ですよ。

社会的な妥協値

  産廃では危険性の考え方を貫くのに成功してある程度止め てきた。ゴミ捨て場はほとんど止めてきた。ところが建設主 体が自治体になって止めきれなくなった。ひとつは裁量権の 問題です。

  久留米市の処分場をわれわれが危ないというと市はすぐに 金 を 使 っ て 被 害 の 防 止 対 策 措 置 を 増 設 す る 。 不 等 沈 下 を 防 ぐ 、 つなぎ目が危ないというと、高良内の処分場はコンクリート 五 〇 セ ン チ を 底 に 敷 き 詰 め て 、 そ の 上 に シ ー ト を 敷 い た 。 少 々 不等沈下しても大丈夫でしょう。これで文句なかろうと市は 言 う。 し か し 斜 面 も 明 ら か に 断 層 が あ る の で す よ。 「 あ そ こ 崩れるぞ」といったらむっちゃくちゃにコンクリートを放り 込んで、ワイヤーで固めた。これで事故を起こしませんもん ね。だから自治体相手だと勝たない。企業だとそんなにお金 をかけてられない。だから高良内処分場は建設予算が大幅に 増加した。問題点を指摘するたびに対応してくる。安全運用 を 確 保 し た の は い い が、 無 駄 な 市 の 予 算 を い っ ぱ い 使 っ た。 管理型の処分場でわれわれが敗れた例です。最終処分場は自 治体には勝てない。一方焼却施設はもう最初から問答無用で 勝てない。私達は五つ裁判して全敗です。   二 〇 〇 〇 年 に ド イ ツ の 環 境 大 臣 が き て 日 弁 連 で 講 演 を し た。ドイツ全国で焼却施設が十か所位ある。ドイツではたき 火しても罰金です。二〇一〇年までに焼却施設はゼロにしま す と い っ た の で 日 弁 連 講 堂 が ど よ め い た 。 し か し 、 ゼ ロ に な っ ていません。原発をつくらない代わりに焼却施設を認めたと 言われています。   日本で焼却施設に取り組んだ産業は何か。斜陽産業で、つ ぶれるところを、ほとんど補助金を使った救済事業です。ま ず最初が造船業、船の炉です。造船会社がみんなで焼却施設 に 乗 り 出 し ま し た。 と こ ろ が ダ イ オ キ シ ン 騒 ぎ に な り ま す。 船の炉はそんなに高い温度にする必要がない、蒸気がつくれ ればいいので、むちゃくちゃ高い温度にする必要がない。せ いぜい八〇〇度の炉です。ところがダイオキシンを防ぐため に は 一 〇 〇 〇 度 を 超 え な い と い け な い。 造 船 の 炉 で は だ め

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だ。船の炉では使い物にならない。もっと高い一二〇〇度か ら一三〇〇度の温度の炉がだせるのは、何か。しかも斜陽産 業。製鉄です。いまの焼却施設は製鉄の溶鉱炉の技術です。

  国 は ダ イ オ キ ン シ ン は 安 全 だ と 認 め て 日 弁 連 と 喧 嘩 し て、 そ の 一 年 後、 二 年 後 に 危 険 だ と い っ て、 文 部 省 が 全 国 の 小、 中学校に一斉に焼却炉使用禁止の通達を出した。全国に一斉 に 通 達 を 出 し た と い う の は い か に 危 な い と 思 っ た か で す よ。 私の家の目の前が中学校なんですよ。裏門を入ってすぐのと ころに小さな焼却炉があって燃やしているから、怒って校長 のところに電話したんですよ。 「なんで燃やしている」 、そし た ら「 別 に 構 わ ん で し ょ う 」 っ て、 大 喧 嘩 し た ん で す け ど。 危ないと思っていない。そういう調子ですよ。それこそ社会 通 念 で す。 ダ イ オ キ ン シ ン が い か に 危 な い か と 日 本 政 府 が 思っているという証拠として日本中からそれまであった小型 の炉が姿を消しました。本当に危なかったんですよ。

  製鉄所の君津工場の溶鉱炉が完成してすばらしいとNHK が特集した。そのときに排出されるダイオキンシンが二七ナ ノ程度。規制値は八〇ナノの時代ですから、すばらしいです よ。最新鋭ですから。ところが規制値が変わって既製の炉は 一 ナ ノ ま で 認 め る。 新 設 炉 は 〇 ・ 四 ナ ノ ま で 落 と さ な い と い けないということになった。そうすると二七ナノなんてとん でもない危ない炉なんですよ。これも現在決められている規 制値を守れば安全だということがいかにもバカバカしい代表 例です。いままで規制値は安全値だ、最新鋭の炉といってい たのが急にダメになる。論理的に説明しようとすれば、日本 人がダイオキシンに対する耐性を失った、急に耐えられなく なった。あるいは毒性が急激に増えたという説明しかできな い。そんな説明はバカバカしい。   いままで安全値だと言っていたのがウソだった。安全値だ といってはならない。これは社会的な妥協値です。危険物質 を 出 す 側 と 被 害 を 受 け る 出 さ れ る 側 が 社 会 的 に 妥 協 し た 値 で あ る。 社 会 が こ れ で し ょ う が な い と 妥 協 し た 値 で あ っ て、 けっして安全値ではない。いまの判決は、社会が決して合意 していない、政府の一方的規制値でいいという説明だと思い ます。正面からいわれれば「まちがっているけどしょうがな いよね」といわざるを得ないと思います。社会通念という裁 判所に対して世論調査では七割が反対しているといってもダ メなんですよ。 その七割ってなんですか。 問われているのは、 立憲主義、国民主権の大きなものの考え方だと思います。 証人尋問   産廃処分場建設反対運動の具体的なやり方については、わ れ わ れ が 編 み 出 し た も の が あ る( 『 自 由 法 曹 団 物 語 』 ) 。 韓 国 と日本の公害に取り組む弁護士の共同シンポジウムで、わた しが九州産業廃棄物研究会はこう闘うという報告をした。そ れを踏まえて近藤忠孝弁護士が報告書の冒頭でこのように書 い て い る 。 議 論 が 噛 み 合 っ て い る こ と を 実 感 さ せ ら れ た の は 、

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馬奈木弁護士の「わたしは法律家ではないからという立場か らの発言です。現行の法律をあらゆる面から駆使して公害闘 争を勝利するためには、弁護士が法律家でなくなる必要があ る と い う 問 題 提 起 で す。 」 ( 『 日 韓 公 害 問 題 シ ン ポ ジ ウ ム( 冊 子 ) 』 ) 。 近 藤 先 生 が 正 し く 言 っ て い る。 廃 棄 物 問 題 を ど う い う風にたたかうのかという問題提起です。

  ポ イ ン ト は ふ た つ あ る。 実 践 的 に は 反 対 運 動 の や り 方 で す。業者に徹底的に質問する。危ないよという事実を明らか にするために、業者の事業説明会を住民の質問会にかえてし まう。そのやり方のテクニックです。もうひとつは安全性の ものの考え方です。何を危険と思うのか。私達は廃棄物問題 で 勝 っ て き た。 鹿 屋 で は 裁 判 で 勝 っ た。 『 判 例 タ イ ム ズ 』 の 二〇〇一年の正月号、二十一世紀冒頭から取り上げられた。

  一番のポイントは排水を処理したって危ない。処理しよう と 思 っ た ら「 こ の 物 質 」 と 特 定 し な い と い け な い。 「 こ の 物 質のこの量」の処理に対しては「この物質のこの量」の薬品 を処方しないといけない。多すぎたらかえっていけない。物 質を特定させて、それに対する薬品を加えて違う物質に変え ないといけない。しかし、量が異なれば安全な別の物質にな らない。だから極めて難しい。極めて難しいことを、日常や れといわれてもやれるわけないでしょうが、というのがわれ われの指摘です。裁判所もそうだと。相手方証人として技術 者がでてきたので相当追及した。技術者もそうだと言わざる をえないですもんね。   売 る 側 は 魔 法 の 薬 で 全 部 処 理 で き る と い う か ら 嘘 だ ろ う。 全部処理できるわけがない。この薬でこの物質が処理できま すとしかいえんはずだ。それと適量をどれだけいれたらいい の か。 そ の 薬 を 売 っ て い る 会 社 の 説 明 で す よ。 「 実 際 に や っ て み な さ い 。 処 理 す る 液 に 入 れ て み て 適 量 を 決 め て く だ さ い 」 と書いてある。あらかじめ量がわかっていればこの量といえ るけど。あらかじめ確かめてからやらないといけない。運ん で き た 廃 棄 物 の 搬 入 先 ご と に や っ て も ら わ な い と 困 る。 「 搬 入先が決まっていますから毎回やる必要がない」というのが 業 者 側 の 言 い 分 で す。 そ れ に 対 す る わ れ わ れ の 反 論 は、 「 製 品 検 査 は 何 の た め に や る の で す か 」。 毎 日 、 同 じ も の を つ く っ ているから、同じものができているはずだから製品検査なん か必要ないじゃないですか。にもかかわらず製品検査をやら ないといけない。できそこないがある。同じものができてい る証拠はない。廃棄物も毎日同じものが捨てられているとは い え な い。 入 っ て く る 原 料 も 同 じ と こ ろ か ら 入 れ て い る と いっても量も微量に違っている。毎日同じものだって違って いる。厳密にいうとそれを測らないと適量が決められないは ずだ。未知の物質はおいても、わかっている物質でもそうで すよ。製品検査は要らないのか。必要だというのなら廃棄物 もいると。裁判所もそうだそうだ、と認めた。   この技術者に対する私の反対尋問は成功した例です。安全 な処理ができていないという理由で管理型処分場を本格的に 止めた例だと思います。

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シミュレーション   証人尋問が成功するかどうかは、組み立ての論理の明快さ と同時に小道具を使わないといけないと思っています。小道 具を適切に使いながら「あんたおかしいでしょう」と追い込 む。準備作業として尋問の内容を何度も書き込み、書き込み していく。だからアスリートの反復練習というのはとっても よくわかる。頭の中でシミュレーションを何回も何回も繰り 返 し て、 前 の 日 な ん て い う の は そ れ を 四 、五 回 や る の で す よ 。 こ う 言 っ た ら こ の 道 具 で 反 論 し て と 書 き 込 み を ず っ と し て い く。ところがある時その証人尋問が前日中止になった。一回 流れたわけです。研ぎ澄まし、研ぎ澄ましぎりぎりまで準備 をやっていたのに。ところが次回にその準備の書きつけが見 つからない。しょうがないからブツブツ言いながらまた最初 から作った。研ぎ澄ました結果を思い出しながら。それに基 づいてさらにシミュレーションを何回か繰り返していたら前 回用意した書きつけが偶然出てきた。比べてみたら前回の作 業 の 成 果 を き ち っ と 再 現 し て い た。 き っ ち り 同 じ も の を つ くっていた。進歩がないというべきなのか、研ぎ澄まして究 極まで到達していたというべきなのか。

  私が成功したと思っている尋問がある。ひとつは電磁波の 裁判でNTTの技術者から北大の教授になっている方の尋問 をやった。この結果は運動団体が公開している。電磁波の問 題を協力している技術者、先生方からはお褒めいただいてい ます。この証人は「国の規制値は安全値です。これを守れば 安全に決まっています」と強調した。私は「日本の規制値よ り、ケタ違いに厳しい規制をしている国がありますよ。その 国の法廷で、日本の規制値を守れば安全と証言したらもの笑 いになりませんか」と追及しました。本当は原発でその尋問 をやりたいんだけど、気力、体力が落ちている。   水俣病では、 答えを四つ予想して、 さらにその答えを四つ、 四つの答えを予想する、ということをやったと水俣病の弁護 団の千場団長が書いてますけど。それをきっちりやるわけで すよ。追い詰めることができるものだけを質問する。結局逃 がしてしまうということになるとそれは尋問しない。逃がさ ない一番の方策は資料などの小道具があって、この小道具を 使えば逃げ道を塞げると。論理だけではどうしても水掛け論 で逃げられますからね。まず、論理と事実がしっかりしてな いといけないけど、その論理に従って追い込んだ袋小路でと どめを刺す道具を用意する。その道具が用意できないのなら もうしょうがない。逃げ切らせるのだったらしないほうがい い。それを何べんか繰り返し検討しながら研ぎ澄ますわけで すよ。   急 に そ の 話 を す る 気 に な っ た の は 、 テ レ ビ ド ラ マ 「 ド ク タ ー X 」 の 最 後 の 回 で 自 分 が 病 気 に な っ て 最 後 の 手 術 で 倒 れ る。 自分が手術できるなら自分の病気を切れるんだけど。ところ が ノ ー ト が 残 さ れ て い る 。 そ れ が シ ミ ュ レ ー シ ョ ン な ん で す 。 こういう事態が起きた場合はどう対処するとずっとノートに

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書いている。それでちゃんと他の人が対処できて、助かった わけですけど。手術だってそうだよね。予想外のことが起き るわけですから。予想外のことをどれだけ想定できるか。予 想外のことに対してどう対処するのか。だから「私は失敗し ないので」という名セリフは、それだけの対処をしています よという裏返しの表現なんですよね。手術で開いてみて驚い ていたら話にならない。全部想定の範囲内で当然起こるとい う 前 提 で な い と い け な い 。 証 人 尋 問 も そ う な ん だ と 思 い ま す 。

質問会

  反対運動の質問会では司会を獲得する。司会を業者にやら せてはいけない。司会を獲得するテクニックはマイクを握っ て 離 さ な い 。 会 場 は だ い た い こ っ ち が 用 意 す る 公 会 堂 で す か ら 。 施 設 は こ っ ち が わ か っ て い る わ け で す。 マ イ ク を 絶 対 に 渡さない。こっちが全部持っておくとかね。髙橋弁護士と一 緒になって、その技術を築き上げたんですよ。業者にまかせ ずに自分たちが司会をする理由をまず議論して勝たないとい けない。それはわれわれを納得させてほしい場だと。あなた 方が安全だというのであれば、われわれを納得させてほしい と。 あ な た 方 が 説 明 す る よ り も、 わ れ わ れ が コ コ を 知 り た いということを説明してくれないとわれわれは納得できない よ。あなたたちが言いたいことを言うのではなく、われわれ が知りたいところを教えてほしいのだ。そのためにはわれわ れ が 司 会 を し て わ れ わ れ が 聞 か な い と わ か ら な い だ ろ う が。 わ れ わ れ を 納 得 さ せ る た め に こ の 集 会 を や っ て い る の だ よ。 違うとはいえないですよね。あなたにはわれわれがどこを知 りたいかわかるわけないだろうが。   質問事項で三〇頁ぐらいになる。それを反対運動の役員の 皆さん方とみんなで共有するわけですね。水俣病の弁護団で 尋問事項をひとつずつ議論していったのは、もちろんその尋 問に成功するためでもあるんですけどね、弁護団と運動体み んなの意思統一になったわけですよ。だから弁護団がみんな で共通認識を得ることができた。わたしはチッソ水俣工場長 の西田尋問で「その尋問をみんなで検討することによっては じめて心を一つにした、ひとつの弁護団運動体になれた」と いう評価をしています。その経験があるもんだから、産廃反 対のときも役員のみなさんとその尋問事項を一緒に考えてつ く る わ け で す よ。 す る と 共 通 認 識 に な る。 何 が 危 な い の か。 本当だよね。みんな本当に危ないよねと確信になる。共同作 業をやらないとだめなんですよ。髙橋先生はその質問票をい くつも持っているのじゃないかな。それがここ『自由法曹団 物語』に書いてある。 岡山県吉永町の反対運動   具 体 的 に や っ た 例 で 一 番 面 白 か っ た の が 、 岡 山 県 の 吉 永 町 。 こ の 処 分 場 は 第 三 セ ク タ ー だ っ た。 よ う す る に 行 政 が か ん だ

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管理型最終処理場のゴミ捨て場ですね。岡山県知事が建設を 不許可にした。われわれの反対運動が成功したからです。全 国 で 県 知 事 が 不 許 可 に し た 例 が、 そ の 当 時 六、 七 か あ っ た と 思います。全部、業者側が行政不服審査で当時厚生省に不服 申し立てをします。全部ひっくり返って業者側が勝つ。全国 で不許可にした例で最終まで不許可を貫いた例はそれまでな いと思いますよ。一番おかしいのが千葉の例だったと思いま す。 知 事 が 不 許 可 に し て 不 服 審 査 で ひ っ く り 返 っ て 許 可 に なって、住民の差し止め訴訟で勝って止まる。それも最高裁 までいって止まる。わたしに言わせれば最高裁までいって止 まるなんてばかばかしい。岡山県知事がやった不許可の判断 を厚生省がひっくり返さなかった、たぶん私が知る限りでは 唯一の例だと思いますよ。なんで唯一の例となったかはここ に書いている通り、本当に安全かどうかを作文の審査ではな い、住民と業者に討論をさせた実質的な危険性の結果によっ て判断したからです( 『たたかい続けるということ』 ) 。

  設置許可の県の審査は「作文審査」とわたしはいつもいっ て い る。 「 基 準 ど お り や り ま す 」 と 書 い て あ れ ば い い。 本 当 に や れ る か ど う か な ん て 審 査 し な い わ け で す よ。 「 国 の 基 準 どおりにするように書いてありますね、設計図そうなってい ま す ね 。 じ ゃ あ い い で し ょ う 」。 い ま の 原 発 の 審 査 と 一 緒 で す 。 「 い や 、 本 当 に 安 全 に で き る か ど う か 審 査 を や っ て み て く だ さいよ。そのためには現地までみにきてよ」と、まず県にさ んざん言って、県知事がその結果不許可にした。厚生省にも 見にこいとさんざんいった。行政の立場では作文ができてい たらいいわけだから、理屈からいうと本来見に行く必要はな い。あんまり何回も何回も、もう貸切バス三台とか四台で岡 山から東京まで乗り付けて、銀座でビラまきして、たいがい 激しくやりました。そうしたら厚生省の担当者が現地に来る こ と に な っ た。 当 然、 「 絶 対 反 対 阻 止 す る ぞ 」 と 横 断 幕 で 迎 えると現地のみなさん思いますよね。それはダメだと。現地 に見に来ないことが原則のひとたちが見に来るというのは大 変 な こ と だ 。「 絶 対 反 対 阻 止 は い け ま せ ん 。」 そ う で は な く 「 熱 烈歓迎」の横断幕を駅前にはった。みんな日の丸の小旗もっ て振った。駅から処分場までの沿道を全部うめました。これ は町ぐるみの反対運動だからできるのです。   こ の 問 題 で 最 高 裁 判 例 と な っ て い る の は 利 害 関 係 者 と し て、 町、 住民に原告適格があるという最高裁の判断になった。 それまで原告適格はせいぜい五〇〇メートル範囲の住民だと か、あるいは一番酷い例は処分場をつくる小字の住民。これ は住民の立場からはとんでもない。われわれは影響があると 考えるひと全部。影響がないならそのひとを却下すればいい 話 で す か ら 。 影 響 が あ る と 考 え る ひ と は 全 部 原 告 適 格 が あ る 。 少なくとも町はあるよ。住民団体はあるよと。そうだと最高 裁がいった。それが最高裁判例です。   この時の新聞の写真がありますけど、厚生省の役人が現地 にいって地図をみている。現地をみているわけではない。わ た し が 後 ろ か ら あ あ で も な い こ う で も な い と 説 明 し て い る。

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役 人 は 関 係 者 を ま わ っ て わ れ わ れ の 会 場 に 最 後 に き て、 「 一 言 も 発 言 し ま せ ん か ら ね。 み な さ ん の 話 を 聞 く だ け で す よ 」 と し つ こ く 言 っ た ん で す よ。 「 結 構 で す。 聞 い て も ら う た め に 来 て も ら っ た ん で、 何 も お っ し ゃ ら な く て 結 構 で す 」 。 最 初の段階では反対運動の先頭に立つひとたちの話が予定され ていたので、いかんいかんといって中学校の生徒会長、それ も 女 性 の 生 徒 会 長 に、 前 の 晩 に ば た ば た 差 し 替 え た。 し か も 基 調 は 熱 烈 歓 迎。 「 し っ か り 見 て も ら っ て、 わ た し た ち の 声を聴いてもらってありがとう」 。絶対阻止するぞではない。 その話をみんなでしたら終わるときに厚生省の代表がマイク を 貸 し て く れ と。 「 み な さ ん の お 話 は と っ て も よ く わ か り ま した。きちんと報告します」とわざわざ挨拶しましたよ。僕 らは大成功って。 反対運動はこうあるべきだ。 鹿屋と吉永町、 水俣、地元の上陽、山川の産廃処分場の反対運動、それぞれ 特徴がある。反対運動もみんなそれぞれ面白いんですよ。

  安 定 型、 管 理 型 の 差 し 止 め で は わ れ わ れ は 裁 判 し な く て 勝っている。裁判をしたのは鹿屋が初めてですものね。吉永 町も裁判しましたけど、 県知事の不許可の防衛戦争ですから、 われわれは県知事の応援に駆け付けた。補助参加です。水俣 はもう裁判なんてちゃんちゃらおかしい。熊本県が自分でダ メだといった。潮谷知事のとき。ダメといったというのは正 確ではなく、われわれが五〇いくつ疑問点がある、それを業 者にしっかり確かめろ。業者が答えないのであれば県が自分 でわれわれに対して答えろと。答えきれなければ許可してい けないよねと県に問いかけた。そうしたら県が四〇近くの問 題点を業者に答えなさいと。業者は答えられない。そのなか のかなり大きな部分がほんとうに規準どおり処理できるのか という問題です。   もうひとつは事実としてこれまで存している処理施設は現 実に処理できているのか。それぞれ処理施設で処理する設備 が五段階ぐらいある。その五つの設備についてをそれぞれの 最 初 の 原 液 の 成 分、 第 一 番 目 の 処 理 し て 出 て き た 液 の 成 分、 じゅんぐりに全部数値を示して、最後の施設から放流すると ころの数値はこれだと一連の流れを全部示すべきだ。業者が 出してくるのはひとつひとつの施設ごとに、全体との流れは 関係なしに、それぞれの施設ひとつごとに提出して、この施 設でこれだけ除去できました、この施設でこれだけ除去でき ました、というデータを単独のものとして出してくるわけで す。それはできるでしょう。そのデータに合して処理する量 を 作 っ て い る わ け だ か ら。 つ ま り 施 設 ご と に 入 る も の が わ かっているという意味です。入るものがわかっているなかで 実験室でやっているわけだから除去できないとそもそも話に ならない。さあ、連続技でできますか。最初の施設から最後 の施設を出て放流するまで連続した数字を示せと。絶対にで きるわけがない。しかしそれをやらないと本当に処理できて い る こ と に は な ら な い わ け だ か ら 業 者 に や ら せ ろ と い っ た。 県 が そ う で す ね、 や れ と い っ た。 こ れ が 決 定 打 に な り ま す。 業者ができませんと答えた。全体の流れにそって途中の処理

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経過の数字を示すことはできないですよ。実験そのものは物 理的には可能だけど、経過がきちんと基準値内におさまる結 果を示すことなどできるわけがない。いま現実には大抵いい 加減な処理水が流されているということですよ。それぞれの 施設が九〇%除去できますと。それはできますよ。わかって やっているわけだから。問題は、連続して次の段階いくとき にいちいち測っているわけではないから。だから連続運転で やれますかという問いかけにいままで答えた裁判例はないと 思いますよ。

  現在は裁判所は答える必要すら認めない。行政の裁量の一 言で拒否して、その問題に立ち入るとわれわれが勝つから裁 判所はそれをちゃんと議論させてくれないというのがいまの 裁判です。

  廃 棄 物 を や っ て い た 一 九 九 〇 年 代、 吉 永 町 も そ う だ し、 鹿 屋 で 勝 っ た の が 二 〇 〇 一 年 の 判 例 タ イ ム ズ に の っ て い る。 わ た し が 一 番 い き い き し て 取 り 組 ん で い た 時 代 で す ね。 二〇〇〇年にはいって諫早干拓をやりだしてから、諫早も楽 しかったですけど、諫早の楽しさはまた違うですものね。廃 棄物をやっていたときが弁護士としての取り組みでは一番面 白かった時代です。危険性とは何かを正面から問うて、裁判 所 が ま が り な り に も 答 え て い た 時 代 で す よ ね 。 法 律 論 で は 、 諫 早 で の 物 権 的 請 求 権 、 権 利 と は 何 か と い う の が 面 白 い。 廃 棄物では事実問題、危ないという事実とは何かを正面から向 かうことができた。われわれはそれを原発でつくりきってい ないと思います。 松露と松茸   上陽町(現八女市)は私と髙橋弁護士が引き受けた時には 七つ申請があったんですよ。すでに二つ動いていた。二つ動 いていた施設が、出鱈目だった。これは住民はたまらないと 言って建設を止めるのに成功した。ところが追い返すのに成 功してよかったね。全部止めたよね、と言っていたら、反対 運 動 の 中 心 に い た 集 落 で ま た 処 分 場 建 設 の 計 画 が 出 て き た。 それだけ山林所有者が困っていたということだと思いますよ ね。山林の維持管理ができない。持っていたって自分の代で 金になることはまずない。荒れ山にしておくしかしょうがな い。 荒 れ 山 に し て い た ら 災 害 が 起 き た と き に ど う す る の だ。 だから少しでも買ってくれるとひとがいたら売りたい。   最近久留米大学で入会の研究会があった。今、入会の行為 自体がなくなっている。山林経営が放棄されている。いまか らますます増えてきますね。いい解決策は考えられない。山 林経営は個人でやるのは事実上不可能です。入会の主体、地 域の共同体が一定の山を管理するのがいいじゃないかなと思 いますけど。この研究会のなかで、現実に入会主体が残って いて、入会稼が行われている町では、産廃施設の計画が少な く、 現 に 建 設 さ れ て い な い と い う 事 実 が 報 告 さ れ て い ま す。 私はそうなんだと納得しています。

参照

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