NDC 007.64, 548.2
電子メールを利用した授業の試み
岡田 正*
An Attempt to Apply an Electronic Mail to the Computer Literacy Class
Tadashi OKADA
As one of the subjects of literacy education, an electronic mall is incorporated into our literacy class. The electronic mai1 is used to send an individuai theme and to receive its result in UNIX programming class. After the presentation of merits of the electronic mail, we discuss how to make use of the merits and how to organize the effective class.
1.はじめに
工学教育においては、各種工業機器の動作原理や設計の ための基礎埋門を学ぶとともに、それらの使い方を習得し ておかなければならない。なかでも進歩の激しいコンピュ ータ分野では、日常的にコンピュータを使いこなせるよう になるために、多くのことを学ぶ必要がある。このため情 報リテラシー教育として、教育目標や教育システムについ ての議論がなされている1)。
一一口に情報リテラシー教育といっても、ダイビングやマ ウスの操作から、アプリケーションの利用やシステム設定 まで多岐にわたる。本報告では、最近重要性を増している ネットワークを使ったコミュニケーション方法として、電 子メールを取り上げる。電子メールを全社に導入する企業 が急速に増える2)など、その習得が実用上有益であるとと
もに、ネットワークの基本を知るにも有効である。このた め、電子ニュースとともに情報リテラシー必須の事項であ ると指摘されているt)。
本報告では、電子メールを授業に組み込んだ事例を報告
* 情報工学科 (E−mail:okada@tsuyama−Ct.actP)
平成7年8月31日受理
したい。効果的な授業とするためには、電子メールの特性 を活かした授業の組み立てや、適切な課題の選定と利用環 境の整備など考慮すべきことが多い。こうした点に配慮し ながら実施した授業について、その概要と問題点を述べる。
まだまだ不十分な点が残っているが、今後の同様な取り組 みへの参考としたい。
2. 授業の概要
電子メールを導入した授業は、情報工学科3年生の情報 工学実験皿(5単位)である。この授業では、5単位を3 単位と2単位に避けて実施している。それぞれ、通常の実 験をして報告書を出す形態(3単位)と、実験に関係した データ処理・発表・コンピュータ演習などを行う形態(2 単位)とに分かれている。筆者の担当したのは後者の後期 分である。この中では1クラスを3グループに分けて、そ の1グループに対して2時間×4回の授業を行うようにな
っている。
実施した内容は、 「XウィンドウプログラミングとUn ix操作」という題目で、
UnixとXウィンドウ端末操作の復習 Unix上でのC言語プログラミング処理
を行う。すなわち、情報工学科の3年生が、この学年で触
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れる機会のないUnixネットワークを使うことで、これ までに習得した技能を確認することを目的としている。
扱う内容は、C言語によるXウィンドウシステムのプロ グラムに関したものである。単にプログラミング技術だけ でなく、Unix上の処理を総合的に理解してもらうこと を期待している。このため、次に示すような手順で授業を 進めている。
①ログインとパスワード設定 ②基本コマンドの復習
③Xウィンドウシステムの概要説明
④エディタ操作の練習とサンプルプログラムの入力 ⑤コンパイルの実行とデバッグ
⑥デバッグの効率的な進め方の説明とシェルスクリプ トの作成
⑦プログラム修正(全員同一)と電子メールによる個 別の結果報告
⑧修1i三結果の確認と学生別の個別課題の電子メールに よる送付
⑨完成プログラムの電子メールによる報告.
Xウィンドウシステムを短時間で教育するのは難しく、
そのプログラミングのすべてを授業の中で作るには時聞不 足である・e ,:で授業餌・基本填る㌣プルプログラ ムをあらかじ,めiie示レておく。まずζれを仕上げることで、
xクライアン.トめプログラム構造やu.pix上での処理手 ll『1を学ぶようにした。サンプルプログラムは、Xlibを 使って文字列を表示するもめで、コメントを除いて112 行3000バイトの規模である。
まず、 エディタを使ってソースプログラムを入力し、ウ ィンドウを使らたコンパイルとデバッグの方法を学ぶ。こ.
こまでは、2年のときに実習済みである。次に、コンパイ ル処理を簡単に実行できるよう、短いシェルスクリプトを 1乍る。これによってSiコマンドの組み合わせで新しい機能 を実現するというりnixの特徴を学んでもらう。このよ うにして、Unix上のプログラム開発の一通りの手順を 体験できる(⑥まで)。
授業の後半では、完成したサンプルプログラムを部分的 に修正しながら、処理内容の理解を深めることになる。最 初の修正課題は、
・文字の表示位置の自動中央揃え ・表示文字とウィンドウタイトルの変更
というもので、全員が同じことを行う。しかし、ソースプ ログラムの入力段階から進度にばらつきがでており、修正 の終わる.のもまちまちとなる。そこで、この報告の段階か ら学生とのやりとりに電子メールを利用し、できた学生か ら結果を報告してもらっている(⑦)。
電子メールを読んで正しく処理できていることを確認し たら\下記の課題の中から個人ごとの指示を電子メールで
送る(⑧)。
・立ち上げ時のウィンドウサイズ変更
・表示文字.の変更(異なった文字列の交互表示・回数 変更)
・引数処理(表示文字列指定・表示サーバ指定・フォ ント指定)
・終了処理(キーボードとマウスによるイベント処理)
・背景色と文字色の変更
学生は各自の課題を見て追加修正を行い、処理した結果 牽電子メールで報告すう(⑨)。その結果が正しくなけれ ばその旨電子メールを返し、再度の修正を求める。正しい プログラムとなれば終わ.りである。
上記の課題は大まかな分類で、実際にはさらに細分化さ れている。一度に教育する学生15名(平成6年度の場合)
に対して、一人一つ以上となる約20課題を準備した。課 題によって難易があるので、学生ごとに理解度を見ながら、
適切と思われる課題を、ヒントとともに電子メ、一ルで送っ ている。
他の言語教育の例に漏れず理解度の差が大きかったもの の、全員が時間内に一通りの課題をこなして.いた。この指 導を通して、コンピュータ操作の慣れ・エディタの習熟・
C言語の基礎知識など、教育効果を上げるために検討して おかなければならない多くの問題点が目についた。しかし、
電子メールを利用するということに関しては興味を持って おり、リテラシー教育としての役割は果たしたものと考え ている。
3.授業での電子メールの位置づけ
電子メールは一対一のコミュニケーションを基本として いるので≦プログラミングのように個人による理解度の差 の大きい授業で、学生と連絡を取り合うのに有効である。
今回の試みでは、この特徴を活かして、2.で述べたよう に個別課題の送付と結果プログラムの入手に利用した。授 業の中で電子メールの特徴をどのように組み入れたかと、
これによる効果を検討する。
電子メールを授業に組み入れることの利点は、既存のシ ステムをそのまま使って、時間や場所に制約されないコミ ュニケーションを行えることにある。つまり、教育の場を 時悶空間ともに拡大できる。また、一斉連絡と個別連絡を 使い分けることで、効率的であると同時に、学生に合わせ た細かな対応が可能となる。さらに、やりとりするデータ を蓄えることが可能で、データベースなどでの再利用が容 易である。こうした特性を、教官側と学生側からもう. ュし 詳しく検討したい。 一 教官側にとっては、授業の準備や回答・指示において時 間的な制約を大幅に解消できる。実際、あらかじめ課題を
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電子メールを利用した授業の試み 岡 田
準備.してワークステーションに保存しておき、授業中に直 接の指導をしな.がら、ときど.き電子メー.ルで結果を確認し、
次々に新しい課題を送るという授業形態をとることができ た。また、授業後に学生の電子メールをゆっくり見直して、
問題点や感想を送ることもできる。このとき、確認作業を ワークステーション上で行えるので、エディタ等の機能を 使って効率的に処理できた。今回は授業時間が十分でなか ったので、学生とのやりとりを頻繁に行う場面がなかった が、不明な点の問い合わせと回答に利用すれば、さらに教 育効果が上がるものとなろう。
一一方、学生側にとっても、時間の制約なしに教官側と連 絡が取れる。送られてきた指示をいつでも何度でも参照で
きるし、別の学生の指導中であっても遠慮なく.結果を送れ ばよい。さらに、今回は使わなかったが、蓄積交換の利点 を活かせば、教官側からの電子メール内のデータを再利用 することで、効率的な教育となろう。授業時間外に処理し た場合、教官室まで足を運ぶことなく結果を送れる。その とき出た疑問点などを問い合わせるのに、電子メールを利 川できれば、個別対応ができて理解や意欲の向上に有効で ある。ただ今回の試みでは、4。で述べる問題のためこう
した取り組みのできなかったのが残念である。
最後に、連絡を電公的に行うので、ペーパレス化できる 利点が指摘できる。課題の提示と結果の報告を、ネットワ ーク上のファイルのやりとりで行うので、省資源の授業が ii}能となる。情報処理演習におけるペーパーレス化として、
指導讃および課題等を共有ディレクトリから自由に読み出 すことで配布に変えたり、レポート提出・出欠状況の把握
・成績処埋の試みもなされている3㌔こうした方法を採捕 すれば、省資源であるだけでなく準備と入手の時間が節約 できる。また、内容の追加訂正が簡単に行えるので、適切 な指示を与えやすい。こうした仕組みと電子メールを組み 合わせることも有効で、今後検討すべきであろう。
4.電子メール活用のための課題
実際に授業を行ってみて、電子メールの利点をある程度 実感できた。しかし、十分に活かしたものとならなか. ツた という反省が残る。そのもっとも大きな原因は、学生側に 基本的なコミュニケーション技術が不足していることであ る。プログラミングという本来の課題に加え、電子メール を扱わねばならず、効果的に利用するレベルには至らなか った。初心者が複数の技能を同時に扱わなければならない と混乱するので、前もって電子メールの使い方を実習して おく必要がある。
電子メールを使う上でもっとも問題となるのは、他でも 指嫡されている4)ように、電子メールの中で使うエディタ 操作と日本語処理である。どちらもパソコン上での実習は
終わっているが、viを使って文章を作るのは、パソコン のエディタとの違いから難しい。また、ワー一一:クステーショ
ンの日本語フロントエンドプロセッサの操作を新たに学習 するにも時間がかかる。電子メールを使う授業の前に、十 分な練習時間をとって、電子メールで発信ができるような
リテラシー教育をしておく必要がある。
来年度から利用できる新しい教育環境5)では、パソコン ベースのエディタや日本語処理が電子メールにも利用でき るので、この問題は大幅に改善されるであろう。このとき、
マルチウインドウに基づいた操作と、情報化社会の基本的 な倫理観の教育6)といった、これまであまり議論のなされ ていなかった事項の教育も必要となる。教える側で十分な 議論を行って、統一した指導のできるような体制を整備し たい。その一しで、学生が自由に利用できる環境を与え、自 発的な学習の場を準備すべきである。
ただ現状では、過密授業で自由に触れることのできる時 間のとれないのが問題である。新しい学内ネットワークで は、電話回線を通して学外からアクセスできるので、学習 の場を広げるという観点から、学生にも開放することが望 まれる。慶朦義塾大学湘南藤沢キャンパスに見られるよう な先進的な取り組み7)までは無理にしても、ネットワーク を介したコミュニケーションに日常的に触れることのでき る環境を作っていきたい。
実際に電子メールを授業に使ってみて、1クラスの3分 の!の学生に対応しただけでも、時間をとられ応答の遅れ る場面もあった。特に、個別に対応しようとすればするほ ど、教官側の負担が多くなる。1クラスー斉授業になると、
負担の増加がもっと深刻になるであろう。この問題を改善 するため、学生と教官が直接電子メールのやりとりをする のではなく、両者の間に管理プログラムを入れた 双方向 教育支援システム を実現した例もあるS)。このようなシ ステムを作れば、教官側の負担を軽減するだけでなく、質 問と回答をデータベース化することで、より適切な情報を 提供できるようになる。授業で気楽に電子メールを使って みようと考えたとき、自動化システムは本校でも検討すべ き今後の課題である。
.プログラミング教育のように、理解度の異なる学生を相 手にする場合、そのレベルにあわせた問題を適切に提供で きるとよい。こうした方法が、ネットワーク化に伴って容 易に実現できるようになってきた。しかし、適切な問題を 大量に準備することは、個人で行うには負担が大きい。こ れを解消するには、同じ内容の授業を受け持つ教官で、問 題を集積しデータベース化しておき、これを電子メールで 送ることが考えられる。また、上記の自動化システムと組 み合わせれば、教官の負担軽減と学生の教育効果が期待で きる。さらに、準備中の新しいマルチメディアネットワー ク環境5)下では、CAIを利用していくことも有効であろ
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う。利用できる機器が次々と新しくなっているので、こう した新しい機能を授業に活かすよう、教える側の努力が望 まれるところである。
5. あとがき
情報工学科3学年の授業に電子メールを導入し、その利 点を活かした授業の組み立てと、活用するための問題点を 検討した。今回の試みでは、電子メールを活かしきった授 業とはいいがたいが、プログラミングのように学生の進度 が異なる授業に有効であることは確認できた。
情報工学科では卒業研究の配属が決まれば、5年生全員 の登録を行い電子メールの利用を指導している。彼らの慣 れは早く、一ケ月もしないうちにコミュニケーション手段 の一一つにしている。従って、もっと低学年から利用できる 環境を準備し、適切な動機付けをすれば、現代の学生であ れば容易に利用してくれよう。学生全員を登録している高 専も増えており、本校でも遅れないよう対応していこうと 考えている。
幸い本年度中に、高度な学内ネットワークが整備され、
インターネットにも接続される。こうした環境を活かせる よう、電子メールだけでなく、電子ニュースやインターネ ットを通した情報の獲得、さらにネットワーク利用のマナ ーなど、ネットワークリテラシー教育を積極的に進めてい
きたい。
文 献
1)松浦:電子情報通信学会誌,78(1995−1)101.
2)特集・電子メール「全社導入計画」,日経コンピュータ,
360 (1995−3−6) 76.
3)稲井・森下:信学技法,ET94−71(1994−9)69.
4)藤井:松江高専情報処理教育センター広報,12(1995−
3) 37.
5)岡田:情報処理教育研究発表会論文集,15(1995−8)5.
6)倉由:情報処理,36(1995−6)538.
7)中村・楠本。斎藤:信学技法,IN94−57(1994−6)63.
8)松井・齋藤・都倉:信学技法,ET93−i32(1994−3)63.
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