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『伊勢物語愚見抄』所引の物語本文

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Academic year: 2021

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(1)

『伊勢物語愚見抄』所引 の 物語本文

小山順子

*キーワード

伊勢物語・伊勢物語見抄・一条兼良・自筆本・注釈

はじめに

一条兼『伊勢物語愚見抄』、愚見抄と略す『伊勢物語』

研究史上、旧注の嚆矢とし常に重要。大津有一・田中

宗作・武井和人よる研究 (1り、初稿本と再稿本がと、ま

た、近年ではその中段階の本がることも報告さている。

では、兼良が愚見抄著す際に使用した物テキストとはどのような

ものだったのだろう稿良の物研究の根幹となる『伊勢物

語』本文の性質について討したい。

一、『伊諸本

愚見抄初稿本か再稿本へ、基本的には増補さ展開し

本稿調査対象とし掲出す )初稿本

初稿本の奥書有す後掲の①田中本か

御奥書

長禄四年冬の末つかた、彼物見侍るに、愚見の及所い

さゝ

出すべか也。桃の花の坊にすみ侍る翁が筆のすさみ書侍

り。

この奥書か初稿本禄四年一四六〇に書かれたものあっ

たことが判明す。長禄四年、兼良十九歳。再稿本され

た写本も多、刊本も出版されてが、残された初稿本わめて

少数での四種しか知ら

①田中宗作蔵斑山文庫旧本〉

②国文学研資料館鉄心斎文庫蔵本

98

721

・東海大学付属図書館桃園文庫蔵本(桃

1374※後半の

・竹屋子爵旧蔵本

(2)

但し東海大学付属図書館桃園文庫蔵本閲覧停止、竹屋子爵家旧蔵本 は品田 吉「

物語

て紹介されたものであである。①の田

田中宗作

『伊勢物

語研 究史の 究』

40・桜楓社)

収「伊勢物

語愚見抄初稿本(翻刻)収められてり、この翻刻にって初稿本の

研究が進められてきた。

田中本は中による大体室町末期らない書写のようで

とのことで時代ずに書写されたものが、誤写誤脱

の可能然あるこの①中本の本文を相対化するが、 (2

である

『鉄心斎文

伊勢物語古注

9巻』

(平

13・八

ものとして知られて

鉄心斎本に、田中本がつ長禄奥書は無いが、注文かたしかに初

稿本であることが認られると、『斎文庫伊勢物語古注釈

9

巻』片桐洋一解摘さ。また、墨に傍記、朱片仮名書

きによる補筆がおり、丁寧校勘が行れたことが窺われ

であ る。

鉄心斎本目され、田中本も丁寧詳細に物語本文を引

用してある点である下に一例をす。部は田中

無い箇

は田 る本

【四段】

又のとしのむ月に、梅のはなさかりに、こそをこひていき、たち てみ、てみ、れと

たちてみつ、ゐみつ、れとも、といふ也。

こそににくもあらあはらなるきに

あれた(也。西のたいの人、外にかくて人すまぬなれは

荒た云也。

部は田中本にはかれてず、本文はたちて

れど」あばらなるたじきに」のみている。注釈はそれぞれ、

み、

み、

」「

なる」

箇所 なの で、

傍線部が無くとも特に支障たさないために省略されたものと考え

れる書写の段階、いずれたもの

検討すべき問題あるが、ともかく、本文引用が丁寧いう

のが鉄斎本の特徴 (3

つまり、鉄心斎本従来初稿本としれてきた田中本相対

化する料としてので、また特に引されて語本

ついては、より情報が多い。田中本と鉄心斎本の本文を併せて

ことで初稿本と再稿本の間にあ語本文の異同についも検討

でき るの る。

(2)中間本

谷市中央図書上文庫蔵本(三甲

994

※国文マイクロ資料(

30

30

3、

E 1 9 5 3 )

④武井和人蔵本武井本〉

(3)

③刈谷本長禄奥書を持つものの、早くか津有一 (4によって稿

あることに疑義挟まれてきた。近年武井和人と木下美佳初稿

本と再稿本の中間に位置す質のものであとを指摘し (5

。初

稿本か再稿本への考証過程辿りうるのみならず、本稿におい刈谷

本に注目す、刈谷本戸時代初~中期の書写ではあが、長禄

奥書の後に「此本一条禅閤兼良御筆写物也」という奥書有すと、

また愚見抄本的に物語本文は必要箇のみが引用されるが、刈谷

本でされてある

④武井

、『思文

古書資

本特集

21輯)

214(平

21

10)にお

て紹 介さ れ、

その後、武

の所 蔵と なった一本

武井和人下美佳一条兼自筆

伊勢物語

愚見抄

影印

研究

(平

23

長禄奥初稿本とは稿本への渡的な本文を有する。

但し、刈谷本とは美佳解説条兼良自筆本

『伊勢物語愚見抄』につい、初稿本→刈谷本→再稿本の増

補過程の上に置し、再稿本への兼良の考証過程表す本

ると位置

られ てい る。

(3)再稿本

再稿本刊本も出版されており数も多いが、愚見抄所引の物本文

ついて察するに特に重要ある、兼良自筆本の以下の一本

る。

冷泉家時雨亭文庫蔵伊勢物愚見抄下巻〈時雨亭本〉

⑤時雨亭本には以下奥書がる(以下、書にァベットに

よる通し番号をす)

〈A〉業平略伝、本文略)

京極黄門伊勢物両本奥書

一本云、

〈B〉定家武田本奥書)

合多本所用捨也。可証本。

以狩使事為端之本出来。代之人今案也。更不可用之。

此物語、古人之説不同。或称在中将之自書、或称伊勢之筆作。就彼

此有書落事等。上古之人、強不可尋其作者。只翫詞花言葉而已。

戸部尚書

一本云、

〈C〉定家根源本奥書)

抑伊勢物源、古人説々不同。(中略)件本狼藉奇怪者也。伊行所

為也。不用之。

先年所書之本、為人証本、重所校合也。

戸部尚書

〈D〉愚見抄再稿本跋文)

長禄之末年、披覧此物語之次、粗考古抄之誤、聊書今案之説。

漸流布世写之輩歟。爰上都擾乱後、南京閑居之暇、加校

合、非無

謬。

仍更 染禿

別編 愚抄。専

以閑 麗翁 之艶 詞為 肝要

(4)

併以定家卿勝説為指南。蓋不失昔物語之本意、欲為大和歌助縁

也。旧為一巻、今分上下。若数寄輩有書写之志者以此本可為正

而已。

文明六年小春中幹日沙門花押

〈E〉

愚見抄二帖、大内左京兆 政弘

朝臣間、所令附属也。老筆狼藉定可

招後嘲者歟

文明八七月上澣

老比丘

〈F〉

右愚見抄下巻、一条禅閤御筆也。 此抄則

上巻紛失可惜而已。

⑤時雨亭本に業平略伝・武田本奥書・根源本奥書の後に、Dの兼

良による再稿本跋文Eの兼良に写奥書が見抄再稿本

初稿本の十四年後の文明六年四七四)良七十三歳の時の著作で

る。再稿本二年後、文明八(一四七六)七月に内政弘求め

に応兼良自身が書写したのが、時雨あることが判明す

お時雨Fの為広奥書に記されるよう、上巻は失われ冷泉為広

によってされてみである

時雨亭本は冷泉家時雨亭叢書

41『伊勢物

語・伊 愚見抄』

(平

10日新聞社『伊勢物語古注大成

第三巻』

20

笠間書院)に収られている。 二、先行研究

愚見本文についてはが、「これは桃花房の家

となつたものの内容は大体流布本の如思はれ嘉吉校合

底本としたものはなく、愚見抄の本文も亦同様

と、兼良の勢語文にる考へ時展開たもの (6

」 (

線、引と指摘が早い。池が「これ」とするのは、当

時池田の架蔵あった現天理図書館蔵兼良本のこと、嘉吉校合本

藤房筆本のことであが、この二本についに詳述す

また田中宗作 (7再稿本が持つB・Cの定家奥書や、D再稿本跋文お

本文注文に散見す定家自筆本云」どの文言か、定家校定本

に依ってことは疑いないとし、さに池田説を用した上で愚見

抄の本文は大体流布本によ思われる述べて但し、

天福本や塗籠本と一致す例を挙げ、愚見抄本文注目すべき幾多

の問題 含んで ことを 提示し

」と問題提起を

行って

近年では、時雨亭本の翻刻めた『伊勢物語古注釈大成第三巻』

の片桐洋一・鈴木による説(、片鈴木解説

で、

引用 てい る物語 文に ても

後掲す天理図書館蔵兼良筆本の本文と比較し、以下の

うに てい る。

(5)

現在用られて福本系統の本文はもちろんのこと、応二年

桃華老人の奥書を持つ天理図書館蔵一条兼良本の本文ともかり異

る。…)本と一致せ天福本に一致している二箇

については他にも田本以の定家別本)あるいは

本系・略本系などと愚見抄本文天福本固有の

文と一致するいだせない。一方、天福本と致せず兼良筆

箇所は、(……)武田に一

が多く、愚見抄の伊勢物本文が、武田本系統の本に影響

を受 は確

。(

書く

定家本系統の本の伊勢物見ていたこともかなよう

である。ただし、上に非家本の本尊重されたと

えられない。…)愚見抄の伊本文が広本系な定家本の

本文と所もいあるが、そうした伊

から響を受けけでいで

愚見抄の伊勢物本文はいわ根源本ど比較的初期の定家本

と武田本の本文の影響く受けてようであ

以上のうな検討にれば、愚見抄見したとこ相当に乱

た伊勢物語の本文に基づいてかれているように見えるが、そ

現代の我々目から見てといことであっはり愚見抄伊勢

本文はによる時の本文研究の成果と見てべきもの

であろう。

重要な指摘に傍線を付し。武田系統本との一られ、

的に は武田 系統か 影響 を受

れとも一

致し ない

箇所も見いださ源本など初期武田影響

ことを指摘している。その上良による当時の本文研究の

成果と所引の伊勢物語本文を付けて

この 片桐

木解 説に 考察 は、

でき るも

補うある

、愚見抄の引用本文の初稿本・再稿本間の異同についは触

れていない点で二点目は、片桐・鈴解説良筆本とし

後掲す天理図書館蔵本用いてが、解説刊行後に新たに公刊・報

告された資料もあり、多くの重要資料と対校

愚見抄所引の物本文が、兼良の『伊勢物語』研究の根幹をなすもの

とをする稿本の本文が兼良の最終的な校訂本文で

り、また兼良自筆本ある時雨亭本が最も重要資料とは無論

である。であるとしも、初稿本か本、再稿本への過程にお

物語の異同についても併て考察ることによっその性質に

いてかになること考えまた、同じく兼良自筆の武

や兼良筆『伊勢物語』な、新たされた資料もあ、これら

も加えてよ詳細ことある

、この二点について検討をえな、愚見所引の物語本文を

再検討する。

(6)

一条兼良筆本『伊勢物語』

愚見抄の初稿本間本稿本につい第一節詳述したの

兼良筆『伊勢物』諸本について紹介す

まず、桐・鈴で対校本とし

理大学附属天理図書館蔵兼良筆本(

913

32―イ

31

天理本の奥書を有す既出の奥書は本文を省略す

B '

〈G〉為相奥書)

以祖真筆本、不違一書写校合了、可備証本矣

藤為相在判

〈H〉

辞上都平安城之旧居、寓京春日之里之旅店、閑寂之暇、終書写

。雖相顧悪筆、可備證本物歟

応仁二年九月桃華老人

亀鑑旧蔵本。池亀鑑『伊勢物語に就研究(究編(昭

35出版一篇第三章四節第四項流布本系統第二類六

條兼良本伊勢物語」に、「架蔵の一本」紹介さていであり、

「本書の筆は、果して桃華老人、一兼良そのか否か不

ある一兼筆で、彼をとあ

代の書に係のなるとは疑なされて 天理本B武田本定家奥書の後半部とG為相奥書の後に、応仁二年(一

四六八)九月の兼良奥書を有しり、兼良六十七歳の時の書写であ

と知但し理本の兼良筆本の筆跡に兼良の特徴見いだせ

ない

。自 しが たく

町末期 兼良 を書 写し たも

あると考えられる

以下、片桐・鈴の対校に用られていない、重要兼良本につ

いて

2吉

影印・刻が古典文庫

624『伊勢物伝藤原藤房筆本(平

10・古典

文庫)

られ り、

これま 池田 亀鑑

津有

福井貞助

武井和人・吉田幸一にしい考されて (8。藤房本は紅梅

文庫旧

67丁裏五行目まで藤原藤房同六行目以が一条兼

良の補藤原(里小路藤房は四年(二九六

代末期から北朝卿。皇の側近

幕運動に参画し、建武政権担った人物であ

良筆の補筆部分のみなら冊にわたって兼良が堯孝

本・定本によって校合加えており、兼良の『伊勢物語』研究の跡が

残されてい点が重要である。奥書を掲出する。

〈I〉業平官歴、本文略)

〈B〉定家武田本奥書)

近代 使事 出□

(来)代之人今案也。更不可用之。

此物語、古人之説不同。或称在中将之自書、或称伊勢之筆作。就彼

(7)

此有書落事等。古之人可尋。作者詞花言葉而已。

戸部尚書在判

〈G〉為相奥書)

〈C〉定家根源本奥書)

〈J〉堯孝奥書)

此草子借

或好 士之本、

令書写之

、予 加校合畢。随

分秘蔵本

雖然以未所字奥書等、僻字少々在之歟。但書様文字遣以下不

違彼本写之間、不及料簡者也。

権少僧都堯孝在判

〈K〉

此伊勢物語古本、女房令所持也。但奥詞未終功、又誤字落字多也。

仍借堯孝僧又書継詞。件本以朱注釈、今以墨書

之又□本 (彼)有落字不審事等。仍以此本為正不必改善古人格言

也。

詞林樗散花押

〈L〉

嘉吉三年八月下旬、以定家卿筆本重校合畢。但件本奥端朽

「おきもせねもせて」といふり端不見。奥は野と

ならはうつらとな」といふり奥不見。間一二枚又朽

件本白色小草子也。泉中将持和朝臣、借或人令見予之

次、加校合畢花押 〈M〉

傍付訓釈等定家自筆本不載之想是後人為談義、注付者歟。悉

次虚誕事、不可信用也。

〈A〉業平略伝、本文略)

〈N〉登場人物略伝、本文略)

〈O

以上伊勢物語謌百九十五首

〈P〉

大和物語業平子滋春 在次君

Lの兼良奥書に、嘉吉三年(一四四三)八月に定家筆本に校合

した旨が記されて。嘉吉三年当時、兼良十二歳。愚見抄初稿本

も前に筆写伊勢物』と、兼良の『伊勢物語』研究の上

重要のだといとになる。なお、Jは堯孝に奥書であ

り、K奥書による、堯孝本用いて校合したことが分か

堯孝本

理大学付属

理図書館蔵

孝本(

913

32―イ

9)が存

しているには本奥

B定家武田本奥書為相奥の後に、本奥書としJ堯孝奥書があり、

再びB定家田本奥書、文永年(一二六)為家奥書を有し

兼良が堯孝本照してい、藤房本のJ・K奥書か判明す

の堯孝本の本文も合せて調査した。

片桐・鈴木解説の後報告さたのが、次の一本である。

佐渡博物館蔵佐藤樌界コレクション本〈佐渡博本〉

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