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論文の要約

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Academic year: 2021

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論文の要約

日本大学大学院医学研究科外科系 佐藤謙太郎

研究名:

骨肉腫における miR-218、YM155の抗腫瘍効果についての比較検討

英題:

Comparison of tumor-suppressing effect of miRNA-218 and YM155 in Osteosarcoma

佐藤謙太郎1)、大幸英至1)、藤井亮太1)、藤原恭子2)、徳橋泰明1)

1)日本大学医学部整形外科学教室

2)日本大学医学部内科学系総合内科・総合診療医学分野

【背景】

骨肉腫は若年者の長管骨骨幹端部に好発し、原発性悪性骨腫瘍の中で最も頻 度が高い。近年の化学療法および外科的治療の集学的治療により生存率は大幅 に改善したが、再発や進行した骨肉腫に対しては、抗癌剤に対する抵抗性も含 めその治療に未だ難渋を極めている。これを打破するために分子標的薬を含む 様々な臨床試験例が行われているが、その治療成績については未だ十分な効果 が認められていないのが現状である。その一因としては、骨肉腫には遺伝子変 異の亜型が多く、統一した遺伝子異常がないためと考えられる。ゆえに今後の 治療成績改善のために、骨肉腫に対する腫瘍形成のメカニズムを解明する必要 がある。

Survivinは inhibitor of apoptosis protein(IAP)ファミリーの一つで、caspase活 性を阻害することでアポトーシスを抑制している。正常組織では発現がなく腫 瘍細胞において過剰発現しており、非小細胞性肺癌や大腸癌を始め様々ながん

において survivin は過剰発現している。骨肉腫においても同様に survivin は高発

現しており、以前我々は、survivin 高発現症例は予後不良であることを報告し治

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療標的としての潜在性に注目した。

YM155 はsurvivin の発現抑制薬として開発された分子標的薬であり、survivin 発現を抑制することで細胞増殖を抑え、さらに薬剤感受性を改善し抗腫瘍効果 を示すことが報告されている。しかし YM155は欧米における第 2相試験におい て、ドセタキセル単剤と YM155併用群で生存率に差がなかったと報告されてい る。このように 1 対 1 対応の薬剤では治療効果には限界があると考え、より広 範囲に作用し複数の遺伝子を標的にする治療薬の開発が必要であると考えた。

microRNA(miRNA)は、18-25塩基前後で構成される non-cording RNAであ り、生体内の様々な現象に関与し、標的遺伝子によって oncogenic もしくは tumor suppressive に働く。Survivin も数多くの miRNA に制御され、その miRNAは様々 ながんで発現が抑制されている。

数多くのmiRNA の中で我々は Nuclear factor-kappa B(NF-κB)経路や wnt/β-

catenin 経路といった、骨肉腫の腫瘍形成に極めて重要な標的遺伝子を数多く持

つ miRNA-218(miR-218)に注目した。miR-218 は骨肉腫を含め多くの悪性腫瘍で 発現量が低下し、再発現することで腫瘍形成に寄与する複数の遺伝子を同時に 制御し抗腫瘍効果を発揮すると報告されている。

【目的】

骨肉腫では miR-218が、T-cell lymphoma invasion and metastasis-inducing protein 1(TIAM1)、matrix metalloprotease(MMP)-2・-9 の発現を調節するこ とで遊走・浸潤能を抑制し腫瘍抑制的に作用すると報告されているが、アポト ーシスや細胞周期を含めた詳細な解析は十分でない。加えて in vivo における miR-218 機能についての知見も得られていない。また、miR-218による survivin 発現調節を評価したものはない。さらに 、miRNAの有効性は散見されるが分 子標的薬と比べた報告もまたない。そこで本研究は統一した遺伝子異常がない 骨肉腫で miR-218の抗腫瘍効果を in vitroin vivo で検討し、さらに YM155と 抗腫瘍効果を比較することにより、一つで多くの標的遺伝子を制御する

miRNA のさらなる有効性を評価し新規治療法開発の足掛かりを作ることを目

的とした。

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【材料と方法】

miR-218発現量を骨肉腫細胞株(MG63, HOS)、正常骨芽細胞株

(hFOB1.19)において quantitative real time polymerase chain reaction (qRT- PCR)を用いて測定した。miR-218および YM155とそのコントロールをそれぞ れ negative control miRNA(NC-miRNA)、Phosphate buffered salts(PBS)として 設定し、MG63 での survivin 発現をmRNA レベルでは qRT-PCR、蛋白レベルで は western blot assayにより解析した。加えて細胞増殖能を Water soluble

Tetrazolium salts 8(WST8) assay、加えてアポトーシスについてpropidium iodide(PI)および Annexin V- Fluorescein isothiocyanate(FITC)の二重染色 による Fluorescence-Activated Cell Sorter(FACS)解析にて検討した。生体にお ける抗腫瘍効果は生後 8週の免疫不全マウスを用い、MG63 を皮下注射し腫瘍 を形成させ、miR-218もしくは YM155 を腫瘍内に注射し検討した。腫瘍サイ ズの計測に加えて survivin 免疫染色を行い、immunohistochemistry score で組織 学的に評価した。遊走能は wound healing assay、浸潤能は matrigel invasion assayで検討し、関連蛋白を western blot assayにて検討した。統計学的解析 は、Student’s t検定を用いて検討した。

【結果】

骨肉腫細胞株(MG63、HOS)は正常骨芽細胞株と比べ miR-218発現量は有意 に低下していた(p<0.05)。MG63は HOSより miR-218の発現量低下が著明であ り、また、遺伝子導入にて再発現量が多かったため、以後の骨肉腫細胞株は MG63 を使用した。また、miR-218および YM155の比較検証にあたり、濃度差での影 響を除外するために骨肉腫細胞株に miR-218の再発現(miR-218 群)、もしくは YM155 を投与(YM155群)して WST8 assayを施行し IC50を測定した。その結 果、miR-218では 50nM、YM155は 5nMとし以後の実験を行った。

miR-218群、YM155 群共に survivin を mRNA(p<0.05、p<0.05)・蛋白レベル で有意に発現を抑制した。また、miR-218 群、YM155 群では共に時間依存的に 細胞増殖を抑制した(72時間:p<0.05、p<0.05)。さらにFACS 解析では miR-218

群、YM155群は共に右方移動あり有意に早期・晩期アポトーシスを誘導してお

り(p<0.05、p<0.05)、survivin 発現抑制によるアポトーシスを誘導した。YM155

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は動物モデルで有意に腫瘍形成を抑制することが報告され、さらに臨床試験ま で行われている。そこで miR-218 再発現の腫瘍形成への影響を調べ、生体応用 可能か免疫不全マウスモデルで評価した。miR-218 群およびYM155 群で共に有 意に腫瘍体積増大を抑制ならびに縮小させた(第 18日目:p<0.05、p<0.05)。さ らに摘出検体にて survivin免疫染色を行い、miR-218 群および YM155 群で陽性 範囲の面積低下・染色減弱を認め(p<0.05、p<0.05)、生体レベルでの細胞増殖 能の抑制を確認した。

コントロール群と比して miR-218、YM155 両群共に増殖能を抑制していたた め、骨肉腫における遊走能を評価するため wound healing assay にて検討した。

miR-218群は時間依存的に有意に遊走能を抑制したのに対して(72時間:p<0.05)、

YM155 群は遊走能を抑制しなかった。

さらに浸潤能への影響を評価するため matrigel invasion assayを行った。miR- 218 群は浸潤を有意に抑制したのに対して(p<0.05)、YM155群は浸潤を抑制し なかった(p=ns)。miR-218 群では遊走・浸潤能が抑制されたにもかかわらず、

YM155 では抑制されなった原因を検討した。miR-218は TIAM1、MMP-2・9を 抑制し、浸潤能・遊走能を抑制すると報告があり、遊走・浸潤能にこれら MMPs の関与を考えた。miR-218群および YM155群で western blot assay を行い、miR- 218 群では同遺伝子の蛋白発現を抑制したが、YM155 群では抑制しなかった。

【考察】

近年多くのがんで分子標的薬について研究されており、その治療効果には目 を見張るものがある。骨肉腫でも様々な分子標的薬の臨床試験が行われている が効果が十分ではなく、その一因として骨肉腫には統一した遺伝子異常がない ことが考えられる。

骨肉腫では様々な miRNA の関与が指摘されており、tumor suppressor もしく

は oncogeneとしても作用するものが報告されて発生、進展、薬剤・放射線感受

性の改善、予後因子などに関与すると報告されている。現在 miRNAによる臨床 試験が C 型肝炎をはじめ、悪性中皮腫において行われており良好な成績が報告 されているが、骨肉腫においては未だ行われていない。分子標的薬は標的遺伝 子が一対一対応であり、多種多様な細胞・器官からなる生体内では想定通りの

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効果が得られないのに対して、miRNAは一つで数十から数百の標的遺伝子を制 御し、破綻した生体ネットワーク全体を正常化することが期待できる。

miR-218は骨肉腫も含め多くのがんで発現が抑制され、腫瘍形成、転移、薬剤

抵抗性に関与していると報告されている。miR-218 の骨肉腫での作用機序とし て、miR-218 は発現が抑制されており、再発現により TIAM1、MMP-2・9 を介 して浸潤能・遊走能共に抑制し、さらにアポトーシスを導くと報告されている が、その機序は未だはっきりしていない。そこで我々は正常組織では発現がな く腫瘍細胞において過剰発現し、がん細胞をより効率的に治療できる可能性が ある survivin に注目した。Survivin は miR-218 を含む様々な miRNA により制御 されているが、その中でも骨肉腫における miR-218 と survivin との関連ならび に治療標的とした報告はない。加えて近年盛んに開発されている分子標的薬と 比較した報告はない。

本研究では、一対一対応の survivin に対する分子標的薬である YM155との抗 腫瘍効果を比較することにより、一つで多くの標的遺伝子を制御する miRNA の 有効・潜在性を示すことを目的とした。その結果、in vitro およびin vivo レベル

で、miR-218 およびYM155 は骨肉腫細胞に対してアポトーシスを誘導し、細胞

増殖を共に抑制した。しかし miR-218 は浸潤能・遊走能共に抑制したのに対し、

YM155 は浸潤能・遊走能共に抑制しなかった。miR-218を含む miRNAを治療標

的にすることは、骨肉腫のような統一した遺伝子異常がない腫瘍において有効 な治療方法であるだけでなくより広範囲かつ効率的に作用する可能性を秘めて いると考えた。

【まとめ】

骨肉腫においてin vitroin vivoレベルで miR-218を再発現することで YM155 投与と同様に survivin を抑制しアポトーシスを導き細胞増殖を抑えた。加えて miR-218 の再発現は survivin だけでなく MMP-2・9を介し遊走能・浸潤能の抑制 効果を認め、YM155と比較してより抗腫瘍効果に期待できる。分子標的薬は標 的遺伝子が一対一対応のため、多種多様な細胞・器官からなる生体内では想定 通りの効果が得られないこともある。しかし、miRNA は一つで数十から数百の 標的遺伝子を制御し、破綻した生体ネットワーク全体を正常化することが期待

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できる。そのため miRNA は分子標的薬より広範囲に作用するため有用な治療薬 になる可能性があると考える。

参照

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