日 本 に お け る ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の 病 理 学 的 お よ び 疫 学 的 研 究
日 本 大 学 大 学 院 獣 医 学 研 究 科 獣 医 学 専 攻 博 士 課 程
接 待 佳 奈 子
2019
目 次
第1章 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第2章 ウサギの子宮疾患の病理組織学的検索
第1節 非腫瘍性疾患の病理組織学的分類 ・・・・・・・・・・・ 7 第2節 腫瘍性疾患の病理組織学的分類 ・・・・・・・・・・・・・ 11 第3章 ウサギの子宮の非腫瘍性および腫瘍性疾患に関する記述疫学
第1節 非腫瘍性/腫瘍性疾患の発生状況に関する記述疫学 ・・・・・
30第2節 非腫瘍性/腫瘍性疾患の手術時年齢に関する記述疫学 ・・・・ 32 第3節 非腫瘍性/腫瘍性疾患に伴う臨床症状に関する記述疫学 ・・・
33第4節 非腫瘍性/腫瘍性疾患の品種に関する記述疫学・・・・・・・・ 36 第4章 ウサギの子宮内膜過形成および子宮内膜腺癌における記述疫学
第1節 子宮内膜過形成および子宮内膜腺癌の発生状況における
手術時年齢の記述疫学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 第2節 子宮内膜過形成および子宮内膜腺癌の発生状況における
品種差の記述疫学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 第3節 子宮内膜腺癌の発生状況における年齢および品種の関連性に
関する記述疫学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55
第5章 総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
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第 １ 章
序 論
現 在 飼 育 さ れ て い る ウ サ ギ の 起 源 は ヨ ー ロ ッ パ ア ナ ウ サ ギ で
あ る と さ れ 、
2 0 1 9年 現 在 、
A m e r i c a n R a b b i t s B r e e d e r s A s s o c i a t i o n ( A R B A )で は
4 9品 種 が 登 録 さ れ て い る
[ A m e r i c a n R a b b i t B r e e d e r s A s s o c i a t i o n ( A R B A ) ]。 一 般 に ウ サ ギ の 性 成 熟 は
4～
1 2カ 月 齢 で あ る （ 小 型 種 で
4～
5カ 月 齢 、 中 型 種 で
4～
8カ 月 齢 、 大 型 種 で
9～
1 2カ 月 齢 ）。 日 本 で は ミ ニ ウ サ ギ を 含 む 雑 種 や 、 ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 、 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 等 の 小 型 種 が 人 気
で あ る
[ A n i c o m I n s u r a n c e , I n c . ]。 子 宮 疾 患 は 、 歯 科 や 消 化 器 疾 患 に 次 い で 多 く 認 め ら れ る 軟 部 組 織 疾 患 で あ り 、 近 年 、 ウ サ ギ に
お け る 子 宮 疾 患 に 関 し て 多 く の 報 告 が な さ れ て い る
[ A s a k a w a M G , e t a l . 2 0 0 8 ; G o t o M , e t a l . 2 0 0 6 ; F r a n k K , e t a l . 2 0 1 5 ; K u r o t a k i T , e t a l . 2 0 0 7 ; S a i t o K , e t a l . 2 0 0 2 ; S a t o Y . 2 0 1 6 ; W a l t e r B , e t a l . 2 0 1 0 ]。 最 も 一 般 的 に 認 め ら れ る 子 宮 疾 患 は 、 子 宮 内 膜 過形 成 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 で あ る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ; E r i c- 2 -
K , e t a l . 2 0 1 2 ]
。 そ の 臨 床 症 状 は 非 特 異 的 で あ り 、 元 気 消 失 、 食 欲 不 振 、 乳 腺 の 異 常 、 血 尿 、 陰 部 か ら の 出 血 あ る い は 漿 液 性 の
分 泌 物 、 貧 血 な ど が 認 め ら れ る 。 子 宮 内 膜 腺 癌 の 進 行 は 一 般 に 緩
徐 で あ る と さ れ 、1 ～
2年 か け て 肺 、 肝 、 脳 、 骨 な ど に 転 移 す る こ と が あ る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ]。 現 在 の と こ ろ 、 化 学 療 法 の プ ロ ト コ ル は 確 立 さ れ て い な い 。 ま た 、
3歳 齢 以 上 の ウ サ ギ に お け る 子 宮 内 膜 腺 癌 の 発 生 率 は
5 0～
8 0％ で あ る と の 報 告 が あ る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ; E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ; K a u f m a n n - B a r t M , e t a l . 2 0 0 8 ]。 こ の よ う な 報 告 を も と に 、 ウ サ ギ の 予 防 的 避 妊 手 術 の 推 奨 年 齢 は
2歳 齢 以 下 、理 想 的 に は
6～
9カ 月 齢 以 下 と さ れ て い る 。
こ の よ う に 、 ウ サ ギ に お い て 子 宮 疾 患 、 特 に 子 宮 内 膜 腺 癌 は 注
意 す べ き 疾 患 で あ る と の 報 告 が な さ れ て い る が 、 日 本 に お い て 、
ウ サ ギ で は 子 宮 疾 患 を 原 因 と し た 体 調 不 良 、死 亡 例 が い ま だ 多 く
認 め ら れ る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 に 関 し ア ン ケ
ー ト 調 査 を 行 い 、 各 子 宮 疾 患 の 発 生 数 、 手 術 時 年 齢 分 布 、 年 齢 差
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に よ る 罹 患 疾 患 の 違 い 、 各 子 宮 疾 患 に 伴 う 臨 床 症 状 、 品 種 差 に よ
る 罹 患 疾 患 の 違 い に つ い て 病 理 組 織 学 的 検 索 お よ び 疫 学 的 研 究
を 行 い 、日 本 に お け る ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の 発 生 状 況 を 解 析 す る こ
と を 目 的 と し た 。
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第
2章 ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 検 索
は じ め に
ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の う ち 、 非 腫 瘍 性 疾 患 に 関 し て は 、 子 宮 内 膜
過 形 成 が 最 も 一 般 的 に 認 め ら れ る と 報 告 さ れ て い る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ; E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ; S a i t o K , e t a l . 2 0 0 2 ]。 ま た 、 子 宮 水 腫 が 二 番 目 に 多 く 認 め ら れ た と の 報 告 も あ る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ; S a i t o K , e t a l . 2 0 0 2 ]
。 子 宮 蓄 膿 症 は ど ん な ウ サ ギ で も 発 生 し 得 る が 、稀 で あ る と 報 告 さ れ て い
る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ; S a i t o K , e t a l . 2 0 0 2 ]。 そ の 他 、 子 宮 腺 筋 症 、 子 宮 内 膜 静 脈 瘤 、 子 宮 内 膜 炎 、 子 宮 血 腫 な ど の
報 告 が あ る 。
腫 瘍 性 疾 患 に 関 し て は 、子 宮 内 膜 腺 癌 が 最 も 一 般 的 に 認 め ら れ
る と 報 告 さ れ 、 平 滑 筋 腫 お よ び 平 滑 筋 肉 腫 は 、 子 宮 内 膜 腺 癌 に 伴
っ て 、 あ る い は そ れ の み で し ば し ば 認 め ら れ る と さ れ て い る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ; E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ]
。 子 宮 内 膜
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腺 腫 が 二 番 目 に 多 く 認 め ら れ る 腫 瘍 性 疾 患 で あ っ た と の 報 告 も
あ る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ; S a i t o K , e t a l . 2 0 0 2 ]。 そ の 他 の 腫 瘍 性 疾 患 と し て は 、 絨 毛 癌 、 癌 肉 腫 の 報 告 が あ る が 、 そ
の 発 生 は 稀 で あ る と さ れ て い る
[ G o t o M , e t a l . 2 0 0 6 ; K a u f m a n n - B a r t M , e t a l . 2 0 0 8 . ]。 こ れ ら の ウ サ ギ の 子 宮 の 非 腫 瘍 性 疾 患 お よ び 腫 瘍 性 疾 患 に お い て 、同 一 の 疾 患 で あ る に も 関 わ
ら ず 、 そ の 病 理 組 織 学 的 診 断 名 が 統 一 さ れ て い な い 場 合 が あ る 。
そ こ で 、 本 研 究 に お け る ア ン ケ ー ト 調 査 の 解 析 に 先 だ っ て 、 ウ サ
ギ の 子 宮 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 検 査 を 実 施 し 、ま た 現 在 報 告 さ れ て
い る 文 献 上 の ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 比 較 し た 。
ま た ヒ ト や 犬 、 猫 、 そ の 他 動 物 の 子 宮 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 特 徴 と
の 比 較 を 行 い 、 病 理 組 織 学 的 診 断 を 分 類 、 整 理 す る こ と と し た 。
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材 料 ・ 方 法
2 0 1 7
年 か ら
2 0 1 9年
9月 末 ま で に 、 獣 医 病 理 学 研 究 室 に 診 断 依
頼 が あ っ た
4 1検 体 の ウ サ ギ の 子 宮 に 関 し て 、 定 法 通 り 標 本 作 成
(固 定 ：
1 0％ 中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン 、 包 埋 ： パ ラ フ ィ ン 、 薄 切 ：
3μ
m、 染 色 ： ヘ マ ト キ シ リ ン ・ エ オ ジ ン 染 色
)を 行 い 、 病 理 組 織 学 的 検 索 を 行 っ た 。 な お 、
4 1検 体 の 年 齢 幅 は
7カ 月 齢 ～
1 1歳 齢 、 平 均 年 齢 は
4歳
1か 月 齢 で あ り 、 品 種 不 明
1 3検 体 、 雑 種
9検 体 、 ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ
8検 体 、 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ
5検 体 、 ロ ッ プ イ ヤ ー
5検 体 、 ミ ニ レ ッ キ ス
1検 体 で あ っ た 。 さ ら に 、 文 献 検 索 を 実 施 し 、 ウ サ ギ 、 ヒ ト 、 犬 、 猫 お よ び そ の 他 の 動 物 の 子 宮 疾 患
に つ い て の 病 理 組 織 学 的 所 見 を 収 集 し 、前 述 の 病 理 組 織 学 的 検 索
と 合 わ せ て ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 特 徴 を 整 理 、分 類 し
た 。
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第
1節 非 腫 瘍 性 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 分 類
最 も 多 く 認 め ら れ る ウ サ ギ の 子 宮 の 非 腫 瘍 性 疾 患 は 、子 宮 内 膜
過 形 成 （ 子 宮 内 膜 増 殖 症 、 子 宮 内 膜 増 生 ） で あ る と さ れ て い る 。
ウ サ ギ に お い て は 、 子 宮 ポ リ ー プ 、 あ る い は 子 宮 内 膜 ポ リ ー プ は
子 宮 内 膜 過 形 成 な ど の 増 殖 病 変 を 呈 す る 病 態 の ひ と つ と さ れ 、子
宮 内 膜 過 形 成 と 同 一 疾 患 と し て 扱 わ れ て い る 。ウ サ ギ の 子 宮 内 膜
過 形 成 で は 、 嚢 胞 性 子 宮 内 膜 過 形 成 、 腺 腫 様 子 宮 内 膜 過 形 成 が あ
り 、 嚢 胞 性 子 宮 内 膜 過 形 成 の 発 生 が 多 い と 報 告 さ れ て い る 。 子 宮
内 膜 の 変 化 は 、 ポ リ ー プ 形 成 か ら 嚢 胞 性 子 宮 内 膜 過 形 成 、 腺 腫 様
過 形 成 、子 宮 内 膜 腺 癌 ま で 連 続 性 に 起 こ る 可 能 性 が 考 え ら れ て お
り 、子 宮 内 膜 過 形 成 は 子 宮 内 膜 腺 癌 と の 関 連 が あ る こ と を 示 唆 す
る 報 告 が な さ れ て い る が 、一 方 で 子 宮 内 膜 過 形 成 と 子 宮 内 膜 腺 癌
に は 関 連 が な い こ と が 示 唆 さ れ た と の 報 告 も あ る
[ E r i c K , e t a l .2 0 1 2 ]
。 そ の 他 の 動 物 に お い て は 、 子 宮 ポ リ ー プ あ る い は 子 宮 内
膜 ポ リ ー プ に 関 し て は 、基 本 的 に ウ サ ギ と 同 様 に 子 宮 内 膜 過 形 成
な ど の 増 殖 病 変 を 呈 す る 病 態 の ひ と つ と さ れ 、子 宮 内 膜 過 形 成 と
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同 一 疾 患 と し て 扱 わ れ て お り 、腫 瘍 性 病 変 で あ る こ と は 稀 で あ る
と さ れ て い る 。 ま た 、 通 常 犬 で は 嚢 胞 性 子 宮 内 膜 過 形 成 で あ る と
さ れ て い る
[山 口 良 二 、
2 0 1 0 ]。 ヒ ト に お い て は 、 ポ リ ー プ に は 子 宮 頚 管 ポ リ ー プ 、 子 宮 内 膜 ポ リ ー プ が 報 告 さ れ て お り 、 子 宮 頚 管
ポ リ ー プ は 非 腫 瘍 性 病 変 で あ り 、子 宮 頚 管 腺 か ら 起 こ る 炎 症 に 関
連 し た 腫 瘤 形 成 性 疾 患 と さ れ る 。 一 方 、 子 宮 内 膜 ポ リ ー プ の 多 く
は 子 宮 内 膜 の 良 性 腫 瘍 で あ る と さ れ 、そ の 本 体 は 子 宮 内 膜 の 間 質
細 胞 の 腫 瘍 性 増 殖 で あ る と い わ れ て い る
。子 宮 内 膜 増 殖 症 （ 子 宮
内 膜 過 形 成 ） は 、 子 宮 体 癌 と 密 接 な 関 係 が あ り 、 前 癌 病 変 と 考 え
ら れ ポ リ ー プ と は 区 別 さ れ て い る
。さ ら に ヒ ト で は 子 宮 内 膜 増 殖症 は 単 純 型 子 宮 内 膜 増 殖 症 、 複 雑 型 子 宮 内 膜 増 殖 症 、 単 純 型 子 宮
内 膜 異 型 増 殖 症 、 複 雑 型 子 宮 内 膜 異 型 増 殖 症 に 分 類 さ れ る
[棟 方
哲
, 2 0 0 9 ]が 、 現 在 の と こ ろ 、 ウ サ ギ で は こ の よ う な 分 類 は 報 告
さ れ て い な い 。
子 宮 内 膜 静 脈 瘤 も 、ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の 代 表 的 な 非 腫 瘍 性 疾 患
で あ る と さ れ 、 若 齢 の 個 体 に 多 く 発 生 し 、 致 死 的 な 出 血 の 報 告 も
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あ る
[ B r a y M V , e t a l 1 9 9 2 ; D e t t w e i l e r A , e t a l . 2 0 1 2 ; R e i m n i z L , G u z m a n D S M , e t a l . 2 0 1 7 ]。 子 宮 内 膜 静 脈 瘤 は 、 子 宮 内 膜 過 形 成 に 伴 い 、内 膜 に 単 発 性 あ る い は 多 発 性 に 形 成 さ れ 、あ る い は 、
子 宮 内 膜 過 形 成 が 認 め ら れ な い 状 態 で も 、子 宮 内 膜 静 脈 瘤 の 発 生
が 認 め ら れ る こ と が あ る と 報 告 さ れ て い る
[ E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ]。 ウ サ ギ に お い て 子 宮 内 膜 静 脈 瘤 の 発 生 の 原 因 、機 序 は い ま だ 明 か
に さ れ て お ら ず 、 そ の 他 の 動 物 に お い て は 、 外 膜 の 先 天 的 欠 損 、
管 腔 内 圧 の 増 加 、外 傷 に 関 連 し て 発 生 す る も の と 考 え ら れ て い る
[ E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ]
。 ヒ ト に お い て は 、 子 宮 内 膜 下 あ る い は 筋 層 の 静 脈 瘤 、 動 脈 瘤 の 報 告 が あ る 。 ま た 、 帝 王 切 開 後 、 正 常 分
娩 後 な ど に 子 宮 内 膜 仮 性 動 脈 瘤 の 発 生 が 認 め ら れ る こ と が あ る
と 報 告 さ れ て い る
[棟 方 哲
, 2 0 0 9 ]。
子 宮 腺 筋 症 は 、し ば し ば 認 め ら れ る ウ サ ギ の 子 宮 の 非 腫 瘍 性 疾
患 と し て 報 告 が あ る
[ E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ]。 子 宮 腺 筋 症 は 犬 や 猫 を は じ め と す る そ の 他 の 動 物 や ヒ ト で も 発 生 し 、そ の 病 理 組 織
学 的 特 徴 お よ び 分 類 は ウ サ ギ と 同 様 で あ る
[棟 方 哲
, 2 0 0 9； 山 口
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良 二 、
2 0 1 0 ]。 他 に 、 ウ サ ギ の 子 宮 の 非 腫 瘍 性 疾 患 と し て は 子 宮 内 膜 炎 、 子 宮 血 腫 、 子 宮 水 腫 、 子 宮 蓄 膿 症 の 報 告 が さ れ て い る
[ E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ]
。
当 研 究 室 に 診 断 の 依 頼 が あ っ た ウ サ ギ の 子 宮
4 1検 体 の う ち 、 子 宮 内 膜 過 形 成 は
1 6検 体 認 め ら れ 、 病 理 組 織 学 的 に は 、 左 右 子 宮 角 に 発 生 し 、 子 宮 内 膜 の 内 腔 側 や 間 質 に 、 大 小 多 数 の 嚢 胞 の 形
成 が 認 め ら れ る 嚢 胞 性 子 宮 内 膜 過 形 成 （ 図
1） が 最 も 多 く 、 ま た 子 宮 内 腔 に 突 出 す る よ う な 多 数 の ポ リ ー プ 状 の 腺 腫 性 過 形 成 や
内 膜 間 質 の 増 生 （ 同 時 に 嚢 胞 形 成 を 認 め る も の も あ り ） も 認 め ら
れ た 。 こ れ ら は 、 現 在 報 告 さ れ て い る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し
た 。 子 宮 内 膜 静 脈 瘤 は
4検 体 で 認 め ら れ 、 病 理 組 織 学 的 に は 、 子 宮 内 腔 に 向 か っ て 顕 著 な 子 宮 内 膜 血 管 の 拡 張 お よ び 蛇 行 が 認 め
ら れ 、 内 部 に は 凝 血 塊 が 含 ま れ て い た （ 図
2） 。 こ れ は 、 現 在 報 告 さ れ て い る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し た 。 ま た 、 ヒ ト に お い て
認 め ら れ る 子 宮 内 膜 下 あ る い は 筋 層 の 静 脈 瘤 、動 脈 瘤 は 認 め ら れ
な か っ た 。 子 宮 腺 筋 症 は
2検 体 で 認 め ら れ 、 病 理 組 織 学 的 に は 、
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子 宮 筋 層 に 子 宮 内 膜 腺 お よ び そ れ を 囲 む 子 宮 内 膜 間 質 が 存 在 す
る 状 態 で あ り 、周 囲 の 筋 層 の 肥 大 、過 形 成 を 伴 っ て い た（ 図
3）。
こ れ は 、 現 在 報 告 さ れ て い る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し 、 ま た イ
ヌ 、ネ コ お よ び ヒ ト で 認 め ら れ る 子 宮 腺 筋 症 の 病 理 組 織 学 的 所 見
と 同 様 で あ っ た 。
第
2節 腫 瘍 性 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 分 類
ウ サ ギ で は 、子 宮 内 膜 腺 癌 は 最 も 多 く 認 め ら れ る 子 宮 の 腫 瘍 性
疾 患 で あ る と 報 告 さ れ て い る
[ F r a n k K , e t a l . 2 0 1 5 ; S a i t o K , e t a l . 2 0 0 2 ; W a l t e r B , e t a l . 2 0 1 0 ]。 近 年 、 そ の 病 理 組 織 学 的 特徴 か ら 、 乳 頭 状 癌 あ る い は 管 腔 性
/充 実 性 癌 に 分 類 で き る と 報 告 さ れ た 。こ れ ら は エ ス ト ロ ゲ ン レ セ プ タ ー お よ び プ ロ ゲ ス テ ロ ン
レ セ プ タ ー 発 現 に 差 が 認 め ら れ 、ウ サ ギ の 子 宮 内 膜 腺 癌 に は ふ た
つ の 異 な る 発 達 経 路 が あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 乳 頭 状 癌 で は 、
病 期 の 後 期 に 腫 瘍 細 胞 は 子 宮 筋 層 に 浸 潤 し 、筋 層 の 菲 薄 化 を 引 き
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起 こ す 。 一 方 、 管 腔 性
/充 実 性 癌 で は 筋 層 の 菲 薄 化 は 伴 わ ず 、 病 気 の 初 期 に 腫 瘍 細 胞 は 子 宮 筋 層 に 浸 潤 す る と 報 告 さ れ て い る
[ A s a k a w a M G e t a l . 2 0 0 8 ]
。 そ の 他 の 動 物 で は 、 子 宮 内 膜 腺 癌 は 牛 、 猫 で よ く 知 ら れ て お り 、 犬 な ど 他 の 動 物 に も 稀 に 発 生 す る と
さ れ て い る
[山 口 良 二 、
2 0 1 0 ]。 ヒ ト に お い て は 、 子 宮 に 発 生 す る 腫 瘍 は 子 宮 頚 部 と 子 宮 体 部 （ 子 宮 内 膜 ） に 大 別 さ れ 、 子 宮 頚 部 で
は 扁 平 上 皮 癌 が 多 く 、子 宮 体 部 で は 腺 癌 が 多 く 認 め ら れ る と さ れ
て い る 。 ま た 、 子 宮 頚 部 お よ び 子 宮 体 部 の 腺 癌 は そ の 病 理 組 織 学
的 特 徴 よ り 、 粘 液 性 腺 癌 、 類 内 膜 腺 癌 、 明 細 胞 腺 癌 、 漿 液 性 腺 癌
な ど に 分 類 さ れ る と さ れ て い る が
[棟 方 哲
, 2 0 0 9 ]、 現 在 の と こ ろ ウ サ ギ に お い て は こ の よ う な 分 類 は 報 告 さ れ て い な い 。
ウ サ ギ の 子 宮 の 腫 瘍 性 疾 患 で は 、平 滑 筋 腫 お よ び 平 滑 筋 肉 腫 が 、
子 宮 内 膜 腺 癌 と 同 時 に 、あ る い は そ れ の み で の 発 生 が し ば し ば 認
め ら れ る と 報 告 さ れ て い る
[ E r i c K , e t a l . 2 0 1 2 ]。 そ の 他 の 動
物 に お い て 、平 滑 筋 腫 は 犬 で は
1 0歳 齢 以 上 の 高 齢 の 個 体 で 多 く 、
豚 で の 発 生 も 報 告 さ れ て い る 。 ま た 、 平 滑 筋 肉 腫 の 発 生 は 稀 で あ
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る と さ れ て い る
[山 口 良 二 、
2 0 1 0 ]。 ヒ ト で は 、 平 滑 筋 腫 （ 子 宮 筋 腫 ） は そ の 発 生 部 位 に よ り 、 粘 膜 下 筋 腫 、 筋 層 内 筋 腫 、 漿 膜 下 筋
腫 に 分 類 さ れ 、そ れ ぞ れ 伴 う 臨 床 症 状 も 異 な る と 報 告 さ れ て い る
が
[棟 方 哲
, 2 0 0 9 ]、 現 在 の と こ ろ ウ サ ギ で は こ の よ う な 分 類 は 報 告 さ れ て い な い 。 ウ サ ギ の 子 宮 の 腫 瘍 性 疾 患 で は 、 他 に 子 宮 内 膜
腺 腫 、 血 管 腫 、 ま た 症 例 数 は 非 常 に 少 な い が 癌 肉 腫 、 絨 毛 癌 が 報
告 さ れ て い る
[ G o t o M , e t a l . 2 0 0 6 ; K a u f m a n n - B a r t M , e t a l . 2 0 0 8 ]。
当 研 究 室 に 診 断 の 依 頼 が あ っ た ウ サ ギ の 子 宮
4 1検 体 の う ち 、 子 宮 内 膜 腺 癌 は
7検 体 で 認 め ら れ 、 病 理 組 織 学 的 に は 、 腫 瘍 は 浸 潤 性 に 増 殖 し 、 ま た 子 宮 内 腔 へ 隆 起 、 突 出 し （ 図
4） 、 腫 瘍 細 胞 は 立 方 状 で あ り 、 腺 管 状 あ る い は 乳 頭 状 に 配 列 し 増 殖 し て い た （ 図
5
） 。 こ れ は 、 報 告 さ れ て い る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し た 。 ヒ ト に お い て は 、 子 宮 に 発 生 す る 腫 瘍 は 子 宮 頚 部 と 子 宮 体 部 （ 子 宮
内 膜 ） に 大 別 さ れ 、 子 宮 頚 部 で は 扁 平 上 皮 癌 が 多 く 、 子 宮 体 部 で
は 腺 癌 が 多 く 認 め ら れ る と さ れ て い る が 、今 回 の 調 査 で は ウ サ ギ
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に お い て は 左 右 子 宮 角 の 子 宮 内 膜 に 発 生 す る 子 宮 内 膜 腺 癌 の み
認 め ら れ た 。 平 滑 筋 腫 は
1検 体 、 平 滑 筋 肉 腫 は
2検 体 認 め ら れ 、 病 理 組 織 学 的 に は 、い ず れ の 腫 瘍 も 子 宮 筋 層 内 に 腫 瘤 病 変 を 形 成
し 、腫 瘍 は 束 状 ま た は 花 筵 状 配 列 を 示 す 紡 錘 形 細 胞 の 増 殖 か ら な
っ て い た 。 平 滑 筋 肉 腫 で は 、 細 胞 の 異 型 性 が 強 く 、 し ば し ば 核 分
裂 像 を 認 め た （ 図
6～
9） 。 こ け ら は 、 報 告 さ れ て い る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し た 。 ヒ ト で は 、 平 滑 筋 腫 （ 子 宮 筋 腫 ） は そ の 発 生
部 位 に よ り 、 粘 膜 下 筋 腫 、 筋 層 内 筋 腫 、 漿 膜 下 筋 腫 に 分 類 さ れ て
い る が
[棟 方 哲
, 2 0 0 9 ]、 現 在 の と こ ろ ウ サ ギ で は こ の よ う な 分 類 は な さ れ て お ら ず 、当 研 究 室 の 症 例 で も 明 確 に 発 生 部 位 を 区 別 す
る こ と は 困 難 で あ っ た 。 癌 肉 腫 は
1検 体 認 め ら れ 、 病 理 組 織 学 的 に は 、 子 宮 に 境 界 不 明 瞭 な 腫 瘤 が 形 成 さ れ 、 子 宮 内 腔 に 隆 起 、 突
出 し て い た 。腫 瘤 は 立 方 状 細 胞 の 腺 管 状 増 殖 と 紡 錘 形 細 胞 の 交 錯
状 増 殖 が 混 合 し 構 成 さ れ て お り 、 細 胞 異 型 は 中 等 度 、 核 分 裂 像 も
散 見 さ れ 、子 宮 筋 層 へ の 浸 潤 を 伴 っ て い た（ 図
1 0，
1 1）。こ れ は 、
報 告 さ れ て い る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し た 。
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小 括
以 上 よ り 、 ウ サ ギ の 子 宮 の 主 な 非 腫 瘍 性 疾 患 に 関 し て 、 子 宮 内
膜 過 形 成 、 子 宮 内 膜 増 殖 症 、 子 宮 内 膜 増 生 、 子 宮 （ 内 膜 ） ポ リ ー
プ と 診 断 さ れ る も の を 同 一 疾 患 、 ま た 子 宮 内 膜 静 脈 瘤 、 静 脈 瘤 と
診 断 さ れ る も の を 同 一 疾 患 と み な す こ と が で き る と 確 認 で き た 。
ま た 、 子 宮 腺 筋 症 、 ま た 主 病 変 に 随 伴 し 認 め ら れ た 子 宮 水 腫 、 子
宮 蓄 膿 症 、 子 宮 内 膜 炎 、 子 宮 血 腫 に 関 し て も 、 現 在 報 告 さ れ て い
る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し 、 そ れ に 基 づ き 分 類 、 整 理 で き る こ
と が 確 認 で き た
。ウ サ ギ の 子 宮 の 主 な 腫 瘍 性 疾 患 に 関 し て は 、 腺 癌 、 子 宮 腺 癌 、
子 宮 内 膜 腺 癌 と 診 断 さ れ る も の を 同 一 疾 患 と み な す こ と が で き
る と 確 認 で き た 。 ま た 、 平 滑 筋 腫 、 平 滑 筋 肉 腫 、 癌 肉 腫 に 関 し て
も 、 現 在 報 告 さ れ て い る 病 理 組 織 学 的 特 徴 と 一 致 し 、 そ れ に 基 づ
き 分 類 、 整 理 で き る こ と が 確 認 で き た
。ま た 、 子 宮 内 膜 腺 腫 、 血
管 腫 、 絨 毛 癌 に 関 し て は 、 本 研 究 室 で は 認 め ら れ な か っ た が 、 現
- 16 -
在 報 告 さ れ て い る 文 献 上 の ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 の 病 理 組 織 学 的 特
徴 に 基 づ き 分 類 、 整 理 す る こ と と し た 。
- 17 -
附 図
図
1． 嚢 胞 性 子 宮 内 膜 過 形 成 、
H E染 色
子 宮 内 膜 は 子 宮 腺 の 増 数 や 腫 大 に よ り 肥 厚 し 、 軽 度 に 水 腫 性 で
あ っ た 。 腺 上 皮 細 胞 に 異 型 性 は 認 め ら れ な か っ た 。 子 宮 内 膜 の
内 腔 側 や 間 質 に 、 大 小 多 数 の 嚢 胞 の 形 成 が 認 め ら れ た 。
- 18 -
図
2． 子 宮 内 膜 静 脈 瘤 、
H E染 色
子 宮 内 膜 の 静 脈 は 顕 著 に 蛇 行 、 拡 張 し て い た 。 血 管 内 部 に は 凝
血 塊 が 含 ま れ て い た 。
- 19 -
図
3． 子 宮 腺 筋 症 、
H E染 色
子 宮 筋 層 に 子 宮 内 膜 腺 お よ び そ れ を 囲 む 子 宮 内 膜 間 質 が 認 め ら
れ 、 周 囲 の 筋 層 の 肥 大 、 過 形 成 を 伴 っ て い た 。
- 20 -
図
4． 子 宮 内 膜 腺 癌 、
H E染 色
腫 瘍 は 浸 潤 性 に 増 殖 し 、 ま た 子 宮 内 腔 へ 隆 起 、 突 出 し て い た 。
- 21 -
図
5． 子 宮 内 膜 腺 癌 、
H E染 色
増 殖 期 子 宮 内 膜 に 似 た 組 織 で 、 腫 瘍 細 胞 は 立 方 状 で あ り 、 腺 管
状 あ る い は 乳 頭 状 に 配 列 し 増 殖 し て い た 。 腫 瘍 細 胞 は 細 胞 境 界
明 瞭 で あ り 、 少 量 の 好 酸 性 細 胞 質 を 有 し て い た 。
- 22 -
図
6． 平 滑 筋 腫 、
H E染 色
子 宮 筋 層 内 に 腫 瘤 病 変 の 形 成 が 認 め ら れ た 。 表 面 を 覆 う 粘 膜 上
皮 に 異 常 は な く 、 周 囲 と の 境 界 は 明 瞭 で あ っ た 。
- 23 -
図
7． 平 滑 筋 腫 、
H E染 色
腫 瘍 は 好 酸 性 細 胞 質 と 長 円 形 の 核 を 有 す る 紡 錘 形 細 胞 の 束 状 ま
た は 花 筵 状 配 列 を 示 す 増 殖 か ら な っ て い た 。
- 24 -
図
8． 平 滑 筋 肉 腫 、
H E染 色
子 宮 筋 層 内 に 腫 瘤 病 変 の 形 成 が 認 め ら れ た 。
- 25 -
図
9． 平 滑 筋 肉 腫 、
H E染 色
腫 瘍 は 好 酸 性 細 胞 質 を 有 す る 紡 錘 形 細 胞 の 束 状 ま た は 花 筵 状 配
列 を 示 す 増 殖 か ら な り 、 腫 大 し た 不 整 な 核 を 有 し 、 し ば し ば 核
分 裂 像 を 認 め た 。
- 26 -
図
1 0． 癌 肉 腫 、
H E染 色
- 27 -
図
1 1． 癌 肉 腫 、
H E染 色
腫 瘤 は 立 方 状 細 胞 の 腺 管 状 増 殖 と 紡 錘 形 細 胞 の 交 錯 状 増 殖 が 混
合 し 構 成 さ れ て い た 。細 胞 異 型 は 中 等 度 、核 分 裂 像 も 散 見 さ れ 、
子 宮 筋 層 へ の 浸 潤 を 伴 っ て い た 。
- 28 -
第
3章 ウ サ ギ の 子 宮 の 非 腫 瘍 性 お よ び 腫 瘍 性 疾 患 に 関 す る 記 述 疫 学
は じ め に
先 に 述 べ た 通 り 、 近 年 、 ウ サ ギ に お い て 子 宮 疾 患 、 特 に 子 宮 内
膜 腺 癌 の 発 生 が 多 い と の 報 告 が な さ れ て お り 、ウ サ ギ に お け る 予
防 的 避 妊 手 術 の 推 奨 年 齢 は
2歳 齢 以 下 （ 理 想 的 に は
6～
9カ 月 齢 以 下 ） と さ れ て い る
[ E l i s a b e t t a M , e t a l . 2 0 1 6 ]。 し か し 、 日 本 に お い て は ウ サ ギ の 早 期 避 妊 手 術 の 実 施 は い ま だ 多 く な く 、子
宮 疾 患 を 原 因 と し た 体 調 不 良 、 死 亡 例 が 多 く 認 め ら れ る 。 そ こ で
本 研 究 で は 、ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 に 関 し 動 物 病 院 に ア ン ケ ー ト 調 査
を 行 い 、診 察 か ら 得 ら れ た 知 見 お よ び 子 宮 の 病 理 組 織 学 的 診 断 の
結 果 を 基 に 、 各 子 宮 疾 患 の 発 生 数 、 手 術 時 年 齢 分 布 、 年 齢 差 に よ
る 罹 患 疾 患 の 違 い 、 各 子 宮 疾 患 に 伴 う 臨 床 症 状 、 品 種 差 に よ る 罹
患 疾 患 の 違 い に つ い て 疫 学 的 研 究 を 行 い 、日 本 に お け る ウ サ ギ の
子 宮 疾 患 の 発 生 状 況 を 解 析 す る こ と を 目 的 と し た 。
- 29 -
材 料 ・ 方 法
調 査 方 法 は ア ン ケ ー ト 調 査 で あ り 、日 本 獣 医 エ キ ゾ チ ッ ク 動 物
学 会 所 属 動 物 病 院 に 対 し 、 当 研 究 室 で 作 成 し た エ ク セ ル の ア ン
ケ ー ト 用 紙 に ウ ェ ブ サ イ ト 上 で 回 答 入 力 を 依 頼 し た 。 調 査 期 間
は
2 0 1 8年
4月
1日 か ら
5月
3 1日 ま で の
2か 月 間 と し た 。 調 査
対 象 は
2 0 0 9年 か ら
2 0 1 8年
5月 末 ま で に 避 妊 手 術 （ 子 宮 卵 巣 摘 出 術 ） を 実 施 し 、 子 宮 の 病 理 組 織 学 的 診 断 を 行 っ た 症 例 と し 、
こ れ に は 予 防 的 避 妊 を 目 的 に 手 術 を 実 施 し た 症 例 も 含 む 。 調 査
項 目 は 品 種 、 手 術 時 年 齢 、 臨 床 症 状 、 子 宮 の 病 理 組 織 学 的 診 断
の
4項 目 と し た 。調 査 項 目 の う ち 、品 種 に 関 し て は
A R B Aに 登 録 さ れ る
4 9品 種 に 基 づ い て 分 類 し た 。日 本 で ミ ニ ウ サ ギ と 呼 ば れ る も の は 、 日 本 白 色 種 や 小 型 種 の 混 血 の ウ サ ギ の 総 称 で あ る た
め 、 雑 種 に 統 一 し た 。 子 宮 の 病 理 組 織 学 的 診 断 に 関 し て は 、 第
2
章 で 示 し た 病 理 組 織 学 的 診 断 に 基 づ く 分 類 と し 、 腺 癌 、 子 宮 腺 癌 、 子 宮 内 膜 腺 癌 と 回 答 さ れ た も の は 子 宮 内 膜 腺 癌 に 統 一 、
子 宮 内 膜 過 形 成 、 嚢 胞 性 子 宮 内 膜 過 形 成 、 腺 腫 様 子 宮 内 膜 過 形
- 30 -
成 、 子 宮 内 膜 ポ リ ー プ と 回 答 さ れ た も の は 子 宮 内 膜 過 形 成 に 統
一 、 静 脈 瘤 、 子 宮 内 膜 静 脈 瘤 と 回 答 さ れ た も の は 子 宮 内 膜 静 脈
瘤 に 統 一 し 解 析 を 行 っ た 。 手 術 時 年 齢 に 関 し て は 、
0歳 齢 、
1歳 齢 、2 歳 齢 、3 歳 齢 、4 歳 齢 、5 歳 齢 、6 歳 齢 、7 歳 齢 、8 歳 齢 、
9
歳 齢 、1 0 歳 齢 以 上 に 分 類 し 解 析 を 行 っ た 。臨 床 症 状 で は 、「 血 尿 」 や 「 貧 血 」 に 関 し て は 最 終 的 に 獣 医 師 が 検 査 を 行 い 診 断 し
た も の で あ る が 、 「 元 気 消 失 」 「 食 欲 不 振 」 に 関 し て は 飼 い 主
の 稟 告 に よ る も の で あ る 。 す べ て の 項 目 に お い て 、 ア ン ケ ー ト
の 回 答 欄 が 空 欄 の も の は 不 明 に 統 一 し た 。
結 果 と し て 、日 本 獣 医 エ キ ゾ チ ッ ク 動 物 学 会 所 属 全
4 4 1病 院 中 、
4 3病 院 か ら の 回 答 が 得 ら れ 、 そ の 回 答 率 は
9 . 7％ で あ っ た 。 ま た 、 総 症 例 数 は
1 9 2 8症 例 で あ っ た 。
第
1節 非 腫 瘍 性
/腫 瘍 性 疾 患 の 発 生 状 況 に 関 す る 記 述 疫 学 非 腫 瘍 性 疾 患 は 全 体 で
9 9 6症 例 （
5 1 . 7％ ） 、 腫 瘍 性 疾 患 は 全
体 で
1 2 2 5症 例（
6 3 . 5％ ）認 め ら れ 、多 く は ふ た つ あ る い は そ れ
- 31 -
以 上 の 疾 患 を 同 時 に 認 め た 。 非 腫 瘍 性 疾 患
9 9 6症 例 に お い て 、 最 も 多 く 認 め ら れ た 疾 患 は 子 宮 内 膜 過 形 成 で あ り 、
8 4 2症 例
（
8 4 . 5％ ）で あ っ た 。次 い で 子 宮 腺 筋 症 が
1 0 8症 例（
1 0 . 8％ ）、
子 宮 内 膜 静 脈 瘤 が
7 3症 例（
7 . 3％ ）、子 宮 腺 腫 が
3 5症 例（
3 . 5％ ）、
子 宮 血 腫 が
3 3症 例 （
3 . 3％ ） 認 め ら れ た 。 子 宮 蓄 膿 症 は わ ず か
5
症 例（
0 . 5％ ）で の み 認 め ら れ た 。腫 瘍 性 疾 患
1 2 2 5症 例 で は 、
子 宮 内 膜 腺 癌 が 最 も 多 く
1 0 3 5症 例（
8 4 . 5％ ）、つ い で 平 滑 筋 腫
が
1 6 5症 例 （
1 3 . 5％ ） 、 平 滑 筋 肉 腫 が
7 5症 例 （
6 . 1％ ） 、 子 宮
腺 腫 が
3 2症 例 （
2 . 6％ ） 、 子 宮 血 管 腫 が
2 9症 例 （
2 . 4％ ） 、 癌 肉 腫 が
2 8症 例 （
2 . 3％ ） で あ っ た （ 図
1） 。 子 宮 内 膜 腺 癌
1 0 3 5症 例 の う ち 、 そ の 他 の 非 腫 瘍 性 疾 患 お よ び 腫 瘍 性 疾 患 の 併 発 を
伴 わ な い も の は
6 5 6症 例 （
6 3 . 4％ ） で あ り 、 子 宮 内 膜 腺 癌 と 平 滑 筋 腫 の ふ た つ の 疾 患 の 併 発 は
5 5症 例 （
5 . 3％ ） 、 子 宮 内 膜 腺 癌 と 平 滑 筋 肉 腫 の ふ た つ の 疾 患 の 併 発 は
2 3症 例 （
2 . 2％ ） で あ っ た 。 ま た 、 子 宮 内 膜 腺 癌 と 子 宮 内 膜 過 形 成 の ふ た つ の 疾 患 の
併 発 は
1 8 3症 例 （
1 7 . 7％ ） で あ っ た 。
- 32 -
第
2節 非 腫 瘍 性
/腫 瘍 性 疾 患 の 手 術 時 年 齢 に 関 す る 記 述 疫 学
ま ず 、 全 体 で の 手 術 件 数 が 最 も 多 い の は
5歳 齢 で あ っ た 。 非 腫 瘍 性 疾 患 で は 、 最 も 手 術 件 数 が 多 い の は
3歳 齢 で あ り 、
1 6 2症 例 で あ っ た 。 一 方 、 腫 瘍 性 疾 患 で は 最 も 手 術 件 数 が 多 い の は
5
歳 齢 で あ り 、
2 7 2症 例 で あ っ た （ 図
2） 。 各 年 齢 層 に お け る 非 腫 瘍 性 疾 患 お よ び 腫 瘍 性 疾 患 の 発 生 の 割 合 を 調 査 し た 結 果 、
3歳 齢 で は 非 腫 瘍 性 疾 患 が
6 4 . 2％ 、腫 瘍 性 疾 患 が
4 5 . 2％ で あ る の に 対 し 、
5歳 齢 で は 非 腫 瘍 性 疾 患 が
4 0 . 2％ 、腫 瘍 性 疾 患 が
7 7 . 7％ で あ り 、 加 齢 に 従 い 腫 瘍 性 疾 患 の 発 生 率 が 上 昇 す る こ と が 示 さ
れ た 。
次 に 、 非 腫 瘍 性 疾 患 お よ び 腫 瘍 性 疾 患 の う ち 、 代 表 的 で あ っ
た 疾 患 に 関 し て の 手 術 時 年 齢 分 布 の 解 析 を 行 っ た 。 非 腫 瘍 性 疾
患 で は 、子 宮 内 膜 過 形 成 は 手 術 時 年 齢 の 幅 は
8カ 月 齢 ～
1 1歳 齢
で あ り 、
3歳 齢 で の 手 術 件 数 が 最 も 多 く
1 4 1症 例 で あ っ た 。 子
宮 腺 筋 症 で は
6歳 齢 で 手 術 件 数 が 最 も 多 か っ た 。 子 宮 内 膜 静 脈
瘤 で は
2歳 齢 で 最 も 手 術 件 数 が 多 く 、 こ れ は 子 宮 内 静 脈 瘤 は 若
- 33 -
齢 個 体 に 多 く 発 生 す る と い う 過 去 の 報 告 と 合 致 す る 結 果 と な っ
た （ 図
3） 。
腫 瘍 性 疾 患 で は 、 子 宮 内 膜 腺 癌 は 手 術 時 年 齢 の 幅 は
6カ 月 齢
～
1 0歳 齢 で あ り 、
5歳 齢 で 最 も 手 術 件 数 が 多 く 、
2 3 4症 例 で あ っ た 。ま た 、
2歳 齢 未 満 で も
8症 例 の 子 宮 内 膜 腺 癌 が 認 め ら れ 、 そ の う ち 最 も 若 齢 の 症 例 は
6カ 月 齢 で あ っ た 。 平 滑 筋 腫 で は 子 宮 内 膜 腺 癌 と 同 様 、5 歳 齢 で の 手 術 件 数 が 最 も 多 く
3 9症 例 、平 滑 筋 肉 腫 で は
7歳 齢 で 最 も 手 術 件 数 が 多 く
1 6症 例 で あ っ た（ 図
4
） 。
第
3節 非 腫 瘍 性
/腫 瘍 性 疾 患 に 伴 う 臨 床 症 状 に 関 す る 記 述 疫 学
非 腫 瘍 性 疾 患 お よ び 腫 瘍 性 疾 患 両 者 に お い て 、 最 も 多 く 認 め
ら れ た 臨 床 症 状 は 血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 で あ り 、
1 0 2 0症 例
（
5 2 . 9％ ） で あ っ た 。 次 い で 食 欲 不 振 が
2 7 2症 例 （
1 4 . 1％ ） 、
乳 腺 の 異 常 が
1 1 6症 例 （
6 . 0％ ） で あ り 、 元 気 消 失 は
3 8症 例
（
2 . 0％ ） 、 貧 血 は
2 6症 例 （
1 . 3％ ） で あ っ た 。 多 く の 症 例 は ふ
- 34 -
た つ あ る い は そ れ 以 上 の 症 状 を 同 時 に 認 め 、 特 に 貧 血 に 関 し て
は
2 6症 例 中
2 3症 例（
2 8 8 . 4％ ）で 血 尿 あ る い は 陰 部 か ら の 出 血 を 併 発 し て い た 。 ま た 、 無 症 状 症 例 が
3 7 2症 例 （
1 9 . 2％ ） で 認 め ら れ た （ 図
5） 。
症 状 を 認 め た 症 例 の う ち 、 子 宮 内 膜 過 形 成 で は 血 尿 が 最 も 多
く 認 め ら れ
3 8 0症 例 （
4 5 . 1％ ） で あ り 、 次 い で 食 欲 不 振 が
1 1 3症 例 （
1 3 . 4％ ） で あ っ た 。 子 宮 内 膜 腺 癌 で は 、 血 尿 は
5 7 4症 例
（
5 5 . 4％ ） と 最 も 多 く 、 次 い で 食 欲 不 振 が
1 5 8症 例 （
1 5 . 2） で
あ っ た 。ま た 、子 宮 内 膜 過 形 成 で は 乳 腺 の 異 常 が
4 5症 例（
5 . 3％ ） 認 め ら れ 、 他 の 疾 患 に 比 較 し 多 く 認 め ら れ る こ と が 示 唆 さ れ た
（ 表
1） 。 ま た 、 無 症 状 症 例
3 7 2症 例 で は 、 病 理 組 織 学 的 診 断 の 結 果 、 子 宮 内 膜 腺 癌 で あ っ た 症 例 が 最 も 多 く
1 8 2症 例
（
4 8 . 9％ ） 、 次 い で 子 宮 内 膜 過 形 成 が
1 5 7症 例 （
4 2 . 2％ ） で あ
っ た 。
最 も 症 例 数 が 多 か っ た 血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 に 関 し て 、 そ の
手 術 時 年 齢 分 布 の 解 析 を 行 っ た 。 そ の 手 術 件 数 は
5歳 齢 で 最 も
- 35 -
多 く 、
1 8 6症 例 で あ っ た 。 こ の う ち 、 子 宮 内 膜 過 形 成 で は
2歳 齢 で の 手 術 件 数 が 最 も 多 く
7 2症 例 で あ り 、子 宮 内 膜 腺 癌 と 比 較 し よ り 手 術 時 年 齢 が 若 齢 に 偏 っ て い る こ と が 示 さ れ た 。 一 方 、
子 宮 内 膜 腺 癌 で は 、
3歳 齢 か ら 手 術 件 数 の 明 ら か な 増 加 が 認 め ら れ 、
4歳 齢 で は 子 宮 内 膜 過 形 成 の 手 術 件 数 を 上 回 り 、
5歳 齢 で 最 多 と な り 、5 歳 齢 以 降 で も 、血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 を 呈 し た 症 例 は 子 宮 内 膜 腺 癌 が 子 宮 内 膜 過 形 成 よ り も 多 い 結 果 と な っ た 。
（ 図
6） 。 年 齢 の 推 移 に よ る 各 疾 患 の 割 合 で は 、
3歳 齢 で は 全
1 2 8
症 例 中 子 宮 内 膜 過 形 成 が
6 9症 例 （
5 3 . 9％ ） 、 子 宮 内 膜 腺 癌
が
4 8症 例 （
3 7 . 5％ ） 、
4歳 齢 で は 全
1 7 1症 例 中 子 宮 内 膜 過 形 成 が
7 0症 例 （
4 0 . 9％ ） 、 子 宮 内 膜 腺 癌 が
1 1 2症 例 （
6 5 . 4％ ） 、
5歳 齢 で は 全
1 8 6症 例 中 子 宮 内 膜 過 形 成 が
5 6症 例（
3 0 . 1％ ）、子 宮 内 膜 腺 癌 が
1 4 2症 例 （
7 6．
3％ ） で あ っ た （ 表
2） 。
無 症 状 症 例 全
3 7 2症 例 中 、
9 0症 例 （
2 4．
1％ ） は 予 防 的 避 妊 手 術 を 目 的 と し て 子 宮 卵 巣 摘 出 術 を 実 施 し た 症 例 で あ り 、 こ れ
ら は 開 腹 し て 初 め て 子 宮 に 肉 眼 的 異 常 が 認 め ら れ 、 病 理 組 織 学
- 36 -
的 に 診 断 を 行 っ た 症 例 で あ る 。 こ れ は 、 明 ら か な 臨 床 症 状 を 示
さ な か っ た こ と に 加 え 、 獣 医 師 に よ る 術 前 の 身 体 検 査 に お い て
も 明 ら か な 異 常 が 検 出 さ れ な か っ た と い う こ と で あ る 。こ の
9 0症 例 の 平 均 手 術 時 年 齢 は
3歳
8カ 月 齢 で あ り 、 子 宮 内 膜 過 形 成 は
5 1症 例 （
5 6 . 6％ ） 、 子 宮 内 膜 腺 癌 は
3 5症 例 （
3 8 . 8％ ） で あ っ た 。 子 宮 内 膜 腺 癌 と 診 断 さ れ た 症 例 の う ち 、 最 も 若 齢 の 症 例
は
1歳
5カ 月 齢 で あ っ た 。 そ の 他 の
2 8 2症 例 （
7 5 . 8％ ） は 、 獣 医 師 に よ る 健 康 診 断 時 あ る い は 避 妊 手 術 や そ の 他 の 手 術 の 術 前
検 査 時 に 、 検 査 上 子 宮 に 異 常 が 検 出 さ れ 、 子 宮 卵 巣 摘 出 術 を 行
っ た 症 例 で あ る 。 こ の
2 8 2症 例 の 平 均 手 術 時 年 齢 は
4歳
9カ 月 齢 で あ り 、 子 宮 内 膜 過 形 成 は
1 3 3症 例 （
4 7 . 1％ ） 、 子 宮 内 膜 腺
癌 は
1 4 7症 例 （
5 2 . 1％ ） で あ っ た 。
第
4節 非 腫 瘍 性
/腫 瘍 性 疾 患 の 品 種 に 関 す る 記 述 疫 学
今 回 の 調 査 で は 、 最 も 多 く 認 め ら れ た 品 種 は ミ ニ ウ サ ギ を 含
む 雑 種 で あ り 、
6 0 0症 例 （
3 1 . 1％ ） で あ っ た 。 次 い で ネ ザ ー ラ
- 37 -
ン ド ド ワ ー フ が
5 2 0症 例 （
2 7 . 0％ ） 、 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ が
2 8 6症 例 （
1 4 . 8％ ） で あ り 、 そ の 他 の 品 種 も 小 型 種 に 偏 り が 認 め ら れ た （ 図
7） 。 い ず れ の 品 種 に お い て も 、 子 宮 内 膜 腺 癌 が 最 も 多 く 認 め ら れ 、 雑 種 で は
3 1 9症 例 （
5 3 . 2％ ） 、 ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ で は
2 6 5症 例 （
5 0 . 9％ ） 、 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ で は
1 6 8症
例 （
5 8 . 7％ ） で あ っ た 。 次 い で 子 宮 内 膜 過 形 成 が 多 く 、 雑 種 で
は
2 6 0症 例 （
4 3 . 3％ ） 、 ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ で は
2 3 4症 例
（
4 5 . 0％ ） 、 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ で は
1 1 1症 例 （
3 8 . 8％ ） で あ っ
た 。 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ で は 、 他 の 品 種 と 比 較 し 、 子 宮 内 膜 腺 癌
の 割 合 が や や 多 い 結 果 で あ っ た 。
小 括
子 宮 疾 患 の 発 生 状 況 に 関 し て は 、非 腫 瘍 性 疾 患 で は 子 宮 内 膜 過
形 成 が 最 も 多 く 、腫 瘍 性 疾 患 で は 子 宮 内 膜 腺 癌 が 最 も 多 い 結 果 と
な り 、こ れ は 過 去 の 報 告 と 一 致 す る も の で あ っ た 。ヒ ト と 同 様 に 、
ウ サ ギ に お い て も 子 宮 内 膜 過 形 成 と 子 宮 内 膜 腺 癌 の 関 連 を 示 唆
- 38 -
す る 報 告 も な さ れ て い る
[ E r i c K , r t a l . 2 0 1 2 ]。 本 研 究 に お い て も 子 宮 内 膜 過 形 成 と 子 宮 内 膜 腺 癌 の 併 発 症 例 が 認 め ら れ た が 、
そ の 関 連 性 の 調 査 は 行 う こ と が で き ず 、 不 明 で あ る 。 手 術 時 年 齢
の 分 布 に 関 し て は 、各 手 術 時 年 齢 に お け る 子 宮 内 膜 腺 癌 の 症 例 数
お よ び 発 生 の 割 合 は
3歳 齢 以 上 か ら 明 ら か に 増 加 し て お り 、ま た
2歳
1 1カ 月 齢 以 下 の 症 例 に お い て
8症 例 で 子 宮 内 膜 腺 癌 と 診 断 さ れ た 。そ の う ち 最 も 若 齢 の 症 例 は
6カ 月 齢 の ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ で あ っ た 。 こ の 結 果 は 、 現 在 推 奨 さ れ て い る 予 防 的 避 妊 手 術 の
年 齢（
2歳 齢 以 下 、理 想 的 に は
6～
9カ 月 齢 以 下 ）を 支 持 す る も の と な っ た 。し か し 、本 研 究 で の 調 査 項 目 は「 手 術 時 年 齢 」で あ り 、
「 罹 患 し た 年 齢 」 は よ り 若 齢 で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ る 。 子 宮 疾
患 に 伴 う 臨 床 症 状 に 関 し て は 、血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 が 最 も 多 く 、 こ れ は 過 去 の 報 告 と 相 違 な か っ た 。陰 部 か ら の 漿 液 性 の 分 泌 物 が
最 も 多 く 認 め ら れ た と の 報 告 も あ る が
[ F r a n k K e t a l . 2 0 1 5 ]、
本 研 究 で は そ の 症 状 は 認 め ら れ な か っ た 。 ウ サ ギ の 血 尿
/陰 部 か
ら の 出 血 の 原 因 疾 患 の 鑑 別 に は 、子 宮 内 膜 過 形 成 、子 宮 内 膜 腺 癌 、
- 39 -
子 宮 内 膜 静 脈 瘤 の ほ か に 、 腎 梗 塞 、 尿 路 結 石 、 膀 胱 炎 、 膀 胱 ポ リ
ー プ 、 腎 盂 腎 炎 が 考 え ら れ る と 報 告 さ れ て い る
[ B r a y M V e t a l .1 9 9 2 ]
。 本 研 究 で は 、
3歳 齢 以 上 の 血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 が 疑 わ れ
る 症 例 で 、そ の 原 因 疾 患 が 子 宮 内 膜 腺 癌 で あ る 割 合 が 増 加 す る こ
と が 示 さ れ た 。 こ の 結 果 か ら 、 特 に
3歳 齢 以 上 の ウ サ ギ で あ る 場 合 、 そ の 原 因 疾 患 が 子 宮 内 膜 腺 癌 で あ る 可 能 性 を 考 慮 し 、 よ り 慎
重 な 身 体 検 査 を 実 施 し 、可 能 な 限 り 早 期 の 避 妊 手 術 を 実 施 す べ き
で あ る と 考 え ら れ た 。 し か し 、 本 研 究 で は 子 宮 疾 患 以 外 の 疾 患 の
調 査 は 行 っ て お ら ず 、 血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 が 認 め ら れ た 場 合 、 子 宮 疾 患 と そ の 他 の 疾 患 と の 罹 患 率 の 差 等 に 関 し て の 解 析 は 行
っ て い な い た め 、今 後 さ ら な る 疫 学 的 研 究 が 必 要 で あ る と 考 え ら
れ た 。 稟 告 で 無 症 状 で あ っ た 症 例 は
3 7 2症 例 と い う 結 果 と な り 、 そ の う ち
9 0症 例 は 獣 医 師 に よ る 身 体 検 査 で も 異 常 が 認 め ら れ ず 、 予 防 的 避 妊 手 術 を 目 的 に 子 宮 卵 巣 摘 出 を 実 施 し 、開 腹 時 に は じ め
て 肉 眼 的 に 子 宮 に 異 常 が 認 め ら れ た 。 こ の う ち
3 5症 例 で は 子 宮
内 膜 腺 癌 と 診 断 さ れ て い た 。 以 上 よ り 、 明 か な 症 状 を 示 さ ず 、 ま
- 40 -
た 獣 医 師 に よ る 身 体 検 査 上 も 明 ら か な 異 常 が 認 め ら れ な い 症 例
に お い て も 、 開 腹 時 に 子 宮 の 状 態 を 詳 細 に 確 認 し 、 積 極 的 に 病 理
組 織 学 的 診 断 を 行 う べ き と 考 え ら れ た 。 稟 告 で 無 症 状 で あ っ た
3 7 2
症 例 中
2 8 2症 例 で は 、 健 康 診 断 時 や 術 前 検 査 時 な ど に 身 体 検
査 で 異 常 が 認 め ら れ た 症 例 で あ る が 、今 回 の 調 査 で は 画 像 診 断 所
見 な ど の 詳 細 は 調 査 し て お ら ず 、不 明 で あ る 。品 種 差 に 関 し て は 、
い ず れ の 品 種 に お い て も 子 宮 内 膜 腺 癌 が 最 も 多 く 認 め ら れ た 。こ
の 結 果 よ り 、 ウ サ ギ に お い て は 、 品 種 に 関 わ ら ず 最 も 注 意 す べ き
子 宮 疾 患 は 子 宮 内 膜 腺 癌 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 し か し 、 本 調 査
で 得 ら れ た 結 果 は 日 本 に お け る 人 気 品 種 の 小 型 種 に 偏 り が あ り 、
中 型 ま た は 大 型 種 に 関 し て の 情 報 は ご く わ ず か で あ り 、解 析 は 不
可 能 で あ っ た 。 ま た 、 品 種 差 に 関 し て は 分 子 遺 伝 学 的 検 索 を 含 め
さ ら な る 検 討 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た 。
- 41 -
附 図
図
1． 非 腫 瘍 性
/腫 瘍 性 疾 患 の 症 例 数
842108 73 35 33
1035
165
75 32 29 28 0
200 400 600 800 1000 1200
症例数
n=9 9 6 n=1 2 2 5
- 42 -
図
2． 非 腫 瘍
/腫 瘍 性 疾 患 の 手 術 時 年 齢 分 布
10104 182
252 317
350 300
216
94
34 27 42 272
162
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0y 1y 2y 3y 4y 5y 6y 7y 8y 9y
≧10y 不明
全手術件数 非腫瘍性疾患 腫瘍性疾患
症 例 数
年齢
- 43 -
図
3． 非 腫 瘍 性 疾 患 の 手 術 時 年 齢 分 布
6 87
146
162 154 141
122 87
44
15 12 20 141
15 24 0
20 40 60 80 100 120 140 160 180
0y 1y 2y 3y 4y 5y 6y 7y 8y 9y
≧10y 不明
手術件数 子宮内膜過形成 子宮腺筋症 子宮内膜静脈瘤
年齢
症 例 数
- 44 -
図
4． 腫 瘍 性 疾 患 の 手 術 時 年 齢 分 布
1 8
36
114 219
272 235
181
77
29 25 28
1 7
234
39 16
0 50 100 150 200 250 300
0y 1y 2y 3y 4y 5y 6y 7y 8y 9y
≧10y 不明
手術件数 子宮内膜腺癌 平滑筋腫 平滑筋肉腫
症 例 数
年齢
- 45 -
図
5． 子 宮 疾 患 に 伴 う 臨 床 症 状
1020
272
116
38 26
372
0 200 400 600 800 1000
症 例 数
- 46 -
図
6． 血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 を 呈 し た 症 例 の 手 術 時 年 齢 分 布
455 89
128 171
186 158
115
53
24 15 22 142
72
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
0y 1y 2y 3y 4y 5y 6y 7y 8y 9y
≧10y 不明
全体数 子宮内膜腺癌 子宮内膜過形成
年齢
症 例 数
- 47 -
血 尿 食 欲 不 振
乳 腺 の
異 常
子 宮 内 膜 過 形 成
（
8 4 2症 例 ）
3 8 0
症 例
（
4 5 . 1 %）
1 1 3
症 例
（
1 3 . 4 %）
4 5
症 例
（
5 . 3 %） 子 宮 内 膜 腺 癌
（
1 0 3 5症 例 ）
5 7 4
症 例
（
5 5 . 4 %）
1 5 8
症 例
（
1 5 . 2 %）
2 6
症 例
（
2 . 5 %）
表
1． 子 宮 腺 内 膜 過 形 成 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 に お け る 各 臨 床 症
状 の 内 訳
- 48 -
2
歳 齢
（
8 9症 例 ）
3
歳 齢
（
1 2 8症 例 ）
4
歳 齢
（
1 7 1症 例 ）
5
歳 齢
（
1 8 6症 例 ） 子 宮 内 膜
過 形 成
8 0 . 8
％
：
7 2症 例
5 3 . 9
％
：
6 9症 例
4 0 . 9
％
：
7 0症 例
3 0 . 1
％
：
5 6症 例 子 宮 内 膜
腺 癌
1 2 . 3
％
：
1 1症 例
3 7 . 5
％
：
4 8症 例
6 5 . 4
％
：
1 1 2症 例
7 6 . 3
％
：
1 4 2症 例
表
2．血 尿
/陰 部 か ら の 出 血 を 呈 し た 症 例 の 各 年 齢 層 に お け る 子
宮 内 膜 過 形 成 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 の 割 合
- 49 -
図
7． 日 本 に お け る ウ サ ギ の 飼 育 品 種 の 割 合
600520
286
55 16 11 9
431
522
雑種
ネザーランドドワーフ ホーランドロップ
ミニレッキス
アメリカンファジーロップ ジャージーウーリー
フレンチロップ その他
n = 1 9 2 8
- 50 -
第
4章 ウ サ ギ の 子 宮 内 膜 過 形 成 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 に お け る
記 述 疫 学は じ め に
第
2章 お よ び 第
3章 の 結 果 よ り 、子 宮 内 膜 腺 癌 が ウ サ ギ の 子 宮 疾 患 に お い て 最 も 注 意 す べ き 疾 患 で あ る こ と が 示 さ れ た 。そ こ で 、
本 研 究 で は 子 宮 内 膜 腺 癌 お よ び 子 宮 内 膜 過 形 成 に 関 し て 、平 均 手
術 時 年 齢 の 有 意 差 、ま た 各 疾 患 の 品 種 間 で の 平 均 手 術 時 年 齢 の 有
意 差 の 検 定 を 行 っ た 。 ま た 、 過 去 の 報 告 で も 子 宮 内 膜 腺 癌 が 最 も
多 く 認 め ら れ た と の 報 告 が な さ れ て お り 、そ の 中 で 加 齢 に よ る 罹
患 率 の 増 加 に 関 し て は 報 告 さ れ て い る も の の 、品 種 が 子 宮 内 膜 腺
癌 発 症 の リ ス ク 因 子 と な り 得 る か に 関 し て の 報 告 は 、現 在 の と こ
ろ な さ れ て い な い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 子 宮 内 膜 腺 癌 に 関 し て は
そ の 発 生 に 年 齢 や 品 種 が リ ス ク 因 子 と な り 得 る か 、統 計 学 的 解 析
を 行 っ た 。
- 51 -
材 料 ・ 方 法
解 析 対 象 は 、 全
1 9 2 8症 例 中 、 手 術 時 年 齢 が 明 確 に 記 載 さ れ た
1 8 8 4
症 例 と し た 。併 発 す る 疾 患 の 影 響 を 除 外 す る た め 、子 宮 内 膜
過 形 成 単 発 症 例（
4 4 0症 例 ）、子 宮 内 膜 腺 癌 単 発 症 例（
6 4 2症 例 ） を 用 い た 。 解 析 に は 統 計 ソ フ ト ウ ェ ア （
S P S S） を 用 い 、 手 術 時 年 齢 は 月 齢 表 記 （
1歳 齢 ：
1 2カ 月 齢 ） と し 解 析 を 行 っ た 。
第
1節 子 宮 内 膜 過 形 成 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 の 発 生 状 況 に お け る 手 術 時 年 齢 の 記 述 疫 学
子 宮 内 膜 過 形 成 に 罹 患 し た 群
4 4 0症 例 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 に 罹 患 し た 群
6 4 2症 例 の 両 群 間 の 、平 均 手 術 時 年 齢 の 有 意 差 を 検 定 し た 。 両 群 の 手 術 時 年 齢 分 布 に お い て は 、 子 宮 内 膜 過 形 成 群 は 子 宮
内 膜 腺 癌 群 と 比 較 し 、よ り 若 齢 に 子 宮 内 膜 過 形 成 群 の 平 均 手 術 時
年 齢 は
4 7 . 2 ± 2 2 . 9カ 月 齢 （ 平 均 年 齢
3歳
1 1カ 月 齢 ） で あ り 、 子
宮 内 膜 腺 癌 群 の 平 均 手 術 時 年 齢 は
6 7 . 2 ± 1 9 . 2カ 月 齢（ 平 均 年 齢
5歳
7カ 月 齢
)で あ っ た（ 図
1）。正 規 性 の 確 認 の た め に コ ル モ ゴ ロ
- 52 -
フ
–ス ミ ル ノ フ 検 定 （
P≧
0 . 0 5で 正 規 性 あ り ） を 行 っ た 結 果 、
P＝
0 . 0 0 0
と な り 正 規 性 は な か っ た 。 次 に ル ー ビ ン の 検 定 （
P≧
0 . 0 5で 等 分 散 性 あ り ） を 用 い て 等 分 散 性 の 検 定 を 行 っ た 結 果 、
P＝
0 . 0 0 0
で 等 分 散 性 は な か っ た 。 以 上 よ り 、 ウ ェ ル チ の
t検 定 （
P＜
0 . 0 5で 有 意 差 あ り ）を 用 い 両 群 間 の 平 均 手 術 時 年 齢 の 有 意 差 検
定 を 行 っ た 。そ の 結 果 、P ＝
0 . 0 0 0と な り 、両 群 の 平 均 手 術 時 年 齢 の 差 に 有 意 性 が あ る こ と が 確 認 で き た 。
第
2節 子 宮 内 膜 過 形 成 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 の 発 生 状 況 に お け る 品 種 差 の 記 述 疫 学
子 宮 内 膜 過 形 成 に 罹 患 し た ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群
1 3 4症 例 と ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 群
5 4症 例 の 両 群 間 、 お よ び 子 宮 内 膜 腺 癌 に 罹 患 し た ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群
1 6 1症 例 と ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 群
1 1 7
症 例 の 両 群 間 の 、 平 均 手 術 時 年 齢 の 有 意 差 を 検 定 し た 。
ま ず 、子 宮 内 膜 過 形 成 に 罹 患 し た ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群 お よ
び ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 群 の 手 術 時 年 齢 の 分 布 で は 、両 群 と も に 子 宮
- 53 -
内 膜 腺 癌 の 症 例 と 比 較 し 若 齢 で の 症 例 数 が 多 く 認 め ら れ た 。子 宮
内 膜 過 形 成 に 罹 患 し た ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群 の 平 均 手 術 時 年
齢 は
5 0 . 9 ± 2 2 . 3カ 月 齢 （ 平 均 年 齢
4歳
2カ 月 齢 ） で あ り 、 ホ ー
ラ ン ド ロ ッ プ 群 で は
3 5 . 2 ± 2 0 . 0カ 月 齢（ 平 均 年 齢
2歳
1 1カ 月 齢 ） で あ っ た（ 図
2）。正 規 性 の 確 認 の た め に コ ル モ ゴ ロ フ
–ス ミ ル ノ フ 検 定 （
P≧
0 . 0 5で 正 規 性 あ り ） を 行 っ た 結 果 、 ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群 で は
P＝
0 . 0 3 1、 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 群 で は
P＝
0 . 0 0 4と な り 、 い ず れ も 正 規 性 は な か っ た 。 次 に ル ー ビ ン の 検 定 （
P≧
0 . 0 5で 等 分 散 性 あ り ） を 用 い て 等 分 散 性 の 検 定 を 行 っ た 結 果 、
P＝
0 . 2 8 3
で 等 分 散 性 あ っ た 。 等 分 散 性 あ り と い う 結 果 が 得 ら れ た 。
ウ ェ ル チ の
t検 定 （
P＜
0 . 0 5で 有 意 差 あ り ） を 用 い 両 群 間 の 平 均 手 術 時 年 齢 の 有 意 差 検 定 を 行 っ た 結 果 、P ＝
0 . 0 0 0と な り 、両 群 の 平 均 手 術 時 年 齢 の 差 に 有 意 性 が あ る こ と が 確 認 で き た 。
次 に 、子 宮 内 膜 腺 癌 に 罹 患 し た ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群 お よ び
ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 群 の 手 術 時 年 齢 の 分 布 で は 、両 群 と も に
5歳 齢
前 後 で の 症 例 数 が 多 か っ た 。子 宮 内 膜 腺 癌 に 罹 患 し た ネ ザ ー ラ ン
- 54 -
ド ド ワ ー フ 群 の 平 均 手 術 時 年 齢 は
6 9 . 5 ± 2 0 . 4カ 月 齢（ 平 均 年 齢
5歳
9カ 月 齢 ） で あ り 、 ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 群 で は
6 2 . 3 ± 1 6 . 0カ 月 齢 （ 平 均 年 齢
5歳
2カ 月 齢 ） で あ っ た （ 図
3） 。 正 規 性 の 確 認 の た め に コ ル モ ゴ ロ フ
–ス ミ ル ノ フ 検 定（
P≧
0 . 0 5で 正 規 性 あ り ）を 行 っ た 結 果 、ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群 で は
P＝
0 . 2 0 0、ホ ー ラ ン ド ロ ッ プ 群 で は
P＝
0 . 0 3 3と な り 、 ネ ザ ー ラ ン ド ド ワ ー フ 群 で は 正 規 性 が 認 め ら れ た 。 次 に ル ー ビ ン の 検 定 （
P≧
0 . 0 5で 等 分 散 性 あ り ）を 用 い て 等 分 散 性 の 検 定 を 行 っ た 結 果 、P ＝
0 . 0 1 5で 等 分 散 性 は な か っ た 。 ウ ェ ル チ の
t検 定 （
P＜
0 . 0 5で 有 意 差 あ り ） を 用 い 両 群 間 の 平 均 手 術 時 年 齢 の 有 意 差 検 定 を 行 っ た 結 果 、
P＝
0 . 0 0 1と な り 、両 群 の 平 均 手 術 時 年 齢 の 差 に 有 意 性 が あ る こ と が 確 認 で
き た 。
- 55 -
