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Academic year: 2021

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Title BCG菌体成分搭載脂質ナノ粒子を基盤としたがん免疫療法の構築 [論文内容及び審査の要旨]

Author(s) 増田, 秀幸

Citation 北海道大学. 博士(臨床薬学) 甲第13776号

Issue Date 2019-09-25

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/75826

Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

Type theses (doctoral - abstract and summary of review)

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File Information Hideyuki̲MASUDA̲abstract.pdf (論文内容の要旨)

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学 位 論 文 内 容 の 要 旨

博士の専攻分野の名称 博士(臨床薬学) 氏 名 増田 秀幸

学 位 論 文 題 名

BCG菌体成分搭載脂質ナノ粒子を基盤としたがん免疫療法の構築

【序論】

がん免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤、特に抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名オプジー ボ)の成功により最も期待されているがん治療法となった。しかしながら、その有効性は20-30%

の患者に限られている。一方で、非筋層浸潤性の表在性膀胱がんや膀胱上皮内がんに対する弱毒 化ウシ型結核菌(Bacillus Calmette-Guerin: BCG)の膀胱内注入療法は約90%の非常に高い有 効率を有し、最も高い実績を挙げてきたがん免疫療法である。そのため、この BCG生菌を用い た治療法には、がん免疫療法を成功へ導くために必要な成分や作用メカニズムが含まれていると 言える。しかしながら、BCG生菌を用いているために引き起こされる血尿や排尿痛などの感染性 副作用が頻発し、臨床現場で問題となっており、副作用の少ない非感染性製剤が切望されている。

それに対しBCG生菌に代わる治療薬として、BCG生菌の免疫活性化中心であるBCG細胞壁骨 格(BCG Cell Wall Skelton : BCG-CWS)が注目されてきた。しかしながら、BCG-CWSの難溶 性巨大分子という性質が製剤化を長年にわたり妨げてきた。

BCG-CWSの製剤化の問題点を解決するために当研究室では、BCG-CWSを脂質ナノ粒子に封 入する新規パッケージング技術である Liposomal Evaporated via Emulsified lipid 法(LEEL 法)を開発し、BCG-CWSを脂質ナノ粒子(nano particle: NP)に内封することに成功した。BCG- CWS搭載NP(CWS-NP)は均一性の高い分散水溶液であり、膀胱がん細胞などの標的細胞へと 効率的に BCG-CWS を送達する。また CWS-NP の抗腫瘍活性の誘導開始には膀胱がん細胞に CWS-NPが取り込まれることが必須であったことから、BCG生菌と類似した誘導開始メカニズ ムを有すると考えられた。一方で、膀胱がん治療薬としての可能性を評価するためには膀胱内同 所移植モデルを用いた検討が必要である。そこで第1章では、マウス膀胱がん同所移植モデルの 構築とCWS-NPを膀胱内投与した際の抗腫瘍活性評価を行い、CWS-NPの膀胱がん治療薬とし ての有用性を検証することを目的とした。

また、CWS-NP は非感染性の分散水溶液であるため、膀胱がん以外のがんへと応用可能であ る。BCG生菌が持つ強力ながん免疫誘導能を他のがん種へと応用することができれば、新しいが ん免疫療法として非常に有望であると期待できる。第2章および第3章では、膀胱がん以外のが ん種に対してCWS-NP の静脈内投与を介した全身投与型がんアジュバントとしてのがん免疫誘 導能の評価とそのメカニズム解明の一環として脾臓内分布とを行い、新しいがん免疫療法として の有用性を検証することを目的とした。

【結果・考察】

1.マウス膀胱がん同所移植モデルの構築とCWS-NPの抗腫瘍効果の評価

膀胱がん同所移植マウスに対してCWS-NPを腫瘍移植後から2、4、6日目に計3回膀胱内に 投与し、12日目に膀胱を回収した。抗腫瘍活性を評価した結果、CWS-NP 投与により有意な抗 腫瘍活性は認められなかった。この原因を明らかにするため、蛍光色素DiD標識CWS-NPを用 いて膀胱がん同所移植モデルに膀胱内投与し、腫瘍組織への取り込みを評価した。結果より、

CWS-NP ががん細胞に十分に取り込まれておらず、抗腫瘍効果を発揮できなかったと考えられ た。そこで、CWS-NPを事前に取り込んだ膀胱がん細胞を膀胱内に移植し、抗腫瘍活性を評価し た。その結果、CWS-NPを取り込ませた膀胱がん細胞を移植した群において有意な抗腫瘍活性が 観察された。この結果より、CWS-NPは膀胱がん細胞に十分に取り込まれることで抗腫瘍効果を 発揮できることが明らかになった。以上のことから、膀胱内でのCWS-NP の細胞取り込みを促 進する必要性があるが、CWS-NPが同所移植された膀胱がんに対しても抗腫瘍活性を誘導できる

(3)

可能性が示唆された。

2.CWS-NPの全身投与型がん免疫療法への応用

最初にCWS-NP静脈内投与後の血中での凝集回避能を評価するため、CWS-NPと血清を混合 した際の濁度評価を行った。結果はCWS-NP は血清と混合しても濁度に変化はなかったことか ら、CWS-NPは血中で凝集を回避できることが示唆された。

またマウスにCWS-NPを尾静脈内投与した場合、投与したCWS-NPのうち肝臓に約70%、

脾臓に約14%の分布が確認された。さらに脾臓内の全樹状細胞中半分の樹状細胞に取り込まれ、

活性化マーカーの発現が有意に増加していた。この結果より、静脈内投与された CWS-NP は脾 臓内の樹状細胞を活性化させることが示唆された。

次にCWS-NPによる抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球(Cytotoxic T Lymphocyte: CTL)

の活性化評価を行った。オボアルブミン(OVA)をモデル抗原とし、CWS-NPとOVA封入リポ ソーム(OVA-NP)を投与した際のOVA特異的なCTL活性を測定した。結果はOVA-NP単独 と比べてCWS-NPを投与することで有意にCTL活性が増強した。この結果はCWS-NPが抗原 特異的なCTLを効率的に誘導できることを示している。

最後に、膀胱がん以外のがんへの抗腫瘍効果を評価するため、CWS-NPとOVA封入リポソー ム(OVA-NP)を事前に投与し、E.G7-OVAを皮下移植して予防的抗腫瘍効果を観察した。その 結果、Vehicle投与群やOVA-NPと空のコントロールナノ粒子の併用群と比べ、CWS-NPOVA- NP を事前に併用し投与した群では腫瘍の成長がほぼ抑制された。以上より CWS-NP は全身投 与型アジュバントとして、膀胱がん以外のがんに対しても有用である可能性が示唆された。

3.全身投与されたCWS-NPの脾臓内分布とCTL活性化の関係性

静脈内投与された CWS-NP は脾臓内の樹状細胞に効率的に取り込まれていたが、他の MHC クラスII陽性細胞にも取り込みが確認された。この結果はCWS-NPによる抗腫瘍効果は樹状細 胞だけではなく、他のMHCクラスII陽性細胞がCTL活性化へ関与している可能性も示唆して いる。第3章では、CWS-NPの脂質組成を変更し、脾臓細胞へのCWS-NPの分布とCTL活性 との関係性からCWS-NPによるCTL活性化に寄与する細胞の特定を試みた。

PEG化脂質の修飾によって脾臓内の樹状細胞への選択性が向上するという報告を基に、CWS- NPの組成(POPC/Cholesterol/DOTAP/DSPE-PEG 2k=40/30/30/5、モル比)をベースにPEG 化脂質量を変化させた DiD 標識空リポソームを調製し、尾静脈内投与した。その結果、DSPE- PEG 2k = 1 mol%において樹状細胞への取り込み量はほぼ変化が無く、またB細胞への取り込み 量が最も向上した。この組成の CWS-NP を調製しCTL 活性を調べたところ、元の組成に比べ CTL活性増強の傾向が観察された。この結果より、CWS-NPCTL活性化に樹状細胞だけでな くB細胞も関与している可能性が示唆された。

次に、カチオン性脂質DOTAPの代わりに膜透過性ペプチドであるSTR-R8を用いた脂質組成

POPC/Cholesterol/STR-R8/DSPE-PEG 2k = 70/30/2/1 )( 以 下 R8 CWS-NP ) と

(POPC/Cholesterol/DOTAP/DSPE-PEG 2k = 40/30/30/1)(以下PEG1 CWS-NP)の比較を 行った。その結果、PEG1 CWS-NPとR8 CWS-NPを用いた組成で脾臓細胞全体への分布量は いずれもほぼ同じであったが、PEG1 CWS-NPは樹状細胞に効率よく取り込まれ、R8 CWS-NP ではB細胞に優先的に取り込まれた。これらのCWS-NPを用いてCTLアッセイを行ったとこ ろ、有意差は確認されなかったがPEG1 CWS-NPにおいてCTL活性が高い傾向が見られた。結 果より、CWS-NPは樹状細胞に多く取り込まれた方がCTL活性をより増強させることが示唆さ れた。

【まとめ】

・CWS-NPは膀胱内での細胞取り込み要性が示唆され、CWS-NPが同所移植された膀胱がんに 対しても抗腫瘍活性を誘導できると示唆された。

CWS-NPは静脈内投与により全身投与型アジュバントとして、膀胱がん以外のがんに対して抗 腫瘍効果を示すことに成功した。

・CWS-NPの静脈内投与による免疫活性化はB細胞も関与する可能性を新たに見出した。

CWS-NPB細胞よりも樹状細胞に取り込まれることでより効率よくCTLを活性化させるこ とが確認された。

参照

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