氏名・(本 籍)
学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位論文題目
論文審査委員
小 川 敏 夫 (大阪府)
工 学 博 士
工博乙第 4 号 昭和59年 6 月25日 学位規則第5粂第2項該当
弾性表面波フィルタ用チタン酸鉛−
ジルコ二ュウム酸鉛系圧電セラミックスの研究
(委員長)宇野正美
教 授 小林 純一 教 授 萩野 賓 教 授 山田 祥二 教 授 井本 文夫
論文内 容の要 旨
チタン酸鉛−ジルコニウム酸鉛Pb(Ti,Zr)03系圧電セラミックスをFMおよびTV−PIF用 弾性表面波フィルタに適用するため,組成ならびにポアフリーセラミックスの製造方法について検 討した。またセラミックスの弾性表面波速度バラツキと焼成条件の関係を明らかにし,品質バラツ
キの少ない工業生産条件を見出した。さらに中心周波数100MHz以上の弾性表面波フィルタを試作 し,より高周波領域への応用の可能性を示した。またフィルタの信頼性面から,温度変化がセラミッ クスの圧電特性劣化を防ぐ方法を見つけた。以上の結果から弾性表面波フィルタ用Pb(Ti,Zr)08 系セラミック基板の製造を量産ベrスにのせることができた。
EE電セラミックスとしてMnで変性したPb(Snl/2Sbl/2)08−PbTiO8−PbZrO3系について詳 細に検討した結果,従来の拡がり振動を利用するkHz帯AMフィルタ用セラミックスの強誘電性 正方晶系側組成や厚み振動を利用するMHz帯FMフィルタ用のモルフォトロピック相境界MPB 付近の組成の他に弾性表面波速度温度系数の小さな組成が菱面体晶系側にも存在することが明らか
となった。この組成は菱面体晶系内低温安定相FR(LT),高温安定相FR(HT)間の相転移を
−200Cから800C間に含み,すでに述べた2組成とは異なり,縦波および横波各モードの/ミルク波 速度の温度特性に与える影響が違う。弾性表面波は縦波と横波の合成波と考えられるので,両モr ドの温度特性が互いに補正し合うことにより,弾性表面波速度温度係数の小さなものが得られた0 またこの組成はMPBより大きくPbZrO3側に離れているにもかかわらず,弾性表面波励振の電 気機械結合係数が大きく,比誘電率も低く,弾性表面波フィルタ用としてPb(Ti,Zn)03系で最
も適した組成であることが明らかとなった。
Pb(SnaSbl_α)03−PbZrO3系の生成反応過程では,反応中間相として酸素位置に酸素欠陥をも
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つ正方晶パイロクロア型化合物Pb2Sn2αSb2−2α07−α(1/8<α<2/3)が生成し,これが粒界に存在 し,結晶粒の粒成長を抑え,球状粒子を形成する。この組成系を酸素雰囲気中で焼成したところ,
空気中焼成に比べ密度が1.3%(ヤング率換算で3.0%)上昇し,ポアフリーセラミックスが得られ た。ポアフリr化は,酸素欠陥をもつパイロククロア相を通して,ポア内の酸素が短時間に焼成体 外へ排出されることにより達成されるものと考えられた。本方法は酸素欠陥をもつ固相を利用する ことから,SnowのPbO液相によりポアフリp化を進める酸素雰囲気焼成とは本質的に異なる。
また同時に粉末特性の制御が重要であり,特に焼成時に均一収縮するような粒子配列をとることが 必要である。セラミックスの弾性表面波速度/ミラツキほセラミックスの焼成環境も含めた焼成条 件,例えば焼成温風 時間あるいは厘内の焼成体位置等の影響を受けた。特に,PbO雰囲気と焼 成体位置の関係を吟味した結果,セラミック基板内の弾性表面波速度バラツキげ/虎が0.01%以下,
焼成ロット内で0.15%以下のものが得られ,ほぼ単結晶並の特性をもつことが明らかとなった。
次に中心周波数100MHz以上の高周波弾性表面波フィルタを試作したところ,すだれ状電極で 励振される/ミルク波スプリアスのほとんど見られないものが得られた。これは200MHz以上でバル ク波の急激な減衰が起こることからくるものと考えられ,Pb(Ti,Zr)03系圧電セラミックスによ り,100〜300MHzの範囲で低バルク波スプリアスをもつ弾性表面波フィルタが実現できることが 明らかとなった。高周波数領域での弾性表面波の伝搬損失上は,周波数fが200MHz以下では,
L=5・6×10 ̄3fl・9200MHzより大きくなると,L=8.3×10 ̄8f4で表わせ,前者は主にセラミックス
の内部摩擦による散乱損失,後者は結晶粒子によるRayleigh散乱が寄与しているものと考えられ た。
圧電セラミックスの温度安定性については,TV−PIF用弾性表面波フィルタを熱エrジング 試験および冷熱衝撃試験することにより評価した。冷熱衝撃試験での圧電性の変化とセラミック素 子自体の絶縁抵抗との関係から,素子の絶縁抵抗がある一定値より小さくなると,圧電特性の劣化 は大幅に小さくなった。この特性劣化の原因は,冷熱衝撃時にセラミック素子に電荷が発生し,こ れにより交番電界が印加され,素子が滅極を起こすことからきていた。特性劣化度合は熱エrジン
グ特性改善に寄与するスペナスチャrジ量に関係しており,両試験に対して特性劣化を少なくする には,セラミックスの絶縁抵抗を下げる必要があった。セラミックスの電気特性を変えることな
く,セラミックス素子外部にセラミックスそれ自体の絶縁抵抗よりも低い値をもつ抵抗体で短絡 し,発生電荷を短時間に緩和する方法により,特性劣化の改善ができた。