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伊藤秀三 (昭和49年9月30日受理)

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(1)

九州西部森林植生の植物社会学的研究

II.アカガシおよびモミ自然林について

伊藤秀三

(昭和49年9月30日受理)

Phytosociological studies on forest vegetation in western Kyushu, Japan.

II. Natural forests of Quercus acuta THUNB. and Abies firma SIEB. et ZUCC.

Syuzo ITOW

Abstract

Forests of Quercus acuta THUNB. (syn. Cyclobalanopsis acuta OERST.) and Abies firma SIEB. et ZUCC. are the climaxes on mountain slopes and ridges, contiguous to the low-elevation Castanopsis cuspidata forests (ITOW, 1971; 1972). Fifty-two relict stands of them were investi- gated phytosociologically at 13 localities in western Kyushu. The communities recognized were as below.

1. Skimmio-Cyclobalanopsietum (Quercetum) acutae SUZ.-TOK. et SUMATA 1964

Evergreen oak forest, 12 to 18m high and 0.5 to 1 m d.b.h. in canopy trees, prevailing on mid-elevation foggy mountain slopes, ranging from 450m (300m in Tsushima) to 950m.

a. Subassociation of Castanopsis cuspidata, ranging from 450m (300m in Tsushima) to 500m altitude.

b. Subassoc. of Symplocos myrtacea, ranging from 500m to 950m altitude.

2. Illicio-Abietum firmae SUZ.-TOK. et HATIYA em. SUZ.-TOK.1961

Coniferous forest, 15m to 20m high, found on shallower soils; accompanied, more or less, by evergreen trees and shrubs.

a. Subassoc. of Quercus salicina, on flat sites along streams in low elevation.

b. Subassoc. of Quercus acuta, on slopes and ridges in the Quercus acuta belt.

c. Subassoc. of Hydrangea scandens, being accompanied by fewer evergreen and more summergreen trees and shrubs than the preceding two subassociations; found in higher elevations from 950m to 1100m in the Unzen volcanic area.

The geographic distribution of the communities is given in Figs. 1. and 3. and the habitat relationships in Fig. 4.

前報(伊藤,1972)につづき,九州西部の山地に発達するアカガシ林およびモミ林について

(2)

報告する。同山地には,これらの残存自然林分は少なく,二次林が広く発達している。本稿で 扱うのは,群落の形態,とくに萌芽幹の有無・林冠の凹凸・林冠木の直径と高さからみて(伊 藤1971のTablel参照),明らかに自然林と見なされる林分からの資料である。樹高が充分 に高くても,上記の基準からはずれる群落は対象としていない。これは,自然林群落の典型像 の把握を目的としたからである。

野外調査は1968年‑1973年に行なわれた。調査に際しては,長崎大学学生川下勉・草場洋二 郎・成松洋・種川啓示君の協力を得た1973年には,堀田浩氏(長崎県島原高校教諭)・川里 弘孝氏(長崎県自然保護課) ・執行寛氏(厳原町久和中学校教諭) ・西山輝男氏(同豆殿中学校 教諭) ・鴨川誠氏(平戸猶興館高校教諭) ・池崎善博氏(松浦高校教諭)の協力も得た。資料の 整理と表の作成には,藤沢寿美子・朝永有美子両嬢のお世話になった。これらの方々に厚く初 礼申上げる。

I調査地の概要

本稿の対象は,南は雲仙から北は対馬北部にいたる九州西部のアカガシまたはモミの優占群 落で,背振山(福岡・佐賀県境)を除いては佐賀平野以西に位置する。すでにのべたように

(伊藤, 1971),シイ林域とアカガシ林域の境界は,対象地域の南部では,ほぼ海抜450m付 近,北部(対馬)では300m付近にある。モミ林の高度分布は大きい幅があり,本文中で詳し

くのべるように,対馬の一部では海抜100m以下のシイ林域にもあり,雲仙ではアカガシ林域 上限以上の地域にあり,もちろんアカガシ林城内にも成立している。アカガシ林域の上限は, 対象地域南部(雲仙および多良山系)では海抜950m付近である。対馬には,アカガシ林域の 上限海抜に達する山地が存在しない。五島列島ではアカガシは山地各所に分布するが,アカガ シ自然林が残存するのは中通島の山王山のみであり,モミ林は分布しない。アカガシ林域の温 量指数(吉良, 1949)は, 105‑85の範囲にあると推定されている。 (伊藤, 1971)。

以下にのべる13地区において合計52の植生資料を得た。調査地区番号はFig.1および2, Tablelおよび2の番号に対応する。

1.雲仙(1/5万図幅:島原・下左,下右)0

安山岩を母岩とし,その風化の程度,海抜,過去における人為などにより植生は変化に富む。アカガ シ林は温泉街とゴルフ場の間の谷ぞい媛斜面にわずかに残存する。モミ林は普賢岳南斜面950‑1,100m に発達する。後者の自然皮は高い。モミ林以上の山地には,コ‑ウチワカエデ・ヤマボウシ・コミネカ エデを主とする夏緑林で,一部にブナを生ずる。

2.多良岳(諌早・上左)

死火山。最高海抜は経ケ岳のl,078mc海抜450m以上の山地で植林地化されていないところでは,ア カガシの二次萌芽林か自然林の占有面精が広い。アカガシーイスノキ群落とアカガシーミヤマシキミ群落 をすでに報告したが(伊藤, 1973),その中からとくに自然林分だけを抜き出し,今回の資料処理に加 wm

それらは伊藤(1973)のTable4のスタンド2. 3・9・13, Table5のスタンド8・14

17であるoモミ林は金泉寺付近,串峡西側尾根上に残存し,上掲の文献中に報告してある。これらは今

(3)

回の資料処理に加えてないが,本 文中では言及する。調査地の一部 はツクシシヤクナゲ自生地として 天然記念物に指定されている。

3.黒髪山(伊万里・下右) 最高海抜は510m,山頂付近は 地形急峻なためかアカガシ林の発 達はよくない。 1資料を得た。

4.背振山(背振山・上左) 最高海抜はl,055mc植林地化 がすすんでいる。アカガシ林域の 上限近くの海抜940m地点で2資 料を得た。上方にはブナ林が発達 する。

5.国見岳(伊万里・下左) 最高海抜777m,長崎・佐賀の 県境にあり,佐賀県側(東側)は 急傾斜で落ち込むのに対し,長崎 県側(西側)は傾斜がゆるい。海 抜450m以上がアカガシ林域であ るが,植林地化がすすみ,あるい は二次萌芽林となっていて自然林 は小面積に残存するにすぎない。

しかし三角点北方の平坦地(海抜 690‑700m)には小林分ながらほ とんど完全なアカガシ原生林が残 存する。モミ林はない。

6.安溝岳(志々伎・上右) 最高海抜514mr山頂近くにあ る神社周辺の援斜面ないし平坦地 にアカガシ自然林が残存する。シ キミをはとんが欠くが,これは長 期にわたる宗教的な採取に原因す るらしい。神社周辺以外では南西 側の下方斜面にも自然林が残存す

Fig. 1. Map of western Kyushu, Japan, showing the distri‑

bution of natural forest communities of Quercus acuta and Abies firma.

Skimmio‑Cyclobalanopsietum (Quercetum) acutae Suz.I Tok. et Sumata 1964

(0) Subassoc. of Castanopsis cuspidata (○) Subassoc. of Symplocos myrtacea

Illicio‑Abietum firmae Suz.‑Tok. et Hatiya em. Suz.‑Tok.

1961

(▲) Subassoc. of Quercus acuta (A) Subassoc. of Quercus salicina (△) Sbuassoc・ of Hydrangea scandens

Localities investigated are 1. Unzen, 2. Tara‑dake, 3. Kuro‑

kami‑yama, 4. Sebun‑yama, 5. Kunimi‑dake, 6. Yasuman‑

dake, 7. Tatera‑yama, 8. Ariake‑yama, 9. Shiratake, 10.

Oohoshi‑yama, ll. Mitake, 12. Kami‑Tsushima and 13.

Sanno‑zan.

るが,他はアカガシ二次林か植林地になっている。モミ林はない。

7.竜良山(豆穀・上右)

最高海抜558mr北側斜面の海抜130mの等高線以上山頂までは,シイ林からアカガシ林へ連続して原始 性がよく保たれ,国指定の天然記念物となっている。シイ林(スダシイーヤブコウジ群集)については第 1報で報告した(伊藤, 1972)cアカガシ林は海抜300m付近から山頂まで発達する。山頂付近のアカガシ 林は風衝のため樹高7mと低いが, 400m付近では15mに達する。原始性は極めて高い。この山地は モミの分布西限地となっているがモミ林の形態をもたず,数木が上部アカガシ林の高木層に混在するにす ぎず,林床に僅かに出現する幼菌のほとんどは生活環を完了し得ないと見なされる。天然記念物の区域外 や同地域の山地には,アカガシ二次萌芽林が広く見られる。

(4)

8.有明山(厳原・下左)

最高海抜558mr東側斜面の一部(とくに万松院の上方)を除いては自然林の残存部はまとまってい ない。アカガシ林は山頂近くにあり,そこから2資料が得られた。モミ林はない。

9.日岳(小茂田・上右)

最高海抜519m,山頂部の岩角地にはイワシデ群落が発達し,その下方東側斜面の海抜400m前後にア カガシ林が残存する。国指定の天然記念物。中腹以下は植林地となっているが,河辺にモミ林の発達が みられる個所がある。

10.大星山(仁位・上左)

最高海抜347m,‑山地上部にはかなりアカガシ林が発達するが,各所に炭焼きがまの跡があり,アカ ガシの胸高直径も30cm以下と小さくまた萌芽性のものも混えていて,真の自然林とみなされる林分は ほとんどない。本稿では,やゝ自然性の高いモミとアカガシの混生するスタンドの1資料のみを処理の 対象に加えた。現在伐採が進行している。

ll.御岳(佐須奈・下右)

最高海抜490m。北側の登山口近くの河辺にモミ林が小面積に残存する。中腹は植林地となっていて, 海抜350m以上頂上までの「郡こ,原始性を保つモミ自然林が残存している。

12.上対馬町舟志〜琴の問(佐須奈・上右)

舟志川の屈曲部内側にモミ林が発達する個所がある。いずれも面積は小さい。海抜は40mと低く,前 記の自岳および御岳の山麓河辺のモミ林と立地条件は同じである。

13.山王山(有川・上左)

最高海抜440m。山頂すぐ下の南面にアカガシ自然林が小面積に残存する。その他のアカガシ林は樹 高が高くても二次林である。五島列島でアカガシ自然林の残存が確認できたのは山王山のみである。

Ⅱ植生資料の処理

野外における植生調査は第I報(伊藤, 1972)と同じ方法で行なわれた。植生資料の処理も 同様であるが,本稿で対象としたアカガシとモミの自然林の植生資料では,群落の地理的な区 分を第一義的に特微ずける種群は見出し得なかった。したがって診断種の抽出とそれにもとず

く植生区分をEllenberg (1956)の方法に従って行なった。

部分表の段階で幾種類かのまとまりのある診断種群が発見された。植生区分の第一段階に は,これらの診断種群を用いると3通りの区分が可能であり,第二段階以後の区分をも考慮す ると4通りが可能であった。その4通りの区分法のすべてを試みたが,結果的には,どの区分 プロセスを経ても本稿で対象とした植生資料に関する限りは,抽出された群落はまったく同一 であったFig.2には,その4通りの区分に用いられた診断種群とそのプロセスをあげてあ

る。ただし,この区分プロセスは,特定種の在・不在による英豪方式でいう分割法ではなく, 診断種の組合せというZdrich‑montpellier方式(伊藤, 1973a)である.

プロセスIでは,区分の第一段階において,対象とした全植生資料52をヤブツバキ・ヤブコ ウジ・ヒサカキ・ヤブニッケイの組合せをもつ43資料と,ヤマホトトギス・チゴユリ・ナガバ

(5)

モミジイチゴ・カナクギノキ・シロヨメナの組合せをもつ9資料に分割された。両種群のいず れも持たない資料群あるいは両者の中間的な資料群は存在せず,また上記の診断種だけでなく 他にも常緑木本植物を多く揃え持つ点においても後者と異なっていた。後者においては,常在 皮Ⅴのモミのはかには,常緑植物としてはテイカカズラ・ネズミモチ・シキミが低い常在度 (i‑mで出現するにすぎない。したがって前者がヤブツバキに明らかに属していると見な されるのに対し,後者はそれと夏緑林群落への移行帯あるいは夏緑林域にあると考えられる。

第二段階において,アカガシ・ミヤマシキミ・イヌガシ・アオキの組合せをもつ39資料と, ウラジロガシ・ヤマウルシ・シュンランの組合せをもつ4資料に二分割することができた。こ の4資料には,高木層におけるモミの存在(いわゆるモミ林)とカヤが組合さっていてまとま りのある群落であるが,前39資料にはモミをもつ資料とそうでない資料がふくまれていた。罪 三段階ではこの点を重視し,モミ(高木層)とカヤ,さらにシノブ(着生植物)の組合せをも つ5資料(モミ林)ともたない34資料に分割された。この34資料中には,林床にモミの椎樹・

稚酋だけをもつ5資料がふくまれている。この稚樹・稚首は,偶然に生じ生活環をそこの自然 群落で完了するとは見なされないので(完了するのならば,すでに高木にまで生長している個 体が存在するはずである),一応,高木層におけるモミの出現とは別に扱った。以下も同じ扱 いをする。 (モミの稚苗だけの存在を高木の存在と同等に扱っても,認識される群落には影響

しない。)この34資料は,区分の第四段階において,ベニシダ・スダシイ・イスノキ・ジャノ ヒゲ・カクレミノ・マメズタの組合せをもつ19資料と,ハイノキ・シキミ・イヌツゲの組合せ をもつ15資料に分けられた。前者については,さらに第五・算六段階の区分も可能であった。

プロセスⅡにおいては,区分の第一段階はプロセスIと同じにし,第二段階でモミ(高木層 の)とカヤの組合せをもつ9資料ともたない34資料に分割され,後者はプロセスIの第四段階 と同じであり,前者9資料は,アカガシ・ミヤマシキミ・イヌガシ・アオキ・シノブをもつ5 資料と,ウラジロガシ・ヤマウルシ・シュンランの組合せをもつ4資料に再分割された。

プロセスⅢにおいては,第一段階でモミの在・不在による二分割を,プロセスⅣではアカガ シ・ミヤマシキミ・イヌガシ・アオキの組合せによる区分を試み,ともにFig.2に示す第二・

第三段階を経て,プロセスIおよびⅡと同じ結果に到達した。

以上の植生区分の試行経過からみて,識別された5群落はそれぞれ組成上のまとまりを有す る植物群落と見なすことができるし,また後述するように,立地的にもまとまりのある発達領 域を持っている。それぞれについて既発表群落の組成と比較検討し,同一もしくはもっとも近 似の組成をもつ既発表群集名をあてると, Fig.2の群落A (19資料)と群落B (15資料)はア カガシーミヤマシキミ群集(AとBはそれぞれ亜群集),群落C (5資料)とD(4資料)と E (9資料)はモミーシキミ群集(C・D・Eは亜群集)に該当すると見なされた。以下は,本 稿の対象地域内におけるこれらの群落の特徴である。

(6)

Step 1

Step 2

Step 3

PROCESS I

l芋i

Camellia japonica Ardisia japonica Eurya japonica

Cinnamomum japonicum

Quercus acuta Skimmia japomca Neolitsea aciculata Aucuba japonica

こ̀

39

Rubus palmatus Disporum smilacinum Tricyrtis macropoda Lindera erythrocarpa Aster ageratoides var.

harae

Quercus salicina Rhus trichocarpa Cymbidum georingn

Abiesfirma

(absent)Torreyanucifer IDavalliamariesi冒

34 ‑1

Dryopteriserythrosora Distyhumracemosum

step48astanopsiscuspidata phi。p。g。njap。nicus Dendropanaxtnfidus Lemmaphyllummicrophyllum 連コ

A

PROCESSII Step1

Step 2

(absent)

こ̀

Liそ二

Symplocos myrtacea Ilhcium

rehgiosum Ilex crenata

ロ亘コiココL=夏至:

ち C

n I

・lSa

em

aS

′l、 Process I)

D E

tij

(Same as in Process I)

Abies firma Torreya nucifera

l÷F

step 3

Dryoptens erythrosora Distyhum racemosum Castanopsis cuspidata Ophiopogon japonicus Dendropanax trifidus

Lemmaphyllum microphyllum

言9

Symplocos myrtacea Quercus acuta Quercus salicina Illicium religiosum Skimmia japonica Rhus trichocarpa

Ilex crenata

‥15‥;

B

Neolitsea aciculata Cymbidium goeringii Davallia mariesii

チ・.9

D E Fig. 2. Four different processes attempted in subdivision of vegetation samples and diagnostic species found and employed at each step. The communities abstracted are

the same irrespective of the process adopted. Continued on next page.‑

(7)

PROCESS HI

Step 1

Step 2

(absent)

I七一i

I i

Dryopteris erythrosora Symplocos myrtacea Castanopsis cuspidata Illicium religiosum Distylium racemosum Ilex crenata Ophiopogon japonicus

Dendropanax trifidus Symplocos lucida

Step 3

Step 1

Step 2

Step 3

̲19i A

PROCESS IV

15 B

Quercus acuta Skimmia japonica Neolitsea aciculata Aucuba japonica

l忘l

Abies firma

18

l )

Camellia japonica Ardisia japonica Eurya japonica Ligustrum japonicum

Cinnamomum japonicum Dryopteris erythrosora Castanopsis cuspidata Symplocos lucida Torreya nucifera

亡とI

Ilex crenata Rubus palmatus Lindera erythrocarpa Hydrangea scandens Disporum smilacinum Tricyrtis macropoda Aster ageratoides var.

harae

Quercus acuta Quercus sahcina Skimmia japonica Rhus trichocarpa Neolitsea aciculata

Aucuba japonica Davalha mariesii

r‥言

(absent)Abiesfirma Torreyanucifera Davalliamariesii Symplocoscoreana

34

Dryoptens erythrosora Symplocos myrtacea Castanopsis cuspidata lllicium religiosum Distyhum racemosum Ilex crenata Ophiopogon japomcus

Symplocos lucida Dendropanax trifidus

I志i

Cymbidium goeringii

4'9.

D E

13

Camellia japonica Ardisia japonica Eurya japonica Ligustrum japonicum Cinnamomum japonicum Castanopsis cuspidata Dryopteris erythrosora Symplocos lucida Dendropanax trifidus Ophiopogon japonicus Quercus sahcina Torreya nucifera

Rhus trichocarpa Cymbidium goeringii

z÷i

.;

Ilex crenata Hydrangea scandens Lindera erythrocarpa Tricyrtis macropoda Disporum smilacinum Aster ageratoides var.

harae

Symplocos coreana Euonymus oxyphyllus

(8)

Ⅲ植物群落

A.アカガシーミヤマシキミ群集Skimmio‑Cyclobalanopsietum acutae Suz.‑Tok.

et Sumata 1964 (Table 1 )

高木層は風街地では6m,平坦地では19mに達し,林冠木の胸高直径は50‑100cmである。

高木層にはほとんどのスタンドでアカガシが優占する。亜高木層の高さは6‑10m,多くの場 合,植被率は50%以下,低木層は1.5‑2.0m,植被率は少数例を除いて40%以下である。草本 層は0.8m以下で,少数例を除いて20%以下と疎開する。林床の植被率が低いのは,アカガシ の落葉は分解が遅く,それが多量に敷きつめることに原因する。この点は他の照葉樹林と異な

るところである。また着生の醇苔類やランが多いのも特徴である。

本群集が成立するのは,対馬においては海抜300m以上,平戸島および九州本島西部では450 m以上で(伊藤, 1971),土壌が安定した山地斜面または平坦な広い尾根部である。その山地 は,対象地域内ではいずれも海から20km以内の距離にあり,海からもたらされる湿度が雲霧 となって凝結しやすい地理的位置にある。

立地的にも組成上も,スダシノトヤブコウジ群集,モミーシキミ群集,ウラジロガシーイスノ キ群集と隣接し,組成上はアカガシとミヤマシキミの組合せの点において,これら隣接諸群集 と異る(既発表群集との組成比較は後に詳述する)。つぎの2つの亜群集が認められた。

1.スダシイ亜群集

この亜群集は,スダシイ・ベニシダ・カクレミノ・ジャノヒゲ・マメズタ(着生)の識別種の 存在と,ハイノキ亜群集(後述)の識別種の欠如によって区分される。本亜群集においては,

スダシイはつねにアカガシよりも優占皮において著るしく劣るかあるいは欠如し,相観的には アカガシ優占群落であり,ごくまれにイスノキが共優占種となる。組成上は,次にのべるハイ ノキ亜群集と比べてスダシイーヤブコウジ群団の標微種とされる植物の常在皮が高い。その成 立領域はアカガシ林域の下半部,すなわち450m (対馬では300m) ‑500mにある(Fig.3)。

Fig. 3. North‑south cross‑section of western Kyushu, Japan, showing the altitudinal distribution of natural forest communities of Quercus acuta and Abies firma. Thick lines are for western parts of the Kyushu main island and thin lines for the satellite

islands. Community symbols are the same basis as in Fig. 1.

(9)

九州西部森林植生の植物社会学的研究Ⅱ

対馬においては,この亀城を越す海抜をもつ山地はないので,同地のアカガシ林は,調査した かぎりではスダシイ亜群集に属する。九州本島では,その残存林は,平戸・安満岳(Loc.6), 黒髪山(Loc.3),多良山系(Loc.2)で見出された。他の地域では,すでに二次林化もしくは 植林地化されている。

五島列島にもアカガシーミヤマシキミ群集の発達領域内にある山地が存在する。しかし,七 岳(最高海抜432m) (図幅:三井楽・下右)にはアカガシは分布していても,その残存高木群 落はなく,また番岳(最高海抜432m) (立串・下左)は完全に二次林化もしくは草原化されて いる*。わずかに,山王山(最高海抜440m) (有川・上右)の山頂部西斜面に残存しているに すぎない(ただし,五島で最高海抜をもつ父岳〔461m〕 〔三井楽・下右〕は調査していない)。

山王山のアカガシ残存林分は,アカガシ優占であるがミヤマシキミを欠き,典型的なアカガシ ーミヤマシキミ群集とはみなされないが,組成はスダシイ亜群集に近い。しかし,スダシイ・

ベニシダ・ジャノヒゲも欠けている。したがって同亜群集の断片もしくは,変形とみなされ る。その組成は次の通りである。

調査地:山王山.海抜420m. WNW. 300. Tj : 16m/90^, T2 :9m/50#, S:2m/20^, H: 0.7m /io#.林冠木DBH : 0.7‑100cm.種数36spp.調査面積225m2アカガシ, T1‑4*4, T2‑+, s‑

+, H‑+・,カゴノキ, T1‑1.1,T2‑+;イスノキT0‑1‑1ヤブツバキ,T2‑2ォ3, S‑+・

2・,ホソバタブ, Tjj‑1.2;シロダモTp‑ ‑+,カンコノキー2.2オンツツジ, T2‑

+‑2;ゴンズイ;T2‑+;(以下S層のみ)タブ, +;サカキ, +;イヌビワ;+・2;ヒサカキ, +

;ヤブニッケイ, +;イヌガシ, +・2;ネズミモチ, +;サザンカ,十;バリバリノキ,i‑i;(以下

°

H層のみ)カクレミノ, +;イズセンリョウ, ‑t‑.2;ホソバカナワラビ, +;ヤブコウジ, +;アリ ドウシ, +;テイカカズラ, +・2;オオカグマ, +'2;オニカナワラビ, +・2;オオイタチシダ, +‑2;キジノオシダ, +;カツモウイノデ, +‑2;イノデ, +;ノコギリシダ, +;フモトシダ, +

;マルハベニシダ, +;2;フユイチゴ, +‑2;ナツヅタ, +・2;エビネsp.,+.

宮脇ら(1971)はスダシイーヤブコウジ群集にふれて, ¶東海地方以西においても海抜300‑

400m付近の内陸地ではアカガシ,ウラジロガシを伴なった周辺地域の常緑広葉樹の群集標徴 種を欠くスダシイの優占した林分が存在"するとのべ,この世アカガシ,ウラジロガシで区分 される林分はアカガシ亜群集として区分されることが望ましい"としている(同上p.90‑

91)。しかし,ここでとりあげている群落は,スダシイではなくアカガシの優占した群落であ り,かつアカがシとミヤマシキミの組合せがあり,また後述するモミーシキミ群集アカガシ亜 群集との組成上の関連から,アカガシーミヤマシキミ群集スダシイ亜群集としておく。いずれ にせよ,群落の名称はともかく,その実体はスダシイ優占群落とアカガシ優占群落の中間的存 在であり,組成全体は,ウラジロガシの低常在度の点を別にすれば,ウラジロガシーイスノキ 群集に酷似する。

このスダシイ亜群集は,さらに,ホソバタブ・イスノキ・クロキ・モチノキ・タブの識別種 群によって2つの下位単位に区分され,さらにバi)バJ)ノキ・キジョランをもつ植分もある。

これらの識別種を多くもつ植分はビスダシイーヤブコウジ群集に近く,またウラジロガシをほ とんど欠如する点を除いては,鈴木・須股(1964)のいうアカガシーミヤマシキミ群集に似る。

*堀田浩・川里弘孝両氏の御教示による。

(10)

後者はSUGANAMA (1965)によってウラジロガシ‑イスノキ群集とされたが,本稿のアカガシ ーミヤマシキミ群集スダシイ亜群集は,対象地域内の多良山系で見出されたウラジロガシーイス ノキ群集(伊藤, 1973b)とはまったく異なる。

2. ‑イノキ亜群集

前記スダシイ亜群集の識別種を欠くはか,ハイノキ・シキミ・イヌツゲの識別種によって区 分される。また前亜群集と比較して,ヤブツバキクラスおよびスダシイーヤブコウジ群団の標 徴種若干の常在皮が低く,かつコパウチワカエデ・イヌシデ・ツリバナ・ヤマボウシなど落葉 樹の常在皮が高いのも組成上の特徴である。アカガシ林域の上半部,海抜500‑900mに成立す る。組成上は,この亜群集がアカガシーミヤマシキミ群集の中核をなす。あるいは,スダシイー ヤブコウジ群集,ウラジロガシーイスノキ群集,モミーシキミ群集(後述),落葉樹の群落いず れの組成上の特徴をも欠く取残された形の群落ともいえる。構造上は,原始性のよく保たれて いる林分では,林床の植被率はふつう10%以下に疎開するTablelの例でも,ミヤコザサを

もつ1林分(背振山)のほかには,林床植被率が10%を越すのは2例しかなく,アカガシの落 莫を厚く敷く。林床にはまれにモミの稚苗を生ずることがあり(Tablelでは2資料において) この点からも本亜群集はモミーシキミ群集に近いことは明らかであるが,モミは成木とは成り えず,したがってその生活環を完了することはないと考えられる。

さきに多良山系の植生を報告した際(伊藤, 1973b),アカガシの優占する自然林と二次萌 芽林をあつかい,アカガシーイスノキ群落とアカガシーミヤマシキミ群落を報告した。同報告は 自然林・二次林を一緒に扱っているので本稿の群落と厳密な比較はできないが,前者が本稿の スダシイ亜群集と,後者が‑イノキ亜群集にほぼ対応する。

鈴木・一宮(1968)は,九州中部からアカガシーミヤマシキミ群集を報告している。それ は,アカガシ・ミヤマシキミ・ハイノキ・シキミの組合せを持ち,主要なヤブツバキクラス標 徴種(ヤブツバキ・ヤブニッケイ・ヒサカキ・ネズミモチ・テイカカズラなど)を持ってい て,本稿の‑イノキ亜群集と基本的な組成は同一とみなされるOただし,ウラジロガシの高常 在皮と,シキミ・サイゴクミツバツツジなどの下位区分種の存在は異なるO海抜も500‑750m

と,本稿の‑イノキ亜群集の範囲内にある。

鹿児島県稲尾岳の山頂部のアカガシ群落(伊藤, 1973c)は,風衝群落で樹高が低いが,モミを 欠く事以外は,組成上はモミ‑シキミ群集に酷似し,本稿のハイノキ亜群集とは異なっている。

宮脇ら(1971)によると,モミーシキミ群集でも,世相観的にはモミ,ツガ,ウラジロガシ, アカガシのそれぞれの種が優占する場合もある" (同上, p. 104)という。本稿でいうアカガ

シーミヤマシキミ群集のような群落を指すと考えられないでもない。この点については次節で 論ずる。

B.モミーシキミ群集Illicio‑Abietum firmae Suz.‑Tok. et Hatiya em. Suz.‑Tok. 1961 (Table2)

九州西部において本群集と同定した森林群落は次の特徴をもつ。高木層は15‑20m,まれに

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25mに達する。林冠木はほとんどの林分でモミのみで,胸高直径は40‑80cm。高木層または亜 高木層にはウラジロガシまたはアカガシを多少とも伴なう。低木層は一般に疎開する。対象地 域内の自然林諸群落の中では,モミ・カヤ・キッコウ‑グマの組合せ以外に組成上のまとまっ た特徴はない。本群集の標徴種とされているシキミは,対馬のモミ林では著るしく少なく,ヒ イラギ・アセビは全域で欠如する。九州西部で認められるモミーシキミ群集は,組成上も立地 の点からも,次の3つの亜群集に分けられる。

1.ウラジロガシ亜群集

この亜群集は,ウラジロガシ・ヤマウルシ・シュンランの組合せと,次にのべるアカガシ亜 群集の識別種の欠如によって区分される。その立地は,低海抜地(調査した林分では海抜40‑

60m)の谷筋の河川の屈曲部内側の平坦地または緩傾斜地,または河川合流部の平坦地で,上 方の山地斜面からの崩積土あるいは河川の運積土上にある。このような立地は農耕地または植 林地に変えられていて残存林分は少なく,対馬の3地区で4林分が調査できたにすぎない。立 地の点では隣接群落はウラジロガシ林であるが,組成上はウラジロガシとヤブツバキクラス標 徴種以外に,ウラジロガシ林と共通する点は少ない。他の自然林諸群落と際立った特徴をも ち,容易に識別することができる。

2.アカガシ亜群集

前記ウラジロガシ亜群集とは,その識別種3種の欠如と,アカガシ・ミヤマシキミ・イヌガ シ・シノブの識別種によって区別される。また組成上は,本稿のTable2にあげた資料に関す る限りは,前記したアカガシーミヤマシキミ群集スダシイ亜群集からイスノキが欠け,モミと カヤが加わった群落に相当する。山地の斜面または尾根部に成立し,対馬の300‑500mの海抜 範囲に残存する。しかし,九州本島においては,この海抜範囲が広く伐採されていて残存林分 が見出せなかった。

多良山系にもモミーシキミ群集が残存する(伊藤,1973b)。それらは今回の群落区分(Fig.2) には加えなかったが,それにはアカガシーミヤマシキミ群集‑イノキ亜群集にモミが加った形 のモミ林がある。すなわち, ‑イノキ・イヌツゲ・シキミによって,本稿のTable2のアカガ シ亜群集と異なっている。しかし,アカガシ・ミヤマシキミ・イヌガシは両者に共通して出現 するので,モミーシキミ群集アカガシ亜群集は,スダシイ・ベニシダ・クロキをもつ下位単位 と,これらを欠き‑イノキ・イヌツゲ・シキミをもつ下位単位(いずれも変群集相当)に区分 することが可能である。

モミーシキミ群集アカガシ亜群集の九州における分布は,中間殿畑山と深菓(鈴木, 1961), 霧島(小田・須股1966;鈴木, 1969),稲尾岳(伊藤, 1973c)から報告されている。本稿で 報告する対馬のモミーシキミ群集のウラジロガシ亜群集およびアカガシ亜群集は,分布の西限 地に当る。

3.ガクウツギ亜群集(仮)

雲仙の仁田峠一帯のモミ林は,テイカカズラ・ネズミモチ・シキミ・イヌガヤが低い常在皮

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Table 3. Synoptic table of floristic composition of Quercus (Cyclobalanopsis) acuta‑ and Abies /trwa‑dominated forests in western Kyushu, Japan. The fifth column is for the

Abies forest of the Taradake region (Itow, 1973 b).

A. Illicio‑Abietum firmae. Ai: Subassoc. of Quercus salicina, A2i: Subassoc. of

Quercus acuta, A2ii '・Subassoc. of Quercus acuta, A3: Subassoc. of Hydrangea scandens.

B. Skimmio‑Cyclobalanopsietum. Bj: Subassoc. of Castanopsis cuspidata, B2: Subassoc. of Symplocos myrtacea.

Association and subassociation

No. of samples資料数 1. Abies firma Sieb. et Zucc.モミ 2. Quercus acuta Thunb.アカガシ

Skimmia japonica Thunb.ミヤマシキミ Neolitsea aciculata Koidz.イヌガシ Aucuba japonica Thunb.アオキ

3. Castanopsis cuspidata Schottky var. sieboldii Nakai スダシイ

Dryopteris erythrosora O. Kuntzeベニシダ Symplocos lucida Sieb. et Zucc.クロキ Dendropanax trifidus Makinoカクレミノ Ophiopogon japonicus Ker.‑Gawl.ジャノヒゲ Lemmaphyllum microphyllum Preslマメズタ 4. Distyhum racemosum Sieb. et Zucc.イスノキ 5. Torreya nucifera Sieb. et Zucc.カヤ

6. Davallia mariesii Mooreシノブ 7. Rhus trichocarpa Miq.ヤマウルシ

Cymbidium goeringii Reichb. fil.シュンラン 8. Ilex crenata Thunb.イヌツゲ

Hydrangea scandens Seringeガクウツギ 9. Illicium religiosum Sieb. et Zucc.シキミ

Symplocos myrtacea Sieb. et Zucc.ハイノキ Camellia sasanqua Thunb.サザンカ 10. Camellia japonica L.ヤブツバキ

Ardisia japonica Blumeヤブコウジ Eurya japonica Thunb.ヒサカキ

Cinnamomum japonicum Sieb.ヤブニッケイ Ligustrum japonicum Thunb.ネズミモチ Trachelospermum asiaticum Nakaiテイカカズラ Stauntonia hexaphylla Decaisneムベ

Cleyera japonica Thunb.サカキ Hedera rhombea Beanキズタ

Machilus japonica Sieb. et Zucc.ホソバタブ Quercus salicina Blumeウラジロガシ ll. Rubus palmatus Thunb.ナガバモミジイチゴ

Disporum smilacinum A. Grayチゴユリ

Aster ageratoides Turcz. var. harae Kitam.シロヨメナ Tricyrtis macropoda Miq.ヤマホトトギス

Lindera erythrocarpa Maklnoカナクギノキ 12. Cephalotaxus harringtonia K. Kochイヌガヤ

Ainshaea apiculata Sch. Bip.キッコウバグマ Acer sieboldiana Miq.コ‑ウチワカエデ

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で出現する以外はヤブツバキクラス標徴種を欠き,したがって同クラスの周辺群落あるいは夏 緑林域との移行帯と見なされる。本稿で扱ったモミ林(Table2)に関する限りは,カナクギノ キ・ガクウツギ・イヌツゲ・シロヨメナ・ヤマホトトギスなど10種の植物によって前記2亜群 集から識別される。高度分布は海抜950‑l,100mの範囲にあり,母岩は安山岩で,場所により 岩礫が末風化のまま地表に存在する。

高木層は15‑20m,モミの胸高直径は50‑100cm,その椎樹,稚苗が林下に出現する。亜高 木層にはタンナサワフタギとカナクギノキが広く出現し,場所によってはシキミが生育する (常在皮Ⅱ)。低木層または草本層にはガクウツギが優占するほか,草本層には種類数が多く 植被率は高い。土壌の発達している林分ではモミジガサが優占する。

既発表群落の組成と比較すると,鈴木(1961)のアセビ亜群集のシラキ変群集と共通する種 類は多いが,アセビは出現せず,またシラキは2資料で記録されたにすぎない。しかし,亜群 集識別種としてリストされているナガバモミジイチゴ,変群集識別種としてリストされている ガクウツギ・カナクギノキ・チゴユリは,本稿でも常在的に出現している。以上の組成的類似 から,本群落をモミーシキミ群集の一部と扱い,仮りにガクウツギ亜群集とよんでおく。

Ⅳ考察

個々の群落については,それぞれの個所ですでに考察したので,ここでは群落を規定した種 の分布と組合せ,およびそれに基いた群落相互の関係を考察する。すでに植生資料の処理の節 でのべたように,本稿で扱った資料(Tablelおよび2)に関する限りは,群落構成種はいく つかのまとまりのある種群に類別でき,したがってまとまりのある群落を区分することができ た。このような結果が得られたのは,たとえ樹高が高くても萌芽性の樹木をもつ林分や中径木

(30cm以下)以下の高木しかもたないような林分は二次林として資料処理の対象とせず,貢に 自然林と見なされる林分あるいはそれに非常に近い林分のみを扱い,自然林諸群落の典型像の 把握を意図したことにも関係すると考えられる.もし高木群落を二次林・自然林を問わず資料 処理の対象としたならば,高木諸群落の平均像は得られたにしても,ここに報告したようなまと まりのある典型像は得られないであろう.二次林諸群落については別に報告する予定である。

種の分布と組合せおよびそれによって規定された群落は, Table3のようにまとめられる。

ただし,あまりまとまりのよくない多良山系のモミ林(伊藤, 1973b)を終りから2番目の欄 に加えて示した。前にも記述したように,ヤブツバキなどクラス標徴種といわれる種群を多く もつ諸群落のうちでは,アカガシ・ミヤマシキミ・イヌガシ・アオキが一つのまとまりをもっ (ただし,シイ・タブ林を考慮すると,イヌガシはいくらか,アオキはかなり他群落にも出現 する)。本稿で対象とした九州西部の山地に関する限りは,この種群が深い土壌から浅い土壌 まで広く生育し,そのうちアカガシが優古種となる森林が多い。モミはその中の屋根上など涜 い土壌で優占し林冠木となる。この関係を模式的に図示すると, Fig.4のようにあらわすこと ができる。

(14)

Fig. 4. Schematic illustration of species distribution and community‑habitat relationships on mid‑elevation moun‑

tain slopes and ridges in western Kyushu, Japan.

1. Deciduous trees such as Acer sieboldiana, Cornus kousa,

Lindera erythγocarpa, Symplocos coreana, 2. Ilex cγenata

and Hydrangea scandens, 3. Quercus acuta, Skimmia japonica and Neolitsea aciculata, 4. Abies firma, 5. Castano

psis cuspidata, Dryopteris erythγosora, DendγopanaY lγifidus,

Ophiopogon ja♪onicus and Symplocos lucida, 6. Camellia japonica, Ardisia japonica, Eurya japonica, Cinnamomum japonicum, Ligustrum japonicum and Trachelospermum

asiaticum, 7. Quercus salicina.

この図には,おもな種群(1

!‑7)の分布範囲およびそれに よって規定される自然林群落 と,立地条件(土壌の深さ)お よび海抜との関係が示されてい る。アカガシは海抜450m(対馬 では300m)‑950mに広く優占す る。調査した山地はいずれも海 に近く,海からの風が山地斜面 に沿って上昇すると雲霧を生じ やすい位置にある。鈴木(1966) が指摘したように,アカガシ林 は九州の雲霧帯にはぼ相当する と考えられる。いっぽう,モミ は雲霧帯だけでなく,その上下 の浅い土壌地にも成育してい

る。この両種の関係をみると, 恵まれた立地にアカガシ林が成 立し,周辺立地ではアカガシに かぶさってモミが生じ,モミ林 となる。同様な関係は,四国西 南部のウラジロガシ・アカガシ とモミについても指摘されてい る(山中, 1970)c

最近は,アカガシーミヤマシ キミ群集(鈴木・須股, 1964) はウラジロガシーイスノキ群集のシノニムとして扱われている(SUGANUMA, 1966;宮脇ら, 1971)。しかし,上述の諸事実を考えると,九州西部に関する限りは,アカガシーミヤマシキミ 群集という名称が群落の実体をもっともよく表寛しているので,本稿ではそれを用いてある。

またモミーシキミ群集の名称は,種組成がほとんど一致すれば,モミが優占しない群落または それを欠く群落にも拡大適用は可能(鈴木ら, 1964;古田1965;宮脇ら, 1971)であろう が,本稿では,ウラジロガシ亜群集とガクウツギ亜群集は別として,アカガシーミヤマシキミ 群集にモミがかぶさった群落に対してだけモミーシキミ群集アカガシ亜群集とし,モミを欠く 群落にまで拡大適用していない。

以上の記述は,すべて九州西部から得た植生資料を中心に行なわれたものである。しかし,

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植物社会学は,同類群落および隣接群落について広域な視点を持たねばならない(伊藤,1973a)(

この視点に立つならば,本稿で報告した諸事実は,同類群落の分布の周辺地域で見られる例外 的なことかも知れない。事実,本稿のモミ林は,種としても群落としても分布の西限に当り, 宮脇ら(1971)によって群集標徴種とされている種のうち,アセビとヒイラギは分布せず,ツ ガは対馬にはない。裏日本側へのモミ林の北上分布は島根半島(福嶋・鈴木, 1972)と随岐 (岡, 1968)まで及ぶが,対馬のモミ林はその限界地にも近い。このような周辺地域のモミ林 であるがゆえに,全国的視点に立てば,特殊な組成をもつ群落となっている可能性はある。し かし,一方では,雲霧の発生しやすい山地に典型的に発達するアカガシーミヤマシキミ群集と その領域内での浅い土壌という立地のモミ林は,その典型地域(あるいは典型立地)から離れ

るにつれてアカガシの勢力が減じモミの成立領域が拡大するので,全国的視野に立ってみる と,アカガシーミヤマシキミ群集が少数例の群落となる可能性も検討の余地を残す。

宮脇ら(1971)は,広域的にかつ詳細に,既発表・未発表の隣接諸群落資料を同時に扱って ヤブツバキクラスの分類体系をたてている。その綜合常在皮表(同書, Table 32)に本稿の組 成表をくみ入れてみるならば,モミーシキミ群集は相互にほぼ対応するのは当然であるが,本 稿のアカガシーミヤマシキミ群集スダシイ亜群集はウラジロガシーイスノキ群集の中に,同ハイ

ノキ亜群集はモミーシキミ群集の中に埋没してしまうことは明らかである。したがって群落の 名称としては宮脇ら(1971)のを採用することは不可能ではない。にもかかわらずTablelお よび2の組成上の事実に立ち, Fig.4のように要約される種の分布および群落相互の関係の実 体を正しく伝達する手段として,モミーシキミ群集の名称を狭義に用い,かつアカガシーミヤマ シキミ群集を独立した群集名として本稿では用いた。

a

九州西部のアカガシ林およびモミ林について13地区から52資料を得て研究した結果, 2群集 と1群落を識別することができた。次の通りである。

1.アカガシーミヤマシキミ群集:九州本島では海抜450m以上,対馬では300m以上950mま での山地の斜面および広い尾根上に発達する。スダシイ亜群集は海抜範囲の下半部に,ハイノ キ亜群集は上半部に成立する。

2.モミーシキミ群集:全国的視野に立てば,アセビ・ヒイラギを欠く。ウラジロガシ亜群 集は,低海抜地の河川屈曲部または合流部の平坦地または緩傾斜地に発達する。アカガシ亜群 集は,アカガシ林域の山地の急斜面や尾根上に成立し,組成上はアカガシーミヤマシキミ群集 にモミとカヤが加った形の群落である。ガクウツギ亜群集は雲仙の海抜950‑l,100mに発達す る。ヤブツバキクラス域と夏緑林域の移行帯に成立し,多くの落葉樹をふくむ。

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引用文献

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高知.

(17)

1. Interior of Skimmio‑Cyclobalanopsietum acutae. (Loc. 5. Kunimi‑dake)

2. General view of Skimmio‑Cyclobalanopsietum acutae on windy mountain slope. (Loc.

7, Tatera‑yama)

3. Subassociation of Quercus salicina, Illicio‑Abietum firmae, found on shallow soils along a stream. (Loc. 12, Kami‑tsushima)

4. Bird‑eye view of Subassoc. of Hydrangea scandens, Illicio‑Abietum firmae. (Loc. 1, Unzen)

Table 3. Synoptic table of floristic composition of Quercus (Cyclobalanopsis) acuta‑ and Abies /trwa‑dominated forests in western Kyushu, Japan. The fifth column is for the Abies forest of the Taradake region (Itow, 1973 b)
Fig. 4. Schematic illustration of species distribution and community‑habitat relationships on mid‑elevation moun‑ tain slopes and ridges in western Kyushu, Japan

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