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松永 大樹 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 まつなが たいき

松永 大樹

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第

1864

学位授与の日付

令和

3

3

16

学位授与の要件

学位規則第

4

条第

1

項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

Magnetic resonance imaging assessment of abductor muscles shortly after curved periacetabular osteotomy

(MRI 画像による寛骨臼回転骨切り術後早期の外転筋群評価)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

吉満 研吾

(副 査) 福岡大学 教授

東 登志夫

福岡大学 准教授

白石 武史

内 容 の 要 旨

【目的】

臼蓋形成不全症は二次性変形性股関節症の原因になると知られている。壮年期までの症 状 を 有 す る 臼 蓋 形 成 不 全 症 に 対 し て の 関 節 温 存 手 術 と し て 様 々 な 寛 骨 臼 骨 切 り 術 (periacetabular osteotomy; PAO)が行われており、Bernese PAO、curved PAO (CPO)、

University of Colorado (CU) PAO 、 rotational acetabular osteotomy (RAO) 、 transposition osteotomy of the acetabulum (TOA)などが挙げられ、良好な成績が報告 されている。

これらの骨切り術の中でも、RAOとTOAは、側方アプローチによって行われ、腸骨の骨切 りを可能にするために骨盤から殿筋を剥離する必要がある。側方アプローチは骨切り部位 の良好な視野を確保し、正確な骨片回転を可能にするが、外転筋に引き起こされる直接的 な筋損傷について懸念が生じる。

一方、CPOとBernese PAOは、前方アプローチで行うため、殿筋を骨盤から剥離する必要 はなく、外転筋への直接的な影響が最小限であると考えられている。ただし、前方アプロ ーチで行ったPAO後早期に外転筋の状態を評価した報告はない。

この研究の目的は、MRIを使用して、CPO後(術後1週間および3か月)に外転筋の状態と臨 床的影響について評価することである。

【対象と方法】

2017 年 10 月から 2019 年 7 月に当院で CPO を行った 38 例 38 関節を対象とした。すべ ての対象は、CPO 術後 1 週と 3 か月で MRI 検査を行った。MRI 検査における外転筋の状態 は、Chan らの基準を使用して評価を行い、Grade 0(normal) は損傷ないもの、Grade

Ⅰ(strain/edema) は軽い浮腫や筋線維の損傷や不整がないもの、Grade Ⅱ(partial tear) は筋線維の不整を認めるもの、Grade Ⅲ(complete tear)は筋線維の完全断裂があるもの とした。

臨床評価項目として年齢、BMI、臨床スコア (JOA score、Harris hip score)を調査し

(2)

た。

MRI 検査は 1.5T T2 強調画像を用いて、臼蓋上縁から 20mm 近位で小・中・大殿筋の信 号変化について調べた。また、術前・術後 1 週の単純 X 線正面像を用い、lateral centre- edge angle (LCEA)、acetabular roof obliquity (ARO)、術前後におけるそれぞれの変化 量について調査した。

統計学的手法として Mann−Whitney U test を用いて患者データ、臨床スコアについて術 後 1 週と術後 3 か月時の Grade 間で比較した。

【結果】

CPO 術後 1 週において、大殿筋は全例で異常を認めなかった。中殿筋は 84.2%(32/38 関節)で異常を示さず、Grade I は 15.8%(6/38 股関節)で認めた。中殿筋の Grade 0 と Grade I 間で年齢、BMI、術前及び術後の LCEA・LCEA 変化量・ARO・ARO 変化量に有意差は 認めなかった。小殿筋は Grade I は 55.3%(21/38 関節)、Grade Ⅱは 44.7%(17/38 関 節)を認めた。

CPO 術後 3 か月において、大殿筋と中殿筋は全例で異常を認めなかったのに対し、小殿 筋は 47.4%(18/38 関節)で Grade I の変化を認めた。小殿筋の Grade 0 と Grade I 間で 年齢、BMI、臨床スコア (JOA スコア、Harris hip score)に有意差は認めなかった。

【結論】

CPO 術後 1 週では小殿筋と中殿筋の両方で異常が観察されたが、CPO 術後 3 か月後では、

小殿筋でのみ 47.4%の症例で異常を示した。しかし、これらの外転筋の異常は、術後の臨 床スコアに影響はなかった。これらの結果より、前方アプローチによる寛骨臼骨切り術が 外転筋に与える影響が最小限であり、術後の機能回復を有利にすることを示唆するものと 考える。

審査の結果の要旨

本論文は、寛骨臼形成不全に対する骨盤骨切り術である Curved Periacetabular Osteotomy(CPO)術後の外転筋群に着目し、術後MRIを用いて外転筋の状態を評価した研究 である。

側方アプローチによって行われる骨盤骨切り術は、骨盤から殿筋を剥離する必要があ るが、CPOは、前方アプローチで行うため、殿筋を骨盤から剥離する必要はなく、外転筋 への直接的な影響が最小限であると考えられている。しかし、前方アプローチで行った 骨盤骨切り後早期に外転筋の状態を評価した報告はない。

本論文でCPOは外転筋への影響を最小限に抑えることができることが示唆された。

本論文の斬新さ、重要性、研究方法の正確性、表現の明確さ、審査委員との質疑応答

は 以下の通りである。

(3)

1. 斬新さ

寛骨臼回転骨切り術(CPO)は、前方アプローチで行うため、殿筋を骨盤から剥離する必 要はなく、外転筋への直接的な影響が最小限であると考えられているが、術後早期に外転 筋の状態を画像評価した報告はなく、今回が初めてである。

2. 重要性

前方アプローチによる寛骨臼回転骨切り術(CPO)が外転筋に与える影響が最小限である ことを示唆することができた。

3. 研究方法の正確性

MRI 検査における Grade 評価に対する検者内・検者間一致度はいずれも高値であること から、正確な検討がなされていると思われる。

4. 表現の明確さ

明瞭な英文で簡潔に表記されており、論旨も的確である。本論文はアメリカ股関節膝関 節整形外科学会の official journal である、 The Journal of Arthroplasty(impact factor 3.709) に受理されている。専門的用語も適切に使用されている。

5. 主な質疑応答

Q:臼蓋形成不全で手術になる方は若年者が多いと思います。高齢になると疾患概念が変 わるものでしょうか?

A:この疾患自体が年齢で進行するものではありません。年齢を重ねることで変形性股関 節症を進行させる要因にはなりますので、変形性股関節症の進行と年齢を考慮して骨 切り術ではなく、人工股関節置換術を選択することはあります。

Q:外側アプローチと前方アプローチは歴史的にどちらの方が行われていますか?

A:施設によって行なっている方法が違っており、今でも外側アプローチで行っている施 設もあります。また、他の低侵襲手技を行なっている施設もあります。

Q:前方アプローチで低侵襲というのはわかりましたが、逆に弱点はありますか?

A:外側アプローチによって行われる骨盤骨切り術は、骨切りを直視下で行うことができ るという利点がありますが、骨盤から殿筋を剥離する必要があります。一方、CPO は、

前方アプローチで行うため、殿筋を骨盤から剥離する必要はなく、外転筋への直接的

な影響が最小限であることが利点と考えられていますが、弱点として坐骨の骨切りの

際に直視下で行えないことがありますが、透視下で行うことでリスクを軽減できると

考えます。

(4)

Q:術後 1 週と術後 3 ヶ月で MRI 撮影した意義はありますか?

A:術後 1 週に行った理由としては CPO の後療法として術後 2 週目より荷重が開始になり ます。そのため、筋肉に対する体重負荷の影響を除外するためとしました。術後 3 ヶ 月の理由としては就労やスポーツ活動などの交絡因子の影響を除外するためとしま した。

Q:術後 1 週時点は今まで股関節にかかってきた負荷も判断するためですか?

A:本研究では術前 MRI を評価しておらず、術前からかかってきた負荷については評価で きておりません。あくまで術後の手術手技による影響がどれほどかを評価するための ものとしました。ですが、術前から何かしらの変化があった可能性は否定できません。

Q:術後 3 ヶ月の MRI で Grade 0 と Grade 1 で群間比較をされていますが、その意義は?

A:術後 3 ヶ月で小臀筋の信号変化が残存している症例がありましたので、その背景に何 かしら有意差が出るものがないかということ、またあれば臨床に役立てることができ ると考え、比較を行いました。

Q:結論で CPO は非常に優れた手術であるとしていますが、他のアプローチとの比較も必 要と思われますが、どう考えますか?

A:術後早期に MRI を行なって評価した論文がなく、比較は行えていませんので、本研究 だけで他のアプローチより優れていると断言できるものではありません。ですが、外 側アプローチでは臀筋の剥離が必要であり、前方アプローチよりは侵襲が大きいとは 考えます。

Q:この MRI を用いた研究で得られた知見はありますか?

A:以前は外転筋には影響ないと言われていましたが、術後 1 週で中臀筋に 15%程度の 信号変化がありましたので、それを証明したことにもなります。また、術後早期の信 号変化は 3 ヶ月で改善すること、残存する信号変化は臨床成績に影響しなかったこと がわかりました。

Q:術前の MRI があるともっとしっかりとした評価になると考えます。

A:ご指摘の通り、術前からの変化まで評価することが重要と考えます。今後の課題とさ せていただきます。

Q:今回 T2 強調像を用いていますが、それだと脂肪組織なども高信号となり、評価が難 しくなると考えます。できれば STIR 法などを用いた方がいいと思います。

A:ご指摘ありがとうございます。今後検討する上で参考にさせて頂きます。

Q:MRI で評価した断面ですが、筋繊維に沿った撮影方向が望ましいと考えます。大臀筋 は横断面でも評価可能と考えますが、中臀筋、小臀筋は縦方向の繊維になると思いま すので、撮影方向の検討が有用かと考えます。

A:ご指摘ありがとうございます。今後検討する上で参考にさせて頂きます。

(5)

Q:外側アポローチと前方アプローチで在院日数とか社会復帰などの比較はあります か?

A:同施設で比較した報告はありませんが、各論文から参照しても大きな差はありません。

Q:臀筋群への影響は少ないと思いますが、骨盤内側への侵襲は外側アプローチより大き いのではないかと考えます。内閉鎖筋や腸腰筋へのダメージは大きいのではないでし ょうか?

A:ご指摘のように CPO は前方アプローチで、骨盤内側からアプローチしますので、内側 に位置する腸腰筋へのダメージは外側よりも大きいと考えます。そのため、術後機能 改善ということでは股関節の外旋なども評価する必要があると考えます。今後の課題 として検討させて頂きます。

本論文は、以上の内容の斬新さ、重要性、研究方法の正確性、表現の明確さ、及び質疑

応答の結果を踏まえ、審査員で討議の結果、学位論文に値すると評価された。

参照

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