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3. 立体音響システム概要

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Academic year: 2021

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修士論文要旨(2011年度)

VR 技術に基づく視覚・聴覚情報を用いた 対話型道路交通騒音評価システムの構築

Development of the interactive road traffic noise evaluation system using visual and auditory information based on VR technology.

土木工学専攻 20号 柴田 啓輔 Keisuke SHIBATA

1. はじめに

道路交通シミュレーションは,幾何音響理論および波 動音響理論に大別され,道路計画や設計に必要不可欠と なっている.シミュレーション結果は,CGを用いて可 視化され提示されるのが一般的であるが,CGでは音の 大きさを直観的に把握・理解することは困難である.そ こで既往の研究において,幾何音響理論を用いた没入型 投影技術に基づいた道路交通騒音評価システムの構築

1)が行われた.しかし,既往のシステムでは,適用車種

は普通自動車1台のみであり,また道路環境も平面道路 部のみの走行に適用可能であり,システムの適用性に課 題があった.また,3 次元的な音の到来方向(指向性)

の考慮もなされていなかった.

 そこで本研究では,従来のシステムの適用性の向上,

及び指向性を考慮した立体音響場の構築について実施し た.適用性の向上性に関しては,普通乗用車に加え,四 車種(小型貨物車・中型車・大型車・二輪車)のシミュ レーションおよび,それらが同時に複数台走る混合交通 のシミュレーションを可能とし,周辺構造物としても平 面部に加え,切土,盛土,高架橋部の走行を可能とした.

また,指向性に関しては,上述の評価システムをベース に平面道路,有限遮音壁に関して立体音響システムの構 築を行った.

2. システム概要

本システムは,没入型投影技術に基づき構築したVR 空間内で,道路交通騒音の予測結果の可視化および可聴 化を行い,視覚情報と聴覚情報の二種類の情報を提示す るものである.本システムは図−1に示すように,移動 する自動車のCG映像と観察者の位置関係に対応した音 圧レベルを音として可聴化する機能(図−1(a))と,

時間を固定して,その時点での音圧レベルの空間的広が りを等値面として可視化する機能(図−1(b))から構 成される.以下,図−2に示すフローチャートに沿って 本システムの処理工程の詳細について記す.

2.1 Pre-Process

(1)形状データの作成

 道路周辺に建設する遮音壁,高架橋,建物および自動 車(小型貨物車,中型車,大型車など)の形状データを 作成する.なお本システムでは,三次元CGモデリン

図– 1 システムの概要図

図– 2 フローチャート

グソフト(AutoCAD:Autodeskおよび3dsMax: Auto desk)を用いてこれらの形状データの作成を行った.

(2)メッシュデータの入力

 騒音レベルの等値面の三次元表示を行うため,必要と なる道路周辺に生成したメッシュデータの入力を行う.

節点数67,626,要素数375,000の四面体のメッシュデー タ(道路横断面の水平方向2m,鉛直方向1.2m,奥行き 方向2m)を入力した.

(3)計算条件の設定

 道路交通騒音レベルの算出を行う際に必要な入力デー タは,自動車の位置情報,走行条件,道路の周辺環境で ある.受音点の位置情報はVR装置に備わっているト ラッキング装置により逐次計算されている.

2.2 Main-Process

本システムでは日本音響学会が作成した道路交通騒 音予測モデルのASJ RTN-Model20082)を用いて道路

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図– 3 シミュレーション可能な構造物例

交通騒音レベルを算出している.以下,本研究での計算 手法について詳細を記す.音源のA特性パワーレベル LW Aは次式で与えられる.

LW A=a+blog10V +C (1)

ここで係数aは車種別に与えられる係数であり,それぞ れ,普通乗用車46.4,二輪車49.6,小型貨物車47.6,中 型車51.5,大型車54.4である.bは速度依存性を表す係 数,V は走行速度[km/h],cは各種要因による補正項で ある.なお複数の伝播計算を考慮する必要がある場合,

音圧レベルLAは次式で計算する.

LA= 10log

iXmax

LA,i

10LA,i10 (2)

ここでimaxは行った伝播計算の数,LA,iは伝播計算後 の各音圧レベルの値である.各係数,減衰を考慮した伝 播計算後の音圧レベルLA,各地形での伝播計算手法,

およびドップラー効果の考慮の詳細については参考文献 1),2)を参照されたい.本システムでシュミレーショ ン可能な構造物・地形は図−3に示すとおりである.

2.3  Post-Process

(1)CGの提示

 自動車および道路周辺のCG映像をVR空間に提示 する.なお提示するCG映像は,コントローラを用いて 入力した計算条件に応じて対話的に変化する.また,可 聴化機能を選択した場合には,自動車位置は音による聴 覚情報と共にアニメーションとして提示される.

(2)道路交通騒音レベルの可聴化

 本システムでは可聴化機能を選択した場合,音響プロ グラミングソフトMAX/MSPを用いて予測結果の可聴 化を行う.可聴化に際して利用するスピーカーの位置座 標は,図−4に示すとおりである.

(3)道路交通騒音レベルの可視化

 等値面可視化機能では,計算条件の設定で指定した等

図– 4 スピーカ配置

図– 5 回折減衰計算のための仮想音源の設定

値音圧レベルの等値面を描画することにより,道路交通 騒音の可視化を行う.

3. 立体音響システム概要

立体音響とは,前章までで述べた交通シミュレーショ ン結果を,観測者と音源の位置関係や音の到来方向,距 離,拡がりを考慮して3次元的な音環境を再現するこ とを指す.エネルギーベースの計算法であるASJモデ ルは音の到来方向などは考慮されないため,音響計算モ デルの修正が必要となる.ここでは,遮音壁等の遮音効 果に着目しシステムの構築を行った.走行車が遮音壁の 陰に入った場合,自動車から発生する音は観測者に直接 届かず,遮音壁端部から回折して到来する.すなわち,

実際の音源位置と音の到来方向にある見掛けの音源の 位置は異なる.そこで,本研究では図−5に示すよう に回折端部の数に応じて仮想音源を設定し,各仮想音源 からの寄与を足し合わせて観測点での音を再現するこ とにした.この方法により,回折減衰量計算はこれまで 採用してきたASJモデルに準拠しつつ,音の到来方向 や音の到達時間の遅れを考慮したシミュレーションが 可能となる.上述の計算モデルに基づく計算結果の立体 音響化にはAmbisonicsと呼ばれる手法を採用した3). Ambisonicsとは,観測点に到来する音を球面調和解析 に基づいて方向別に分解し,分解された音を再生系に合 わせて再構成して提示する手法である.具体的には,音 源(仮想音源を含む),観測者の位置情報,再生室内の スピーカの配置・数,自動車走行音データに基づいて,

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図– 6 適用性の向上

図– 7 可視化機能適用例

各スピーカから出力する音響信号を生成した.なお,最 終的な出力信号の生成には,専用ハードウェア(A & G 社の立体音響プロセッサX–Spat boX)を用いた.

4. 本システム適用例

本報告で構築した適用性,立体音響場の両システムの 適用例に関して記す.

4.1 システムの適用性向上

本研究では,システムの適用性の向上として,道路環 境として,平面道路部に加えて,図−6に示す高架橋部,

盛土部,切土部の走行を可能とした.図−7は,その際 のある時刻レベルにおける音圧分布の等値面(等値面の 道路交通騒音レベルは50,55,60dB)の結果を示した ものである.なお,走行条件,路面条件は,車種:普通 乗用車,自動車の速度:50km/h,舗装の種類:排水性 舗装,舗装後の経過年数:0 年である.図より,反射・

回折等により,騒音の伝播する範囲が変化している様子 が確認できる.また,適用性の向上として,複数の車種

(小型貨物車・中型車・大型車・二輪車)の混合交通を 可能とした.図−8は切土部を走行する混合交通に対し て,本システムを適用している様子である.なお,可聴 化に際しては,計算結果と提示する音の音圧レベルが一 致している必要があり,計算結果と計測結果を一致させ るべく,騒音計(小野測器:LA-2560)を用い,キャリ ブレーションを行なっている.図−9より,計算結果と 計測結果はよい一致を示していることが分かる.

4.2 立体音響場の構築

指向性を考慮した立体音響場を実現するため,図−

10に示す遮音壁(幅W,高さH)がある場合について 構築を行った.音源(自動車)は地盤面y= 0上をx方 向に速度vで移動するとし,壁の厚みは無視できるもの とする.また,観測点から遮音壁までの距離はL1,遮音 壁から音源までの最短距離はL2である.図−10の下 段に実際に用いた値の一覧を示す.自動車が遮音壁の陰 にある時,回折音は遮音壁の上方および側方から到来す るものとする.

図– 8 本システム可聴化機能を実際に利用している様子

図– 9 ユニットパターン

図– 10 立体音響適用例

図– 11 音源信号の波形とパワースペクトル 図−11に実際に音源信号として用いた自動車走行音 の波形とパワースペクトルを示す.これは実際の自動車

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図– 12 自動車通過時に前面スピーカーから再生される信号

図– 13 VR装置中央における観測波形

走行の発生音を録音したものである.図−12は,図−

4に示すVR装置上部にある3つの前面スピーカ(FL, CT, FR)から自動車が遮音壁近傍を通過する際に再生 される信号を表す.Ambisonics理論を用いた本システ ムにより,自動車の移動に応じて各スピーカから再生さ れる信号が変化する様子が確認できる.まず自動車が 近づく時には左前スピーカ(FL)からの再生音が卓越 し,次に自動車が遮音壁の陰になる時には正面スピー カ(CT)からも再生され,最後に自動車が去る際には 右前スピーカ(FR)からの再生音が卓越するようにな る.図−13は,図−12と同条件においてVR装置中 央位置(高さ1.5 m)で観測される音圧波形とパワース ペクトルを表す.これはマイクロホンを用いて収録した 結果,すなわち最大7つのスピーカからの再生音の合算 値として得られたものである.VR装置周辺は空調ノイ ズ等の暗騒音は存在するが,十分なSN比を確保した上 で計測を行った.図−13上段から,自動車が遮音壁の 陰になる約7.0〜8.0 s の間は回折減衰の影響が見られ る.また下段は遮音壁の影響を受ける/受けない場合の パワースペクトルを表す.約100HZ以上の周波数で減 衰の大きいことが分かる.

図– 14 アンケート結果

 音環境の再現性の善し悪しは,室内壁,VR装置スク リーンなどからの反射音やPCのファンノイズなどの暗 騒音などの影響を受ける.

VRと立体音響の連携を考える場合,音環境の外乱要 因を完全に取り除くのは難しいが,VR 装置内における 立体音響の再現性を評価することは重要である.そこ で,シミュレーション結果と実際に知覚される音環境の 差異に関する被験者実験を行い,立体音響の再現性の評 価を行った.被験者は当大学に在学する正常な聴力を有 する学生男女6名である.VR装置内で各被験者に種々 のシミュレーション結果を提示し,各条件における音像 の定位方向をアンケート形式で回答してもらった.

その結果の一例を図−14に示す.条件は図−11に 示す音信号を移動する音源とし,音の減衰により遮音壁 の存在する方向についての回答結果である.その結果,

個人差により多少のばらつきは見られたが,概ねの遮音 壁の位置は音のみで認識できることが確認できた.

5. おわりに

本論文では,既往のシステムの適用性の向上と立体音 響場の構築を行った.その結果,以下の結論を得た.

普通乗用車に加え,小型貨物車・中型車・大型車・

二輪車のシミュレーションおよび,その混合交通シ ミュレーションが可能となった.    

周辺構造物を増やすことで,より複雑な道路環境下 でのシミュレーションが可能となった.    

立体音響場を構築することで,シュミレーション結 果の3次元的な音の提示が可能となった.

今後は,より複雑な道路構造や道路周辺環境に対して 立体音響場の構築を行う予定である.

参考文献

1) 田近伸二,樫山和男,志村幸行:VR技術を用いた対話型道 路交通騒音評価システムの構築,応用力学論文集,Vol.13, pp.231-240, 2010年8月  

2) 日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会:道路交通騒音 の予測モデル ASJ RTN-Model 2008 ,日本音響学会誌,

Vol65,(2009),pp.179-232

3) Ward, D.B. and Abhayapala, T.D.: Reproduction of a plane-wave sound field using an array of loudspeakers, Speech and Audio Processing, IEEE Transactions on, vol.9 pp.697–707, 2001

参照

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