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学校教室の音響環境改善に関する一考察 ー教室内の吸音処理による教室間遮音性能の改善効果ー

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Academic year: 2021

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U.D.C 534.28

学校教室の音環境改善に関する一考察

-教室内の吸音処理による教室間遮音性能の改善効果-

大森 恵

井上 諭

* 要 約: 教育を効果的に行うためには教室の音環境を良好に保つ必要があり、日本建築学会により教室が備えるべき音響性能の推奨値 が示されている。しかし、その推奨性能は必ずしも反映されておらず、学校における音環境の障害事例は少なくない。本報で示 す学校は、教室が残響過多の状態であったため騒音伝搬の問題が発生したケースである。 この問題に対して、遮音性能改善対策としての吸音処理の有効性を検証する必要があると判断したため、本報では当該事例を 取り上げて考察した。その結果、以下の様な知見を得た。 (1) 室内の響きの長さが適切になったことにより、教室間の遮音性能は1ランク(5dB 程度)改善した。 (2) 各測定点における音圧レベルの低減量を確認した結果、音源からの伝搬距離が長く、直接音が到達しにくい測定点ほど伝搬 距離によって低減効果が得られる。 (3) 遮音性能低下の原因が主に残響過多に起因している場合には、吸音処理は有効な遮音性能改善対策となる。しかし、測定点 ごとの音圧レベルのばらつきが大きくなるため、これを解消するには界壁自体の気密性の向上や質量の増大などが必要であ る。 キーワード: 音環境,吸音,遮音,距離減衰,学校 目 次: 1.はじめに 4.室間音圧レベル差の測定値と理論値の比較 2.測定概要 5.騒音の伝搬距離による音圧レベル減衰量 3.吸音による遮音性能の改善効果 6.まとめ 1. はじめに 教育・学習活動を効果的に行うためには、音声によ るコミュニケーションが支障なく行われることや、落 ち着いた学習環境を確保することが求められる。日本 建築学会はその観点より、「学校施設の音環境保全基 準・設計指針」1)を制定し、室目的別に学校施設が備え るべき音響性能の推奨値を示している。ところが、こ の様な推奨値が示されているにも係わらず、既存の施 設には反映されていない場合もあり、学校における音 環境の障害事例は少なくない。 本報で取り上げた学校は、残響過多の状態であった ため、一方の室より発生する騒音が他方の教室の授業 を妨げるという問題が発生したケースである。通常、 遮音性能を改善するためには、界壁の気密性の向上や 質量を上げるなどの対策を講じるのが一般的である。 しかし、等価吸音面積の増加によって遮音性能が向上 した事例 2)も報告されているため、吸音による音環境 への影響を詳細に把握し、吸音処理が遮音性能改善対 策として有効であるかを検証する必要があると考えら れる。 本報では、当該学校で発生した騒音問題への対応事 例を取り上げ、遮音性能改善対策としての吸音処理の 有効性について考察する。 2. 測定概要 2.1 評価対象室の概要 測定の対象とした教室の配置図、及び評価対象の組 合せを図 1 に示す。各教室の配置形態は一般的な中廊 下型であり、教室と中廊下の境界は、引違い扉と窓に よって構成された鋼製パーティション(天井下端止め) によって仕切られている。 図 1 測定対象教室の配置図および評価対象の組合せ 73 00 23 00 70 00 10000 10000 教室2 教室1 教室3 教室4 教 卓 教 卓 教 卓 教 卓 No.1 No.2 No.3 No.4 No.7 No.6 中廊下 No.5 No.8 音源室 受音室 :測定No. No.1~8 評価対象の組合せ : 扉 : 中廊下窓 : 外窓 *環境技術開発部 音響・電磁環境グループ U.D.C 534.28

学校教室の音環境改善に関する一考察

-教室内の吸音処理による教室間遮音性能の改善効果-

大森  恵

 井上  諭

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0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.4 No.8    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 図 4 室間音圧レベル差改善量の測定値と理論値の差 図 2 吸音処理前後の残響時間(教室 3) (2)No.2,6:斜めに配置 0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.1 No.7    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.3 No.5    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 図 3 吸音処理前後の空気音遮断性能 (1)No.1,7:隣に配置 (2)No.2,6:斜めに配置 (3)No.3,5:対向に配置 (4)No.4,8:教室-中廊下間 0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.2 No.6    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 S1 S5 S4 S3 S2 R5 R1 R2 R3 R4 音源 S5 S1 S2 S3 S4 音源 R1 R5 R4 R3 R2 No.5 教室2 教室1 教室3 教室4 教 卓 教 卓 教 卓 教 卓 No.3 中廊下 S1 S5 S4 S3 S2 R5 R1 R2 R3 R4 *音源室が教室3の場合はS⇔R 音源 音源 教室2 教室1 教室3 教室4 教 卓 教 卓 教 卓 教 卓 No.6 中廊下 No.2 R2 R4 R1 R3 R5 S4 S2 S5 S3 S1 S2 S4 S1 S3 S5 R4 R2 R5 R3 R1 音源 音源 教室2 教室1 教室3 教室4 教 卓 教 卓 教 卓 教 卓 中廊下 No.1 No.7 図 5 評価対象の組合せ別の測定点詳細 (1)No.1,7:隣に配置 (3)No.3,5:対向に配置 0.1 1 10 63 125 250 500 1000 2000 4000 8000 残 響 時 間 [s ] オクターブ帯域中心周波数[Hz] 吸音処理前 吸音処理後 -5 0 5 10 125 250 500 1000 2000 4000 1000, 2000Hz 平均 dB(A) 改 善量の差(実測値-理論値) [dB ] オクターブ帯域中心周波数[Hz] No.1 No.7 No.2 No.6 No.3 No.5 �1� �2� � � ���10�2 評価対象となる教室同士の組合せは、位置関係ごと に 3 種類に分類できる。そのため本検討では、以下の (1)~(4) に示す教室同士の組合せ、及び教室と中廊下 間の 4 種類に分類して性能を評価する。 吸音処理前後における内装の概要を表 1 に示す。吸 音処理前の教室の内装は、全て反射性の材料で構成さ れていたことによって残響過多の状態となり、騒音伝 搬の問題が発生したと考えられる。よって、5dB 程度の 改善効果を見込み、天井に岩綿吸音板、後壁には有孔 板を施工し、同時に鋼製パーティションの引違い扉や 窓の建付に対して簡易な調整を施した。 2.2 測定内容と方法 室の遮音性能を評価するにあたっては、隣接する教 室間の空気音遮断性能と残響時間を計測した。 空気音遮断性能は、「JIS A 1417(2000):建築物の空 気音遮断性能の測定方法」に準拠して計測し、日本建 学会編「建築物の遮音性能基準」に基づく室間音圧レ ベル差 D 値によって評価した。 残響時間は、教室内の教卓の位置に設置した無指向 性スピーカからスイープ信号を発生させ、普通騒音計 を用いて集音し、相関法によってインパルス応答を求 めた。その後、インパルス応答を解析することにより 残響時間を算出した。 3. 吸音による遮音性能の改善効果 吸音による空気音遮断性能の改善効果を検証するた め、吸音処理前後の音響性能を比較した。教室 3 にお ける吸音処理前後の残響時間を図 2 に示す。吸音処理 前の残響時間は、500,1000Hz 帯域平均で 1.7 秒であっ たが、吸音処理後には日本建築学会の推奨値 1)である 0.6 秒まで改善した。 吸音処理前後の室間音圧レベル差を、評価対象の組 合せ別に図 3(1)~(4)に示す。吸音処理前後を比較する と、教室と中廊下間の遮音性能には大きな変化はなか ったが、教室間では全ての組合せで 1 ランクの改善が 見られた。周波数別に見ると、吸音処理前の遮音性能 は全ての組合せにおいて 1000,2000Hz 帯域によって決 定 し て い る 。 こ れ に 対 し て 、 吸 音 処 理 後 で は 、 1000,2000Hz 帯域において最大で 8dB、平均でも 6dB 程 度の大きな改善が見られた。これは、図 3(4)より中廊 下と教室の遮音性能に変化がなかったことから、吸音 によって受音室内の中高音域の残響時間が他の帯域に 比べて改善した(図 2 参照)ためと推測される。 従って、吸音処理前の性能を決定していた周波数帯 域に吸音処理の効果が表れたため、結果として D 値が 1 ラ ン ク 改 善 し た こ と が 明 ら か に な っ た 。 し か し 、 2000Hz は吸音処理後においても遮音性能を決定する周 波数であり、性能が低下した要因としては、引違い扉 や窓、および、それらの隙間からの音漏れの影響によ る騒音の伝搬が考えられる。 4. 室間音圧レベル差の測定値と理論値の比較 吸音処理前後の測定値を比較した結果、吸音処理後 の教室間の性能では、想定した平均吸音率の差を利用 した簡易計算による予測改善量である、5dB より大きな 効果が得られたことが分かった。 この原因を特定することを目的として、図 2 に示し た残響時間の測定値を基に、下記の理論式を用いて改 修後における室間音圧レベル差を算出した。室間音圧 レベル差改善量の測定値と理論値の差を図 4 に示す。 表 1 吸音処理前後の教室内の内装仕様 場所 部位 吸音処理前 吸音処理後 教室内 床 長尺塩ビシート貼 同左 天井 RC 躯体リシン吹付 岩綿吸音板 t9mm(石こうボード捨貼) 壁(中廊下側) 鋼製パーティション(窓ガラス付) 同左 壁(後壁) 石こうボード中空二重壁 H=900 以上、有孔ベニア板 t5mm(φ8mm、@25mm) 内部:グラスウール 20K 充填(AS 30mm) 壁(上記以外) 窓 RC 躯体塗装仕上 等 同左 中廊下 天井 岩綿吸音板 t9mm(石こうボ-ド捨貼) 同左 測定時は、教室内には机や椅子、教卓等の什器が設置されている状態であった *網掛部:吸音処理部位 ・・・理論式3) L1:音源室の音圧レベル L2:受音室の音圧レベル R:音響透過損失 A2:受音室の等価吸音面積 F:間仕切壁の面積 (1) No.1,7:隣に配置 (2) No.2,6:斜めに配置 (3) No.3,5:対向に配置 (4) No.4,8:教室-中廊下間

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0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.4 No.8    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 図 4 室間音圧レベル差改善量の測定値と理論値の差 図 2 吸音処理前後の残響時間(教室 3) (2)No.2,6:斜めに配置 0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.1 No.7    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.3 No.5    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 図 3 吸音処理前後の空気音遮断性能 (1)No.1,7:隣に配置 (2)No.2,6:斜めに配置 (3)No.3,5:対向に配置 (4)No.4,8:教室-中廊下間 0 10 20 30 40 50 60 70 125 250 500 1000 2000 4000 オクターブ帯域中心周波数[Hz] 室 間 音 圧 レ ベ ル 差 [d B ] No.2 No.6    吸音処理前    吸音処理後 D-15 D-20 D-25 D-30-II D-30-I D-30 D-35 D-40 D-45 S1 S5 S4 S3 S2 R5 R1 R2 R3 R4 音源 S5 S1 S2 S3 S4 音源 R1 R5 R4 R3 R2 No.5 教室2 教室1 教室3 教室4 教 卓 教 卓 教 卓 教 卓 No.3 中廊下 S1 S5 S4 S3 S2 R5 R1 R2 R3 R4 *音源室が教室3の場合はS⇔R 音源 音源 教室2 教室1 教室3 教室4 教 卓 教 卓 教 卓 教 卓 No.6 中廊下 No.2 R2 R4 R1 R3 R5 S4 S2 S5 S3 S1 S2 S4 S1 S3 S5 R4 R2 R5 R3 R1 音源 音源 教室2 教室1 教室3 教室4 教 卓 教 卓 教 卓 教 卓 中廊下 No.1 No.7 図 5 評価対象の組合せ別の測定点詳細 (1)No.1,7:隣に配置 (3)No.3,5:対向に配置 0.1 1 10 63 125 250 500 1000 2000 4000 8000 残 響 時 間 [s ] オクターブ帯域中心周波数[Hz] 吸音処理前 吸音処理後 -5 0 5 10 125 250 500 1000 2000 4000 1000, 2000Hz 平均 dB(A) 改 善量の差(実測値-理論値) [dB ] オクターブ帯域中心周波数[Hz] No.1 No.7 No.2 No.6 No.3 No.5

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音圧レベル低減量は単純に比較できる。そこで、吸音 処理による音圧レベルの距離減衰率の変化を定量的に 把握するため、吸音処理後の各測定点における音圧レ ベルの差が大きい No.1,7(隣に配置)を対象として、 吸音処理前後を比較した。 音圧レベルの距離減衰率を算出するにあたり、各測 定点までの伝搬距離は、受音室の音源室側の引違い扉 を仮想の面音源として、扉中心からの距離を求めた。 各測定点の音圧レベル低減量は、仮想の音源近傍(図 7 参照)と各測定点(R1~R5)の測定値の差を算出した。 吸音処理前後の比較結果を図 8(1)(2)に示す。各測定点 の音圧レベル低減量は、距離に比例して増加する傾向 にあり、吸音処理を施すことにより音圧レベルの距離 減衰率(グラフの傾き)が大きくなることが確認でき る。従って、吸音処理後は音圧レベル低減量の増加分 だけ受音室の平均音圧レベルが低下し、その結果、遮 音性能が改善したことが改めて明らかになった。しか し、受音室内に伝搬する騒音の音圧レベルは、吸音処 理前後で変化しないため、吸音処理による対策だけで は、教室と中廊下間の界壁近傍における遮音性能改善 効果は得られにくいと考えられる。以上より、吸音処 理によって遮音性能は向上するが、測定点ごとの音圧 レベルのばらつきは大きくなることが分かった。 6. まとめ 一般的に室間の遮音性能を向上させるには、気密性 を高めることや質量を上げるなどの対策が講じられる。 しかし、音性能低下の原因が主に残響過多に起因して いる場合には、教室の内装に吸音処理を行うだけでも 性能が1ランク改善することが明らかになった。すな わち、吸音処理が有効な遮音性能の改善対策となり得 ることが示唆された。 しかし、吸音処理による室内の音圧レベル低減量は 騒音の伝搬距離に比例する傾向があるため、界壁に近 い位置などの改善効果が得られにくい部分も生じる。 そのため、本事例の様に条件によっては測定点ごとの 音圧レベルに 4dB 程度の差が生じる可能性もあり、在 室する位置によって遮音性能が 1 ランク低い室にいる 様な状態になることが予測される。これを解消するた めには、吸音処理と共に界壁自体の気密性の向上や質 量の増大などの本質的な遮音対策を施す必要があると 考えられる。 参考文献 1)日本建築学会 : 学校施設の音環境保全基準・設計指針,2008 年 2)坪井政義 : 遮音測定結果が室の等価吸音面積の影響を受けた一事例,日本建築学会学術講演梗概集(東北),pp141-142,2009 年 3)前川純一・森本政之・坂上公博 : 建築・環境音響学 第 2 版,p101,共立出版,2000 年 y = 0.9286ln(x) - 0.1822 R² = 0.7269 y = 1.8458ln(x) - 0.1988 R² = 0.7596 -2 0 2 4 6 1 10 音 圧 レ ベ ル 低 減 量 [d B] 放射面からの距離[m] 測定値(吸音処理前) 測定値(吸音処理後) 近似曲線(吸音処理前) 近似曲線(吸音処理後) R4 R5 R3 R2 R1 y = 0.6035ln(x) - 0.4891 R² = 0.559 y = 1.8146ln(x) - 0.6396 R² = 0.5629 -2 0 2 4 6 1 10 音 圧 レ ベ ル 低 減 量 [d B] 放射面からの距離[m] 測定値(吸音処理前) 測定値(吸音処理後) 近似曲線(吸音処理前) 近似曲線(吸音処理後) R4 R5 R1 R3 R2 図 8 距離減衰による音圧レベル低減量の比較 (1) No.1 (2) No.7 図 4 より、吸音処理後の測定結果では、全ての組合 せで理論値と同等程度か、それ以上の改善効果が得ら れており、その傾向は 1000,2000Hz 帯域に大きく表れ ている。また、図 3(4)より教室と中廊下間の遮音性能 が吸音処理前後で変化していないことから、隙間調整 では壁面自体の透過損失が変化しなかったと考えられ る。これらの結果より、簡易計算による予測値よりも 効果が得られた原因は、受音室内の等価吸音面積の変 化による室内音圧レベルの低減だけではなく、理論式 では考慮されていない因子にあると推測される。 5. 騒音の伝搬距離による音圧レベル低減量 5.1 測定点ごとの音圧レベル低減量 4 節から得られた知見より、理論式には考慮されてい ない因子として騒音の伝搬距離による音圧レベルの変 化に着目し、その影響を検証した。測定点の詳細を評 価対象の組合せ別に図 5(1)~(3)に示す。測定点ごとの 音圧レベル低減量を比較するため、音源室の平均音圧 レベルを基準として、受音室の各測定点の音圧レベル との差(以後、測定点ごとの音圧レベル差と記す)を、 吸音処理前後それぞれについて算出した。その結果と、 4 節で示した理論式より求めた室間音圧レベル差の理論 値(以後、室間音圧レベル差の理論値と記す)を、評 価対象の組合せ別に図 6(1)~(3)に示す。なお、本検証 では吸音による効果が大きく得られた 1000,2000Hz 帯 域のみを対象として、その平均値を評価した。 図 6(1)~(3)より、吸音処理後の測定点ごとの音圧レ ベル差と室間音圧レベル差の理論値を比較すると、 No.1,2,3 の R2 以外の測定点では全て理論値と同等程度 か、それ以上の改善効果が得られていることが分かる。 吸音処理前後の測定点ごとの音圧レベル差を比較する と 、 改 善 量 は 3dB ~ 10dB の 間 で ば ら つ い て お り 、 No.1,7 の R1,4 や、No.2,6 の R4、No.3,5 の R4 の様に、 伝搬距離が長く直接音が到達しにくい測定点(図 5 参 照)ほど、吸音による低減効果が大きくなることが確 認できる。 これによって、受音室内の平均音圧レベルが室間音 圧レベル差の理論値よりも小さくなり、4 節の様な結果 になったことが明らかになった。 5.2 騒音の伝搬距離による音圧レベルの低減率 5.1 の結果より、1000,2000Hz 帯域における騒音の伝 搬距離による音圧レベルの低減率(以下、音圧レベル の距離減衰率と記す)は、受音室内の吸音率が高くな ることで増加することが示唆された。音圧レベルの距 離減衰率は、騒音の伝搬経路を考慮し、受音室内に仮 想の音源を定義することによって算出できると考えら れる。また、図 3(4)より、吸音処理前後で教室と中廊 下間の遮音性能は変化していないため、受音室内に伝 搬する音圧レベルに差はないと考えられ、各測定点の 図 6 測定点ごとの音圧レベル低減量 30 35 40 45 50 55 R1 R2 R3 R4 R5 平均 音 源 室 の 平 均 音 圧 レ ベ ル と 測 定 点 の 音 圧 レ ベ ル の 差 [ dB ] 受音室の測定点 No.1吸音処理前 No.7吸音処理前 No.1吸音処理後 No.7吸音処理後 No.1理論値 No.7理論値 30 35 40 45 50 55 R1 R2 R3 R4 R5 平均 音 源 室 の 平 均 音 圧 レ ベ ル と 測 定 点 の 音 圧 レ ベ ル の 差 [ dB ] 受音室の測定点 No.2吸音処理前 No.6吸音処理前 No.2吸音処理後 No.6吸音処理後 No.2理論値 No.6理論値 30 35 40 45 50 55 R1 R2 R3 R4 R5 平均 音 源 室 の 平 均 音 圧 レ ベ ル と 測 定 点 の 音 圧 レ ベ ル の 差 [ dB ] 受音室の測定点 No.3吸音処理前 No.5吸音処理前 No.3吸音処理後 No.5吸音処理後 No.3理論値 No.5理論値 (1) No.1,7(隣) (2) No.2,6(斜め) (3) No.3,5(対向) 図 7 音源近傍の位置 R4 R2 R5 R3 R1 音源室 受音室 教 卓 中廊下 1.0m 音源�� �音���� ����

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音圧レベル低減量は単純に比較できる。そこで、吸音 処理による音圧レベルの距離減衰率の変化を定量的に 把握するため、吸音処理後の各測定点における音圧レ ベルの差が大きい No.1,7(隣に配置)を対象として、 吸音処理前後を比較した。 音圧レベルの距離減衰率を算出するにあたり、各測 定点までの伝搬距離は、受音室の音源室側の引違い扉 を仮想の面音源として、扉中心からの距離を求めた。 各測定点の音圧レベル低減量は、仮想の音源近傍(図 7 参照)と各測定点(R1~R5)の測定値の差を算出した。 吸音処理前後の比較結果を図 8(1)(2)に示す。各測定点 の音圧レベル低減量は、距離に比例して増加する傾向 にあり、吸音処理を施すことにより音圧レベルの距離 減衰率(グラフの傾き)が大きくなることが確認でき る。従って、吸音処理後は音圧レベル低減量の増加分 だけ受音室の平均音圧レベルが低下し、その結果、遮 音性能が改善したことが改めて明らかになった。しか し、受音室内に伝搬する騒音の音圧レベルは、吸音処 理前後で変化しないため、吸音処理による対策だけで は、教室と中廊下間の界壁近傍における遮音性能改善 効果は得られにくいと考えられる。以上より、吸音処 理によって遮音性能は向上するが、測定点ごとの音圧 レベルのばらつきは大きくなることが分かった。 6. まとめ 一般的に室間の遮音性能を向上させるには、気密性 を高めることや質量を上げるなどの対策が講じられる。 しかし、音性能低下の原因が主に残響過多に起因して いる場合には、教室の内装に吸音処理を行うだけでも 性能が1ランク改善することが明らかになった。すな わち、吸音処理が有効な遮音性能の改善対策となり得 ることが示唆された。 しかし、吸音処理による室内の音圧レベル低減量は 騒音の伝搬距離に比例する傾向があるため、界壁に近 い位置などの改善効果が得られにくい部分も生じる。 そのため、本事例の様に条件によっては測定点ごとの 音圧レベルに 4dB 程度の差が生じる可能性もあり、在 室する位置によって遮音性能が 1 ランク低い室にいる 様な状態になることが予測される。これを解消するた めには、吸音処理と共に界壁自体の気密性の向上や質 量の増大などの本質的な遮音対策を施す必要があると 考えられる。 参考文献 1)日本建築学会 : 学校施設の音環境保全基準・設計指針,2008 年 2)坪井政義 : 遮音測定結果が室の等価吸音面積の影響を受けた一事例,日本建築学会学術講演梗概集(東北),pp141-142,2009 年 3)前川純一・森本政之・坂上公博 : 建築・環境音響学 第 2 版,p101,共立出版,2000 年 y = 0.9286ln(x) - 0.1822 R² = 0.7269 y = 1.8458ln(x) - 0.1988 R² = 0.7596 -2 0 2 4 6 1 10 音 圧 レ ベ ル 低 減 量 [d B] 放射面からの距離[m] 測定値(吸音処理前) 測定値(吸音処理後) 近似曲線(吸音処理前) 近似曲線(吸音処理後) R4 R5 R3 R2 R1 y = 0.6035ln(x) - 0.4891 R² = 0.559 y = 1.8146ln(x) - 0.6396 R² = 0.5629 -2 0 2 4 6 1 10 音 圧 レ ベ ル 低 減 量 [d B] 放射面からの距離[m] 測定値(吸音処理前) 測定値(吸音処理後) 近似曲線(吸音処理前) 近似曲線(吸音処理後) R4 R5 R1 R3 R2 図 8 距離減衰による音圧レベル低減量の比較 (1) No.1 (2) No.7 図 4 より、吸音処理後の測定結果では、全ての組合 せで理論値と同等程度か、それ以上の改善効果が得ら れており、その傾向は 1000,2000Hz 帯域に大きく表れ ている。また、図 3(4)より教室と中廊下間の遮音性能 が吸音処理前後で変化していないことから、隙間調整 では壁面自体の透過損失が変化しなかったと考えられ る。これらの結果より、簡易計算による予測値よりも 効果が得られた原因は、受音室内の等価吸音面積の変 化による室内音圧レベルの低減だけではなく、理論式 では考慮されていない因子にあると推測される。 5. 騒音の伝搬距離による音圧レベル低減量 5.1 測定点ごとの音圧レベル低減量 4 節から得られた知見より、理論式には考慮されてい ない因子として騒音の伝搬距離による音圧レベルの変 化に着目し、その影響を検証した。測定点の詳細を評 価対象の組合せ別に図 5(1)~(3)に示す。測定点ごとの 音圧レベル低減量を比較するため、音源室の平均音圧 レベルを基準として、受音室の各測定点の音圧レベル との差(以後、測定点ごとの音圧レベル差と記す)を、 吸音処理前後それぞれについて算出した。その結果と、 4 節で示した理論式より求めた室間音圧レベル差の理論 値(以後、室間音圧レベル差の理論値と記す)を、評 価対象の組合せ別に図 6(1)~(3)に示す。なお、本検証 では吸音による効果が大きく得られた 1000,2000Hz 帯 域のみを対象として、その平均値を評価した。 図 6(1)~(3)より、吸音処理後の測定点ごとの音圧レ ベル差と室間音圧レベル差の理論値を比較すると、 No.1,2,3 の R2 以外の測定点では全て理論値と同等程度 か、それ以上の改善効果が得られていることが分かる。 吸音処理前後の測定点ごとの音圧レベル差を比較する と 、 改 善 量 は 3dB ~ 10dB の 間 で ば ら つ い て お り 、 No.1,7 の R1,4 や、No.2,6 の R4、No.3,5 の R4 の様に、 伝搬距離が長く直接音が到達しにくい測定点(図 5 参 照)ほど、吸音による低減効果が大きくなることが確 認できる。 これによって、受音室内の平均音圧レベルが室間音 圧レベル差の理論値よりも小さくなり、4 節の様な結果 になったことが明らかになった。 5.2 騒音の伝搬距離による音圧レベルの低減率 5.1 の結果より、1000,2000Hz 帯域における騒音の伝 搬距離による音圧レベルの低減率(以下、音圧レベル の距離減衰率と記す)は、受音室内の吸音率が高くな ることで増加することが示唆された。音圧レベルの距 離減衰率は、騒音の伝搬経路を考慮し、受音室内に仮 想の音源を定義することによって算出できると考えら れる。また、図 3(4)より、吸音処理前後で教室と中廊 下間の遮音性能は変化していないため、受音室内に伝 搬する音圧レベルに差はないと考えられ、各測定点の 図 6 測定点ごとの音圧レベル低減量 30 35 40 45 50 55 R1 R2 R3 R4 R5 平均 音 源 室 の 平 均 音 圧 レ ベ ル と 測 定 点 の 音 圧 レ ベ ル の 差 [ dB ] 受音室の測定点 No.1吸音処理前 No.7吸音処理前 No.1吸音処理後 No.7吸音処理後 No.1理論値 No.7理論値 30 35 40 45 50 55 R1 R2 R3 R4 R5 平均 音 源 室 の 平 均 音 圧 レ ベ ル と 測 定 点 の 音 圧 レ ベ ル の 差 [ dB ] 受音室の測定点 No.2吸音処理前 No.6吸音処理前 No.2吸音処理後 No.6吸音処理後 No.2理論値 No.6理論値 30 35 40 45 50 55 R1 R2 R3 R4 R5 平均 音 源 室 の 平 均 音 圧 レ ベ ル と 測 定 点 の 音 圧 レ ベ ル の 差 [ dB ] 受音室の測定点 No.3吸音処理前 No.5吸音処理前 No.3吸音処理後 No.5吸音処理後 No.3理論値 No.5理論値 (1) No.1,7(隣) (2) No.2,6(斜め) (3) No.3,5(対向) 図 7 音源近傍の位置 R4 R2 R5 R3 R1 音源室 受音室 教 卓 中廊下 1.0m 音源�� �音���� ����

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*土木総本部 環境技術部 U.D.C 556.388

酸化剤注入工法を用いた地下水の原位置浄化

柴野 一則

虫明 晋哉

伊藤 浩

* 要 約: 揮発性有機化合物による地下水汚染サイトにおいて,浄化対策として原位置分解法の一つである酸化剤の注入工を実施した。本注 入工法は,酸化剤である過硫酸塩を希釈した溶液と触媒(鉄系化合物)を地盤中へ注入し,触媒との反応で生成されたラジカルによ って対象物質である揮発性有機化合物を不安定状態にし,無害な二酸化炭素や塩化ナトリウムに分解するものである。 本報では,観測井戸において浄化期間中の地下水中の VOC 濃度の長期的なモニタリングを行い,薬剤の注入量と浄化特性につい て検討した結果を報告する。 キーワード: 原位置浄化,酸化剤,薬剤注入,地下水浄化 目 次: 1.はじめに 4.結果及び考察 2.工法概要 5.簡易予測 3.浄化方法 6.まとめ 1. はじめに VOC による原位置浄化は,地下水の揚水法,土壌ガス吸引 法,微生物分解法,酸化剤分解法などがある。長期の浄化期間 を確保することが可能であれば,揚水法や微生物法などの低コ ストの工法を採用することが可能となる。しかし,短期間で浄 化という条件においては,一般的に酸化剤注入工法が採用され る。酸化剤による分解は、微生物処理などと比較して、浄化期 間が短く、分解可能な物質が多いなどの長所がある。 本報では,酸化剤による原位置浄化の浄化方法について検討 した結果について報告する。 2. 工法概要 酸化剤注入工法の原理を説明する。酸化剤として使用する過 硫酸塩は,水に溶けると過硫酸イオン(S2082-)になり,これ が鉄触媒により活性化されると硫酸ラジカル(・S0 4-)という 酸化力が強いオキシダントが生成される。硫酸ラジカルは,フ ェントン反応などで生成されるヒドロキシルラジカル(・OH) のような酸化力を保持している。過硫酸塩には,ナトリウム塩, カリウム塩及びアンモニウム塩があるが,化学酸化剤としては 取扱いが容易な過硫酸ナトリウムが汎用的に使用される。 酸化剤工法の概念図を図1 に示す。薬剤注入するための注入 井戸を設置する。本工法の使用薬剤は,触媒(鉄系化合物)と 酸化剤である過硫酸塩を希釈した溶液である。まず,はじめに 触媒溶液を地盤中へ注入し,その1~3 日後,酸化剤を注入す る。この酸化剤は,注入後,浄化対象の範囲に拡散しながら反 応が生ずる。酸化剤より生成した遊離ラジカルがVOC と反応 し,酸化分解する。VOC は,無害な二酸化炭素や塩化ナトリ ウムまでに分解される。なお,土質や有害物質の濃度により注 入井戸の設置するピッチが決定され,概ね2~6m の範囲で設 計する。 注入断面イメージ図 ①酸化剤注入設計 ②触媒剤注入 ③酸化剤注入・拡散 ④ラジカル生成 注入平面イメージ図 図1 酸化剤工法の概念図 注入井戸設置 触媒注入 触媒拡散 過硫酸ナトリウム ラジカル生成 2 ~ 6m 2~6m

AN IMPROVEMENT CASE OF THE SOUND ENVIRONMENT IN THE SCHOOL

-

AN IMPROVEMENT EFFECT OF THE CLASSROOM SOUND INSULATION PERFORMANCE

BY THE ACOUSTIC TREATMENT IN THE CLASSROOM

-M.Omori and S.Inoue

In order to educate effectively, it is necessary to keep the sound environment of a classroom good. Therefore, Architectural Institute of Japan is indicative of the recommendation value of acoustic performance with which a classroom should be equipped. Although, the recommendation value is not necessarily reflected, there are not few obstacle examples of the sound environment in the school. The school shown in this paper is a case that the problem of noise propagation generated due to long reverberation in the classroom.

In regard to this problem, although writers corresponded by improving sound insulation performance by acoustic treatment, it was judged and considered that it was necessary to check the validity as the countermeasure for improving sound insulation performance of acoustic treatment. Therefore, writers considered by the case on this paper. The finding was obtained from the results.

(1) Indoor reverberation became suitable, the sound insulation performance between classrooms has improved on one rank. (2) The point of measurement when direct sound cannot reach easily acquired the high reduction effect by propagation distance. (3) When the cause of sound insulation performance decrement mainly originates in the excess of reverberation, acoustic treatment processing serves as an effective measure against a sound insulation performance improvement. However, since the variation in the sound pressure level for every point of measurement becomes large, the airtight improvement in the boundary wall itself, increase of mass, etc. are required to cancel this.

参照

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