●と き:平成23年 6月17日(金) ●ところ:SCAT会議室 財団の賛助会員企業などから
3 8
名が参加されました。今回 は「3
次元映像 / 画像 」をテーマとして、以下の講師の方々に ご講演いただきました。 〈 講演1〉 「電子ホログラフィ専用計算機システムによる立体映像技術 」 千葉大学大学院 工学研究科 人工システム科学専攻 教授 伊藤 智義 氏 〈 講演2〉 「最先端の三次元映像処理技術で医療の未来を拓く」 東京大学大学院 工学系研究科 准教授 廖 洪恩 氏 本講演の要旨は第8 8
号 SCAT LINE(2 0 12
年1月発行予定 )に掲載します。第84回テレコム技術情報セミナー
IN ACTIVITY
●理 事 会:平成2 3
年6
月21
日(火) 評議員会 :平成2 3
年6
月2 4
日(金 ) ●ところ:SCAT SCATでは、第5 5
回理事会と第4 8
回評議員会を開催し、 平成2 2
年度(平成2 2
年4月1日∼平成2 3
年3月31
日 ) 事業報告および収支決算について承認が得られ、これに伴 い、関係書類を総務大臣に提出しました。 平成2 2
年度の事業は、事業の三本柱である研究助成事 業、技術情報の提供、知識の普及事業及び調査研究および その支援事業について、それぞれ計画どおり実施することが できました。 また、平成2 2
年度決算は、当期収入合計約3
.3
億円、当期 支出合計約3
.2
億円となりました。理事会および評議員会
Vol.
87
■ 募集内容
1
.研究費助成 (1
)応募資格 先端的な情報通信技術分野の研究を行っている研究者 または研究グループ (2
)助成額など 1件あたり総額2 0 0
万円以上3 0 0
万円以下 (助成期間 :2
または3
年) (3
)募集期間 平成2 3
年9月1日∼平成2 3
年10
月31
日2
.研究奨励金 (1
)応募資格 先端的な情報通信技術分野の研究を専攻する、平成24
年度大学院博士後期課程への進学予定者で、研究 科長が推薦する学生 (2
)助成額など 1名あたり月額10
万円 (助成期間 : 在学中の3年間以内) (3
)募集期間 平成2 3
年10
月1日∼平成2 3
年11
月3 0
日3
.国際会議助成 (1
)応募資格 平成24
年度中に開催される、先端的な情報通信技術 分野の国際会議を主催する学会、研究グループなどの 責任者 (2
)助成額など 1件あたり最大5 0
万円 (3
)募集期間 平成2 3
年9月1日∼平成2 3
年10
月31
日平成 23 年度 SCAT 研究助成の募集
当財団では、先端的な情報通信分野の研究の支援および次世代を担う若い研究者の支援をねらいとして、研究費および研究 奨励金の助成を行っています。さらに、国際研究交流の促進をねらいとして、国際会議開催費の助成を行っています。これら の平成2 3
年度(平成24
年度から助成開始)の募集内容は次のとおりです。 ■ 応募方法 所定の申込書類に必要事項を記入のうえ、当センターに必 ず郵送してください。なお、申込書類は、当センターのホー ムページからダウンロードしてください。ダウンロードできな い方は、次の窓口まで、FAX、ハガキまたは E-mailでご請 求ください。 ■ 応募方法 財団法人 テレコム先端技術研究支援センター 〒160
-0022
東京都新宿区新宿1
-20
-2
小池ビル6
F 事業部 前原 TEL:0 3
-3 3 51
-814 8
FAX:0 3
-3 3 51
-15 91
E-mail:[email protected] Homepage:http://www.scat.or.jp超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会には技術調 査部会があり、ここで行った色々な調査研究の報告書を総務省 に提案して、N I C T の委託研究あるいは総務省の直轄研究とし て色々な研究を実施してきました。 本日の私の話は分科会の報告書に基づいたものですので、ま ず分科会のメンバーの方々に謝辞を表しておきたいと思います。
Introduction
日本ではバックボーン回線として10Gb/sで10 0チャネル程 の WDMが既に導入されています。東名阪には4 0Gb/sも導入 されています。 また、NTT では既にメトロリングのネットワークには ROADM (Reconfigurable optical add/drop multiplex)がインストールされているということです。 トランスポートでは、SONET/SDHに代わって、マルチクライア ントトランスポートといって、イーサーネットでも SONET でも、何 でも転送できるオプティカル・トランスポート・ネットワーク(OTN) の標準化がまさに終わって導入されようとしている状況です。現 状の光 EDFAの 伝 送容量は4Tbit/s 程あり、5 0GHz間 隔で 10 0チャネル程収容しています。 ブロードバンドサービスの場合は、F T T Hと ADSLのクロス オーバーが2 0 0 8年に起こり、現在のユーザー数では、F T T H が約1,5 0 0万、ADSL が約1,2 0 0万と、3,0 0 0万程がケーブ ル TVのブロードバンドユーザーになっています。 今後トラフィックがどんどん増えると予想されています。この原 因の1つがデータセンターです。データセンターが地方に分散し てきていますので、ネットワークを使って大量のトラフィックが流 れていきます。消費電力も多分問題になってくると思います。ス マートフォンは今年度1,0 0 0万を超えるという状況です。旧来 の携帯やフューチャーフォンの伸びは止まっていますが、スマート フォンは伸びてきていますので、無線のバックホールとしてフォト ニックネットワークが非常に重要になってきています。 今後は、ビデオのコンテンツもトラフィックの中心になってくる だろうと言われています。4Kデジタルシネマが標準化され、映画 館で使われるようになっています。これは非圧縮では6Gb/s程 になります。8Kスーパーハイビジョンは NHK が2 0 2 0年代に 商用化を予定していますが、これは7 2Gb/sの非圧縮の情報量 が必要になりますので、光でないと家庭まで届かないということ が近い将来起こってきます。 一方では、電力の問題が非常に深刻になってきています。ルー ターの消費電力は非常に大きく、Cisco のルーター、CRS-1 はシャーシ7 2枚をフル実装すると、1.2Tb/sが16ポートで 9 2Tb/sになりますが、消費電力はトータルで1MW 以上にな ります。Ciscoは去年、CRS-3を出しました。これはスループッ トが3 2 2Tb/sと、CSR-1の3倍 程 になっていまが、電 力 は 8 6 0KWと大分減っています。これでも非常に莫大な消費電力 ですので、グリーン ICTを実現するため、ルーターの光化は非常 に重要な R&D の課題になっています。 ルーターを使って第3層でスイッチングする代わりに、下層で スイッチングするとビット当たりの消費電力は下がります。2層で はルーターの2分の1、1層では10分の1になります。従って、光 のレイヤーでスイッチングすることも必要になってきます。
Current(∼ 2010)
R&D programs of photonic networks
現在のフォトニックネットワークの R&Dプログラムは2 0 0 6 年から2 0 10年までの期間で、Photonic Phase Ⅱというプログ ラムが開始されています。NGNが2 0 0 8年からサービスを開始 し、IPコンバージェンスがこのインフラを支えています。
図1に「Photonic NW R&D Phase Ⅱ(∼2 0 1 0)」を示し ます。
コアのネットワークにλ Utility、Universal Link、10 0Tbps の高機能ノードのプログラムがあります。LANではλ Accessと いうプログラムがあります。Accessでは Active PONと
Long-フォトニックネットワークの技術動向
SEMINAR REPORT
超高速フォトニックネットワーク 開発推進協議会 副会長※ 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 教授北 山 研 一
氏 ※平成23 年 7月15日の超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会の総会にて会長に就任されました。Vol.
87
reach PONというプログラムが走っています。チャレンジングな テーマとしては、光パケットルーターの RAM bufferを光ビットメ モリーで作ろうというプログラムもあります。 λユーティリティはコアのネットワークの技術です。コアのネッ トワークがマルチドメインになりヘテロジニアスになってきた時 にエンド・エンドで光のパスを張る必要があり、それを実現す る技術です。コントロールの技術なども含めようということで、 Borderless Optical Path Control and Managementと言っ ています。ターゲットとして、1,0 0 0程度のノード数を目標にし ています。そのリンクの技術としては多値変調、高符号化利得 の誤り訂正(FEC)の技術を開発します。ノードでは光の位相変 調された信号を、光のドメインで3Rができる技術開発をこのλ ユーティリティで行っています。 λアクセスのプロジェクトは将来的な LANを目指したもの で、2つの技術課 題があります。1つ目は、10 0Gbpsを目標 にして、それをシリアルで転送しようという技術です。クライア ントの信号を Aggregationして、それをシリアルなフォーマッ トで送る技術で、距離はあまり長くありません。2つ目は、マル チλで10 0Gbpsを送る、例えば2 5Gbps×4波で送るとい う技術です。ジャンボフレームを細かくセグメント化して送ると か、その MAC のプロトコルなどを研究しています。このプロジェ クトでは標準化にも非常に力を入れています。IEEEの8 0 2.3 で4 0Gbps、10 0Gbpsの イーサー の 標 準 化 がほぼ 終わり かけていますが、その次のステップとして、テラビットを狙って Contributeしていこうとしています。 λアクセスではフィールド実験も実施しています。NICTの小金 井と大手町を、JGN のダークファイバーを使って、ROADMとか クロスコネクトスイッチでパスを張る、例えば10GbpsのN波で パラレルパスをオンデマンドで GMPLS のシグナルを使って張り ます。実験では2波のパスをオンデマンドで張って、12Gbpsの 4K映像をストリーミングできることをデモしています。 さらに、総務省の直轄研究で実施しているデジタルコヒーレン ト伝送のプロジェクトがあります。これは2 0 0 9年の補正予算 でスタートしました。コヒーレント伝送は19 8 0年代に一時研究 が盛んになりました。それは感度の改善、長距離化を目指して始 まったのですが、EDFA が出て下火になりました。2 0 0 5年に東 大の菊池先生が、OFCでコヒーレントにデジタル信号処理を導 入することを発表されてからルネッサンスが起こり、今この研究 が非常に活発になっています。このプロジェクトでは送信機側、 受信機側の10 0Gbpsの分散補償のための DSPをワンチップ で作ろうとしています。10 0Gbpsをリアルタイムで動作させるも のは世界中どこにもないと思いますので、近々このプログラムか らそういう成果が出てくると思います。
図2に「All-optical RAM buffer subsystem for greener router」を示します。
光 RAM のプロジェクトは greener routerとあるように低消 費電力化を狙ったものです。光のメモリーは遅延線くらいしかな かったのですが、これはランダムアクセスにチャレンジしたもの で、フォトニック結晶技術で作成した極低消費電力の光ビットメ モリの2次元アレイに、イーサーのパケットをシリアルからパラレ ルに変換して書き込み、シリアルで読みだすというものです。書 き込みも読み出しも光パルスを使います。この仕掛けは3 0μ m と6 0μ m の小さいフォーマット結晶ベースのナノキャビティー です。これが1ビットのフォトンを蓄えるわけです。この原理はプ ラズマキャリア効果が誘発する光の双安定です。既にビットの 書き込み、読み出しが出来ることは検証されています。これは非 常に低パワーです。最近デモをやりました。まだどこにも発表さ れておりませんが、4 0Gbpsでビットメモリーを4つ並べて、それ に各ビットを書き込みました。シリアルで流れている1,0,1,0と いうビットを書き込んで、読み出しパルスでこれが読み出される ことを確認しました。世界初のオール光の RAMが実現されてい ます。詳しくは今年の OFCで私が代表して紹介するつもりです。
Next
(2011 ∼)
R&D programs of photonic networks
2 0 11年というのは色々な節目がある年です。国のレベルで も科学技術基本計画がスタートします。その内容は既に明らか になっており、グリーンイノベーションとライフイノベーションが 強みを生かす成長分野として強くうたわれています。予算を獲 得するために、このどちらかに資するということを考えながらシ ナリオを作っています。 基本的にはさらなる大容量化もありますが、もう少し生活に役 に立つ色々なアプリケーションと、これから出てくるものに対し て、フォトニックネットワークはこうやって役に立つのだというこ とを主張して提案しています。 今後のフォトネットワークの目指す方向性は、フォトニックネッ トワークを高速大容量化するとともにその領域を拡大し、アクセ〈図1〉Photonic NW R&D Phase Ⅱ(∼2010)
SCATLINE 87 スのトランスポート機能を取り込むことで共通プラットフォーム化 と利便向上 / 経済化を図ることです。 我々の認識は、データセンター NW、無線系 NW、映像系 NW をうまく収容するための技術要件を満たすような技術開発をして いかなければいけないということです。
図3に「Paradigms of photonic NW R&D: Phase Ⅲ(2011 ∼)」を示します。 すべての光のパスはサブλからλ、あるいはウエーブバンドを自 由に使えなければいけないということと、パケットからバーストそ してストリームまでのすべての粒度のパスをうまく選択して送り、 転送することができないといけないということがベースになって います。こういうものをフォトニックプラットフォームといって、こ のプラットフォームの上にすべてのアプリケーションを収容して いるということでフォトニックコンバージョンと言っています。
PhaseⅢは、λフレックス(Autonomously-controlled power-minimum network)、λ リーチ(10 0Gbps MAN)、λセキュリ ティ(Secure photonic network)などのテーマの研究を、2 0 11 年から実施する予定ですが、予算の関係があり、一部はスタート を少し遅らせたり、少し規模を縮小したりして実施することにな ります。 λフレックスはコアの技術です。ネットワークのエネルギーを 2 0 2 0年に現在の1,0 0 0分の1に下げると、トラフィックの伸 びを考慮すると2 0 2 0年のエネルギーは10分の1になります。 そのためには、Wavebandや Wavelength pathを自在に使い分 けて、ノードも一部をスリープすることができるような構造のノー ドを作ることが必要になります。エネルギーを下げるもう1つの 方法として、コアの中に2本のパスが生きている時に、トラフィッ クを片方の1本に収容して、残りのパスをダークにして休ませる というパスに片寄せ方法があります。そういうパスの設定を行う ための管理技術など含めて研究しようとしています。 λリーチは MAN の 技 術 で、10 0Gbpsを目 指しています。 10 0Gbpsで必要な技術はリンクのアダプテーションを行う技 術です。変調フォーマットを状況に応じて、例えば QPSKから 16QAMに切り換えるというようなことです。 今回の新しいプロジェクトでは非線形の補償も DSPで行おう と考えています。 ノードでは、カラーレス、ディレクションレス、コンテンション レスといった CDC-ROADMを作れば省電力化ができますので、 こういう技術も開発します。イーサーのフレームを OTN(Optical Transport Network)に収容するためのクロスレイヤーのコント ロールの技術などもこのプロジェクトの研究課題です。 PONなどで今後考えられるセキュリティーの脅威としては、 ファイバーを曲げてそこから漏れる信号を盗聴したり、オーソラ イズされていない ONUが潜り込んだりといった脅威が考えられ ます。これは今でも AES12 8という暗号をかけてある程度は阻 止できるのですが、研究では、計算機的な安全性ではなくて情報 理論的な安全性、いわゆる絶対安全を目指したフィジカルなレイ ヤーでのセキュリティーの確保を目指しています。 ノードで非常に強いパワーを入れると、このクロストークが信 号に漏れ込んで、次々伝搬していく、クロストークアタックという ものも将来起こり得るだろうということです。
図4に「Conceptual model of secure photonic network」 を示します。
コントロールプレーンでシグナリングの情報を書き換え、パス を混乱させるとか、物理レイヤーで強い光を入れてONUを盲目に 〈図3〉Paradigms of photonic NW R&D: Phase Ⅲ(2011∼)
してしまうとか、盗聴などに対して完全なファイアーウォールを 作りたいということで、我々が提案しているのは、QKD のネット ワークをこれに導入することです。各リンクに QKDを生成でき るようにします。例えばパスの要求があったとすると、QKDを要 求に応じて送ります。キーマネジメントエージェントと GMPLS のコントローラーが協調して、このシグナリングの情報などを、 量子鍵を使って暗号化するということです。 IPレイヤーでは IPsecというセキュリティーの機能がありま すし、光のパスのレイヤーでも OCDMなど色々な技術がありま す。それに対して量子鍵を配送し、これを使って情報を暗号化す ることができれば絶対安全の情報交換ができます。研究課題 は沢山ありますが、こういうものにチャレンジしてみたらどうかと 思っています。 フォトニックネットワークの仮想化についても新世代ネット ワーク推進フォーラムなどと連携しながら研究開発をしてい くべきではないかと考えており、現在 PIF の分科会で積極的 に議論しています。こういうものも次に提案していきたいと考 えています。
おわりに
急速に成長しているクラウドサービス、スマートフォン、ビデオ・ ストリーミングなどにより、今後もトラヒックはこれまでのペース か、あるいはそれ以上のペースで増大していくと予想されています。 フォトニックネットワークの2 0 10年までの研究開発プログ ラムの結果は、10 0Gbpsリンクとスケーラブルな光ネットワー クの確立に役立っています。 フォトニックネットワークに関する2 0 11年からの研究開発 プログラムは、デジタルコヒーレントとダイナミック光ネットワー キング技術に基づき、クラウドサービス、スマートフォン、ビデ オ・ストリーミングなど個々の大容量サービスに適した仮想的 なフォトニックプラットフォームを提供する技術を確立すること を目的としています。 本講演録は、平成2 3年2月2 1日に開催されました、財団主催の「第8 3回テレコム技術情報セミナー」、テーマ「光通信技術∼ The 1 0th anniversary of PIF(超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会)∼」の講演要旨です。 *掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。ネットワークを革新する
フォトニックネットワーク開発
本日は、光ネットワークが将来どの様に進展していくか、どうい うところを狙い、どのようなインパクトがあるかということに関し て全体的な話をさせていただきます。 ネットワークを考えるに当たって、インターネットのトラフィッ クの性質を十分理解している必要がありますので、その話から始 めさせていただきます。インターネットトラフィックと映像
Googleのデータセンターで測定したデータをフローサイズで 見ると、ほとんどが1kB 以下です。ところがこれをトータルのバ イト数の確立分布で見ると、100Mバイト以上のフローに大き なピークがあります。つまりフロー数で見ると、小さいサイズのフ ローが大半を占めているのですが、トラフィック量としては、極少 数の大きなサイズのフローが全体のトラフィックの大半占めてい ることが分かります。 この様な傾向は、Google のデータセンター内のみならず、ネッ トワークの殆どの領域で観測されます。この傾向は、映像信号が トラフィックの大半を占めるであろう将来において、増々顕著に なると予想されます。図1は「Video Bit Rate ; Source and Compressed」です。
現在我々が日常使っているのは Standard TVと HDTVです。シ ネマの世界では4Kシネマが徐々に利用され始めています。2 0 2 0 年からは NHK が8k Super Hi-Visionの試験放送を開始する予 定です。この様に映像は高品質化、即ち高ビットレート化に向け てどんどん進化しています。最近は YouTubeでも HDクォリティ のものが大分増えて来ていますが、高ビットレートの映像信号が 将来のトラフィックの大半を占めるようになると予想されます。 大画面化は、高品質化、高ビットレート化のドライビング フォースです。我々は普通のテレビから HDTVになった時に、格 段に美しくなったことに感動しましたが、それがさらに大画面化 した時の映像へのインパクトは非常に大きいものがあります。 映像の品質を決めるには色々なパラメーターがあります。例え ば、現行の TVの RGBの三原色は人間の見える範囲の一部を 表現していますが、Adobe RGBはそれより少し広い範囲を、さら に、最近は6バンドの映像システムで、色の再生可能領域をさら に広げようといった研究が行われています。 映像の他のパラメーターで代表的なものには、解像度を示す ピクセル数、グラデーション、フレームレート、ビューポイントの 数などがあります。人間の知覚限界を超える映像を再現するため には、10 0 テラビット/秒の情報量が必要になります。 4K Cinemaの2時間のオリジナルコンテンツを10Gb/sのリ ンクで送ろうとすると、1.2時間程かかります。UHDTVでは14 時間程かかってしまいます。こういったコンテンツの送信には高 速の回線が必要になることが判ると思います。
〈図1〉Video Bit Rate ; Source and Compressed
SEMINAR REPORT
超高速フォトニックネットワーク 開発推進協議会 技術部会長代理※ 名古屋大学大学院 工学研究科 電子情報システム専攻 教授佐 藤 健 一
氏 ※平成23年 7月15 日の超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会の総会以降に技術部会長に就任されました。Vol.
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ノードスループットと電気技術の限界
センサーネットワークを考えた場合、仮に地球の人口70億人の 10倍程度のセンサーがあり、各々が同時に1kbit/ 秒の情報を発生 すると、全世界トータルで70Tbit/秒の情報量になります。この様 なトラフィックを集めてくるにはインターネットは最適なネットワーク です。この様な状況で光技術は大量のトラフィックを転送するため に、ネットワークの内部で主に使われることになります。 一方、超高精細の映像コンテンツを考えると、7 0Tbit/秒とい うのは高々1,000チャネル分にしかなりません。従って、こうい う領域では光の fast circuit switchingが有効となり、その様な サービスを提供するために、光の技術がエンド・エンドまで入っ てくることが予測されます。 非常に大きな情報量を送る場合のネットワークの課題を考察 します。ネットワークはノードとリンクで構成されています。リンク の光ファイバーの技術革新はめざましく、去年の OFCでは実験 値として、1ファイバー当たり6 9 Tbit/秒の伝送が報告されてい ます。 現在最も細径の千芯の光ファイバーケーブルは高々直径 2 3mmしかありません。そうすると、1本の千芯ファイバーケー ブルで7 0Pbit/秒が伝送できることになります。 ノードに千芯のファイバーケーブルが1本入ってきた場合、その 容量に比べ、今世界で最も大容量の IPルーターでもスループッ トは4桁以上小さくなります。また、レイヤ1の ODUクロスコネ クト、光パスクロスコネクト、ウエーブバンドクロスコネクトなどの スループットもファイバーの能力に比べて非常に小さいと言えま す。即ち、ノードの能力拡大が将来の通信では非常に重要にな ります。 1本のファイバーで考えた場合、例えば10Gbpsを10 0ch収 容すると、その容量は1Tbpsになります。これを4 0Gbpsに上 げると、ルーターのスループットを超えており、10 0Gbpsに上げ れば ODUクロスコネクトの能力も超えてしまいます。即ち、ファ イバー1本分の容量もルーティングできないというのが現状です。 対策として、ルーターのスループットを上げることが考えられます が、ルーターのスループットは既に飽和傾向にあります。インター ネットのトラフィックの伸びは、ルーターのスループットの伸びを はるかに超えています。これは将来の大きな課題です。 光のトランスペアレンシーというのはそういう意味で非常に魅 力的で、チャネル当たりの信号速度の上昇とともに自然にスルー プットが拡大されます。将来的に非常に重要な技術です。 また将来の課題としてネットワークの電力問題があります。ア クセス系、アグリゲーション、バックボーンの消費電力の推移を 見ると、現状ではアクセス系がネットワークの消費電力の大半を 占めていますが、この部分は年とともにあまり増加しません。問 題になるのは年々増加する、アグリゲーション、バックボーンの 消費電力です。 図2に「Router Throughput」を示します。 現 状のルーターは使 用率を下げても電力は下がりません。 Offered Load 10 0%の時の最大電力を1とすると、Offered Load 0%の時でも、電力は0.9程度です。無駄を省いて0.3 程度まで下げようという技術開発は進んでいます。これも重要な 技術開発ですが、将来的に数10倍、10 0倍と増えていく電力を 削減するための抜本的な解決策にはなりません。 電気の場合は、スループット性能を上げていくにはプロセッ サーのクロック周波数を上げていくのが常道です。ところがク ロック周波数の向上は既に飽和傾向に来ています。 LS Iの電圧も重要です。LSIの電圧は徐々に下がってきていま す。消費電力は電圧の二乗に比例しますから、電圧を下げること は低電力化を図る上で重要な役割を果たします。しかしここにき て下げ止まりが見えてきました。 消費電力に関してはダークカレントも重要です。ゲート長の細 線化により漏れ電流が増えてダイナミックなパワーを超えてしま う状況に近づいています。 ルーターだけではなく、CMOSをベースとするすべての通信機 器において、スループット当たりの消費電力削減が図られてきた のですが、そろそろ限界に来ています。 一方、スーパーコンピューターの世界ではムーアの法則に近い 形で現在でも処理能力が拡大し続けています。Top5 0 0につい て、そのフロップスをプロットすると、飽和傾向は見られません。 これはプロセッサーを並列化してコア数を増やしてきているから です。2 0 10年の6月頃アメリカのクレイが1位になりましたが、 その時のプロセッサーが2 2万コアで、消費電力は7MWです。 コア数と消費電力は強い正の相関を持っています。TOP10の 消費電力の平均は現在3MW程度です。すでに10MWほどの 消費電力のものもありますが、いずれこの消費電力の拡大も飽 和する時が近いと思います。 〈図2〉Router ThroughputSCATLINE 87
The Best Use of
Lower Layer Transport
一定消費電力当たりのフロップスは頭打ちになって限界が見 えつつあります。ルーターなど一般の機器の場合はそれよりも早 く限界が見えています。それを打破するには、通信に関してはより Lower Layerのトランスポートにできるだけ移行することです。 ルーターと L2/L3スイッチの電力効率を比較すると、スイッ チの方が機能がシンプルなため1桁近く電力効率は良くなりま す。さらに Lower Layerである ODUのクロスコネクトや SDH のクロスコネクトにすれば、さらに電力効率は良くなります。 グラニュラリティーの点で考えると、ルーター、ラベルスイッチ ルーター、フロールーターなどは自由な容量を設定できますが、 ODUのクロスコネクト、光のパス、ウエーブバンドなどは飛び飛び のグラニュラリティーしかありません。しかし、ODUのクロスコネクト は最近 ODU flexが標準化され、1.25Gbps単位の細かいグラニュ ラリティーが利用できます。光のネットワークも Elastic Optical Path という形でより自由な容量を設定できるというように、フレキシビリ ティーは将来的に拡大する方向に向かっています。 重要なポイントは Lower Layerに移ることです。電気ルーター をノード・バイ・ノードで経由していくものを、光レイヤーでカット スルーすることによって電力効率は1桁程度改善できます。 先ほど述べた7 2Gbpsといった非常にビットレートの高いも のは、光のファーストサーキットスイッチングで収容していけば、 ユーザインタフェース部にルーターを用いなくて済みますから、 消費電力を全体的にさらに削減できます。
Waveband の効果
ウエーブバンドとは光ファイバーの中の波長を束にしてルー ティングするものです。1波1波のルーティングではこれに見合 うスイッチ数が要りますが、束にしてルーティングするとスイッチ 数が非常に少なくて済みます。 現状では、光の専用線には光の波長貸しとダークファイバー という選択しかありませんが、それにバーチャルファイバー的な ウエーブバンドを導入していけば、新たなサービスもクリエイトで きます。そういう意味でも非常に有望な技術と考えています。図3に「Matrix Switch based Optical Crossconnect」の一 例を示します。 ウエーブバンドのメリットを、マトリックススイッチを例に説明 します。1ファイバー当たり10 0波収容している場合、それを波 長ごとにスイッチすると波長の数だけスイッチが必要になります が、10波を1つの束に束ねて、束ごとにスイッチすればスイッチ の数は1/10で済みます。ただし、それだけでは多少ルーティン グ能力が落ちるので、波長でグルーミングできる部分を付加す れば効率的になります。どの程度のグルーミングを許容するか は重要なポイントです。 9×9のメッシュのネットワークでウエーブバンドを使うと最 大どの程度のコスト削減が可能かを調べた結果、2割程度のグ ルーミングが出来れば十分だということが判りました。 このグルーミングの値に関してキャリアは気にする必要はあ りません。自分がこのノードからどれ程のトラフィックを出したい かということだけ知っていれば、ネットワークの設計ツールが自動 的にグルーミングの量を設計して必要な機器の大きさを算出して くれます。 マトリックススイッチを用いた光クロスコネクトに関しては、 NTTさんと共同でハイヤーオーダーのクロスコネクトを試作し て、横須賀地区の現場に敷設された光ファイバを用いて伝送実 験を行い、非常に良い結果を得ました。 ウエーブバンドはメッシュだけでなく、リングの接続ノードなどに も非常に有効です。ウエーブバンドをリング間の接続ノードに使う と、数 %ルーティング能力が下がりますが、スイッチ規模は70% 程削減できますので、コストの面で非常に有利です。
WSS / WBSS ベース階層化
光パスクロスコネクト
もう1つ重要なものに、WSS/WBSS(ウエーブバンド・セレ クティブ・スイッチ)があります。図4 に「Single Layer and Hierarchical OXCs based
on WSS/WBSS」を示します。 この WSSは3D MEMSでも LCOSでも、光導波路ではなく 空間結線で実現しています。 WSSを使った時もウエーブバンドは有効です。ウエーブバンド のクロスコネクトと WSS のクロスコネクトを組み合わせること により、小型化が達成できます。 ここで開発した WBSSは小さな集積回路でできています。通 常、WSSは大きなモジュールに入ってている3D MEMS光ス イッチや LCOS(Liquid crystal on silicon)というようなもの
〈図3〉Matrix Switch based Optical Crossconnect 〈図4〉 Single Layer and Hierarchical OXCs based on WSS/ WBSS
ですが、それに相当する機能を光の1Chipで実現しています。こ れは富士通、NTT、大分大学、名古屋大学、NTTコミュニケー ションズが連携して受託した NICT 委託研究「高機能フォトニッ クノード技術の研究開発 」において、名古屋大学が開発したも のです。 図5はウエーブバンドのクロスコネクトです。 WBSS Chipとカップラーが5組1つのケースに入っています。 大きさは通常の WSS1個とほとんど変わりませんが、クロスコ ネクトのスイッチ機能全体がこの規模におさまっています。 光クロスコネクトや multi-degree ROADMが広範囲に導入 されない大きな原因の1つが、インターフェースの自由度の制約 です。CDC(カラーレス、ディレクションレス、コンテンションレ ス)が実現困難な状況です。1つの方策として、落ちトラフィック に制約を加えること、即ち10 0%確保しないで限定する方法 があります。その他、CDC 部を光スイッチで実現することが困 難であれば、電気スイッチの利用も考えられますし、さらに細か いグラニュラリティーが必要となれば、ODUのクロスコネクトを 利用することができます。また、スルートラフィックを扱う光の 部分はウエーブバンドを利用すると非常に小型になります。こう いうものを組み合わせて次の世代のシステムが実現されると考 えています。
まとめ
将来のトラフィック増は、映像サービスが支配的要因で、そ の映像の転送には光レイヤーのトランスポートが非常に有効 になります。 本日はアクセス系の話は殆どしませんでしたが、アクセス系の 低消費電力化には、やはり光化(FTTH の導入 )が非常に有効 です。 将来的にボトルネックになるのはアクセス系ではなく、コア /メトロルーターの消費電力です。CMOS の低消費電力化がよ り困難な状況では、将来的にスループットを2桁、3桁上げよう とすると、フォトニックネットワーク技術がキー技術となります。 フォトニックネットワークの構築においては、高速の光サー キットスイッチング技術、多粒度光パス技術が今後重要になる と考えています。〈図5〉 Ultra-Compact Waveband Cross-Connect Switch Module
本講演録は、平成2 3年2月2 1日に開催されました、財団主催の「第8 3回テレコム技術情報セミナー」、テーマ「光通信技術∼ The 1 0th anniversary of PIF(超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会)∼」の講演要旨です。
本日は、「フォトニックトランスポート技術と今後の展望 」に ついて、背景と、これまでの超高速のシステムおよびデジタルコ ヒーレントの技術を述べさせていただいた後、10 0 Gbpsの研究 開発状況について、さらにポスト10 0 Gbpsということで、昨年 我々が OFCで発表した 6 9. 1Tbps 伝送への取り組みの状況も 踏まえて説明させていただき、最後にフォトニックネットワーク技 術に関する我々の取り組みの一部を紹介させていただきます。
ブロードバンドの進展
日本の光通信技術は非常に進んでおり、これまで世界最先 端の光技術を使って光通信ネットワークを構築してきました。 19 8 4年に光ファイバー日本縦断網を完成し、2 0 0 1年には F T T Hのサービスを開始し、2 0 0 8年には新世代ネットワーク (NGN)サービスを開始しています。 既に FTTHは1,6 0 0万を超えてブロードバンド加入者の半 数以上となっており、まさしく光の時代になってきています。実 際は日本の各家庭への光化率は9割を超えており、現在光化さ れていない家庭でも光を導入できる状況になっていますので、光 のブロードバンドサービスは今後も増えていくと考えています。 図1に「超高速大容量光トランスポート技術のトレンド」を示 します。 私は19 8 5年に NTTに入社し、F-4 0 0システムの実用化検 討を担当した部署に配属され、ちょうど1.6Gbpsシステムの現 場試験をしている時でした。その後、2 0 0 7年頃には4 0Gbps の4 0波、1.6Tbpsのシステムを実用化しています。このこと は、約2 5年でファイバー当たりの容量で4桁程上がっています。 実際の光伝送技術は、伝送の距離と容量の積で表しますので、 約2 5年で6桁程の技術革新を実現したことになります。 図では、研究のトレンドと商用化のトレンドも示しています が、研究から大体4∼5年で実用化を実現してきました。現在、 10 0Gbpsの研究が進んでおり、実用も間近になってきている と思われます。 今後、通信ネットワークのトラヒックは、映像系を主流として 急激に増加していくことが予想され、それらを F T T H やモバイ ルの通信システムが支えていくことになります。特に LTEサービ スでは、7 0Mbps、最終的には2 0 0Mbps近く通信スピードが 出るということで、今後、無線と有線が融合していくものと考え られます。それらをどのようにフォトニックトランスポートネット ワークが支えていくかが今後の重要な課題になってくると考えて います。超高速光通信システムと
デジタルコヒーレント技術
トラフィック需要は今後、年率4 0∼5 0%で伸びると試算 されています。現在は、リンク容量が数10 0Gbpsから1Tbps で、インターフェース速度が10Gbps(一部4 0Gbps)といっ た技術を使ってネットワークを構築していますが、2 0 2 0年頃 になるとリンク容量では数10Tbpsから10 0Tbps近く、イン ターフェース速度では1Tbps程度の能力が要求されます。さ らに、2 0 3 0年頃になるとリンク容量は1ペタ程度、インター フェース速度も数テラということで、まだまだの光の技術に支 〈図1〉超高速大容量光トランスポート技術のトレンドフォトニックトランスポート技術と
今後の展望
SEMINAR REPORT
日本電信電話株式会社 NTT 未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク 研究部長松 岡 伸 治
氏Vol.
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えられているところは沢山あります。今後これをどうやって支え ていくかということが大きな課題になってきています。このよう な状況の下での光伝送技術と光ネットワーク技術を紹介した いと思います。 光技術に関するトレンドとしては、8 0年代から9 0年代にかけ ては第一世代として電気の TDM 技術があり、その後、第二世代 として光増幅技術、波長多重のシステム化技術などがありました。 現在ではコヒーレント技術が第三世代の技術と言われています。 光で大容量信号を長距離伝送するには、2つの大きな課題 があります。1つは信号対雑音比(S/N)をどうやって改善するか という課題です。もう1つは長距離伝送のために分散や非線形 劣化等による波形歪をどうやって改善するかという課題です。 第二世代では、変調方式としては IM-DD(強度変調 - 直接 検波 )方式を使い、多重化方式としては時間多重とともに波長 分割多重(DWDM)によるシステムを開発してきました。 S/N改善に関しては、光増幅器を使ったブースターアンプや プリアンプを実現することで、非常にノイズの少ない受信回路 や高出力な光送信回路により S/Nを改善してきました。第二世 代の後半では分布ラマン増幅や、誤り訂正の技術を使うことで さらに S/Nを改善してきました。 波形歪の特性の改善に関しては、外部変調器でスペクトル を狭くするとか、分散補償ファイバー(DCF)や電気分散補償 (EDC)による波長分散の補償で対処しています。 第三世代になると、変調方式は DPSKや DQPSK 等の位相 変調技術、受信側ではコヒーレント受信をした後にデジタル処 理をするという新しいデジタルコヒーレント方式が主流となりま す。多重化に関しては、DWDM 以外に多値位相変調の実現や、 X偏波とY偏波にそれぞれ別々に信号に乗せた偏波多重方式、 光の OFDM 多重など、新しい多重化技術を駆使して更なる大 容量化を考えていきます。 S/Nの改善に関しては、コヒーレント受信により原理的には 3dB 向上しますが、実際にはそこまで難しいですが、2dB程度 はコヒーレントの受信技術で改善が見込まれます。 誤り訂正に関しては、7%程度の FECを使うと、コーディング ゲインで8.5dB程稼げますので、このような高度な誤り訂正 技術も使っています。 波形歪特性改善(波形等化)に関しては、多値化で低ボーレー ト化をすることによる PMDの耐力向上、デジタル信号処理によ る自動分散補償や波形等化などがあり、このような観点でもデジ タルコヒーレントの技術は非常に重要だと言われています。 図2は「デジタルコヒーレント受信」です。 19 8 0年代後半にコヒーレント受信の研究が随分盛んになり ましたが、当時は位相同期回路を用いて受信した光信号と局発 光の周波数の位相をきちんと同期化することが難しくてなかな か実現しませんでした。 デジタルコヒーレントの特徴は、誤差の補正をリアルタイムに デジタル回路で行うことです。デジタルコヒーレント技術の超高 速長距離光伝送への利点には以下のものがあります。 (1)多値変復調 デジタルコヒーレント技術により光信号の位相情報をより細 かく制御することが可能となり、位相変調信号の多重度を上げ る方法(m-PSK 等 )や、振幅変化を併用し直交位相変調するこ とで多重度を上げる方法(m-QAM 等 )など、従来困難であった 多値変復調技術が可能となる。 (2)偏波多重分離 デジタル信号処理(Adaptive filter)技術により、伝送路中等 で発生する高速な偏波変動への追随、偏波間クロストークの信 号処理での解決等、実フィールドにおける偏波多重分離が実現 可能となる。 ( 3 )分散補償 デジタル信号処理による PMD 補償が可能となるだけでなく、 従来分散補償ファイバ(DCF)や電気分散補償(EDC)等により 波形歪を補正していた波長分散も、デジタル信号処理技術によ り受信端一括波形等化が可能となった。回路規模にもよるが、 10,0 0 0ps/nm以上の波長分散、5 0ps以上の偏波モード分 散を信号処理で補償可能となる。 図3に「デジタルコヒーレント光伝送技術を用いた中継機器 構成例」を示します。 この 技 術 はかなり大 がかりで 複 雑 な 技 術 ですが、これを NICTの委託研究であるユニバーサルリンクで技術的な原理確 認を行ない、その後、総務省直轄の委託研究をいただき、統合 した大規模なアルゴリズムを検証するプロジェクトを作って検討 を進めています。 〈図2〉デジタルコヒーレント受信(デジタルホモダイン受信) 〈図3〉デジタルコヒーレント光伝送技術を用いた中継機器 構成例
SCATLINE 87
100Gbps システム実現技術と
Post100Gbps へ向けた取り組み
実際に10 0Gbpsのシステムを作るために、 変調方式技術、信号処理技術、誤り訂正技術、 光変調器、高速 ADC、CMOS のプロセス技術 などを駆使して、SNR 改善、狭変調スペクトル 幅、歪補正などを実現すべく取り組んでいます。 この取り組みによって、今後1、2年ほどで、光 ファイバー当たり10Tbps級(10 0Gbps/ch) の光伝送システムが実現し、実用システムとして 導入されると考えられます。 次に、ポスト10 0Gbpsとして、我々が昨年発表 した6 9.1Tbpsのキー技術を簡単に紹介します。 大容量化には2つの課題があります。1つは 周波数の利用効率 UPです。もう1つは光増幅 の帯域をどれだけ広げられるかということです。 現在の光増幅帯域は、それぞれ約4 0nmの帯域を持つ Cバン ド、L バンドで実用化されていますが、これを広げていこうという ことです。 6 9.1Tb/sは16QAMを使っていますが、変調信号の生成方 法には、電気で合成するものと光領域で合成するものの2つが あります。 電気 DACによる合成は、構成は簡単ですが、動作速度が制 限され、線形ドライバアンプが必要なこと、損失が比較的大きい ことなどの理由で、我々は光で変調する方式を採用しています。 光領域での合成は、多値数の増加に伴い構成は複雑化します が、高速 QAM 信号の生成に適しています。 実際の16QAMの生成には、PLCと変調用のLNをハイブリッ ドで集積した PLC-LNハイブリッド変調器を用いています。 光増幅帯域の課題に関しては、日本では L バンド帯の光増 幅技術は非常に進んでいましたので、今回は L バンドを拡張す る形で1620nm近くまで増幅できる光増幅器を作り、それと 後方ラマン励起とのハイブリッドで、10THz以上増幅できる 光増幅器を開発し、これを使っています。 図4は昨年発表した6 9.1Tb/sの内容です。 信 号としては171Gb/sを4 3 2チャネル 束 ねています。周 波数利用効率は6.4bitで、現状ではおそらくトップデータだ と思います。Cバンドでは4.4THzに176波を、L バンドでは 6.4THzに2 5 6波を波長多重して、合計で4 3 2波を伝送して います。16QAMを使って、リアルタイムではなく1度メモリに取 り込んだ後計算する方法によって、7 0Tb/s程のコヒーレント受 信を実証しました。 10Tbpsについては1、2年で実用化が実現すると考えてい ます。また、光ファイバ当り10 0Tbps近くまでは既存フィール ドを用いたシステムの実現可能性があると考えており、その次の 10 0Tbpsを目指して今後研究が加速していくと思っています。次世代フォトニックネットワーク技術の
取り組み
従来の電話網は hierarchicalなネットワークで通信ネット ワークを構築していましたが、今後は、タグやセンサーのように 容量は小さいけれども数が多いものから、データセンターのよ うに非常に大きいものへ、また、ブロードバンドサービスも高度 化していくというように、通信環境が随分変わってきています。 従って、フォトニックネットワークの技術を用いて変化する通信 環境にどうやって対応していくかが課題だと思っています。 デジタルコヒーレントのように長距離伝送の技術が進み、光 のトランスペアレントの領域が広がっているという事実もありま す。光の技術の進歩により、これまで県内面に導入してきた光 伝送システムが、メトロ全域でもカバーできるのではないかと考 えられるようになってきています。 課題は、光だけに10 0Gbpsを全部使わせても効率が悪い ので、サービス側を見ながら集約していく、いわゆる集約型のト ランスペアレントネットワークが非常に重要になってくるという ことです。そのためには光のマルチリングのようなシステム化技 術と、電気の技術を使ってレイヤー2も含めてアグリゲートがう まくできるシステム化ネットワークを考えていく必要があると思っ ています。 現在、日本で導入されているのは単一リングの ROADM (Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)ですが、今 後は複数リングを光で接続できるようなマルチディグリーの ROADMが主流になってくるでしょうし、北米では既に導入を 開始しているところがあります。 光技術の中で見ると、マルチリングを実現するための多方路 化等の光技術が重要となります。カラーレス、ディレクションレ スをどこに使うのだという議論もありますが、今後メタトラフィッ クをこの中で収容することが必要になった時には、光だけでうま く空いているリソースを使って伝送するという要求も増えてくる はずです。そういったところではカラーレスやディレクションレス はおそらく必須な技術になると考えています。 我々は光のスペクトルを柔軟に使ってネットワークを構成で きないかという、SLICE(Spectrum-Sliced Elastic Optical Path Network)の議論もしています。SLICEの議論というのは、従来の光伝送システムは決められ た波長グリッドの中に決められた形で入れており、どうしても大 容量化したいとか、大容量でなくても良いが長距離伝送がした 〈図4〉 69.1 Tb/s WDM Transmission of 432 Wavelengths with Spectral
いという要求があると、現在はビットレートと距離を考慮してシ ステムを設計しています。それに加えて、光のスペクトルをもう1 つの軸に使ってネットワークを構成することの可能性に関する 議論です。 通信ネットワーク全体としては、コア系、メトロ系、アクセス系 があります。 コアネットワークは非常に数の多い波長をいかに簡単に管理 するかというのが重要になってくるので、波長をバンドルしてネッ トワークを簡略化する時代が来ると思います。 一方でメトロアクセス系はリソースの効率利用が重要なファ クターですので、大容量で短距離伝送で良いというものから、 容量は大量に必要ないが長距離伝送がしたいといった要求 が顕在化しています。距離と容量だけでなく、光のスペクトル を柔軟に使ってうまく対応することの必要性が、今後起きてく るのではないかと思います。
まとめ
我々はフォトニックトランスポート技術の開拓により、経済的 な光通信基盤網を世界に先駆けて構築してきました。 今後の通信環境を考えると光通信ネットワークの大規模化・ 高度化が従来以上に重要で、このため、さらなる経済化・高度 化を目指した光通信基盤網構築、および国際競争力強化の観 点でフォトニックトランスポート技術の推進は大変重要です。 今後10年、2 0年先を見た、デジタルコヒーレント技術をはじ めとする革新的な長距離大容量光伝送技術の開発が必須だと 思います。 サービスの高速化・多様化とともにフォトニックネットワーク の高度化技術が鍵です。 今後もフォトニックトランスポート技術への期待は大きく、将 来の豊かな社会構築へ向け従来以上に研究開発の加速化が必 須だと思います。 本講演録は、平成2 3年2月2 1日に開催されました、財団主催の「第8 3回テレコム技術情報セミナー」、テーマ「光通信技術∼ The 1 0th anniversary of PIF(超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会)∼」の講演要旨です。 *掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。今回は平成19 年度SCAT研究奨励金採用の、宮部真衣さ んをご紹介します。 宮部さんは、平成23 年3月和歌山大学大学院システム工学 研究科博士課程を修了、博士号を取得、現在は東京大学知の構 造化センターで特任研究員として活躍されています。 Q.在学時は何の研究をされていましたか 在学時は、多言語間コミュニケーション支援に関する研究を 行っていました。世界規模でのインターネットの普及や、日本 国内の外国人登録者の増加などによって、様々な場面で多言 語間コミュニケーションの機会が増加しつつありますが、言語 の習得などは容易ではなく、敷居が高いと考えられます。そこ で、言語の違いという大きな障壁を解消するために、機械翻訳 などの既存の情報処理技術を用いて、母語のみを用いた多言 語間コミュニケーションを支援するための研究を行いました。 チャットなどのコミュニケーションや、医療受付でのコミュニ ケーションなど、様々な場面での支援について検討を行い、開 発したシステムの医療現場への設置・運用なども行いました。 Q.研究奨励金を受けて良かったことなどお聞かせください 研究奨 励金を受けることで、親への負担をなくすことがで きました。また、アルバイトなどをする必要がなく、研究に専 念することができました。このような研究環境を与えていただ けたことで、博士後期課程での研究成果につながったと思っ ています。 Q.現在の仕事を志望されたきっかけは 在学時の研究では、既存の情報処理技術を利用して人間を 支援するということを行っていました。多言語間コミュニケー ションを対象としていたこともあり、特に自然言語処理技術を 利用することが多く、研究を通して自然言語処理に興味を持つ ようになりました。また、医療現場を対象としたシステムの研 究開発も行っていたため、医療現場の支援についても興味が ありました。東京大学知の構造化センターには、自然言語処 理などの情報技術の医学的応用を目指した研究グループがあ り、医療分野と情報技術の融合に関する研究に携わりたいと 思い、志望しました。 Q.現在の仕事についてお聞かせください 自然言語処理を中心とした情報技術を、医学的に応用する ための研究プロジェクトなどに関わらせていただいています。 学生のころは、コミュニケーションを支援するシステムなど、既 存の情報技術を使って、人間を支援するための研究を行ってい ました。現在は、その経験を生かして、自然言語処理の応用に 関する研究を行っています。 Q.現在の仕事の魅力は何ですか 情報技術に関する研究を行うことができるだけでなく、実際 のフィールドへ研究成果を適用することの敷居が比較的低い ことが魅力であると思っています。研究開発した技術は、実際 に使ってもらうことが重要だと思いますが、医療現場への適用 SCAT研究奨励金を受けて
VALUE POINTER
宮 部 真 衣
さん
M a i M i y a b e 東京大学 知の構造化センター 特任研究員 〈モットー〉 自ら反みて縮くんば、千万人と雖も、吾往かん。 〈略歴〉 平成 20 年 3 月和歌山大学大学院システム工学研究科 博士前期課程修了。平成 23 年 3 月同博士後期課程 修了。同年 4 月東京大学知の構造化センター特任研 究員。現在、自然言語処理技術の医学的応用、コミュ ニケーション支援に関する研究に従事。Vol.
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については特に敷居が高いと思います。現在の仕事では、東 大病院との共同研究という形で現場と密接にかかわることが でき、恵まれた環境をいただけていると思っています。また、多 数のプロジェクトに関わらせていただけており、非常にやりが いがあると感じています. Q.現在の仕事で苦労されていることは有りますか 私の着任したセンター内には自然言語処理を専門とした研 究者が多いのですが、私は自然言語処理にあまり詳しくないた め、話についていくことができないことがあります。少しずつ自 分の知識として吸収していきたいと思っています。 Q.今、興味もっていることや趣味などお聞かせください まわりに自然言語処理研究者が多いので、自然言語処理に より興味をもつようになりました。色々な利用方法がありそう なので、面白い応用方法を考えたり、役に立つシステムを作っ たりできたらいいなと思っています。 Q.将来の目標についてお聞かせください これまでにいくつかのプロジェクトなどに関わり、研究開発 した技術やシステムを実際に利用できる形にしていくことが重 要だと感じました.将来は、様々な技術を応用したコミュニケー ション支援技術やシステムを研究開発し、研究成果を積極的 に社会へ還元していきたいと思っています。
はじめに
インターネットでの言語使用の状況は、上位10位までの言語 で、84%のシェアになります。日本語は第4位で7%に過ぎません。 日本語以外の9言語から日本語への自動翻訳システムが作れれ ば、インターネット上の情報の84%が読めるようになり、日本人 の情報の受信能力を10倍以上高められます。発信も同様です。 10言語の間の自動翻訳システムはどうしたら実現できるでしょう か。各言語は、文字、単語、文法など様々な面で他の言語と 異なりますので、個別言語の特性に依存せず実現できる自動翻 訳技術が必要になります。統計翻訳技術による多言語翻訳
ハードウエアの処理速度や記憶容量が格段に進歩したこと、 文章や辞書が大量に計算機上に集積されるようになったこと、な どを受けて、自動翻訳の研究において、対訳コーパス(同じ意 味の原文と訳文の文レベルの対を集めたもの)から、翻訳に必 要な知識を自動的に構築する技術が興り、現在、主流の研究 パラダイムとなっています。 例えば、統計翻訳と呼ばれる技術 (図1)では、対訳コーパスから2言語間の対応関係をモデル化 する翻訳モデル(直感的にいうと、確率付き対訳辞書です)と目 的言語らしさをモデル化する言語モデル(例えば、英日翻訳の 場合、日本語の単語の並びの自然さを表す確率付き日本語辞 書です)を導出し、両者に基づく確率を最大化するように翻訳しま す。N個の言語からなる多言語対訳コーパスを用意すれば、全 ての組合せであるN(N−1)個の翻訳システムが自動的に構築で きます。我々は、既に、旅行会話の分野で多言語対訳コーパス(N =21)を構築し、全ての組み合せである420通りの翻訳システム (図2)を実現し、実用レベルの翻訳品質(図3)を達成しています。統計翻訳高度化の2つのポイント
さて、その統計翻訳技術で高精度の自動翻訳を実現するため には、大きく2つの研究課題があります。 ①ある一定量以上の 対訳コーパスが集まると翻訳品質が実用レベルになることがわ かっていますので、対訳コーパスを経済的に短期間で収集する 手法を確立することが重要になります。また、②同じデータ量で 図1●統計翻訳技術の概要 図2●多言語翻訳の出力 画面(日本語から多言語 への翻訳で、ベトナム語 が選択されているところ) 1982年電気通信大学大学院修士課程修了。1999年京都大学博士(工学)。 現在、NICT言語翻訳グループ グループリーダー、神戸大学大学院システム情報学研究科客員教授。 機械翻訳、 eラーニングを研究。 知識創成コミュニケーション研究センター 言語翻訳グループ グループリーダー隅田 英一郎
(すみた えいいちろう)多言語自動翻訳技術
−世界の多様な言語を相互に翻訳するための技術開発をめざして−
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