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高齢者

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(1)

(32)

原著 :秋 田大学医短紀要

9(2):145‑152,2001

高齢者

(80

歳以上) 胃痛症例 の検討 一術 前術 後 の

ADLとケ アの視 点 か ら‑

* * * * * * 子 子 均 茂 登 京

藤 藤 木 棚 伊 佐 小 * * * * * * 博 子 直

義 郁 正

沼 地 藤

浅 菊 伊

* * * * 子 子 子

祥 晶 陽

股 山 屋

猪 煙 守

要 旨

1991

年か ら

1998

年 までに治療 を受けた

12

名 の高齢者

(80

歳以上)の胃痛症例 について、術 前術後の

ADL

とケアの視点か ら検討 した。 高齢 者

12

例 の うち

、2

例 は、術前 よ り

ADL

に中等 度及び高度の障害があると判断 され、非 自立で あったため手術 を しなかった。手術的治療 を受 けた

1

0例 を高齢者群、無作為 に抽出 した

65

歳 以下

14

名の胃痛症例 をコン トロール群 として、

比較 した。高齢者群

1

0例の うち

、7

例 に切開部 表層の手術部位感染 ( 5例)、不明熱 ( 1例)、神 経因性勝耽 ( 1例)、術後せ ん妄

(1

例)、などの 術後合併症 を認めた。一方、 コン トロール群で は

、14

例 中 11例で術後合併症 は起 こらなかった。

しか し、高齢者群 において も、術後合併症 に対 し適切 な治療 を行 うことで、 術前の

ADL

を維持 または向上で きた状態で退院 した。

以上 より

、80

歳以上の高齢者の胃癌症例 に対 しては、術前の

ADL

を適切 にアセスメン トし、

術後の

ADL

の維持や向上 を前提 とした、 適切 な 治療の選択が重要である

は じめに

高齢社会 を迎 えた今

、80

歳以上の高齢者 に対 して も手術 が行 われ る機 会が増加 してい る

我々は、高齢者 胃痛手術例の問題点 を明 らか に するために

、80

歳以上の高齢者 と非高齢者の胃 癌手術例 における 日常生活動作

(ADL)

、手術 前後の合併症や術後回復過程 について比較検討

したので報告する

対象 と方法

1991

1

月か ら

1998

12

月 までの

8

年間に、

秋 田大学 医学部 附属病 院第‑外科 で治療 した

80

歳以上の高齢者 は

70

症例である 1。この うち 胃癌症例 は

12

例であ り、 うち

10

例 に手術的治 療 を行い、残 る2 例 は非手術 であった ( 表 1 )0 そ こで、この

12

例 について治療経過 を述べ ると ともに、特 に手術 した

1

0例 を高齢者群 とし、手 術前後の合併症や術後経過 について検討 した。

一万

、1994

1

月か ら

1996

12

月 までに手術 を行 った胃痛症例の うち

、65

歳以下の ものを無 作為 に

14

イ 射 由出 し、それをコン トロール群 とし た。

高齢者群

1

0例 の内訳 は、男性

6

例、女性

4

例、

年齢

81

〜 86

歳、平均

81

±

1

. 7歳であった。

*秋 田大学医療技術短期大学部看護学科

**秋 田大学医学部附属病院看護部

***秋 田大学医学部第‑外科

KeyWords:

高齢者

胃癌

ADL

(2)

猪股祥子/高齢者 胃癌症例の検討 (33)

1

高齢者非手術例

2

例 と手術症例 ( 高齢者群

10

例 、 コン トロール群

14

例)の

ADL

の状況 高齢者 胃癌症例

12

非手術例 手術例 :高齢者群

2

10

コン トロール群

14

例 入院時 退院時 入院時 退院 時 入院 時 退院時

自立

0 0 8 10 14 14

軽度

0 0

1 0

0 0

非 自立 中等度 1

1

1 0

0 0

高度 1

1

0

0 0 0

2

手術症例 の背景

高齢者群 コン トロール群

10

14

例 年 齢 ( 読 )

81‑86 35‑65

性別

6 10

4 4

胃癌 の進行 度

早期癌

4 10

進行 癌

6 4

術 式

幽門側 胃切 除術

4

噴 門側 胃切 除術

3

胃全 摘

2

胃空腸 吻合術

1

14 0 0 0

手術 時 間 ( 分 )

196±50.5 175±22.5

麻酔 時間 ( 分 )

221±50.2 199±21

. 7 出血量

(m

l )

186±113.0 126±101.0

一方、 コン トロール群

14

例 の内訳 は、男性

10

例 、女 性

4

例 、年 齢

35

〜65

歳、平 均

5

9

. 4歳 であった ( 表

2)

胃癌 の進行度 は、高齢者群では早期癌

4

例 、 進行癌

6

例 であ り、 コン トロール群では早期癌

10

例、進行癌

4

例 であった。術式 は、高齢者群 では幽 門側 胃切 除術

4

例、噴門側 胃切 除術

3

例、

胃全摘

2

例、 胃空腸吻合術

1

例 であ り、 コン ト ロール群で は全例 に幽門側 胃切 除術 が施行 され た。手術 時間は高齢者群

196±50

. 5分、コン ト

秋田大学医短紀要 9 2

ロール群

175±22

. 5分、 麻酔時 間は各

221±50.2

、199±2

1 . 7分、出血量 は各

186±113.0m1

12

1

01.Oml

であ り、ともに両群 間に有意差 は 認めなか った ( 表

2)

以上

26

症例 の入 院中の診療 記録 及 び看護記 録 をもとに、高齢者 とコン トロール群 との比較 を

ADL

、併存疾患 と術後合併症 の有無、術後治 療経過、術後 回復過程 の観点 よ り比較検討 した。

ADL

は自立 、非 自立 に分類 し、非 自立 は更 にそ

の障害 の程度 によ り、軽度 ( 補助 :一人でや っ

146

(3)

(34) 猪股祥子/高齢者 胃癌症例 の検討

3

手術症例の既往症 と併存疾患

高齢者群 コントロール群

10 例 14 例

手術歴既 往 虫垂切 除 胆嚢摘 出 卵巣摘 出 肺結核 片腎摘 出 乳房切 断

2 虫垂切 除 3

2 大腸 ポ リー プ摘 出 2

1 胆嚢摘 出 1

1 帝王切 開 1

1 尿管結 石 1

1 子 宮全摘 1

既往歴 と併存疾患 高血圧 視 力障害 糖尿病 肺結核 不整脈 肺気腫 肝機能異常 間質性肺炎 心筋梗塞 聴 力障害

4 高血圧 3

3 糖尿病 1

3 肝機能異 常 1

3 重症筋無 力症 1

3

〜 1 1 1 1 ページェッ ト病 1

( 重複あ り)

4

術後合イ 井症

高齢者群 コントロール群

術後合併症 10 例 14 例

あ り

*7 3

薬疹

0 2

不明熱

(7

病 日以降

38.5

℃以上)

1 2

神経 困性膜状

術後せん妄

切開部表層の手術部位感染

1 0

1 0

5

0

3

11

(*

p <0. 05) 重複あ り

(4)

猪股祥子/高齢者胃癌症例の検討 とで きる)、中等度 ( 介助 :手がかかる)、高度

( 介護 :寝 た き り) に細分類 した

2

。術後治療 経過の評価 としては、半抜鈎 日、全抜鈎 日、腹 腔 ドレー ン抜去 日、勝朕内留置カテーテル ( 以 下勝耽 カテーテル)抜去 日、経鼻 胃管抜去 日、

酸素投与期 間、輸液投与期 間を検討 した。術後 回復過程の評価 としては、術後初めて排 ガス ・ 排便が認め られるまでの 日数、術後一週間内テ

レミンソフ ト坐薬京と完勝の使用回数、 術後水分 お よび食事開始 日、歩行開始 日、術後入院 日数、

全入院 日数 について検討 した。

各項 目に関 して両群の有意差検定は、入院時 と退院時の

ADL

と術後合併症 については

Fisher

の直接法 を用いて検討 した。その他の項 目につ いては

Mann‑Whitney

U

検定 を用い、同順位 補正後の p 値が

0.05

未満 を有意差あ りとし

た 。

成 績

1.AD L

高齢者 胃痛非手術例の

2

例 と手術例の

1

0例お よび、コン トロール群

14

例の入院時 と退院時の

ADL

を示す ( 表

1 )

。高齢者 胃癌症例合計

12

例 の うち自立 は

8

例、非 自立は

4

例であった。 こ の うち、 まず高齢者 胃癌非手術例

2

例 の

ADL

について述べ る。高度非 自立の

1

例 は、痴呆、

両耳難聴、両視力弱視、腰椎圧迫骨折、尿失禁、

虚血性心疾患既往 な どが合併 していたため、進 行 胃癌でかつ経 口摂取不可であったが、家族 と 相談の上、手術 は施行せず、中心静脈栄養 にて 管理す ることとして、 自宅近 くの病院に転院 し た。 また、中等度非 自立の 1 例 は老年期妄想症、

両耳難聴、高血圧、僧帽弁閉鎖不全、気管支拡 張症 などを合併 してお り、早期 胃癌で 自覚症状 もな く、家族 も手術 を希望 しなかったため、手 術 をせず退院 して自宅 に戻 った。

次 に高齢者 胃痛手術例の うち、入院時の

ADL

が非 自立 :中等度の

1

例 は、胃出血 と狭窄症状 のため 日常生活 は介助 を必要 としていたが、手 術 によって症状 は改善 し、退院時 には自立 して

いた。 また、非 自立 :軽度の 1例 は、左耳難聴、

強度近視、白内障でかつ、胃癌 に伴 う食欲不振、

曝気、曝吐 を訴 えてお り、入院時は車椅子 を便

9 2

(35)

う要介護の状態であったが、術後 は自覚症状 も とれ、歩いて退院することがで きた。すなわち、

手術例 は

1

0例全てが、退院時には

ADL

自立 と なった。一方、コン トロール群

14

例 は、入院時、

退院時 とも全例で 自立 してお り、 高齢者群

1

0例 とコン トロール群

14

例 との間には、入院時、退 院時 とも有意差 は認め られなかった。

2.術前合併症

手術症例の既往歴 と併存疾患 を示す ( 表 3) 0 高齢者群では、高血圧、不整脈、心筋梗塞など の循環器疾患や、肺結核、肺気腫 などの呼吸器 疾患 をもつ ものが

1

0例中

7

例 ( のベ

23

疾患) であった。 さらに、視力障害や聴力障害 など、

術後の看護や介護 を困難 にする加齢 に伴 う生理 学的変化 も

4

例 に認 め られた。 一方、コン トロー ル群では、手術 に影響すると考え られる既往歴 と併存疾患 をもつ ものは

、14

例 中

6

例 ( の

ベ 6

疾患)であった。

3.

術後合併症 ( 表

4)

術後合併症 を認めた ものは、 高齢者群

1

0例中

7

例、コン トロール群

14

例中

3

例であった。高 齢者群の合併症の内訳 は、切開部表層の手術部 熱は

1

例であった。一方、 コン トロール群では、

不明熱

2

例、薬疹

2

例であ り切開部表層の手術 部位感染 は

1

例 も認めなかった。 これ ら術後合 併症の発生頻度は、高齢者群で有意 に高かった

(p‑ 0.035

1 )が、両群 において これ らの合併 症 は全て保存的に改善 し、全例が治癒退院 した

4.

術後治療経過 ( 表

5)

半抜鈎 日は、 高齢者群

7.8±1.0

日、コン トロー ル群 は全例

7

日、全抜鈎 日は、高齢者群

9.0

±

1,4

日、コン トロール群は全例

8

日であった。半 抜鈎 日、全抜鈎 日とも高齢者群が有意 に遅かっ た。腹腔 ドレーン抜去 日は、高齢者群

6.2±1.9

日、コン トロール群

4.5

±

0.9

日であ り、高齢者 群で有意 に遅かった。勝耽 カテーテル抜去 日で は、両群間に差 を認めなかった。経鼻 胃管抜去 日は、高齢者群

1.5

±

1.4

日、 コ ン トロール群

2.2± 0.6

日であ り、高齢者群で有意 に早 く抜去 されていた。酸素投与期間 と輸液投与期 間は、

共 に有意差 を認めなかった。

148

(5)

(36)

猪股祥子/高齢者 胃癌症例の検討

5

術後治療経過

項 目名 高齢者群 コン トロール群 Mann‑ Whi t ney の∪検定

10

14

例 ( 同順 位補 正後 の

p

値) 半抜鈎 日

全抜鈎 日

腹腔 ドレー ン抜去 日

膜耽 内留置 カテ ーテル抜去 日 経鼻 胃管抜去 日

酸素投 与期 間 輸液 投与期 間

7.8±1.0 9.0±1

. 4

6.2±1.9 4.1±2.7 1.5±1

. 4

3.0±2.6 9

. 4

±1.6

7.0±0.0 8.0±0.0 4.5±0.9 2

.

4±0.5 2.2±0.6

〜.0±1.8 9.8士4.0

*0.0038

*0.0038

*0.0249 0.1218

*0.0086 0.2935 0.8133

(*

p

<0.05)

6

術後回復過程

項 目名 高齢 者群 コン トロール群 Mann‑ Whi t ney の∪検定

10

14

例 ( 同順位補 正後 の

p

値) 術後排 ガス 日

4.1±0.9

術後排便 日

4.8±1.6

テ レミンソフ ト坐薬使 用 回数

1.1±1,2

濃膿使用 回数

0.0±0.0

水分摂取 日

3.6±0.7

食事 開始 日

5.3±0.8

歩行 開始 日

4.8±3.2

術後 入院期 間

20.8士4

.

4

全 入院期 間

36.3±9.3

3.8±1,2 0.4991 3.7±1

. 4

0.1262 1

. 4

±0.9 0.3597 0

.

4±0.7 0.1263 3.6±0.6 0.6158 4.5±0

. 7

*0.0203 3.1±0.7 0.2403 20

.

4±5.6 0.6578 32.6±5.2 0.1272

(*

p

<0.05)

5.術後 回復過程 (

6)

術後初 めて排 ガスや排便がみ られた 日、 さら に、術後一週 間以内 に使用 したテレミンソフド坐 薬や淀腸 の回数 は、両群 間で差 を認 めなか った。

術後初 めての水分摂取 日は、高齢者群

3.6

±

0.7

日、 コン トロール群で

3.6± 0.6

日と差 を認 め なか ったが、食事 開始 日は、高齢者群

5.3

±

0.8

日、 コン トロール群

4.5

±

0.7

日であ り、高 齢者群で有意 に遅 く開始 されていた。一方、術 後初 めての歩行 は、高齢者群

4.8

±

3.2

日、コン

トロール群

3.1

±

0.7

日であった。

術後入院 日数 は、高齢者群

20.8± 4

.

4

日、 コ ン トロール群

20

. 4±

5.6

日であ り両群間 に差 は 認 めなか った。全入 院 日数 も有意差 はなか った。

考 察

厚 生 省 大 臣官房 統 計情 報 部 の 「 人 口動 態 統

」 4

‑に よる と、我が国の

1985

年のモデル人口

における

80

歳以上の人口は

219

万 ( 総人口の約

1.8%)

であ り、この数 は更 に増加す る もの と考

え られる。 これに伴 い

、80

歳以上の高齢者 に対

この ような高齢者 の手術 では、術前か ら合併疾

患 をもつ ことが多い、心、肺、腎、肝 な どの諸

臓器の予備能が少 ない、な どの理 由で、術後の

回復が遅延す る とされてお り、 きめ細 やかな看

護 の実践 が求 め られてい る

5

。 また、高齢者 で

は、老化 に伴 う生理学的機 能低下 と病的変化 に

(6)

猪股祥子/高齢者胃癌症例の検討 よる臓器予備能の低下が相 まって、外科手術 に

おけるリスクは増大す る

6

今回検討 した高齢者 胃癌

12

例の

ADL

をみる と、 自立が

8

例、非 自立が

4

例であ り、非 自立 の

4

例 中

2

例が非手術 であった。非手術例 の

2

例 は、 ともに痴呆でかつ難聴、虚血性心疾患 を 認めた。 うち 1例 は、進行 胃痛 で経 口摂取が不 良であ り、入 院時

ADL

は非 自立 :高度であっ た.そのため中心静脈栄養 カテーテルを挿入 し て自宅 に近い医院に転院 となった。残 る

1

例 は、

早期 胃癌で入院時の

ADL

は非 自立 : 中程度であ り、 自宅に退院 した。共 に、ご家族 と十分 に治 療方針 について検討 した結果である。

一方、手術 した

1

0例の うち

、2

例 は入院時胃 痛 に伴 う症状のため 日常生活は介助 を必要 とし、

ADL

は非 自立 :中等度お よび軽度であったが、

手術 によって症状 は改善 し、退院時には自立 し ていた。従 って

、80

歳以上高齢者の胃癌手術 に 際 しては、手術 自体の安全性や予後だけではな く、術後の 日常活動能力 に対 して も十分配慮 し て、手術適応 を決める必要があろう。その際、

退院後 に介護や介助 をして くれる家族 とも十分 に相談 し、患者や家族が希望する治療法 を選択 す るのは当然である。西 山 ら

7、

、夏越 ら民 ,も、

80

歳以上高齢者の胃癌手術 に際 しては、キュア よりもケアを基本的な 目標 とした上で、個 々の 症例で適宜最善の治療方針 を決定すべ きとして いる。手術 を して病気 は治 った ものの

、ADL

が 低下 したことにより自宅 に帰れず、 さらに、転 院を余儀 な くされた り、二次的障害 によ り長期 入院 となって しまった りすることで、患者や家 族 に後悔 させ ない よう、 術前の

ADL

の維持 につ には、 術前の

ADL

の把握 と術後の状況 を正 しく 見極める判断が求め られる

高齢者で 胃癌手術 を した

1

0例 の既往歴 と併 存疾患 をみると、循環器、呼吸器の臓器障害 に 加 えて、視力障害や高度の聴力障害 をもつ もの が

4

例 に認め られた。 これ らの障害 は、 理解力 ・ 記憶力 ・記銘力の低下や、環境の変化 に対する 順応困難な どの高齢者の特徴 を助長 し

10

、 さら には、術後の排涯、体位交換、清潔、飲食等の

(37)

基本的看護ケアを行 う際に少 なか らず不利 に働 くものである。 したが って、適切 なめがねや補 聴器の準備、 または筆談の利用 など、術前か ら 十分 に対処 してお く必要がある。

術後合併症 については、高齢者群では、術後 せ ん妄 を

1

例 に認めた。 この例 は、術後第

2

病 日か ら不穏 、独語 を認め、点滴 の 自己抜去 など の行動がみ られた。ハ ロペ リ ドールの静注等の 加療 を行い、 また、患者が安心感 を得 られるよ う家族の付 き添い等 を配慮す ることによ り第

6

病 日には改善 した。そのほかの術後合併症 とし ては、切開部表層の手術部位感染

3

ノを

5

例 に認 めた。一般 に高齢者では、動脈硬化や糖尿病の 合併、免疫力の低下 などのため、創傷治癒 は遅 れ、 さらに、手術部位感染 も生 じやすい とされ ている

。抜鈎 を

2‑3

日遅 らせ ることや、創 感染があればむ しろ早期 に抜鈎 し ドレナージに 努め、必要 に応 じて後 日再縫合す るなどの処置 が必要である。 自験例では 、4 例 で、皮膚の

2

‑3

針の再縫合 を行 った。

高齢者 胃痛手術後の合併症 として重要 な もの に、術後肺炎が挙 げ られているが、自験

1

0例で は術後肺炎は

1

例 も認めなかった。高齢者群

10

例 について、術前肺機能 をみる と、呼吸機能低 下 と判断 させ る ものは、%肺活量が

80%

以下の もの 1例、一秒率が

70%

以下の もの

4

例であっ た。一方、コン トロール群

14

例 では、呼吸機能 低下 を示 した ものはなかった。 この様 な呼吸機 能低下例では術後無気肺や肺炎 を起 こしやすい と考 えられるが、 自験例ではこれ らの合併症 は 1例 も認めなかった。 これは、小棚木 ら‑が述 べ ているごとく、経鼻 胃管 を術 後早期 ( 術後 1

‑ 2日目) に抜去 して、早期離床 を図った等 の

努力 によるところが大 きい。 さらに、特 に呼吸 機 能が低 下 してい る例 で は、術 後

IC

U管理 を 行 っている。 自験例の うちo / .肺活量が

75.00

/ .、

一秒率が

37.1%

であった

1

例 は、進行 胃癌 に対 し胃全摘術 を施行 したが、手術後挿管 したまま

IC

U に入室 した。そ して、麻酔か らの覚醒が十

分であること、十分 な自発呼吸があること、バ

イタルサインが安定 していること等 を確認 した

上で、術後

5

時間にて抜管 した。経鼻 胃管 も同

(7)

(38) 猪股祥子/高齢者 胃癌症例 の検討

時 に抜去 した。以後 も体位交換 や タッピング、

ネブライザー等 を積極 的 に行 い、術後無気肺や 肺炎等 の合併症 もな く順調 に回復 した

術後 の治療経過では、半抜鈎 日、全抜鈎 日と も高齢者群で有意 に遅か った。 コン トロール群 においては全 ての患者 に対 して、半抜鈎 は術後 7 日目に、全抜鈎 は翌 日の 8 日目に行 われてい た。 しか し、高齢者群 においては、半抜鈎の時 期 を意図的 に遅 らせ てお り、その後 の全抜鈎 に 関 して も慎重 に行 われていた。 また、腹壁創皮 膚 の再縫合 を行 った ものが 4例 あ り、糖尿病 の 合併や、術後 の不穏状態 の出現 も抜鈎 の時期 の 見極 め に関与 していた と思 われた。一方、腹腔 ドレー ン抜去 日は、高齢者群で有意 に遅かった が、経鼻 胃管抜去 日では反対 に、高齢者群で有 意 に早 くなっていた。経鼻 胃管 は、悪心曜吐の 予防、吻合部の減圧 、後 出血の情報 を得 るな ど の 目的で挿入 される ものである。 しか し、患者 にとっての苦痛 は強 く、特 に高齢者で は精神状 態へ も大 きな影響 を与 え、術後せ ん妄へ の引 き 金 ともな りかねない。 また、術後 の暗疾略出や 体位交換 に も不都合 であ り、可及的速やか に抜 去すべ きもの と考 える

2.

術後 回復過程 では、高齢者群で食事 開始 日が

53

±

0.8

日であ り、コン トロール群 に比べ て有 意 に遅れていた。 これは、排 ガス 日、排便 日が 遅れてい ることか ら考 えて、術後 の腸管麻痔 か らの回復が遅れてい るため と考 え られた。 しか し、術後の入 院期 間には両群 間に差 は認めない ことよ り、高齢者 において も術後 の経 口摂取 は、

順調 に改善 してい くもの と考 え られる

手術 を控 えて、高齢者 は、病状や手術 の不安 に加 え様 々な不安 を抱 えてい る

1

さらには、

住み慣 れた環境 とは異 なる特殊 な状況 において、

ともすれば脅威 とも感 じられる多 くの体験 をせ ざるを得 ない。周術期 において も、高齢者の特 徴 をよ く理解 した上 で、治療 と患者の生活の両 側面か ら個別性 をもった広い視野 で患者 をアセ スメン トし、予測 に基づいた的確 な判断で援助 す ることが、看護 の役割である と考 える

結 語

80

歳以上の高齢者 の胃癌症例 に対 しては、症 例毎 に、 術前 の

ADL

を適切 にアセス メン トす る ことが大切 である。そ して、その結果 を手術適 応の有無 な どの治療 の決定や、治療環境 の選択 に充分生 かす ことが、治療後の高齢者 の

ADL

の 維持 ・向上 につ なが る と考 える。

文 献

1

)小棚木均 、伊藤正直、田中淳一他

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器外科 ナ‑シング

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科 における術後合併症 とその対策①肺合併

Study on Gastric CancerPatientsoverthe Age of80 1With specialreferenceto activity ofdaily living and care‑

Shoko INOMATA*Yoshihiro AsANUMA辛Tomoko ITOH

Shoko KEMUYAMA*Ikuko KIKUCHI**Kyoko SATOH**

Yohko MoRIYA* * Masanao ITO***HitoshiKoTANAGI***

ABSTRACT:

Twelvegastriccancerpatientsovertheageof80(agedgroup)treatedbetween1991and1998were studiedinterm sof(1)activity ofdailyliving(ADL),(2)pre‑andpostoperativecomplications,and(3) postoperativecourseofcaretThisdatawascomparedwiththatobtainedfrom fourteengastriccancerpatients under仇eageof65

(

controlgroup)

・A

mongtwelvepatientsineagedgroup,underlyingdisorderswere confirm edin75%,andtwowerenotoperatedon,becausetheirADLwashighlyormoderatelydeteriorated.

Tencasesin血eagedgroupunderwentelectivesurgery.Noneexperiencedseverecomplications,andallcould bedischarged from hospitalwith an 'independent''ADL status.However,ofthepostoperativeminor complications,Sevenoutoftenagedpatientssufferedfrom symptomsincludingsurgicalsiteinfection(in five),feverofunknownorigin(inone),postoperativedelirium (in one),andneurogenicbladder(inone).On theotherhand,inthecon

t r

olgroup,elevenoutoffourteenexperiencednocomplicationsatal1.Forgas

t r i

c cancerpatientsovertheageof80,surgicalinterventioncanbeadoptedsafely,howeveritshouldbeminimized andthepossibilityofapostoperativedeteriorationinADLshouldbeconsideredsufficiently.

表 5 術後治療経過

参照

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