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比較定款論―英国・ドイツ・オランダ―(1)

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(1)

1. はじめに 2. 英  国

 (1)定款の法的性格

 (2)形式的意義の定款と実質的意義の定款  (3)定款の解釈

 (4)定款変更 3. ド イ ツ

 (1)定款の法的性格

 (2)形式的意義の定款と実質的意義の定款  (3)定款の解釈

 (4)定款変更 4. オランダ

 (1)定款の法的性格

 (2)形式的意義の定款と実質的意義の定款  (3)定款の解釈

 (4)定款変更 5. 小  括

1. は じ め に

 本稿は,英国・ドイツ・オランダを対象として,これら3国の閉鎖(非 公開)会社(plc(英),GmbH(独),BV(蘭))を念頭に会社の定款を比 較分析することにより,定款の法的性格およびその機能と会社法の強行規 定との関わりを明らかにすることを目的とする1)

―  ―23 642(212)

比較定款論―英国・ドイツ・オランダ― (1)

田  邉  真  敏 

1) 拙稿「会社法の強行法規性と株主権の放棄――英国・ドイツ・オランダの比較 法的考察――」修道32巻1号430頁以下(2009)において,会社法の強行法規性 を株主権の放棄という問題設定から論じた。本稿はそれに続いて定款の法的性質 から会社法の強行法規性を比較法分析するものである。

(2)

 定款は会社の「憲法」であるという比ゆがしばしば用いられるが2),定 款の法的性格がどのようなものであるかは,その拘束力の基礎および規範 的機能を明らかにする上で重要である。定款と契約はいかなる点において 区別されるのか,そして定款の独自の地位(statusaparte)なるものが正 当化されるかが問題となる3)

 契約は個人の自由の表現形式であり,契約自由は「合意は拘束する

(pacta suntservanda)」の原則に裏付けられている。すなわち個人は自由に 自分を拘束できるのであるが,その自由の行使に対しては,公序良俗や信 義誠実による限界がある。

 定款は一般に以下のような特徴において契約と区別されるとされてきた。

第1に,定款の内容は法令の規制に服する,第2に,定款は第三者に法的 効果をもたらす,第3に,定款の解釈は客観的基準でなされる,第4に,

定款変更は原則として多数決により行われる。とりわけ第2の特徴である ところの,定款が債権者や将来の株主のような第三者に法的効果を及ぼす 特徴を有することに,会社法における強行規定の存在理由があるとされて いる4)。このうち債権者は強行規定そのものによって保護されるが,将来の 株主については,株式譲渡の過程で定款の内容を確認できる状況にあるこ とから,会社法の強行規定は新たな株主の権利が過度に制約される場合に それを防止するためのものと考えられる5)

 このような点において契約と性質を異にするとされてきた定款について,

―  ―24 641(211)

2) ドイツ民法25条,英国2006年会社法17条。

3) 定款の性質を如何に解するかについて,わが国においては,契約の約款とす る説,組合契約が発展したものとする説,自治法規であるとする説が主張されて きており,自治法規説が通説となっているが(上柳克郎ほか編『新版注釈会社法

(2)』55頁〔中西正明〕(有斐閣,1985)),第二次世界大戦前においてはむしろ契 約説が有力であったようである(高山藤次郎『新訂會社定款論』61頁,65頁(巖 松堂書店,1939))。

4) 神田秀樹・藤田友敬「株式会社法の特質,多様性,変化」三輪芳明ほか編『会 社法の経済学』464頁(東大出版会,1999)。

5) 棚橋 元「合弁契約における株主間の合意とその効力――取締役選任・解任と 拒否権に関する合意について」判タ1074号49頁(2002)参照。

(3)

定款に形式的に記載された内容が常に実質的な意味で定款と考えられるか が次に問題となる。換言すれば,形式的な定款規定がすべからく実質的な 定款機能を有するかである。そして,法律に定めのない定款規定が効力を 有するかどうかを判断するために,当該規定の内容に関して根本的な組織 規範性を特定できるかという問題が検討されなければならない。

 本稿は,まず定款の法的性格,定款の解釈,定款変更を比較する。その 上で,定款に定められた株主の権利・義務,株主の資格要件,第三者の権 利を取り上げて会社法の強行法規性との関わりを分析し,わが国会社法に おける定款自治の範囲の検討への示唆を得ようとする。

2. 英     国

)定款の法的性格

 英国の会社定款は,基本定款(memorandum)と通常定款(articlesof association)の2つの書面から構成されてきた。基本定款は一般にその内容 は簡潔であり,商号,目的,登記地,資本金,株主の責任が有限であるこ と,公開か非公開かが記載され,会社の内部組織などは通常定款で定めら れてきた6)。そして通常定款は基本定款の下位に位置するものとされてき 7)。Ashbury Railway Carriage and Iron Co Ltd v.Riche事件8)における Cains卿の言葉によれば,「基本定款は,それだけでは会社活動がそれ以上 に進まないエリアである。その内部において株主は自らがふさわしいと考 える自らの統治規制を創り出す。」という機能的な区分が,基本定款と通常

―  ―25 640(210)

6) PAULL.DAVIES,GOWER’SPRINCIPLESOFMODERNCOMPANYLAW,14(Sweet&

Maxwell,th ed.1997)(hereinafter,referred to asDAVIES,1997. 基本定款の書 類の長さは実質的に事業目的の記載に左右される。1989年改正までは,厳格な ultravires法理のために事業目的が詳細に記述されることが多かった。

7) JOHNH.FARRAR& BRENDAHANNIGAN,FARRAR’SCOMPANYLAW,116(Butterworths, th Ed.1998)(hereinafter,referred to asFARRAR. SeealsoGuinnessv.Land

Corporation ofIreland [1882]22Ch D 349.

8) Ashbury Railway Carriage and Iron Co Ltd v.Riche [1875]LR HL 653. See FARRAR,at116.

(4)

定款の間に存在していた。

 基本定款と通常定款の並存は,今日の有限責任会社であるところの特許 状会社が国王または議会による特許状の承認をもってはじめて設立するこ とができた近代的会社法以前の会社草創期の名残りである。国王または議 会の承認は,会社形態が現在の姿を見せた時点において登記に置き代えら れた。さらに時代を経て,極めて厳格に規制されていた基本定款の変更要 件が緩和され9),それに伴い今日においても2つの定款の区別を維持する ことが必須であるかどうかが議論されてきた10)。そして,2006年会社法で は,通常定款を会社の基本的規約(constitution)と位置付け,基本定款は 会社設立時の発起人の会社設立意思と株式を取得し株主となる意思を確認 するだけの定型文書とし,1985年法までとはその役割を逆転させる改正を 行った11)

 基本定款と通常定款の契約的性格については古くから認識されており12) このことは1985年会社法14条で明示的に確認された。すなわち同条1項は,

「本法の定めるところにより,基本定款と通常定款は,登記されることに より,あたかも各社員がそれぞれに署名捺印し,そして各社員においては 基本定款と通常定款のすべての規定に従うことの約束が含まれているかの ように,会社および社員を同じ程度に拘束する」と規定した13)。当該規定 に関しては,1985年会社法制定以前から会社自身が定款の当事者であるか どうかが議論されてきていたが,2006年会社法は「会社の定款規定は,あ

―  ―26 639(209)

9) DAVIES,1997,at14.

10) The Company Law Review Steering Group,Modern Company Law fora Competitive Economy,The StrategicFramework,DTIConsultation Document, 1999,at75. SeeEILISFERRAN,COMPANYLAW ANDCORPORATEFINANCE,63946

(Oxford Univ.Press,1999)(hereinafterreferred to asFERRAN,1999. 11) CompaniesAct2006,ss.,17,18. 既存の会社のmemorandumは,2008年10

月1日以降articlesofassociationの一部とみなされる(CompaniesAct2006,s. 28)。

12) E.g.,Re Tavarone Mining Co.,Pritchard’sCase (1873)LR Ch App 956. 13) CompaniesAct1985,s.14(1).

(5)

たかも会社側と各社員側がそれに従うことの約束であるかのごとく,会社 および社員を同じ程度に拘束する」と定めることで立法的にこれを明確化 した14)。定款は会社と株主の間および株主同士の契約であるが,しかしな がら,多くの点で「普通の」契約とは異なる。定款は当事者の関係を長期 に渡り規整する「関係的契約(relationalcontract)」と位置付けられてい 15)

)形式的意義の定款と実質的意義の定款

 イングランドおよびウェールズで設立される会社は,ウェールズのカー ジフにある登記所で,またスコットランド,北アイルランドで設立される 会社は,エジンバラ,ベルファストでそれぞれ登記することで設立される。

ここでは登記要件が形式的に満たされているかがチェックされた上で,設 立証明が発行される。2006年会社法では,申請書類に記載されるのは,商 号,登記地,有限責任の有無,公開または私会社のいずれであるかであり,

通常定款がそれに添付される。通常定款が申請されないか,または申請さ れた通常定款がモデル定款の適用を排除していない場合は,適用可能な限 りにおいてモデル定款がその会社の定款となる16)

 通常定款には,制定法または公序に反する規定を設けることができない17) このため登記手続の際は,法律が定めるすべての要件を満たしていること

―  ―27 638(208)

14) CompaniesAct2006,s.33(1). 1985年会社法14条の淵源は1844年JointStock CompaniesActに遡る。DAVIES,1997,at116.

15) BRIAN R.CHEFFINS,COMPANYLAW:THEORY,STRUCTURE,ANDOPERATION,459

(Oxford Univ.Press,1997)(hereinafterreferred to asCHEFFINS,1997. R.R.

Drury,TheRelativeNatureofa ShareholdersRighttoEnforcetheCompany Contract,[1986] C.L.J.219,221. MichaelJWhincop,Relationaland Doctrinal CritiqueofShareholderSpecialContracts[1997], Sydney L.Rev.18. 関係的契約論 に関する邦語文献として,内田 貴『契約の時代』29-40頁(岩波書店,2000)

参照。

16) CompaniesAct2006,s.20. 1985年会社法でもTable Aが適用されるとされて いた(CompaniesAct1985,s.12)。

17) FARRAR,at118.

(6)

の宣誓書を提出しなければならない18)。制度上は,登記官がすべての要件 を満たしていることを確認することになっているが,登記が拒絶されるこ とはまれであり,宣誓書が提出されていることをもって足りるとして実務 上取り扱われてきた19)。2006年会社法はこの実務を条文をもって認めたも のである20)

 英国では,形式的意義の定款と実質的意義の定款の区別はなされていな い。登記された通常定款がモデル定款の適用を排除または修正しない限り モデル定款の規定が適用されるため21),実務上その区別が問題になること はない。

 しかし,誰が定款を争うことができるかという問題に関しては区別がな される。すなわち,内部者としての権利と外部者としての権利(outsider right)の区別である。その主旨は,社員としての権利を強制する(enforce ことはできるが,それ以外の資格(例えば取締役としての資格)での権利 を強制することはできないというものである22)。この原則を最初に示した Hickman vKentorRomney Marsh SheepbreedersAssociation事件は23) 社員であると否とを問わず,社員の資格以外の,例えば弁護士,発起人,

取締役の資格においては,定款によって与えられることが意図されている 権利を会社に対して強制することはできないと述べた。また,Beattie vE.

and F.Beattie Ltd事件では24),株主から訴えられた取締役(株主でもある)

が,定款の仲裁規定を援用することができるかが争点となり,裁判所はこ れを否定した。その理由として,定款に与えられた契約的効力は,社員の

―  ―28 637(207)

18) CompaniesAct2006,s.13(1). 19) FARRAR,at118.

20) CompaniesAct2006,s.13(2). 21) CompaniesAct2006,s.20.

22) 大野正道『非公開会社の法理』80頁(システムファイブ,2007)(初出は,

「イギリス小規模会社の法構造」富大経済論集26巻1号24頁,2号26頁(1980))。

23) Hickman vKentorRomney Marsh SheepbreedersAssociation,[1915]Ch 881.

24) Beattie vE.and F.Beattie Ltd,[1938]Ch 708.

(7)

資格としての社員の関係に適用されるが,本件紛争の実体は,会社と取締 役の間の争いであり,定款の仲裁規定が適用される社員間の争いとは区別 されるとした。

 Wedderburnは,外部者・内部者を形式的に区分することに疑問を呈し,

より実質的な論拠を見出そうとする立場から,社員としての資格で訴えて いることが明らかである限り外部者の権利も間接的に強制できるとした25) これに対し,Goldbergは,そのような条件に付加して会社機関の権限行使 に付随する場合に限り,社員は定款規定を援用することができると論じた26) Farrarは,外部者に権利を与える定款規定は真の定款(true articles)では ないのではないかとして,定款の規定内容がモデル定款から離れるほど定 款規定として正当化することは困難になるとする。しかしながら,取締役 の地位に関する定款規定については,定款により当該取締役に義務を課す 一方で,権利は認めないとなると相応の問題が残ることもFarrarは認識し ており,この要件がどれほどの影響をもたらすかについては必ずしも明ら かにしていない27)

)定款の解釈

 定 款 は 第 一 義 的 に は 客 観 的 に 解 釈 さ れ る。通 常 定 款 は 商 業 文 書

(commercialdocuments)と考えられ,合理的な事業効率性(reasonable businessefficacy)を与えることを主眼に解釈されなければならない。

Holmesv.Keyes事件28)においてJenkins判事は,「私は会社の通常定款は 事業上の書類として扱われるべきであり,事業に合理的な効率性を与える

―  ―29 636(206)

25) K.W.Wedderburn,ShareholdersRightsand theRulein FossvHarbottle,

[1957]C.L.J.194,21213.

26) G.D.Goldberg,TheEnforcementofOutsider-Rightsunders.20(1) ofthe CompaniesAct1948,35M.L.R.362,365(1972).  大野・前掲注22)82頁以下が 両説を詳細に比較分析している。

27) FARRAR,at12224.

28) Holmesv.Keyes,[1959]Ch 143,at146.

(8)

べく構成されなければならないと考える。意味不明の結果になるよりも定 款で用いられている言葉に依拠した構成は許容される。」と述べている。

 定款は会社と株主間の契約であるとされることから,一般的な契約解釈 のルールは適用されるが,当事者の意思は定款中に記載の有無に関わらず 考慮されない。背景には,当事者の意思を解釈することは裁判官が定款を 改定することになり,定款の変更権限は専ら株主総会に強行的に与えられ ていることと抵触するという考え方がある29)。しかしながら,定款の文面 から明らかであるならば,黙示の合意を読み取ることは可能である。すな わち,定款の文言が黙示する内容は,定款が用いられる特定の商業的な場 面でのアド・ホックな gap fillerとして作用すると理解されることにな 30)。定款外の状況は,黙示の合意を読み取る目的では根拠とはされな 31)。この結果,例えば将来の株主については,株主名簿に登録されるこ とではじめて定款を援用することができるため,その保護をどのように考 慮するかが問題となる32)

)定款変更

 2006年会社法21条は,会社は特別決議により定款を変更することができ ると定め,出席株主の議決権総数の4分の3の多数決が要求される33)。少 数株主保護を目的とした決議要件である34)

―  ―30 635(205)

29) DAVIES,1997,at117. FARRAR,at117. Scottv.Frank F Scott(London Ltd

[1940]Ch 794.

30) Equitable Life Assurance Scoiety v.Hyman [2002]AC 408(House ofLords. 31) Bratton SeymourServicesCo.Ltd v.Oxborough [1992]BCLC 693(Courtof Appeal. SeealsoTowcesterRacecourse Co Ltd v.The Racecourse Association Ltd [2002]EWHC 2141(Ch,[2003]BCLC 260.

32) DAVIES,1997,at117. FERRAN,1999,at317は,事業の効率性にも言及している。

外部状況を顧慮しない制限的なアプローチに対する批判としてStephen Copp, Companylaw and alternativedisputeresolution:an economicanalysis,[2002] The Company Lawyer361,364.

33) CompaniesAct2006,s.283. 34) DAVIES,1997,at709.

(9)

 2006年会社法21条(1985年会社法9条)は強行法規であり,特別多数の 要件は定款で引き上げることはできないと考えられてきた35)。1985年会社 法では,私会社については,書面決議で定款変更を行う場合は,全株主が 変更に同意しなければならないとしていた(381A条)。2006年会社法では,

新たに固定化条項(provision forentrenchment)が設けられた。すなわち定 款の一定の条項について,設立時の定款または定款変更による場合は株主 全員の合意により,一定の条件が成就した場合か,または特別決議に適用 されるよりも制限的な手続きによってのみ,変更または廃止することがで きる旨の定款条項を設けることができる36)。この規定は,1985年会社法ま では,ある定款規定について株主が変更を望まない場合は,それを基本定 款に含めることで実現できていた効果を引き続き実現することを可能にす る。英国のコモン・ローでは,会社は制定法により定款規定を特別決議に より変更する権限を与えられており,会社からこの権限を奪うような定款 規定は無効であることが確立されている37)。会社は定款変更権限を自ら排 除することはできない。2006年会社法22条3項もこの趣旨を定めている。

 1985年会社法では,基本定款は,法律に明示の定めがない限り原則とし て変更することができなかった38)。さらに1856年JointStock Companies Act制定の際は,基本定款は全く変更不可であった。英国では厳格なultra

―  ―31 634(204)

35) Malleson vNationalInsurance Corporation [1894]Ch 200. SeeGRAHAM

STEDMAN& JANETJONES,SHAREHOLDERS’AGREEMENTS,§ ..4(Longman,nd ed.

1990).

36) CompaniesAct2006,s.22.

37) Allen v.Gold ReefsofWestAfricaLtd [1900]Ch 656. 松尾健一「イギリス 会社法における定款変更の限界」川濱 昇ほか編『森本 滋先生還暦記念 企業 法の課題と展望』348頁(商事法務,2009)に判決の概要が示されている。See alsoRussellvNorthern Bank DevelopmentCorporation Ltd [1992]WLR 588:

[a provision in acompany’sarticleswhich restrictsitsstatutory powerto alter those articlesisinvalid”. より詳しくはMcGlynn,Theconstitution ofthecompany: mandatorystatutoryprovisionsvprivateagreements,[1994]The Company Lawyer, 301以下参照。

38) CompaniesAct1985,s.2(7).

(10)

vires理論との関係で,会社の目的条項の変更について,長らくの議論を経 て,特別決議により目的条項を変更することができるようになった39) 2006年会社法は,基本定款を設立時においてのみ実質的な役割を果たす文 書に位置づけ,その記載項目も大幅に削減されたため,その変更の必要性 は実質的になくなったといえる。

 第三者が定款を援用して定款変更権に影響を及ぼすことはできない。定 款変更権は制約することができず,また他人に許諾したり,承認権を付与 したりすることはできないとされているためである。第三者は,定款中の 黙示の権利を行使することもできない。しかしながら,第三者が株主との 間で,第三者の指示に基づいて株主が議決権を行使すると合意することや,

また全ての株主が定款変更を行わないと合意することは,定款外の契約と して強制可能性(enforceability)が認められる40)

3. ド  イ  ツ

)定款の法的性格

 ドイツでは,法人の定款(Satzung41))について,団体的概念と契約的概 念とが示されてきた42)。契約理論(Vertragstheorie)は,定款を社員間の契

―  ―32 633(203)

39) 詳しくはFARRAR,at99114参照。

40) SeePuddenphattvLeith [1916]Ch 200,and GreenwellvPorter[1902]Ch 530.

41) 有限会社の定款を示す法律用語はGesellschaftsvertrag“であるが,一般には

Satzung“が用いられている。A.BAUMBACH/A.HUECK/FASTRICH,GMBH-GESETZ,18.  Aufl., C. H. Beck Verlag,2006, § ,3(„BAUMBACH/HUECK/[BEARBEITER. Gesellschaftsvertragは合名会社,合資会社,匿名組合および有限会社で,

Satzungは民法上の社団,株式会社,相互保険会社でそれぞれ用いられる。

Satzungには客観的解釈基準,Gesellschaftsvertragには主観的解釈基準が適用さ れるとして両者の区別に意義を持たせる見解もある。増田政章「定款規定の解 釈――序説――ドイツ法を中心に――」近法49巻1号137頁,139頁(2001)。

42) WERNERFLUME,ALLGEMEINERTEILDESBÜRGERLICHENRECHTSDIEJURISTISCHE

PERSON, Springer Verlag,1983, S.316(„FLUME,1983. W. Hadding, KorporationsrechtlicheoderrechtsgeschäftlicheGrundlagen desVereinsrechts?,in:

(11)

約と捉え,民法が適用されるとする。法人に新たに加入した社員は加入す る こ と に よ っ て 定 款 を 承 諾 し た こ と に な る。こ れ に 対 し て 規 範 理 論

(Normentheorie)は,定款は団体自治(Vereinsautonomie)を基礎とした 客観的法規範を形成し,合同行為(Gesamtakt)により生まれるとする43) すなわち定款は団体法的(korporationsrechtlich)な性格を有し,それは会 社当事者が同意をしたか否かにかかわらず定款に服することを意味する。

形成の自由(Gestaltungsfreiheit)は,この観点から法律によって定められ たに過ぎないと位置付けられる。そして規範(Norm)と契約(Vertrag)の 実質的な相違は,契約が個人の利害の妥協の産物であるのに対し,規範は 個人の利害を超えたある目的を求めて策定された計画であるところに求め られる。

 BGHは「社団が設立されると同時に,その定款はもはや契約ではなく,

社員が従う条件を示し,社団法としての効力を有する」44)と述べており,あ る種の妥協を選択したともみられている。すなわちこの説明によれば,設立 時における社団の定款は契約であり,設立後に社員間において客観的に法規 範として適用されることになる。この考え方は修正規範理論(modifizierte Normentheorie)と呼ばれる45)。これに対し多数説は,資本会社の定款は特 別な性格を有する契約であり,債務法と社団法の色合いを兼ね備えた組織 契約(Organisationsvertrag)であるとしている46)

―  ―33 632(202)

FESTSCHRIFTFÜRROBERTFISCHER,Walterde Gruyter,1979,S.165ff. SOERGEL/ SCHULTZE-V.LASAULX,KOMMENTARZUMBGB,12.Aufl.,Verlag W.Kohlhammer,1987,

§ 25,11(„SOERGEL/SCHULTZE-V.LASAULX.HERBERTWIEDEMANN,GESELLSCHAFTSRECHT, Verlag C.H.Beck,1980,S.160(„WIEDEMANN,1980.

43) U.NOACK,GESELLSCHAFTERVEREINBARUNGENBEIKAPITALGESELLSCHAFTEN,J.C.B.

Mohr,1994,S.106(„NOACK,1994.

44) BGHZ 21,370,373. BGHZ 47,172,179. NOACK,1994,a.a.O.,S.106. K.

SCHMIDT,GESELLSCHAFTSRECHT,. Aufl.,CarlHeymannsVerlag,2002,§ („IK.

SCHMIDT,2002.

45) NOACK,1994,a.a.O.,S.106. SOERGEL/SCHULTZE-V.LASAULX,§ 25,15. 46) M. HACHENBURG/P. ULMER, GESETZBETREFFEND DIE GESELLSCHAFTEN MIT

BESCHRÄNKTERHAFTUNG:GROßKOMMENTAR,. Aufl.,Walterde Gruyter,1992,§ ,

参照

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