「直接原価計算と価格政策」(二)
その他のタイトル Direct Costing and Price Policy (II)
著者 末政 芳信
雑誌名 關西大學商學論集
巻 2
号 2
ページ 133‑157
発行年 1957‑06‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00021838
﹁直接原価計算と価格政策﹂
原価計算における価格政策目的については第一項で取り上げたがその内容乃至意味も種々のもの即ち原価の補償
計算又は利益計画の一部面として考えるかが問題となり︑近年利益計画の一環として価格政策目的達成の気運が強
くなった︒これは価格政策を単なる経営の部分的政策として考慮されるよりも︑企業の全般的に亘り経営活動の実
施に対する積梱的な意思決定として考えられる経営政策又は経営方針に関聯して︑その総括的且基本的な全般的方
針の具休化の問題として利益管理が論ぜられる様になった︒この点につき古川教授の説明を引用すると︑
理はむしろ企業における経営管理の基本問題であり︑とりわけ綜合的経営管理の問題として︑さらに広い観点から
取りあげられる必要がある︒むしろそれは企業における全般管理の最大の任務とする全般方針の設定の具体化とし
て︑利益計画の樹立とその実現をめぐる経営管理の一形態であって︑まさに企業の綜合管理方式である︒したがっ
てそれは︑企業のトップ・マネジメソト・コントロールの展開として理解される必要があるといわなければならな
l l
いぶこの様な意味において考えられる利益管理の問題は利益計画と利益統制に分けられ︑その利益管理においては
企業の実現せんとする利益計画の樹立が中心となるのである︒従ってこの利益計画の樹立は企業の全般方針の設定
直接原価計算と価格政策
(1
1)
︵末
政︶
︵ 二 ︶
末
政
二七
芳
信
﹁利
益管
134
直接原価計算と価格政策︵二︶
にとって基本的重要問題であり又企業の最高方針と密接な関聯をもっていなければならない︒この様な利益計画の
樹立のために損益分岐点分析︑又はCVP関聯乃至p>比率及び限界利益図表が利用されるのであり︑利益計画は
単にそれらの計算技術を問題にするのではないのである︒それ故又企業の生産・販売・財務・管理等の諸活動が相
互に整理された上企業全体として統一的且綜合的に活動を遂行出来る様に利益計画は樹立されねばならない︒即ち
企業を全体とした統一的観点からの全般方針と結びついた綜合的経営管理の問題である利益計画は生産・販売・管
理の各活動の全般に亘って行なわれる︒故に利益計画的視点からの価格政策の問題も本質的にはこの様な立場から
理解せねばならぬ︒従ってこの様な価格政策の問題は利益計画における全般を占める問題ではなく︑その他の諸政
策との関聯の元に考察されるべき性質のものであり︑利益計画の一局面の問題と云う事が出来る︒
この様な利益計画視点から価格政策を考察する場合当然︑原価と売価の関係における原価の意味が重要な問題と
なって来るのである︒この点既に引用したニッカーソン教授も多くの要因によって原価の意味が異る故に種々の原
価のクイプと原価に対する売価の関聯に意をそそがれている︒又ディーソ教授の﹁価格設定の為の原価の有効な利② 用は原価概念及び異なる目的の為異なる原価の原理に関する明確な理解が必要である︒﹂と述べられた事は注目せね③ ばならぬ︑この異なる目的の為に異る原価の思考は山辺教授によりJ.Mクラークの名句として強調されている︒
これは価格政策目的に種々の役割が与えられる時考えねばならぬ重要な意義を持つものである︒とりわけ利益計画
の樹立に関聯して使用される
p l a n n i n g , p r o j e c t , e c d i s i o n , m a k i n g a l , t e r n a t i v e c h o i c e
等の用語に適応する原価
棚念の問題については特に重要であると思う︒ディーン教授は経済分析が如何に正統的会計記録から経営の諸決定
に関聯ある原価側定を作り出すかを示すと一云う目的でもって原価の問題を取り上げられ︑どんな原価の概念が種々
︵末
政︶
ニ八
︵末
政︶
二九
囚の種類の諸経営問題に有用であるかを見出さんとされている︒特に経営政策決定問題のために仕立てられる原価栃
念を経済分析との関聯の元に考えられた︒この様な思考から﹁政策決定原価﹂
( d e c
i s i o
︑n m
ak
in
g
c o s t
)
を先ず問
題にされた︒彼の叙述を紹介する︒彼は﹁経営諸政策決定は将来の為の計画を意味し︑又対抗する計画の中での選
択を必要とする︒これらの選択をなすに当って将来の経費は収益に関する各代替的計画の成果についての見積が必
要とされ︑叉原価測定は選択の経済的諸性格に仕立てあげねばならない︒経営諸政策決定に重要である唯一の原価固は未来原価である事を認めるべきである﹂と述べた︒又これら政策決定に関する良き測定を得る様にする為どうす
るかとし︑第一要件は選択に意味された諸代替的計画の正確な描写であり︑第二要件は最も適切であるものを選び
出す為に︑異なる原価棚念の理解である︒又第三要件は二三の代替的基準における会計記録の柔軟な分類であり︑
第四要件ほ量的分析における巧妙さ及び熟練であると述べ`異なる種類の管理諸決定に適切な原価慨念について明
確な描写を種々行っている︒これらの点に先ず注意しながら︑政策決定乃至利益計画に関聯する原価を見て行かな
ければならない︒しかしここで取り上げるのは政策決定問題即ち利益計画に関する全般的な原価慨念についてでは
なく︑価格計算乃至価格政策に関聯する原価厩念︑その内特に全体原価計算及び直接原価計算に関する原価概念に
ついてゞある︒即ち利益計画の一環として価格政策の問題において全体原価計算と直接原価計算を比較対照し︑そ
の特質を調べる為に︑全体原価計算による全体原価及び直接原価計算による直接原価が政策決定乃至計画の為の原
価であるかが問題となるのである︒しかし全体原価計算による全体原価棚念よりも︑直接原価計算による直接原価
の概念が近接の原価棚念と混乱を生じ易いので︑先ず直接原価及びそれに関聯する原価棚念を考察の上直接原価計
算と全休原価計算を比較論究しようと思う︒その様な意味において先ず直接原価
( d i r
e c t
c o s t
) 限界原価
( m
a r
g i
n a
l
直接原価計算と価格政策︵二︶
f36
価と限界原価の関係について同教授は直接原価計算の論述において 直接原価計算と価格政策︵二︶
c o s t
)
差即芦犀価
( d i f
f e r e
n t i a
l
c o s t
) ~如加回か価i(incremental
c o s t
)
増加原価はディーン教授によれば活動の性質乃至水準における変化に関する原価であり︑それは各種の変化即ち
新生産物の追加︑販売領城の変化︑新機械の追加等に関係する︒それは限界原価と同じであると解釈されるけれど
も︑誤界原価は非常に制限された意味即ち生産高の追加単位の原価に関係する︒反対に生産高の変化によって変え
られない原価を埋没原価
( s
u n
k
c o s t
) とした︒大抵の経営諸決定は本質的に増加する原価測定を必要とするが︑
増加原価は必然的に変動原価乃至現金原価とは限らないし︑増加原価と埋没原価の関係は回避可能原価
( e s c
a p a b
l e
cg
t)
と避けえぬ原価
( u
n a
v o
i d
a b
l e
c o s t
)
の関係と基本的に同様であるとされた︒その回避可能原価︑回避不能⑧ 原価の分類はディヴァイン教授によれば普通の固定・変動区分を示す為に使用されると述べている︒又同教授は限
界原価は特定の生産高が与えられた場合更に一単位生産の追加又は減少から生ずる全体原価における変化として定
義され︑限界原価の用語は経済学者によって使用されるとした︒しかし原価会計係は数学的に趣のある差別原価の
用語を使用した︒即ち生産単位の選択は任意であり︑事実会計係によって差別原価の基礎として一個又は一組の製
品が選択される︒経済学者は桓小単位を常に選択し︑その限界原価は会計係及び事業家によって使用される変動原
教授が経済学者は限界原価を︑会計係は差別原価を︑ の関係又は相違について考える事にする︒
価と略々等しい︒又実用経済学者
( u t i
l i t y
e c
o n
o m
i s
t )
は一単位追加生産によって必要となった全休原価の増加を
示めすため増加原価の使用に賛成すると述べた︒そして技術的に限界原価︑差別原価及び増加原価は極少単位に関
係しているが︑定義の細かな区別は原価作業
( c o s
t w
or
k)
において殆んど必要でないとしている︒この点マッツ
^ u
又技術家は増加原価を使用すると述べられている︒又変動原
︵末
政︶
d i r e
c t (
v a r i
a b l e
o r
a m
r g
i n
a l
) c
o s t
の用
宰
g
゜
︵末
政︶
り
U
を使用されている︒直接原価と限界原価の関係は英国おにいても同じ様に解され︑使用されている︒即ちローレン
ス・ハンフレースは一定条件の元では直接原価は一商品当り同︱一定金額となり︑又更に一個を追加生産する時に
d
生ずる限界原価は同一条件の元では直接原価であると一kう意味から﹁直接乃至限界原価﹂の用語を使用している︒
従ってこの様に考えるとマッツ教授の様に直接原価︑限界原価︑変動原価は大体同じ意味となる︒
AAA一九五一年の報告によれば差別原価は活動のあらゆる変動から生じた原価の特殊要素における変化叉は全
休原価における増減であり︑操業度変化より生ずる全体原価における変化に適用される︒その場合差別原価概念は
限界原価と同義語になる︒しかしその棚念はより広い適用性を有する︒或る条件の元では差別原価は変動費のみよ
りなり︑差別原価は通常増加の面が考えられるが同様に減少の面を有する︒又政策の調整を意味する大抵の経営諸t 決定において︑差別原価は最も関係ある原価であると述べていな︒
ディーソ教授によると︑変動原価は操業度における変化に伴って全体としてそれらが変化する程度の基準で固定
原価から区別される︒厳密には変動原価は生産高の連続的函数の如くに変化する所のものに限定され︑固定原価は
全く変化しない所のものである︒故に固定原価は全体として一定であり︑生産割合に伴って単位当り変化する︒従
って固定と変動は生産割合に対する原価の順応の程度に依存する︒変動及び固定原価の区別は原価及び利益に関す
る売上高変動における短期的成果を予測するに当って重要である︒損益分岐図表︑弾力性予算はこれの適用を示すハと論じられていぶ︒
さて変動費を生産物原価︑固定費を期間原価として取扱うが︑その場合の生産物原価と期間原価の慨念をAAA
の一九五一年の報告によって見ると生産物原価は生産高の単位と関聯した原価であり︑棚卸資産価格となる原価で
直接原価計算と価格政策︵二︶
138
直接原価計算と価格政策
(1
1)
ある︒又財務諸表の作成用語のみならず︑一般の価格計算目的及各種類の製品及各用役の利益性を確めるために使 用される︒期間原価は期間の収益に関係し︑生産物原価との対比で使用される︒又直接原価は一単位生産高又は経 営活動の部分に明確に追跡される原価である︒この原価は生産物原価決定の領域の中で特に重要であると記述され
日J
てい
る︒
以上諸学者の論述を見て来たがそれを要約すると︑限界原価︑差別原価は厳密に選択する単位の相違によって異 るが︑原価計算においては柩少単位での考察は殆んど必要でないので広い意味において同じものと考えられる︒増 加原価は差別原価より広い意味で使用されるが大体同じ意味に使用される︒その様な限界原価︑差別原価︑増加原
. . . .
. . .
価は経営諸決定の為に有用な原価として利用される︒それらの原価は一定条件の元で変動原価の性質を有する︒又 直接原価計算における直接原価が変動原価即ち生産物原価を意味するものと考えると限界原価︑差別原価︑増加原
t
価︑変動原価︑生産物原価︑直接原価は厳密な意味では差が認められる汎`
従って︑それらの概念はそれ人\の目的に即応して政策決定並びに計画の為に使用される︒例えば操業度削減の揚 合回避可能原価として問題となる︒この様な意味で直接原価計算の直接原価を考察しなければならない︒
さて政策決定乃至利益計画の面における直接原価計算による変動原価と全体原価計算による全体原価との比較考 察をしなければならない︒しかし前述によって変動原価の性格は略々明らかである︒ここでは全体原価の性格を特 に見て行かなければならない︒その第一の問題点は全体原価は固定費部分を含む事であり︑その固定費が政策決定 に如何なる関聯を有するかである︒固定費は操業度の変動によって増減しない費用であり︑操業度政策によって操 業度増加が行われても無関係な費用となる︒従って政策決定︑代替的諸方法選択の為に無関係のものとして一般に
︵末
政︶
一定条件の元では大体同じ様になる︒
︵末
政︶
取扱われる︒全休原価計算はかかる固定費を含む為に政策決定の関係において批判を受ける︒ニ︱︱一の学者による批
判を挙げると次の如くである︒
ローレソス・ハソフレースによれば︑全体原価は固定費の配賦
( p r o v i s i o n )
の短所とされた︒即ち固定費は配賦計算されるが︑固定費の性質より見てその計算が正しく行われ得ない︒これは
一期間の固定費が一定としても︑生産数量の変動により配賦計算の前提要件が狂う為である︒従ってその配賦計算
によって得られた原価の報告は経営によって歓迎されない︒即ち配賦計算による全体原価は調盤を受けるべく仮定
された原価であり︑調盤の計算が行われるまで実際の全体原価がわからない為︑販売部長は常に変動する原価にま
ごつかされ︑販売政策としての販売価格の決定に困難すると述べている︒又一期間の生産量と販売量が相違する場
合には前述の問題は複雑となり︑固定費の調整は製造原価との関聯でなれければならない︒しかし調整計算は濡足
なものが出来ないだけでなく︑製造原価を一層こじつける効果しか持たない︒この様な配賦過不足調製の欠陥を全閻体原価計算の第二の短所であると論じている︒
ディーン教授は製造原価の会計配賦に関する項において︑政策決定の為に﹁全体単位原価﹂は間違っている︑多
くの経営諸問題の為に︑原価配賦が政策決定に伴い変化する間接費に限定されるならば良き決定が行われるで砂あろうとし︑配賦ほ変動間接費にのみ限定されるべきであり︑変動原価のみが政策決定に有用であると論じている︒
この点直接原価計算による変動原価の問題との関聯で注目すべきであると思う︒同じ様な考え方から他の箇所にお
いて︑正統的財務会計による原価即ち実際全体原価は経営諸決定の為の適切な原価概念でないとし︑異なる経
^刊
営問題が異る種類の原価を要求する点を論じられた︒従って全体原価が政策決定及び計画に不適当な事がうかゞわ
直接原価計算と価格政策︵二︶ を含むが故に全体原価計算の一っ
'
ム0
計算より直接原価計算による事が優れている︒ 直接原価計算と価格政策︵二︶
又アーリー教授によれば財務会計が原価の総計を求める為にその主旨は配賦であり︑その原価計算の究模の
目的は平均原価及び全体原価である︒他方計画及び統制に役立つ管理会計は責任関係の分析に直接関係し︑その主
旨は"区別"であり︑計画及び政策決定の為の管理会計における原価計算の目的は限界原価である︒これは固定費
・変動費の区分把握及び変動原価の働きに注目する事により助けられると述べ︑又その為には原価﹁配賦﹂を無視⑳ しこれを避け︑特に割当可能な回避可能な原価を確立する事であると論じている︒アーリー教授の見解を見ると政
策決定の為の原価計算の目的は﹁配賦﹂計算による全体原価ではなくて︑限界原価であり︑特に変動原価に注目す
る事とされたのである︒従って教授の限界原価は必ずしも変動原価と一致する概念ではないが限界原価は大体に変
動原価である場合が多い︒彼の論述は変動原価を問題とする直接原価計算と全体原価を問題とする全体原価計算の
政策決定の為に果す役割の相違を示したものと見る事が出来る︒⑫ 尚ラング・マックファーランド・シフは代替的選択に用いられる原価として次の三つの性質をあげている︒田そ
れは未来原価であること︒②それは部分原価であること︒③特別調査によって得られる原価であること︒未来原価︑
特別調査の問題は一応ここで論及しないとしても︑②の部分原価である事は当然で全体原価に対応する用語であっ
て一般に限界原価︑変動原価等を意味する事は云うまでもない︒従ってかく見ると政策決定の為にやはり全体原価
利益計画の問題として全体原価計算と直接原価計算を対比する場合単に全体原価と直接原価の比較論究を行うの
みでなく他の面についても考えねばならない︒即ち従来の全体原価計算では単位当りの原価を目標とし︑又それに れ
る︒
︵末 政︶
四
︵末
政︶
基いて問題を思考する場合が多い︒即ち原価補償の問題についても単位原価的考察が中心的に行われたのであった︒
この点晶山氏は従来の原価計算の欠点として山政策決定のための計算思考の不足︒1これは全部原価による︒②四単位当り原価で考える事の二つをあげている︒この様に従来の全体原価計算では単位当り原価を問題としたのであ
った︒これに対し直接原価計算ではその期間全体として問題を考察しようとする所謂CVP関聯で見ようとするも
のである︒それがひいては直接原価計算が種々の経営政策の統合された形で導きだされた利益計画及び諸政策決定
の為に有用とされる点である︒従って価格政策の問題を前述せる如く原価補償面と利益計画面に分けて取り上げた
のはこの様な問題を考慮に入れたからであった︒故に利益計画の一環として価格政策は単に単位価格を問題とする
のではなく価格即売上収益の関聯で見なければならず︑
直接原価計算と価格政策︵二︶
一 五
ひいては価格政策は原価ー価格即売上高ーー'利益関聯で
論じられなければならない︒
註 山 古 川 教 授
﹁ 経 営 方 針 と 利 益 計 画
﹂ 十 一 頁
③
D ea n , J. Ma na ge ri al c E on om ic s. p. 4 5 6 .
③ 山 辺 教 授
﹁ 原 価 計 算 精 説
﹂ 十 九 頁
④
D ea n , J. i b i d . , p . 2 4 9 .
固
D ea n , J. i b i d . , p . 2 5 0 .
矧
D ea n , J. i b i d . , p . 2 5 0 . mD ea n, J.
ibid••p.p.265|2采.
⑧
De vi ne ,C .T .
ibid••P・父7.
⑨
De vi ne ,C .T . i b i d . , p . 5 6 4 . ( Matz•A.
"
Ma rg in al Co s t in g . "
h T e.
Ne
w Y or k C e r t i f i e d Pu bl ic Ac co un ta nt . J u ne . 1 9 5 0 .
仰
Ma tz ,A . i b i d . ,
142
直接原価乃至変動原価と全体原価の政策決定乃至利益計画に対する基本的な関聯を見て来たのであるが︑ここで は直接原価計算と全体原価計算が具体的な利益計画の問題でどの様に相違するかの問題を考えなければならない︒
それが又直接原価計算と利益計画の重要な点である︒勿論利益計画との関係で取り上げるとは云え︑利益計画全般 の問題を考察するのではなく︑利益計画の一環として展開される価格計算乃至価格政策の面において直接原価計算 と全休原価計算を対比するのでなければならない︒その手掛りとして︑利益計画の用具として利用され︑全休原価 計算より展開される所謂損益分岐点分析乃至損益分岐点図表と他方直接原価計算論的思考より展開される限界利益
(22)(21) (20) U9) U8) U7) (16)(15)(14) (13) (12)
四
直接原価計算と価格政策︵二︶
La wr en ce ,F .C .
&
Humphreys,E•N.
Ma rg in al Co st in g A. A. A. i b i d . , D ea n , J. i b i d . , p . 2 6 3 . A. A. A. i b i d . , ドイッ流の限界原価及び米国流のディファレソシャル・コストと直接原価との概念の相違については久保田教授﹁直 接原価計算﹂及び溝口教授﹁経営費用論﹂に詳細に論じられている︒
La wr en ce ,F .C .
&
Hu mp hr ey s, . E N.
ibid••p.p.15121.
D ea n , J. i b i d . , p . 3 1 5 . D ea n , J. i b i d . , p . 2 5 8 . E a r l y , J . S . Re ce nt De ve lo pm en t i n C os t A cc ou nt in g a nd "
Ma rg in al An al ys is .'
̀T he Jo ur na l o f P o l i t i c a l Ec on om y, Ju ne . 1 9 5 5 . L an g , J. ma cf ar la nd ,W .B .
&
S ch i f f, M . i b i d . , p . 5 7 0 . 畠山氏”ダイレクト•コストによる経営政策の決定“ポリシー•メーキング
︵末
政︶
p . 2 .
四十六ー四十七頁︒
一 六
︵ 末 政 ︶
「脱弁涸甫H尊:…•(焙湮澤+回油澤)i婢竺蛋鼎営脳 分析乃至限界利益図表の比較考察より始めようと思う︒
一 七
先ず損益分岐点分析の一般的な公式は売上高を
s(
Sa
le
s)
︑変動費を>
( v a r
i a b l
e c o
s t )
︑固
定費
を
f
︵ 巴
xe
d
c o s t
)
とす
ると
︑
l l とされる︒この損益分岐点算出の公式は次の様なラソグ・マックファランド・シフの公式化によってその意味が一
層明確に理解出来る︒即ち
f f
︵回 油濤
︶
f︵
国油 遷 0 1
ー
m r
︵溌
廻湮
盃笞
︶
Imミ0
涸温
細屈
睾︶
竺︵ 造脳 中踪 茄冷
L蚕 ︶
1
│ 1
1—ーー_s
である︒本来全体原価計算より出発した損益分岐点分析は限界利益分析と異なりラング・マックファランド・シフ による第二の式までが問題であり︑第三の式はその性質が異なる︒第三の式では明らかに限界利益と一云うものを抽 出してそれを中心として損益分岐点を算出しようとするものであり︑これは全体原価計算によって直接的に引出し 得るものではなく何等かの加工によらなければならない︒従ってこの限界利益はむしろ直接原価計算によって直接 的に抽出される︒これが又直接原価計算の本質でもある︒この様に考えて行くと前記ラング・マックファランド・
f
j.
シフによって等式化された公式は原価計算制度と云うものを根底にして考えると︵第二式︶と︵第三式︶
1 1 0 r m r は差異をみとめなければならない︒この様な関聯の問題について久保田教授は
国滞涸甫雰尊⁝⁝焙竪涸自l活竺画
11
4
ーt
ざ て ・
4又辻欠聯脳︶
直接 原価 計算 と価 格政 策︵
11
)
x︵
造脳 中踪 知〇 渇已 羞︶
11
f+
︵1 ‑ + )
1,4,4
売 ~.
上 高
オ ー 団
売 上 高
利益
麹
固蹄
原
オニ図
価
益 躇
9 r ー
.
I
利佃
原 オ 三 図
イ西
全体原洒計算による揖益分岐呉図表
直揺
原倍
計算
によ
る損
益含
怒哀
塑衣
において明白となる︒簡単な図表を示めせば次の如くになる︒
直接原価計算と価格政策︵二︶
図
と記述され︑全体原価計算と直接原価計算とは計算の構造上に相違があるから︑結果は同じであっても両者を区別 されねばならぬとされた︒従ってこの関係は全体原価計算による損益分岐図表と直接原価計算による限界利益図表
4
1℃
斗ヽ
て・
4又辻ト︵聯罫︶l
澄蚕 涸甫 県常 群﹂
︵末 政︶
限界剖益塑麦 一 八
価
︵末
政︶
損益分岐点分析及び限界利益図表に優位を認めなければならない︒
九
ッ
右記の図表によって直接原価計算と全体原価計算による損益分岐点分析の差異は限界利益分析と純利益分析との
関聯にあることが理解される︒即ち全体原価計算は直接純利益の把握測定を行うのであるが︑直接原価計算は先ず
限界利益を算定し︑しかる後その限界利益が固定費と純利益に如何に貢献するかと一ぞう
C o
n t
r i
b u
t i
o n
t h
e o
r y
の
展開であった︒従って利益計画にあっては︑この様な限界利益分析が重要視され︑多くの人々によって用いられる︒
その様な限界利益分析を行うのが又直接原価計算の本質乃至特徴である︒故に利益計画の手段として利用される損
益分岐点図表が全休原価計算より導かれるものよりも︑限界利益分析を中心とする直接原価計算によって行われる
しかし以上の損益分岐点の問題を考察するにあって注意しなければならないのは売上高を中心にして計算される
事である︒従って製造関係の固定費もその売上高との関聯の元に損益分岐点が算出された︒だが売上高と生産高が
同一の場合は一応問題が少いと考えられるが︑売上高と生産高が相違する損益分岐点分析は当然問題となる︒
カーソン教授によれば損益分岐点図表の大きな弱点はその前提が売上量
( s a l
e s
vo
lu
me
)
と生産量
( p r o
d u c t
i o n
vo
lu
me
)
を同一視する事であった︒③ らないと述べている︒これは製造関係の固定費の処理が問題となるからであり︑これが解決は全体原価計算によっ
直接原価計算と価格政策︵二︶ しかもそれ等は短期間においても一年以上の長期間においても事実同じくな
ては満足され得ない︒やはり何れの固定費も期間原価として処理する直接原価計算に優位を認めなければならない︒
売上高と生産高に差異がある場合にはその損益分岐点の位置は全体原価計算によると直接原価計算では金額的に相
違する︒例えば生産高が売上高より大である場合には全体原価計算による損益分岐点よりも高い位置になる︒その
問題は準備費用たる性質を有する固定費を全体原価計算では製品に配賦しようとする
a b
s o
r b
t i
o n
c o s t
i n g
による
146
直接原価計算と価格政策︵二︶
からであり︑そこに又問題があった事は前述の通りである︒故に売上高と生産高との差異がある場合には損益分岐
点の問題は全体原価計算によると直接原価計算によるとでは計算構造の面のみならず金額的にも相違する︒
さて利益計画の一環として価格計算乃至価格政策の問題は単に単位売価のみを問題とするのではなく売価ー売上
量ー原価ー利益関係の中で売価を取り上げる事である︒即ちCVP関聯の元において考察するのでなければならな
い︒この点ニッカーソン教授は﹁多くの会社において︑原価︑価格及び売上量関係の十分な理解が種々の問題に関④ 聯する方針決定を行わなければならない経営者に非常に有用である﹂とし︑それは﹁原価︑売上量及び価格が勿論
業務の利益性を決定する主要な要素乃至変数であな﹂からとした︒従って利益計画の一環としての価格政策はこの
様な原価ー価格ー売上量ー利益関係の問題として売価を見なければならない︒この様な価格政策に全体原価計算と
直接原価計算がどの様に関聯するか問題である︒即ち全体原価計算による場合と直接原価計算によるとでは︑前記
価格ー売上量ー原価ー利益関聯の把握が如何に相違するかの問題である︒それは直接的にはその関聯における原価
の計算把握が全体原価計算と直接原価計算とでは相違するが故であり︑その問題点は固定費の計算把握に関するも
のである︒即ち全体原価計算は所謂固定費を含む全体原価を把握し︑直接原価計算は変動費を生産物原価とし︑固
定費を期間原価として区分把握する点にあった事は一kうまでもない︒
価格ー売上量ー原価ー利益関係における価格政策の具体的問題としてヘッカート・ウィルソンは販売政策及び売6 価政策を次の如く述べていな`
1︑一定の売上高から得られる利益の予定
2︑売価の変動による利益への影響
︵末 政︶
四〇
︵末
政︶
価格引下げ限度の決定の問題を取り上げられている︒
4
︑或る販売地域に︑新たに販売員を常置せんとし︑或は製品倉庫を設けんとする場合に必要な売上増加
5︑生産能力の利用を増し︑
その内価格政策に直接関係する一般的問題は︑
2︑5
であ
り︑
3︑6は多品種生産物生産の場合の問題である︒し
かし売上高を単価x数誠として見れば1︑4の問題も勿論価格政策に関係する︒7
又晶山氏はダイレクト・コストによる経営政策の決定として次のものをあげられている︒
2︑製品生産割合の決定
かつ利益増加に寄与するために︑製品売価を切下げ得る限界の決定
3︑生産品種の切換えに関する諸決定
4︑販売価格に関する諸決定
5︑その他の諸方針決定
4
の販売価格に関する諸決定については更にい許容最低価格の決定︒回販売価格引下可否の決定︒り景産化による これらの問題が終局的には利益思考と結びついて考察されている事は利益計画の問題として当然であり︑その意
味において利益に関係する基本的要因を考えて見る必要がある︒
p r o f i t ) における変化は次の何れか一によるか︑或はそれらの結合によって生ずるとした︒
直接原価計算と価格政策︵二︶ 1︑製品別収益力の判定 6︑最大の利益を挙げるために販売増加を図る製品種類の決定 3︑売上製品の構成の変化による影響
四
即ち田製品売価の変化 マッツ・カリー・フランクによれば総利益
(g ro ss
'
勾8
化及
び︑
直接原価計算と価格政策︵二︶
③原価要素における変化である︒更に②の売上量変化は1︑売上量
(v
ol
um
e)
における変
2︑売上製品のクイプ︵︵製品組合せ
⑧ られると述べ︑又他の章即ちp>関聯の章においても利益の変動は次の四要因即ち︑山販売価格︐
︵叉は額︶③変動費︑山固定費によって生ずると述べている︒それらを更に利益と云う観点から盤理して次の六つ
^
"
5 の型に分けられた︒即ち
1︑純利益に関する価格変化の影轡
2︑純利益に関する売上量変化の影響
3︑純利益に関する価格及び売上量変化影響
4︑純利益に関する変動費増減の影響
5︑純利益に関する固定費増減の影響
6︑純利益に関する全四要素ー価格︑売上量︑変動費︑固定費ーの影響
一般に利益計画においてはこの様な関聯を根底にして考えねばならないが︑利益計画の一環としての価格計算乃至 価格政策の問題はやはり価格の問題を中心にして利益関聯即ち価格︑売上量︑原価︑利益関係を考えねばならない︒
従って価格政策の問題としては価格を中心にして前記のマッツ・カリー・フランクの型を再構成する必要があると 思う︒その様な観点から分類すると基本的には次の型になると思う︒
A︑売価と利益関聯
B︑売価と売上量と利益関聯 ②売上量における変化
︵末
政︶
(p
ro
du
ct
m i
x ) 又は販売組合せ︑
②売上商品の量
( s a l
e s
m i x ) )
における変化に分け 四
従って前述のヘッカート・ウィルソン並びに畠山氏のあげられた売価政策の種々の具体的問題もこの関係の中でと らえる事が出来るのではなかろうか︑その様な意味で各々の型について考えて見たい︒
A︑売価と利益関係
この場合売上数量と原価を一定として考えると︑売価の値上げは直接利益増加をもたらす︒即ち売上単価の値上 げ額に売上数量を掛けた金額が増加となる︒この点前記マッツ・カリー・フラソクは具体的な数字をあげ損益分岐
H u 点の位置の変化まで述べている︒しかしこの問題では一字うまでもなく全体原価計算によると直接原価計算によると
B︑売価と売上量と利益関係
︵末
政︶
四
Cは変動原価率である︒その
この場合原価は一定又は一定割合即ち固定費は一定変動費は一定割合と云う前提条件の元に考察される︒従って 売価切り下げの場合従前の利益を確保するには売上量の増加によって補わなければならない︒その場合の公式とし
砂
V1
V2
ー
V1
て︑ライト氏は
P2
11
││
P1
+c
なる公式をあげ具体的な数表で示めしている︒その公式の
P l は現在の売
V 2
V2
価 ︑
P Z は
新し
い売
価︑
V l は現在の売上数量
( I
00~)
>は新しい売上数量︵彩︶
例を引用し、Eを九0円、Plを一00円、Cを五0%、Vlを一00~とすると、
90|=~100+50%
V2
│1
00
冷
V2
V2
90
V2
11
10
00
0+
SO
V2
15
00 0
直接原価計算と価格政策
(1
1)
大きな差は認められない︒ C︑売価と原価と利益関聯D︑売価と売上量と原価と利益関聯
150
直接原価計算と価格政策
(1
1)
40
V2
11
50
00
1
11
25
5 S
O
40
V2
11
その結果売上数量
V z 0%乃至限界利益率が五0%の場合価格切下げを一〇は︱二五%となる︒従って変動原価率五
%行うと売上数量を二五%増加しなければ従来の利益は維持出来なくなるのである︒この様な価格変化の影響を売
上数量の増減で補う問題は畠山氏の述べられた﹃販売価格引下げ可否の決定﹄問題となる︒しかしここで注意を要
するのは需要の弾力性である︒即ち価格切下げを行っても需要の弾力性が少ない場合はそれを償う売上量増加が出
来ない事となる︒この様な需要の弾力性を考慮に入れる売価決定の方式に注意しなければならない︒ディヴァイン
教授はクリシス教授﹁経済学原理﹂
(T
he
El
em
en
ts
of
Ee
on
om
ic
s.
1
94
7)
より変動費と需要の弾力性と価格との洲e 関係から導く次の公式を引用されているd即ち
p11<X
であ
り︑
P
は最適価格>は変動原価
eは需要のeー1弾力性を意味する︒彼の例による変動原価がニドルの揚合需要の弾力性が六なれば最適価格はニドル四0セントで
あり︑又需要の弾力性が二なれば最適価格は四ドルとなる︒従って値上げは需要の弾力性の考慮の元に行われなけ
ればならない︒需要の弾力性については価格における一%の変化から生ずる物量における変化%であると定義し︑
価格における一形の値上げが売上数量単位二党の減少をもたらすならば需要の弾力性は二であるとした︒そして具
体的な一例として或週一ニドルで八0ヶ売れたものが次の週に三ドルニ0セントで七〇ケ売れたとすると需要の弾力
性は
︑
7
(8
0‑
70
/)
80
‑‑
;‑
($
3.
20
1 号
3.
00
)/
$3
.0
03 (
J i.
l g
であるとした︒この需要の弾力性
7‑
ー 8及び変動原価ニドルである揚合前記公式よりすれば︑最適価格は四ドルニ八
︵末
政︶
四四
︵末 政︶
性即ち売上増加可能数最ー価格ー最大利益 以上の問題を盤理すると売価と売上量と利益関係は
なる︒この問題は実際の企業経営において多く生ずる︒
四五
一︑売価切下ー売上数量増加ー利益一定
ハ出 h"
i
セソトとなり︑変動原価以上の短期の貢献及び純利益はこの価格でもって梃大化するであろうと述べている︒この 問題は価格切下げを売上数量の増加で吸収すると一云う考え方よりもむしろ売上数量の増加の可能性乃至需要の弾力 性よりして利益の最大となる所謂最適価格を定めようとする考え方であると一云わねばならぬ︒
価格切下げを売上数量の増加で償う考え方即ち価格の面より売上数量変化を見て来たのであるが︑叉逆の考え方 も実際問題として生ずる事は云うまでもない︒即ち売上数量を何程増加すれば売価をどこまで切下げる事が出来る かの問題である︒これは前記畠山氏の﹃量産化による価格引下げ限度の決定﹄に関する問題であり叉ヘッカート・
ウィルソンの第5
の政策を意味すると思う︒この計算の為には前述のライト氏の公式を利用して数字を当てはめれ ば良い︒例へば新売上数量︵>︶を︱二五彩︑変動原価率五
0形とすれば
10
0
1251100 P211t罰100+50
12
5
12
5P
21
11
00
00
+1
25
0
11
25
0
12
5
P2
11
P2
11
90
従って新しい売価
( E )
は九0%となるから二五飴売上数量を増加すれば売価を一0形切下げても利益は従来通りと
と思う︒これらの場合原価要素に変化がない即ち固定費は一定変動費は一定割合として考察したのであるが︑前述
直接原価計算と価格政策︵二︶
二︑需要の弾力
三︑売上数量増加ー価格切下げー利益一定の一二つの型乃至問題になる