[資料] フランス産業の国際競争力
その他のタイトル [Reference Material] La Competitivite Internationale des Industries Francaises
著者 田中 茂和
雑誌名 關西大學商學論集
巻 41
号 1
ページ 29‑47
発行年 1996‑04‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00019273
関西大学商学論集第41巻 第1号 (1996年4月) (29) 29
〔 資 料 〕
フランス産業の国際競争力*
田 中 茂 和
第 1章 重工業化:世界の工業生産能力の向上 1964~1979
第1節 工業製品の世界市場における地位の変せん
1.伝統的な工業大国,ドイツおよびアメリカ合衆国の後退
<衰退するドイツ産業>
ほとんどの分野でドイツの産業は世界市場において転換期を迎えている。
*この資料はLaCompetitivite Internationale des Industries Franc;;aises au seuil‑ des annees 1980, La Documentation Francc;;aise, Paris 1981, pp. 106.の抄訳であ
る。 H米の経済比較は数多くの研究がみられるが、日欧、とりわけ日仏の経済比較 は数少なく、この資料はH仏の国際競争力の展開をめぐった貴重なものであろう。
そこで用いられているデータは時系列データであり、縦軸には輸出/輸人比率の成 長率、横軸には貿易カヴァー比率がとられている。かくしてデータは四象限に分か れ、右上方の第1象限は「回復」、左上方の第2象限は「制覇」、左下方の第3象限 は「転換」ないし「後退」、右下方の第4象限は「撤退」ないし「退出」といった具 合に貿易シェアからみた競争的地位の変せんがうかがえる。原著には豊富なデータ が各国およぴ各産業毎に示されているが、以下では紙幅の都合もあり、典型的なデ ータのみ掲載することにとどめた。
なお、この資料は1995年度関西大学学部共同研究費に碁づく研究成果の一部であ る。
30 (30) 第 41 巻 第 1 号
金属製品はもちこたえてはいるが,電気機械,精密機械などの先端産業は 転換期のまっただ中にある。
COMMERCE EXTERIEUR DE LA REPUBLIQUE FEDERALE D'ALLEMAGNE 1979/1964
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SOURCE : Douanes franGaises / 0. C. D. E. Nimexe C. T.C.I
くアメリカ合衆国の世界市場からの後退>
アメリカ合精国は高度技術産業では比較的健闘しているが,自動車を含む 下位産業ではふるわない。
フランス産業の国際競争力(田中) (31) 31
2.フ ラ ン ス と 日 本 の 前 進
<雖いフランス産業>
自動車およぴ機械設備は長期にわたって市場を支配しているが,他の産業 の競争力は低迷している。
COMMERCE EXTERIEUR DE LA FRANCE 1979/1964
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SOURCE : D~:!an,;aises / 0.踪を;chiffres78
<増大する日本の市場支配>
石油依存度の高い日本はより一層の成長をとげねばならない。金属製品や
32 (32) 第 41 巻 第 1 号
高位集中の鉄鋼,造船,自動車は最も競争力がある。電気機械は古くから リードしている。
3.新たな競争相前国の出現:韓国
<韓国は非産油国モデルの典型>
韓国は1960年代の日本の地位にある。
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SOURCE : D o u a ~ s e s / 0.認ぷ Douanescoreennes C. T. C. I. :i.C.I
フランス産業の国際競争力(田中) (33) 33
<韓国が高度技衛に参入>
第2節 工業の競争相手に直面したフランス
1.伝統的なヨーロッパの競争相手国(ドイツ,イギリス)
に対してフランスの競争力は向上している。
COMMERCE EXTERIEUR de LA FRANCE
PAR RAPPORT A LA REPUBLIQUE FEDERALE D'ALLEMAGNE PR訳CIPAUXPRODUITS INDUSTRIELS
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34 (34) 第 41 巻 第 1 号
くフランス産業はドイツに対する遅れを少しずつ取り戻している>
自動車は均衡に接近している第一の主要産業である。機械産業は高い市場 占有率を依然として有している。
くフランスはイギリスを追い抜いている>
有利に特化して,フランスはイギリスに対して構造的照字を創出している。
COMMERCE EX1・皿EURDE LA FRANCE PAR RAPPORT A L'IT ALIE
PRINCIPAUX PRODUITS INDUSTRIELS 1979/1964
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SOURCE:‑=とrearu;aises/0.認名
フランス産業の国際競争力(田中) (35) 35
2. ヨーロッパの新たな競争相手国との対抗にフランスは
苦慮している。
くフランスの自動車はイタリーとは違った様相を呈している>
フランスの産業はイタリーとはさまざまな産業分野で対照的な状況にあ る。
くフランスはオランダと比ぺて不利な特化をしている>
3.フランスの産業はアメリカ合衆国および日本に陵駕さ
れている。
くフランスはアメリカ合衆国に対して資本財でハンディ・
キャップを有している>
だからこそ,フランスは資本財で赤字から未だ脱却していない。
<日仏貿易はユニークな動向を示している>
対日貿易総額はわずかであるが, 日本の市場浸透は増大している。
第3節 部 門 間 の デ ィ レ ン マ
1.自動車:大規模投資と成功
くフランスの自動車は日本を圧倒的に陵駕している>
すべての市場でフランスの自動車は好評を博している。
36 (36)
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第 41巻 第 1 号
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SOURCE : DouaNni. emexe s fran,;aises / 0.認:'T.C. I
フランス産業の国際競争力(田中) (37) 37
COMMERCE EXTERIEUR DE LA FRANCE PAR RAPPORT A SES PRINCIPAUX PARTENAIRES
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TAUX DE COUVERTURE DU COMMERCE EXTERIEUR
〇=10MILLIARDS DE FRANCS 1979 D'ECHANGES (IMPORTS+EXPORTS) en fin de西riode.
SOURCE :Dou悶:e!an,;aises/ 0.認名 JAPON 0
2.鉄鋼業:大規模投資と後退
くフランスの鉄鋼業は従来の競争相手国を陵駕しているが,
新たな競争相手国から打撃を受けている>
38 (38) 第 41 巻 第 ー 号
3. 情 報 産 業 : 大 規 模 投 資 に も か か わ ら ず 激 し い 競 争 くフランスのコンピュータは撤退>
第 2章 進歩の段階:フランスの再編の 5年 間
第1節 先 端 部 門 の 復 活
<エアバスがカラペル機とともに復活>
COMMERCE EXTERIEUR DE LA FRANCE AERONAUTIQUE
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D'ECHANGES (IMPORTS+ EXPORTS)
フランス産業の国際競争力(田中) (39) 39 コンコルドの失敗のせいで1967年から1973年にかけて世界市場からの一時 的な撤退の後,エアバスのおかげでフランスの航空機はその地位を回復し た。
<情報産業政策>
フランスの産業構造は依然として貿易均衡の回復を実現するに至っていな い。
くフランスの有機化学は着実に進歩している>
この部門の競争力はここ10年来コンスタントに増大している。
第2節主要部門の揺れ動き
くフランスの自動車は制覇と後退のはざまで揺れ動いている>
1967年から1970年にかけて日本を制覇していた状況から, 1970年から1973 年には自動車は劣勢に転じた。しかし.それ以降世界市場を再ぴ制覇して
いる。
<機械の競争力は概して危機にひんしている>
全体の上昇は国内市場がますます侵食されているエンジニアリングとは極 立った対照をなしている。
船 (40) 第
41 巻 第 ー 号 COMMERCE釦 鴎URDE LA FRANCE
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D'ECHANGES (IMPORTS+ EXPORTS)
くフランスの電気機械は第1次石油危機以降復活している>
業務用機械は概して民生用機械の後退を補なう以上に伸びている。
くフランスの化学には依然として変化がほとんど見られない>
得意な分野への特化の失敗から化学は伝統的な主要諸国(ドイツ,
カ)を追い抜くに至っていない。
アメリ
フランス産業の国際競争力(田中) (41) 41
第3節 将来危機に瀕する部門
くフランスの電子部品は依然として優勢である>
フランスの部品産業は制覇の地位に達する上で「部品構想」の成果を期待 している。
COMMERCE EXTERIEUR DE LA FRANCE
CIRCUITS INTEGRES, TUBES, LAMPES et autres composants electroniques 1964 A 1979
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〇=10MILLIARDS DE FRANCS 1980 Source : Douanes franc;aises.
D'ECHANGES (IMPORTS + EXPORTS)
42 (42) 第 41 巻 第 1 号
くフランスの測定機器は市場奪回を続けている>
当初の弱い地位から,フランスの測定機器は今や伝統的な生産国(アメリ カ,イギリス)の市場を侵食している。
<電子交換部品の貿易は変りやすい>
この製品は依然として世界市況や世界市場における相対価格の変化に従わ ざるをえない。
くフランスの国内市場からの撤退はとりわけ日本からの圧力が原 因である>
第3章 危 機 と 調 整 の 7年: 1974‑80年
第1節 停滞している事業分野:中間財と資本設備
<製紙業は沈滞のままである>
くフランスの鉄鋼業は競争力があるが,市場が不足気味である>
第2節 消 極 的 な 調 整 : 消 費 財
くフランスは繊維製品から撤退している>
<一般民生用製品は外国との激しい観争にさらされている>
第 3節 積 極 的 な 調 整
1.輸送機械
2.電気機械・精密機械 3.化学
4.機械部品
フランス産業の国際競争力(田中) (43) 43
<輸送機械は市場戦略で成功している>
高付加価値部品が先導している。
<電気機械産業において成長機会はまだ十分に活用されていない>
<化学産業は大きく成長する高次な製品に進出をはじめ,基礎的 製品から退出をはじめている>
COMMERCE EXTERIEUR DE LA FRANCE BOIS ‑PAPIER
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第 41 巻 第 1 号
COMMERCE EXTERIEUR DE LA FRANCE TEXTILE‑HABILLEMENT
1980/1974
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フランス産業の国際競争力(田中)
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46 (46)
● 結 論
新たな発展をめざして 1.市場制覇産業
第 41 巻 第 1 号
本調査研究で得られた第1の結論は,フランス産業のすぐれた能力が世 界市場機会への適合を成功させていることである。長期的にみれば,フラ ンスの産業は伝統的な主要競争相手諸国(ドイツ,イギリス,アメリカ)
の競争力水準に同時に追いつくことができた。そして現在,新たな競争相 手国 (B本, NPI)の市場浸透に対してうまく対抗している。
世界需要が明らかに鈍化している近年でも,フランスの産業はすぐれた 反応力を示している。すなわち,「積極的な調整」により有望な市場の周辺 で世界水準の達成を首尾よく実現している。
フランスの「市場制覇産業」は近い将来,「新たな発展」を創出する上で,
既に好都合な位置をしめている。それらは,
●民間航空機
●自動車部品
●電気通信
●インフラストラクチュア・エンジニアリング
●化学 である。
2.衰退部門の改善策
危機の犠牲となった部門は異ったすう勢から,「停滞部門」と「消極的な 調整部門」の二つのカテゴリーに分かれる。
●一つに,多くの部門で成長の芽がなくなり停滞している。こうした「停 滞部門」でとくに挙げられるのは,化学製品および電子製品との急激な 代替プロセスの犠牲となった金属製品部門と製紙業部門である。そうし
フランス産業の国際競争力(田中) (47) 47 た産業分野においては危機以降フランスの競争的地位に変化はみられな いが,需要復活の見通しは立たないであろう。したがって,「停滞」産業 分野では新たな競争努力をすることが適切とは思えない。というのは,
はっきりいって,製鉄会社や製紙会社はより一層の近代化努力を行って も損失が持続し, しかも増大しているのである。
●他方,大規模な生産設備を有する部門は「消極的調整」というより逆説 的な状況に直面している。問題があるこうした部門は大量消費の産業分 野に集中している。すなわち,繊維,アパレル,家庭用品,靴,レジャ ー用品である。
こうした部門では国際貿易の伸ぴが大きい。多くの事業分野において国 内需要の拡大は重要である。しかし,フランスの産業は後退途上にあり,
撤退が近づいている。
おそらく改善策は消極的な調整から「新たな発展」へ転じることであろ う。それはフランス人自らによる革新,コスト削減,ケインジアン政策 ではなかろうか。
ともかく,そのような政策は大量の雇用機会創出という点で関心を集め る以上,何よりも雇用政策として理解されるべきである。