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現代サラリーマンのストレス

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現代サラリーマンのストレス

その他のタイトル Some Assumptions in the Management of Employee Stress : A Sociological View on Stress

Analysis

著者 岡田 至雄

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 21

号 2

ページ 163‑194

発行年 1990‑01‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00022618

(2)

関西大学

r

社会学部紀要」第

2 1

巻第

2

1 9 9 0 , p p .  1 6 3 ‑ 1 9 4 .   ISSN 0 2 8 7 ‑ 6 8 1 7  

現代サラリーマンのストレス

岡 田

Some Assumptions i n  the Management o f  Employee S t r es s  

‑ A   S o c i o l o g i c a l  View on S t r e s s  Analysis ― ―  

Yoshio OKADA  A b s t r a c t  

With t h e  s u r g e  o f   concern o f   contemporary  s o c i e t y  for physical  fit‑

ness and t h e  quality o f   l i f e ,   s t re s s  h a s   j u s t   recently emerged a s  an i m ‑ portant  t o p i c  a r e a .   A solution o f   s t r e s s  f r o m  a societal  or  s o c i o l o g i c a l   p o i n t  o f  view i s   becoming  increasingly i m p o r t a n t .  

Then t h i s   i s s u e  examines s t r e s s  situation o f  t h e  salaried c la s s,  spe‑

cifically  analyz~s t h e i r  s t re s s  circumstances w h i c h  c a n  r e s u l t  when work‑

e r s  are faced w i t h  divergent  s t r e s s o r s   i n   working  s p a c e ,   and  i s   dis‑

c u s s e d  s o m e  effecive w a y s  o f   s t r e s s  c o n t r o l .  

Main sources o f   st r e s s f r o m  t h e  p e r s p e c i t i i t e   o f   sociology  are  g ・ o a l   c o n f l i c t ,   r o l e  c o n f l i c t   a n d  i n t e r p e r s o n a l   c o n f l i c t   which  are broken o u t   a t   various oganizational L e v e l s  o f  working u n i t s .   B u t   i t   i s   too diffi‑

c u l t   t o  p u t   a us e fu l  way o f   r e s o l v i n g   t h e s e  c o n f l i c t s  t h e m s e l v e s   i n t o  p ̲ r a c ‑ t i c e .   The state o f  affairs  i n   s t r e s s   f o r   employee  i s   discussed,  a n d '   s o m e  major assumptions a n d  s t r a t e g i e s  . f o r  s t r e s s  resolution are s u g g e s t e d .  

Key w o r d s :  c o n f l i c t ,  s t r e s s  c o n t r o l ,  w o r k e r ' s  s t r e s s ,  c a t h a r t i c  f u n c t i o n  o f  l e i s u r e ,   s t r e s s  and l e i s u r e ,  s t r e s s  and  TV  w a t c h i n g  

抄 録

社会学のストレス問題との付き合いはまだ日が浅く,ストレスに対する蓄積された社会学的知 見も極めて少ない。ストレス問題に真正面から対時してみると,意外にもそれが極めて社会学的 含蓄を色濃く内蔵していることに驚かされるが,社会学が真剣にこの問題に対処した形跡は見ら れない。そのために, 医学や心理学の領域でさえ未だ十分な研究成果をあげるには到っていない が,社会学の場合はこれといった文献さえ見当たらないのが実情である。ただ,産業社会学の領 域ではむしろ産業心理学の知見を借りて従業員のストレス現象を研究したものが,アメリカにお いて散見できる。本稿はこのような現状の中で,前号の続篇として特にサラリーマンに焦点を絞 って,かれらのストレス事情に,ストレス解消の道を探ることも含めて,迫ったパイロットスタ ディである。

キーワード:葛藤,ストレスコントロール,サラリーマンのストレス, レジャーのカクルシス的 機能,ストレスとレジャー,ストレスとテレビ視聴

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巻第

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1  ス ト レ ス 問 題 に 対 す る 社 会 学 的 視 角 に つ い て

(1)  ストレスの社会的側面

人は多彩な欲求をもっている。そして,これらの欲求のすべてが常に適宜充たされるわけでは ない。この簡明な事実がストレスの原点である。個人の欲求不満に起因する精神的な葛藤や緊張 ( c o n f l i c t  o r  t e n s i o n ) が昂じて,なんらかの生理的な異常が発生した時,ストレスに疲懲して いるという。ストレス現象は個人の精神的・内面的状態にかかわるもので,必ずしも外的・顕在 的症状として認知できるとは限らないが,通例,外的刺激に対して精神的に的確な反応ができな くなったり, 心身的な苦痛をともなわずには反応できないような状態とみなしてよかろう。そ して,このような状態が持続・克進すると,不安,心配,苛立ちといった軽度のストレス状態や 神経衰弱,ノイローゼといった心理的病症はいうに及ばず,慢性疲労や心因性疾患といった生理 的症状が現われてくる。通常,この段階をイメージしながら,ストレスが注目され,社会問題と して浮上してくる。しかし,ここで明確に見極めておかなければならないことは,人間が生きて いくということの中にストレスはその構成要素として内在化されているという点である。

人は社会的に育成された欲求性向を動源とする生体であり,この社会化された欲求構造に社会 的な衝撃が加えられ,葛藤や挫折を誘発し,遂にはストレス状態が生じ,ストレス症へと誘引さ れる。このプロセスは,まさにストレスが社会的に誘発される現象であることを示唆している。

特に,ストレスが,

(1)

社会化された欲求構造との絡みで発生すること,

(2)

人間関係をベースにし て触発されること という二重の意味で社会学的現象である点に留意すべきである。見方によっ てはストレスは社会学の重要な研究対象なのである。ストレス発生の因果を示唆するメカニズム の中で,特にその社会的脈絡の側面,たとえば,個人の信奉する目標や価値とは矛盾する社会的 目標・価値が遍在したり,多様な価値が無規律にかつアモルフに林立する状況,このようなニセ の文化の影響を受けて,社会関係上付与される役割セットに明白で一元的な理念が通貫していな いために,役割遂行に戸迷いと困惑が生じ役割葛藤が常態化する状況,さらに社会がゲゼルシャ フト化したことに伴って,皮相的・打算的人間関係が蔓延し,自己開示の不十分な非人格的接触 が支配的になった状況,などに起因して誘発されるストレスに関しては,社会学的アプローチ,

あるいは社会学的視角を抜きにしては解明できないはずであり,また同時に社会学が無関心でい るわけにはいかない。なぜならば,元来,人は他者との共同を通じて社会的人間として生きてい るという現実にストレスの源流があることに加えて,このような社会的脈絡は社会学に固有の課 題領域だからである。ストレス問題は病理的視角からではなく,大衆の平凡な精神状態という観 点から取り上げる必要がある。

現代社会のストレスを概括すれば,豊かさの背面に粘着している相対的窮乏と,仕事空間と家

庭空間での主要生活活動を通じて発生するアイデンティティ喪失状態と人間関係的ストレッサー

(4)

現代サラリーマンのストレス(岡田)

とに起因して複合的・交絡感作的に誘発されるという点に特徴があり,そのためにほとんどの人 は程度の差こそあれストレス状態に巻き込まれ,一部の人はストレス症や心身症へと誘引されて いく。ストレスに対する有効な予防法や免疲のための特効薬が未だ発見されず,ストレスに疲懲 する人の特異性を特定化できない現状においては,例外なくすべて人がストレスに感染する可能 性をもっていると想定するのが自然である。そして今,ストレス現象を精査してみると,老若男 女,職業の如何を問わず,ごく一般的に人は大なり小なりストレスを体験し,そのストレスに触 発されて健全な身心のホメオスクシスを失い,ストレス症に罹り易いという実態が裏付けられ,

ストレス問題が特定の心身的属性に潜在化するものではなくて,いわば,普通の正常な一般的人 間に生起する極く有触れた事象であることが鮮明になってきた。このような現実を具さに見極め た上で,現代社会のストレス問題の生成過程,実態,動向に迫ることが必要であろう。

(2)  ストレス発生の社会学的メカニズムとその問題点

ストレスが生成されるメカニズムを社会学的視点から診た場合にクローズアップしてくるフレ ームは, 葛藤 ( c o n f l i c t ) である。諸種の葛藤を基軸にして状況随伴的に発生するストレス,こ れこそ社会学が対象とするストレス実体に他ならない。とりわけ,個人を直撃する目標葛藤,役 割葛藤,対人的葛藤などによって誘発されるストレスが社会学にとっては重要な注目点となる。

これらの葛藤がどのような形でストレスにかかわっているかを追求することが社会学的なストレ スに関する命題を構成する際に不可避となる。

目 標 葛 藤

目標葛藤は一般に接近ー接近タイプ,接近一回避クイプ,回避一回避タイプの三種類に類別さ れてきた。接近ー接近タイプは二兎を追うも一兎しか得られず不満をもつ状況で深刻なストレス には至らない。最終的には「いいもの取り」で終るわけである。次に,接近一回避タイプの葛藤 は,ある目標への接近ベクトルと回避ベクトルとが反比例関係にあるような場で生じ,ストレス に疲懲し,深刻な葛藤に発展する可能性の大きい範型である。イドと超自我の葛藤もこのタイプ に属する。忠ならんと欲すれば孝ならずとか,義理と人情の板挟みとか,武士の帯我慢とか,こ のクイプの葛藤の好例は日本では尽きない。特に恥の文化が支配するところでは,接近一回避状 況が汎化し,人はいわゆる不安,苦悶,困惑,戸迷いに阿まれストレスに巻きこまれることにな り,結果的に深刻な病的状態にまで引き込まれるので,ストレス問題を究明する分析モデルとし ては極く一般的スキームと考えられる。最後に回避一回避タイプであるが,これは日常的には比 較的容易に対処できるためにあまりストレスには結びつかない。なぜならば嫌なものは食べなけ ればよいわけで,逃げの一手で問題は解決するからである。ただし,このタイプの状況に遭遇し た場合には,前門の虎,後門の狼,まさに進退谷まれりということになり,ストレスが冗進し,

極度の精神的ショックに襲われることは必定である。しかし,このような逼迫した状況は滅多に

起こらないから,このタイプの葛藤はほとんど問題視されていない。

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一般に目標葛藤は,個人の目標間に生じるもの,個人の目標と集団・組織の目標との間で生起 するもの,個人の目標と全体社会の目標(価値)との間に喚起するものというように多元的かつ 多様な発生基盤を有してはいるが,事例的には,この類型では個人の目標と集団・組織の目標と の間で誘発される接近一回避クイプのストレスが圧倒的に多く,最頻数を占めている。その意味 では,目標間葛藤を基因とするストレスに対する分析と診断の実効的なフレームはある程度すで に照査済みという面もある。近年,滅私奉公的な観念が消散し,代って私生活合理主義やミーイ ズムといった私尊信仰が蔓延するなかで,何よりも優先的で重要な価値として「私」が浮上して きたことで,一時強力であった滅私現象に帰因するストレスは激減傾向を示しているものの,私 的目標の飽くなき希求と自我欲求への強力な傾斜に起因するエゴイスティックなストレスが歯止 めもなく充進している。私欲の洪水がストレスの海に急流となって注ぎ込むといった風情が垣間 見れる。加えて「私」の論理が「公」や「共同」の論理との接点を見出せないままに急旋回した ことによって, ストレスを加速させたことも見逃すべきではない。俄仕込みの個人主義の謳歌 が,反ってストレスの背面現象になっていることに眼を背けてはならない。他面,私主義が貫徹 すれば,すべての行動基準が私一辺倒に一本化されるので,迷いや葛藤も単純に処理できるとい う局面も想定される。つまり,最近の若者はドライで単純だという言廻しの言外の含蓄はその一 例である。私対公というフレームの中で,何れにウェイトを掛けるかを鮮明に決めている場合に は葛藤も深刻なストレスにまで発展しないものと推断される。

役 割 葛 藤

次に役割葛藤に起因するストレスの問題に移るが,この領域はまさに社会学に固有の対象であ る。人が他者との共同に加入する際に発生する基本単位が役割であり,これを通じて共同が具体 化することになる。したがって社会学では役割の概念はもっとも基本的かつ要素的なものであ り,その意味では,役割葛藤に起因するストレスの研究は,まさに社会学に固有の課題領域とい うことにもなる。ストレスを惹起する役割葛藤の具体例を以下簡単に吟味するが,重要なことは 人はすべて程度の差こそあれ何らかの役割葛藤を日常的に体験しているという点である。その受 け止め方は個人差と状況性によって変るものの,すべての人がそれに関与しているわけで,問題 はそれがストレスになるのをいかにして防ぐか,あるいは葛藤の原因を早期に発見し,クイミン グよく処方することでストレス症への冗進を予防できるかにある。

一般にサラリーマンは,家庭にあっては夫婦や親子や父母との間に生じる立場をはじめ,親戚 や町内会・近所付き合いなどの関係, いろいろな機能集団に参加することで付与される責務な ど,いろいろな役割を荷っており,それぞれ状況随伴的に的確な行動をとるように期待され,ま たその期待に応えるように努力する。そして,ひとたび会社に出勤すると会社全体,所属部課,

遂行職務,職場集団での人間関係などとの関連で多彩な役割期待が派生し,これにうまく対応し

なければならない。このように人は幾重にも推積した役割のセットを双肩に担わされ,その役割

遂行を迫られ,同時に返す刀で他者に役割期待への呼応を厳しく求めるわけである。人は一般に

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現代サラリーマンのストレス(岡田)

他者からの役割期待に己が呼応することよりも,他者に対する役割期待に他者が呼応してくれる ことの方に敏感で,この後者に関係してストレスが誘発されるケースが多い。職場で続発する第 一線監督者の役割葛藤を例にとってその実態を少し吟味してみよう。

一時,ィンフォーマル組織論が流行し,職場の人間関係やリーダーシップに関心が大きく脹れ たころ,その主眼が第一線監督者の役割を生産性や能率の向上にからませる積極的な実践的管理 施策の一翼を荷う要因として重視するという点に向けられていた。しかし,今,第一線監督者の 問題は,攻撃のポイントとしてよりも守りの要めとして見直されようとしている。すなわち,組 織目標の効率的達成のための戦略的強化ポストという面に執着した対策が後退し,むしろ組織維 持という側面から組織と人間との調和,組織活動と人間関係(集団)との的確な統合という面に 注目し,役割内葛藤や役割間葛藤の解消・排除を目指す対策を模索することに重大な関心が寄せ られつつある。第一線監督者は, その地位が中間的 (bumpingp o s t ) であるがゆえに,役割は 境界的性質を強め,かつ多義的にならざるを得ず,役割葛藤を誘発し易い地位にあるというのが 一般的な通説となっている。無論,葛藤の内容,量や質,とりわけその深刻度やストレス性…と いった面で,第一線監督の役割葛藤が他の職階に比ぺてどれだけ特異的であるかについて実証的 にデークが示されているわけではない。この点について通説化されている命題はほとんど人間関 係論的推論の域を出てはいない。つまり,それは次のような演繹的論法によって造成されたもの である。

まず,第一線監督者は経営側の最前線に位置するポストにあり,それに適わしい経営者指向的 な価値観や態度を身につけ,常にこれらに従って行動すべきだという役割期待がある。しかし,

他方では,第一線監督者はむしろ従業員側の代表者や先導者としての性格をもつ地位にあり,従 業員指向的な立場で行動すべきだという役割期待を掛けられている。これらに加えて,第一線監 督者は,経営側,従業員側のいずれにも属さないで,中立的,独立的に両者を連結する機能を果 たす存在であり,独自の価値観と態度にもとづいて厳然と振舞うぺきだとする役割期待も当然付 せられる。このような三重の役割を円滑に調整し,器用にしかも的確かつ有効に演じることは凡 人には並大抵のことではない。まして,これらの三重の役割期待に常時困惑することもなく無難 に応じうるだけの精神的なクフさを凡人に求めることには無理がある。この現実に着目して,第 一線監督者はこれらの役割期待のうちどれを選べばよいのか,どれを優先させるべきか皆目わか .  .  .  . 

らないという状況に他の職階よりも落ち込み易く,これが原因で葛藤やストレスが発生すると推 考される。これが第一線監督者の役割葛藤典型説の粗筋である。

しかし現代の組織生活にあっては,第一線監督者はいうに及ばず,すべての地位で役割内葛藤

や役割間葛藤が続発・頻発し,葛藤の深刻度やそれに起因する疲憩度は,職階の上昇とともに増

強するのではないかという懸念さえ出ている。粗忽に,どの職階が酷<'どの職階があまり酷く

ないといった断定をし難いのが実情である。例えば,アメリカの企業で実施された従業員健康調

査によれば,平均的サラリーマンは自分が身心ともに健康で体調も良好だと自覚はしているもの

(7)

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巻第

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の,実際に診察をしてみると意外にも冠状血栓や心臓病など必ずしも健康とはいえない症状がみ られたり叫 また別の事例では成功した企業のトップ陣の健康状態が極めて悪化しているデーク が報告されている。 5 0歳の副社長は三たび発作を起こし卒中で倒れ,退職後まもなく自殺した。

収入役は社長の顔をみると震え,緊張のあまり皮膚病を患っている。人事部長は過剰負担に苦悶 し,神経症で休養治療中である。企画担当副部長は躁鬱病に罹り,購買部長は心臓発作で急逝し た 2) 。 ……非常に特例的ではあるが,経営管理陣の役割葛藤の凄じさ,苛酷な役割期待に応える ことの難しさと重圧が鮮明に描写されている。企業が激しい競争に打ち勝って成功と成長を収め るプロセスは, トップ層のストレス輩出の過程でもある。また他方では多様な価値観が林立し,

個人の主体性や自律性が尊重される事態にあっては,役割の代替可能性が大幅に促進し,職位,

地位,立場に一義的に付する役割や役割期待がむしろ茫々として消滅したことによって喚起する 役割葛藤が問題になってくる。他者や社会が期待し,標榜する役割と,本人が自律的に想定した 役割との対抗や葛藤も無論この範疇に内蔵された局面とみなせば,役割葛藤に起因するストレス に対する対処は難解かつ重大である。役割期待の相補性を維持することなしに共同を持続するこ とはできない。人間にとって共同が不可避であるとするならば,その構成員に役割の特定化を鮮 明に明示的にしなければならない。このことを疎かにして役割期待の相補性を口にすることは許

されないからである。

役割葛藤が生じるメカニズムを探ると,その原点に役割期待という素因が鎮座していることが わかる。相手が己の期待する役割期待に的確に応じてくれない時,あるいは相手の期待する(相 手が期待していると類推している)役割期待に応じるべきだと考えて無理をしたり,身分不相応 な困苦を背負わされる時, 人は役割葛藤に攻め立てられストレスに疲懲する。「旅の恥はかき捨 て」とか,見知らぬ他人との会話は気楽で安気だという語り草は,役割葛藤の厄介さをむしろ暗 示した例示であろう。人は否応なく役割・役割自覚・役割期待にこだわって他人との関係に対処 するので,常に万全の役割期待の相補性が確保されないかぎり,いつもストレスの蓋然性に曝さ れていることを認知することが肝要である。

人間関係的葛藤

最後に重要なカテゴリーとして人間関係的葛藤がある。二人以上の人間が相互に接触すれば,

当事者間に相手を無視して身勝手な要求を一方的に押しつけたり,口角泡をとばして言い争った り,ぐづぐづと一向に埓の明かない鈍重な仕草で応待されたり,情感の機微に無頓着で粗雑で乱 暴な振舞いをしたり……といった状況で対人的に偶発する一過性のものもあれば,特定の相手と の間に頻発し,どちらかといえば役割葛藤が強固に絡んでいるケースもある。ここで強いて人間 関係的葛藤を摘出したのは, これをベースにして派生する対人的ストレスを「私とあなた」「自

1) 

R. 

K r e i t n e r ,  e t .   a l .   " J u s t  How F i t  a r e  Your Employees?

B u s i n e s sH o r i z o n e s ,  A u g . ,   1 9 7 9 ,   p p .  4 44 5 .  

2) E .  D a l e  and L .  U r w i c k .  S t a f f  i n  O r g a n i z a t i o n ,  1 9 6 0 ,  p p .   1 71 8 .  

‑168‑

(8)

現代サラリーマンのストレス~岡田)

分と他者」という純粋に人格的な関係の視点から押さえてみたいという発想のためであり,この 種の葛藤に対する取り組みに役割葛藤的アプローチを排除したり,役割概念を抜きにした人間関 係的葛藤を想定することの愚かさは十分熟知しているつもりである。

meand you

」関係から発生する葛藤やストレスのメカニズムを説明するのに有力なフレー ムとして「

J o h a r i

の窓」3>(

J o h a r i  window)

を挙げることができる。この窓は茄

sephLuft

庫丘

yIngham

によって作られたので,

J o h a r i

の窓と呼ばれているが,ダイナミックな「私ー あなた」の関係を分析するためのポピュラーな枠組である。窓は「人が自分自身について熟知し ていることと, 自分のことでありながらよく解っていない面とを両有している点」, また同時に

「人は相手についてよく知っていることもあれば,あまり知らない部分もあること」に着目して 下図のような窓枠で仕切られている。

J o h a r i

の窓」 (相手のことをよく知っている) (相手のことをよく知らない)

(自分自身のことを) 1. 

Open s e l f   2 .   H i d d e n  s e l f  

よく知っている 開示された自己 隠密でいる自己

(自分自身のことを)

3 .   B l i n d  s e l f   4 .   U n d i s c o v e r e d  s e l f  

よく知らない 正体のわからない自己 未知の自己

(1) 

Open s e l f  

この部分は自分自身についても相手のことについてもよく知っているテリ トリーでの関係を指し,ここでは人は隠し立てをせず,折合いよく適合的に応待するの で,対人的ストレスや人間関係的葛藤はほとんど発生しないものと考えられている。

(2) 

Hidden s e l f  

このカテゴリーは自分自身については熟知しているが,相手のことをあ まり知らない状況で発生する人間関係を指し,このようなケースでは一般に相手の反応の 仕方や出方がわからないので警戒し,自分の真の姿を隠し,場合によって疑心暗鬼とな る。この状況は潜在的にストレスや葛藤の温床として特色づけられる。

(3) 

Blind s e l f  

この状態は,相手のことについてはよく知っているが,自分自身について不 鮮明である場合に生じる関係を指し,このケースでは往々にして相手が当惑し,いらいら してくるだろうし,自分でもわけのわからない振舞いをしていることに気づいて防御的に なり不安定な心理状態になってくる。この状況でも対人的ストレスの発生する可能性は大 きいといえよう。

(4) 

Undiscovered s e l f  

この関係はまさに実質的には破綻している。自分自身のことについ ても,相手のことについてもほとんど何も分らない状態で接触し,相互作用に及ぶわけで あるから,的確な関係を期待することは極めて難しい。通常, このクイプの関係は, 解,独りよがり,錯視,ディスコミなどを続発し,対人的ストレスが誘発され易い。

3) J .   L u f t  "The J o h a r i  Window" Human R e l a t i o n s  T r a i n i n g  News V o l .  5 ,   N o . 1 ,  1 9 6 1 ,  p p .  67 .  

(9)

関西大学「社会学部紀要」第

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巻第

2

「 J o h r i 」の窓の概要とその含蓄をストレス発生のメカニズムに絡ませながらみてきたわけで あるが,対人的ストレスや人間関係的葛藤に対する対応という面から想定される好ましいパクー ンが「開示された自己」 (Opens e l f ) であることは否めない。すなわち,理念的には人間関係的 ストレスの潜在的誘発性を抑止する有力なメカニズムの一つとして,関係する当事者が各々自己 の態度,意見,関心,価値銀,要求や期待などについて忌憚なく相互に打ち明け合うこと,いわ ゆる自己開示や自己暴露が必要であることを示唆している。相互に相手を信頼して,自分自身に ついての社会的・心理的特性を相手に公開し合うプロセスが欠落したとき,往々にして当事者間 にストレスが発生し,深刻な葛藤が誘発されることになる。元来,話し合いが重視されるのもこ のことに密接に係わっている。話し合いの本質的目的は,単に自己主張をするという点にあるの ではなく,聞き合うという局面にある。つまり,相互理解の土壌を培って円滑な相互行為を喚起 することを狙った方策なのである。

自己暴露や自己開示が相互に不十分で,当事者間に未知の情報が多すぎると,警戒心が湧くだ けではなく,浮薄な振舞い,対立感情や事なかれ主義の発生,利害打算的かけひきの横行などが 蔓延し,協調や親和といった対人関係とは程遠く,敵意や私中心主義が常態化してくるので,ス トレスが極めて発生し易い状況となる。ただし,人の精神状態は一筋縄ではとらえ切れないの で,自己暴露したから即問題解決というわけにはいかない。要は事態は状況随伴的に生起するわ けであるから, できるだけ危険を回避できるように状況を整備するという発想が大事なのであ る。親友なればこそ笑って済ませる言質も,赤の他人が口にすれば不快となり,場合によっては 喧嘩になる。しかし,逆のケースだって日常茶飯事なのである。問題は状況がどうであるかに依 拠して発生するようである。したがって,ストレス発生あるいは誘発に作動したストレッサーの 社会的脈絡や環境的・状況的背景を抜きにして,純粋培養的なストレスを摘出することは不可能 なのである。つまり,社会や社会的状況とは無縁のストレスは存在し得ないわけである。このこ

とはストレス菌の摘発は常に社会の側でなさなければならないことを示唆している。

現代サラリーマンのストレス状況

本稿はサラリーマンのストレス状況をその発生のメカニズムの確認と合せて,その実態を実証 的に追跡し,ストレスコントロールの方法をレジャー効用論的視点から精査することを狙ってい る。なお,この論文は, 拙私論文「現代社会のストレス実態」(関西大学・社会学部紀要,第 2 0 巻,第 1 号 , 昭和 6 3 年 1 2 月)の継続論文で, デークベースは前論文と同ーである。(調査対象の 構成は巻末に示す。(補註〕)

なお,標本数がやや不足しているので,パイロットスクディ的性格が強いといえよう。

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現代サラリーマンのストレス(岡田)

(1) 

ス ト レ ス 状 態 の 実 情

サ ラ リ ー マ ン が 日 常 生 活 で 直 面 す る い ろ い ろ な 体 験 の 中 で , 心 理 的 な 葛 藤 や 緊 張 を と も な い , ひ い て は ス ト レ ス に 結 び つ き 易 い と 想 定 さ れ る 経 験 の 実 態 を 概 銀 し て み よ う 。 ( 表

1)

ま ず , 全 体 的 傾 向 を 見 る と , 総 括 的 に 約

6

割 前 後 の サ ラ リ ー マ ン が 潜 在 的 ス ト レ ス 状 態 に 襲 わ

1 自覚されたストレス的一般傾向の様態 (%) 

非 役 付 者 フォア

部 課 ・

男 子

1

女 子 マ ン 取締役 全 体 今,悲しいこと,いやなこと

  : 1

6 9 . 7   7 1 .  7  6 3 . 3   6 5 . 1   5 6 . 5   6 7 . 0  

悩んでいることが

v

3 0 . 3   2 8 . 3   3 6 . 7   3 4 . 9   4 3 . 5   3 3 . 0  

他の人に比べて悩みごとが多す

I

3 0 . 3   1 5 . 1   1 6 . 7   3 2 . 6   8 .  7  2 2 . 8  

ぎると 思 わ な い

6 9 . 7   8 4 . 9   8 3 . 3   6 7 . 4   9 1 .  3  7 7 . 2  

今,毎日の生活が楽しい 非常に楽しい

6 . 1   1 .  9  3 . 3   4 . 7   4 . 4   4 . 2  

v

5 9 . 1   6 7 . 9   7 6 . 7   6 0 . 5   6 5 . 2   6 4 . 7  

楽 し く な い

3 4 . 8   3 0 . 2   1 6 . 7   3 4 . 9   3 0 . 4   3 1 . 1  

騒音,悪臭,媒煙,ほこりなど

1 ( ¥  

1 3 . 7   7 . 6   1 6 . 7   9 . 3   8 .  7  1 1 . 2  

に悩まされて

5 3 . 0   4 9 . 1   5 0 . 0   3 7 . 2   3 4 . 8   4 6 . 5  

全 然 い な い

3 3 . 3   4 3 . 4   3 3 . 3   5 3 . 5   5 6 . 5   4 2 . 3  

近所とのつきあいや,職場での 大 い に あ る

7 . 6   1 3 . 2   1 0 . 0   4 . 7   4 . 4   8 . 4  

人間関係という面で困っている 少 し は あ る

6 3 . 6   6 4 . 2   7 3 . 3   6 7 . 4   6 5 . 2   6 6 . 1  

こと,悩んでいること 全 然 な い

2 8 . 8   2 2 . 6   1 6 . 7   2 7 . 9   3 0 . 4   2 5 . 6  

気持ちがいらいらすることが よ く あ る

2 1 .  2  1 3 . 2   1 6 . 7   1 6 . 3   1 7 . 4   1 7 . 2  

時 々 あ る

6 3 . 6   7 7 . 4   7 3 . 3   6 9 . 7   6 5 . 2   6 9 . 8  

めったにない

1 5 . 2   9 . 4   1 0 . 0   1 4 . 0   1 7 . 4   1 3 . 0  

他の人に比べるといらいらする

3 4 . 9   5 0 . 9   4 6 . 7   4 1 .  9  2 6 . 1   4 0 . 9  

方だと 思 わ な い

6 5 . 1   4 9 . 1   5 3 . 3   5 8 . 1   7 3 . 9   5 9 . 1  

気持ちがいらいらした時その状 す ぐ 消 え る

5 4 . 6   4 5 . 3   5 0 . 0   5 8 . 1   6 9 . 6   5 4 . 0  

態は

1

日ぐらい続く

3 9 . 4   4 9 . 1   3 6 . 7   3 4 . 9   1 7 . 4   3 8 . 1   2 3

日続く

6 . 1   5 . 7   1 3 . 3   7 . 0   1 3 . 0   7 . 9  

1 :  

精神安定剤を服用したことが

6 . 0  

3 . 3   2 . 3   1 3 . 1   4 . 2  

1f¥ 

9 4 . 0   1 0 0 . 0   9 6 . 7   9 7 . 7   8 7 . 0   9 5 . 8  

9

今年嘉になってショ落ッキングだな経こし , 精 神 的 に ち こ ん

v

7 2 2 7 . .  7  4 3   5 7 2 . . 2 8     9 1 0 0 . . 0 0     7 2 0 9 . . 1 9     3 6 0 9 . . 4 6     2 7 7 2 . . 4 6    

気持ちが落ちつかず食欲がなく よ く あ る

6 . 1   5 . 7   1 0 . 0  

4 . 4   5 . 1  

なることが 時 々 あ る

4 2 . 4   5 8 . 5   4 6 . 7   3 7 . 2   5 2 . 2   4 7 . 0  

全 然 な い

5 1 .  5  3 4 . 0   4 3 . 3   6 2 . 8   4 3 . 5   4 7 . 4  

気持ちのイライラやムシャクシ 何 度 か あ る

1 9 . 7   2 0 . 8   1 6 . 7   1 4 . 0   2 1 .  7  1 8 . 6  

ャが原因で体調をくずしたこと

2 3

回ある

3 0 . 3   4 1 .  5  3 3 . 3   4 1 .  9  3 0 . 4   3 5 . 8  

全 然 な い

5 0 . 0   3 7 . 7   5 0 . 0   4 4 . 1   4 7 . 9   4 4 . 6  

(11)

関西大学『社会学部紀要』第

2 1

巻第

2

れていることがわかる。そして,その中で約 5 割近い人が,はっきりと身心的症状を伴うストレ スに疲懲した経験のあることを訴えている。加えて,表 1 の1 2 項目をベースにしてストレス状態 に落ち込んでいるサラリーマンを総合判定すると約 3 割強に達しているものと推定される。(表 2 参照)またストレス症を呈している人は,軽い症状が 1 割強,重い症状が 5 彩前後となってお り,かなり深刻な状況になっている。自覚症状として述べられたデークではあるが,サラリーマ ンの生きざまは,まさにストレスと背中合せであることが暗示されている。

表 2 現段階でストレス状態にある人の比率(%) - ~

フォア部・

男 子

I

女 子

マ ン 課 長 取 締 役 全 体 ストレス状鰤訟者率 I  3 4 .  9  1  3 7 .  

1  3 3 . 1   1  3 2 .  

1  3 0 .  

I  3 4 .  

※ 

表1 の 1 2 質問項目を加重分析して透入者率を算定している。

次に職階別に吟味してみると,感覚的には職階が高くなるにつれてストレス状態が軽減する傾 向を読みとれるが,統計的に有意差を検出することはできず,いわば,職階とストレス状態との 間には相関がなく,両者間に因果は認められないという結論になる。ただし,かなり強力なスト

レッサーを疲懲して, 明らかにストレス症を併発したものと類推できる状態(後 3 問)の分布 は,女子従業員がストレス症に罹り易いことを鮮明に示唆している。これらの一般的自覚症状か らみたストレス概況を,もっと具体的にチェックするために,調査実施日を起点にして前日まで の 1 週間に経験したストレス絡みの体験を自己申告という形ではあるが探ってみた。(表 3 , 表 4)

表 3 は 1 週間のストレス誘発に関連する精神的事象と仮定される体験の度合を得点で表示した ものであるが,全体の平均的特徴を概括すると,悩み,心配,不快,苛立ち,立腹といった精神 状態に週に一度は襲われるのがごく一般的なケースであることが示されている。表 3の数値は,

各ストレス関連項目に対する相対的な罹症度を比較しようとする際に有効である。属性間の比較

をしてみると,平均ストレス得点で, 女子従業員 ( 9 .7 4 ) は高く ( p < 0 . 0 1 ) , 取締役 ( 6 . 5 2 )

は低い ( p < 0 . 0 1 ) ことが対全体との関連で指摘できる。すなわち,女子従業員はストレス絡み

の心理的体験を相対的に多く感受する傾向があり,また取締役は逆に相対的に少ない傾向を示す

というわけである。しかし,表 3 では各項目に対する経験者と非経験者の構成比を厳密に知るこ

とはできないので,その実態を明示するためには表 4がある。表 4は a i の項目についてそれ

ぞれ全然経験しなかった人の割合を示したもので,ここで注目されるのは,危険信号的ストレス

状態(不快,苛立,立腹など)と無縁であったサラリーマンは僅かに全体の¾に過ぎない点であ

る。換言すれば,サラリーマン全体の 7 割強にも及ぶ人が,危険信号的ストレス状態に日常的に

包み込まれているという生々しい現実が明示されたことになる。このことは,現代がまさにスト

レス社会であると特徴づけるのに適わしい証しでもある。また,このデークからも,女子従業員

(12)

現代サラリーマンのストレス(岡田)

3 1

週間に経験したことをベースにしたストレス得点の平均値 ストレス測定項目別 非 役 付 者

係長•主任 部•課長 取 締 役 男子全体 罹 症 度 得 点 分 布 男 子 女 子

a

悩みごと

1 . 1 7   1 .  4 2   1 . 0 0   1 .  2 3   0 . 5 2   1 . 1 5   1 . 0 6   b

心配ごと

1 .  2 6   1 . 1 1   1 . 1 7   1 . 0 7   0 . 7 0   1 . 1 1   1 . 1 1  

c気を使う

1 .  9 5   2 . 0 8   1 .  7 3   1 .  7 4   1 .  5 7   1 .  8 7   1 .  8 0   d

不快なこと

1 . 1 5   1 .  3 8   1 .  2 0   1 . 1 6   1 . 0 9   1 .  2 1   1 . 1 5  

eィライラすること

1 . 1 5   1 .  3 4   1 .  2 7   1 .  2 3   1 . 0 4   1 .  2 2   1 . 1 8   f

腹の立ったこと

1 . 0 5   1 .  4 5   1 . 1 7   1 .  2 6   0 . 9 1   1 . 1 9   1 . 1 0   g

口 論

0 . 3 3   0 . 4 2   0 . 4 3   0 . 2 6   0 . 3 9   0 . 3 6   0 . 3 4   h

不幸にでくわす

0 . 1 8   0 . 1 7   0 . 0 3   0 . 0 5   0 . 1 7   0 . 1 3   0 . 1 2   i

精神的ショック

0 . 2 6   0 . 3 8   0 . 2 0   0 . 1 2   0 . 1 3   0 . 2 4   0 . 1 9  

平均ストレス得点

8 . 5 0   9 . 7 4   s . 2 0   I  s . 1 2  6 . 5 2   s . 4 7  8 . 0 6  

※ 

1 .   a i  

の項目の得点は

3 0

の数値間に分布し,その意味は一週間の範囲で

3

点〜全員が毎日体験,

0

点〜全員が一度も体験しない。

1 .  5

点〜全員が

1 2

度体験 と概括できる。

※ 

2 .  

平均得点は

27 0

の数値間に分布し,

2 7

が高いストレス,

0

はストレス無し を意味する。

4 1

週間に経験しなかった人の比率(彩)

非 役 付 者 ス ト レ ス 事 象

男 子

I

女 子

フォアマン 部•課長 取締役 全 体

a

悩みごと

3 1 .  8  1 8 . 9   4 3 . 3   2 7 . 9   5 6 . 5   3 2 . 1   b

心配ごと

3 0 . 3   3 0 . 2   3 0 . 0   3 9 . 5   4 7 . 8   3 4 . 0  

c気を使う

1 6 . 7   1 1 . 3   2 0 . 0   9 . 3   1 7 . 4   1 4 . 4   d

不快なこと

3 1 .  8  1 8 . 9   2 0 . 0   2 3 . 3   3 0 . 4   2 5 . 1  

eィライラすること

2 7 . 3   2 0 . 8   3 0 . 0   2 3 . 3   3 4 . 8   2 6 . 1   f

腹の立ったこと

2 8 . 8   1 5 . 1   2 3 . 3   2 3 . 3   3 0 . 4   2 3 . 7   g口 論 7 2 . 7   6 9 . 8   7 0 . 0   7 6 . 7   6 5 . 2   7 1 . 6   h

不幸にでくわす

8 7 . 9   8 4 . 9   9 6 . 7   9 5 . 4   8 2 . 6   8 9 . 3   i

精神的ショック

8 1 .  8  6 7 . 9   8 3 . 3   9 0 . 7   8 7 . 0   8 0 . 9  

※係長•主任は以下「フォアマン」と記す。

はその約

8

割近い者が危険信号的ストレスに絡む体験を報告していることで明らかなように,他 の属性に比べて一段と悪い状態にあることを指摘できる。

表 1

で,ストレスが食欲不振や体調不全といった心身的な異常症状を伴うことを抽象的にでは あるが,ある程度明らかにしてきたが,ここでは,慢性疲労とのかかわりでストレスの心身への インパクトを精査してみたい。活用する慢性疲労の測定技術は,田多井吉之介氏の「こころとか

らだの慢性疲労テスト」である。

ストレス測定項目によって定めたストレス得点とこの慢性疲労テストの得点との間の相関は,

身体疲労が

r=O.278 ( 0 .  l  75~p;:a;;O. 4 0 0 ) ,  

精神疲労が

r=O.360 ( 0 .  2 3 0 ; : a ; ; p ; : a ; ; O .  4 8 0 )

となり,ぃ

(13)

関西大学「社会学部紀要」第

2 1

巻第

2

表 5 「慢性疲労テスト」(症状別)の結果(彩)

非 役 付 者 フォア 部 課 ・ 長 次の項目のうち,あなたがよく感じるもの

男 子

I

女 子

マ ン 取締役 全 体

(a) 

1 首がいたい ( 1 )   1 5 . 2   1 7 . 0   1 0 . 0   9 . 3   1 3 . 0   1 3 . 5  

(身体の疲れ) 2 足がだるい ( 1 )   2 4 . 2   2 2 . 6   1 0 . 0   9 . 3   8 .  7  1 7 . 2   3 肩がいたい ( 2 )   2 1 .  2  4 3 . 4   3 0 . 0   3 0 . 2   4 3 . 5   3 2 . 1   4 背中がいたい ( 2 )   9 . 1   1 3 . 2   1 0 . 0   4 . 7   1 7 . 4   1 0 . 2   5 手がいたい ( 2 )   7 . 6   9 . 4   2 . 3   8 .  7  6 . 1   6 手がふるえる ( 2 )   7 . 6   2 . 3   8 . 7   3 . 7   7 足がいたい ( 2 )   4 . 6   1 7 . 0   1 0 . 0   2 . 3   4 . 4   7 . 9   8 腰がいたい ( 3 )   3 3 . 3   2 0 . 8   2 0 . 0   1 8 . 6   5 6 . 5   2 7 . 9   9 ひざががくがく ( 3 )   5 . 7   6 .  7  4 . 4   2 . 8   1 0 全身がだるい ( 3 )   2 2 .  7  3 0 . 2   1 6 . 7   9 . 3   1 8 . 6  

(b)  11

気がちる ( 1 )   1 6 . 7   1 5 . 1   2 0 . 0   9 . 3   4 . 4   1 4 . 0  

(心の疲れ) 1 2 人と話< しをするのがじ や ま さ い ( 1 )   1 2 . 1   1 3 . 2   1 0 . 0   1 4 . 0   8 . 7   1 2 . 1   1 3 考えがまとまらない ( 2 )   1 8 . 2   1 8 . 9   1 6 . 7   1 1 .  6  4 . 4   1 5 . 4   1 4 食欲がない ( 2 )   6 . 1   9 . 4   6 .  7  2 . 3   4 . 4   6 . 1   1 5 胸が重くるしい ( 2 )   3 . 0   3 . 3   7 . 0   2 . 8   1 6 ねつきが悪い ( 2 )   1 5 . 2   1 5 . 1   2 0 . 0   7 . 0   4 . 4   1 3 . 0   1 7 まぶたがヒ°クヒ゜クする ( 2 )   1 2 . 1   1 1 .  3  1 3 . 3   7 . 0   9 . 8   1 8 いらいらする ( 3 )   2 1 .  2  2 8 . 3   2 3 . 3   2 0 . 9   3 4 . 8   2 4 . 7   1 9 頭がおもい ( 3 )   7 . 6   1 3 . 2   1 0 . 0   4 .  7  4 . 4   8 . 4   2 0 目がちらちらする ( 3 )   9 . 1   1 3 . 2   1 3 . 3   2 0 . 9   1 2 . 1  

(a) 

からだの慢性疲労 I 平均点 l 3 . o s   I  3 .  7 5   I  ̲  2 .  5 0  1 .  861  s . 1 0 1   2 . 9 9  

(b) 

こころの慢性疲労 i 平均点 1 2 .  5 2  1 3 .  0 2  1 2 .  9 0  1 2 .  3 3   I  1 .  5 7  2 .  5 5  

平均年齢 1  I  3 4 .  a 3 3 .  5 1 4 4 .  o 5 1 .  5 1 5 1 .  5 4 0 .  s 

※項目の右の( )内の数値は,配点を示している。

ずれもストレスと正の相関が成り立っている。つまり,ストレスは心身の慢性疲労を誘発すると いう因果か,あるいは心身の慢性疲労がストレスを喚起するという関係のいずれかが両者の間に は成立するわけである。表 5 は,症状別の慢性疲労状態を調査対象が自覚症状として訴えたもの をベースにして概括したものである。全体の特色では, 「肩がいたい」「腰がいたい」「全身がだ るい」「足がだるい」「首がいたい」といった身体疲労,「いらいらする」「考えがまとまらない」

「気が散る」「ねつきが悪い」といった精神疲労が比較的多く訴えられているが, これらを属性 別に吟味してみるとかなりの差異が表われている。平均値を絶対評価すれば,全体的にも,属性 的にも,身体・精神両疲労共に非常に軽いもので問題視すべきことはない。ただ,相対的にみれ ぱ属性では,フォアマンと部課長の両者で精神疲労が身体疲労よりも高得点になっている点にこ こでは留意する必要があろう。

表 6 は「慢性疲労テスト」結果の特徴を数的に処理したもので,特にここではサラリーマンの

(14)

現代サラ))ーマンのストレス(岡田)

6 「慢性疲労テスト」(病労度スコアと疲労度分布)の特徴 非 役 付 者

男 子 1 女 子 からだの慢性疲労

平 均 疲 労 度 3 . 0 8   3 . 7 5   標

差 3 . 9   3 . 1  

(分布)

疲 労 な し 。 3 3 . 3   1 8 . 9   軽 度 1   5  4 8 . 5   6 0 . 4   中 度 6   9  1 0 . 6   1 5 . 1   高 度 1 0   2 1   7 . 6   5 . 7   こころの慢性疲労

平 均 疲 労 度 2 . 5 2   3 . 0 2   標

差 2 . 6   2 . 9  

(分布)

疲 労 な し 。 3 0 . 3   3 7 . 7   軽 度 1   5  5 9 . 1   3 9 . 6   中 度 6   9  7 . 9   2 0 . 8   高 度 1 0   2 1   3 . 0   1 .  9 

フォア 部証 ストレ

マ ン 取締役 全 体 ス 組

2 . 5 0   1 .  8 6   3 . 7 0   2 . 9 9   4 . 7   2 . 8   1 .  6  1 .  9  2 . 8   3 . 7   3 6 . 7   3 7 . 2   1 3 . 0   2 8 . 8   1 3 . 2   5 0 . 0   6 0 . 5   7 3 . 9   5 6 . 7   5 2 . 6   1 0 . 0   2 . 3   1 3 . 0   1 0 . 2   2 1 . 1  

3 . 3  

゜゜ 4 . 2   1 3 . 2  

2 . 9 0   2 . 3 3   1 .  5 7   2 . 5 5   4 . 8   2 . 3   2 . 6   2 . 6   2 . 7   3 . 3   3 0 . 0   4 4 . 2   6 0 . 9   3 8 . 1   2 1 . 1   5 3 . 3   4 4 . 2   3 4 . 8   4 7 . 9   3 4 . 2   1 6 . 7   9 . 3  

1 1 .  6  3 6 . 8  

2 . 3   ストレス組の有意差 4 . 3   2 . 3   7 . 9  

からだの慢性疲労 Z=3.60  P<0.001  こころの慢性疲労 Z=5.57  P<0.001 

非ス組 ト レ ス

2 . 2   2 . 4   4 2 . 6   4 8 . 9   8 . 5  

゜ 1 .  4  2 . 0   5 9 . 6   3 6 . 2   4 . 3  

ストレス得点を基準に, 13 点以上の者をストレス組, 4 点以下の者を非ストレス組としてまと め,この二群の特徴を追ってみた。

まず,身体の慢性疲労では女子従業員と取締役とが 3.7 点代で大きく,疲労なしの人がいずれ も 2割を割っている。これは,性と年齢とを加味すれば極く当り前の結果とも判定されよう。一 方精神疲労では女子従業員とフォアマンが約

3

点前後で高くなり,両者とも

2

割前後の中度疲労 を呈していることがわかる。そして,第一線監督者や中堅管理職では,身体疲労よりも精神疲労 の方が大きいことをデークは教示している。次に,ストレス組と非ストレス組とを対比すると,

身体疲労と精神疲労とのいずれも帰無仮説は棄却され,明白な有意差が検出されている。特に精 神的慢性疲労に両者間の顕著な差が露顕しており,このことはストレスがこころの標性疲労に連 動することを示性するという意味で注視すぺきであろう。さらに,全体の傾向をみると, 85 彩前 後のサラリーマンは,精神的疲労と身体的疲労のいずれにも「軽度」あるいは「なし」に属する ことが明らかになっている。

(2)  ストレッサー状態の特徴

現代社会のストレス現象の特筆すべき特徴は,それが単一の簡明なストレッサーによって誘発

されるのではなく,複数のストレッサーが交錯感作しながら醸成されていくという点にある。そ

(15)

関西大学「社会学部紀要」第

2 1

巻第

2

の実態を詳細に吟味するために,ストレッサーとして認定できるものを自己申告によって述べら れた内容を通じて示したのが表 7 である。

全体的には, ストレッサーの 6 割は仕事空間で発生している。つまり,仕事 (61.4%), 職 場

・会社 ( 5 0 .7%),  会社の人 (47.9%) の 3 項目が群を抜き, 次に通勤 (28.8%) が続き,第 3 グループとして10% 代で家族関係に関連した数項目があげられている。やはり,サラリーマンの 場合,仕事空間でのストレス疲慾が圧倒的な占有度を示し,この空間での対応が大きな問題領域 であることを示唆している。 1 人当りの平均ストレッサー量は 3.5 項目となり,大雑把に概括す れば,仕事・職場・会社に関連して 2 項目,家庭・私生活関連で 1 項目のストレッサーに襲撃さ れている勘定になる。属性別にみると女子従業員とフォアマンの仕事空間でのストレッサーが目

表 1 ストレッサーの実態(%) 気持ちがイライラしたり,ムシャク

非 役 付 者

フォア

シャする時,関係しているケース 男 子 i 女 子 マン

部•課長 取 締 役

全 体

Ho  1 .  

1 2 . 1   2 6 . 4   6 .  7  2 . 3   8 .  7  1 2 . 6   Ho  2 .   子供 7 . 6   1 5 . 1   2 6 . 7   2 0 . 9   2 1 .  7  1 5 . 8   Ho  3 .  

配偶者

9 . 1   1 5 . 1   1 0 . 0   2 3 . 3   8 .  7  1 3 . 5   Wo  4 .   仕事 4 8 . 5   6 7 . 9   8 0 . 0   5 8 . 1   6 5 . 2   6 1 .  4  HR  5 .   会社の人 4 2 . 4   5 4 . 7   5 3 . 3   5 3 . 5   3 0 . 4   4 7 . 9   HR  6 .   近所の人 6 . 1   1 5 . 1   6 . 7   2 . 3  

7 . 0  

Wo  7 .   家事 3 . 0   9 . 4  

゜ ゜ ゜ 3 . 3  

Ho  8 .   嫁または婿

゜ ゜ ゜ 2 . 3  0 . 5  

Ho  9 .  

育児

1 .  5  1 .  9  3 . 3   2 . 3  

1 .  9 

Wo  1 0 .   職 ・ 会 社 4 3 . 9   5 0 . 9   6 0 . 0   5 5 . 8   4 7 . 8   5 0 . 7   Wo  1 1 .   通勤 3 7 . 9   3 2 . 1   2 3 . 3   2 3 . 3   1 3 . 0   2 8 . 8   So  1 2 .  

収入

1 9 . 7   1 7 . 0   1 3 . 3   9 . 3  

1 4 . 0  

Le  1 3 .   余暇・レジャー 3 . 0   3 . 8   6 . 7  

゜ ゜ 2 . 8  

Le  1 4 .   休日 4 . 6   5 .  7  1 0 .  0 

゜ ゜ 4 . 2  

1 5 .   平日 6 . 1   7 . 6   6 . 7   2 . 3   4 . 4   5 . 6   Le  1 6 .   長期休暇 4 . 6  

゜ ゜ ゜ ゜ 1 .  4 

Ho  1 7 .   家庭

1 5 . 1   1 0 .  0  7 . 0  6 . 5  

Le  1 8 .   家庭サービス 1 .  5  1 .  9 

4 . 7  1 .  9 

So  1 9 .  

政治

6 . 1   5 . 7   6 .  7  7 . 0   1 7 . 4   8 . 4   So  2 0 .  

教育

4 . 6   7 . 6   3 . 3   7 . 0   8 . 7   6 . 1   So  2 1 .  

福祉

1 .  5 

゜ ゜ ゜ ゜ 0 . 5  

Ph  2 2 .  

健康

1 9 . 7   1 7 . 0   1 0 . 0   9 . 3   1 7 . 4   1 5 . 4   So  2 3 .  

道徳

6 . 1   5 .  7  3 . 3   9 . 3   8 . 7   6 . 5   Le  2 4 .   ショッピング

゜ ゜ ゜ 2 . 3  0 . 5  

Le  2 5 .   プロ野球 1 6 . 7   5 .  7  1 0 . 0   1 1 .  6  8 .  7  1 1 .  2  Ph  2 6 .  

騒音

9 . 1   9 . 4   1 0 . 0   2 . 3   8 . 7   7 . 9   Ph  2 7 .  

天候

1 8 . 2   2 0 . 8   1 6 . 7   4 . 7   4 . 4   1 4 . 4   Ph  2 8 .  

季節

1 .  9  3 . 3   ゜ ゜ 0 . 9  

2 9 .  

試験

6 . 1   3 . 8  

゜ ゜ ゜ 2 . 8  

※ 

関係しているケースの左欄のローマ宇記号は分類記号である。

(16)

現代サラリーマンのストレス(岡田)

8 類型別ストレッサー実態(延率:彩)

非 役 付 者 ストレッサー類型 関係項目 フォア

男 子 I 女 子 マン

部•課長

取 締 役 全 体 仕事・会社 Wo  4 項目 1 3 3   1 6 0   1 6 3   1 3 7   1 2 6   1 4 4   人間関係 HR  2  , ,   4 8   7 0   6 0   5 6   3 0   5 5   家庭・家族 Ho  6  I I   3 0   7 4   5 7   5 8   3 9   5 1  

社会•生活

So  5  I I   3 8   3 6   2 7   3 3   3 5   3 4   余暇・レジャー Le  6  I I   2 9   1 5   2 7   1 4   ,  2 0  

物理•生理

Ph  4  I I   4 7   4 9   4 0   1 6   3 0   3 9   ト ー タ ル I  2 7   1 1   3 2 6   4 0 4   3 7 3   3 1 4   I  2 7 0   3 4 3  

立っているが,特にフォアマンの場合には,仕事 (80%), 職場会社 (60%), 会社の人 (35%) を指摘する人が多く, 全体の傾向をより尖鋭化しており, 「職場でもっともストレスに罹り易い のがフォアマンである」という通説が立証された形になっている。一方,女子従業員の場合に は,ストレッサー量が多く, 仕事 (68%), 会社の人 (55%), 職場会社 (51%), 家族関係(延 74%) などに多くがストレッサー指名をしているが, 10% 以上の者が指定したストレッサーは 1 2 種類にも及び, 部・課長・取締役では 7 種類に過ぎないのに比べて,その多彩さが注目され る。特に親とのトラブルが多いのが気懸りである。また非役付者と取締役とが,健康問題に苦悩 していることも看過すべきではない。しかし,大勢として,社会一般,余暇・レジャー面でのス トレッサーを訴える人は少なく,どうやら,サラリーマンのストレスは仕事空間で誘発されるス トレッサーに起因するケースが圧倒的であると結論づけて略間違いないことになる。

表 8 は,表 7 を類型別にまとめた二次資料であるが,全体的眺望がこれでより鮮明に判定でき るだろう。仕事・会社関係では,女子従業員とフォアマンが,家庭空間では女子従業員とフォア マン・部課長が,余暇・レジャーでは男子従業員とフォアマンが,それぞれ他の属性に比べて相 対的に高率のストレッサー指名率を示してはいるが,厳密な意味での属性間の差異を指摘できる

ほどの率差は出ていない。

仕事空間で発生するストレッサーを基軸にしながら,家庭空間で偶発するストレッサーを装着 しつつ交絡感作したストレス状態が,現代のサラリーマンの一般的構図であるが,そのストレッ サーの内容は,年齢,性別,職階などの違いによって若干の相違はあるにせよ,意外にも大勢と しては大同小異であることが判明した。無論,ストレッサー内容の質的な吟味が不十分であるた め,ここでは形式的・表面的レベルでの比較しかできないという限界はあるのだが。

(3)  ストレスコントロールの実情

ストレッサーに対してどのように対応するのか。ストレスにどう対処するのか。この点につい

ては,性差,年齢差,職階差などがかなり敏感に反映されるものと予測できる。ウサ晴らし,気

晴らし,気分転換といった顕示的な対応もあれば,一種の精神修養ともとれる潜在的・心構え的

(17)

関西大学「社会学部紀要」第

2 1

巻第

2

表 9 ストレスに対する対処行動(彩)

気持ちがイライラしたり,不愉快な 非 役 付 者

フォア ことがあったりした時,

男 子

I

女 子

マン

rill 

ウサ睛らしをする 3 3 . 3   3 7 .  7  4 6 . 7   ( 2 ) 人に相談する 1 0 . 6   1 3 . 2  

( 3 ) 我慢する 1 8 . 2   2 4 . 5   1 3 . 3   ( 4 ) 気にしないように努力する 3 7 . 9   2 4 . 5   4 0 . 0  

(a) 

どんなことを普通されますか

( 1 )   酒をのむ 9 . 1   7 . 6   2 6 . 7   ( 2 ) 人にあたる 3 . 0   7 . 6   6 . 7   ( 3 ) 物にあたる 4 . 6   1 .  9  6 . 7   ( 4 )   ペットにあたる

( 5 ) 散財する 7 . 6   7 . 6  

( 6 )   ドライプする 1 . 5   3 . 3   ( 7 )   スボーツをする 3 . 0   7 . 6   1 6 . 7   ( 8 ) 音楽をきく 1 6 . 7   2 4 . 5   3 . 3   ( 9 ) 遊び歩く 1 .  9 

U O l 仕事に打ち込む 3 . 3  

(ll)

風俗営業を利用する

四趣味に興じる 7 . 6   1 1 . 3   1 0 . 0   (

1 悶旅をする 3 . 0   3 . 8   3 . 3   ( 1 4 )   その他 1 . 5   9 . 4  

部•課長

取 締 役 全 体 3 2 . 6   1 3 . 0   3 4 . 0  

7 . 0   7 . 9   2 0 . 9   8 . 7   1 8 . 6   3 9 . 5   7 8 . 3   3 9 . 5   2 5 . 6   1 3 . 5   3 . 7   2 . 8   2 . 3   4 . 7   0 . 9   7 . 0   4 . 4   7 . 0   4 . 4   1 2 . 1   0 . 5   4 . 4   0 . 9   1 8 . 6   1 3 . 0   1 1 .  6 

2 . 3   4 . 4   3 . 3  

な対処法もある。ただ傾向的には,人間関係が疎遠になり,人格的なラポールを喪失し,極めて ゲゼルシャフト化が冗進していく中で,ストレス解消の手立てが他者依存性を弱め,自力脱出型 の対処行動を強めていることを指摘できる。すなわち, ストレス消散の的を, 外向きに定める か,内向きに絞るかの違いはあるにせよ,自力で自主管理的に自己流のやり方で仮想ストレッサ ーに対処するというわけである。若年層はともかく,役付者になると,この傾向は顕著になり,

フォアマンクラスでは,酒・スポーツ・趣味に興じたり,心構えで処理する人が多く,部課長ク ラスになると身体的な衰えもあり,酒と趣味にウサ晴らしを求め,勉めて心の平静を装うべくセ ルフコントロールすることになるが,流石にトップマネジャーになると一般に指摘されているよ うにマネージャー病克服の鍵といわれる「心の持ち方」「心構え」を対処行動の軸に据えている 人が圧倒的になっている(表 9) 。無論,若年層も大勢は自力脱出型の対処行動に準拠しており,

目立った特徴は飽くまでも相対的に「人に相談する」ケースや,ウサ晴らしとして音楽鑑賞には

しるケースが多くみられるに過ぎない。サラリーマンがセルフコントロールによってストレスを

解消しようとするとき,どのようなスクイルを選ぶにせよ,その主要な生活空間が余暇空間にな

ることは想像に難くない。仕事空間への帰属が義務づけられているサラリーマンにとって,夢

と希望を託す世界が,たとえ幻想に過ぎないにしても,レジャー空間であることは瞭然としてい

る。ストレスに強くなる心構えの啓発をするにしても,それを有効かつ的確に行う場は,私生活

参照

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