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演劇とお金鴻上尚史

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Academic year: 2021

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絵・江口修平

エ・ッ・セ・イ おかね を語る

こうかみ・しょうじ●作家・演出家。愛媛県出身。早稲 田大学法学部卒業。1981 年に劇団「第三舞台」を結成し、

作・演出を手がける。舞台公演のかたわら、エッセイス ト、ラジオ・パーソナリティー、テレビの司会、映画監 督など幅広く活動。現在はプロデュースユニット KOKAMI@networkと若手の役者を集めて旗揚げした自 身主宰の劇団「虚構の劇団」での作・演出が活動の中心。

2010 年に第 61 回読売文化賞戯曲・シナリオ賞受賞。

演劇という分野を主な仕事場に選んだので

さほど︑金の苦労をした記憶がない︒経済的

に豊かなのではなく︑お金がないならないで

なんとかしようと智恵と諦めが身についてい

るのである︒

舞台装置を作る金がなければ素舞台と呼ば

れる何もない空間でなんとかするし︑衣装代

がなければ役者の私服でもできる

︒照明は

ちょっとは必要だけど︑どうしてもないなら

蛍光灯でもやれないことはない︒音楽だって

カセットデッキを誰かから借りればなんとか

なる︒劇場だって︑公民館とか区民ホールを

安く利用するという方法やカフェの片隅を借

りるという方法もある︒どうしても小屋が借

りられなければ︑屋外でやればいい︒

演劇は︑たぶん︑生き残っている表現方法

の中で︑絵画と同じぐらい古いメディアなの

︑貧乏とか貧窮とかに強い︒あんまり自慢

できることではないが︑とにかく︑貧しさに

強い︒ 映画はこうはいかない︒どんなに貧乏でも

カメラを借りなければいけない︒さらに上映

のための設備が必要となる︒もちろん︑ドキュ

メンタリー作家さんなんかで︑家庭用のカメ

ラでうんと格安に創っている人もいるけれど

それでも︑演劇に比べてお金がかかる︒テレ ビは言わずもがなである︒

︑そういう貧乏と仲のよい演劇なのに

ミュージカルなんぞになるとチケット代が軽

く一万円を超す︒僕はミュージカルが大好き

︑何作か創ったことがあるのだけれど︑こ

の価格のために︑﹁ミュージカルをまたお願い

します﹂と言われると︑つい二の足を踏んで

しまう︒

僕は

︑大学のサークルから演劇を始めた

そこで劇団を創って︑最初のチケット代はた

しか七百円とか八百円だったと思う

︒同世

代の人間達が簡単に見に来れる敷居の低いメ

ディアだった︒それが︑気がつくと五千円を

超すようになった︒

そして︑ミュージカルになると一万円を超

︒正直に言えば︑自分が一回一万円を超す

作品を創っているというのは︑異常だと思っ

ている︒それは︑ある特定の人向けの限定さ

れた世界の出来事ではないのかと考え込んで

しまう︒自分の創るものが開かれることなく

閉じてしまうことに危惧と不安を感じる︒

︑書きながら︑ふと︑﹁ブロードウェイに

行くと自分も平気で一万円のミュージカルを

見るんだよなあ﹂と思う︒同時に︑それだけ

の金額を貰わないと成立しない演劇というメ

ディアはなんだろうと疑問にも思うのだ︒

演劇とお金

鴻上尚史

参照

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