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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2016 年 2 月 10 日

傷害ストレスにより誘導されるゼニゴケ(

Marchantia polymorpha

)の 二次代謝産物に関する研究

共生基盤学専攻 バイオマス転換学講座 化学生物学 吉川 麻友

1.研究背景および目的

植物は,傷害ストレスに対し独自の防御応答機構を持つ。高等植物においては,傷害により様々 な二次代謝産物が防御応答物質として誘導されることが知られている。その一方で,蘚苔類におけ る傷害応答としての二次代謝産物誘導機構に関する報告は少なく,未だ不明な点が多い。本研究で は,苔類のモデル植物であるゼニゴケ(Marchantia polymorpha)の傷害ストレスにおける二次代 謝産物誘導機構の解明を試みた。

2.方法・結果

1/2 ガンボーグ B5 寒天培地で生育させたゼニゴケをピンセットで傷害処理し,1 時間後に植物体 をメタノールで抽出した。得られたメタノール抽出物を HPLC で分析した結果,傷害処理により数 種の化合物の内生量が上昇していた。内生量が上昇していた化合物を同定するために,傷害処理し たゼニゴケ(500 g)をメタノールで抽出した。定法に従い粗精製を行い,最終的に HPLC のピーク を指標として精製を試みたところ,化合物 1,2 および 3 が単離された。これらの化合物の各種ス ペクトルデータを解析した結果,化合物 1 および 2 は,それぞれフラボノイドの luteolin および apigenin であり,化合物 3 は苔類に特有な bisbibenzyl 骨格を持つ isoriccardin C であることが 明らかとなった(Figure 1)。また,これらの化合物はいずれも傷害処理 1 時間後に内生量が有意 に増加することが示された。

これらの化合物は,いずれもフェニ ルアラニンを出発物質としてフェニル プロパノイド経路を介して生合成され る。フェニルプロパノイド経路の上流を 担う重要な酵素である,フェニルアラニ ンアンモニアリアーゼ(PAL)の遺伝子 発現を定量 PCR により解析した。その結 果,傷害処理によりMpPAL遺伝子の発現 量の上昇が示された。この結果は,傷害 処理により化合物 1,2 および 3 の生合 成が誘導される結果と良い一致を示し た。

3.まとめ

苔類は最初の陸上植物とされており,その生理応答の解明は植物進化の観点において非常に重要 である。本研究から,ゼニゴケの傷害応答の早期にはMpPAL遺伝子の発現が誘導され,ビスビベン ジル類およびフラボノイド類といった,二次代謝産物の生合成が促進されることが明らかにされた。

これらの化合物はいずれも抗菌活性を有することが知られており、傷害による病原菌の感染を防ぐ ために生合成が誘導されていると推測された。従って,ゼニゴケが高等植物と同様に,傷害ストレ ス応答としての二次代謝産物生合成誘導機構を有することが明らかにされた。

Figure 1. Structures of compounds 1, 2 and 3.

Figure 1. Structures of compounds 1, 2 and 3.

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