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教職課程履修学生によるディベートの取り組み

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Academic year: 2021

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(1)

Ⅰ.はじめに

本稿で報告するのは,「総合的な学習の時間」で の活用を念頭に,教職課程履修学生を対象として ディベートに取り組んだ実践事例である.そのう ち,ディベートの立論までの過程を以下に述べる.

ディベートは,アクティブ・ラーニングの推進 においてもよくあげられる学習形態のひとつであ るが,中教審によってアクティブ・ラーニングと いう語が用いられ始めたのは,平成24年8月の 大学教育に関する答申からである.この答申にお いて,中教審はアクティブ・ラーニングを「教員 と学生が意思疎通を図りつつ,一緒になって切磋 琢磨し,相互に刺激を与えながら知的に成長する 場を創り,学生が主体的に問題を発見し解を見い 出していく能動的学修」と定義づけ,具体的な学 習形態として,ディスカッションやディベートと いった双方向の講義,演習,実験,実習や実技等 を中心とした授業をあげた.アクティブ・ラーニ ングは,続く平成28年12月の中教審答申におい ても,次期学習指導要領の骨子のひとつとして

「主体的・対話的で深い学び」と併記されている.

他方,平成4年施行の学習指導要領において登 場した「新しい学力観・学習観」は,すでに「知 識詰め込み型」の教育・学習から「自ら学び考え る力」や「問題解決能力」の育成への移行をうな

がすものであった.そのためには教科の枠を越え た課題探求型,問題解決型の学習が重要であると され,この役割を担って導入されたのが,平成 10年改訂の学習指導要領で位置づけられ,平成 14年から順次実施されてきた「総合的な学習の 時間」である.学習指導要領にはその目標及び内 容が以下のように記されている.

教職課程履修学生によるディベートの取り組み

-「総合的な学習の時間」における活用を念頭に-

Introducing Debate in Teacher Training Course:

As a Learning Style in Integrated Studies in Schools 神谷純子

帝京科学大学 Sumiko KAMITANI Teikyo University of Science

要約: 本稿は大学教職課程において,総合的な教育の時間での活用を念頭にディベートの立論 及び試合に取り組んだ実践事例の報告である.ディベートは,アクティブ・ラーニングをはじめ とする主体的な学びや問題解決能力の育成においてしばしばあげられる学習形態であり,また,

総合的な学習の時間の目標及び内容として学習指導要領に例示のある国際理解,情報,環境,福 祉・健康などの横断的・総合的な課題は,ディベートの論題としてもよく扱われる.本稿では,

教職課程の履修学生を対象にシナリオ方式のディベートを実施した実践とその考察から,学習形 態としてディベートを導入した場合の効果と課題を示す.

1.総合的な学習の時間においては,各学校は,

地域や学校,児童の実態等に応じて,横断的・

総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく 学習など創意工夫を生かした教育活動を行う ものとする.

2.総合的な学習の時間においては,次のよう なねらいをもって指導を行うものとする.

 (1)自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,

主体的に判断し,よりよく問題を解決す る資質や能力を育てること.

 (2)学び方やものの考え方を身に付け,問題 の解決や探究活動に主体的,創造的に取 り組む態度を育て,自己の生き方を考え ることができるようにすること.

 (3)各教科,道徳及び特別活動で身に付けた

知識や技能等を相互に関連付け,学習や

生活において生かし,それらが総合的に

働くようにすること.

(2)

また,学習形態については,6の配慮すべき事 項に記載がある.

筆者は,平成22年から3年にわたり東京成徳 大学にて担当した教職課程科目「総合演習」にお いて,ディベートの立論と試合を指導した.総合 的な学習の時間の活用を念頭におき,論題は,国 際理解,情報,環境,福祉・健康の各々の領域で 設定した.以下,この取り組みのうち,環境領域 での論題「日本はペットボトルのデポジット制度 を導入すべきである」と設定して行ったディベー トの準備の過程を報告する.

Ⅱ.ディベート導入の手順

授業では,まず,大熊徹監修のDVD『ディ ベート入門講座:シナリオ方式のディベート』を 用いて,ディベートの基礎知識やルールを押さ え,練習用の論題で立論,質疑,反駁のポイント や,フローシートのとり方等をシミュレートし た.以下は,この導入の段階で説明のために使用 したスライドからの引用である.

ディベートには,「論理」で勝負するためのさ まざまなしかけやルールが設けられており,4つ の点で一般の討論とは異なる.

①論題:ディベートにおける討論のテーマのこと.

②肯定側と否定側:必ずしも持論とは一致しない.

③ルール:ステージ(立論,質疑,反駁),各 ステージの時間が決まっている.

④判定:審判に対する説得力で決まる.

ディベートの試合は,肯定側と否定側に分か れ,それぞれ立論,質疑,反駁の順に進められ る.試合は,司会者の指示によって進行する.審 判からみて左が肯定側,右が否定側の席になり,

スピーチは中央に立ち,審判に向かって行う.

試合は,出された議論やその論拠を記録しなが ら進める.この記録用紙をフローシートと言う.

シートには,各議論の要点を簡潔に書き留めてお く.また,記録にあたっては以下のような工夫が 必要になる.

①メモを取る位置と順序

②色わけ

③略語・記号を使う

④矢印,番号,ラベル(小見出し)などを使う 立論の準備として,リンクマップの作成が推奨 されている.プランを導入すると起こる可能性の ある事項を関連付けながら一枚の紙に書き出す.

このマップによって,プラン(政策論題における 具体的対策案)を実施した後に,どのようなメ リット,デメリットがどのような過程で発生する のか(発生過程)を整理することができる.リン クマップ作成の手順は以下のとおりである.

①紙の中心にプランを書く.

②プランの導入により起こると考えられること を矢印でつないで書いていく.メリット,デ

6.総合的な学習の時間の学習活動を行うに当

たっては,次の事項に配慮するものとする.

 (1)(省略)

 (2)自然体験やボランティア活動などの社会体 験,観察・実験,見学や調査,発表や討 論,ものづくりや生産活動など体験的な学 習,問題解決的な学習を積極的に取り入れ  (3)グループ学習や異年齢集団による学習など ること.

の多様な学習形態,地域の人々の協力も得 つつ全教師が一体となって指導に当たるな どの指導体制について工夫すること.

 (4)学校図書館の活用,他の学校との連携,公 民館,図書館,博物館等の社会教育施設や 社会教育関係団体等の各種団体との連携,

地域の教材や学習環境の積極的な活用など について工夫すること.

 (5)国際理解に関する学習の一環としての外国 語会話等を行うときは,学校の実態等に応 じ,児童が外国語に触れたり,外国の生活 や文化などに慣れ親しんだりするなど小学 校段階にふさわしい体験的な学習が行われ るようにすること.

※下線は,平成15年の学習指導要領一部改正による 追加・修正箇所

3.各学校においては,1及び2に示す趣旨及 びねらいを踏まえ,総合的な学習の時間の目 標及び内容を定め,例えば国際理解,情報,

環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課 題,児童の興味・関心に基づく課題,地域や 学校の特色に応じた課題などについて,学校 の実態に応じた学習活動を行うものとする.

4(省略)

5(省略)

(3)

メリットが出るまでリンクを伸ばす.先に論 題について予備リサーチなどで理解を深めて から取り組むと出やすい.

③メリット,デメリットを色分けする.

④立論の際に資料が必要だと思われるところに 印(★印)をつける.

⑤反論が出そうなところに印(✂印)をつけ る.

リンクマップが完成したら,マップを参照しな がら立論と論拠のシナリオを作成する.論拠に データが必要な場合は,図書館やインターネット を使いリサーチを行う.

Ⅲ.立論準備

以下は,授業において筆者が示したディベート の立論の手順である.論題は,「総合的な学習の 時間」の目標及び内容として学習指導要領に規定 のある,国際理解,情報,環境,福祉・健康など の横断的・総合的な課題の中から,環境領域の廃 棄物(ごみ)問題を選び,これまでに採用されて いる論題を参照しながら,「日本はペットボトル のデポジット制度を導入すべきである」と設定し た.

3.1 ペットボトル(ごみ)問題の概説

授業では,まず,環境問題において論題となる 可能性のある領域を整理し,ペットボトルをはじ めとするごみ問題の現状について,資料を示して 概説した.

○環境問題に含まれる領域

①生命・生態系

②環境(大気,水質,土壌)汚染

③廃棄物(ごみ)

④化学物質(工場廃棄物,農薬,添加物,化学 物質)汚染

⑤生活環境(水道水,家庭ごみ,電力)

⑥エネルギー・資源(石油など)

⑦これらの環境問題の解決にかかわる法律・条 約,会議等

○日本のごみ事情

・ごみ排出量の削減,再資源化や再利用は緊急 の課題

・ごみの最終処分場や埋立地はパンク状態.ご み最終処分場の建設は,自然環境保護の観点

から住民運動などにより中止に追い込まれる ことも多い.

・産業廃棄物や一般ごみの焼却によって有害物 質(ダイオキシンなど)が発生

○ 「3R」――リサイクル(再生),リユース(再 利用),リデュース(資源消費の削減)

・ペットボトルの生産量と回収率は?

 財団法人クリーン・ジャパン・センター  http://www.cjc.or.jp/index.php

 サイトマップ>リサイクルの現状(統計・

デ ー タ)> 主 要 品 目 の リ サ イ ク ル 率 >(4)

ペットボトル

・デポジット制――リサイクルを進めるための 制度.製品の代金に一定の料金を上乗せして 販売し,容器や廃棄物を所定の場所に持ち 寄った場合,当初の上乗せ料金を返却する.

 ドイツ,東欧(デンマーク)の事例(資料省 略)

・収集の限界

3.2 リンクマップの作成

次に,上記の概説及び資料をふまえ,論題が提 示するプラン実施時のメリット及びデメリットを ランダムにあげた.この作業は内容に大きな偏り が出ないようにクラス全体で行い,ホワイトボー ドに書き出した.その後,持論を考慮せずに肯定 側・否定側にクラスを大きく二分し,さらに4名 程度のチームに分かれ,以下の手順に沿ってチー ムごとにリンクマップの作成を進めた.

①メリット(肯定側)またはデメリット(否定 側)3点の発生過程の確認

②立論に用いるメリットまたはデメリット1点 の決定

③立論に必要な資料の確認

④反駁される可能性のある箇所3点及びその防 御に必要な資料の確認

ここまでの作業は授業中にチームで行い,資料 の収集,及び立論原稿の作成を次の授業までの課

○メリット・デメリットを探す視点

メリット デメリット

①現状の問題が解決 ①現状の問題が悪化

②新たな利益が産出 ②新たな問題が発生

(4)

題とした.

3.3 立論原稿の作成

肯定側・否定側立論とも導入部分は定型を示 し,全体で900字(約3分)の立論原稿をパソコ ンで作成して授業に持参するよう指示した.立論 を組み立てられない学生には,「立論の型」の ワークシートを準備した.

○立論の型

(1)プランに対し(肯定側/否定側)である.

(2)メリット/デメリット(1点)

(3)発生過程:(現状分析)→プラン実施→①

→②→…→メリット/デメリットの発生

(4)インパクト(影響の大きさ):重要性/深 刻性

以下は,これらの過程をふまえ,実際に学生が 作成した立論である.

論題「日本はペットボトルのデポジット制を導 入すべきである」

≪肯定側立論≫

≪否定側立論≫

 これから,肯定側立論を行います.

 はじめに定義を二点述べます.①ペットボト ルとは,ポリエチレン・テレフタレート(以下,

ペットと省略)から作られるびん状の容器です.

②デポジット制とは,商品に一定額の預かり金 を上乗せして販売し,容器等を返却されたとき にそれを払い戻す制度です.

 次にプランを三点述べます.①2年後の4月 より,日本はペットボトルのデポジット制度を 導入する法律を制定します.②デポジットの金 額は一律10円とします.③2年間でデポジット 制度の広報活動をします.

――  まず,デポジット制度を導入することによっ て発生するメリットを挙げます.景観・環境を 守れるということです.

 次に,メリットの発生過程を説明します.プ ランを実行します.すると①消費者は決められ た収集場所にペットボトルを戻すことによって のみデポジット金の返還が求められるため,適 正な手段で回収できる確率が高くなっていきま す.また,空き缶を拾いデポジット金と交換し ようとする人がいるように,ペットボトルのデ ポジット制でも同様の効果が期待できます.こ れによって,不適正な処理(ポイ捨て等)をさ れたものも適正な処理へと回ることが考えられ ます.②回収率が上がることにより,リサイク

 これから,否定側立論を行います.

 プランは,現状維持です.

――  肯定側のプランを実行する事によって生じる デメリットは,デポジット制を導入することに よって,各小売店や生産者に多大な負担がかか るという事です.

 デメリットの発生過程を説明します.プラン を実行します.すると,

①返却は各小売店で行われ,通常の業務に加え,

返却代金の管理や,商品管理,収集したペッ トボトルの管理などが追加される.

②利益が増えるわけでもなく,各小売店の業務 の負担だけが増加する.

 しかも,今回の制度は,法律での規定となる ため,恐らく返却は購入した小売店でのみおこ なわれるものではなく,全国どこでも返却・返 金をしなければならなくなる.ということは,

その返金の代金や,ペットボトルの売上金など をどこかでまとめて管理をしなければならなく なり,そこでもまた業務が増え,人件費も必要 となる.  また,販売代金は10円値上がりするが,それ は生産者の利益には一切ならない.また,ペッ トボトルという日常消耗品の10円の値上がりは,

消費者にとっては小さいものではなく,ペット ボトルの売り上げが下がる可能性がある.とい うことは,生産者にとっては,利益は変わらず,

ル・リユースが促進されます.このことにより,

ゴミが減るだけではなくゴミ埋め立て場自体も 減らすことが出来ます.即ち,景観・環境を守 れるということです.

 デンマークの例をあげます.最もポピュラー な飲料容器は日本と同じくペットボトルですが,

日本との違いはペットボトルが40回近くリユー スされていることです.その為,ペットボトル は日本で売られているものより堅くてしっかり しています.また,デンマークのペットボトル 回収率は98.5%です.そのうち3.5%がカスケード リサイクル(ガラス瓶を別のガラス製品に再生 するというように,物質のリサイクルのこと)

に回り,再利用されるものは全体の95%となり ます.  このようにデポジット制を導入すると確実に ゴミが減少することが分かります.ゴミの減少 は景観・環境の保護だけではなく,生物や生態 系の保護にもつながるのです.

――

 これで,肯定側立論を終わります.

(5)

3.4 反駁の型

立論において,肯定側はプラン実施によるメ リットの発生とその重要性,否定側はデメリット の発生とその深刻性を論じる.質疑のターンを挟 んで次に行われるのが反駁のやり取りとなる.こ の反駁に対し,どの程度論理的に自チームの論を 主張し,審判にアピールすることができるかが勝 敗の鍵となる.授業では,予め反駁原稿まで作成 させておくこともあった.

Ⅳ.ディベート導入の効果と課題 4.1 効果

ディベート導入の効果としては,まず,論題と なるテーマに関して幅広く知識を得られること,

併せて知識を得る方法とそれを整理する術を習得 できることがあげられる.これには,立論の準備 過程における資料収集やリンクマップ作成が有効 である.資料収集においては,ウェブサイトでの 検索方法や信頼のおけるサイトやデータの見分け 方などのITリテラシーも含まれる.次に,ディ ベートの導入は,資料を論拠として論理的に議論 する訓練になる.持論の主張のみならず,相対す る視点から持論の強みや弱点を見極めたり,ま た,対する主張の正当性を論じたりするなど,多 角的な議論が可能になる.これには,立論や反駁 の型が役に立つ.ディベート本体の試合に関して は,学生の関心や能力の差がチームワークに影響 し,議論が活性化しないこともしばしばあったの は事実だが,議論のための技術を部分的に用いる だけでもディベート導入の意義はあると考える.

さらに,政策論題の場合,その論題は公平な議 論を展開する必要性から,まだ社会的に評価が定 まっていないテーマが選択される.授業において 議論した政策が,現実の社会において議論され実 施されていくさまを見ることにより,学習に対す る動機づけがより強まると言える.授業では,こ のほかに「日本は公立の小中学校に日本語指導が 必要な外国人児童生徒を対象とした特別支援学級 を作るべきである」(国際理解)「日本は中学生以 下の携帯の使用を禁止すべきである」(情報),

「日本は婚姻関係以外の男女の同棲を禁止すべき である」(福祉)などの論題を取り上げたが,現 実に起こり得るこれらの課題に対する学生の関心 は概して高く,回を重ねるにつれ,筆者の想定以 上に説得力のある立論が提出されることも稀では なかった.

4.2 課題

学校現場においてディベートを導入する際の課 題を以下に二点あげる.一点は,学生の関心や能 力の差についてである.学生に参加を促すアク ティブ・ラーニングにおいては,これらの学生間 の差が一層可視化されやすい.これに対して筆者 は,クラス全体やチームでリンクマップを作成 し,それを立論シナリオにまとめる作業は個別に 行うなど,個と全体を行き来させて参加に抵抗感 のある学生にも一定の活動への参加を求めてい た.肯定的に意味づけするならば,ディベートは チームワークであり,協力的なチームを形成する ことで多様な関心・能力の学生を学びに巻き込む ことが可能になるとも考えられる.この点から言

売り上げだけが下がるという大きなデメリット

が生じる場合もある.

 ペットボトルのリサイクル方法が確立されて いない現段階で,こんなにも多くの負担や,デ メリットがあるデポジット制を導入するのは,

リスクがありすぎる.よって,プランを実行し てはならないのです.

―― これで,否定側立論を終わります.

図1 反駁の型(否定側)

図2 反駁の型(肯定側)

(6)

えば,授業でしか顔を合わせない学生同士でチー ムを組むよりも,集団としてある程度の関係が 育っている小中学校の学級においてディベートを 導入することにより,個々人の学びを深めると同 時に学級集団のチームワークを向上させる効果も 期待できるかもしれない.

もう一点は,論題設定の難しさである.一般 に,ディベートの論題には価値論題,推定論題,

政策論題の3種がある.筆者が授業においておも に用いた政策論題は,この3種では最も難易度が 低く取り組みやすいとされるが,その政策論題に おいても,公平な議論を展開するためにメリッ ト・デメリットに偏りがないものを選択する必要 があり,授業者が論題を設定するよりも,ディ ベート大会などで実際に取り上げられている論題 から選択したほうが適切であることが多い.ゆえ に,授業者が設定したテーマに,ディベートとい う学習形態が適合しないことが起こりえる.ま た,ディベートは完成されたひとつのゲームであ り,そのルールをマスターし全員を参加させよう とすると膨大な時間がかかる.筆者が授業で導入 した型もかなり簡略化したものであったが,学校 現場にディベートを導入するには,推奨される領 域(論題)に対し,さらに簡略化したルールで実 施できるミニディベートのパッケージを作成して おく必要があるだろう.

Ⅴ.まとめ

学習形態として学校教育に導入するにはディ ベートは多くの課題があると思われるが,教職課 程の履修学生には得られたものが多くあった.本 稿に紹介した立論原稿のように,適切な資料に基 づき理論的な文章を書けるようになった学生も散 見され,年度によってはディベートサークルを立 ち上げて活動を継続しようとした学生のグループ

も現れた.自らが体験し効果を実感したことがな い学習形態を教師として実施するのは困難が伴 う.教職課程においてディベートを体験し,部分 的にでもその技術から知識の運用の方法を習得し た履修生が,教師として将来この体験を授業に応 用してくれることを願う.

参考文献

安藤香織・田所真生子編(2002).『実践!アカデ ミック・ディベート:批判的思考力を鍛え る』.ナカニシヤ出版.

中央教育審議会.「新たな未来を築くための大学 教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主 体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」

(平成24年8月)

  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm 出口汪(2009).『[出口式]脳活ノート』.廣済堂

出版.

望月和彦(2003).『ディベートのすすめ』.有斐 閣.

新田祥子(2008).『練習15分論理力トレーニン グ教室』.日本能率協会マネジメントセン ター.

大熊徹監修(2006).『ディベート入門講座:シナ リオ方式のディベート』(DVD全3巻)

  https://www.japanlaim.co.jp/fs/jplm/4403 小学校学習指導要領(平成10年12月告示,平成

15年12月一部改正)(抄)

  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo3/021/siryo/attach/1403430.

htm

安田正(2009).『図解ロジカル・トレーニング:

「考える力」「ひらめく力」を強化する!』.

朝日新聞出版.

参照

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