第7回
(2020
年6
月30
日(
火)
配信分)
第7回本題
関数のグラフに接線をひくと言うことは、その関数に対して、
一次関数によって、接点とその周辺で最もよいと思われる近似を 与えることでした。ここで最もよいと思う根拠は何だったかと言 うと、同じ点を通りかつその点で接していると言う2条件を満た していることでした。
元の関数を f (x), その接線を与える一次関数を f 1 (x) とし、接
点の x 座標を a とすれば、上の2条件は、
f (a) = f 1 (a) かつ f ′ (a) = f 1 ′ (a)
と表され、これにより
f 1 (x) = f (a) + f ′ (a)(x − a)
と言う接線の公式が得られます。
近似は、 x = a のすぐ近くでしか役に立ちません。グラフの曲線 がちょっと曲がれば ( すなわち f ′ (x) の値が変われば ) 、途端に接
線から離れて行ってしまうからです。
そこで、よりよい近似を得るために、一次関数の次に簡単な二 次関数を用いることは、とても自然な発想でしょう。いくつかの 基本的な初等関数について、 x = 0 において、3つの条件
f (0) = f 2 (0), f ′ (0) = f 2 ′ (0), f ′′ (0) = f 2 ′′ (0)
を満たす二次関数を求めてみましょう。 ( 以下、次数を上げて行く
のに備えて、多項式は次数の低い方から昇べきで表します。 )
指数関数 e x について。
f (x) = e x f 2 (x) = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 f (0) = 1 = f 2 (0) = a 0
f ′ (x) = e x f 2 ′ (x) = a 1 + 2a 2 x f ′ (0) = 1 = f 2 ′ (0) = a 1
f ′′ (x) = e x f 2 ′′ (x) = 2a 2 f ′′ (0) = 1 = f 2 ′′ (0) = 2a 2
より、
a 0 = 1, a 1 = 1, a 2 = 1 2
なので、
f 2 (x) = 1 + x + 1
2 x 2
0 - x y =ex
y = f2(x)
教科書
73
頁の図7.1
は、このf
2(x)
が間違っています。三角関数 sin x について。
f (x) = sin x f 2 (x) = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 f (0) = 0 = f 2 (0) = a 0
f ′ (x) = cos x f 2 ′ (x) = a 1 + 2a 2 x f ′ (0) = 1 = f 2 ′ (0) = a 1
f ′′ (x) = − sin x f 2 ′′ (x) = 2a 2 f ′′ (0) = 0 = f 2 ′′ (0) = 2a 2
より、
a 0 = 0, a 1 = 1, a 2 = 0
なので、
f 2 (x) = x
0 - x y = sinx
y = f2(x) = f1(x)
ただの接線ですが、これは間違いではありません。
三角関数 cos x について。
f (x) = cos x f 2 (x) = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 f (0) = 1 = f 2 (0) = a 0
f ′ (x) = − sin x f 2 ′ (x) = a 1 + 2a 2 x f ′ (0) = 0 = f 2 ′ (0) = a 1
f ′′ (x) = − cos x f 2 ′′ (x) = 2a 2 f ′′ (0) = − 1 = f 2 ′′ (0) = 2a 2
より、
a 0 = 1, a 1 = 0, a 2 = − 1 2
なので、
f 2 (x) = 1 − 1
2 x 2
0 - x y = cosx
y = f2(x)
sin x が二次関数で近似しても近似が改善されないのは、 sin x
は奇関数 ( f ( − x) = − f (x), グラフが原点について点対称 ) なのに
対して、よりよい近似を求めて追加した2次の項 a 2 x 2 が偶関数 ( f ( − x) = f (x), グラフが y 軸について線対称 ) だからです。この
場合、近似の精度を上げるためには、近似に用いる関数の次数を
三次まで上げることが必要です。
三角関数 sin x について ( 続 ) 。
f (x) = sin x f 3 (x) = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 + a 3 x 3
... ... ... ...
f ′′′ (x) = − cos x f 3 ′′′ (x) = 6a 3 f ′′′ (0) = − 1 = f 3 ′′′ (0) = 6a 3
より、
a 0 = 0, a 1 = 1, a 2 = 0, a 3 = − 1 6
なので、
f 3 (x) = x − 1
6 x 3
0 - x y = sinx
y = f3(x)
これでようやく、一周期分くらいまでは、グラフの形も似て来 ます。
ついでに他も見てみると…
指数関数 e x について ( 続 ) 。
f (x) = e x f 3 (x) = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 + a 3 x 3
... ... ... ...
f ′′′ (x) = e x f 3 ′′′ (x) = 6a 3 f ′′′ (0) = 1 = f 3 ′′′ (0) = 6a 3
より、
a 0 = 1, a 1 = 1, a 2 = 1
2 , a 3 = 1 6
なので、
f 3 (x) = 1 + x + 1
2 x 2 + 1
6 x 3
0 - x y =ex
y = f3(x)
近いところではかなりべったりです。
三角関数 cos x について ( 続 ) 。
f (x) = cos x f 3 (x) = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 + a 3 x 3
... ... ... ...
f ′′′ (x) = sin x f 3 ′′′ (x) = 6a 3 f ′′′ (0) = 0 = f 3 ′′′ (0) = 6a 3
より、
a 0 = 1, a 1 = 0, a 2 = − 1
2 , a 3 = 0
なので、
f 3 (x) = 1 − 1 2 x 2
こちらは偶関数なので、よりよい近似のために追加した3次の項
a 3 x 3 は効果がありません ( 図も f 2 (x) と同じなので省略します ) 。
してみましょう。この場合、三次関数は、
f 3 (x) = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 + a 3 x 3
ではなくて、接線の公式の形をまねて、
f 3 (x) = a 0 + a 1 (x − 1) + a 2 (x − 1) 2 + a 3 (x − 1) 3
とおいて求めた方が便利です。
f (x) = log x f 3 (x) = 同上 f (1) = 0 = f 3 (1) = a 0
f ′ (x) = 1 x f 3 ′ (x) = a 1 + 2a 2 (x − 1) + 3a 3 (x − 1) 2 f ′ (1) = 1 = f 3 ′ (1) = a 1
f ′′ (x) = − x 1
2f 3 ′′ (x) = 2a 2 + 6a 3 (x − 1) f ′′ (1) = − 1 = f 3 ′′ (1) = 2a 2
f ′′′ (x) = x 2
3f 3 ′′′ (x) = 6a 3 f ′′′ (1) = 2 = f 3 ′′′ (1) = 6a 3
より、
a 0 = 0, a 1 = 1, a 2 = − 1
2 , a 3 = 1 3
なので、
f 3 (x) = (x − 1) − 1
2 (x − 1) 2 + 1
3 (x − 1) 3
0 - x
y = logx y = f2(x)
0
x- 6
y
y = logx y = f3(x)
より一般に、関数 f (x) の x = a における n 次関数 f n (x) によ
る近似を、条件
f (a) = f
n(a), f
′(a) = f
n′(a), f
′′(a) = f
n′′(a), . . . , f
(n)(a) = f
n(n)(a)
により定義することにしましょう。
ここで f n (x) を、
f n (x) = a 0 + a 1 (x − a) + a 2 (x − a) 2 + · · · + a n (x − a) n
とおいて、上の条件を書き直すと、
f (a) = a 0 , f ′ (a) = a 1 , f ′′ (a) = 2a 2 , . . . , f (n) (a) = n! a n
より、
a 0 = f (a), a 1 = f ′ (a), a 2 = 1
2 f ′′ (a), . . . , a n = 1
n! f (n) (a)
なので、
+ · · · + 1
n! f (n) (a)(x − a) n
となります。
2次の係数の内、 1
2 は実は 1
2! であり、1次の係数には実は 1 1!
が、定数項には実は 1
0! (= 1 は約束 ) が、それぞれ隠れているもの と思って、眺めてみていただければ、覚えやすいと思います。
ここで用いた記号、
f
1, f
2, f
3, . . . , f
n は、教科書73
頁に倣って、この講義 ノートで用いていますが、どの本でも使われている一般的な記号と言うわけで はありませんので、他の本を参照するときは、注意して下さい。今、近似と言う以上、誤差がどの程度小さいのか、ちゃんと評 価しておく必要があります。そこで、この誤差を剰余項として、
f n (x) に付け加えたものを、 f (x) の x = a におけるテイラー展
開と呼びます ( x = 0 の場合にはマクローリン展開とも言います )
( 教科書 69 頁参照 ) 。
剰余項の与え方は一つではありませんが、代表的なものの一つ
が、平均値の定理の一般化として得られます。
教科書 69 頁にもある通り、
f (x) − f (a)
x − a = f ′ (c)
より、
f (x) = f (a) + f ′ (c)(x − a)
で、これは一次関数による近似ではなく ( と言うのは、 c は x に依
存して動いてしまうからです ) 、定数 ( 0次関数 ) による近似 f (a)
の誤差 ( 剰余項 ) が f ′ (c)(x − a) であることを意味しています。
x = a の近くで、少なくとも C n 級である関数 f (x) に対して、
(n − 1) 次関数による近似の剰余項を , 平均値の定理に倣って、 n
次導関数を用いて与えたのが、テイラーの定理で、
f (x) = n
∑− 1
k=0
1
k! f (k ) (a)(x − a) k + 1
n! f (n) (c)(x − a) n
を満たす c が a と x の間に存在します。
具体的に与えられた関数について、そのテイラー展開を第 n 項 ( =剰余項 ) まで求めるには、 n 次までの微分 ( 係数 ) 全てを知る必
要があります。従って公式として簡単に書ける例は、そう多くは ありません。
e x , sin x, cos x については、 n 次導関数が n について周期的に
現れるので、 x = 0 における展開を容易に求めることが出来ます
( 教科書 72 頁参照。ただし c = θx と読み替えて下さい ) 。
f (0) = e = 1 なので、
e x = n
∑− 1
k=0
1
k! x k + e c n! x n
一方、 log x についても、 n 次導関数が n で簡単に表せるので、
容易に求めることが出来ます。
実際 f (x) = log x のとき、
f (n) (x) = ( − 1)( − 2) · · · {− (n − 1) } x − n = ( − 1) n − 1 (n − 1)!x − n
より、 f (n) (1) = ( − 1) n − 1 (n − 1)! なので、
log x =
n
∑− 1 k=1
( − 1) k − 1
k (x − 1) k + ( − 1) n − 1
nc n (x − 1) n
f (x) が C ∞ 級の場合に、剰余項を設けるのではなく、関数列 の極限である無限級数
n lim →∞ f n (x) =
∑∞
n=0
1
n! f (n) (a)(x − a) n
を考えたものを、 f (x) の x = a におけるテイラー級数展開と呼 びます ( 教科書 86 頁参照 ) 。ただし、この極限値は任意の x に対し
て存在するとは限らないので、収束範囲を調べておく必要があり
ます。それに関しては、次回扱います。
f (x) = x p で p =
m のとき、
x
p− a
px − a = x
n/m− a
n/mx − a
= (x
1/m)
n− (a
1/m)
n(x
1/m)
m− (a
1/m)
m= (x
1/m− a
1/m) { (x
1/m)
n−1+ a
1/m(x
1/m)
n−2+ · · · + (a
1/m)
n−2x
1/m+ (a
1/m)
n−1} (x
1/m− a
1/m) { (x
1/m)
m−1+ a
1/m(x
1/m)
m−2+ · · · + (a
1/m)
m−2x
1/m+ (a
1/m)
m−1}
= (x
1/m)
n−1+ a
1/m(x
1/m)
n−2+ · · · + (a
1/m)
n−2x
1/m+ (a
1/m)
n−1(x
1/m)
m−1+ a
1/m(x
1/m)
m−2+ · · · + (a
1/m)
m−2x
1/m+ (a
1/m)
m−1→ n(a
1/m)
n−1m(a
1/m)
m−1(x → a)
= n
m a
(n/m)−1= pa
p−1= f
′(a)
f (x) が C 2 級のとき、
g (x) :=
f (x) − f (a)
x − a (x ̸ = a) f ′ (a) (x = a)
に対し、
g ′ (x) =
f ′ (x)(x − a) − f (x) + f (a)
(x − a) 2 (x ̸ = a) f ′′ (a)
2 (x = a)
が連続であることまでは示しました。
分可能です。一方、 g ′ (x) の a から x までの平均変化率は、
g ′ (x) − g ′ (a) x − a =
f ′ (x)(x − a) − f (x) + f (a)
(x − a) 2 − f ′′ (a) 2 x − a
=
f ′ (x)(x − a) − f (x) + f (a) − f ′′ (a)
2 (x − a) 2 (x − a) 3
ですから、ここで ( f (x), f ′ (x) が共に x = a で連続であることに
注意すれば )
f ′ (x)(x − a) − f (x) + f (a) − f ′′ (a)
2 (x − a) 2 → 0 (x → a) (x − a) 3 → 0 (x → a)
より、ロピタルの定理が使えそうなので、
x lim → a
g ′ (x) − g ′ (a)
x − a = lim x → a
f ′ (x)(x − a) − f (x) + f (a) − f ′′ (a)
2 (x − a) 2