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スギ花粉症モデルマウスにおけるユーグレナの効果についての検討

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[研究ノート]

スギ花粉症モデルマウスにおけるユーグレナの

効果についての検討

小泉未希

・吉井 唯

・湯浅正洋

・澤村弘美

渡邊敏明

・吉田絵梨子

**

・鈴木健吾

**

兵庫県立大学環境人間学研究科食環境解析学教室,

**

株式会社ユーグレナ)

(平成25年 6 月24日受付,平成25年10月 7 日受理)

Effect of euglena on cedar pollen allergies

in cry j1-sensitized mice

Miki Koizumi

, Yui Yoshii

, Masahiro Yuasa

, Hiromi Sawamura

,

Toshiaki Watanabe

, Eriko Yoshida

**

, Kengo Suzuki

**

Department of Dietary Environment Analysis, School of Human Science and Environment,

University of Hyogo,

1 1 12, Shinzaike-honcho, Himeji-shi, Hyogo, 670 0092

**

Euglena Co. Ltd., 7F University of Tokyo, Entrepreneur Plaza,

7 3 1, Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo, 113 0033

〒670 0092 兵庫県姫路市新在家本町1 1 12      

**

〒113 0033 東京都文京区本郷7 3 1 東京大学アントレプレナープラザ 7 階

 Cedar pollen allergies are one of the severe health problems in Japan. Recently, it was reported that symptoms of pollen allergies are attenuated by the intake of function-al foods. Euglena is a unicellular organism classified as function-algae, which is taking notice as a functional food. In this study, the effect of euglena on experimental pollen aller-gies in mice was investigated.

  5 week-old BALB/c male mice were sensitized using Cry j1 by intraperitoneal in-jection and intranasal instillation. AIN 93M was fed to the negative control and posi-tive control group, whereas euglena, paramylon, and amorphous paramylon were fed ( 2 % in AIN 93M) to each diet group. We determined the incidence of nasal rubbing,

liver weight, spleen weight, white blood cell counts, serum IgE and IFN γ.

 In the euglena diet group, the percentage of positive incidences of nasal rubbing mice decreased. It is suggested that euglena may attenuate symptoms of cedar pollen aller-gies.

1 .諸  言

 近年,わが国において,生活習慣,食生活,自然環境 の変化や衛生状態の向上などさまざまな要因によってア レルギー患者が増大している。中でも,アレルギー性鼻 炎の増加が顕著であり,国民の20%以上が罹患している と報告されている1 )。特に,スギ花粉症の患者数は,ア レルギー性鼻炎の中で最も多く,わが国における重要な 健康問題の一つといえる。スギ花粉症は,IgE 抗体との 特異的反応によりアレルギー症状を引き起こす即時型 (Ⅰ型)アレルギー疾患である。スギ花粉症を引き起こ す主要な抗原(アレルゲン)として,花粉中に含まれる Cry j1と Cry j2が同定されている2 ,3 )。花粉症の治療法 として,免疫療法や薬物療法などがあるが,未だに根本 的な治療法は見つかっていない。最近では,機能性食品 によってアレルギー症状を抑制することが多数報告され ており4 6 ),機能性食品への期待が高まっている。  アレルギーの発症には,ヘルパー T 細胞(Th)が関 与している。Th は,サイトカイン産生パターンによって, Th1と Th2の 2 つに分類される7 )。通常,Th1細胞は細 胞性免疫に関与しており,IL 2や IFN γなどのサイト カインを分泌する。一方,Th2細胞は液性免疫に関与し

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ており,IL 4や IL 5などのサイトカインを分泌する。 これら Th1と Th2のバランスが崩れた場合に,アレル ギー反応が引き起こされると考えられている。なお,遅 延型(Ⅳ型)アレルギーの発症には Th1が,Ⅰ型アレル ギーの発症には Th2が,それぞれ優位になることが知ら れている。花粉症は典型的なⅠ型アレルギーであり, Th2優位の場合に発症すると考えられる。  ユーグレナ(学名:Euglena gracilis Z,和名:ミドリ ムシ)は,藻類に分類される単細胞生物である。植物学 と動物学の双方の分類表に記載されており,光合成を行 うだけでなく,移動することも可能である。食品として は,最近では,ユーグレナが添加された食品が販売され ており,新しい健康食品の一つとして注目されている。 ユーグレナの新規機能性を明らかにすることで,ユーグ レナを用いた機能性食品が開発されることが期待されて いる。これまでの報告では,ユーグレナに含まれる難消 化性の多糖であるβ 1,3 D グルカンの一種であるパラ ミロンによる効果が明らかになっている。例えば,パラ ミロンにはサイトカインが関係する免疫賦活作用8 ),急 性肝障害に及ぼす肝臓保護効果9 ),抗ヒト免疫不全ウィ ルス(HIV)作用10)および抗菌効果11)があることが報告 されている。さらに,パラミロンの経口投与は,Th1と Th2の両方の反応を抑制することによって,NC/Nga マ ウスにおいてアトピー性皮膚炎の発症を抑制することが 示唆されている12)  また,キノコ類や酵母に多く含まれるβ 1,3 1,6 D グルカンに,免疫調節作用およびアレルギー抑制効果が 報告されている。例えば,低分子β グルカンをマウス に経口投与することでアレルゲン特異的 IgE の産生が 有意に抑制され IL 12や IFN γの産生量が増加するこ と13)や,ヒトにおける低分子レンチナンの経口投与に よって季節性および通年性の鼻漏,くしゃみ,鼻閉,か ゆみ,涙目などのアレルギー症状を抑制し,アレルゲン 特異的 IgE 量と総 IgE 量の増加を抑制すること14)など が明らかにされている。  このように,食品中のβ グルカンが花粉症などのⅠ 型アレルギー反応を抑制することや,パラミロンの経口 投与によるアトピー性皮膚炎の抑制効果が知られている。 しかし,ユーグレナやパラミロンによる花粉症症状の抑 制効果に関する報告はない。そこで,本研究では,スギ 花粉中に含まれる主要な抗原である Cry j1を感作させた スギ花粉症症状を呈するモデルマウスを作製し,ユーグ レナおよびパラミロンの経口投与によるスギ花粉症症状 の抑制効果について検討した。また,パラミロンよりも 腸管免疫に与える影響が大きく,大腸癌の抑制効果15) 認められているアモルファスパラミロン(パラミロンの 非結晶体)の効果についても検討した。  なお,本研究では抗原の投与量を減らして実施した。 この理由として,「重度の疾病モデル」では,投薬など の治療が優先されるため機能性食品の必要性は低く,現 実的には,「軽度の疾病モデル」の場合に機能性食品の 必要性が高いと考えたためである。抗原投与量は,先行 研究ではマウス 1 匹あたり 3 μg16,17)であるが, 1 μg と して実施した。

2 .実験方法

( 1 )実験動物および飼料組成  実験には, 5 週齢の BALB/c 雄性マウス(日本クレ ア株式会社,東京)を用いた。マウスは室温23± 1 ℃, 湿度60∼65%,12時間の明暗サイクル(明期9:00∼21: 00)で,プラスチックケージに 4 匹ずつ入れて飼育した。 飼料と飲料水(蒸留水)は自由摂取とした。  マウスは 1 週間の予備飼育の後,ネガティブコント ロール(NC)群,ポジティブコントロール(PC)群,ユー グレナ(E)群,パラミロン(P)群およびアモルファ スパラミロン(A)群に分け, 5 週間飼育した。各群の n数は 7 ∼ 8 匹とした。  なお,本研究は兵庫県立大学倫理委員会(受付番号 052,平成24年 4 月16日)の承認を受け,実施した。 ( 2 )飼料組成  飼料に用いたユーグレナ,パラミロンおよびアモル ファスパラミロンは,株式会社ユーグレナより入手した。 ユーグレナの栄養素組成は,Table 1 の通りである。パ ラミロン抽出方法は以下の通りである。培養後のユーグ レナを遠心分離によって回収し,水で洗浄した。洗浄後 のユーグレナを超音波破砕して,パラミロン抽出液を得 た。得られたパラミロン抽出液は,脂質とたんぱく質除 去のために, 1 %ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液 を添加し95℃で60分反応させ,0.1%SDS 溶液を添加し て50℃で30分間処理した。その後,遠心分離で得られた 沈殿を,水,アセトン,エーテルの順番で洗浄し,精製 されたパラミロンを得た。また,アモルファスパラミロ ンは,精製したパラミロンを 1 mol/L 水酸化ナトリウム に溶解後, 6 mol/L 塩酸で pH 7.0に中和した後に得ら れるゼリー状の沈殿を凍結乾燥して得た。  NC 群および PC 群には,精製飼料(AIN 93M;日本 クレア株式会社)を摂取させた。E 群,P 群および A 群 Table 1  ユーグレナの栄養素組成 組 成 (g/100 g) 水分(g) 3.8 たんぱく質(g)a 42.1 脂質(g) 14.4 灰分(g) 5.7 炭水化物(g)b 34 エネルギー(kcal)c 434 コリン(g) 0.38 a窒素タンパク質換算係数:6.25 b100−(水分+たんぱく質+脂質+コリン) cエネルギー換算係数:たんぱく質, 4 ;脂質, 9 ;炭水化物, 4

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には,AIN 93M のセルロースの代わりに,それぞれユー グレナ,パラミロンおよびアモルファスパラミロンを 2 %添加した(Table 2 )。なお,ユーグレナ,パラミ ロン,アモルファスパラミロンの飼料への添加方法は, 飼料に用いる材料とともに直接混ぜ合わせることで作製 した。 ( 3 )花粉症モデルマウスの作製  花粉症モデルマウスの作製には,抗原として精製スギ 花粉抗原 Cry j1(株式会社林原,岡山)を使用した。ア ジュバンドとして,水酸化アルミニウムゲル(Al(OH)3) を用いた。Al(OH)3溶液は,0.25 mol/L 水酸化ナトリ ウムと0.25 mol/L 硫酸アルミニウムから作製した18,19) 試薬は,すべて和光純薬工業株式会社(大阪)の特級試 薬を用いた。  抗原感作のスケジュールを,Fig. 1 に示した。マウス を各群に分け,飼料摂取 1 週間後に初回感作を行った。 PC群,E 群,P 群 お よ び A 群 に Cry j1 を 1 μg と Al (OH)3溶液を0.1 mL とを混合して作製した懸濁液を 1 週間間隔で計 3 回,腹腔内に投与した(一次感作)。さ らに,最後の腹腔内投与から 1 週間後,PBS 10 μL に溶 解させた Cry j1を0.5 μg を 7 日間連続で鼻腔内に投与 した(二次感作)。なお,NC 群には抗原感作を行わず, Al(OH)3溶液および PBS の代わりに同量の生理食塩水 を投与した。 ( 4 )試料採取  最後の鼻腔内投与から24時間後,ジエチルエーテル麻 酔下で開腹し,腹部大静脈からの採血により屠殺した。 採取した血液を3,000 rpm で遠心後,血清を得た。また, Table 2  飼料組成 (g/100 g) NC群 PC群 E群 P群 A群 重酒石酸コリン 0.25 0.25 0.25 0.25 L シスチン 0.18 0.18 0.18 0.18 ミネラルミックス 3.5 3.5 3.5 3.5 ミルクカゼイン 14.0 14.0 14.0 14.0 ビタミンミックス 1.0 1.0 1.0 1.0 精製大豆油 4.0 4.0 4.0 4.0 β化コーンスターチ 46.57 46.57 46.57 46.57 α化コーンスターチ 15.5 15.5 15.5 15.5 シュークロース 10.0 10.0 10.0 10.0 セルロースパウダー 5.0 3.0 3.0 3.0 ユーグレナ 2.0 パラミロン 2.0 アモルファスパラミロン 2.0 総 量 100.0 100.0 100.0 100.0 (n = 7 ― 8 ) Fig. 1  実験スケジュール NC群 PC群 E群 P群 A群 0 1 2 3 4 5 (wks) 腹腔内投与 Cry j1 1 μg + Al(OH)0.1 mL3 鼻腔内投与 Cry j1 0.5 μg +PBS 10 μL 2%アモルファス パラミロン混合飼料 2%パラミロン混合飼料 2%ユーグレナ混合飼料 AIN-93M AIN-93M 血清,脾臓,肝臓の採取

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肝臓および脾臓を採取した。これらの試料は,分析に用 いるまで−20℃以下で保存した。 ( 5 )鼻掻き行動の観察  鼻腔内投与の最終日に,感作直後から 5 分間の鼻掻き 行動を観察した。マウスをビデオカメラで撮影し,映像 より鼻掻き行動の回数をカウントした。  鼻掻き行動は,NC 群における回数の平均値+ 1 SD (標準偏差)の数値を基準値とし,それ以上の鼻掻き行 動が観察された場合に陽性と判断し,陽性マウスの割合 を比較した。 ( 6 )分析方法 1 )白血球数の算定  血液10 μL とチュルク染色液(ナカライテスク株式会 社,京都)90 μL を混合し,Burker-Turk 型血球計算盤 を用いて,顕微鏡下で白血球数をカウントした。 2 ) 血清総 IgE 濃度および血清サイトカイン濃度の測 定

 血清総 IgE 濃度は,レビス® IgE ELISAキット(マウ

ス)(株式会社シバヤギ,群馬)を用いて測定した。血 清 IFN γ 濃 度 は,IFN γ(mouse), ELISA kit (ENZO LIFE SCIENCE, INC., USA)を用いて測定した。 ( 7 )統計処理  得られたデータの集計・解析は,エクセル統計 Statcel 3 (有限会社オーエムエス出版,埼玉)を用いた。すべ ての値は,平均値± SD で示した。また,p<0.05の場 合に統計学的に有意であると判定した。

3 .結  果

( 1 )体重および飼料摂取量  実験期間中における,各群間の体重変化(Fig. 2 )お よび飼料摂取量(Fig. 3 )に有意な差は認められなかっ た。 ( 2 )組織重量  肝臓の重量は,NC 群と比較して P 群で有意に高値を 示した(p<0.05)。PC 群と比較して E 群,A 群,P 群 との間に有意な差は認められなかった(Table 3 )。  脾臓の重量は,NC 群と比較して E 群で有意に高値で あり(p<0.05),PC,P,A 群においても有意に高値を 示した(p<0.01)(Table 3 )。 ( 3 )鼻掻き行動  陽性マウスの割合が,PC 群では62.5%であったのに 対し,E 群では28.6%と低値を示した(p<0.1)(Table 4 )。 ( 4 )血液生化学検査  白血球数は,各群間において有意な差は認められな かった(Table 3 )。血清総 IgE 濃度は,NC 群と比較し て PC,E,P,A 群で有意に高値を示した(p<0.01)。 しかし,PC 群と比較して E 群,A 群,P 群との間に有 意な差は認められなかった(Table 3 )。血清 IFN γ濃 度は,NC 群と比較して PC,E,P,A 群で低い傾向に あったが,各群間において有意な差は認められなかった (Table 3 )。 Mean ± SD(n = 7 ― 8 ) Scheffeʼs F test Fig. 2  体重の変化 NC群 PC群 E群 P群 A群 0 1 2 3 4 5 Experimental period (wks) 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 Body weght (g) (n = 7 ― 8 ) Scheffeʼs F test Fig. 3  飼料摂取量の変化 ケージごとに 1 匹あたりの摂取量を求めたものである。各群 2 つのケー ジで飼育したため,それぞれの摂取量をプロットした。 NC群1 NC群2 PC群1 PC群2 E群1 E群2 P群1 P群2 A群1 A群2 1 2 3 4 Experimental period (wks) 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 Diet intake(g/day)

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4 .考  察

 本研究では,花粉症モデルマウスにおけるユーグレナ のスギ花粉症症状の抑制効果について検討を行った。抗 原感作を行ったすべての群において,NC 群と比較して 脾臓の重量および IgE が高値を示したことから,精製 スギ花粉抗原 Cry j1の感作によって免疫機能が亢進し, Ⅰ型アレルギー状態であったと考えられる。これにより, 花粉症モデルマウスが作製できたといえる。  本研究では,E 群において鼻掻き行動を発症する割合 が減少した。このことから,ユーグレナの摂取が,花粉 症の症状を直接的に減少させる可能性が示唆された。ま た,P 群および A 群において鼻掻き行動が減少しなかっ たことから,パラミロン以外の成分も花粉症症状の緩和 に関与している可能性がある。これまでに,ユーグレナ の有効性分として報告されているものは,パラミロンに ついてのものがほとんどである。そのため,パラミロン 以外の有効成分に関しても,明らかにしていく必要があ ると考えられる。  これまでに,パラミロンの経口投与によって,アレル ギー疾患の一つであるアトピー性皮膚炎誘発マウスにお いて血清中 IgE 濃度が低下することが報告されている12) しかし,花粉症モデルマウスを用いた本研究では,P 群 において IgE の低下は認められなかった。これまでに, ヒトのアトピー性皮膚炎患者において,Th1および Th2 細胞の両方が疾患の病態形成に関与していることが示唆 されている20,21)。一方,花粉症は,外部から侵入した特 定の抗原に過敏に反応したことによって Th2優位に偏っ た状態であると考えられる。このように,花粉症とアト ピー性皮膚炎ではアレルギーの発症機序が異なるため, 本研究ではアトピー性皮膚炎の報告と同様の効果を示さ なかったと考えられる。  また,本研究では,E 群において鼻掻き行動の減少が 観察されたにもかかわらず,血清 IgE 濃度の上昇が抑 制されなかった。このことは,先行研究12 14)の結果と異 なっている。この理由として,本研究において,花粉症 モデルマウスを用いた先行研究16,17)よりも Cry j1の腹腔 感作量が少なかったことが考えられる。抗原感作量を減 らしたことが,IgE の上昇抑制に影響したと考えられる。  さらに,抗原感作を行ったすべての群において,脾臓 の肥大が認められた。脾臓は,T 細胞,B 細胞,マクロ ファージ,単球および樹状細胞を多く含み,老化した血 球の除去にかかわる赤脾髄と,血流を介して脾臓に達し た抗原を除去する白脾髄が存在しており,免疫機能を 担っている22)。本研究では,Cry j1を感作することによっ て,脾臓の免疫機能が亢進したことにより,脾臓の肥大 が起こったと考えられる。また,P 群における肝臓重量 が有意に高値を示した。さらに,この他の抗原感作を行っ た群の肝臓重量も高い傾向がみられた。これまでに,抗 原としてオボアルブミンの投与による食物アレルギーモ デルマウスにおいて,肝臓の組織学的観察によって,巣 状壊死像がみられたことが報告されている23)。このよう な肝臓障害は,TNF αによって誘発されたと推察され ている。花粉症の発症機序は,食物アレルギーの場合と 同様に即時型の反応であることから,本研究の P 群お よび他の抗原感作群においても,上記の報告と同様の理 由で肝臓障害が起こり,肝臓が肥大したと推察される。  今後は,花粉症モデルマウスにおけるユーグレナの作 用機序をより詳細に明らかとするために,Th1/Th2バラ ンスの観点から IL 4,IL 13などの Th2細胞に関わるサ イトカインおよび抗原特異的に産生される Cry j1特異的 IgEの測定などが必要であると考えられる。さらに,ユー グレナの用量依存性の確認や,現実的に機能性食品が必 要とされる軽度の花粉症を有するヒトを対象とした検討 などが必要であると考えられる。  本研究では,ユーグレナを花粉症モデルマウスに経口 投与することにより,鼻掻き行動が抑制され,花粉症症 状が軽減される可能性があることが示唆された。これま Table 4  鼻掻き行動の陽性である割合a PC群 E群 P群 A群 % 62.5 28.6# 50.0 62.5 n= 7 8 χ2検定p<0.1 (vs PC 群) a NC群における回数の平均値+ 1 SD を基準値とし,各群にお ける基準値以上の陽性マウスの割合(%)を示した。 Table 3  組織重量および血液生化学的分析値 NC群 PC群 E群 P群 A群 Liver weight (g) 1.44±0.13 1.61±0.14 1.62±0.15 1.71±0.13* 1.58±0.13 Spleen weight (mg) 97.50±10.35 170.00±20.70** 157.14±39.04 180±37.80** 165.50±29.15** White blood cell counts

 (×104/mL) 398±162 391±81 291±81 428±132 405±94 Total IgE (ng/mL) 709.7±201.3 1202.4±20.4** 1150.6±158.9** 1181.5±14.6** 1156.2±68.0** IFNγ(pg/mL) 150.2±87.1 147.9±107.8 109.2±29.3 111.0±23.1 148.5±99.0 Mean± SD(n = 7 8 ) Scheffe s F test *p<0.05, **p<0.01 (vs NC 群)

(6)

でに,ユーグレナおよびパラミロンを経口投与したラッ トにおいて,コレステロールの吸収抑制,消化管通過時 間の短縮,糞便量の増加が認められている24)。また,脳 卒中易発症ラットにおいて,ユーグレナの経口投与が血 圧上昇を抑制することが認められている25)。今後は,ユー グレナの新規機能性が解明されることで,花粉症の抑制 効果をはじめ,健康増進に役立つような機能性食品が開 発されることが期待される。 文  献 1 ) 馬場廣太郎,中江公裕:鼻アレルギーの全国疫学調査 2008(1998年との比較)―耳鼻咽喉科医とその家族を対象 として―,Progress in Medicine, 28,145 156(2008) 2 ) Yasueda H., Yui Y., Shimizu T.: Isolation and partial

charac-terization of the major allergen from Japanese cedar(Crypto-meria japonica), J Allergy Clin Immunol, 71, 77(1983) 3 ) Sakaguchi M., Inouye S., Taniai M., Ando S., Usui M.,

Matuhasi T.: Identification of the second major allergen of Japanese cedar pollen, Allergy, 45, 309 312(1990)

4 ) Fujiwara D., Wakabayashi H., Watanabe H., Nishida S., Iino H.: A double-blind trial of Lactobacillus paracasei strain KW3110 administration for immunomodulation in patients with pollen allergy, Allergol Int, 54, 143 149(2005)

5 ) 劉影,福渡靖,森和,佐藤信紘,榎本冬樹,小幡明雄, 芳村峰花,斉藤実,菊地護:トマト抽出物による花粉症の 予防効果に関する基礎的臨床的研究,東方医学,19,33 48 (2004)

6 ) Sato Y., Akiyama H., Sugamura H., Watanabe T., Hamano-Nagaoka M., Inakuma T., Goda Y., Maitani T.: The feeding of β-carotene down- regulates serum IgE levels and inhibits the type Ⅰ allergic response in mice, Biol Pharm Bull, 27, 978 984(2004)

7 ) 片岡麻里,新井紀恵,谷口美文,河野恵三,岩城完三, 池田雅夫,栗本雅司:ローヤルゼリーの抗アレルギー作用 の検討,Nat Med,55,174 180(2001)

8 ) Kondo Y., Kato A., Hojo H., Nozoe S., Takeuchi M., Ochi K. Cytokine-related immunopotentiating activities of paramylon, a β-(1→3)-D-glucan from Euglena gracilis, J Pharmacobio-Dyn, 15, 617 621(1992)

9 ) Sugiyma A., Suzuki K., Mitra S., Arashida R., Yoshida E., Na-kano R., Yabuta Y., Takeuchi T.: Hepatoprotective effects of paramylon, a β-1,3-D-glucan isolated from Euglena gracilis Z, on acute liver injury induced by carbon tetrachloride in rats. J Vet Med Sci, 71, 885 890(2009)

10) Koizumi N., Sakagami H., Utsumi A., Fujinaga S., Takeda M., Asano K., Sugawara I., Ichikawa S., Kondo H., Mori S., Miyatake K., Nakano Y., Nakashima H., Murakami T., Miyano N., Yamamoto N.: Anti-HIV (human immunodeficiency virus) activity of sulfated paramylon, Antiviral Res, 21, 1 14 (1993) 11) Sakagami H., Kikuchi K., Takeda M., Sato T., Ichikawa S., Fujimaki M., Wada C., Komatsu N.: Macrophage stimulation activity of antimicrobial N, N-dimethylaminoethl paramylon,

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12) Sugiyama A., Hata S., Suzuki K., Yoshida E., Nakano R., Mitra S., Arashida R., Asayama Y., Yabuta Y. and Takeuchi T.: Oral administration of paramylon, a β-1,3-D-glucan isolated from Euglena gracilis Z inhibits development of in NC/Nga mice. J Vet Med Sci, 72, 755 763(2010)

13) Kimura Y., Sumiyoshi M., Suzuki T. and Sakanaka M. In-hibitory effects of water-soluble low-molecular-weight beta-(1,3 1,6) d-glucan purified from Aureobasidium pullulans

GM-NH-1 A 1 strain on food allergic reactions in mice, Int Immunopharmacol, 7 , 963 972(2007)

14) Yamada J., Hamuro J., Hatanaka H., Hamabata K. and Kinoshita S. Alleviation of seasonal allergic symptoms with superfine beta-1,3-glucan: a randomized study, J Allergy Clin Immunol, 119, 1119 1126(2007)

15) Watanabe T., Shimada R., Matsuyama A., Yuasa M., Sawa-mura H., Yoshida E. and Suzuki K.: Antitumor activity of the β-glucan paramylon from Euglena against preneoplastic co-lonic aberrant crypt foci in mice: Food Funct, 4 , 1685 1690 (2013) 16) 近藤浩代,石田寅夫,郭義:ソヨウ・レイシソウによる スギ花粉症モデルラットに対する治療効果,鈴鹿医療科学 大学紀要,11,106 111(2004) 17) 與田茂利:アレルギー性鼻炎モデルマウス鼻粘膜におけ る一酸化窒素合成酵素(NOS)の局在,川崎医学会誌,35, 39 50(2009)

18) Ogita-Nakanishi H., Nabe T., Mizutani N., Fujii M., Kohno S.: Absence of nasal blockage in a Japanese cedar pollen-induced allergic rhinitis model mouse, Allergol Int, 58, 171 178(2009)

19) Nabe T., Shinoda N., Yamashita K., Yamada M., Yamamura H., Kohno S.: Comparative studies on nebulizers for antigen inhalation in experimental asthma, Allergol Int, 46, 261 267 (1997)

20) Grewe M., Gyufko K., Schöpf E., Krutmann J.: Lesional ex-pression of interferon-gamma in atopic eczema, Lancet, 343, 25 26(1994)

21) Grewe M., Bruijnzeel-Koomen CA., Schöpf E., Thepen T., Langeveld-Wildschut AG., q Ruzicka T., Krutmann J.: A role for Th1 and Th2 cells in the immunopathogenesis of atopic dermatitis, Immunol Today, 19, 359 61(1998)

22) 笹月健彦:免疫生物学―免疫系の正常と病理―,南江堂 (2007) 23) 陳虹,上野幸三,養父佐知子,高橋円,坂本泰寿,飯倉 洋治:補中益気湯による食物アレルギーモデルマウスの肝 臓障害への治療効果について,昭和医会誌,61,645 650(2001) 24) 河野祐一,中野長久,北岡正三郎,加藤清,重岡成,大 西俊夫:ラットにおける[C14]コレステロールの吸収,体 内移行に及ぼすユーグレナ(Euglena glacilis Z)の影響,日 本栄養・食糧学会誌,40,193 198(1987) 25) 村上哲男,小川博,林雅弘,吉栖肇:脳卒中易発症性高 血圧自然発症ラットの血圧,脳血管病変および寿命に及ぼ す DHA 強化ユーグレナの影響,日本栄養・食糧学会誌,48, 209 215(1995)

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