ウワバミソウの繁殖方法に関する研究
2018 年
目 次 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 第 1 章 我 が 国 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 状 況 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 第 1 節 全 国 で の 生 産 の 状 況 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 第 2 節 生 産 ・ 研 究 実 績 の あ る 県 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 第 2 章 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 態 的 特 性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 第 3 章 痩 果 ( 種 子 ) の 発 芽 に 及 ぼ す 発 芽 促 進 処 理 の 効 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 26 第 4 章 挿 し 芽 繁 殖 に お け る 増 殖 効 率 向 上 の た め の 処 理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 33 第 1 節 挿 し 芽 時 の 条 件 が 発 根 と そ の 後 の 生 育 に 及 ぼ す 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 33 第 2 節 挿 し 穂 採 取 本 数 の 増 加 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 48 第 3 節 挿 し 芽 苗 の 生 育 に 及 ぼ す 窒 素 施 肥 量 の 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 105 第 5 章 珠 芽 に よ る 繁 殖 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 110 第 1 節 珠 芽 の 水 耕 に よ る 挿 し 穂 採 取 用 母 株 の 育 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 110 第 2 節 自 発 休 眠 打 破 に 及 ぼ す 採 取 時 期 と 低 温 処 理 期 間 の 関 係 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 120 第 3 節 自 発 休 眠 打 破 に 及 ぼ す ジ ベ レ リ ン お よ び ベ ン ジ ル ア ミ ノ プ リ ン 処 理 の 効 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 128 総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 137 総 摘 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 146 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 154 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 155 Summary ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 163
1 緒 言
ウ ワ バ ミ ソ ウ ( Elatostema involucratum Franch. & Sav.) は , イ ラ ク サ 科 ウ ワ バ ミ ソ ウ 属 の 宿 根 草 で あ り , 日 本 全 国 に 分 布 し , 山 林 の 中 や 渓 流 沿 い な ど 湿 っ た 場 所 に 自 生 し て い る ( 大 沢 ,1986).本 種 は ,春 ~ 秋 に か け て 収 穫 さ れ る 茎 葉 ,秋 に 葉 腋 に 形 成 さ れ る 珠 芽 お よ び 根 茎 を 食 用 と す る 山 菜 で あ り , ア ク が 少 な く 特 有 の ぬ め り を 持 ち , 一 夜 漬 け や 炒 め 物 , 汁 物 の 実 , 煮 物 な ど に 調 理 さ れ る 他 , 塩 漬 け や し ょ う ゆ 漬 け な ど 保 存 用 に 加 工 さ れ る ( 大 沢 , 1986). ウ ワ バ ミ ソ ウ の 染 色 体 数 は , 2n=26 で あ り ( 兼 本 , 2003), ウ ワ バ ミ ソ ウ 属 の ヒ メ ミ ズ( Kanemoto,2002),ア マ ミ サ ン シ ョ ウ ソ ウ ,ク ニ ガ ミ サ ン シ ョ ウ ヅ ル ,ヨ ナ ク ニ ト キ ホ コ リ お よ び ラ ン ダ イ ミ ズ ( 兼 本 ・ 横 田 , 1997) の 染 色 体 数 も 2n=26 で あ る . こ れ ら の 結 果 か ら , Kanemoto ら ( 2015) は ウ ワ バ ミ ソ ウ 属 の 染 色 体 の 基 本 数 は x=13 で あ る と 報 告 し た . 磯 野( 2009)に よ る と ,我 が 国 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 初 出 文 献 は 1805 年 に 成 立 し た 本 草 綱 目 啓 蒙 で あ る . 重 訂 本 草 綱 目 啓 蒙 に お い て , ウ ワ バ ミ ソ ウ は 赤 車 使 者 の 名 で 掲 載 さ れ て お り , 別 名 で あ る ク チ ナ ハ ジ ャ ウ ゴ ( ク チ ナ ワ ジ ョ ウ ゴ ) は 「 此 草 蛇 過 食 ノ 時 食 バ 即 消 ス 」 こ と , ミ ヅ ( ミ ズ ) は 「 凡 円 茎 ニ シ テ 淡 紅 色 透 明 ノ モ ノ ヲ ミ ヅ ト 云 蚯 蚓 ノ 略 ナ リ 」 に 由 来 す る と 示 し て お り , 地 方 名 と し て 加 州 の ヤ マ カ ゴ , 佐 州 の シ ヅ ク ナ , 但 州 の ミ ヅ ナ , 南 部 の ミ ヅ が 記 載 さ れ て い る ( 小 野 , 1847). ウ ワ バ ミ ソ ウ は 全 国 的 に 自 生 し て い る に も か か わ ら ず , 食 用 に す る 地 域 は 東 北 お よ び 東 北 以 南 の 日 本 海 側 に 限 定 さ れ て い る( 本 間 ,2012).杉 浦・ 岸 本( 1989)は 山 菜 に 対 す る 嗜 好 性 を 調 査 し , 好 き な 山 菜 と し て ウ ワ バ ミ ソ ウ を あ げ た 消 費 者 は , 山 形 市 の 68 人 中 21 人 に 対 し , 東 京 23 区 や 横 浜 市 な ど の 都 市 部 で は 196 人 中 7 人 と ご く 少 数 で あ っ た と 報 告 し , そ の 原 因 と し て 都 市 部 の 消 費 者 は ウ ワ バ ミ ソ ウ に 馴 染 み が な く , そ の 味 や 料 理 法 を 知 ら な い こ と が 考 え ら れ る と 推 論 し て い る . し た が っ て , 都 市 部 で も 利 用 方 法 を 周 知 さ せ , 知 名 度 の 向 上 を 図 れ ば , 新 た な 需 要 を 喚 起 で き る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る . ウ ワ バ ミ ソ ウ は こ れ ま で 自 生 地 で 採 取 さ れ て い た が , 東 北 や 北 陸 な ど で は 近 年 , 栽 培 化
2 が 徐 々 に 進 め ら れ て お り , そ の 背 景 と し て 資 源 量 の 減 少 が 指 摘 さ れ て い る ( 大 沢 , 1994; 佐 藤 ・ 岩 村 , 1988). 栽 培 に あ た り , 牧 野 ・ 塩 谷 ( 2004) お よ び 松 本 ( 2004a) は 光 環 境 と 生 育 の 関 係 に つ い て , 沢 野 ら ( 2002) は 施 肥 の 効 果 に つ い て , 渡 辺 ら ( 1994) は 根 茎 の 休 眠 特 性 と 促 成 栽 培 技 術 に つ い て 報 告 し た . ま た , ウ ワ バ ミ ソ ウ で は 品 種 の 分 化 は 見 ら れ な い が , 茎 の 色 に は 差 が 認 め ら れ て い る . す な わ ち , 通 常 の 赤 色 を 帯 び た 茎 の 他 に , 緑 色 の 茎 を 持 ち ,植 物 体 の サ イ ズ が 大 き な 系 統 が 存 在 す る こ と が 報 告 さ れ て い る( 松 本 ,2004b). 鈴 木( 2004)も 東 北 お よ び 北 陸 の 自 生 地 か ら 10 系 統 を 収 集 し ,栽 培 し た と こ ろ ,緑 色 の も の か ら 濃 赤 色 ま で 系 統 に よ っ て 大 き な 変 異 が 見 ら れ る こ と を 報 告 し て い る . ま た , 鈴 木 ・ 久 田 ( 2006) は , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 特 徴 で あ る 茎 の 独 特 な 粘 り に 着 目 し , 茎 抽 出 液 の 粘 度 を も と に 選 抜 を 試 み た .成 分 分 析 の 結 果 で は 抗 酸 化 能 が 高 く( 林・三 輪 ,2002),ビ タ ミ ン B2 お よ び ビ タ ミ ン C を 多 く 含 む こ と ( 宍 戸 ・ 児 玉 , 1967) が 明 ら か に さ れ て い る . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 栽 培 に あ た っ て は 苗 の 供 給 量 が 限 ら れ て お り , 野 生 植 物 の 乱 獲 な ど を 防 ぐ た め に も ,自 家 育 苗 を 含 め た 安 定 的 な 繁 殖 ・育 苗 法 の 確 立 が 必 要 で あ る .ウ ワ バ ミ ソ ウ の 繁 殖 方 法 は , 挿 し 芽 , 珠 芽 の 利 用 お よ び 株 分 け で , 繁 殖 方 法 の 違 い に 関 わ ら ず , 育 成 し た 苗 は 春 ま た は 秋 に 定 植 す る が ,苗 の 活 着 は 秋 の 方 が 優 れ る と さ れ る( 大 沢 ,1986).こ れ ら の 繁 殖 方 法 の う ち , 挿 し 芽 繁 殖 ( 本 論 文 で は , 草 本 の 茎 を 用 い る 挿 し 木 を 挿 し 芽 や 芽 ざ し と し た 町 田 ( 1974) の 分 類 に 従 い , 挿 し 芽 と 呼 ぶ こ と と す る ) で は , シ ュ ー ト を 確 保 で き る 時 期 に 挿 し 芽 し , 苗 の 大 き さ を 考 慮 し て 当 年 の 秋 ま た は 翌 年 に 定 植 す る . 珠 芽 を 利 用 し た 繁 殖 で は , 秋 に 形 成 さ れ る 珠 芽 を 採 取 し , 植 え 付 け た 後 , 露 地 で 管 理 す る か , 低 温 処 理 し て 休 眠 打 破 し た 後 に 植 え 付 け る . 珠 芽 を 採 取 し た 翌 年 の 秋 に 苗 が 完 成 す る の で ( 大 沢 , 1986),苗 の 育 成 に は 時 間 が か か る .株 分 け で は ,根 茎 を 掘 り 取 り ,春 か 秋 に 定 植 す る( 大 沢 ,1986).い ず れ の 場 合 も 苗 を 定 植 し た 翌 年 以 後 に 収 穫 を 始 め ,一 度 定 植 す れ ば 根 茎 で 越 冬 す る こ と か ら 数 年 に わ た り 収 穫 を 継 続 で き る . し か し な が ら , 越 冬 器 官 で あ る 根 茎 自 体 も 食 用 と さ れ る . さ ら に , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 改 植 年 数 と 収 量 の 関 係 は 明 ら か に さ れ て い な い が , フ キ ( 小 泉 ら , 2010) や ア ス パ ラ ガ ス ( 元 木 ら , 2006) の よ う な 多 年 生 の 栄 養 繁 殖 性
3 の 作 物 で は , 同 一 個 体 で 栽 培 を 続 け た 場 合 に 収 量 や 品 質 が 低 下 す る こ と が 知 ら れ て い る . こ の よ う な 理 由 か ら , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 栽 培 で は 一 度 定 植 す れ ば 複 数 年 に わ た っ て 収 穫 を 継 続 で き る も の の ,安 定 し た 苗 の 供 給 が 必 要 と な る .株 分 け 繁 殖 に つ い て は ,佐 藤・岩 村( 1988) は 株 間 と 条 間 を そ れ ぞ れ 15 cm と し て 根 茎 を 植 え 付 け て い る .そ の 場 合 ,10 a 当 た り 40,000 本 以 上 の 根 茎 を 必 要 と す る こ と か ら , 自 生 地 か ら 根 茎 を 採 取 し た 場 合 に は 自 生 地 の 環 境 破 壊 に つ な が る . 挿 し 芽 繁 殖 に つ い て は , 鈴 木 ・ 佐 竹 ( 2000) は , 挿 し 穂 の 発 根 か ら み て 好 適 な 挿 し 芽 時 期 や 挿 し 穂 部 位 を 明 ら か に し た . 一 方 , 珠 芽 繁 殖 で は , 休 眠 打 破 を 目 的 と し て Okagami( 1979)お よ び 鈴 木・佐 竹( 2000)は 低 温 処 理 が 有 効 で あ る こ と ,Okagami( 1979) は ジ ベ レ リ ン 処 理 が 有 効 で あ る こ と を 報 告 し た . 松 本 ( 2004b), 鈴 木 ( 2004) お よ び 戸 澤 ( 2006) は , 萌 芽 後 の 生 育 は 珠 芽 が 大 き い 方 が 優 れ る こ と を 明 ら か に し た . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 栄 養 繁 殖 に 関 す る 知 見 は 徐 々 に 蓄 積 さ れ て い る 状 況 で あ る が , 具 体 的 な 繁 殖 方 法 に つ い て は 不 明 な 点 も 多 い . そ こ で 本 研 究 に お い て , 第 1 章 で は ウ ワ バ ミ ソ ウ の 採 取 や 生 産 に 関 す る 現 状 を 明 ら か に し , ま た 栽 培 化 の た め の 問 題 点 を 明 ら か に す る た め , 生 産 状 況 に つ い て の 統 計 資 料 を 分 析 し , 生 産 県 の 担 当 者 に ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た . そ の 結 果 , 栽 培 化 の た め に は 苗 の 確 保 が 問 題 に な る こ と が 明 ら か に な っ た の で , 第 2 章 で は 繁 殖 に 関 す る 基 礎 デ ー タ の 収 集 を 目 的 と し て , 福 井 県 嶺 南 地 方 の 自 生 地 株 の 生 態 的 特 性 を 明 ら か に し た . 生 態 的 特 性 の 調 査 の 結 果 , 6 月 に 痩 果 を 形 成 す る こ と が 明 ら か と な っ た た め , 第 3 章 で は 種 子 繁 殖 の 可 能 性 を 探 る た め に , 自 生 地 で 採 種 し た 痩 果 に 対 す る 発 芽 促 進 処 理 の 効 果 を 検 討 し た . 第 1 章 の ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 , 挿 し 芽 繁 殖 が 複 数 県 で 行 わ れ て い た こ と か ら , 第 4 章 で は 効 率 的 な 挿 し 芽 繁 殖 を 行 う こ と を 目 的 と し て , 好 適 な 挿 し 芽 条 件 を 明 ら か に す る た め に 挿 し 芽 時 の 条 件 と 発 根 お よ び そ の 後 の 生 育 の 関 係 に つ い て 検 討 し た . そ の 結 果 , 挿 し 芽 繁 殖 は 実 用 的 な 繁 殖 方 法 と 考 え ら れ た た め , 挿 し 穂 採 取 本 数 の 増 加 を 目 的 と し た 主 茎 の 切 除 と 側 枝 ・ 根 茎 の 発 達 の 関 係 , 母 株 の 育 成 方 法 お よ び 植 物 組 織 培 養 技 術 の 利 用 に つ い て 検 討 し た . 発 根 し た 挿 し 穂 を 鉢 上 げ し て 育 苗 を 継 続 す る 必 要 が あ る こ と か ら , 鉢 上 げ 後 の 生 育 促 進 を 目 的 と
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し て , 培 養 土 に 対 す る 施 肥 量 に つ い て 検 討 し た . 第 1 章 の ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 , 珠 芽 を 用 い た 繁 殖 が 複 数 県 で 行 わ れ て い た こ と か ら , 第 5 章 で は 自 発 休 眠 打 破 し た 珠 芽 を 用 い た 水 耕 で の 栽 培 方 法 な ら び に 珠 芽 の 自 発 休 眠 打 破 を 目 的 と し た 珠 芽 の 採 取 時 期 と 低 温 処 理 期 間 の 関 係 お よ び ジ ベ レ リ ン と ベ ン ジ ル ア ミ ノ プ リ ン 処 理 の 効 果 を 明 ら か に し た .
5 第 1 章 我 が 国 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 状 況 第 1 節 全 国 で の 生 産 の 状 況 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 量 を 把 握 す る た め に , 林 野 庁 が 調 査 し て い る 特 用 林 産 基 礎 資 料 を も と に し て 2010~ 2015 年 の ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 量 の 推 移 を 第 1- 1- 1 表 に 示 し た . な お , 2010 年 よ り 前 は ウ ワ バ ミ ソ ウ が 調 査 対 象 と し て 挙 げ ら れ て い な い こ と か ら 生 産 量 は 不 明 で あ る . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 全 国 で の 生 産 量 は 2010 年 が 190 t, 2011 年 が 209 t, 2012 年 が 212 t と 200 t 前 後 で あ っ た .し か し ,2013 年 に は 秋 田 県 で の 生 産 量 が 原 因 不 明 の 理 由 で ,例 年 に 比 べ 1/ 4 以 下 に 低 下 し た た め , 全 国 の 生 産 量 は 158 t に 低 下 し た . そ の 後 の 全 国 で の 生 産 量 は , 2014 年 が 165 t, 2015 年 が 155 t と 160 t 前 後 で あ っ た . 生 産 県 の 数 は , 年 に よ り 変 化 が 認 め ら れ た が , 9~ 11 県 の 範 囲 で あ っ た . 生 産 量 が 多 い の は 東 北 ま た は 北 陸 で , 生 産 量 が 多 い 上 位 5 県 の 合 計 生 産 量 は , 全 国 の 生 産 量 の 90%以 上 を 占 め て い た . 2010~ 2015 年 で 生 産 実 績 が あ る の は 15 県 , そ の う ち 6 県 で は 人 工 で の 生 産 ( 栽 培 に よ る 生 産 ) 実 績 が あ っ た . 2010~ 2015 年 の 生 産 量 の ほ と ん ど は 天 然 も の で あ る が , 2013 年 で は 青 森 県 で 人 工 も の が 大 幅 に 増 加 し た 結 果 , 全 国 で の 生 産 量 の 約 17%を 人 工 も の が 占 め た . 青 森 県 で 人 工 も の の 生 産 量 が 一 時 的 に 大 幅 に 増 加 し た 要 因 を 県 の 担 当 者 に 問 い 合 わ せ た が , 明 確 な 回 答 は 得 ら れ な か っ た .
6 第 1- 1- 1 表 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 量 と 生 産 県 の 推 移 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 人工 天然 合計 人工 天然 合計 人工 天然 合計 人工 天然 合計 人工 天然 合計 人工 天然 合計 青森県 0.1 80.0 80.1 0.7 68.0 68.7 - 89.0 89.0 25.0 60.0 85.0 - 88.8 88.8 - 74.7 74.7 岩手県 - - - - - 1.1 1.1 - 2.4 2.4 0.5 1.0 1.5 0.8 1.0 1.8 宮城県 0.9 4.7 5.6 0.5 4.5 5.0 0.4 2.7 3.1 0.4 6.0 6.4 0.4 7.8 8.2 0.2 8.0 8.2 秋田県 - 65.1 65.1 - 62.9 62.9 2.2 59.2 61.4 - 14.9 14.9 - 11.7 11.7 - 13.9 13.9 山形県 0.8 21.4 22.2 0.4 20.5 20.9 0.1 23.2 23.3 1.2 18.0 19.2 4.4 24.1 28.5 0.5 28.6 29.1 福島県 - 0.1 0.1 - 0.6 0.6 - 0.4 0.4 - 0.5 0.5 - 0.6 0.6 - 0.8 0.8 茨城県 - - - - 0.1 0.1 - - - - - - - - -栃木県 - - - - - - - - - - 0.0 0.0 群馬県 - - - - - - 0.1 0.1 - - - -新潟県 - 14.3 14.3 - 18.4 18.4 - 3.1 3.1 - 5.9 5.9 - 3.2 3.2 - 4.9 4.9 富山県 0.1 0.2 0.3 0.3 - 0.3 0.3 - 0.3 - 0.5 0.5 - 0.2 0.2 - 0.1 0.1 石川県 - 2.2 2.2 - 30.3 30.3 - 29.6 29.6 - 23.4 23.4 - 21.9 21.9 - 20.8 20.8 長野県 - 0.1 0.1 - - - - 0.2 0.2 - 0.1 0.1 - 0.2 0.2 - 0.2 0.2 鳥取県 - - - - 0.1 0.1 - - - - - -島根県 - - - 2.1 - 2.1 - - - - - -合計 1.9 188.1 190.0 4.0 205.4 209.4 3.0 208.5 211.5 26.6 131.8 158.4 5.3 159.5 164.8 1.5 153.0 154.5 県数 4 9 9 5 8 10 4 9 10 3 11 11 3 10 10 3 11 11 出典:特用林産基礎資料 県名 生産量(t)
7 第 2 節 生 産 ・ 研 究 実 績 の あ る 県 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 量 の 多 く は 天 然 も の で あ る が , 人 工 も の ( 栽 培 も の ) の 出 荷 も 行 わ れ て い る . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 栽 培 化 に 関 し て は , 繁 殖 方 法 だ け で な く , 生 育 に 適 し た 光 環 境 ( 牧 野 ・ 塩 谷 , 2004; 松 本 , 2004a) や 施 肥 の 効 果 ( 沢 野 ら , 2002) が 研 究 さ れ て き た が , 天 然 も の の 採 取 や 栽 培 の 実 態 に つ い て は 不 明 な 部 分 が 多 い . そ こ で , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 や 研 究 現 場 に お け る 現 状 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て , ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た . 材 料 お よ び 方 法 ア ン ケ ー ト 調 査 の 対 象 は , 特 用 林 産 基 礎 資 料 で 2010~ 2013 年 の 間 に ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 実 績 の あ る 14 県 お よ び ウ ワ バ ミ ソ ウ に つ い て 研 究 実 績 の あ る 4 県 の 合 計 18 県 の 特 用 林 産 物 担 当 課 あ る い は 特 用 林 産 物 担 当 公 立 試 験 場 と し た . ア ン ケ ー ト を 配 布 し た 18 県 の う ち 16 県 か ら 回 答 を 得 た .回 答 の あ っ た 16 県 の 内 訳 は ,東 北 地 方 が 5 県 ,関 東 地 方 が 3 県 , 甲 信 越 地 方 が 2 県 , 東 海 地 方 が 1 県 , 北 陸 地 方 が 2 県 , 近 畿 地 方 が 1 県 , 中 国 地 方 が 2 県 で あ っ た . ア ン ケ ー ト の 配 布 は 2015 年 7 月 に 質 問 票 を 担 当 部 署 の 電 子 メ ー ル ア ド レ ス に 送 信 し , 回 収 は 7~ 8 月 に 各 部 署 の 担 当 者 か ら 著 者 あ て に 返 信 す る よ う 依 頼 し た . 結 果 ( 1) ウ ワ バ ミ ソ ウ の 地 方 名 最 も 回 答 の 多 か っ た 地 方 名 は ミ ズ で あ り ,東 北 ,関 東 お よ び 甲 信 越 地 方 の 10 県 に 及 ん だ ( 第 1- 2- 1 表 ). 次 い で 回 答 の 多 か っ た 地 方 名 は ミ ズ ナ お よ び ミ ズ ブ キ の 3 県 で あ り , ア カ ミ ズ お よ び ヨ シ ナ の 2 県 , カ タ ハ お よ び タ キ ナ の 1 県 と 続 い た . 新 潟 県 で は 5 種 類 お よ び 石 川 県 と 茨 城 県 で は 2 種 類 の 地 方 名 の 回 答 が あ り , 同 一 県 内 で 複 数 の 地 方 名 を 有 す る 県 が 確 認 さ れ た . 一 方 , 特 に 地 方 名 は な く 和 名 の ウ ワ バ ミ ソ ウ と 称 し て い る 県 が 2 県 認 め ら れ た .
8 ( 2) ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 状 況 出 荷 物 の 由 来 は , 12 県 で 天 然 も の の み , 2 県 で 天 然 も の と 栽 培 も の , 1 県 で 栽 培 も の の み で あ っ た( 第 1- 2- 2 表 ).収 量 や 栄 養 面 で 優 れ た 系 統 が あ る 場 合 に 導 入 し て み た い と 思 う と 回 答 し た 県 は 6 県 あ り , 思 わ な い と 回 答 し た の は 9 県 で あ っ た . 県 内 に 栽 培 地 を 有 す る の は 青 森 , 岩 手 , 新 潟 , 和 歌 山 の 4 県 で あ り , 12 県 で は 栽 培 地 は な い と 回 答 が あ っ た . 栽 培 地 が あ る と 回 答 の あ っ た 県 で の 栽 培 場 所 は , 林 床 が 4 県 お よ び 畑 が 1 県 で あ っ た . 苗 の 育 成 場 所 は , 自 家 育 苗 お よ び 試 験 場 で の 育 苗 と も に 2 県 で あ っ た . 苗 の 繁 殖 方 法 は , 珠 芽 を 用 い る の が 2 県 , 挿 し 芽 が 2 県 , 株 分 け が 1 県 で あ り , い ず れ も 栄 養 繁 殖 で あ り , 種 子 繁 殖 を 行 っ て い る と の 回 答 は な か っ た . 苗 の 由 来 は , 県 内 の 自 生 地 か ら が 多 い が , 和 歌 山 県 で は 県 外 か ら の 導 入 も 行 っ て い た . 自 生 地 で の 採 取 に あ た っ て 問 題 点 を 挙 げ た の は 8 県 で あ っ た ( 第 1- 2- 3 表 ). そ の う ち の 4 県 で は 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 伴 う 放 射 性 物 質 の 影 響 を 挙 げ た . ま た , シ カ に よ る 食 害 を 挙 げ た の が 2 県 , ク マ や ヤ マ ビ ル の 生 息 地 と 重 な る こ と を 挙 げ た の が 1 県 , 土 地 所 有 者 と の 権 利 関 係 を 挙 げ た の が 1 県 で あ っ た . 栽 培 を 進 め る 際 の 問 題 点 な ど 自 由 記 述 で は 9 県 か ら 回 答 が あ っ た ( 第 1- 2- 4 表 ). 主 な 回 答 と し て , 栽 培 技 術 に 関 す る こ と で は , 林 床 栽 培 で は 間 伐 が 必 要 な こ と や 栽 培 適 地 の 判 定 方 法 が な い こ と , 苗 の 育 成 に つ い て 農 家 に 対 し て は 挿 し 芽 を 推 奨 し て い る こ と な ど が 挙 げ ら れ た . 需 要 面 で は , 利 用 方 法 の 普 及 や 知 名 度 が 低 い こ と , 売 れ 行 き が 好 調 な こ と , む か ご ( 珠 芽 ) の 人 気 が 高 い こ と , 価 格 が 安 い こ と な ど が 挙 げ ら れ た . ま た , 栽 培 を 行 う た め に は 放 射 性 物 質 の 影 響 を 解 決 す る 必 要 が あ る こ と を 挙 げ た 県 が 2 県 あ っ た . 考 察 今 回 の ア ン ケ ー ト 調 査 に お い て , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 地 方 名 と し て 7 種 類 が あ げ ら れ た . 大 沢 ( 1986) は ウ ワ バ ミ ソ ウ の 地 方 名 を 8 種 類 挙 げ て お り , 改 め て ウ ワ バ ミ ソ ウ が 多 く の 地 方 名 を 有 す る こ と が 明 ら か と な っ た . 今 回 の 調 査 で 標 準 和 名 で あ る ウ ワ バ ミ ソ ウ と 呼 ん で
9 い た 静 岡 県 お よ び 和 歌 山 県 で は , ウ ワ バ ミ ソ ウ は 自 生 し て い る も の の 一 般 的 に よ く 利 用 さ れ る 山 菜 で は な く , 近 年 に な っ て 栽 培 化 に 向 け た 試 験 研 究 に 取 り 組 ん で い る こ と か ら 地 方 名 が 挙 げ ら れ な か っ た も の と 考 え ら れ る . 出 荷 物 の う ち 栽 培 も の が あ る と 回 答 し た の は 3 県 で あ っ た が , 栽 培 地 が あ る と 回 答 し た の は 4 県 で あ っ た . こ れ は , 試 験 栽 培 を 行 っ て い る が 出 荷 に は 至 っ て い な い 県 が あ る た め で あ る . 第 1 章 第 1 節 と 同 様 に 出 荷 物 の 由 来 の ほ と ん ど は 天 然 も の で あ り 栽 培 に 取 り 組 ん で い る 県 は 少 数 で あ っ た . そ の 理 由 と し て , 栽 培 技 術 が 十 分 に 確 立 さ れ て い な い こ と が 挙 げ ら れ た . し か し な が ら , 収 量 や 栄 養 面 で 優 れ た 系 統 が あ る 場 合 に は 導 入 し , 栽 培 し た い と 回 答 し た 県 は 6 県 あ っ た . 珠 芽 の 人 気 が 高 い こ と か ら , 大 型 の 珠 芽 を 収 穫 で き る 系 統 の 確 立 を 望 む 意 見 も 寄 せ ら れ た . 苗 の 由 来 と し て 県 外 の 系 統 を 導 入 し て い る 県 も あ り , そ の 理 由 を 問 い 合 わ せ た と こ ろ , 県 内 自 生 地 が ご く 一 部 に 限 ら れ て お り , さ ら に 自 生 株 が 小 型 で あ る こ と か ら 県 外 か ら 導 入 し た と 回 答 が あ っ た . こ の よ う に 自 生 地 に よ り 特 性 の 異 な る 系 統 の 存 在 が 示 さ れ て い る .今 回 の 調 査 で 繁 殖 の 問 題 を 挙 げ た 県 は 少 な か っ た が ,こ れ は , 現 状 で は 栽 培 面 積 も 小 さ く , 繁 殖 用 の 珠 芽 や 挿 し 穂 の 確 保 は 問 題 に な ら な か っ た た め で あ る と 考 え ら れ る . 今 後 , 多 収 性 や 機 能 成 分 に 特 徴 を も つ 系 統 が 確 立 さ れ た と き や 県 外 か ら 導 入 し た 系 統 の 栽 培 を 広 げ る た め に は , 苗 の 育 成 が 必 要 と な る こ と か ら 繁 殖 技 術 の 確 立 は 重 要 で あ る と 考 え ら れ る . 大 沢 ( 1986) は ウ ワ バ ミ ソ ウ の 繁 殖 方 法 と し て 珠 芽 , 挿 し 芽 お よ び 株 分 け を あ げ て お り , 今 回 の 調 査 で も 種 子 繁 殖 を 行 っ て い る と の 回 答 は な か っ た こ と か ら , ウ ワ バ ミ ソ ウ 栽 培 で の 繁 殖 方 法 は 栄 養 繁 殖 で あ り , そ の 中 で も 株 分 け で は 繁 殖 率 が 低 い た め 珠 芽 の 利 用 と 挿 し 芽 が 効 率 的 で あ る と 考 え ら れ る . し か し , 珠 芽 の 利 用 や 挿 し 芽 に よ る 繁 殖 効 率 が , 今 後 栽 培 化 を 進 め て い く 上 で 満 足 で き る 程 度 の も の な の か は 調 べ ら れ て い な い . 特 に , 栽 培 面 積 が 増 加 し て い っ た 場 合 に , 増 殖 さ せ よ う と す る 系 統 の 珠 芽 や 挿 し 穂 を 十 分 に 確 保 で き る か に つ い て 検 討 が 必 要 で あ ろ う . 阪 口 ら ( 2012) は , ニ ホ ン ジ カ の 植 物 嗜 好 性 を 調 査 し , ウ ワ バ ミ ソ ウ は 比 較 的 嗜 好 性 が 高 く , 食 害 に よ る 植 物 体 の 矮 小 化 が 認 め ら れ た と 報 告 し た . 崎 尾 ら ( 2013) は 埼 玉 県 秩 父
10 山 地 に お い て 二 ホ ン ジ カ の 採 食 が 林 床 植 生 に 与 え る 影 響 を 調 査 し , 二 ホ ン ジ カ の 個 体 数 が 増 加 し た 2001 年 以 後 に ウ ワ バ ミ ソ ウ の 被 度 が 減 少 し た こ と を 報 告 し た .渡 辺 ら( 1970)や 吉 田 ら ( 2002) は , ツ キ ノ ワ グ マ の 糞 を 調 査 し , ウ ワ バ ミ ソ ウ は ツ キ ノ ワ グ マ の 食 料 の ひ と つ と 報 告 し た . ウ ワ バ ミ ソ ウ は 山 菜 と し て 利 用 さ れ る だ け で な く 大 型 哺 乳 類 の 食 料 に も な っ て い る こ と か ら , シ カ の 食 害 や ク マ の 生 息 地 と 重 な る こ と が 天 然 も の の 採 取 で の 問 題 と し て 挙 げ ら れ た と 考 え ら れ る . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 量 の ほ と ん ど は 山 で の 採 取 で あ る こ と か ら , 東 北 や 関 東 地 方 で は 放 射 性 物 質 の 影 響 を 懸 念 す る 意 見 も 複 数 認 め ら れ た . 大 型 哺 乳 類 か ら の 食 害 や 放 射 性 物 質 の 影 響 を 抑 え る た め に , 生 育 環 境 を コ ン ト ロ ー ル し や す い 栽 培 を 行 う こ と も 対 策 の ひ と つ と 考 え ら れ る . そ の た め に も , 天 然 も の と は 違 う 特 徴 を 持 つ 系 統 の 選 抜 と 同 時 に , 栽 培 の た め の 繁 殖 方 法 の 確 立 が 重 要 と 考 え ら れ る . 摘 要 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 採 取 や 栽 培 を め ぐ る 問 題 点 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に , 生 産 実 績 あ る い は 研 究 実 績 の あ る 県 に ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 い 16 県 か ら 回 答 を 得 た . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 地 方 名 と し て 7 種 類 が 挙 げ ら れ た . 栽 培 地 が あ る の は 4 県 で あ っ た が , 収 量 や 栄 養 面 で 優 れ た 系 統 が あ れ ば 導 入 し て み た い と 回 答 し た 県 は 6 県 あ っ た . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 栽 培 は 主 に 林 床 で 行 わ れ て い る が , 畑 で 栽 培 し て い る 県 も 1 県 あ っ た . 苗 の 育 成 は 自 家 育 苗 あ る い は 試 験 場 で 行 っ て お り , 種 苗 業 者 か ら の 購 入 は な か っ た . 苗 の 繁 殖 方 法 は , 珠 芽 の 利 用 と 挿 し 芽 が そ れ ぞ れ 2 県 ず つ , 株 分 け が 1 県 で あ り , 種 子 繁 殖 を 行 っ て い る 県 は な か っ た . 苗 の 由 来 は 県 内 の 自 生 地 の も の を 利 用 し て い る 場 合 が 多 い が , 県 外 か ら 導 入 し て い る 県 も あ っ た . 自 生 地 で の 採 取 を め ぐ る 問 題 と し て , 放 射 性 物 質 の 影 響 や シ カ に よ る 食 害 を 挙 げ た 県 が 複 数 あ っ た .
11 第 1- 2- 1 表 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 地 方 名 質問 選択肢 該当県 天然もの 12 県 秋田県,宮城県,福島県,群馬県,茨城県,埼玉県, 長野県,静岡県,新潟県,富山県,石川県,鳥取県 天然ものと栽培もの 2 県 青森県,岩手県 栽培もの 1 県 和歌山県 未回答 1 県 思う 6 県 青森県,福島県,長野県,新潟県,静岡県,和歌山県 思わない 9 県 秋田県,岩手県,宮城県,群馬県,茨城県,埼玉県, 石川県,富山県,鳥取県 未回答 1 県 ある 4 県 青森県,岩手県,新潟県,和歌山県 ない 12 県 秋田県,宮城県,福島県,群馬県,茨城県,埼玉県, 長野県,静岡県,石川県,富山県,鳥取県,島根県 林床 4 県 青森県,岩手県,新潟県,和歌山県 畑 1 県 和歌山県 休耕田 0 県 自家育苗 2 県 岩手県,静岡県 試験場で育成 2 県 静岡県,和歌山県 種苗業者から購入 0 県 珠芽 2 県 新潟県,和歌山県 挿し芽 2 県 静岡県,和歌山県 株分け 1 県 和歌山県 種子繁殖 0 県 県内自生地 3 県 新潟県,静岡県,和歌山県 県外から導入 1 県 和歌山県 苗を育成している場合,供給方法は何ですか 苗を育成している場合,苗の由来はどこですか 県内に栽培地がある場合,どのような場所で栽培 していますか 苗を育成している場合,繁殖方法は何ですか 回答数 出荷物の由来は何ですか 収量や栄養分などの面で優れた系統がある場合, 導入してみたいと思いますか 県内に栽培地(林床も含む)はありますか 第 1- 2- 2 表 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 産 状 況 名称 該当県 ミズ 10 県 青森県,岩手県,秋田県,宮城県,福島県, 新潟県,長野県,群馬県,茨城県,埼玉県 ミズナ 3 県 福島県,新潟県,茨城県 ミズブキ 3 県 新潟県,石川県(能登),鳥取県 アカミズ 2 県 新潟県,茨城県 ヨシナ 2 県 新潟県,富山県 カタハ 1 県 石川県(加賀) タキナ 1 県 島根県 ウワバミソウ(特になし) 2 県 静岡県,和歌山県 回答県数
12 第 1- 2- 4 表 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 栽 培 を 進 め る に あ た っ て の 問 題 質問 回答 該当県 放射性物質の影響 岩手県,宮城県,福島県,群馬県 シカの食害 和歌山県,鳥取県 ヤマビルの増加 新潟県 クマの生息地と重なる 新潟県 土地の所有者の許可を得ているか 青森県 自生地での採取(天然物)にあたって 問題になっていることはありますか 第 1- 2- 3 表 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 採 取 を め ぐ る 問 題 質問 分類項目 回答(該当県)z 苗の増殖は研究所内でも行ってはいますが,農家さんには挿し芽を推奨し ています(静岡県) ウワバミソウを賀茂十一野菜の一つとし,栽培技術の確立・普及にあたって いる(静岡県) 比較的,出荷量の多い山菜であることからも需要はあるため,効率的でコスト パフォーマンスが良ければ,栽培したいという人も出てくる可能性はある(宮 城県) 放射性物質の影響を低減するための栽培方法が不明(岩手県,福島県) 放射性物質の移行係数が不明(福島県) 林内栽培の場合,収量を上げるには相対照度を上げることが必要で,強度 の間伐をする必要がある(新潟県) 栽培の人はこのあたりにはいない.自生のものを山から採取しているのみ (富山県) ウワバミソウの自生地は一部地域であるが,もともと食べる習慣がないため, 現在栽培者は数名である.まずは知名度を上げることと,林床での栽培適地 判定技術の確立が課題(和歌山県) 意欲のある生産者が現在のところいない.栽培物として扱う意識が低い(出 てるから採る,多く採れたから直売所に販売する等,手をかけて採取すると いう意識がないのではないか)(宮城県) 天然物のウワバミソウが山間部の直売所で販売されている事例があります が,認知度の高い山菜ではなく,栽培を試みる生産希望者も見当たらない のが実状です(茨城県) 利用方法の普及(新潟県,静岡県,和歌山県) 出荷先の確保(和歌山県) 価格が安い(岩手県) 6月,7月のウワバミソウは太くて,ぬめりも多く美味しいのですが,皮むきなど の下処理がたいへんなため,直売所などで販売しても,若い人から買っても らえないようです(新潟県) 需要量が他の栽培物(野菜等)と比べて低い(宮城県) 直売所で販売しているが,売れ行きは好調である(長野県) 近年は秋に採れる「むかご」が人気で,直売所ではよく売れるようです.大き いむかごがたくさん取れる品種を探したり,むかごを多く収穫できる栽培方 法,7~8月にむかごを収穫する方法などを開発すると面白いと思います(新 潟県) その他 ワサビ田の雑草としての認識の方が強い(静岡県) z 文意ごとに分割して記載した ウワバミソウの栽培を進める上で問題となることは 何ですか 栽培について 販売・利用について
13 第 2 章 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 態 的 特 性 ウ ワ バ ミ ソ ウ を 栽 培 す る た め に は , 野 生 の ウ ワ バ ミ ソ ウ の 茎 や 珠 芽 な ど を 利 用 し て 繁 殖 さ せ る 必 要 が あ る . し か し な が ら , 自 生 地 で の 生 育 経 過 に 関 す る 知 見 は 少 な く , 繁 殖 の 際 に 必 要 と な る 挿 し 穂 の 採 取 可 能 時 期 , 珠 芽 の 採 取 個 数 , 種 子 形 成 の 有 無 な ど に 関 す る デ ー タ は 明 ら か に さ れ て い な い . し た が っ て , 自 生 地 株 を 利 用 し て 効 率 的 に 繁 殖 を 行 う た め に は , 自 生 地 で の 生 育 過 程 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る . そ こ で , 本 研 究 で 使 用 し た 株 の 採 取 地 で あ る 福 井 県 大 飯 郡 お お い 町 の 自 生 地 株 を 調 査 し , 繁 殖 に 関 連 す る 地 上 部 の 生 育 , 珠 芽 お よ び 種 子 形 成 を 中 心 と し た 生 態 的 特 性 を 明 ら か に し た . 材 料 お よ び 方 法 調 査 地 は , 福 井 県 嶺 南 地 方 の 大 飯 郡 お お い 町 名 田 庄 地 区 に あ る 標 高 約 300 m の 自 生 地 で あ る .地 上 部 の 生 育 の 推 移 を 明 ら か に す る た め に 2015 年 5 月 30 日 ,7 月 4 日 ,8 月 23 日 , 10 月 10 日 お よ び 11 月 29 日 に 生 育 中 庸 な シ ュ ー ト を 1 回 に つ き 8 本 ず つ 選 び , 主 茎 長 , 主 茎 の 節 数 ,側 枝 数 お よ び 総 側 枝 長 を 調 査 し た .な お ,調 査 開 始 の 5 月 30 日 は 萌 芽 開 始 か ら 約 1 か 月 経 過 し た 時 期 , 最 終 調 査 の 11 月 29 日 は 珠 芽 の 落 下 が 終 了 し た 時 期 で あ る . 側 枝 は ,長 さ 0.5 cm 以 上 の 1 次 側 枝 を 調 査 対 象 と し た .主 茎 長 が 最 大 と な っ た 10 月 10 日 に 地 際 部 か ら 5 節 ま で の 節 間 長( 最 下 位 の 節 を 1 節 目 と す る ),10 月 10 日 お よ び 11 月 29 日 に 主 茎 1 本 当 た り の 珠 芽 の 着 生 数 を 明 ら か に す る た め , 主 茎 お よ び 側 枝 の 珠 芽 数 と 側 枝 の 節 数 を 調 査 項 目 に 追 加 し た .ま た ,5 月 30 日 に は 雄 花 序 の 形 態 お よ び 花 粉 捻 性 ,6 月 14 日 に は 雌 花 序 の 形 態 お よ び 痩 果 の 着 生 数 を 調 査 し た . 花 粉 捻 性 の 調 査 で は , ス ラ イ ド ガ ラ ス 上 に 花 粉 を 落 と し て ア セ ト カ ル ミ ン 溶 液 ( ナ カ ラ イ テ ス ク , 京 都 ) で 染 色 し た 後 , 1 視 野 に 観 察 さ れ た 花 粉 数 , 染 色 さ れ た 花 粉 数 を 計 測 し , 稔 性 花 粉 率 を 算 出 し た . 結 果 側 枝 ,雄 花 序 ,雌 花 序 お よ び 珠 芽 の 着 生 位 置 の 模 式 図 を 第 2- 1 図 に 示 し た .雄 花 序 お よ
14 び 雌 花 序 は , 主 茎 の 節 部 か ら 発 生 し て い た . 珠 芽 は , 主 茎 お よ び 側 枝 の 節 部 に 形 成 さ れ て い た . 主 茎 長 は , 7 月 4 日 に 40 cm を 超 え た 後 , わ ず か に 伸 長 し て 10 月 10 日 に は 48 cm と な っ た( 第 2- 2 図 A).し か し ,そ の 後 珠 芽 が 上 部 の 主 茎 と と も に 脱 落 し た た め ,11 月 29 日 の 調 査 で は , 主 茎 長 は 29 cm と 短 く な っ た . 主 茎 節 数 は ,5 月 30 日 お よ び 7 月 4 日 で 約 12 節 ,8 月 23 日 お よ び 10 月 10 日 で 約 14 節 で あ っ た ( 第 2- 2 図 B). 11 月 29 日 の 調 査 で は , 珠 芽 の 落 下 に 伴 っ て 節 数 は 約 5 節 と な り , 10 月 の 調 査 と 比 べ て 減 少 し た . 主 茎 1 本 当 た り の 側 枝 数 は , 5 月 30 日 ~ 8 月 30 日 で は 1.1~ 1.6 本 で あ っ た が , 10 月 10 日 の 調 査 で は 2.9 本 と な っ た( 第 2- 2 図 C).11 月 29 日 の 調 査 で は 珠 芽 の 落 下 に 伴 う 主 茎 の 離 脱 に よ っ て 側 枝 数 は 2.4 本 と な り , 10 月 の 調 査 と 比 べ て 減 少 し た . 主 茎 1 本 当 た り の 総 側 枝 長 は , 5 月 30 日 , 7 月 4 日 お よ び 8 月 30 日 で は 10 cm 以 下 で あ っ た が ,10 月 10 日 に は 29 cm と な っ た( 第 2- 2 図 D).11 月 29 日 の 調 査 で は 珠 芽 の 落 下 に 伴 う 主 茎 の 離 脱 に よ っ て 20 cm と 短 く な っ た . 主 茎 の 節 間 長 は , 下 位 の 節 間 と 比 較 し て 上 位 の 節 間 ほ ど 短 く な っ た ( 第 2- 3 図 ) 主 茎 の 節 数 は ,10 月 10 日 で は 14.4 節 で あ っ た が ,11 月 29 日 に は 4.5 節 に 減 少 し た( 第 2- 1 表 ). 主 茎 の 珠 芽 着 生 数 は , 10 月 10 日 で は 6.5 個 で あ っ た が , 11 月 29 日 に は す べ て 脱 落 し て 0 個 と な っ た .一 方 ,側 枝 の 総 節 数 は , 10 月 10 日 で は 16.3 節 で あ っ た が ,11 月 29 日 は 7.1 節 に 減 少 し た . 側 枝 の 珠 芽 着 生 数 は , 10 月 10 日 に は 8.1 個 で あ っ た が , 11 月 29 日 に は す べ て 脱 落 し て 0 個 と な っ た . 雄 花 序 に は ,約 1 cm の 花 柄 が あ り ,1 花 序 当 た り 8.4 個 の 小 花 が 着 生 し て い た( 第 2- 2 表 , 第 2- 4 図 ). 花 粉 捻 性 率 は 99.6%で あ り , ほ ぼ 全 て の 花 粉 が ア セ ト カ ル ミ ン に よ っ て 染 色 さ れ た( 第 2- 2 表 ,第 2- 5 図 ).雌 花 序 は ,主 茎 1 本 当 た り 6 個 着 生 し て お り ,1 花 序 の 大 き さ が 1 cm, 1 花 序 当 た り 46 個 の 痩 果 を 形 成 し た ( 第 2- 2 表 , 第 2- 6 図 ). 花 序 内 の 痩 果 は , 褐 色 と な り 脱 落 し て い る も も の も あ る が , 緑 色 の 未 熟 な も の も あ り , 成 熟 状
15 態 は 一 様 で は な か っ た ( 第 2- 5 図 C). 考 察 萌 芽 開 始 か ら 約 1 か 月 経 過 し た と 考 え ら れ る 5 月 30 日 の 主 茎 長 が 35 cm で あ っ た の に 対 し て , そ れ か ら 4 か 月 以 上 経 過 し た 10 月 10 日 の 主 茎 長 は 48 cm で あ っ た の で , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 主 茎 は 萌 芽 直 後 に 急 速 に 伸 長 し , そ の 後 の 伸 長 は 緩 や か で あ る と 考 え ら れ る . 側 枝 の 発 達 は , 8 月 後 半 ま で は あ ま り 活 発 で な い が , 10 月 上 旬 に は 側 枝 数 お よ び 総 側 枝 長 と も に 大 き く 増 加 し た . し た が っ て , 1 株 の シ ュ ー ト か ら 最 も 多 く の 挿 し 穂 を 得 る こ と が で き る の は 10 月 で あ る と 考 え ら れ た .し か し な が ら ,10 月 で も 主 茎 当 た り の 側 枝 数 は 2.9 本 に 過 ぎ ず ,ま た 総 側 枝 長 も 29 cm に し か な ら な か っ た .さ ら に ,自 然 条 件 で は 11 月 に 地 上 部 が 枯 れ は じ め る た め , 挿 し 芽 当 年 内 に あ る 程 度 の 大 き さ の 挿 し 芽 苗 を 育 成 す る た め に は 10 月 の 挿 し 芽 は 現 実 的 で は な い .鈴 木・佐 竹( 2000)は ,ウ ワ バ ミ ソ ウ の 有 節 茎 を 7~ 9 月 に か け て 挿 し 芽 し た と こ ろ ,生 存 率 は 7 お よ び 8 月 で は 93%以 上 で あ っ た が 9 月 で は 70% に 低 下 し た と 報 告 し た .大 沢( 1986)は ,入 梅 の 頃 に 挿 し 芽 を 行 う と よ い と 記 載 し て い る . ま た , 大 沢 ( 1986) は 茎 を 3~ 4 節 ご と に , 鈴 木 ・ 佐 竹 ( 2000) は 2~ 3 節 ご と に 切 断 し て 挿 し 穂 を 調 整 し て い る . 5~ 8 月 の 主 茎 節 数 は 約 12~ 14 節 で あ っ た こ と か ら , 2 節 で 切 断 し た 場 合 1 本 の 主 茎 か ら 最 大 7 本 の 挿 し 穂 を 採 取 す る こ と が で き る と 計 算 さ れ る が , 実 際 に は 下 位 節 で は 節 間 長 が 長 い こ と に よ り 挿 し 穂 が 長 く な り す ぎ , 茎 頂 付 近 で は 節 間 が 詰 ま っ て い る た め 挿 し 穂 が 短 く な り す ぎ る た め , 主 茎 を 用 い た 実 際 の 挿 し 穂 の 採 取 本 数 は 7 本 よ り も 少 な く な る と 考 え ら れ る . 以 上 の 点 か ら 考 え る と , 自 生 地 株 の シ ュ ー ト を 豊 富 に 確 保 で き る 場 合 は 問 題 な い が , 第 1 章 第 2 節 の ア ン ケ ー ト 調 査 の よ う に 自 生 地 株 が 少 な か っ た り 特 定 の 系 統 を 増 殖 さ せ た り し た い 場 合 に は 主 茎 を 利 用 し た 大 量 増 殖 は 難 し い と 考 え ら れ た . 10 月 10 日 は 珠 芽 の 脱 落 開 始 前 で あ り ,11 月 29 日 に は す べ て の 珠 芽 が 脱 落 し て い た .珠 芽 は 節 に 形 成 さ れ る た め , 10 月 10 日 か ら 11 月 29 日 に か け て の 節 の 減 少 要 因 を す べ て 珠
16 芽 の 脱 落 に よ る と 仮 定 す る と , 珠 芽 の 形 成 数 は 主 茎 で 9 個 , 側 枝 で 9 個 の 合 計 18 個 程 度 で あ る と 推 測 さ れ る . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 増 殖 は 株 分 け や 挿 し 芽 で も 可 能 で あ る が , 大 量 に 増 殖 す る に は 珠 芽 を 用 い る 方 法 が 簡 便 で あ る( 栗 田 ,1997).第 1 章 第 2 節 の ア ン ケ ー ト 調 査 で も 苗 を 育 成 し て い る 3 県 の う ち 2 県 で 珠 芽 を 利 用 し て 育 苗 し て い た こ と か ら , 珠 芽 の 利 用 は 繁 殖 方 法 と し て 一 般 的 で あ る と 考 え ら れ る . し か し な が ら , 採 取 直 後 の 珠 芽 は 休 眠 状 態 に あ り ,休 眠 打 破 の た め に は 低 温 処 理( Okagami,1979;鈴 木・佐 竹 ,2000)や ジ ベ レ リ ン 処 理( Okagami,1979)が 必 要 と な る .さ ら に ,珠 芽 を 利 用 し て 育 苗 を 開 始 で き る の は 珠 芽 が 形 成 さ れ る 秋 以 後 と な る . 雌 花 序 に は 1 花 序 当 た り 平 均 46.3 粒 の 痩 果 が あ り ,主 茎 1 本 当 た り 6 個 の 雌 花 序 が 着 生 し て い た こ と か ら , 主 茎 1 本 当 た り 約 278 粒 の 痩 果 が 採 取 可 能 で あ る と 考 え ら れ る . し た が っ て , 痩 果 を 利 用 す る こ と で 珠 芽 の 利 用 あ る い は 挿 し 芽 と 比 べ て 大 量 増 殖 が 可 能 と な る と 考 え ら れ る が , 第 1 章 第 2 節 の ア ン ケ ー ト 調 査 で 回 答 の あ っ た 繁 殖 方 法 は 珠 芽 の 利 用 , 挿 し 芽 お よ び 株 分 け だ け で あ り ,さ ら に 痩 果 を 利 用 し た 繁 殖 に 関 す る 研 究 事 例 も な い た め , 栽 培 を 前 提 と し た 痩 果 を 利 用 し た 繁 殖 の 可 否 に つ い て は 不 明 で あ る . 本 調 査 の 自 生 地 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 活 史 を 第 2- 7 図 に ま と め た . ウ ワ バ ミ ソ ウ は 珠 芽 あ る い は 根 茎 で 越 冬 し , 4 月 に 萌 芽 し た 後 に 生 育 が 進 み , 9 月 に 珠 芽 の 形 成 が 始 ま り ,11 月 に 地 上 部 が 枯 死 す る と 考 え ら れ る .ま た ,雄 花 序 お よ び 雌 花 序 を 着 生 し ,そ の 後 痩 果 の 形 成 が 認 め ら れ た . 以 上 の こ と か ら , 自 生 地 株 を 利 用 し て 繁 殖 さ せ る 場 合 , 挿 し 芽 で は 主 茎 を 使 用 す る こ と に な り 主 茎 1 本 当 た り の 挿 し 穂 採 取 本 数 は 7 本 以 下 で あ る こ と , 秋 に は 珠 芽 を 主 茎 1 本 当 た り 18 個 採 取 で き る こ と ,6 月 に は 痩 果 を 主 茎 1 本 当 た り 約 278 粒 採 取 で き る こ と が 明 ら か と な っ た . 摘 要 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 自 生 地 で の 生 育 過 程 を 明 ら か に す る た め に , 5~ 11 月 に か け て 福 井 県 大
17 飯 郡 お お い 町 名 田 庄 地 区 に あ る 標 高 約 300 m の 自 生 地 の 株 を 調 査 し た . 主 茎 長 は , 5 月 に は 35 cm で あ り , 10 月 に 最 大 と な っ た . 11 月 に は 珠 芽 の 脱 落 に よ り , 主 茎 長 は 10 月 と 比 較 し て 短 く な っ た .主 茎 の 節 数 は 5~ 10 月 に か け て 増 加 し た が ,11 月 に は 珠 芽 の 脱 落 に よ り 減 少 し た .側 枝 数 お よ び 総 側 枝 長 は 10 月 に 最 大 と な っ た .10 お よ び 11 月 の 節 数 と 珠 芽 形 成 数 の 関 係 か ら ,主 茎 1 本 当 た り の 珠 芽 形 成 数 は 18 個 と 考 え ら れ た .6 月 に は 雌 花 序 の 1 花 序 当 た り 46.3 粒 の 痩 果 が あ り , 主 茎 1 本 当 た り 約 278 粒 の 痩 果 を 採 取 可 能 で あ る と 考 え ら れ た .
18 主茎 一次側枝 葉 腋芽 雄花序 雌花序 珠芽 雄花序着生株 雌花序着生株 珠芽着生位置 第 2- 1 図 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 地 上 部 の 形 態 ( 模 式 図 )
19 第 2- 2 図 福 井 県 嶺 南 地 方 の 自 生 地 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 主 茎 長 ( A) , 主 茎 節 数 ( B) , 側 枝 数 ( C) お よ び 総 側 枝 長 ( D) の 生 育 の 推 移 2015 年 5 月 30 日 , 7 月 4 日 , 8 月 23 日 , 10 月 10 日 お よ び 11 月 29 日 に 調 査 図 中 の 縦 線 は 標 準 誤 差 を 示 す ( n=8) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 5/30 7/4 8/23 10/10 11/29 主茎長( cm ) 調査日 0 5 10 15 20 5/30 7/4 8/23 10/10 11/29 主茎節数 調査日 0 1 2 3 4 5 5/30 7/4 8/23 10/10 11/29 側枝数(本/主茎) 調査日 0 5 10 15 20 25 30 35 40 5/30 7/4 8/23 10/10 11/29 総側枝長 ( cm ) 調査日
A
B
D
C
20 第 2- 3 図 福 井 県 嶺 南 地 方 の 自 生 地 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 節 位 置 と 節 間 長 の 関 係 最 下 位 の 節 を 1 節 目 と し た 10 月 10 日 調 査 図 中 の 縦 線 は 標 準 誤 差 を 示 す ( n=8) 0 2 4 6 8 10 12 地際~1節 1~2節 2~3節 3~4節 4~5節 節間長( cm ) 位置
21 主茎節数 主茎珠芽着生数 総側枝節数 総側枝珠芽着生数 (個/主茎) (個/総側枝) 10月10日 14.3±0.3z 6.5±0.8 16.3±3.6 8.1±2.0 11月29日 4.5±0.4 0.0±0.0 7.1±1.4 0.0±0.0 z 平均値±標準誤差(n=8) 調査日 第 2- 1 表 福 井 県 嶺 南 地 方 の 自 生 地 に お け る 秋 季 の ウ ワ バ ミ ソ ウ の 節 数 お よ び 珠 芽 着 生 数 第 2- 2 表 福 井 県 嶺 南 地 方 の 自 生 地 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 雄 花 序 お よ び 雌 花 序 の 特 性 雌花序 花柄長 小花数 稔性花粉率 着生数 花序径 痩果数 (mm) (個/花序) (%) (個/主茎) (mm) (粒/花序) 10.1±0.1z 8.4±0.9 99.6 6.0±0.4 10.2±0.6 46.3±7.9 z 平均値±標準誤差(n=10) 雄花序
22
5 cm
5 mm
A
B
第 2- 4 図 福 井 県 嶺 南 地 方 の ウ ワ バ ミ ソ ウ の 雄 花 序 の 着 生 状 況 (A) お よ び 拡 大 写 真 ( B)23
A
B
第 2- 5 図 70%エ タ ノ ー ル ( A) お よ び ア セ ト カ ル ミ ン 溶 液 ( B) を 滴 下 し た ウ ワ バ ミ ソ ウ の 花 粉 滴 下 30 分 後 に 撮 影24
5 cm
A
5 mm
B
5 mm
C
第 2- 6 図 福 井 県 嶺 南 地 方 の ウ ワ バ ミ ソ ウ の 雌 花 序 の 着 生 状 況 (A), 開 花 時 の 拡 大 写 真 ( B) お よ び 痩 果 成 熟 時 の 拡 大 写 真 (C)25 第 2- 7 図 福 井 県 嶺 南 地 方 の 自 生 地 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 生 活 史 11~4月 根茎休眠期 4月 根茎萌芽期 4~6月 開花期 4~9月 生育期 9~10月 珠芽形成期 10~11月 離層形成期 10~4月 珠芽休眠期 4月 珠芽萌芽期 雄花序 雌花序 6~7月 痩果(種子)成熟期 未解明 休眠 (10・11~4月) 成長 (4~9月)
26 第 3 章 痩 果 ( 種 子 ) の 発 芽 に 及 ぼ す 発 芽 促 進 処 理 の 効 果 第 1 章 第 2 節 で の ア ン ケ ー ト 調 査 に お い て , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 繁 殖 方 法 は す べ て 栄 養 繁 殖 で あ り , 種 子 繁 殖 は 行 わ れ て い な か っ た . し か し , 第 2 章 の 自 生 地 に お け る 6 月 の 調 査 で は 雌 花 序 に 痩 果 ( 以 下 , 種 子 と 呼 ぶ ) の 形 成 が 認 め ら れ , 主 茎 1 本 当 た り 278 個 の 種 子 を 確 保 で き る と 考 え ら れ た . し た が っ て , 種 子 繁 殖 が 可 能 で あ れ ば 挿 し 芽 や 珠 芽 に よ る 栄 養 繁 殖 と 比 較 し て 増 殖 率 は 高 ま る と 考 え ら れ る が , 採 種 直 後 の 山 野 草 の 種 子 は 休 眠 状 態 に あ る も の が 多 く , 播 種 し た 種 子 が す べ て 発 芽 す る わ け で は な い . 山 菜 と し て 利 用 さ れ て い る イ ラ ク サ 科 の ミ ヤ マ イ ラ ク サ の 種 子 で は ,湿 潤 状 態 で 5℃ の 低 温 に 15 日 以 上 遭 遇 さ せ る こ と で 休 眠 打 破 で き る ( 河 合 ・ 山 原 , 2013). ウ ワ バ ミ ソ ウ の 種 子 に 休 眠 現 象 が 存 在 す る か は 不 明 で は あ る が , 休 眠 種 子 で あ る 可 能 性 が 高 い た め , 種 子 に 対 す る 発 芽 促 進 処 理 の 効 果 を 調 査 し た . 材 料 お よ び 方 法 実 験 1 ジ ベ レ リ ン 処 理 の 影 響 福 井 県 大 飯 郡 お お い 町 名 田 庄 地 区 の 自 生 地 で 2015 年 6 月 14 日 に 雌 花 序 を 採 取 し て , 種 子 を 取 り 出 し た . 採 種 の 際 , 第 2 章 で 明 ら か に し た よ う に 雌 花 序 内 の 種 子 の 成 熟 度 合 い に は 差 が あ る の で ,種 子 の 成 熟 状 態 を 揃 え る た め に 褐 色 と な っ た 種 子 だ け を 選 ん で 採 種 し た . そ の た め ,供 試 粒 数 が 少 な く な っ た . 6 月 15 日 に ジ ベ レ リ ン( ジ ベ レ リ ン 液 剤 ,協 和 発 酵 バ イ オ ; 以 下 , GA ) 濃 度 を 0 お よ び 100 ppm と し た 溶 液 に 種 子 を 入 れ て 24 時 間 浸 漬 し た . GA 処 理 終 了 後 に 蒸 留 水 で 洗 浄 し , 直 径 9 cm シ ャ ー レ に ろ 紙 ( No. 2) 2 枚 を 敷 き 種 子 を 20 粒 置 床 し た 後 に 蒸 留 水 を 10 mL 加 え て 蓋 を し た . 両 濃 度 と も に 3 反 復 と し た . ミ ヤ マ イ ラ ク サ の 種 子 で は 光 に よ り 発 芽 が 促 進 さ れ る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る こ と か ら( 河 合・ 山 原 , 2013), 24℃ に 設 定 し た 閉 鎖 型 培 養 室 ( 照 度 ; 約 100 lx, 光 源 ; 白 色 蛍 光 灯 , 明 期 ; 16 時 間 ) で 管 理 し た . 置 床 当 日 ~ 28 日 後 ま で 毎 日 発 芽 個 体 数 を 調 査 し , 発 芽 率 を 算 出 し た .
27 発 芽 後 の 生 育 経 過 を 観 察 す る た め に , 6 月 28 日 ( 置 床 12 日 後 ) に 発 芽 し た GA0 ppm 区 の 個 体 を ウ レ タ ン キ ュ ー ブ に 植 え , 0.25 単 位 の 園 試 処 方 培 養 液 で 水 耕 し た . 閉 鎖 型 培 養 室 ( 照 度 ; 約 3,000 lx, 光 源 ; 白 色 蛍 光 灯 , 明 期 ; 16 時 間 ) で 管 理 し , 生 育 量 が 少 な か っ た た め 培 養 液 の 交 換 は 2~ 3 週 間 に 1 回 行 い , 観 賞 魚 用 エ ア ー ポ ン プ で 連 続 通 気 し た . 実 験 2 貯 蔵 条 件 の 影 響 種 子 貯 蔵 の 温 度 条 件 を 3℃ 冷 蔵 と 24℃ ま た は 成 り ゆ き ( 常 温 ) と し , 水 分 条 件 を 乾 燥 と 湿 潤 に 変 え た 4 処 理 区 を 設 け , 実 験 1 で 用 い た 種 子 を 6 月 15 日 ~ 7 月 31 日 ま で 貯 蔵 し た ( 第 3- 1 表 ). 湿 潤 処 理 は , 温 度 成 り ゆ き の 場 合 で は 種 子 を 不 織 布 の 袋 に 入 れ て 湿 ら せ た 培 養 土 に 埋 め , 冷 蔵 処 理 の 場 合 で は シ ャ ー レ に 水 を 加 え て 行 っ た . 貯 蔵 処 理 終 了 後 , 直 ち に 実 験 1 と 同 じ よ う に 発 芽 試 験 を 行 っ た . 結 果 実 験 1 ジ ベ レ リ ン 処 理 の 影 響 GA0 ppm 区 で は , 発 芽 は 置 床 12 日 後 か ら 始 ま り , 28 日 後 の 最 終 発 芽 率 は 12%で あ っ た ( 第 3- 1 図 ).GA100 ppm 区 で は , 発 芽 は 置 床 18 日 後 か ら 始 ま り , 最 終 発 芽 率 は 7%で あ っ た . 発 芽 個 体 を 用 い て 生 育 経 過 を 観 察 し た と こ ろ ,丸 み を 帯 び た 子 葉 が 展 開 し た 後 ,置 床 46 日 後 に は 鋸 歯 の な い 葉 が 2 枚 展 開 し た ( 第 3- 2 図 ). そ の 後 に 展 開 し た 本 葉 か ら 鋸 歯 が 認 め ら れ た . 生 育 速 度 は 非 常 に 遅 く , 置 床 117 日 後 に お い て も 主 茎 長 は 3 cm 程 度 で あ っ た . 実 験 2 貯 蔵 条 件 の 影 響 常 温 ・ 湿 潤 区 で は , 発 芽 は 置 床 5 日 後 に 始 ま っ た が , そ の 後 新 た な 発 芽 は 認 め ら れ ず , 21 日 後 の 最 終 発 芽 率 は 3%で あ っ た ( 第 3- 3 図 ). 冷 蔵 ・ 湿 潤 区 で は , 発 芽 は 置 床 5 日 後 に 始 ま っ た が ,そ の 後 新 た な 発 芽 は ほ と ん ど 認 め ら れ ず ,最 終 発 芽 率 は 5%で あ っ た .温 度 に か か わ ら ず 乾 燥 条 件 で は , 発 芽 は 認 め ら れ な か っ た .
28 考 察 本 実 験 に お け る ウ ワ バ ミ ソ ウ の 種 子 の 発 芽 率 は ,実 験 1 の GA0 ppm 区 の 12%で あ り ,非 常 に 低 か っ た . ウ ワ バ ミ ソ ウ の 種 子 の 発 芽 適 温 な ど 好 適 な 発 芽 条 件 は 不 明 で あ る た め , 本 実 験 で は 自 生 地 の 株 か ら 採 種 し て 生 育 期 の 気 温 に 近 い 培 養 室 内 で 発 芽 試 験 を 実 施 し た が , 十 分 な 発 芽 を 得 る こ と は で き な か っ た . さ ら に , 発 芽 し た 個 体 の 生 育 が 非 常 に 遅 い こ と が 観 察 さ れ た . 第 1 章 第 2 節 で の ア ン ケ ー ト 調 査 で も 明 ら か な よ う に 生 産 地 で の 繁 殖 方 法 は す べ て 栄 養 繁 殖 で あ り , 大 沢 ( 1986) も ウ ワ バ ミ ソ ウ の 繁 殖 方 法 と し て 栄 養 繁 殖 だ け を 記 載 し て い る . ウ ワ バ ミ ソ ウ 栽 培 で 種 子 繁 殖 が 行 わ れ な い 理 由 と し て , 発 芽 率 を 高 め る 方 法 が 不 明 で あ る こ と , お よ び 発 芽 後 の 生 育 が 遅 い こ と が 原 因 と 考 え ら れ る . イ ラ ク サ 科 植 物 の 種 子 の 休 眠 性 に つ い て ,ミ ヤ マ イ ラ ク サ で は 明 条 件 に お い て 種 子 を 15 日 間 以 上 5℃ 湿 潤 状 態 で 処 理 し た 後 に 20℃ で 管 理 し た 場 合 , 発 芽 率 は 50~ 60% と 高 ま り , 低 温 処 理 に よ る 休 眠 打 破 効 果 が 認 め ら れ た ( 河 合 ・ 山 原 , 2013). 本 実 験 で は , GA お よ び 低 温 処 理 に よ る 発 芽 促 進 を 試 み た が , 効 果 は 認 め ら れ な か っ た . ム カ ゴ イ ラ ク サ の 種 子 の 休 眠 は ,3 か 月 程 度 の 低 温 処 理 に よ り 打 破 さ れ る こ と か ら( 丹 野 ,1985),本 実 験 の 1 か 月 半 程 度 の 低 温 処 理 で は 十 分 に 休 眠 打 破 さ れ な か っ た 可 能 性 も あ る . さ ら に , 採 種 直 後 の 種 子 で も 発 芽 し た こ と か ら 休 眠 の 深 さ の ば ら つ き が 大 き く , ほ と ん ど 休 眠 し な い 種 子 が 混 在 し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る . 一 般 に は 植 物 体 が 種 子 を 飛 散 さ せ る 状 態 に な っ て い れ ば , 種 子 の 胚 は 十 分 に 成 熟 し て い る の が 普 通 で あ る が , 植 物 体 が 種 子 を 離 脱 さ せ る 時 期 に な っ て も 種 子 内 部 の 胚 が 十 分 に 成 熟 し て い な い 未 熟 胚 を 持 つ 植 物 種 も あ る( 中 村 ,1985).丹 野( 1985)は ,ム カ ゴ イ ラ ク サ 種 子 の 休 眠 の 原 因 の 一 つ と し て , 胚 の 成 長 力 低 下 を 挙 げ , 低 温 処 理 や 赤 色 光 が 胚 の 成 長 力 を 高 め て い る と 指 摘 し た . し た が っ て , ウ ワ バ ミ ソ ウ の 種 子 の 休 眠 の 原 因 の 一 つ と し て 未 熟 胚 の 問 題 が あ り , 後 熟 の 過 程 が 必 要 な 可 能 性 も 考 え ら れ る . 以 上 の よ う に , ウ ワ バ ミ ソ ウ 種 子 の 発 芽 促 進 方 法 を 明 ら か に す る た め に は , 種 子 の 休 眠 を 引 き 起 こ し て い る 要 因 の 特 定 を 含 め て さ ら に 検 討 が 必 要 と 思 わ れ る .
29 摘 要 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 自 生 地 で 6 月 に 種 子 を 採 種 し て 発 芽 実 験 を 行 っ た . 採 種 直 後 の 種 子 を 用 い た GA 0ppm 区 と GA100 ppm 区 の 置 床 28 日 後 の 最 終 発 芽 率 は ,そ れ ぞ れ 12 お よ び 7%で あ り ,GA に よ る 発 芽 促 進 効 果 は 認 め ら れ な か っ た .6 月 に 採 種 し た 種 子 を 常 温( 24℃ ま た は 成 り ゆ き ) あ る い は 冷 蔵 ( 3℃ ) お よ び 湿 潤 あ る い は 乾 燥 条 件 を 組 み 合 わ せ て 46 日 間 貯 蔵 し た 後 に 置 床 し た と こ ろ , 常 温 ・ 湿 潤 お よ び 冷 蔵 ・ 湿 潤 区 の 発 芽 率 は , そ れ ぞ れ 3 お よ び 5%で あ っ た . 一 方 , 温 度 に か か わ ら ず 乾 燥 条 件 で は , 発 芽 は 認 め ら れ な か っ た .
30 第 3- 1 表 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 種 子 の 貯 蔵 条 件 と 試 験 区 の 構 成 第 3- 1 図 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 種 子 の 発 芽 率 に 及 ぼ す GA 処 理 の 影 響 図 中 の 縦 線 は 標 準 誤 差 を 示 す ( n=3) 試験区 貯蔵温度 貯蔵方法 常温・湿潤 ガラス室内の網室で成りゆき ろ紙で包んだ種子を不織布の袋に入れ て湿った培養土に埋める 冷蔵・湿潤 3℃(冷蔵庫) ろ紙を2枚敷き,水5 mLを入れた9 cm径 シャーレに種子を入れてパラフィルム で密閉 常温・乾燥 24℃(閉鎖型培養室内) ろ紙を2枚敷き,9 cm径シャーレに種子 とシリカゲル製食品用乾燥材を入れて パラフィルムで密閉 冷蔵・乾燥 3℃(冷蔵庫) ろ紙を2枚敷き,9 cm径シャーレに種子 とシリカゲル製食品用乾燥材を入れて パラフィルムで密閉 0 10 20 30 40 50 0 7 14 21 28 発芽率( % ) 置床後日数(日) GA 0 ppm GA 100 ppm
31
5 mm
A
2.5 cm
B
2.5 cm
C
2.5 cm
D
子 葉E
第 3- 2 図 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 実 生 の 生 育 経 過 A 痩 果 ( 種 子 ) B 子 葉 展 開 ( 置 床 30 日 後 ) C 本 葉 展 開 ( 置 床 46 日 後 ) D 生 育 期 ( 置 床 117 日 後 ) E 土 耕 で の こ ぼ れ 種 か ら 発 生 し た 個 体32 第 3- 3 図 ウ ワ バ ミ ソ ウ の 種 子 の 発 芽 率 に 及 ぼ す 貯 蔵 条 件 の 影 響 図 中 の 縦 線 は 標 準 誤 差 を 示 す ( n=3) 0 10 20 30 40 50 0 7 14 21 発芽率( % ) 置床後日数(日) 常温・湿潤 冷蔵・湿潤 常温・乾燥 冷蔵・乾燥
33 第 4 章 挿 し 芽 繁 殖 に お け る 増 殖 効 率 向 上 の た め の 処 理 第 1 節 挿 し 芽 時 の 条 件 が 発 根 と そ の 後 の 生 育 に 及 ぼ す 影 響 第 2 章 の 自 生 地 株 の 調 査 に お い て ウ ワ バ ミ ソ ウ は 種 子 を 形 成 し て い た が , 第 3 章 で 明 ら か に し た よ う に 種 子 の 発 芽 率 は 低 く , 発 芽 後 の 生 育 も 遅 か っ た . 挿 し 芽 繁 殖 は , 種 子 の で き な い 植 物 や , で き て も 発 芽 の 悪 い も の , 品 種 の 固 定 さ れ て い な い も の な ど の 繁 殖 手 段 と し て 行 わ れ て お り , 利 点 と し て 母 本 と 同 一 の 形 質 を 持 つ 個 体 が 得 ら れ る こ と , 技 術 的 に 簡 便 で 一 時 に 多 数 の 苗 が 得 ら れ る こ と ,実 生 苗 に 比 べ て 生 育 が 早 い こ と が 挙 げ ら れ る( 町 田 , 1974).し た が っ て ,ウ ワ バ ミ ソ ウ 種 子 の 発 芽 や 発 芽 後 の 生 育 特 性 を 考 慮 す る と ,挿 し 芽 は ウ ワ バ ミ ソ ウ の 繁 殖 に 適 し た 方 法 で あ る と 考 え ら れ る . 実 際 に 第 1 章 第 2 節 の ア ン ケ ー ト 調 査 で は , 2 県 で 挿 し 芽 に よ り 苗 を 育 成 し て い た . 挿 し 穂 の 活 着 に 影 響 す る 要 因 に は , 親 木 の 状 態 , 穂 木 の 状 態 , 挿 し 床 の 外 的 要 因 な ど が あ る ( 町 田 , 1974). そ こ で , 挿 し 芽 時 の 条 件 が 発 根 と そ の 後 の 生 育 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 調 査 し た . 1. 挿 し 穂 の 発 根 に 及 ぼ す 挿 し 穂 採 取 部 位 , 挿 し 芽 用 土 お よ び イ ン ド ー ル 酪 酸 処 理 の 影 響 ウ ワ バ ミ ソ ウ に お い て シ ュ ー ト の ど の 部 位 を 挿 し 穂 と し て 利 用 す る の が 良 い か に つ い て ,鈴 木 ・ 佐 竹( 2000)は ,7~ 9 月 に か け て 有 節 茎( 節 ,節 間 ,葉 か ら 成 る ),節 間 ,葉 身 を 挿 し 穂 と し て バ ー ミ キ ュ ラ イ ト に 挿 し た と こ ろ , 有 節 茎 を 利 用 す る 方 法 が 最 も 効 率 的 で あ っ た と 報 告 し た . 1 本 の シ ュ ー ト か ら 挿 し 穂 を 採 取 す る 場 合 , 先 端 部 か ら 挿 し 穂 を 調 整 す る 場 合 を 天 挿 し ,そ れ よ り 下 の 頂 芽 の な い 部 分 を 管 挿 し と 呼 ぶ( 町 田 ,1974).金 野・吉 池 ( 1985) は , 山 菜 で あ る モ ミ ジ ガ サ に お い て 挿 し 芽 の 方 法 と 挿 し 芽 後 の 生 育 の 関 係 を 調 べ , 増 殖 を 目 的 と す る 場 合 で は 天 挿 し と 比 較 し て 葉 芽 挿 し ( 管 挿 し ) が 良 い と 報 告 し た . こ の よ う に , 挿 し 穂 の 採 取 部 位 や 調 整 方 法 に よ り 挿 し 穂 の 発 根 や 生 育 に 影 響 が 現 れ る 可 能 性 が あ る . 挿 し 床 ( 挿 し 芽 用 土 ) に は , ピ ー ト モ ス , 赤 玉 土 , バ ー ミ キ ュ ラ イ ト , パ ー ラ イ ト な ど の 単 体 あ る い は こ れ ら を 組 み 合 わ せ た も の が 使 わ れ る こ と が 多 い が( 大 川 ら ,2002),挿 し
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芽 用 土 の 種 類 が 挿 し 穂 か ら の 発 根 に 影 響 を 及 ぼ す こ と は 良 く 知 ら れ て い る . ウ ワ バ ミ ソ ウ と 同 じ イ ラ ク サ 科 の ぺ リ オ ニ ア ( Pellionia pulchra N. E. Br. ) や ピ レ ア ( Pilea involucrata (Sims ) Urb. )を ピ ー ト モ ス ・ パ ー ラ イ ト 混 合 用 土 お よ び ピ ー ト モ ス ・ 砂 混 合 用 土 に 挿 し 芽 し た こ と こ ろ ,ピ ー ト モ ス・パ ー ラ イ ト 混 合 用 土 で 生 育 が 優 れ た( Poole・Conover,1977). イ ラ ク サ 科 で は な い が , 西 尾 ら ( 1994) は , ピ ー ト モ ス , 調 製 ピ ー ト , パ ー ラ イ ト お よ び ピ ー ト モ ス ・ パ ー ラ イ ト ・ バ ー ミ キ ュ ラ イ ト を 3: 1: 1 あ る い は 1: 1: 1 の 体 積 比 で 混 合 し た 用 土 の 5 種 類 の 挿 し 芽 用 土 に キ ク を 挿 し 芽 し た と こ ろ , ピ ー ト モ ス ・ パ ー ラ イ ト ・ バ ー ミ キ ュ ラ イ ト を 3:1:1 あ る い は 1:1:1 で 混 合 し た 用 土 で 発 根 量 が 優 れ た と 報 告 し た . キ ク 以 外 に も , 仁 藤 ・ 藤 井 ( 1972) は , 市 販 の 供 試 土 , 鹿 沼 土 , パ ー ラ イ ト お よ び テ ラ ラ イ ト の 4 種 類 の 用 土 に ク ル メ ツ ツ ジ を 挿 し 木 し た と こ ろ , 供 試 土 に お い て 発 根 率 お よ び 発 根 重 が 優 れ た と 報 告 し た .Reynoso ら( 2001)は ,ピ ー ト モ ス・パ ー ラ イ ト 混 合 用 土 ,パ ー ラ イ ト , 鹿 沼 土 , 川 礫 お よ び 赤 玉 土 に テ ロ ペ ア を 挿 し 木 し た と こ ろ , 発 根 率 は 鹿 沼 土 , 赤 玉 土 の 中 粒 お よ び 川 礫 で 高 か っ た と 報 告 し た . こ の よ う に , 挿 し 芽 用 土 と し て 混 合 用 土 が 良 い の か , あ る い は 単 体 の 用 土 が 良 い の か は 植 物 の 種 類 に よ っ て 異 な る . ま た , 実 際 に 流 通 し て い る 鹿 沼 土 や バ ー ミ キ ュ ラ イ ト に は , さ ま ざ ま な 大 き さ の 製 品 が 存 在 し て い る . 矢 橋 ら ( 1992) は , 鹿 沼 土 に お い て 粒 径 が 異 な る と 保 水 性 や 通 気 性 な ど の 物 理 性 が 異 な る こ と を 報 告 し た . こ の よ う に , 同 じ 種 類 の 用 土 で あ っ て も , 粒 径 に よ り 物 理 特 性 が 異 な る こ と か ら , 挿 し 穂 の 発 根 に も 影 響 が 現 れ る 可 能 性 が あ る . 小 池 ら ( 2002) は , 宿 根 ス イ ー ト ピ ー 挿 し 穂 を 用 い て , 異 な る 濃 度 の イ ン ド ー ル 酪 酸 溶 液 に 60 分 間 の 浸 漬 処 理 を し た と こ ろ ,16~ 40 ppm の 濃 度 で 発 根 が 良 い と 報 告 し た .西 尾・ 福 田 ( 1998) は , キ ク 挿 し 穂 に お い て , イ ン ド ー ル 酪 酸 溶 液 の 濃 度 , 処 理 部 位 お よ び 処 理 時 間 を 変 え て 発 根 に 対 す る 影 響 を 調 査 し た と こ ろ , イ ン ド ー ル 酪 酸 400 ppm 溶 液 の 切 り 口 浸 漬( 処 理 時 間 ; 15 秒 )あ る い は 噴 霧 処 理 で 良 い 成 績 が 得 ら れ た と 報 告 し た .こ の よ う に 挿 し 芽 繁 殖 で は , 挿 し 穂 か ら の 発 根 や 根 の 生 育 の 促 進 を 目 的 に イ ン ド ー ル 酪 酸 な ど の オ ー キ シ ン 処 理 が 行 わ れ る こ と が 多 い .