博士 ( 地球 環 境 科学 ) 佐 藤博 樹 学位 論 文題 名
A STUDY ON THE APPLICATION
OF CONTINGENT VALUATION X/IETHOD IN HOUSEHOLD SOLID WASTE DISPOSAL
(家庭 系一般廃 棄物処理 問題におけ る仮想市 場評価法 の適用に 関する研 究)
学位論文内容の要旨
仮想市場評価法(以下,CVM)は,環境の利用価値のみならず非利用価値をも貨幣単 位で評価でき,環境の価値を広範囲にわたり経済的に評価することができる。そのため,
1980年代以 降,CVM関連 の研究は アヌリカ を中心に世 界中で理 論面・実 証面から多 数行われてきた。しかし,わが国では,農林業が提供する公益的機能の経済評価を中心に,
1990年代からようやく研究が蓄積された。近年,わが国においても,湿原景観や公共 事業の経済評価などにも適用範囲が広がってきている。
他方,家庭系一般廃棄物(以下,家庭ゴミ)問題は,処理の有料化の実施,リサイクル 政策の推進などの社会的・経済的な取り組みが進んできているが,その深刻な状況に大き な改善は認められない。その原因は,生産から消費に至る経済システムヘ家庭ゴミ処理に 伴う費用負担を組み込むことが不十分であることによる。メーカーや流通部門では,費用 が転嫁されることがないため費用負担の認識は低い。また,わが国では家庭ゴミ処理は,
基本的な非市場的行政サービスとされているため,処理サービスに対する費用対便益の評 価は,他の市場的サービスと同じ視点からなされていない。そのため,家庭ゴミ処理サー ピスに伴う費用についての地域住民の認識も十分とはいえない。住民に処理費用の認識を 定着させるためには,費用と便益を比較評価し,その情報を基にして行政と住民間で継続 的に対話し,処理費用に対する住民の認識を深め,双方が果たす役割と責任を明確化する ことが不可欠である。
本研究は,以上の考察に基づいて,CVMが非市場的サービスを評価できる点に着目し て,費用対便益の視点から家庭ゴミ処理サービスの便益評価を行い,その費用と比較した。
また,その評価額を用いて,廃棄物処理施設建設計画に関する費用便益分析を行った。さ らに,家庭ゴミ処理サービスに対する支払意志額の決定に影響する要因分析を行った。
本研究で対象とした家庭ゴミ処理サービスの便益評価の場合,従来の仮想市場評価調査 の質問で採用されてきた支払意志額に関する支払形態を採用すると,回答者に「税の二重 負担」を想起させ,回答に際して戦略的バイアスの発生や抵抗回答の増加が懸念された。
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そこ で研究 の前半で は,回 答者への 支払意 志額の質問に際し,「税の二重負担」を回答者 に想 起させ ることを 回避し て,回答 者の明 確な判断を導くために,従来にない新たな支払 形態 として 「税払戻 し形態 」を考案 して, その理論モデルを提示し,モデルに基づくシナ リオ を作成 した。研 究の後 半では, 実際に 北見市と帯広市を研究対象として,上記シナリ オを 用いた 仮想市場 評価調 査を実施 した。 具体的には,北見市においては自家処理可能な 家庭 ゴミと して有機 性廃棄 物と焼却 しても 安全な廃棄物を,帯広市ではすでに家庭ゴミの 分別収集と焼却処理が実施されているため,自家処理可能な家庭ゴミとして有キ幾性廃棄物 を対 象とし た処理サ ービス の便益を 評価し た。なお,便益評価額の統計的推定には,デー タバ イアス の存在を チェッ クできる2変量 プ口ビ ット法を 適用し た。その 結果,北見市の デ ー タか ら は2段階2項 選択 法 の 適用 に 伴 い,1回 目の 提 示 額が2回 目の回 答を低く 導く 下方開始点バイア・スの存在が確認された。しかし帯広市のデータでは同様のバイアスの存 在は確認されなかった。
計 測の結果 ,北見市 においては,便益評価額が一世帯当たり年間約¥47,000であり,便 益が 処理費 用を年間 一世帯当たり約¥41,000上回っているという結果となった。したがっ て, 市民は 自家処理 するよ りも,現 在のゴ ミ処理サービスを望んでいることが判明した。
次に ,本研 究で得た 便益評 価額を基 に,北 見市が現在建設中の焼却施設建設計画に関して 費 用 便益 分 析 を行った 。実際に 北見市 が想定し た焼却 施設の耐 用予定 年数20年と 国から の借 入債務 に対する 返済利 子率4%を基に ,投資 額の現在 価値を 算出した 。その結果,妥 当 投 資 額 は 約161億 円で あ っ た 。実 際 の 投資 額 は 約94億 円で あ っ たこ と か ら, 焼 却 施 設建 設への 北見市の 投資は ,経済的 な側面 から判断すると,市民の表明した便益の評価範 囲内 に収ま っている ことが 分かった 。他方 ,帯広市における有機性廃棄物処理サービスに 関し ては, 一世帯当 たり年間約¥33,000の便益評価となった。この便益評価額を基に,北 見 市 での 耐 用 年 数20年 と債 務 返 済利 子 率4%を用 いて, 大規模堆 肥化施 設建設投 資の妥 当 目 途額 を 求 め ると 約139億 円 とな っ た 。これら の結果 は,将来 ,有機 性廃棄物 の大規 模 堆 肥化 施 設 の建設を 検討する 際や家 庭の有機 性廃棄 物の自家 処理推 進策とし て家庭に 対 し て電 気 式 コンポス ターの購 入補助 をする場 合に補 助額を決 定する 際などに 本研究の 便益 評価額 が有カな 参考値 となる。 また, 家庭ゴミ処理サービスに対する支払意志額の決 定に影響する要因として,「所得」「ゴミ減量化行動」「ゴミ問題への認識度」「住宅形態」
は有意であった。
以 上,本研 究は家庭 ゴミ処 理サービ スの便 益評価へ の「税 払戻しCVM」の提案と適用,
廃 棄 物処 理 施 設 建設 計 画 評価 へ の 費用 便 益分析の 適用を 通じて,CVMの 地域環境 計画に おける調査手法としての新たな有用性を明らかにした。
―1163→
学位論文審査の要旨
主査
教 授
山 村 悦夫 副査
教 授
甲 山 隆司
副査
教 授
加賀屋 誠一(大学 院工学研究 科)
学位論文題名
A STUDY ON THE APPLICATION OF CONTINGENT VALUATION h/IETHOD IN HOUSEHOLD SOLID WASTE DISPOSAL
(家庭系一般廃棄物処理問題における仮想市場評価法の適用に関する研究)
CVM
( 仮 想 市 場 評 価 法 ) は 、 環 境 の 価 値 を 広 範 囲 に わ た り 貨 幣 単 位 で 評 価 す る こ と が で き る 。 そ の た め 、
1980年 代 以 降 、
CVM関 連 の 研 究 は ア ヌ リ カ を 中 心 に 多 数 行 わ れ て き た 。 し か し 、 わ が 国 で は 、 農 林 業 の 公 益 的 機 能 の 経 済 評 価 を 中 心 に
1990年 代 か ら よ う や く 研 究 が 蓄 積 さ れ た 。 他 方 、 家 庭 ゴ ミ ( 家 庭 系 一 般 廃 棄 物 ) 問 題 は 、 リ サ イ ク ル 政 策 の 推 進 な ど の 社 会 的 ・ 経 済 的 な 取 り 組 み が 進 ん で き て い る が 、 そ の 深 刻 な 状 況 に 大 き な 改 善 は 認 め ら れ な い 。 わ が 国 に お い て 家 庭 ゴ ミ 処 理 は 、 基 本 的 に 非 市 場 的 行 政 サ ー ビ ス と さ れ て い る た め 、 処 理 サ ー ビ ス に 対 す る 費 用 対 便 益 の 評 価 は 、 他 の 市 場 的 サ ー ビ スと 同 じ視 点 から な され て い ない 。 その た め、
家 庭 ゴ ミ 処 理 サ ー ビ ス に 伴 う 費 用 に つ い て の 地 域 住 民 の 認 識 も 十 分 と は い え な い 。 住 民 に 処 理 費 用 の 認 識 を 定 着 さ せ る た め に は 、 ま ず 費 用 と 便 益 を 比 較 評 価 し 、 そ の 情 報 を 基 に し て 行 政 と 住 民 間 で 継 続 的 に 対 話 し 、 処 理 費 用 の 認 識 を 深 め 、 双 方 が 果 た す 役 割 と 責 任 を 明 確 化 す る こ と が 不 可 欠 で あ る 。 し か し 、 こ の 視 点 か ら 家 庭 ゴ ミ 処 理 サ ー ビ ス の 費 用 と 便 益 を 比 較 評 価 し た 研 究 は 、 こ れ ま で な さ れ て い な い 。