博 士 ( 理 学 ) 林 昭 次
学 位 論 文 題 名
Bone Histology of Thyreophoran Osteoderms
(装楯類における皮骨の骨組織)
学位論文内容の要旨
装楯 類 恐竜 が持 つ皮 骨は 脊 椎動物の長い歴史の 中で最も特異に進化したも ので,その進化と機能につい て100年 以上 もの 長 い問 議論 され てきた.本研究で は,装楯類における皮骨の骨 組織に着目し,以下の2点に 関 す る 研 究 を お こ な っ た : (1) Steg。 鉛w恥 の 皮 骨 の 成 長 と 機 能 (2) 装 楯 類 の 皮 骨 の 進 化
(1) StegD開眦.usの皮骨の成長と機能―現在の地球上において,|兜昭.Dsazロ.fロのように背中に大きな板状の皮 骨や尾に棘状の皮骨 を発達させた動物はいない, そのため,それらの機能については長い問議論されている.そ の皮骨の機能として ,背中の板を放熱板として体 温調節を行なった,ディス プレイとして用いた,尾の棘を武 器と して 用 いた とす る仮 説 が提 唱さ れて いるが,統一見解 は未だ得られていない,もし 体温調節で使われて いるのであれば体に 対する皮骨の成長率の差は少 ないはずである.逆に,その差が大きければ,体温調節以外の 機能 (デ ィ スプ レイや防御)の 可能性が考えられる,本研究 では,興なる成長段階8個体 のステゴサウルス標 本の体骨格と皮骨の 骨切片を作製し,その骨組織 の特徴から,それぞれの骨の相対的な成長速度を推定した.そ の後,それらを比較 することよって,体骨格に対 して皮骨がどのように成長するかを明らかにし,その機能を考 察した.
ステ ゴ サウ ルス は成 長 を通 じて ,体 骨格 ・ 皮骨 は4段階 の骨 組織の変化を示した. しかしながら,皮骨 にお ける 骨 組織 の変 化の タ イミ ング は, 体骨格における骨 組織の変化のタイミングより も遅れた,さらにい くっ かの 大 型の 標本 では , 体骨 格の 成長 が停止しているこ とを示す骨組織を示すにも関 わらず,皮骨はいま だ成長を続けている 骨組織を示した,これは,体 の成熟後,その皮骨の成長 率が体に対して大きくなるという ことを示唆している .そのため,皮骨の機能とし ては,放熱板として体温調節を行なった可能性は低く,むしろ ディスプレイや武器として用いた可能性が高いと考えられる.
(2)装楯 類の 皮骨 の進化―装楯類 は棍棒・棘・板状など,巨大 で特殊な形態の皮骨を持っ ことで特徴づけられ る恐 竜で あ る. 装楯 類恐 竜が 持 つ皮 骨は 脊椎動物の長い歴史 の中で最も特異に進化した もので,その進化過 程について注目されて いる.先行研究では,いく っかの種の皮骨を観察し,そ れの内部に多様性がみられると 報告 して い る, しか し, 様々 な 形態 の皮 骨を含めた装楯類全 体における皮骨の研究はこ れまで行なわれてい ない.
そこで,本研究で は,原始的な種から進化的 を種が持つ様々な形態の皮骨 の形態と内部構造の変化を,そ の 進 化 段 階 に 沿 っ て 観 察 す る こ と に よ っ て , 装 楯 類 が も つ 皮 骨 の 進 化 過 程 を 考 察 し た . 剣竜 類 は異 なる形態の皮骨( 板vs.棘)で内部構造が異な った.板は薄い緻密骨をも っといった点で原始 的 な 装 楯 類(Sce甜 ぬw尚の 皮骨 と 類似 した 構造 を持 つ .一 方, その 棘 は厚 い緻 密骨 をも っ とい った 点で 特 徴的であった.この構 造は剣竜類の棘にしか観察 されなかった.剣竜類の系統 内で,原始的な種から進化的な 種まで,その内部に多 様性は観察されなかった.
鎧竜 類 は異 なる 形態 の皮 骨 間( 小さ な皮骨vs.棘vs.棍 棒)の内部構造は類似した .鎧竜類の皮骨は豊 富な コラ ー ゲン 線維 を全 ての 形 態の 皮骨 にもつ点で特徴的で あった.これは,鎧竜類の 皮骨は類似した内部 構造を保ったまま,異 なる形態の皮骨に進化させ たことを示唆する,鎧竜類の系統内(アンキロサウルス科・ノ ド サ ウ ル ス 科 ・ ポ ラ カ ン ト ゥ ス 科 ) で の 多 様 性 は コ ラ ー ゲ ン 線 維 の 配 列 に お い て 観 察 さ れ た ,
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剣竜類は,その板の構造は原始的であるが,その棘は緻密骨を厚くし,内部を強化するという進化が見ら れた.一方、鎧竜類は,全ての形態の皮骨がコラ・ーゲン線維を獲得し,原始的な皮骨よりも内部構造を強化す るといった進化がみられた.これは,剣竜類の棘と鎧竜類の皮骨は別々の進化プロセスを経て,それぞれ効果 的な武器や鎧としての機能を進化させたことを示唆する.
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学位論文審査の要旨
主 査
教 授西
弘 嗣 副 査
教 授
鈴 木 徳 行副 査
助 教
小 林 快 次副 査
研 究 主 幹 真 鍋
真 ( 国 立 科 学 博 物 館 )
学 位 論 文 題 名
Bone Histology of Thyreophoran Osteoderms
( 装 楯 類 にお ける 皮 骨の 骨組 織)
装楯類恐竜が持つ皮骨は脊椎動物の長い歴史の中で最も特異に進化したもので,本研究で は , 装楯 類に おけ る皮 骨の 骨組 織に 着目 し, 以 下の
2点 に関 する 研究 をお こ なっ た.
川Stegosaurus の皮骨の機能
現在の地球上において,Stegosaurus のように背中に大きな板状の皮骨や尾に棘状の皮骨を 発達させた動物はいない.本研究では,異なる 成長段階8 個体のステゴサウルス標本の体骨 格と皮骨の骨切片を作製し,その骨組織の特微から,それぞれの骨の相対的な成長速度を推 定した.また,それらを比1113e することよって,体骨格に対して皮骨がどのように成長するか を明らかにし,その機能を考察した.その結果,ステゴサウルスは,成長を通じて,体骨格・
皮骨は
4段階の骨組 織の変化を示すことが明らかになった.しかし,皮骨における骨組織の 変化のタイミングは,体骨格における骨組織の変化のタイミングよりも遅れる.さらにいく っかの大型の標本では,体骨格の成長が停止していることを示す骨組織を示すにも関わらず,
皮骨はいまだ成長を統けている骨組織を示した.これは,体の成熟後,その皮骨の成長率が 体に対して大きくなるということを示唆している,そのため,皮骨の機能としては,放熱板 として体温調節を行なった可能性は低く,むしろディスプレイや武器として用いた可能性が 高いと考えられる,
(2 )装楯類の皮骨の進化
装楯類は,棍棒・棘・板状など,巨大で特殊な形態の皮骨を持つことで特徴づけられる恐 竜である.本研究では,原始的な種から進化的な種が持つ様々な形態の皮骨の形態と内部構 造の変化を,その進化段階に沿って観察することによって,装楯類がもつ皮骨の進化過程を 考察した.
剣竜類は,異なる形態の皮骨I 板vs. 棘)で内部構造が異なり,その板は薄い緻密骨をもつ といった点で原始的な装楯類(Scelidosaurus) の皮骨と類似した構造を持つ,一方,その棘は 厚い緻密骨をもつ.これに対して ,鎧竜類は異なる形態の皮骨間(小さな皮骨vs. 棘
vs.棍 棒)の内部構造は類似し,その皮骨は豊富なコラーゲン線維をもつ.すなわち,剣竜類には,
その板の構造は原始的であるが,その棘は緻密骨を厚くし,内部を強化するという進化がみ られ,鎧竜類には,全ての形態の皮骨がコラーゲン線維を獲得し,原始的な皮骨よりも内部 構造を強化するといった進化がみられた.これは,剣竜類の棘と鎧竜類の皮骨は別々の進化 プロセスを経て,それぞれ効果的 な武器や鎧としての機能を進化させたことを示唆する.
これを要するに,著者は,恐竜類のうち装楯類の皮骨の骨組織についての新知見を得
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たものであり,古生物学に対して貢献するところ大なるものがある.よって著者は,北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る ,
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