学 位 論 文 題 名
博 士 ( 工 学 ) 住 吉 幸 彦
社会資本整備における技術開発と 研究マネージメントに関する研究
学位論文内容の要旨
明治政府は国家の近代化を図るため、国カの増 強の基盤として鉄道、道路等の交通輸送 施設や治水等の国土保全施設など社会資本整備を 推進した。戦後わが国は壊滅的な状態か ら再び国土の建設を図る必要があったが、自然災 害への対応、大規模ダムの建設、道路網 整備の推進、青函トンネルや本州四国連絡橋など の大規模プ口ジェクトヘの取組みなど、
社会資本整備は著しく進展した。明治期゛外国人 技術者を多数招聘して欧米の先進土木技 術の導入を図り、それらの技術は海外留学帰りの 日本人技術者を中心としてわが国の国土 にあった技術へと改良された。戦後、わが国土木 技術は再び大型機械化工法等欧米先進技 術を導入して発展し、現在は世界の最高水準に達 してし、る。
本 論文 の第1の目 的は、近代日 本における経済社会の発展と社会資本整備の関係を探る とともに土木技術の発展とその要因を明らかにす るものである。
わが国は、山地部は急峻で崩壊性地形が卓越し 、平地部は沖積地で軟弱な地盤が多く、
台風、豪雨や地震等による自然災害を受け易く、 かつ人口稠密で都市化が進展し、社会関 係も複雑である。このような自然条件や社会環境 を克服する技術は相当高度に発展し成熟 したものが求められる。また合理的、経済的かつ安全な事業の推進は、六や・技術は勿論の こと、周辺技術や関連産業の発展に支えられてい る。内務省土ボ試欺,iは戦後建設省発足 とともに土木研究所となったが、広範な分野の基 礎研究や応用研究を実施し、わが国土木 技術の研究開発の中枢の位置を占めてきた。
本 論文 の第2の目 的は、土木技 術の発展を鋼橋建設技術と耐震技術の具体的分野および 土木研究所の活動を分析することによってより深 く考究するものである。また、これらの 技術や組織の課題を探るとともに、将来を展望す るものである。
開発途上国の社会資本整備の現状は、望ましぃ 経済成長や安全、快適な生活環境の面か らみても不充分であり、今後の社会資本整備の推進は極めて重要な政策課題と考えられる。
また、開発途上国の社会資本整備技術の現状も不 満足なものであり、今後わが図技術の移 転が一層必要とされよう。技術の移転は、受入国 の自然条件や社会、経済の発展段階、制 度や慣習および社会資本の整備状況によってその 進展は興なるが、究極的には受入国の自 然資源や人材を活用し、各種、各段階の技術のニ ーズに対応可能な研究開発の技術移転を 図ることが重要であると考えられる。
本 論文 の第3の目 的は、アジア 諸国を例として、社会資本整備の現状および建設技術の 移転の課題を採るとともに、研究開発に関する国際協カの方向を明らかにすることである。
本論文は、このような目的のもとで一述の研究を 行い、その結果を取りまとめたもので、
全9章から構成されて いる。
第1章 は 、 序 論 で あ り 、 研 究 の 目 的 、 内 容お よび 論文 の 構成 につ いて 述べ てい る。
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第2章では、明治以降現在た至る近代日本の経済社会の発展と社会資本整備の関係を詳 しく分析するとともに社会資本整備の役割を明らかにする。
第3章では、社会資本整備技術の発展と土木教育の推移および社会資本整備に関わる法 制 度 等 に つ い て 述 べ る と と も に 土 木 技 術 発 展 の 要 因 に っ い て 分 析 す る 。 第4章では、鋼橋建設技術について発展の経緯および技術発展を可能とした主要な技術・
施 策 に つ い て 詳 し く 分 析 する と と もに 、 現 在の 課 題を 探 り 、将 来 を展 望 す る。
第5章では、耐震技術の発展の経緯、わが国独自技術の展開にっいて述べるとともに、
今後の耐震技術の発展の方向を明らかにする。
第6章では、土木研究所における時代区分毎の経済社会のニーズと代表的な研究を詳細 に 分析 す ると と も に、 今 後の 経 済 社会 の 動向 と土木 研究所の あり方を 展望する 。 第7章では、アジア諸国の社会資本整備の現状を分析するとともに、建設技術の現状や 技術移転の実態を分析する。その結果、技術移転をすすめる上での基本的視点にっいて提 案する。
第8章では、アジア地域土木研究所長等会議における討議内容等にっいて述べるととも に、社 会資本整備 技術の研 究開発に っいて分 析し、将 来の研究 協カの方向を示す。
第9章は結諭であり、本論文の総括を行なう。
以 上 の 一 連 の 研 究 の 結 果か ら 得ら れ た 結論 を まと め る と次 の とお り で ある 。
(1)近代日本においては経済の発展及び社会の動きに応じて、投資の重点を移行させな がらも、比較的計画的に社会資本投資が行われてきたことが判った。明治期における顕箸 な技術発展の要因としては、外国人技術者の招聘、高等工学教育の開設・充実、海外留学 生の派遣など技術移転を図るための総合的かつ積極的な国家政策が採られ、これが成功し たためと考えられる。戦後の土木技術の急発展の要因としては、政府の計画的な事業の実 施、大型プロジェクトに関する産、官、孥の連携による研究開発体制の確立、関連産業を 含めた民間企業の高度な技術カの蓄積及び大学等における土木工学教育の充実・発展によ るものである。また各事業毎に、基本法、財源、実施主体に関する法令や長期、5カ年計 画など、社会資本整備推進のための法制度も着実に整備されてきた。以上のように、近代 日本に おける一連 の社会資 本整備シ ステムの 実体を本 研究にお いて明らかにした。
(2)わが国の鋼橋建設技術は、製鉄、機械、造船、電算機等の関連産業の技術の進展に も支えられて戦後著しく発展したこと、厳しい自然条件や社会条件を克服するため、耐風、
耐震、基礎構造、海洋での架設工法などの研究開発が不可欠であったことおよび本州四国 連絡橋の建設がわが国鋼橋建設技術の発展に大きな役割を果したことなどを明らかにした。
関束大震災後、水平震度法の採用等わが国では世界に先がけて耐震設計を社会資本整備に 適用したが、それ以来被害地震の度ごとに耐震構造に関する研究開発が進むとともに、わ が国独自技術の開発も多く、わが国の耐震技術の発展は先駆的研究開発の成果であること を明らかにした。各時代のニーズの変遷と土木研究所における研究開発の取組み、課題と の関係にっいて詳細に分析し、継続的研究開発の実施が土木技術の発展に重要であること を明らかにした。
わが国の技術が著しく発展したことから、今後の技術開発は外国の模倣でない独自技術 の形成と世界への貢献が重要であること、内外ともに変動する経済社会において社会資本 整備に関する要請も急激に変りつっあり、特定分野の技術であっても、組繊であっても、
過去の栄光に埋没することなく、時代の変化を正しく見極め、課題に柔軟に対応できるよ うなマネジメン卜の確立が重要であることを明らかにした。
(3)道路、鉄道、水質保全・下水道、防災のアジア諸国の社会資本整備の現状を分析し た結果、社会資本整備は不充分で経済成長の足かせとなっており、かつ水質汚濁等の環境 問題を惹起し、毎年のように自然災害を受けていること、経済の発展、国民生活の向上の ため今後益々社会資本整備が必要であることを明らかにした。建設技術の移転については、
アセアン諸国における技術移転実態調査とわが国の技術協カの成功例とされているプ口ジェ クトタイプ協カの実態を詳細に考究し、その結果建設技術の移転を進める上での基本的視
点につい 土木研 し、アジ 結果地震 ルと技術 式を適用 等会議は ことを明
提案した。
所の企画、主催によるアジア地域土木研究所長等会議における討議内容を分析 地域における社会資本整備技術の研究開発と技術移転について考究した。その 害、洪水災害、土砂災害の各対策技術について、アジア諸国の災害のポテンシ 研究)水準等の関係を分析し、共同研究、技術指導、センタ一協カによる各方 て研究開発における技術移転を図る方向を提案した。アジア地域土木研究所長 アジア地域における社会資本整備の発展に対し、今後益々重要な位置を占める かにした。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
社会資本整備における技術開発と 研究マネージメントに関する研究
明 治期、 わが国は 外国人 技術者を 多数招聘 して欧米の先進土木技術の導入を図り、それ ら の技術 は海外留 学生の日 本人技 術者を中 心として国土にあった技術へと改良された。戦 後 、わが 国の土木 技術は再 び大型 機械化工 法等の欧米先進技術を導入して発展し、現在は 世界の最高水準に達している。
本 論文の 第1の 目的は、 近代日 本におけ る経済 社会の発 展と社 会資本整 備の関係を採る と ともに 土木技術 の発展と その要 因を明ら かにするものである。わが国は、山地部は急峻 で 崩壊性 地形が卓 越し、平 地部は 沖積地で 軟弱な地盤が多く、台風、豪雨や地震等による 自 然災害 を受け易 く、かつ 人口稠 密で都市 化が進展し、社会関係も複雑である。このよう な 自然条 件や社会 環境を克 服する 技術は相 当高度に発展し、成熟したものが求められる。
ま た合理 的、経済 的かつ安 全な土 木事業の 推進は、本体技術は勿論のこと、周辺技術や関 連産業の発展に支えられている。
本 論文の 第2の 目的は、 土木技 術の発展 を鋼橋 建設技術 と耐震 技術の具 体的分野および 土木研究所の活動を分析することによってより深く考究するものである。また、これらの・
技 術や組 織の課題 を採ると ともに 、将来展 望を行った。開発途上国の社会資本整備の現状 は 、望ま しい経済 成長や安 全、快 適な生活 環境の而からみても不充分でありく今後の社会 資本整備の推進は極めて重要な政策課題と考えられる。
本 論文の 第3の 目的は、 アジア 諦国を例 として 、社会資 本整備 の現状お よび建設技術の 移転の課題を探るとともに、研究I網発に関する国際協カの方向を明らかにすることである。
本論文はこのような目的のもとで一述の研究を行い、その結果を取りまとめたものであり、
全9章から構成されている。
第1章 は 、序 論 で あり 、 研 究の 目 的 、 内容 お よ び論 文 の 構成 に つ いて 述 べ てい る 。 第2章 では、明 治以降、 現在に 至る近代 日本の 経済社会 の発展 と社会資 本整備の関係を 詳 しく分 析した。 すなわち 、近代 日本にお いては経済の発展及び社会の動きに応じて、投 資 の重点 を移行さ せながらも、t計画的に社会資本投資が行われてきたことが判った。明治 期 におけ る顕箸な 技術発展 の要因 としては 、外国人技術者の招聘、高等工学教育機関の開 設 ・充実 、海外留 学生の派 遣など 技術移転 を図るための総合的かつ積極的な国家政策が採 られ、これが成功したためと考えられる。
第3章 では、社 会資本整 備技術 の発展と 土木教 育の推移 および 社会資本 整備に関わる法
一
浩
博
二
馨
昭
祐
藤
伯
古
山
佐
佐
森
石
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
剛
副
副
制度 等に っい て述 べるとともに、土木技術発展の要因について 分析した。戦後の土木技術 の急発展の要因としては、政府の計画的 な事業の実施、大型プ口ジェクトに関する産、官、
学の 連携 によ る研 究開発体制の確立、関連産業を含めた民間企 業の高度な技術カの蓄積及 び大学等における土木工学教育の充実・ 発展によるものである。
第4章では 、鋼橋建設技術につk、て発 展の経緯および技術発展を可能とした主要な技術・
施 策 に っ い て 詳 し く 分 析 す る と と も に 、 現 在 の 課 題 を 探 り 、 将 来 を 展 望 し た 。 第5章で は、 耐震 技術 の発 展の 経緯 、わ が国独自技術の展開 にっいて述べるとともに、
今後 の耐 震技 術の 発展の方向を示した。わが国の鋼橋建設技術 は、製鉄、機械、造船、電 算機 等の 関連 産業 の技術の進展にも支えられて戦後著しく発展 したこと、厳しい自然条件 や社 会条 件を 克服 するため、耐風、耐震、基礎構造、海洋での 架設工法などの研究開発が 不可 欠で あっ たこ と、および本州四国連絡橋の建設がわが国鋼 橋建設技術の発展に大きな 役割を果したことなどを明らかにした。
第6章で は、 土木 研究 所に おけ る時 代区 分毎の経済社会のニ ーズと代表的な研究を詳細 に分 析す ると とも に、今後の経済社会の動向と土木研究所のあ り方を展望した。関束大震 災後 、水 平震 度法 の採用などわが国では世界に先がけて耐震設 計を導入した。それ以来、
被害 地震 の度 ごと に耐震構造に関する研穿開発が進むとともに 、独自技術の開発も多く、
わが 国の 耐震 技術 の発展は先駆的研究開発の成果であることを 明らかにした。さらに各時 代の ニー ズの 変遷 と土木研究所における研究開発の取組み、課 題との関係について詳細に 分 析 し 、 継 続 的 研 究 開 発 の 実 施 が 土 木技 術の 発展 に重 要で あ るこ とを 明ら かに した 。 第7章で は、 アジ ア諸 国の 社会 資本 整備 の現状を分析すると ともに、建設技術の現状や 技術 移転 の実 態を 分析した。技術移転をすすめる上での基本的 視点について提案した。道 路、 鉄道 、水 質保 全・下水道、防災施設のアジア諸国の社会資 本整備の現状を分析した結 果、 社会 資本 整備 は不充分で経済成長の足かせとなっており、 かつ水質汚濁等の環境問題 を惹 起し 、毎 年の ように自然災害を受けていること、経済の発 展、国民生活の向上のため 今後 益々 社会 資本 整備 が 必要 であ るこ とを 明らかにした。建設技術の移転については、A SEAN諸国 にお ける 技術 移 転実 態調 査と わが 国の 技術 協カ の成 功例 とさ れているプロジェ クト タイ プ協 カの 実態を詳細に考察し、建設技術の移転を進め る上での基本的視点につい て提案した。
第8章で は、 アジ ア地 域土 木研 究所 長等 会議における討議内 容等について述べるととも に、 社会 資本 整備 技術の研究開発について分析し、将来の研究 協カの方向を示した。アジ ア地域における社会資本整備技術の研究 開発と技術移転について分析した結果、地震災害、
みlミ水災害 、土砂災害の各対策技術について、アジア諸国の災害のポテンシャルと技術(研 究) 水準 等の 関係 を明らかにし、共同研究、技術指導、センク ー協カによる各方式を適用 して研究開発における技術移転を図る方 向を提案した。
第9章は結 諭であり、本論文の総括を行なった。
以上、本研究は社会資本整備における 技術I溜発の歴史を取りまと め、研究マネジメント や国際技術交流について有益な知見を獲 得し、いくっかの優れた捉言を行ったものである。
こ れを 要す るに 、著者は、わが国の社会資本整備システムや 土木技術の発展の実態を考 究し 、今 後の 土木 技術の発展の方向及び開発途上国に対する研 究開発の技術移転方策にー っの提案を行い、社会資本整備における 研究開発マネージメント上有益な新知見を獲得し、
有用 な幾 っか の優 れた提言をした。この成果は、土木計画学の 進歩に寄与すること大なる ものがある。
よ って 著者 は、 北海 道 大学 博士 (工 学) の学 位を 授与 され る資 格あ るものと認める。
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