要旨
日本語にはオノマトペが約 4500 語が存在すると言われている。日本語のオノマトペは、動 物の鳴き声や自然の音を描写するだけではなく、気持ち・状態・感覚・動きなど多種多様な経 験を表すためにも使用されている。しかし、他言語への翻訳や、指示対象との関係を理解する ことの難しさによって、日本語のように豊かなオノマトペのシステムを持たないスペイン語の ような言語の母語話者にとっては新しい概念であり、学ぶのは容易なことではない。それにも 関わらず、日本語の授業においては、オノマトペが口語に属するものであり、それらの学習が 当たり前であるという思い込みがあるため、オノマトペの指導は十分に重視されていない。こ うした状況から、学習者は独学や日常のやりとりを通じてオノマトペを習わざるを得ないこと になる。
本研究は、スペイン語を母語とする中・上級レベルの日本語学習者が持つオノマトペに関す る認識、受けてきたオノマトペの指導に対する意見、またオノマトペの知識の深さを調べるこ とを目的とし、調査を行うこととした。また上記の第3の要因については、日本での居住期間、
日本語の受講時間、日本語の一般語彙の知識という3つの要因とどのような関係があるかを分 析することとした。そのために、スペイン語母語の中級以上の日本語学習者32名を協力者とし て、インタビュー、オノマトペの語彙連想のテスト、および語彙知識の多肢選択テストから成 る、調査セッションを行った。調査の結果としては、協力者が日本語のオノマトペとそれらの 様々な働きに関して、高い認識を持っているということがわかった。また、学習者の受けた日 本語の授業におけるオノマトペの指導については、協力者は不十分であると考えており、さら にそれによって多数の協力者の実生活でコミュニケーション上の問題が起こることがあるとい うことがわかった。協力者のオノマトペ知識の深さに関しては、まずオノマトペの語彙連想テ ストで測定し、オノマトペ対象語の使用頻度と有意に関連していることが明らかになった。ま た、オノマトペ知識の深さを日本での居住期間、日本語の受講時間、日本語の一般語彙の知識 との関連を統計的に分析したところ、協力者が持つ一般語彙の知識と有意な相関関係があるこ とが確認できた。日本での居住期間および日本国内の受講時間各々との関連には有意傾向がみ られた。
本研究の調査を通じて、教室外・内における学習者の経験に基づく、オノマトペの指導の現 状がより明確になるデータが得られた。とりわけ、日本語のオノマトペは他種の語彙にはない 独自性を持ち、スペイン語母語話者にとって学びにくい語群であるということがわかった。ま た、日本語のオノマトペは授業における指導の機会は少なく、その指導に対して学習者は不十 分であると考えていることも明らかになった。さらに、日本語のオノマトペは教室外の様々な 場面で学習者に遭遇し、その知識の不足によって、学習者の日常生活においてコミュニケーシ ョン上の問題が起こることがあるということもわかった。したがって、スペイン語のような言 語の母語話者を対象とする日本語の授業におけるオノマトペの指導の重視が再考され、教室内 だけではなく教室外の接触でもオノマトペの学習を促すツールが提供される必要があると考え る。