移動体通信用FET増幅器に関する研究
著者 高木 直
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 18
ページ 185‑187
発行年 1997‑03‑29
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1233
氏名・
(本籍
)高
木
直
(千葉県
)学 位 の種 類
博
士 (工 学
)学 位 記番 号
工博乙第
63号
学位授与の日付
平 成 7年 9月 28日 学位授与の要件
学位規則第 4条 第 2項 該当
学位論文題目
移動体通信用
FE丁増幅器に関する研究
論文審査委員
(委
員長)教 授 水 品 静 夫 教 授 池 田 弘 明
教 授 岡 村 静 致 教 授 篠 原 茂 信 教 授 渡 辺 健 蔵
論 文 内 容 の 要 旨
本論文は、筆者の三菱電機において行った移動体通信用Π]T増幅器に関する研究結果をまとめたもの である。
l章では、 まず、近年の移動体通信の送信機 に使用 される
FEW幅
器 に対する課題 として、高出力 化、高安定化、高効率化、低 ひずみ化、高周波化があることを述べ る。つ ぎに、これ らの課題に対 し て回路設計の観点から筆者が行 った研究内容の概要 を述べる。2章では、高出力FET増幅器 に関 して述べ る。
FEW幅
器の高出力化 を回路的に達成するためには、増幅器内の単位田 Tの 出力を効率良 く引 き出す電力合成技術が重要 となる。電力合成技術 として、ここ ではΠ
「
素子 を複数の単位田Tと接続用伝送線路 とで表わした解析モデルによりΠ]T素子のゲー ト幅を 決定する方法、お よび複数のFET素子 を並列動作 させ出力を合成する回路 として1/4波長線路 を用いて 構成 され インピーダンス変成器の機能 を兼ね備 えた電力分配
/合
成 回路 を提案す る。 これを用いた 4GHz帯チ ップ合成形内部整合FET増幅器 を試作 して、3.5〜4.2G]眩の帯域において名dBm以
上の出力を 達成 した。 また、28G】陀帯モノリシック電力合成形Πr増
幅器を試作 して、28G】貶帯で世界に先駆けて 29dBm以上の出力を達成 した。3章では、並列動作Π
「
増幅器の高安定化に関 して述べる。高出力ΠヨT増 幅器では、一般 に複数のΠ]T 素子 を並列動作 させその出力 を合成することにより高出力化を図る。Π翼素子 を並列動作 させる場合、
各ΠⅡ素子 とこれを接続する電力分配
/合
成回路 とか ら成るループの存在により、ループ発振や入力電 力(周波数り を増大 した時に1/2おの電力の発生に伴 う不連続動作が生 じることがある。増幅器の設計で はこのような現象を防止することが重要である。ここでは、並列動作FETH幅
器 におけるこれらの不安‑185‑
定動作のメカニズムを明 らかにし、発生する条件式 を導出するとともに、実際の回路 においてこれ ら の現象の発生条件および発生する周波数 を計算する方法 を提案する。試作モデルについての計算結果 は実験結果 と良 く対応 してお り、本解析法の妥当性が確かめ られた。
4章では、高効率FET増幅器に関 して述べる。田 鰐 幅器の高効率化 を回路的に達成する手法 として F級 動作がある。 しか し、F級動作では、全ての偶数次高調波に対する負荷 インピーダンスを短絡、 ま た、全ての奇数次高調波に対する負荷 インピーダンスを開放 とする必要があ り、実現が困難 となる間 題がある。ここでは、2次高調波 までを最適に終端 した高効率増幅器の設計法 として、
C倍
波注入ロー ドプル法および基本波 ロー ドプル法 を組み合わせることによる最適な負荷 インピーダンスの設定法、②集中定数回路素子 を用いた2倍波並列共振回路 と短い位相調整線路 とで構成 される小形な高調波処理 回路、③ ドライバ段 を含めた多段増幅器の効率を最大 とする各増幅段のFETゲー ト幅の決定法について 述べ、高効率
FEW幅
器の設計法を提案する。ur帯
モノリシック椴 田 愕 幅器の設計 に適用 した結 果、飽和出力31dBm、 最大 ドレイン効率63%の
優れた性能が得 られた。5章では、低ひずみ
FETe幅
器に関 して述べる。多数キヤリアを共通増幅 したときの増幅器の相互変 調ひずみ特性 は、従来、単一信号で測定 された増幅器の振幅 0位 相特性 を多項式で近似 してひずみ成 分 を求めることにより解析 されていた。 しか し、広いダイナ ミックレンジで高精度に計算するために は、多項式の項数 を大 きくする必要があ り、解析が複雑 になる問題があつた。ここでは、フー リエ変 換 に基づ き解析する新 しいひずみ解析法 を提案する。 この方法は、一信号で測定 された振幅お よび位 相特性の測定結果をそのまま用い、また、周波数領域で与えられた複数キヤリアからなる信号 を逆 フー リエ変換 により時間領域の信号に変換することにより、IM(hじr MOdulation)やNPR(Noisc PowerRttio) を高精度 に算出する。試作増幅器のひずみ特性の計算 に適用 した結果、計算値 と測定値 とは良 く一致し、この解析法の有効性が確かめられた。
6章 では、 ミリ波高出力・高利得
FETe幅
器に関 して述べる。 ミリ波帯ではΠⅡ素子の利得が低い問 題がある。ここでは、 ミリ波帯の高出力FEW幅
器の高利得化に有効なTandem一FETを提案する。これ は短い伝送線路 を介 して直結 された駆動IFETセ
ルと出力段FETセルか ら成 り、 ミリ波帯 において も高 利得が得 られ、かつ、広帯域な性能が得 られる特長がある。4個のTandem一]田Tと電力分配/合
成回路 を半導体基板上に一体構成 したモノリシック高出力増幅器 を試作 し、37GHz帯で小信号利得4.5dB、 飽 和出力27.3dBmの 性能を得た。7章 では、2章 か ら6章 までのまとめ と今後の課題 について述べ る。
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論 文 審 査 結 果 の 要 旨
本論文 はマイクロ波用電界効果 トランジス タ(FET)に 関する研究成果 を纏めた もので、7章 か ら成 る。第1章は序論で、マイクロ波を用いた移動体通信の需要動向、移動体通信装置 に不可欠な
FETe幅
器 に対す る技術的課題、及び研究の動機 について述べている。第2章 では
FEW幅
器の出力電力増大技 術 を論 じている。単位Πrセ
ルn個を半導体チ ップ上で並列接続 して1素子当た りの出力電力の増大 をは かる。 さらに、Π打素子2m個 をm段
の電力分配/合
成器 を使 って並列動作 させ出力電力の増大 をはか る。筆者は、nとmの最適組み合わせ(n=4,m=2)の
決定法を確立 し、 また、インピーダンス変換機能 を持つ電力分配/合
成器 を開発 し、4GHz帯で飽和出力弔dBm、 電力付加効率42%、 28G】陀帯で非直線 歪みldBに おける電力利得30dBm(lW)、 飽和出力1.5W、 付随電力利得7.7dB、 電力付加効率4.3%を 達 成 した。第3章では、並列動作FEW幅
器の動作安定化技術 を論 じている。Π「
と電力分配
/合
成器は 閉ループを形成 し、入力信号電力(周波数お)を増大 した時fO/2で発振することがある。その機構 を解 明、防止法 を開発 し、実際の設計に適用 した。第4章 では、FEW幅
器の電力効率向上技術 を論 じてい る。電池で長時間の通信 を可能にするために、電力増幅器の電力効率の向上が要求 される。2倍波注入 ロー ドプル法を使い、出力回路 インピーダンスを基本波 と2次高調波に対 して最適化する方法を開発 し た。O.8GHz帯 増幅器に適用 し、飽和出力31dBm、 最大 ドレイン効率63%を実現 した。第5章 では、Π 増幅器の歪み低減技術 を論 じている。複数チ ヤンネルの信号(搬送波)を同時に増幅する時、増幅器の「 歪みは搬送波間の混信の原因となる。従来は、2搬送波間の混変調歪み(IM)を 評価パラメータとして議 論 されて きたが、搬送波数が多い場合 には不十分である。筆者は、フーリエ変換/逆
変換 を用い、雑 音電力比 (NPR)を 評価パラメータとする新 しい手法を提案 し、多数の搬送波間の混信 と歪みの関係 を明 らかにした。この手法は、人工衛星搭載用固体素子電力増幅器の設計 に適用 されている。第6章では、ミリ波帯の高利得・高出力増幅器の設計法について論 じている。 ミリ波帯ではFETの電力利得・出力電 力が低下 し、また、電力分配
/合
成器の損失が増大する。その対策 として筆者は、短い伝送線路 を介 して2個 のΠFを
従属接続 した構造 を考案 し、37GHzで電力利得4.5dB、 飽和出力電力27.3dBmを 実現 し、将来の ミリ波パーソナル通信用電力増幅器 に対する展望を開いた。本論文の成果は、移動体通信用Π
「
に限 らず、広 くマイクロ波・ ミリ波帯Π]T電力増幅器に関する技 術の進歩 に貢献するものであ り、博士(工学)の学位 を授与するに十分であると認定する。
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