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(1)

Chapter 1

制御対象と状態空間モデル

線形制御理論は状態空間モデルをベースとして構築された理論であ る。したがって,それに基づいて制御系を設計しようとする場合,

与えられた制御対象の特性を表現する状態空間モデルの導出を最 初に行う必要がある。本章では,本書を通して例として使用する制 御対象

(

磁気浮上系,倒立振子系,柔軟ビーム振動系

)

に対して,そ れらの制御目的を明らかにするとともに状態空間モデルの導出を 行う。

1.1 磁気浮上系

電磁石に電流を流すことにより鉄球を引きつけることができる。これは重力に勝る力を 電磁石が発生しているからである。もし,重力にちょうど一致する力を電磁石が発生できた とすれば,鉄球を空中に浮上させることが可能となるはずである。このことを実現するの 磁気浮上系

(magnetic levitation system)

である。したがって,磁気浮上系の制御目的は

『電磁石に与える電流を制御して鉄球を安定に空中に浮上させること』

といえる。それでは,この磁気浮上系の特性を支配する運動方程式

(

以下,支配方程式

)

求めてみよう。

1:1

に磁気浮上系の概念図を示すが,鉄球に作用する力の釣り合いより次式が得ら れる。

M ° z ñ = M g Ä f

ただし,鉄球は上下方向のみに運動するものとし,その運動によって発生する空気の粘性 抵抗力は十分に小さいものとして無視している。また,

f

は電磁石が発生する磁力である が,ここでは

{ 1.1 {

(2)

i

f

Mg z

電磁石

鉄玉

_

1.1

磁気浮上系

f = Q 2

i 2 (ñ z + Z 0 ) 2

で与えられるものとする。式中

z ñ

は鉄球と電磁石との距離,

i

は電磁石に流す電流であり,

Q; Z 0

は物理定数である。以上より磁気浮上系に対する支配方程式は,

° ñ

z = g Ä Q 2M

i 2

(ñ z + Z 0 ) 2 (1:1)

となる。これは非線形微分方程式

(non-linear diãerential equation)

であるが,本書は線形制 御理論

(linear control theory)

に関するものであるため,上式に対して線形化

(linearization)

を施して 線形微分方程式

(linear diãerential equation)

に近似する。

線形化の基本的な考え方は,制御対象の動作範囲が 平衡状態

(equilibrium state)

周りの 微小な領域内であると仮定することである。式

(1:1)

に対して線形化を具体的に行うため に,鉄球が

z ñ = Z equ

地点に静止している状態を仮想してみる。静止しているということ は,鉄球に作用する力が釣り合い状態にある,すなわち

Mg = f

であることを意味する。

このように,制御対象が静止状態にあることを平衡状態と呼ぶ。平衡状態を実現するため に必要な電流

i = I equ (

平衡電流

)

は簡単な計算から

I equ =

s 2M g

Q (Z equ + Z 0 ) (1:2)

で与えられる。

次に,電流

i

が平衡電流

I equ

からわずかに変動

i )

した場合を考える。このとき,鉄 球に作用する力も変動するため,鉄球が平衡位置

Z equ

からわずかに変動

z )

する。これ らの変動を

i = I equ + Å i ; z ñ = Z equ + Å z

(3)

1.1.

磁気浮上系

{ 1.3 {

とする。この関係を式

(1:1)

に代入すると

d 2

dt 2 (Z equ + Å z ) = g Ä Q 2M

(I equ + Å i ) 2

(Z equ + Å z + Z 0 ) 2 (1:3)

を得る。上式の右辺第2項に対して

Taylor

展開の公式y を適用すると次式を得る。

Q 2M

(I equ + Å i ) 2

(Z equ + Å z + Z 0 ) 2 = Q

2M (Z equ + Z 0 ) 2 (I equ 2 Ä 2I equ 2

Z equ + Z 0 Å z + 2I equ Å i + ÅÅÅ )

上式中,

ÅÅÅ

の部分は,

Å z ; Å i

に関する

2

次以上の高次のべき項を表している。ここで,

ÅÅÅ

の部分が無視できる程度に平衡状態からの変動

Å z ; Å i

が微小であると仮定する。すな わち,

Q 2M

(I equ + Å i ) 2

(Z equ + Å z + Z 0 ) 2 ô Q

2M (Z equ + Z 0 ) 2 (I equ 2 Ä 2I equ 2

Z equ + Z 0 Å z + 2I equ Å i )

この結果を式

(1:3)

に代入後,

Z equ

が定数であることと式

(1:2)

の関係を利用すると次の線 形微分方程式を得る。

°

z Ä ãz = åu (1:4)

ここで,

z = Å z (= ñ z Ä Z equ ); u = Å i (= i Ä I equ )

であり,

ã = QI equ 2

M (Z equ + Z 0 ) 3 (> 0); å= Ä QI equ

M(Z equ + Z 0 ) 2 (< 0)

以上のように,非線形微分方程式を線形微分方程式で近似することを線形化と呼ぶ。これ はちょうどなめらかな曲線が,ある点近傍を考えると直線で近似できることに相当する

(

1:2

参照

)

次に,得られた線形微分方程式

(1:4)

を少し解析してみよう。いま,

u = 0

すなわち電磁 石に平衡電流を流し続けた場合

(i = I equ )

を考える。このときの鉄球の時間応答は,微分 方程式を解くことによって

z = C 1 e

p

ãt + C 2 e

Äp

ãt (1:5)

で与えられる。ここで

C 1 ; C 2

は初期条件によって決まる定数である。たとえば,初期条 件を

z(0) = 0; z(0) = 0 _

とすると,明らかに

C 1 = C 2 = 0

すなわち,任意の時刻において

z = 0

となる。これは鉄球を正確に平衡状態におくと鉄球はその位置に浮上し続けること を意味している。浮上させるという目的からいえば,これでいいのではと思うかもしれな いが,磁気浮上系に対する制御目的は,『安定に浮上させること』にある。安定性について の定義は

2

章で明らかにするが,簡単にいえば,少しずれていても必ず平衡状態に戻るこ

y

f (x + Å

x

) = f (x) + f

0

(x)Å

x

+ f

00

(x)

2! Å

2x

+ ÅÅÅ

(4)

y

y 0

x0 x

y 0 ~ ~ df

dx x=x 0 0) y = f(x)

y - ( x - x

1.2

直線近似

とを保証しなければならない。少しずれているということは,初期条件が

0

でないことに 対応する。この場合,一般に

C 1 6 = 0; C 2 6 = 0

となる。ところが

ã

は正の実数値をもつの で,指数関数の性質から時間の経過とともに

z

が大きくなる。これは平衡状態から離れて いくことを意味する。

この解析では,

u = 0

としたが,次章以降で述べる線形制御理論を利用して適切に

u

与えることができれば,少しのずれに対しても鉄球が平衡状態に戻ることを保証すること が可能となる。

1.2 倒立振子系

z M

f L

θ

:振子の質量

:振子の重心まわりの       慣性モーメント

:回転軸から重心までの距離

:台車の質量

:台車の位置

:振子の角度

:粘性抵抗係数

m

J L M z

θ µ

DCサーボモータ

1.3

倒立振子系

(5)

1.2.

倒立振子系

{ 1.5 {

倒立振子系

(inverted pendulum system)

は,手の上に棒

(

以下,振子

)

を立てる子供の遊 びに対する物理モデルと考えることができる。図

1:3

にその概念図を示す。図中,台車が 手に相当し,台車を駆動する

DC

サーボモータが筋肉に相当する。また目に相当するのが 角度センサで,ここでは台車上の振子の角度と台車の位置を計測するものとする

(

これらを 計測する必要性は

4

章で明らかとなる

)

。振子を立てるという本質をなくすことなくこの制 御問題を簡単化するために,振子は鉛直平面内で回転運動だけできるように制約されてい るものとする。倒立振子系に対する制御目的は,

DC

サーボモータを適切に駆動することにより振子を安定に倒立させ ること』

である。

この系に対して,磁気浮上系の場合と同様に支配方程式を導出しよう。ここでは,ラグ ランジュの方程式

(Lagrange's equation)

を利用する。図

1:3

に示す記号を利用すると,振 子の重心位置

(p z ; p y )

p z = z + L sin í; p y = L cos í

で与えられる。これより,振子の運動エネルギは

m

2 ( _ p 2 z + _ p 2 y ) + J 2 í _ 2

となる。第

1

項目は並進運動,第

2

項目は回転運動に対するエネルギである。一方,台車の 運動エネルギは

M z _ 2 =2

であるので,これらを総和した系全体の運動エネルギ

T

は次式で 与えられるy

T = M

2 z _ 2 + m

2 (( _ z + L í _ cos í ) 2 + ( Ä L í _ sin í ) 2 ) + J

2 í _ 2 (1:6)

また,位置エネルギ

U

U = mgL cos í (1:7)

で,台車と振子の運動に対する粘性による散逸エネルギ

F

F = ñ z

2 z _ 2 + ñ í

2 í _ 2 (1:8)

で与えられる。

ラグランジュ法は,これらの系内のエネルギに対して,

d dt

"

@T

@ q _ i

#

Ä @T

@q i + @F

@ q _ i + @U

@q i = ú i (i = 1; ÅÅÅ ; m) (1:9)

y

d

dt sin í= dí dt d

dí sin í= _ í cos í; d

dt cos í= dí dt d

dí cos í= Ä í _ sin í

(6)

により系の支配方程式を導出する方法である。ここで,

q i

一般化座標

(generalized coor- dinate)

で,

ú i

一般化力

(generalized force)

である。

倒立振子系に対しては,一般化座標ならびに一般化力が

q 1 = z; q 2 = í; ú 1 = f; ú 2 = 0

で与えられることから,式

(1:6) ò (1:8)

のエネルギを式

(1:9)

に代入することにより

(M + m)° z + mL cos í í ° Ä mL í _ 2 sin í + ñ z z _ = f

mL cos í° z + (J + mL 2 )° í Ä mgL sin í+ ñ í í= 0 _ (1:10)

を得る。なお,導出過程は省略するので,各自確認してもらいたい。倒立振子系の場合に は,振子の傾き角

í

に依存して支配方程式中に非線形特性が現れる。

ここで,式

(1:10)

の構造を少し検討する。第

1

式は台車に関する運動方程式であるが,台 車に力

f

が作用することにより加速度

z °

が生じる。それが第

2

式の左辺第

1

項目

mL cos í z °

を通して振子に回転トルクとして伝達される。このとき

cos í

が関係していることに注意 してほしい。もし振子が水平の状態にあるとき,すなわち

í= ô=2

のときこの項は

0

とな り,台車がどのように動いても振子には回転トルクは伝わらない。これは直感的にも理解 できることである。このように,倒立振子系は振子の傾き角

í

によって台車からのトルク の伝達特性が大きく変化する特性をもつ。

次に,磁気浮上系のときと同じ考え方で線形化を行う。

まず,平衡状態を求める。平衡状態は系全体が静止状態にあることを意味するので,台 車の位置

z

ならびに振子の角度

í

に関する微分項をすべて

0

とおく。これを式

(1:10)

代入すると,

sin í= 0; f = 0 (1:11)

を得る。これより,倒立振子系の平衡状態は,振子が直立している場合

(í= 0)

と真下にぶ ら下がっている場合

(í= ô )

であることがわかる。台車に与える力

f

はともに

0

である。

しかし,制御目的が振子を直立させることであるので,当然議論の対象となる平衡状態は

í= 0

である。

次に平衡状態

(í= 0; f = 0)

からの微小変動を考える。つまり,

í= Å í ; f = Å f sin í

ならびに

cos í

Taylor

展開が

sin í= í+ í 3

3! + ÅÅÅ ; cos í= 1 + í 2

2! + ÅÅÅ

であることから,

í= Å í

が微小である場合,

sin Å í ô Å í ; cos Å í ô 1

(7)

1.3.

柔軟ビーム振動系

{ 1.7 {

と線形近似できる。また,振子の角度

í

が微小なだけではなく,その角速度

í _

も微小であ ると仮定すると

í _ 2

の項を無視することができる。これらを式

(1:10)

に代入した後,改め

Å í ! í; Å f ! f

とおくと,次式に示す線形微分方程式を得る。

(M + m)° z + mL í+ ° ñ z z _ = f

mL° z + (J + mL 2 )° í Ä mgLí + ñ í í= 0 _ (1:12)

ところで,第

1

式中には角加速度

í °

の項が含まれている。これは振子の動きが台車に影 響を及ぼすことを意味している。しかし,実際の倒立振子系においては,台車には駆動用

DC

サーボモータが取り付けられており,振子が動いた程度では台車は実質影響を受け ないと考えてよい。また,本書で対象とする倒立振子系では,

DC

サーボモータは速度制御 系を構成したサーボモジュールによって駆動される。そのことを考慮して,ここでは,台 車系に対する微分方程式が

°

z + ê z _ = òu (1:13)

で与えられるものとするy。式中

u

はサーボモジュールに与える電圧指令である。

以上より,倒立振子系に対する支配方程式は

°

z + ê z _ = òu

mL° z + (J + mL 2 )° í Ä mgLí + ñ í í= 0 _ (1:14)

となる。

1.3 柔軟ビーム振動系

近年,構造物の大型化に伴い,その柔軟性が高まる傾向にある。そのため何らかの原因 によりそれら構造物内に発生した振動を制御する必要性が高まりつつある。長大橋や超高 層ビルなどがその代表的な例であろう。また,大型の宇宙構造物やロボットアームに対し ても同様に振動制御の必要性がある。本節では,柔軟構造物の最も単純な物理モデルとし て,両端単純支持はり

(

以下,柔軟ビーム

)

をとりあげ,それに対する支配方程式の導出を 行う。制御対象の概略を図

1:4

に示す。制御目的は,

『何らかの原因により柔軟ビーム中に発生した弾性振動をアクティブに 制御すること』

である。その目的を達成するために,柔軟ビームのある地点

(x = x s )

に取り付けた歪ゲー ジにより振動を検出し,それに基づいて柔軟ビームのある地点

(x = x a )

に適切に操作力

f

を加えるというフィードバック構成とする。なお,操作力としては,装置外部に取り付け た電磁石と柔軟ビーム側に取り付けた永久磁石間に発生する磁力を利用するものとする。

y速度制御系を構成した

DC

サーボモータに対して,サーボモジュールに与える電圧指令から

DC

サーボ モータ回転角速度までの伝達特性は

ò=(s + ê )

で与えられる。したがって,電圧指令から回転角までの伝達 特性は

ò=s(s + ê )

で与えられ,これを逆ラプラス変換すると式

(1:13)

を得る。

(8)

x x a x s

f(t)

歪ゲージ

1.4

柔軟ビーム概念図

いま,柔軟ビームが曲げ振動をしているときの時刻

t

,位置

x

における変位を

y d (x; t)

すると,自由振動に対する支配方程式と境界条件は,

EI @ 4 y d

@x 4 + m@ 2 y d

@t 2 = 0 y d (0; t) = y d (L; t) = 0; @ 2 y d

@x 2

å å å å

x=0 = @ 2 y d

@x 2

å å å å

x=L = 0

(1:15)

で与えられる。使用している記号は以下のとおりである。

m :

柔軟ビームの単位長さあたりの質量

L :

柔軟ビームの長さ

E :

ヤング率

I :

断面

2

次モーメント この偏微分方程式の解は次式で与えられる。

y d (x; t) = X

1

i=1

' i (t) sin iôx

L (1:16)

上式は,柔軟ビームに発生した振動が

sin(iôx=L) (

以下では

i

次振動モードと呼ぶ

)

の無限 和として表されることを意味している。

次に,外部から力

F (x; t)

が作用した場合を考える。

EI @ 4 y d

@x 4 + m @ 2 y d

@t 2 = F (x; t) (1:17)

上式に式

(1:16)

を代入すると

X

1

i=1

(m ' ° i + EI i 4 ô 4

L 4 ' i ) sin iôx

L = F (x; t)

が得られる。上式の両辺に

sin(jôx=L)

を掛け,区間

[0; L]

上で積分すると,

(m ' ° i + EI i 4 ô 4 L 4 ' i ) L

2 =

Z L

0 F (x; t) sin iôx

L dx (1:18)

(9)

1.4.

状態空間モデル

{ 1.9 {

となる。なお,導出過程で次の関係を利用している。

Z L

0 sin iôx

L sin jôx L dx =

8 >

<

> :

L 2 (i = j) 0 (i 6 = j)

ここでは,柔軟ビームに加える力

F (x; t)

は,点

x = x a

f (t)

として加えられる,すな わち

F (x; t) = f(t)é (x Ä x a )

であると考えるので,これを式

(1:18)

に代入すると,

mL

2 ' ° i + EIi 4 ô 4

2L 3 ' i = sin iôx a L f (t)

を得る。以上の議論では,粘性摩擦等のエネルギ散逸は考慮しなかったが,実際には構造 減衰等が必ず存在するので,それを考慮すると最終的に次式が得られる。

^

a i ' ° i + ^ b i ' _ i + ^ c i ' i = ^ d i f (i = 1; 2; ÅÅÅ ) (1:19)

ここで,

^

a i = mL

2 ; ^ b i = 2ê i p

^ a i ^ c i

^

c i = EIi 4 ô 4

2L 3 ; d ^ i = sin iôx a L

磁気浮上系や倒立振子系と大きく異なるのは,柔軟ビーム振動系の支配方程式の本数が 無限個あるという点である。

1.4 状態空間モデル

前節までで各系に対して導出した線形微分方程式を以下に列挙する。

1.1

節 磁気浮上系

°

z Ä ãz = åu (1:20)

1.2

節 倒立振子系

°

z + ê z _ = òu

mL° z + (J + mL 2 )° í Ä mgLí + ñ í í= 0 _ (1:21)

1.3

節 柔軟ビーム振動系

(10)

^

a i ' ° i + ^ b i ' _ i + ^ c i ' i = ^ d i f (i = 1; 2; ÅÅÅ ) (1:22)

制御理論の役割は,このようにして得られた微分方程式をベースにして,制御目的を達 成する制御器を合理的に設計することにある。しかし,得られた微分方程式はそれぞれ異 なる構造をもつ

(

微分方程式の階数や連立する微分方程式の本数が異なる

)

ため,このまま では一般的な理論を構築することは困難である。そこで,状態量

(state variable)

を導入し て,扱いやすい構造への変換を試みる。

まず,磁気浮上系であるが,状態量

x

x =

2 4 z

_ z

3 5

と定義する。このベクトルを時間で微分すると

_ x =

2 4 z _

° z

3 5

となるが,上式の第

2

要素に磁気浮上系の支配方程式

(1:20)

を代入すると

_

x =

2 4 z _

ãz + åu

3 5 =

2 4 0 1

ã 0

3 5 x +

2 4 0

å

3 5 u

を得る。ここで,

A =

2 4 0 1

ã 0

3 5 ; b =

2 4 0

å

3

5 (1:23)

とおくと,次式を得る。

_

x = Ax + bu (1:24)

次に,倒立振子系について考える。倒立振子系の場合は,

2

階線形微分方程式が

2

本連立 していることから,状態量

x

x =

2 66 66 64

z í

_ z í _

3 77 77 75

と定義する。これに対して,磁気浮上系と同様に,状態量の微分

x _

に対して支配方程式

(1:21)

を代入すると,式

(1:24)

と全く同じ構造の微分方程式が得られる。ただし,行列

A; b

は次式に示すとおりである。

(11)

1.4.

状態空間モデル

{ 1.11 {

A =

2 66 66 64

0 0 1 0

0 0 0 1

0 0 Ä ê 0

0 p 1 g p 1 ê Ä p 2

3 77 77 75 ; b =

2 66 66 64

0 0 ò Ä p 1 ò

3 77 77

75 (1:25)

p 1 = mL

J + mL 2 ; p 2 = ñ í J + mL 2

柔軟ビーム振動系の場合についても同様で,状態量

x = [x T 1 x T 2 ÅÅÅ ] T (x i = [' i ' _ i ] T )

に対して,行列

A; b

は次式で与えられる。

A = diag f A 1 ; A 2 ; ÅÅÅg ; b =

2 66 64

b 1 b 2

...

3

77 75 (1:26)

ここで,

A i =

2

4 0 1

Ä ^ c i =^ a i Ä ^ b i =^ a i

3

5 ; b i =

2

4 0

d ^ i =^ a i

3 5

であり,

u = f

とする。また,

diag f g

は引数を対角要素

(

行列

)

としてもつ対角行列を意 味する。

以上からもわかるように,制御対象に対して導出した支配方程式の複雑さに依存して状 態量

x

の次元や行列

A; b

の大きさが異なるが,必ず式

(1:24)

に変換できることがわかる。

(1:24)

を系の内部状態を表しているという意味で 状態方程式

(state equation)

と呼ぶ。

また,状態方程式中,

u

操作量

(manipulated variable)

と呼ぶ。

ところで,本書で扱うのはフィードバック制御であり,操作量

u

を現在の制御対象の状 態からいかに作り出せばよいのかについて議論する。その際に,制御対象内の状態量

x

うちでセンサを利用して何を手に入れることができるのかを記述する必要がある。なぜな ら,計測できないものを利用して良好な特性をもつ制御が行えたとしてもそれは非現実的 であるためである。

たとえば,磁気浮上系を考えてみよう。これに対する状態量

x

x =

2 4 z

_ z

3 5

で与えられることはすでに述べたとおりであるが,直接検出できる物理量は,通常,鉄玉 の位置,すなわち

z

である。したがって,観測できる量

y

は,

(12)

y = [1 0]x

で与えることができる。

倒立振子系の場合は,台車の位置

z

ならびに振子の角度

í

をポテンショメータやエン コーダなどの角度センサを利用して計測することになるので,

y =

2

4 1 0 0 0 0 1 0 0

3 5 x

となる。

柔軟ビーム振動系では,観測量が

x = x s

における柔軟ビームの歪であることから,柔 軟ビームの厚さを

h

とすると観測方程式は

y = X

1

i=1

h 2 @ 2

@x 2 sin( iôx L )

å å å å

x=x

s

' i (t)

= [c 1 c 2 ÅÅÅ ]x

(1:27)

ここで,

c i = [ Ä h 2 ( iô

L ) 2 sin( iôx s L ) 0]

で与えられる。

以上からもわかるように,一般に,観測できる量は状態量

x

すべてではなく,その一部 である。このことは,

y = Cx (1:28)

という代数方程式で表現することができるy。これを 観測方程式

(output equation)

と呼ぶ。

(1:24)

(1:28)

を併せた

_

x = Ax + Bu

y = Cx (1:29)

状態空間モデル

(state space model)

と呼ぶ。一般的に,状態量

x

n

次元縦ベクトル,操 作量

u

r

(r

次元縦ベクトル

)

,観測量

y

m

(m

次元縦ベクトル

)

の場合,

A 2 R nÇn

B 2 R nÇr

C 2 R mÇn

となるz。以下ではそれぞれを システム行列

(system matrix)

,入 力行列

(input matrix)

,観測行列

(output matrix)

と呼ぶ。特に,磁気浮上系,倒立振子系,

柔軟ビーム振動系のように操作量

u

1

つである場合,

1

入力系

(single input system)

y

y = Cx + Du

のように直達項

Du

を考慮するのがより一般的な表現であるが,物理系の多くは直達項を もたないために,本書では主に式

(1:28)

を対象とする。

z

R

nは,要素が実数である

n Ç n

次元行列の集合を意味する。このことから,

A 2 R

nÇn は行列

A

n

次元実正方行列であることを意味する。

(13)

1.5.

数値例

{ 1.13 {

呼び,入力行列

B

は縦ベクトルとなる。そのことを強調する場合には,大文字の

B

では なく小文字の

b

を使用する。観測行列

C

についても同様である。また,状態量

x

の次元 に対応して,式

(1:29)

n

次系と呼ぶ。磁気浮上系は

2

次系,倒立振子系は

4

次系,柔軟 ビーム振動系は無限次系である。

もし,式

(1:29)

に対する特性解析や制御系設計法が確立すれば,この状態空間モデルで

記述されるすべての系に対してそれらを適用することが可能となる。モデルに基づく制御 系設計法ということで,このような手法をモデルベースド制御系設計

(model based control

system synthesis)

と呼ぶ。次章以降では式

(1:29)

に対する解析ならびに制御器設計法につ

いて議論する。

1.5 数値例

最後に,本章で導出した各系の状態空間モデル中に含まれる物理パラメータ値の具体例 を与えておこう。

1.5.1

磁気浮上系

1.5

磁気浮上系実験装置

1:5

の実験装置に対して同定したパラメータ値を表

1:1

に示す。

これらを用いて状態空間モデルを計算すると,

_ x =

2

4 0 1

2360 0

3 5 x +

2

4 0

Ä 9:67

3 5 u y = [1 0]x

(1:30)

を得る。

(14)

1.1

磁気浮上系の物理パラメータ値

M 0.36 [kg]

鉄球の質量

Z equ 0.005 [m]

平衡位置

I equ 2.03 [A]

平衡電流

Q 1.19 Ç 10

Ä4

[Hm]

定数

Z 0 3.32 Ç 10

Ä3

[m]

定数

1.5.2

倒立振子系

1.6

倒立振子実験装置

1:6

の実験装置に対して同定したパラメータ値を表

1:2

に示す。

1.2

倒立振子系の物理パラメータ値

m 0:023 [kg]

振子の質量

J 3:20 Ç 10

Ä4

[kgm 2 ]

重心回りの慣性モーメント

L 0:2 [m]

重心までの距離

ñ í 2:74 Ç 10

Ä5

[Ns=m]

粘性抵抗係数

ê 240

台車系の物理定数

ò 90

台車系の物理定数

これらを用いて状態空間モデルを計算すると,

(15)

1.5.

数値例

{ 1.15 {

_ x =

2 66 66 64

0 0 1 0

0 0 0 1

0 0 Ä 240 0

0 36:39 890:3 Ä 0:022

3 77 77 75 x +

2 66 66 64

0 0 90 Ä 333:87

3 77 77 75 u y =

2

4 1 0 0 0 0 1 0 0

3 5 x

(1:31)

を得る。

1.5.3

柔軟ビーム振動系

無限個の振動モードの重ね合わせで柔軟ビームの特性が与えられることに対応して,状 態量

x

は無限次元となる。しかし,その状態空間モデルに対して実際に制御系の設計を行 う場合,設計が困難となるだけではなく,たとえ希望する特性をもつ制御器を設計できた としても今度はそれを実装する際に問題が生じるおそれがある。そこで,低次振動モード のみ

(

具体的には

1 ò 3

次振動モードまで

)

を考慮したものを柔軟ビーム振動系に対する状 態空間モデルであると仮定する。無視した

4

次以上の高次振動モードに対する取り扱いに ついては,

6

章と

7

章で議論する。

1.7

柔軟ビーム振動系実験装置

1:7

の実験装置に対して同定したパラメータ値を表

1:3

に示す。

ところで,実験装置では,電磁石から力を受けるために永久磁石を取り付けてあるが,そ れが共振周波数に影響を与える。また,それ以外にも共振周波数に影響を及ぼす複数の要 因が考えられる。したがって,それらの補正を目的として,各振動モードごとに単位長さ あたりの質量

m

に対して補正係数を掛け,実験装置の周波数特性に適合させる。若干の試 行錯誤の結果,得られた

3

次モードまでの各補正係数

m ^ i

を以下に示す。

^

m 1 = 1; m ^ 2 = 1:1; m ^ 3 = 1:25

(16)

1.3

柔軟ビーム振動系の物理パラメータ値

L 1.8 [m]

柔軟ビームの長さ

m 0.2421 [kg=m]

単位長さあたりの質量

h 0.003 [m]

厚さ

EI 5.063 [Nm 2 ] E Ç I

ê 1 0.05

粘性抵抗係数

(1

次モード

)

ê 2 0.008

粘性抵抗係数

(2

次モード

)

ê 3 0.006

粘性抵抗係数

(3

次モード

)

x a L/4 [m]

アクチュエータの位置

x s L/4 [m]

センサの位置

本制御対象において,制御器からの操作量

(

指令電圧

)

は電磁石を介して柔軟ビームに対 する力となる。また,歪ゲージとアンプを通して電圧信号として歪に関する情報が制御器 に取り込まれる。そのため,対象の見方によっては,これらの変換ゲインを考慮する必要 がある。以下では,制御対象を電磁石

(

より正確には電磁石を駆動するアンプ

)

への指令電 圧から歪ゲージのアンプ出力電圧までとみなすので,入力行列

b

に対して

0:078[N=V ]

倍,

観測行列

c

に対して

1=(20 Ç 10

Ä

6 )[1=V ]

倍したものを使用する。

以上の数値を用いて

3

次モードまでを考慮した状態空間モデルを計算すると次式が得ら れる。

2 66 4

_ x 1

_ x 2

_ x 3

3

77 5 = diag f A 1 ; A 2 ; A 3 g

2 66 4

x 1 x 2 x 3

3 77 5 +

2 66 4

b 1 b 2 b 3

3 77 5 u y = [c 1 c 2 c 3 ]

2 66 4

x 1

x 2

x 3

3 77 5

(1:32)

ここで,

A 1 =

2

4 0 1

Ä 194:0 Ä 1:393

3

5 b 1 =

2

4 0

0:2531

3 5

c 1 = [ Ä 161:6 0]

A 2 =

2

4 0 1

Ä 2:822 Ç 10 3 Ä 0:8500

3

5 b 2 =

2

4 0

0:3254

3 5

c 2 = [ Ä 913:9 0]

(17)

1.5.

数値例

{ 1.17 {

A 3 =

2

4 0 1

Ä 1:257 Ç 10 4 Ä 1:346

3

5 b 3 =

2

4 0

0:2025

3 5

c 3 = [ Ä 1:454 Ç 10 3 0]

1:8

は周波数応答実験によって得られた柔軟ビームの入出力ゲイン特性と式

(1:32)

状態空間モデルに対するゲイン特性を描いたものであるが,

3

次振動モードまでに対して は両者がよく一致していることがわかる。

0 20 40 60 80 100

-60 -40 -20 0 20

Freq.[Hz]

1st 2nd

3rd 5th 6th 7th

設計用モデル

Gain[dB]

1.8

柔軟ビーム周波数特性

また,図

1:9

はインパルス応答の実験結果を示している。

(a)

がスパン柔軟ビームのほぼ 中央にインパルス状の入力を与えた場合で,

1

次と

3

次振動モードが支配的に現れている。

一方,

(b)

1=4

地点にインパルス状の入力を与えた場合で,

2

次振動モードが支配的に現 れている。いずれにしても本系は減衰の悪い対象であることがわかる。したがって,発生 した振動の減衰を高めることがこの場合の制御目的となる。

(18)

0 1 2 3 4 -5

0

Time[sec]

0 1 2 3 4

-5 0 5

Time[sec]

(a)

(b) Resp.[V]

Resp.[V]

1.9

柔軟ビームインパルス応答

演 習 問 題

1-1

1:10

に示す

1

自由度振動系に対して支配方程式を求めた後,状態空間モデルを導出 せよ。なお,質点の運動は上下方向のみに拘束されているものとし,バネならびにダ ンパはいずれも理想的な特性をもつものと仮定する。また,質点に作用する力

f

操作量

u

とし,観測量

y

は質点の位置

z

とする。

µ

f z

k

M

1.10 1

自由度振動系

1-2

1:11

に示す水槽系に対して液面の特性に対する支配方程式を求めよ。その際に,容 器から流れ出る水の流量

q o

はベルヌーイの定理より,液面の高さの平方根に比例す

{ 1.18 {

(19)

(q o = ã p

h)

ものとする。次に,得られた支配方程式を適当な平衡状態回りで線形 化せよ。なお,容器の断面積

C

は高さ方向に一定とする。また,操作量

u

は容器へ 流れ込む水の流量

q i

で,観測量

y

は液面の高さ

h

とする。

qi

h C

qo

1.11

水槽系

さらにその結果を利用して,図

1:12

に示す水槽系に対して状態空間モデルを求めよ。

各容器の断面積

C 1 ; C 2 ; C 3

は高さ方向に一定とする。また,操作量

u

は第1水槽に 流れ込む水の流量

q i

で,観測量

y

は第3タンクの液面の高さ

h 3

とする。

qi

h1 C1

h2 C2 C3

h3 qo1

qo3

1.12

複合水槽系

1-3

(1:10)

を導出せよ。

1-4

次式に基づいて

sin í ô í

の近似度

è

を調べよ。また

è

が約

5[%]

となる角度

í

を求 めよ。

{ 1.19 {

(20)

è = å å å í

å å å

同様のことを

cos í ô 1

についても調べよ。

1-5

1:13

に示す倒立振子系に対して状態空間モデルを導出せよ。なお,操作量

u

は台 車を駆動する力

f

とし,観測量

y

は台車の位置

z

ならびに各振子の角度

í 1 ; í 2

する。

Pend1

Pend2

1.13

並列型倒立振子系

1-6

以下に示す線形微分方程式と指定した状態量

x

ならびに観測量

y

に対して状態空間モ デルを求めよ。なお,式中

z (n)

z

t

に関する

n

階微分を意味する。

(1) z (4) + a 3 z (3) + a 2 z ° + a 1 z _ + a 0 z = u

状態量

: x = [z z _ z z ° (3) ] T

観測量

: y = z (2) ° z Ä ãz = åu

状態量

: x = [z + 1 p ã z z _ Ä p 1 ã z] _ T

観測量

: y = z

1-7

柔軟ビームにおける

1 ò 4

次振動モードを図示せよ。

{ 1.20 {

表 1.1 磁気浮上系の物理パラメータ値 M 0.36 [kg] 鉄球の質量 Z equ 0.005 [m] 平衡位置 I equ 2.03 [A] 平衡電流 Q 1.19 Ç 10 Ä4 [Hm] 定数 Z 0 3.32 Ç 10 Ä3 [m] 定数 1.5.2 倒立振子系 図 1.6 倒立振子実験装置 図 1:6 の実験装置に対して同定したパラメータ値を表 1:2 に示す。 表 1.2 倒立振子系の物理パラメータ値 m 0:023 [kg] 振子の質量 J 3:20 Ç 10 Ä4 [kgm 2 ] 重
表 1.3 柔軟ビーム振動系の物理パラメータ値 L 1.8 [m] 柔軟ビームの長さ m 0.2421 [kg=m] 単位長さあたりの質量 h 0.003 [m] 厚さ EI 5.063 [Nm 2 ] E Ç I ê 1 0.05 粘性抵抗係数 (1 次モード ) ê 2 0.008 粘性抵抗係数 (2 次モード ) ê 3 0.006 粘性抵抗係数 (3 次モード ) x a L/4 [m] アクチュエータの位置 x s L/4 [m] センサの位置 本制御対象において,制御器からの操作量 ( 指令電圧

参照

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