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名作再読、拾い読み(₄₃) 名作再読、拾い読み(₄₃) 『ガラスの街』

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Academic year: 2021

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図書館員の文献紹介と      資料の活用

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 ポール・オースター (Paul Auster, 1₉₄₇ ~) は ニュージャージー州ニューアーク生まれのアメ リカ人作家です。1₉₇₀年にコロンビア大学で英 文学と比較文学のMA を取得し、大学院卒業後 は、石油タンカーの乗組員になり、その後フラ ンスで₄年間過ごします。帰国後は翻訳や雑誌の 編集をしながら詩や探偵小説を書いたりしてい ましたが、1₉₈₂年に『孤独の発明』 を発表して作 家として認められました。その後、発表した『ガ ラスの街』(1₉₈₅) はベストセラーになり、続く

₂作品『幽霊たち』、『鍵のかかった部屋』(1₉₈6)

と併せて「ニューヨーク三部作」と呼ばれてい ます。比較的速いペースで作品が発表されてお り、『最後の物たちの国で』(1₉₈₇)、『消失 ポー ル・オースター詩集』(1₉₈₈)、『ムーン・パレス』

(1₉₈₉)、『偶然の音楽』(1₉₉₀)、『リヴァイアサン』

(1₉₉₂)、『空腹の技法』(1₉₉₂)、『ミスター・ヴァー ティゴ』(1₉₉₄)、『ティンブクトゥ』(1₉₉₉)、『幻 影の書』(₂₀₀₂) などがリストアップされていま す。

 今回は『ガラスの街』を紹介します。大都会 の中の孤独感を感じさせる印象深い小説です。

(あらすじ)

 ウィリアム・ウィルソンというペンネームを 持つミステリー作家ダニエル・クインのところ へ真夜中に3晩続けて間違い電話が掛かってき ます。切羽詰まった男の声で助けて欲しいとい う内容の電話に、相手の掛け間違えたポール・

オースターという探偵のふりをして依頼を引き 受けることにしました。依頼主のピーターは父 親によって₉年間も暗闇に閉じ込められて育てら れ、言葉を自由に操ることができません。彼の 妻ヴァージニアの説明によれば、父親のスティ ルマンが精神病院から解放されて戻ってくるこ とになっているが、息子に危害を与える恐れが あるので父親の動きを探り、毎日報告して欲し いと言う内容でした。

 クインは言語学の教授だったスティルマンの 著作を図書館で調べます。ヘンリー・ダークの 論文に言及し、人間の堕落が言語の堕落を伴っ たので、エデンの園で話されていた原初の言語

に戻せば、人間の堕落も元に戻せること、また、

アメリカには新しきバベルの塔を建てる正当性 があるという内容を扱っていました。教授が₂週 間毎日ホテルを出てから散歩する道筋を図示し たところ、バベルの塔を表す文字であることが 分かります。それ以上の進展が無いので、クイ ンは教授と直接会って話をすることにしました。

最初はクインという本名で、₂回目はヘンリー・

ダーク、3回目はピーター・スティルマンと名乗 ります。₂回目に会った時、教授はヘンリー・ダー クは自分の創造した架空の人物だと言い、イニ シャルのH. D. は『鏡の国のアリス』に登場する ハンプティー・ダンプティを意味していると言 います。塀から落ちた彼を誰も元通りにできな いが、その努力をすることが人間の義務だと言 うのです。3回目に話をした翌日に、教授は行方 不明になりました。クインはポール・オースター 探偵事務所を電話帳で調べ、個人名で見付かっ た彼の家を訪問してそれまでの経過を話します。

作家であるオースターはクインの話を理解して くれ、ドン・キホーテ論を執筆中であることを 打ち明けます。セルバンテスがシーデ・ハメーテ・

ペネンヘーリによってアラビア語で書かれた原 稿を自分が見付けてスペイン語に翻訳させたと 説明していることを論じるものでした。

 その後、クインは依頼主と連絡がつかなくな り、教授がスティルマン家に姿を現すかどうか 数か月間見張りを続けているうちに浮浪者同然 の姿になります。そして最後は意外な展開にな るのですが、これは実際に読んだ方が面白く感 じられるでしょう。

 言葉が実際の事物や人間から乖離しているこ とを扱った小説に思えますが、興味深い話題に 溢れた味わい深い小説です。

参考文献

1. Paul Auster “City of glass” in “The New York trilogy

(Faber and Faber, ₂₀₁₁)

2. ポール・オースター著、柴田元幸訳 『ガラスの街』(新 潮社、₂₀₀₉)

おざわ ふみひこ(図書館参与)

名作再読、拾い読み(₄₃)

名作再読、拾い読み(₄₃)

『ガラスの街』 “The city of glass” 小澤文彦

参照

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