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被災後の独居者の健康影響

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Academic year: 2021

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厚生労働行政推進調査事業費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)

分担研究報告書

被災後の独居者の健康影響

研究分担者 辻 一郎 東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野・教授

研究要旨

被災生活における独居者の特徴を把握することを目的として、被災者健康調査の結果を集計、検討し た。「同居あり」群と比べ、「同居なし(独居)」群は、女性、75 歳以上の高齢者の割合が高く、食事の 摂取に偏りがあり、生活も不活発な傾向であることが示された。今後も、自治体と協力して被災者健康 調査を継続し、被災地域住民の健康づくりを支援する体制を整えていく必要がある。

研究協力者

菅原 由美 東北大学大学院公衆衛生学分野 遠又 靖丈 同 公衆衛生学分野

渡邉 崇 同 公衆衛生学分野 海法 悠 同 公衆衛生学分野 丹治 史也 同 公衆衛生学分野

A.研究目的

東日本大震災の被災地域では、被災生活の長期 化に伴い、独りで被災生活を行なっている者(独 居者)の健康影響が懸念されている。本研究では、

独居者の特徴を把握することを目的として被災 者健康調査の結果を集計、検討した。

B.研究方法

1.調査対象地区と対象者

本調査における調査対象地区と対象者につい ては本報告書の「被災者健康調査の実施と分析」

で詳述したので、ここでは省略する。

本研究では、石巻市2地区(雄勝・牡鹿)と仙 台市若林区で 2015 年7月から9月に実施した被 災者健康調査に参加した 2,952 名の対象者を「同 居あり」と「同居なし(独居)」群に分け、生活 環境と心身の健康状態について集計した。

2.調査項目

被災者健康調査のうち、本研究で分析した調査 項目(アンケート票調査項目)は以下の通りであ る。

・性、年齢

・居住区分(現在の居住場所)

・食事の摂取状況(1日1回以上食べている)8 食品(ごはん・パン・麺など、肉、魚・貝など、

卵、豆腐・納豆など、野菜、くだもの、牛乳・

ヨーグルト・チーズなど)の摂取状況

・喫煙、飲酒習慣

・睡眠状況(アテネ不眠尺度)

WHO「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」

が作成した8項目の不眠症判定尺度(各0~3 点、最大 24 点)、6 点 以 上 で 「 睡 眠 障 害 を 疑 う 」 と 評 価 さ れ る 。

・心理的苦痛(K6)

ケスラーらによって開発された6項目からな る心理的苦痛の測定指標。(各0~4点、最大 20 点、10 点 以 上 で「 心理的苦痛が高い」と 評 価 さ れ る 。

・活動状況

「体を使うような仕事」「1日あたりの平均歩 行時間」

3.倫理面への配慮

本調査研究は、東北大学大学院医学系研究科倫 理審査委員会の承認のもとにおこなわれている。

被災者健康調査時に文書・口頭などで説明し、同 意を得ている。

C.研究結果

1.性、年齢(図1、図2)

対象者 2,952 名のうち、「同居あり」群は 87%、

「同居なし(独居)」群は 13%であった。また、

性別割合は「同居あり」群は男性 47%、女性 53%、

「同居なし(独居)」群は男性 40%、女性 60%で あった。年齢分布は「同居あり」群は 54 歳以下 が 30%で最も高く、次いで 75 歳以上が 27%、65

~74 歳が 25%、55~64 歳 18%の順であった。一 方、「同居なし(独居)」群は 75 歳以上が 37%で 最も高く、次いで 65~74 歳が 27%、55~64 歳 19%、

54 歳以下 17%の順であった。

2.居住区分(図3)

現在の居住場所について「震災前と同じ」、「プ レハブ仮設」「賃貸」「家族・友人・親戚宅」「新 居」「みなし仮設」「復興公営住宅」「防災集団 移転団地」「その他」の9つから1つを選択し ている。このうち本研究では、居住環境の違い から「震災前と同じ」「プレハブ仮設」「賃貸/み

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なし仮設」「仮設以外(家族・友人・親戚宅/復

興公営住宅/防災集団移転団地/その他」の4 つに分けて集計した。結果、居住について、「同 居あり」群は「震災前と同じ」31%、「プレハブ 仮設」28%、「賃貸/みなし仮設」8%、「仮設以 外」31%であった。「同居なし(独居)」群では「震 災前と同じ」34%「プレハブ仮設」31%、「賃貸

/みなし仮設」16%、「仮設以外」17%であった。

「同居あり」群と比べ「同居なし(独居)」群は

「賃貸/みなし仮設」の割合が高かった。

3.食事の摂取状況(図4)

「同居あり」群では、8食品全てにおいて対象 者の7割以上が1日1回以上摂取していると回 答していた。一方、「同居なし(独居)」群では、

主食(ごはん・パン・麺など)、乳製品(牛乳・

ヨーグルト・チーズなど)については8割の対象 者が1日1回以上摂取していたが、肉、魚・貝な ど、卵、豆類の摂取については、「同居あり」群 と比べて該当割合が低かった。

4.喫煙、飲酒習慣(図5)

喫煙習慣は、「同居あり」「同居なし(独居)」

群ともに喫煙者は 17%で、同じ割合であった。同 様に、飲酒習慣は「同居あり」「同居なし(独居)」 群の該当割合は同程度で、約 30%の対象者が日常 的な飲酒習慣をもっていた。しかし、「同居なし

(独居)」群では喫煙および飲酒習慣に未回答の 割合が高かった。

5.アテネ不眠尺度(図6)

アテネ不眠尺度が6点以上の睡眠障害を疑う 者の割合は、「同居あり」群 30%、「同居なし(独 居)」群 33%で同程度であった。

6.K6(図7)

K6が 10 点以上の心理的苦痛が高い者の割合 は、「同居あり」群 13%、「同居なし(独居)」群 15%で同程度であった。

7.活動状況(図8、図9)

体を使うような仕事について「ほぼ毎日」と回 答した者は、「同居あり」群は 61%、「同居なし(独 居)」群は 50%であった。1日あたりの歩行時間 について、「1時間以上」と回答した者は「同居 あり」群 30%、「同居なし(独居)」群 22%であ った。

D.考 察

東日本大震災の被災者のうち、独居者の特徴を 把握することを目的として被災者健康調査の結 果を集計、検討した。調査対象者のうち、独居者

の割合は全体の 13%で、女性、75 歳以上の割合 が高かった。また、「同居あり」群と比べ、「同居 なし(独居)」群は「賃貸/みなし仮設」に居住 する者が多く、支援の届きにくい生活環境で暮ら している可能性が推測された。食事の摂取状況で は、「同居あり」群と比べ、「同居なし(独居)」

群は、複数の食品で1日1回以上摂取していると 回答する割合が低いため、偏った食生活をおくっ ていることが明らかとなった。栄養面の偏りは、

多くの疾患の発症リスクにつながるため、定期的 に栄養教室や栄養指導を行うなどの支援体制が 望まれる。喫煙や飲酒習慣については、「同居あ り」群、「同居なし(独居)」群ともに同じ程度で あったが、「同居なし(独居)」群の未回答の割合 が高いため、結果については考慮する必要がある と考えている。メンタルヘルスについては、「同 居あり」群、「同居なし(独居)」群ともにアテネ 不眠尺度による「睡眠障害」、K6による「心理 的苦痛」の該当割合が同程度で、同居有無で差は 見られなかった。本研究の調査時期は 2015 年7 月から9月の震災5年目の時期であり、対象者全 体として、メンタルヘルスが安定してきたため、

同居有無による差は見られなかったと考えられ る。活動状況について、「同居あり」群と比べ、「同 居なし(独居)」群では、体を使うような仕事、

1日あたりの平均歩行時間のいずれも不活発な 傾向がみられた。独居者は、閉じこもりがちとな るため、体力や運動機能も低下し「生活不活発病」

となることが、あらためて示唆される結果となっ た。

本研究結果から、東日本大震災の被災地域の独 居者は、高齢者が多く、食事に偏りがあり、生活 も不活発な傾向であることが示された。地域保健 支援センターでは、各調査終了後に、行政と連携 して健診結果説明会や健康講話を実施している。

健診結果説明会では、センターの医師を派遣して 個別相談の機会を設けるなど地域住民の健康づ くりを支援している。今後も、自治体と協力して 被災者健康調査を継続し、被災地域住民の健康づ くりを支援する体制を整えていく必要がある。

E.結 論

東日本大震災の被災者のうち、独居者の特徴を 把握することを目的として被災者健康調査の結 果を集計、検討した。その結果、独居者は女性、

75 歳以上の高齢者の割合が高く、食事の摂取に偏 りがあり、生活も不活発な傾向であることが示さ れた。

F.健康危険情報 なし

(3)

- 106 -

G.研究発表

1.論文発表 なし 2.学会発表

なし

H.知的財産権の出願・登録状況 1.特許取得

なし

2.実用新案取得 なし

3.その他 なし

(4)

- 107 -

図1 同居有無の割合

図2 性、年齢分布 性別

年齢分布別

図3 居住区分別

87% 13%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

同居あり 同居なし

47%

40%

53%

60%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

男性 女性

30%

17%

18%

19%

25%

27%

27%

37%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

54歳以下 55~64歳 65~74歳 75歳以上

31%

34%

28%

31%

8%

16%

31%

17%

2%

2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

震災前と同じ プレハブ仮設 賃貸・みなし仮設 仮設以外* 未回答

(5)

- 108 -

図4 食事の状況(1日1回以上食べている者の割合)

図5 生活習慣(喫煙、飲酒)

喫煙

飲酒

97%

73%

88%

79%

84%

95%

75%

79%

96%

64%

80%

71%

76%

91%

73%

82%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

食事1(ごはん・パン・麺など)

食事2(肉)

食事3(魚・貝など)

食事4(卵)

食事5(豆腐・納豆など)

食事6(野菜)

食事7(くだもの)

食事8(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)

同居あり 同居なし

77%

74%

9%

8%

8%

9%

5%

10%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

なし あり(20本未満/日) あり(20本以上/日) 未回答

60%

60%

23%

22%

7%

7%

10%

12%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

なし あり(2合未満/日) あり(2合以上/日) 未回答

(6)

- 109 -

図6 アテネ不眠尺度の得点分布

図7 K6の得点分布

図8 活動頻度 体を使うような仕事

図9 活動頻度 1日あたりの平均歩行時間 61%

54%

30%

33%

9%

13%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

5点以下 6点以上 未回答

80%

72%

13%

15%

7%

13%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

9点以下 10点以上 未回答

61%

50%

24%

33%

14%

16%

1%

1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

ほぼ毎日 週1~3日程度 ほとんどしない 未回答

30%

22%

34%

40%

33%

35%

2%

3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同居あり

同居なし

1時間以上 30分~1時間 30分以下 未回答

参照

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