解析学
III
関数解析担当: 平場 誠示
平成
25
年10
月3
日(木)2
限(10:40-12:10)
より 後期目 次
1 線形代数復習 1
1.1 n次元ユークリッド空間Rn orCn . . . . 1
1.2 線形空間(ベクトル空間) (Linear sp. (Vector sp.)) . . . . 1
2 ノルム空間 (Normed Spaces) 2 2.1 ノルム(Norm) . . . . 2
3 バナッハ空間(Banach Spacses) 2 3.1 Banach 空間の例(Examples of Banach sps) . . . . 3
3.1.1 連続関数空間(Continuous function space) . . . . 3
3.1.2 Lp 空間(Lp-sp.) . . . . 4
3.2 可分と同値なノルム (Separable & equivarent norms) . . . . 6
3.3 完備化(Completion) . . . . 6
4 ヒルベルト空間(Hilbert Spaces) 7 4.1 プレ・ヒルベルト空間(内積空間) (Pre-Hilbert sp. (Inner prod. sp.)). . . . 7
4.2 ヒルベルト空間(Hilbert sp.). . . . 8
4.3 射影定理(Projection theorem) . . . . 8
4.4 正規直交系(ONS=orthonormal system) . . . . 10
5 線形作用素 (Linear Operators) 12 5.1 有界作用素の例(Examples of bounded operators) . . . . 13
5.2 逆作用素(Inverse operators) . . . . 13
6 三大基本原理 (一様有界性原理,開写像定理,閉グラフ定理) 15 6.1 一様有界性原理(Uniform bounded principle) . . . . 16
6.2 開写像定理(Open mapping theorem) . . . . 16
6.3 閉グラフ定理(Closed graph theorem) . . . . 17
7 線形汎関数 (Linear Functionals) 18 7.1 共役空間(Dual spaces). . . . 18
7.2 ハーン・バナッハの拡張定理(Hahn-Banach’s extension thoerem). . . . 19 1
A.1 一般の測度空間での Lp の完備性 . . . . 21
A.2 ノルム空間の完備化の定理と証明について . . . . 21
A.3 ソボレフ空間Hk,p(Ω) . . . . 22
A.4 ワイエルシュトラスの多項式近似 . . . . 23
A.5 有限次元ノルム空間の任意のノルムの同値性の証明 . . . . 24
A.6 中線定理. . . . 24
A.7 ヒルベルト空間A2(Ω) . . . . 25
B 弱収束, 共役作用素 26 B.1 弱収束 . . . . 26
B.2 共役作用素 . . . . 27
C レゾルベントとスペクトル 27
D コンパクト作用素 28
1 年生のときに勉強した線形代数において,線形空間, 基底, 内積, 線形写像, 行列など, 有限次 元での基本的な事柄を学んだと思う. それらを数列や関数の集合などの無限次元空間においても話 が出来るように一般化・抽象化したものが,関数解析と呼ばれる分野である.
ユークリッド空間Rn, Cn や数列空間ℓp, 連続関数の空間C([a, b]), 可積分関数の空間 Lp(Ω) (Ω⊂Rn)などに大きさの概念であるノルム∥ · ∥を入れ,その空間の性質や, さらにそれらの空間 の間の線形写像の性質を調べて行くのである.
メリットとしては,微分方程式や積分方程式を満たす関数(=解)があるか無いかを,一般的な結 果から導くことが出来たり,さらに解が存在するとき,その解を具体的に表現出来たりすることが ある. また抽象的に見ることにより,現象の理解が,より容易になったりすることもある.
初めは,抽象化により,話が逆に見えにくくなったという印象をもつ人もいるかも知れないが,常 に上に挙げた具体例を頭に描きながら,理解して行って欲しい. 基本となるのはあくまで線形代数 で,それをより一般の空間に発展させて行ったものであり, 極端に難しいことをしている訳では無 い!ということを強く言っておく. ただ,有限次元と無限次元との違いは,実は,かなり大きいもの で,その点には注意し,尚且つ,意識して勉強して行ってもらいたいと思う.
本講義では,教科書として増田 久弥 著 「関数解析」 裳華房を指定し,用いている.
従って,この本の内容に沿って述べてあるが,半年間という短い時間の制限もあり,色々な例や定 理など,省略した部分は大きい. もっと詳しく知りたい方は是非,教科書の方もご覧頂きたい.
1
線形代数復習1.1 n
次元ユークリッド空間R
nor C
nn∈N. x= (x1, . . . , xn), y = (y1, . . . , yn)∈Rn (or Cn), 和: x+y = (x1+y1, . . . , xn+yn), スカラー積: α∈R(orC)に対し,αx= (αx1, . . . , αxn)とdef. Rn (orCn)はベクトル空間とな る. さらに
(x, y) =∑
j=1
xjyj in Rn or (x, y) =∑
j=1
xjyj in Cn
とおけば,内積となり, この内積を用いてxの大きさ(ノルム)を|x|= (x, x)1/2 と定める. この Rn, Cn に上の和とスカラー積,内積を入れた空間をn 次元ユークリッド空間 (Euclid spaces) と呼ぶ. (これらは後に述べる Hilbert sp. であり,従ってBanach sp. でもある.)
1.2
線形空間(
ベクトル空間) (Linear sp. (Vector sp.))
K=Ror Cとおく.
定義1.1 (線形空間) 集合X がK 上の線形空間(ベクトル空間)とは和とスカラー積が定 義され, i.e.,∀x, y∈X, x+y∈X,∀α∈K,∀x∈X, αx∈X;次をみたすときをいう.
(i)(加法:結合則)(x+y) +z=x+ (y+z) (x, y, z∈X) (ii)(加法:交換則)x+y=y+x(x, y∈X)
(iii)(零元の存在)∃θ∈X;∀x∈X, x+θ=x(θ= 0と表す) (iv)(逆元の存在)∀x∈X,∃x′ ∈X;x+x′ = 0 (x′ =−xと表す)
(v)(分配則)α(x+y) =αx+αy, (α+β)x=αx+βx(x, y∈X, α, β∈K) (vi)(スカラー積:結合則)(αβ)x=α(βx) (x∈X, α, β∈K)
(vii)(単元の存在)1x=x(∀x∈X)
問 1.1 零ベクトルの一意性を示せ. (∃θ∈X;∀x∈X, x+θ=xの θの一意性)
[解] もし∃θ′ ∈X;∀x∈X, x+θ′=xとするとθ=θ+θ′ =θ′+θ=θ′ となり,一意である.
問 1.2 逆元の一意性を示せ. (x∈X に対し,∃x′∈X;x+x′= 0 のx′ の一意性)
[解] x∈X に対し,もし∃x′′∈X;x+x′′= 0とすると0 =x+x′=x+x′′より,結合則,交 換則を用いてx′=x′+ (x+x′′) = (x′+x) +x′′= (x+x′) +x′′=x′′.
(1)線形空間X においてx1, . . . , xn ∈X が ・一次独立(線形独立) (linear independent)
⇐⇒def [α1x1+· · ·+αnxn = 0 (α1, . . . , αn∈K) =⇒α1=· · ·=αn= 0]
・一次従属(線形従属)(linear dependent)
⇐⇒def 一次独立でない, i.e.,∃(α1, . . . , αn)̸=0;α1x1+· · ·+αnxn= 0.
・X がn次元 (n-dimensional) ⇐⇒def n個の一次独立なベクトルは存在するが,任意のn+ 1 個のベクトルは一次従属となる. このときdimX =nと表す.
・X が無限次元 (infinite dimensional)
⇐⇒def ∀n∈N,n個の一次独立なベクトルが存在する.
・x∈X がx1, . . . , xn ∈X の線形結合(linear combination) ⇐⇒def ∃α1, . . . , αn∈K;x=α1x1+· · ·+αnxn
問 1.3 X がn次元なら適当な n個の一次独立なベクトルがあって,任意のベクトルはその一 次結合で表されることを示せ, i.e.,
dimX =n=⇒∃x1, . . . , xn∈X; lin. indep.,∀x∈X,∃α1, . . . , αn∈K;x=α1x1+· · ·+αnxn. (2)X を K上の線形空間とする.
Y ⊂X が部分空間(subspace) ⇐⇒def ∀x, y∈Y, x+y∈Y, かつ, ∀α∈K, αx∈Y.
2
ノルム空間(Normed Spaces)
線形空間において,ベクトルの大きさをはかるものとしてノルムという抽象概念を導入する. こ のノルムの入った線形空間をノルム空間という.
2.1
ノルム(Norm)
定義2.1 (ノルム) 線形空間 X 上の実数値関数 ∥ · ∥:x→ ∥x∥ が次をみたすとき∥x∥ を X のノルム(norm)という.
(i)∥x∥ ≥0 (x∈X) (非負性)
(ii)∥x∥= 0 ⇐⇒ x= 0 (零値零元性) (iii)∥αx∥=|α|∥x∥(α∈K, x∈X)
(iv)∥x+y∥ ≤ ∥x∥+∥y∥(x, y∈X)(三角不等式) このとき(X,∥ · ∥)をノルム空間 (normed space)という.
ノルム空間(X,∥ · ∥)においてd(x, y) =∥x−y∥ とおくと距離となる. 即ち,次をみたす.
(d.1)d(x, y)≥0 (x, y∈X) (非負性) (d.2)d(x, y) = 0 ⇐⇒ x=y (零値一意性) (d.3)d(x, y) =d(y, x) (x, y∈X) (対称性)
(d.4)d(x, z)≤d(x, y) +d(y, z) (x, y, z∈X)(三角不等式) つまりノルム空間は自然に距離空間(X, d)とみなせる.
点列の収束{xn} ⊂X に対し, xn→x(n→ ∞) ⇐⇒ ∥def xn−x∥ →0 (n→ ∞) このときxを{xn}の極限という.
命題2.1 ノルム空間において和とスカラー積の演算は連続, i.e.,
(i)xn→x, yn→y =⇒xn+yn→x+y, (ii)αn→α, xn →x=⇒αnxn→αx.
命題2.2 ノルムは連続関数, i.e.,xn→x=⇒ ∥xn∥ → ∥x∥.
3
バナッハ空間(Banach Spacses)
定義3.1 完備なノルム空間をバナッハ空間 (Banach sp.)という. 即ち, 任意のコーシー 列が,ノルムのもとで収束するときをいう. ちなみに,ノルム空間(X,∥ · ∥)において,
・{xn} ⊂X : コーシー列 (Cauchy sequence) ⇐⇒ ∥def xn−xm∥ →0 (m, n→ ∞)
・X が完備(complete) ⇐⇒def 任意のCauchy列{xn} ⊂X が収束する, i.e.,∃x∈X;xn→x.
3.1 Banach
空間の例(Examples of Banach sps)
例 3.1 Rn,Cn はBanach sp.
ノルム空間であることはすぐに分るであろうし,完備性については,「微積」,もしくは「位相」
で既に習ったと思うが,R1においては, Cauchy列なら有界列で,収束部分列をもち,このとき元の
Cauchy列も同じ極限に収束することが言える. 2 次元以上もこれに帰着できる.
例 3.2 Pn: n次多項式全体(n∈N)
x(t) =antn+an−1tn−1+· · ·+a0∈Pn (ak ∈C)
和とスカラー積を(x+y)(t) =x(t) +y(t), (αx)(t) =αx(t),即ち,y(t) =bntn+bnn−−11+· · ·+b0
に対し, (x+y)(t) = (an+bn)tn+· · ·+ (a0+b0), (αx)(t) =αantn+· · ·+αa0と定めるとPn は 線形空間. 次元はdimPn=n+ 1 ({1, t, t2, . . . , tn}が一次独立) ノルムはPn∋x(t) =∑n
j=0ajtj に対し,∥x∥=∑n j=0|aj|. 問 3.1 Pn はBanachなることを示せ.
3.1.1 連続関数空間 (Continuous function space)
例 3.3 Ω⊂ Rn 有界開集合上の実数値連続関数全体C(Ω) は上と同様に和とスカラー積 [(x+y)(t) =x(t) +y(t), (αx)(t) =αx(t)]を定義すれば線形空間. 次元はdimC[0,1] =∞. ノル ム∥x∥∞= supt∈Ω|x(t)|のもと, Banach sp. (x(t) =tn−1(n≥1)が一次独立)
証明 {xn}をCauchy列in C(Ω)とする. 各t∈Ωに対し,
|xn(t)−xm(t)| ≤ ∥xn−xm∥∞→0(m, n→ ∞)
より, {xn(t)} は RでのCauchy列. 実数の完備性より, ∃x∗(t)∈R;xn(t)→x∗(t). 上の不等式 で n→ ∞とすれば,
|x∗(t)−xm(t)| ≤ lim
n→∞∥xn−xm∥∞
右辺は t∈Ωに無関係なので,左辺でsupt∈Ωをとり,両辺で m→ ∞とすれば
mlim→∞sup
t∈Ω
|x∗(t)−xm(t)| ≤ lim
m,n→∞∥xn−xm∥∞= 0
よって x∗ は連続関数列{xn} の一様収束極限なのでx∗ も連続. 従ってxn→x∗ in C(Ω).
問 Cb(R) ={x∈C(R);∥x∥∞<∞}とおく. このとき, (Cb,∥ · ∥∞)はBanach sp. となるか?
注意3.1 ノルムの入れ方は一通りではない. 例えば Pn∋x(t)∑n
j=0ajtj に対し, ∥x∥∞= max|αj|,またx(t)∈C([0,1]) に対し,∥x∥L1 =
∫
[0,1]
|x(t)|dt とおいてもノルムとなる. 要は目的 に応じて使い分ける必要がある.
注意3.2 Pn[0,1]: Pn を[0,1]に制限した空間は線形空間としてはC[0,1]の部分空間であ る(確かめよ). さらに同じノルム(例えば∥x∥∞=∑
t∈[0,1]|x(t)|)を入れたときにはノルム空間と しても部分空間であるという見方をする. しかし異なるノルムを入れたときにはノルム空間として は全く別の空間とみる.
3.1.2 Lp 空間 (Lp-sp.)
例 3.4 1≤p <∞, Ω⊂Rn 開集合,Lp(Ω)を Ω上の可測関数uで
∥u∥Lp:=
(∫
Ω
|u(t)|pdt )1/p
<∞
をみたすもの全体とする. u=v a.e. となるものを同一視すれば,Lp(Ω) はBanach sp. となる.
この元をp乗可積分関数or Lp 関数などと呼ぶ.
例 3.5 Ω⊂Rn 開集合,L∞(Ω) をΩ上の可測関数 uで本質的に有界∃α <∞;|u(t)| ≤α a.e. なもの全体とする. さらにその下限を本質的上限といい
∥u∥∞≡ess.supt∈Ω|u(t)|:= inf{α;|u(t)| ≤α a.e.}
と表す. このとき|u| ≤ ∥u∥∞ a.e. が成り立つことに注意. u=v a.e. となるものを同一視すれば, L∞(Ω) はBanach sp. となる.
この元を本質的有界関数orL∞ 関数などと呼ぶ.
上の2つの例で, まず三角不等式を示せば, normed sp. なることがいえる.
[ヘルダーの不等式(H¨older’s inequality)]
1≤p≤ ∞に対し, 1≤q≤ ∞を1/p+ 1/q= 1で定める但し,p= 1ならq=∞とし,p=∞ ならq= 1 とする(qを pの共役数という). このとき∥uv∥L1 ≤ ∥u∥Lp∥v∥Lq が成り立つ. 即ち,
∫
Ω
|u(t)v(t)|dt≤ (∫
Ω
|u(t)|pdt
)1/p(∫
Ω
|v(t)|qdt )1/q
(1< p <∞),
∫
Ω
|u(t)v(t)|dt≤
∫
Ω
|u(t)|dt∥v∥∞ (p= 1, q=∞).
証明 p= 1,∞のときは容易. 1< p <∞ とする. ∥u∥Lp = 0 or ∥v∥Lq = 0ならuv = 0 a.e.
で明らかなので, ∥u∥Lp ̸= 0 and∥v∥Lq ̸= 0とする. 凸不等式ab≤ap/p+bq/q (a, b≥0) を用い る. (logは上に凸なので, log(ap/p+bq/q)≥(logap)/p+ (logbq)/q= loga+ logb= log(ab))よ り得る.) a=|u(t)|/∥u∥Lp,b=|v(t)|/∥v∥Lq を代入して,積分すれば良い.
∥uv∥L1
(∥u∥Lp∥v∥Lq) ≤ ∥u∥pLp
p∥u∥pLp
+ ∥v∥qLq
q∥v∥qLq
= 1 p+1
q = 1 [ミンコフスキーの不等式(Minkovsky’s inequality)] (三角不等式)
1≤p <∞. u, v∈Lp(Ω)ならu+v∈Lp(Ω) で,∥u+v∥Lp≤ ∥u∥Lp+∥v∥Lp が成り立つ.
証明 まずp= 1 なら明らか. p=∞のときは容易(→次の問). 1< p <∞とする. 不等式を 示せば十分. (u+v∈Lp(Ω)は従う.) |u+v|p≤(|u|+|v|)|u+v|p−1にH¨olderを用いれば容易に 分かる. 実際, 1/q= 1−1/p= (p−1)/p, i.e., q=p/(p−1) に注意して
∥u+v∥pLp≤
∫
Ω
|u||u+v|p−1dt+
∫
Ω
|v||u+v|p−1dt≤(∥u∥Lp+∥v∥Lp) (∫
Ω
|u+v|pdt )1/q
これから∫
|u+v|pdt= 0なら明らかで,̸= 0なら (∫
Ω
|u+v|pdt )1/q
=∥u+v∥p/qLp で両辺を割れ ば p/q=p−1より,求める式を得る.
問 3.2 ∥u+v∥∞≤ ∥u∥∞+∥v∥∞ を示せ.
上のことからLp(Ω)がノルム空間なることは容易に分かる. Banachをいうためには完備性を示 せば良い. その前に
問 3.3 (X,∥ · ∥)ノルム空間,{un} ⊂X: Cauchy列とする. ∃{unk} ⊂ {un};unk →uinX な ら un →uin X を示せ.
証明 ∥uk−u∥ ≤ ∥uk−unk∥+∥unk−u∥ →0 (nk ≥k→ ∞)より明らか.
問 3.4 Lebesgue積分論での, 単調収束定理とLebesgueの収束定理を厳密に述べよ.
[Lp(Ω) の完備性の証明]
{un}Cauchy列inLp(Ω) とする. このとき∃{unk};∥unk+1−unk∥Lp <1/2k がとれる. 単調収 束定理を用いることにより,
∑∞ j=1
|unj+1−unj| Lp
= lim
m→∞
∑m j=1
|unj+1−unj| Lp
≤∑∞
j=1
∥unj+1−unj∥Lp≤1<∞.
よって
∑∞ j=1
|unj+1−unj| ∈Lp(Ω). これより
∑∞ j=1
|unj+1(t)−unj(t)|<∞ for a.e. t ∈Ω. 従って k < m に対して,
|unm(t)−unk(t)| ≤
m∑−1 j=k
|unj+1(t)−unj(t)| →0 (m > k→ ∞) a.e.
よって a.e. t∈Ωに対し,{unk(t)} はRでのCauchy列となり,完備性からunk(t)→∃u∗(t). こ の u∗ が {un}の Lp(Ω)での極限となる. 実際,
|unk(t)| ≤ |un1(t)|+
k−1
∑
j=1
|unj+1(t)−unj(t)| ≤ |un1(t)|+
∑∞ j=1
|unj+1(t)−unj(t)| ∈Lp(Ω)
より, 最後の式を g(t) とおき, k→ ∞ とすればa.e. t ∈Ωに対し, |u∗(t)| ≤g(t)∈Lp(Ω), i.e., u∗(t)∈Lp(Ω). さらに k < mに対し,
∥unm−unk∥Lp≤
m∑−1 j=k
∥unj+1−unj∥Lp≤∑∞
j=k
1 2j = 1
2k−1.
ここで|unm(t)−unk(t)| ≤2g(t)∈Lp(Ω)からLebsgueの収束定理が使えて,m→ ∞として
∥u∗−unk∥Lp ≤ 1
2k−1 →0 (k→ ∞).
従って unk →u∗in Lp(Ω)となり, 前の問からun→u∗ inLp(Ω) をえる.
もっと一般の測度空間(X,F, µ) (X a set,F σ-field onX,µ=µ(dx)測度onX)においても, f ∈Lp(X) orLp(X, dµ) orLp(X,F, µ) ⇐⇒ ∥def f∥pLp :=
∫
|f|pdµ=
∫
X
|f(x)|pµ(dx)と定義する.
L∞(X)も同様. このとき H¨older の不等式, Minkovsky の不等式が全く同様に証明でき, 従って Lp(X)はBanachとなる. さらにこれから次も分かる. (詳しくは補章を.)
例 3.6 1 ≤p <∞. 無限数列x= (x1, x2, . . .)で∥x∥lp = ( ∞
∑
n=1
|xn|p )1/p
<∞をみたす もの全体をlp とおくとBanach sp. となる.
例 3.7 無限数列x= (x1, x2, . . .)で∥x∥∞= sup{|xn|;n≥1}<∞をみたすもの全体をl∞ とおくとBanach sp. となる.
3.2
可分と同値なノルム(Separable & equivarent norms)
X を Banach sp. とする.
・L⊂X がX で稠密(dense) ⇐⇒def L=X 但し,LはLの閉包(Lの触点全体;x∈L ⇐⇒
∃{xn} ⊂L;xn→x).
・X が可分(separable) ⇐⇒def 稠密な可算部分集合が存在, i.e.,∃L⊂X;L=X, ♯L≤ ℵ0=♯N.
例 3.8 Rn は可分なBanach sp. 実際,Qn は可算稠密部分である.
例 3.9 Ω⊂Rn 有界開集合,C(Ω)は可分.
C[0,1]においてLを有理係数をもつ多項式を[0,1]に制限したもの全体とすれば,可算集合で, 補章に述べるワイエルシュトラスの多項式近似定理より,L=C[0,1]も分かる.
X を線形空間として,その上に2つのノルム∥ · ∥1,∥ · ∥2 が与えられているとき
・∥ · ∥1 と∥ · ∥2が同値;∥ · ∥1∼ ∥ · ∥2
⇐⇒def ∃0< c, c′<∞;c∥x∥2≤ ∥x∥1≤c′∥x∥2.
このときnormed sp. として(X,∥ · ∥1)と(X,∥ · ∥2)の構造は同じである. 即ち,収束・発散が 一致する. 特に(X,∥ · ∥1)が完備なら(X,∥ · ∥2)もそうなる.
問 3.5 Xが有限次元ならX 上の任意の2つのノルムは同値であることを示せ. (答えは補章に)
3.3
完備化(Completion)
X を完備でないノルム空間とする. ここへ適当な同値関係を入れることにより,完備なノルム空 間 Xe で,X をある同一視をすることにより,X=Xe をみたすものが作れる.
実際,XをX のCauchy列の全体とし,{xn},{yn} ∈Xに対し,{xn} ∼ {yn} ⇐⇒ xn−yn→0 (n→ ∞)と定義する. これは同値関係となり,これによる同値類をex= [{xn}]∈Xe:=X/∼とお き,ex= [{xn}]∈Xe のノルムを∥ex∥:= lim
n→∞∥xn∥({∥xn∥}は RのCaushy列なので,この極限は 存在)で定義すれば, (X,e ∥ · ∥)が完備, i.e., Banach sp. となることが示せる. (この証明は補章で 与える.)
しかもx∈X と [{xn≡x}]∈Xe を同一視することにより,X⊂Xe かつX=Xe と思うことが 出来る. このXe をX の完備化 (completion)という.
例 3.10 X0 :={x= (x1, x2, . . . , xn,0,0, . . .);xi ∈R, n∈N} (有限個を除いて全て 0 で ある無限列全体)とおく. ∥x∥=∥x∥lp とおけば,X0 はノルム空間となる. X0 はlp の部分空間で dense であるが, 完備ではない. 実際, x(n) = (1,1/2,1/22. . . . ,1/2n,0,0, . . .)を考えるとm > n に対し, 1≤p <∞なら∥x(n)−x(m)∥lp= (∑m
k=n+12−kp)1/p →0 (n→ ∞)で, Cauchy 列とな
るが,極限はx= (1,1/2,1/22. . . . ,1/2n, . . .)∈/ X0. ゆえにX0は完備でない. (p=∞でも同様.) X0の完備化Xe0はlp と同一視できてノルムも等しい, i.e.,lp に等長である. これを踏まえて単に X0の完備化はlp であるという.
注) ノルム空間(X,∥ · ∥X), (Y,∥ · ∥Y)に対し,∃f :X →Y;全単射な写像,∥f(x)∥Y =∥x∥X
のときX はY に等長であるという. (簡単にX とY はノルム空間として同一視できるともいう.) 例 3.11 区間[0,1]上の多項式全体をX0 とおく, i.e.,X0=∪
n≥1Pn[0,1]. x∈X0に対し,
∥x∥= supt∈[0,1]|x(t)|とおくとノルムとなるが,X0 は完備でない. X0 の完備化はC[0,1]となる.
4
ヒルベルト空間(Hilbert Spaces)
線形空間で内積 (inner product) ⟨x, y⟩ の入った空間を内積空間 or プレ・ヒルベルト空間 (inner prod. sp. or pre-Hilbert sp.)といい,さらに内積から決まるノルム∥x∥=√
⟨x.x⟩で, 完備なものをヒルベルト空間(Hilbert sp.) という. これはまさに内積の入った Rn や Cn の抽 象化で,線形代数で習ったことと同様な性質を満たすが,さらに無限次元のときには多少の注意を 要する.
4.1
プレ・ヒルベルト空間(内積空間) (Pre-Hilbert sp. (Inner prod. sp.))
定義4.1 X をC上の線形空間, x, y∈X に対し,⟨x, y⟩ ∈C が内積(inner product)とは (正値性) ⟨x, x⟩ ≥0 (x∈X). また⟨x, x⟩= 0 ⇐⇒ x= 0.
(共役対称性) ⟨x, y⟩=⟨y, x⟩(x, y∈X)
(準双線形性) ⟨x1+x2, y⟩=⟨x1, y⟩+⟨x2, y⟩,⟨αx, y⟩=α⟨x, y⟩(x1, x2, y∈X, α∈C).
定義4.2 内積の定義された線形空間X or (X,⟨·,·⟩)をプレ・ヒルベルト空間(pre-Hilbert sp.) or内積空間(inner prod. sp.) という.
定理4.1 プレ・ヒルベルト空間 X において, ∥x∥:=⟨x, x⟩1/2 (x∈X)とおけば, ノルム の条件をみたす. 従って「(内積空間)⊂(ノルム空間)」が成り立つ.
この証明に次の不等式を用いる.
補題4.1 (Schwartz の不等式) |⟨x, y⟩| ≤ ∥x∥∥y∥(x, y∈X).
証明∥y∥= 0 ならy = 0 より,⟨x, y⟩= 0 となり(→ 下の問), 明らかなので, ∥y∥ ̸= 0 とする.
∀α∈C に対し, 0≤ ⟨x+αy, x+αy⟩なので, α:=−⟨x, y⟩/∥y∥2 を代入すれば容易に分かる. 実 際, 0≤ ⟨x+αy, x+αy⟩=∥x∥2+α⟨x, y⟩+α⟨x, y⟩+|α|2∥y∥2=∥x∥2− |⟨x, y⟩|2/∥y∥2.
問 y= 0なら⟨x, y⟩= 0をSchwartzの不等式を用いずに示せ. (⟨x, y⟩=⟨x,0y⟩= 0⟨x, y⟩= 0) [定理 4.1 の証明] 三角不等式をみたすことを示せば良い. 上の不等式より, ∥x+y∥2 =
∥x∥2+⟨x, y⟩+⟨y, x⟩+∥y∥2≤ ∥x∥2+ 2∥x∥∥y∥+∥y∥2= (∥x∥+∥y∥)2.
定理4.2 X が内積空間なら∥x∥=⟨x, x⟩1/2 に対し,次が成り立つ.
中線定理 ∥x+y∥2+∥x−y∥2= 2(∥x∥2+∥y∥2).
また内積はノルムを用いて次で表せる.
⟨x, y⟩= 1 4
(∥x+y∥2− ∥x−y∥2+i∥x+iy∥2−i∥x−iy∥2) .
逆にノルム空間 X において,中線定理をみたすとき,上の式によって⟨x, y⟩を定義すれば,内積と なる. 即ち,「ノルム空間 X が内積空間 ⇐⇒ 中線定理をみたす」.
証明は前半の内積が中線定理をみたすのは容易に分かる. 逆のノルムが中線定理をみたすとき内 積となることについては複雑なので, 補章に述べる.
命題4.1 内積 ⟨x, y⟩は x, yの連続関数, i.e.,xn →x, yn →y なら⟨xn, yn⟩ → ⟨x, y⟩.
Schwartzの不等式を用いれば明らか.
4.2
ヒルベルト空間(Hilbert sp.)
定義4.3 内積空間X がその内積から決まるノルムで完備なときヒルベルト空間 (Hilbert sp.) という. またK=Rなら実ヒルベルト空間, K=C なら複素ヒルベルト空間という.
[Hilber spsの例]
例 4.1 Rn,Cn: 最初に定義した内積で, Hilbertとなる.
例 4.2 l2: x= (xn), y= (yn)∈l2 に対し, ⟨x, y⟩=∑
n≥1
xnyn とおけば, 内積となり, 前に 定義したノルムに対し,∥x∥22=∑
|xn|2=⟨x, x⟩. 従って Hilbertとなる.
例 4.3 L2(Ω) (Ω⊂Rn open): u, v∈L2(Ω),⟨u, v⟩=
∫
Ω
u(t)v(t)dtとおけばHilbert.
例 4.4 A2(Ω) (Ω⊂Cn open, f ∈A2(Ω)正則,
∫∫
Ω
|f(z)|2dxdy <∞(z=x+iy)) f, g∈A2(Ω) に対し,⟨f, g⟩=
∫∫
Ω
f(z)g(z)dxdy とおけばHilbert. (この証明は補章で) 例 4.5 C(Ω) (Ω⊂Rn)においてL2(Ω) と同じ内積を定義すれば, これは内積空間とはな るがHilbertにはならない.
4.3
射影定理(Projection theorem)
H を Hilbert sp. x, y∈H,A, B⊂H に対し,
・x⊥y ⇐⇒ ⟨def x, y⟩= 0.
・A⊥B ⇐⇒def ∀a∈A,∀b∈B, a⊥b. (特にx⊥B ⇐⇒ {def x} ⊥B.) L⊂H 部分集合に対し,
・L⊥ :={x∈H;x⊥L}をLの直交補空間(orthogonal complement)という.
問 4.1 任意の部分集合L⊂H に対し,L⊥ が H の閉部分空間となることを示せ.
・x⊥y=⇒ ∥x+y∥2=∥x∥2+∥y∥2 三平方の定理 (ピタゴラスの定理)
・部分空間L1, L2⊂H に対し,L1, L2の直和(direct sum)L1⊕L2:=L1+L2;L1∩L2={0}. ここで[L1∩L2={0} ⇐⇒ x=x1+x2∈L1+L2 の表現が一意的]に注意.
問 このことを示せ.
[解] (⇒) x1+x2 =x′1+x′2 (xi, x′i ∈ Li) ならx1−x′1 =x′2−x2 ∈ L1∩L2 = {0} より, xi=x′i. (⇐)x∈L1∩L2 ならx=x+ 0 = 0 +x∈L1+L2 とみて,表現の一意性からx= 0.
定理4.3 (射影定理) L⊂H が閉部分空間ならH は Lと L⊥ の直和に分解される;H = L⊕L⊥, i.e.,∀x∈H,∃y∈L,∃z∈L⊥;x=y+zで,この表現は一意的.
上のy∈L をx∈H のLへの正射影or直交射影or 射影という. またPLx=yと表し,この PL もLへの射影(作用素)という.
証明 x∈L∩L⊥ なら⟨x, x⟩= 0より,x= 0, i.e.,L∩L⊥ ={0}. これから表現は一意となる.
分解の可能性について. ∀x ∈ H を一つとり, δ := infy∈L∥x−y∥ とおく. inf の性質から
∃{yn} ⊂L;∥x−yn∥ →δ. また中線定理より
2(∥x−yn∥2+∥x−ym∥2) = ∥(x−yn) + (x−ym)∥2+∥(x−yn)−(x−ym)∥2
= ∥2x−(yn+ym)∥2+∥yn−ym∥2. ここで (yn+ym)/2∈Lより,δ≤ ∥x−(yn+ym)/2∥. 従って
∥yn−ym∥2= 2(∥x−yn∥2+∥x−ym∥2)−4
x−yn+ym
2
2≤2(∥x−yn∥2+∥x−ym∥2)−4δ2
で(右辺)→0 (m, n→ ∞). H の完備性より∃y∈H;yn →y. しかもLclosed からy∈L. また δ=∥x−y∥も成り立つ. z=x−y とおく(∥z∥=δ). z⊥Lを示す. ξ∈Lに対し,γ=⟨z, ξ⟩とし て,φ(t) =∥z−γtξ∥2=∥x−(y+γtξ)∥2(t∈R)とおく. まずy+γtξ∈Lより,φ(t)≥δ2=φ(0) (δの定義による). さらに
φ(t) =∥z∥2−γt⟨z, ξ⟩ −γt⟨ξ, z⟩+|γ|2t2∥ξ∥2=δ2−2|γ|2t+|γ|2t2∥ξ∥2=δ2− |γ|2t(2−t∥ξ∥2).
もし γ̸= 0なら, t >0 が 0 に十分近いとき, 2−t∥ξ∥2 >0 より,φ(t)< φ(0) =δ2 となり矛盾.
よって γ= 0.
例 4.6 H =L2(Ω) (Ω⊂Rn: bdd open) において,u∈L ⇐⇒def u∈H;
∫
Ω
u(t)dt= 0 と おけば,Lは閉部分空間で, PLu(t) =u(t)− 1
|Ω|
∫
Ω
u(t)dt. 更にL⊥={定数関数}.
例 4.7 H =L2(−1,1)においてu∈L ⇐⇒def u∈H;u(−t) =u(t)とおくとLは閉部分空 間で,L⊥ ={v∈H;v(−t) =−v(t)}.
問 4.2 上の2つの例を確かめよ. (最初の例は,M ={定数関数}として,L⊂M⊥,L⊃M⊥ を. 後のは, [0,1)上の積分にして,u(t) =v(t) +v(−t)ととる.)