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密教文化 Vol. 2000 No. 204 003大柴 慎一郎「『三教指帰』真作説 PL1-L30」

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Academic year: 2021

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密 教 文 化

三 教 指 帰』 真 作 説

大 柴 慎 一 郎 は じ め に 従 来、 『聾 瞥 指 帰』 と 『三 教 指 帰 』 の 成 立年 代 に っ い て 様 々 な 議 論 が な され て きた1)。 しか し近 年 『御 遺 告』 が 後 世 の偽 作 で あ る と断 定 さ れ て か らは2)、『聾 啓 指 帰 』 の著 作 年 代 は そ の序 文 に あ る ご と く延 暦16年(弘 法 大 師御 歳24才)で あ る とい うほ ぼ一・致 した見 解 が 得 られ る よ うに な った。 『三 教 指 帰」 は この後 に書 き直 され た こ と にな るが、 現 今 で は そ れ を 大 師 ご自身 が改 作 さ れ た と い う説(『 三 教 指帰 」 真 作 説3))と、 後 世 の 者 が 手 を施 した と い う説(『 三 教 指帰 」 偽 作 説4))に 割 れ て い る よ うで あ る。 は じめ に結 論 を述 べ る が、 『三 教 指 帰 』 偽 作 説 は 『三 教 指 帰 』 の 序 文 と 十 韻 詩 を疑 問 視 し、「聾薯 指 帰 」 と 『三 教 指 帰 』 の本 文 は 若 干 の 相 違 は あ る もの の古 写 本 にお い て は ほ とん ど同 一 で あ った と考 え て い る5)。 しか し こ の よ うな両 指 帰 の 序 文 と十 韻 詩 のみ を比 較検 討 した 『三 教 指 帰 』 偽 作 説 は、 両 指 帰 の本 文 比 較 を怠 っ た こ と に淵 源 す る誤 解 で あ る と筆 者 は考 え る。 真 偽 問 題 を論 ず るの な らば、 両 指 帰 の本 文 も比 較 対 象 に含 まれ な け れ ば な らな い。 そ して 実 際 に 『三 教 指 帰』 本 文 は古写 本 に お い て も 『聾 瞥 指 帰 」 本 文 と少 なか らず 差違 が 存 在 して い る。 両 指帰 本 文 の差 違 を 比 較 して み る と、 確 か に他 な らぬ大 師 が 幾 っ か の 意 図 を持 って修 正 され た こ とが 見 え て くるの で あ る。 一、 両 指 帰 本 文 の 比 較

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(2) (一)両 指 帰 本 文 の 異 同 両 指帰 の 本 文 を厳 密 に比 較 して い る の は太 田次 男 氏 で あ る。今 ま で軽 視 さ れ て い た 両 指 帰 の本 文 に着 目 した方 法 論 と、両 指 帰 の異 同 を 明 らか に し て 『三 教 指帰 』 の本 文 が 大 師 に よ って 改 作 さ れ た こ とを示 した と ころ に太 田氏 の研 究 成 果 が あ る。 氏 は 『三 教 指 帰 」 の写 本 類 八 本 を使 って両 指 帰 を 比 較 した6)。 そ の写 本 類 は、 1. 成 安 注 本(三 教 指 帰 注 集 三 巻、 寛 治 二 年(1088)成 立、 長 承 二 ・三 年 (1133・1134)写 本)【 大 谷 大 学 図 書 館 所 蔵 】 2. 仁 平 四年(1169)本 【天 理 図 書 館 所 蔵 】 3. 三 教 勘 注 抄(第 二 巻、 藤 原 敦 光 注、 平 安 末 鎌 倉 初 写 本)【 高 野 山 寳 壽 院 蔵、 高 野 山 霊 宝 館 寄 託 】 4. 宝 菩 提 院 本(三 教 勘 注 抄 第 五 巻)【 東 寺 宝 菩 提 院 蔵、 大 正 大 学 マ イ ク ロ フ イル ム】 5. 光 明 院 本(三 教 指 帰 三 巻、 中巻 欠、 鎌 倉 初 写)【 高 野 山 大 学 図 書 館 所 蔵 】 6. 建 長 五 年(1253)本 【高 野 山金 剛 三 昧 院蔵、 高 野 山 大 学 図 書 館 所 託 】 7. 文 安 二 年(1445)本(三 教 指 帰 注)【 慶 応 義 塾 大 学 図 書 館 所 蔵 】 8. 天 正 八 年(1580)本 【東 寺 観 智 院 所 蔵 】 で あ る。 これ らの うち で特 に古 い成 安 注 本、 仁 平 本、 勘 注 抄 の三 本 に お い て文 字 が 揃 って 一 致 し(勿 論 他 の写 本 が 同 じ場 合 も構 わ な い)、 且 つ そ れ が 『聾 瞥 指 帰 』 と異 な る場 合、 そ れ らの文 字 は大 師 に よ って、 『聾 暫 指 帰 」 か ら 『三 教 指 帰 』 へ 改 変 され た もの で あ る と考 え る こ とが で き る。 太 田氏 は この方 法 で 両 指 帰 の本 文 を比 較 した結 果、 次 の結 論 に至 っ た。 両 指 帰 間 の 本 文(む ろん、 序 及 び末 尾 の詩 は除 く)の 改 変 に は、 原 則 的 とで もい い 得 る一 本 の 筋 が 通 って い る こ と は確 か な こ とで あ る。 そ して、 そ こ に空 海 の 存 在 が あ る こと は、 これ亦、 否 定 す べ くも なか ろ う。(中 略)本 文 上 か らは、 『聾 瞥 指 帰 」 と共 に 『三 教 指帰 」 の 撰 者 と ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 して、 空 海 を、 後 者 に の み該 当 者 とせ ず に、 別 人 を 当 て る こ と は無 理 と い う外 はな い7)。 筆者 も 『三 教 指 帰 』 本 文 の撰 者 が 大 師 で あ る とす る太 田氏 の結 論 に 全 く異 論 が な い。 両 指 帰 の 本 文 を比 較 す れ ば、 誰 しもが 同 じ結 論 に 至 る はず で あ る。 以 下 は筆者 の 見 解 で あ る。 筆 者 が 八 本 を 『聾 瞥 指帰 』 と比 較 した 限 りで は成 安 注本、 仁 平 本、 勘 注 抄 の 三 本 に お い て文 字 が一 致 して い な くて も大 師 の 改作 で あ る と思 わ れ る もの もあ り、 ま た逆 に諸 本 が揃 って 同 じ文 字 で あ って も大 師 が推 敲 され た と は思 え な い もの もあ った8)。 しか し今 は、 大 師 が 『聾 瞥 指 帰 』 を ど の よ うに 改変 され た か を考 察 す る こ とが 目的 な ので、 諸 本 で揃 って一 致 す る もの の み を対 照 と して考 察 す る。 そ れ で も176箇 所 に お い て両 指 帰 との 問 に差 違 が存 在 して い る。 この数 字 は決 して少 な い も の で は な い だ ろ う9)。 ま た、 筆 者 は 『聾 替指 帰 』 が 『三 教 指 帰 」 に改 変 さ れ た 目的 を 「表 現 」、 「対 偶 」、「音 韻」、「訂 正 」、「割 愛」、「文 字 」 に分 類 した。 これ に よ って176 箇 所 の内 訳 を見 る と、 「表 現 」 が101、 「対 偶」 が26、 「音 韻 」 が19、 「訂 正」 が12、 「割 愛」 が10、 「文 字 」 が8と な る。 これ らの改 変 範 囲 は亀 毛 先 生 論 か ら仮 名 乞 児 論 末 尾 の十 韻 詩 に ま で及 ん で い る。 つ ま り、 改 変 が 本 文 の全 範 囲 に渡 って い る こと が わ か る。 今 こ れ らの内 で 特 に文学 的 な知 識 と能 力 を必 要 とす る 「表 現 」、「対 偶 」、「音 韻 」 の三 者 に よ る改変 につ いて 考 察 し て い き た い10)。 (二)対 偶 に よ る 『三 教 指 帰 』 へ の 改 変 対 偶 に関 す る改 変 は二 っ に大 別 で き る。 一 っ は文 字 を加 え る こ と に よ っ て 対 偶 を 成 り立 たせ る方 法 で あ り、 も う一 っ は文字 を省 く こ と に よ って 対 偶 を 作 り出 す 方 法 で あ る。 前 者 の例 を 挙 げ る。 〈資 料1>文 字 の 増 加 に よ る改 変 例 【聾 】 照譜 言之 礫 骨 金、 闇 櫃 機之 獲榮 辱。(7. 7)

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(4) 【三 】 明 知 譜 言 之 礫 骨 金、 不 慎 櫃 機之 襲 榮 辱11)。(8. 8) *下 線筆者。カ ッコ内の数字 は一句の文字数を表す。以下同 じ。 『聾 瞥 指帰 」 にお いて、下 句 の 「闇」は 「不 慎 」に変 え られ て い る。 これ は 『易 経 』 繋 辞 伝 上 を踏 ま え て の改 変 で あ る12)。これ に よ って 上 下 句 の文 字 数 が変 わ って対 句 が失 わ れ な い よ うに、 『三 教 指 帰 』 で も上 句 の 「照 」 が 「明知 」 に変 え られ て い る。 これ は対 偶 を 意 識 した改 変 の端 的 な例 で あ る。 文 字 を省 く改 変 の 中 で、 四字 が ま とあ て省 か れ て い る例 が 五 例 あ る。一 例 は亀 毛 先 生 論 の始 め に現 れ、 他 の四 例 は仮 名 乞 児 論 にお け る観 無 常賦 の 中 に現 れ る。 <費 料2> 散 文 中 に お け る四 字 消 去 に よ る改 変 例 【聾 】 吾 聞。上 智 不 教、下 愚 不 移。古 聖 猶 病 其 難、而 況 今 愚 何 易。(2)(4. 4. 6. 6) 【三 】 吾 聞。 上 智 不 教、 下 愚 不 移。 古 聖 猶 痛、 今 愚 何 易13)。(2)(4. 4. 4. 4) 『聾 警 指 帰 』 にお いて4. 4. 6. 6字 で あ った文 が 『三 教 指 帰 」 で は四字 が削 ら れ る こ とに よ って4. 4. 4. 4字 の文 に変 え られ、 且 っ 対 句 とな る絶 妙 な改 変 が な さ れ て い る。 これ に よ って 『三 教 指 帰 」 は よ り形 の整 った騨 麗文 とな っ て い る14)。 <資 料3> 観 無 常 賦 に お け る四字 消 去 に よ る改 変 例 【聾 】 然 則。 寂 蓼 非 想、 八 萬 長 壽、 已短 電 激。(2)(4. 4. 4) 放 畷 神 仙、 敷 千 遠 命、 忽 同雷 撃。(4. 4. 4) 【三 】 然 則。 寂 蓼 非 想、 已短 電 激。(2)(4. 4) 放 膿 神 仙、 忽 同 雷 撃15)。(4. 4) 『聾 瞥 指 帰 』 にお いて 「然 則 」 以 下 は3句 ず っ の6句 で 対 偶 を構 成 して い る が、 『三 教 指 帰 』 で は 「八 萬 長 壽 」 と 「敷 千 遠 命 」 の 二 句 が 省 か れ る こ とに よ って 四 字 四 句 の ま と ま りが 得 られ て い る。 ま た、 そ れ に よ って 押 韻 字 を含 む 「已短 電 激 」 と 「忽 同 雷 撃」 が 偶 数 句 とな り、 「激 」(kek/23錫 韻 ・入 声16))と 「撃」(kek/23錫 韻 ・入 声)を 偶 数 句 末 字 で 押 韻 す る こ と が で き て い る17)。 以 上 か らわ か るよ うに 四字 を ま とめ て 削 除 す る改 変 は、 そ れ に よ って 四 ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 字 四句 の ま と ま りを得 させ る もの で あ る。賦 に お け る四例 は押 韻 の リズ ム を整 え るた め に 四字 が 削 除 され た と考 え る のが 妥 当 で あ る。 ま た対 偶 の改 変 に は文 字 を一 方 に お い て は加 え、 も う一 方 に お い て は削 る こ とに よ る改 変 を窺 う こ と もで き る。 <資 料4> 文 字 の増 加 と削 除 の両 方 に よ る改 変 例 【聾 】 償 進 寺 見 佛、 不 俄 罪 答、 還 作 耶 心。(5. 4. 4) 未 知。 一 構 入 因、 遂 為 菩 提、 四鉄 之 果、 復 登 聖 位。(2. 4. 4. 4. 4) 敷 過 庭 蒙 謹、 不 諌 己悪、 翻 恨 提 斯。(5. 4. 4) 豊 思。 諄 諄 之 意、 切 於 猶 子、 勲 勲 之 恩、 重 於 比 見。(2. 4. 4. 4. 4) 【三 】 若 償。(2) 入 寺 見 佛、 不 繊 罪 替、 還 作 邪 心。(4. 4. 4) 未 知。 一 構 入 因、 遂 為 菩 提、 四 鉄 之 果、 終 登聖 位。(2. 4. 4. 4. 4) 過 庭 蒙 講、 不 謙 己悪、 翻 恨 提 衡。(4. 4. 4) 豊 思。 諄 諄 之 意、 切 於 猶 子、 勲 勲 之 思、 重 於 比 見18)。(2. 4. 4. 4. 4) 『聾 瞥 指 帰』 は5. 4. 4字 と2. 4. 4. 4. 4字 を 二 回繰 り返 す こ とに よ って 対 偶 関 係 を構 成 して い る。 一 方 『三 教 指 帰 』 で は 「償」 の前 に 「若 」 が 加 え られ て 「若 償 」 が句 端19)に 変 身 し、対 偶 の 枠 か ら外 さ れ て い る。 そ して、 『聾 瞥 指帰 』 にお い て 「償」 と対 応 して い る 「敷 」 も同 時 に削 除 され る こ と に よ って、 全 体 の対 偶 が保 たれ て い る。 これ に よ っ て 『三 教 指 帰 』 は4. 4. 4字 と2. 4. 4. 4. 4字 を繰 り返 す対 偶 関 係 に改 善 され て い る。 そ の 巧 妙 さ に 驚 か さ れ る。 そ の他 の例 も句 と句 の 対 偶 関 係 が成 り立 っ よ うに、 あ る い は対 偶 関 係 を 失 わ な い よ うに して 『聾 暫 指帰 」 か ら 『三 教 指 帰 」 へ 改 変 さ れ て い る。 (三)音 韻 に よ る 『三 教 指 帰 』 へ の 改 変 音 韻 を理 由 に諸 本 が 揃 って 改変 され て い る もの は、 仮 名 乞 児 論 に お け る 観 無 常 賦 と生 死 海 賦 の 中 に の み見 受 け られ る。 「賦 」 が 韻 文 で あ る の で こ れ は 当然 で あ る。『聾 替 指 帰 』 か ら 『三教 指帰 』 へ の改 変 の 中 に、 この 押

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(6) 韻 字 に相 当 す る箇 所 や音 韻 の規 則 を考 慮 して改 変 が な さ れ て い る箇所 を 窺 う こ とが で き る20)。そ の数 は観 無 常 賦 が14箇 所、 生 死 海 賦 が5箇 所 で あ る。 以 下 そ の 例 を い くっ か 見 て い きた い。 〈資 料5>音 韻 に よ る改 変 例1 【聾 】 六 度 之 筏、 解 縄 漂 津。 八 正 之 航、 蟻 樟 愛 濱。 【三 】 六 度 之 筏、 解 績 漂 河。 八 正 之 航、 蟻 樟 愛 波21)。 『聾 瞥 指 帰 』 にお け る押 韻 字 「津 」(tsien/21真 韻 ・平 声)と 「濱 」(pie n/21真 韻 ・平 声)は、 『三 教 指 帰 』 に お い て そ れ ぞ れ 「河」(ha/39歌 韻 ・ 平 声)と 「波 」(pua/40父 韻 ・平 声)に 揃 って 変 え られ て い る(歌 韻 と 文 韻 は通 韻 す る)。 これ は押 韻 を考 慮 の上 で 改 変 した端 的 な例 で あ る。 〈資 料6>音 韻 に よ る改 変 例2 【聾 】 吾 若 不 勉 生 前、 蓋 有 羅 一 苦 一 螢。 萬 歎 萬痛、 如 何 能 逃。(6. 7. 4. 4) 【三 】 吾 若 不 勉 生 日、蓋 羅 一 苦 一 辛。 萬 歎 萬痛、 更 免 誰 人22)。(6. 6. 4. 4) 『聾 瞥 指 帰 」 に お い て、 「労 」(lau/38豪 韻 ・平 声)と 「逃 」(dau/38豪 韻 ・平 声)が 押 韻 して い る。 この箇 所 は 「如 何 能 逃 」 の 表 現 を 変 え る の が 目的 で あ っ た の だ ろ う。『三 教 指 帰 』 にお いて、 「如 何 能 逃 」 は 「更 髭 誰人 」 に変 え られ、 押 韻 字 が 「逃 」 か ら 「人 」(rien/21真 韻 ・平 声)に 変 わ っ た こ と に よ って 「労 」 も 「辛 」(sien/21真 韻 ・平 声)に 変 え られ て い る の で あ る23)。 <資 料7>音 韻 に よ る改 変 例3 【聾 】 燐燐 燗 燗、 震 震 填 填。 溢 目溢 耳、 満 地 満 天。 【三 】 燐 燐 燗 燗、 震 震 填 填。 溢 目溢 耳、 満 黄 漏 玄24)。 この箇 所 は 「天 地 」 か ら 「玄 黄 」 に改 変 され て い る。 「玄 黄 」 と は、 空 が くろ 玄 い こ と と地 が黄 色 い こ とで あ り、 「天 地 」 と変 わ らな い。 『聾 瞥 指 帰 』 に お け る押 韻 字 は 「填 」(den/33先 韻 ・平 声)と 「天 」(t'en/33先 韻 ・平 声)で あ る。 そ して 『三 教 指 帰 』 にお け る新 た な押 韻 字 も 「玄 」(huen/3 3先 韻 ・平 声)で あ る。っ ま り、内容 と押 韻 を 全 く変 えず に 『聾 瞥 指 帰 」の 改変 が 行 わ れ、 そ れ で い て 『三 教 指 帰 」 の表 現 が よ り味 わ い深 くな って い ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 い る。 これ は意 味 内容 と音 韻 の両 者 を考 え合 わ せ て初 め て な し得 る、 才 能 豊 か な改 善 で あ る。 他 の例 も押 韻 字 や リズ ムを考 慮 した 改変 で あ り、押 韻 の繋 が りを 断 た な い よ うに あ るい は抑 揚 を っ け るよ うに 改変 さ れ て い る。 (四)表 現 に よ る 『三 教 指 帰 」 へ の 改 変 先 に述 べ た よ うに表 現 上 の改 変 は本 文 の全 般 に 及 ん で い て、 そ の 数 も 100に 昇 る。故 に 今 そ の 一 々 を 挙 げ て 検 討 す る こ とは で き な い。 特 に 大 き く改 変 され た もの の中 の幾 っ か を見 て い き た い。 <資 料8> 表 現 上 の改 変 例 *頁 と行 は太 田本のそれを指す。 一字 の み を変 え た り削 っ た改 変 に比 べ て、 これ らに は い ず れ も全 面 的 な書 き直 しが施 され て い る。 『三 教 指 帰 』 の 「卿 之 投 薬 」、「莫 秘 春 雷」、「霧 来」、 「五 内 燗 裂 」 は どれ も 『聾 啓 指 帰 』 と全 く違 っ た文 字 で 表 現 され て い る が、 『聾 瞥 指 帰 』 と同 趣 旨 の 内容 を巧 み に言 い換 えて い る。 「黄 陵 」か ら 「叔 度」 へ の改 変 は典 故 に して い る 『後 漢書 」 の知 識 が な け れ ば成 立 し な い25)。ま た、 「投 薬 」、「四 倒 」(常 ・楽 ・我 ・浄)、 「十 悪 」(殺 生 ・楡 盗 ・邪 淫 ・妄 語 ・綺 語 ・悪 句 ・両 舌 ・樫 貧 ・瞑志 ・邪 見)は み な仏 教 的 な内 容 と表 現 で あ る。 表 現 上 の改 変 は対 偶 や音 韻 上 の改 変 の よ うに客 観 的 な判 断 が で きず 主 観 に頼 らざ る を得 な い の が難 点 で あ るが、 これ らの改 変 例 は み な見 事 に 改 善 され て い る と言 い得 る もの で あ る。 以 上、 「対 偶」、「音 韻 」、「表 現 」 に分 けて両 指帰 の 本 文 上 の 異 同 を 比 較 して き た。 これ に明 らか な よ うに、 両 指 帰 の改 変 に は少 な くと も 「対 偶 」、 「音韻 」、「表 現 」 の三 本 の筋 が 通 って い る と筆 者 は考 え る。 そ して 上 に 見 て きた 改 変 作 業 は亀 毛 先 生 論 か ら十 韻 詩 の直 前 まで、 ま さ し く本 文 の端 か

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(8) ら端 に ま で及 ん で い る。 つ ま り、『聾 瞥 指 帰 』 の改 変 は 多 角 的 ・全 面 的 な 作 業 で あ り、 この作 業 は 『聾 替 指 帰 」 を よ り よい作 品 に しよ う とす る文 芸 的 ・修 辞 的 な理 由 に よ る もの で あ る と言 え るだ ろ う26)。そ して そ の 改 変 作 業 は全 文 を我 が もの に して い る か ら こそ可 能 で あ り、大 師 以 外 の誰 か の 手 に よ って 改 変(改 善)作 業 が 行 わ れ た と考 え る こ とは困 難 で あ る。 この結 論 は必 然 的 に太 田 氏 の 以 下 の よ うな推 論 を懐 か せ る の で あ る。 筆 者 の 見解 を いえ ば、 『聾 暫 指 帰 』 の首 尾 が 夫 々、 大 き く新 しい も の に変 え られ た と き、 そ の 範 囲 は そ こだ け に止 ま らず、 同 時 に、 本 文 に も改変 が加 え られ、 或 い は四 字 句 な どが そ の ま ま削 除 さ れ、 或 い は文 字 が細 か く改変 され るな ど、全 篇 に亘 って、 綿 密 に朱 が施 され て い る、 とみ て い る。 『聾 瞥 指 帰 」 の、 首 尾 だ け で な く、 そ の 本 文 を もか く も 縦 横 に改 め る こ とな どは、 当 時、 空海 を 除 いて 他 に誰 が 手 を下 し得 た で あ ろ うか27)。 『聾 瞥 指 帰 』 の本 文 が大 師 ご自身 に よ って手 直 しされ た のな らば、 当然、 大 師 は そ の際 に序 文 と十 韻 詩 に も目 を通 され た こ とで あ ろ う。 そ うで あ れ ば、 大 師 は本 文 だ けを 改 作 され て序 文 と十 韻 詩 は改 あ ず に そ の ま ま に され た とす るの は逆 に不 自然 で あ ろ う。 こ こで 確 認 して お き た い事 項 が 一 点 あ る。一般 的 に両指 帰 の構成 は序文 ・ 本 文 ・十 韻詩 に三 分 され るが、 実 際 は十 韻 詩 も本 文 で あ る。 十 韻 詩 は本 文 の最 末 尾 に あ るが、 そ の 前 の 「乃 作 詩 日28)」と繋 が って い る わ け で、 本 文 で あ る こ とに は変 わ りが な い。 っ ま り、 十 韻 詩 の改 変 も本 文 改 変 の一 環 と して考 え る べ きで あ る。 そ して、 大 師 は本 文 末 尾 の十 韻 詩 が 改 め られ るべ き理 由 を大 い に お持 ち だ った の で あ る。 そ のわ け は、 五 言 詩 に お け る音 韻 の 病 で あ る。 二、 『三 教 指 帰 」 十 韻 詩 真 作 説 (一)両 指 帰 の 十 韻 詩 に お け る音 韻 の 病 ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 管 見 の及 ぶ 限 りで は、 現 在 ま で両 指 帰 の十 韻 詩 全 体 に亘 る音 韻 の考 察 は 行 われ て い な い。 しか し、十 韻 詩 の よ う に五言 詩 に は守 るべ き音 韻 の細 か い規 則 が 存 在 す る。 そ して そ の規 則 が 守 られ な い と、 そ の 詩 は 「病 」 とな る。 大 師 は 『聾 啓 指 帰 』 の本 文 を改 変 され た 際 に、本 文 末 尾 の十 韻 詩 も音 韻 の 病 を避 け る た め に作 り直 され た と考 え られ るの で あ る。 そ して そ の改 変 の 際 に、 大 師 は病 を防 ぐだ けで はな く更 に音 韻 の技 巧 も加 味 さ れ て い る の で あ る。 大 師 御 作 の 詩 にお け る音 韻 の病 と技 巧 を検 討 す る と き、 同 じ く大 師 の撰 で あ る 『文 鏡 秘 府 論 」 を用 いて 考察 す るの が最 も適 して い るだ ろ う。 なぜ な ら、 『文 鏡 秘 府 論 』 が大 師 に よ って 編 纂 され た 以 上、 そ の 理 論 を 大 師 が 認 知 され て い る と い う前 提 で 考察 す る こ とが で きる か らで あ る。 『文 鏡 秘 府 論 』 西巻 「文 二 十 八 種 病 」 は、五 言 詩 の作 成 に際 して避 け るべ き病 が 詳 し く説 明 され て い る29)。主 と して五 言 詩 に お け る病 が論 じ られ て い るが、 そ の 中 で五 言 詩 の 音韻 に関 す る病 は、 筆 者 の分 析 に よ る限 り で は16病 あ る濁)。今 そ の 中 で、 「水 渾 」、「火 滅 」、「木 枯」、「金 訣 」、「上 尾 」、「第 二 ・ 四字 」、蜂 腰 」、「鶴 膝 」、「齪 酷 」 の9病 を 使 って 両 指 帰 の 十 韻 詩 に お け る 病 を比 較 考 察 す る31)。 〈資 料9>両 指 帰 の十 韻詩 にお け る音 韻 の病 *表 の数字 は聯を表す。 この数字 は本稿の末尾に載 せた十韻詩 の冒頭 に付 してい る 丸数字 に対応す る。「上」、「下」 はそれぞれ上句 と下 句を表 す。 鶴膝 の 「9-10」は 第9聯 と第10聯の間での病 であることを表す。 上 の 表 を み る と、 『三 教 指帰 』 の病 の数 が 『聾 瞥 指 帰 』 の そ れ に比 べ て 明 らか に減 少 して い る ことが わか る。 僅 か に 「木 枯 」 の み 『聾 薯 指 帰 』 の 方 が病 が 少 な く、 ま た 「齪 鱈 」 が 両 指帰 で 同数 で あ る以 外 は、 全 て 『三 教 指帰 』 の 方 が 病 が 少 な い。

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(10) 両 者 の 間 で一 番 差 が 激 しい の は 「第 二 ・四 字 」 の病 で あ る32)。『聾 瞥 指 帰 』 に お い て は8句 で病 が存 在 す る。 す な わ ち第1聯 下 句 の 「憶」 と 「老」、 第2聯 下 句 の 「怠 」 と 「葉 」、第3聯 上 句 の 「現 」 と 「覚 」、下 句 の 「寂」 と 「切 」、第6聯 下 句 の 「己」 と 「作 」、第7聯 上 句 の 「濫 」 と 「六 」、下 句 の 「抜 」 と 「両 」、第10聯 上 句 の 「幾 」 と 「擾 」 が す べ て 灰 声 で 病 と な る。 一 方 『三 教 指 帰 』 で は第6聯 下 句 の 「忘 」 と 「与 」 の み が病 とな る。 改 め られ た 『三 教 指 帰 」 は今 体 詩 の性 格 を よ く有 して い る と言 え るだ ろ う。 「火 滅 」 も両 指 帰 間 で 差 が 大 き い病 で あ る認)。『聾 瞥 指 帰 』 で は4聯8 句 問 に お い て灰 声 で 「火 滅」 とな って い る。 す な わ ち第3、7、8、10聯 目 の上 下 句 第 二 字 目が そ れ ぞ れ 「現 」 と 「寂 」、「濫 」 と 「抜 」、「浄 」 と 「濁 」、「幾 」 と 「仰 」 で す べ て 灰 声 で 病 を犯 して い る。一 方 『三 教 指 帰 』 で は 「火 滅 」 は完 全 に 防 が れ て い る。 そ れ ば か りか、 『三 教 指 帰 」 で は巧 妙 に平 灰 の流 転 が な され て い る こ と も窺 え るの で あ る。 詳 し くは後 に触 れ る。 ま た 「金 鉄 」 が 『三 教 指 帰 』 に お い て一 句 の み に しか な い こ と も注 目 に値 す る。 『三 教 指帰 」 にお い て 「火 滅 」 と 「金 映 」 は た だ 上 下 句 を 平 灰 に す るだ けで は な く、同 時 に 「第 二 ・四字 」 もよ く考 慮 され て い るの で あ る。 「蜂 腰 訓)」に 関 して は、 『聾 啓 指 帰 』 に お い て 第7聯 上 句 の 「濫 」 と 「度 」、第9聯 上 句 の 「諦 」 と 「処 」、第10聯 上 句 の 「幾35)」と 「輩 」 の3 箇 所 が 奇 し く も皆去 声 で病 とな って い る。 一 方 『三 教 指 帰 』 で は 「蜂 腰 」 は解 消 さ れ て い る。 「鶴 膝36)」は 『聾 瞥 指 帰 』 に お い て9-10聯 に亘 る一 箇 所 に存 在 す る。 す な わ ち、 第9聯 と第10聯 の第5字 目 で あ る 「処 」 と 「輩 」 が と もに去 声 で あ り、 「鶴 膝 」 に な って い る。一 方 『三 教 指 帰 』 に 「鶴 膝」 は存 在 しな い。 ま た 『三 教 指 帰 」 で は、 第3、5、7、10聯 の 上 句 末 字 に それ ぞれ 「述 」、 「法」、「落 」、「縛 」 が使 わ れ て お り、共 に入 声 で あ る。 これ ら の入 声 の 使 い方 と観 無 常 賦 ・生 死 海 賦 にお け る入 声 の使 用 に よ る 『三 教 指 帰 』 へ の改 変 と に類 以 性 が 見 られ る こ と は注 視 さ れ る べ き点 で あ る。 ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 「上 尾 」 は詩 のみ に関 わ らず、 韻 文 に お い て 最 も避 け る べ き大 病 で あ る37)。『三 教 指 帰 』 で は 「上 尾 」 は完 全 に避 け られ て い るが、 『聾 嘗 指 帰 』 に は第3聯 上句 末 字 「尊 」(平 声)に 「上 尾 」 が 存 在 す る。 他 の9句 で 病 が 避 け られ て い る こ と に よ り、『聾 瞥 指 帰 」 に お い て も 「上 尾 」 に 対 す る 考 慮 の 跡 を 窺 う こ と はで き る。 しか し同 時 に病 が1句 存 在 す るこ とによ り、 「上 尾 」 を徹 底 して避 け よ う とす る意 図 を窺 う こと はで き な い。 (二)『 三 教 指 帰 」 十 韻 詩 に 見 られ る 音 韻 の 技 巧 十 韻 詩 に お け る 『三 教 指帰 』 の 優位 性 は病 が避 け られ て い る とい う こ と だ け で はな い。 病 の 回避 が 作詩 にお い て受 け身 的 で あ る と す れ ば、 逆 に作 詩 者 が積 極 的 に な り得 る もの に、 「換 頭 」 と 「双 換 頭」 の 技 巧 が あ る。 『文 鏡 秘 府 論 」 天 巻 「調 声 」 に、 第 一 句 の頭 爾 字 平 な れ ば、 次 句 の頭 爾 字 は去 上 入。 次 句 の頭 爾 字 去 上 入 な れ ば、 次 句 の頭 爾 字 は平。 次 句 の頭 爾 字 ま た平 なれ ば、 次 句 の頭 爾 字 は去 上 入。 次 句 の頭 爾 字 ま た去 上 入 なれ ば、 次 句 の頭 爾 字 は ま た 平。 此 くの如 くの輪 韓 して、 初 め よ り以 て 篇 を終 ふ る を名 づ けて 隻 換 頭 と為 す、 これ 最 善 な り。若 し此 くの如 くな るを 得 べ か らざれ ば、 即 ち篇 首 の第 二 字、 これ平 な れ ば、 下 句 の第 二 字 に、是 れ去 上入 を用 ひ、 次 句 の第 二 字 に もま た去 上 入 を用 ひ、 次 句 の 第 二字 に、 ま た平 を用 ふ。 此 くの如 く輪 韓 して篇 を終 へ て唯 だ第 二 字 を 換 へ、 其 の 第一 字 と下 句 の 第 一 字 と は、平 を用 ふ る も妨 げず。 此 れ また名 づ け て 換頭 と為 す。 然 れ ど も隻 換 に及 ばず。 ま た句 頭 の第 一字 是 れ去 上 入 に して、 次 の 句 頭 に去 上 入 を 用 ふ る を得 ざ る は即 ち聲調 はざ れ ば な り。慎 ま ざ るべ け ん や認)。 と説 か れ て い る。 っ ま り 「双 換 頭 」 と は上 句 第1・2字 目 と下 句 第1・2 字 目を平 灰 に分 け て、 いわ ば 「屏 風折 れ」 的 に平 灰 を循 環 さ せ る こ とで あ る。 これ は上 述 の病 の 中 で 「水 渾」 と 「火 滅 」 とに密 接 に関 係 して い る。 特 に 「換 頭 」 と 「火 滅 」 は関係 が深 い。 っ ま り、「火 滅」 の 病 を 避 け(上

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-160-(12) 下 句 第2字 目 を 平 灰 に す る)、 加 え て 平 灰 を流 転 させ る こ と が で きれ ば 「換 頭 」 の技 巧 に な る。 これ に よ って音 韻 の リズ ム が生 じ る の で あ る。 そ の際 に、 上 下 句 第1字 目 を共 に上 去 入 声(灰 声)に して は い け な い とい う こ と は、 「水 渾 」 を避 け るべ き こ とを説 いて い る。 こ こで両 指 帰 の 「水 渾」 と 「火 滅」 を も う一 度 見 る と、 『聾 啓 指 帰 」 の 場 合 は両 病 と も4聯8句 にお い て上 下 句 が灰 声 とな って お り、 「聲 調 はざ」 る こ とが わ か る。一 方 『三 教 指 帰 」 で は 「火 滅 」 が 完 全 に 防 が れ、 且 っ 「換 頭 」(平 灰 の流 転)も な され て い る。 す な わ ち、 第1聯 上 句 か ら第5聯 下 句 まで 第2字 目が 「諸 」(○)、 「教」(●)、 「欲 」(●)、 「王 」(○)、 「常」 (○)、 「習 」(●)、 「轄 」(●)、 「傳」(○)、 「仙 」(○)、 「益 」(●)と 流転 し、再 び 第 七 聯 上 句 か ら第 九 聯 下 句 まで 「花 」(○)、 「露 」(●)、 「水 」 (●)、 「風 」(○)、 「塵 」(○)、 「徳 」(●)と 流 転 して い る。 『三 教 指 帰 」 に お い て ほ とん ど の句 で 平 灰 の流 転 が な され て い る の で あ る。 一 方 『聾 蓄 指 帰 』 の場 合 は、 平 灰 の流 転 は第4聯 上 句 か ら第6聯 下 句 ま で の 「深 」 (○)、 「厚 」(●)、 「普 」(●)、 「均 」(○)、 「他 」(○)、 「己」(●)の み で あ る。 「双 換 頭 」 に至 って は、両 指 帰 問 の差 が歴 然 と現 れ て い る。 『聾 瞥 指 帰 』 で は第2聯 の上 下 句 第1・2字 目に お い て、 「双 榮 」(○ ・○)と 「並 怠 」 (● ・●)が 平 灰 に な って い るが、2句 の み で あ る の で 流 転 は さ れ て い な い。 しか し 『三 教 指 帰 』 で は第2聯 上 句 か ら第5聯 下句 まで、「性 欲」(● ・ ●)、 「讐 王 」(○ ・○)、 「綱 常」(○ ・○)、 「受 習」(● ・●)、「攣 轄」(● ・ ●)、 「依 傳 」(○ ・○)、 「金 仙 」(○ ・○)、 「義 益 」(● ・●)と 「双 換 頭 」 が見 事 に成 立 して い る。 ま た、 第8聯 の上 下 句 に お い て、 「逝 水」(● ・●) と 「 風 」(○ ・○)で 上 下 句 第1・2字 目が平 灰 にな って い る。 そ の他、 第1・7聯 の上 句 第1・2字 目が そ れ ぞ れ 「居諸 」(○ ・○)、 「春花 」(○ ・ ○)で あ り、 も し下 句 第1字 目が灰 声 な らば そ の 後 の 「双 換 頭 」 が一 層 長 くな る。 これ らに よ って、 『三 教 指 帰 」 の十 韻 詩 に お い て は 「双 換 頭 」 の 技 巧 が 強 く意 識 さ れ て い る こ とが わ か る。 ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 以 上、 『文 鏡 秘 府 論 』 に基 づ いて 両 指帰 十 韻 詩 の音 韻 を 比 較 して き た。 この結 果 『三 教 指 帰 』 十 韻 詩 は、 沈 約 の 「八 病 」 の 中 にな い 「第 二 ・四字 」 や 『聾 瞥 指 帰 』 に は見 られ な い新 た な 「双 換 頭」 と 「換 頭」 の技 巧 を非 常 に考 慮 して作 り直 さ れ て い る とい うこ とが わ か る。 『三 教 指 帰 』 十 韻 詩 の 方 が 病 の少 な さ ・技 巧 の両 者 と もに 『聾 啓 指 帰』 十韻 詩 よ り も断 然 に勝 っ て い る と言 い得 る ので あ る。 『三 教 指 帰 』 十 韻 詩 に関 す る偽 作 説 の一 っ に、 『三 教 指 帰 』 の 対 句 表 現 が 『聾 瞥 指 帰』 に比 べ て極 端 に少 な い こ とが挙 げ られ て い る39)。確 か に 対 偶 と い う尺度 か ら両 指 帰 を比 較 す る と 『聾 瞥 指 帰 』 の方 が整 然 と して お り、 そ の 改 変 はあ る い は改 悪(偽 作)と 見 て取 れ るか も しれ な い。 しか し 『三 教 指 帰 』 十 韻 詩 は対句 に重 きが 置 か れ て お らず、 上 で見 た よ うに音 韻 と い う視 点 か ら十 韻 詩 を 見 た場 合、 『三 教 指 帰 」 へ の改 変 は ま ぎれ も な い 改 善 な の で あ る。 ま た、 十 韻 詩 は構成 上 か らも 『三 教 指 帰 』 の方 が勝 って い る。 『聾 啓 指 帰 』 で は第1・2聯 で 儒 ・道 の こ とが述 べ られ、 第3聯 以 降 は仏 教 の 内 容 が説 か れ て い る。一 方 『三教 指帰 』 で は、 第1・2聯 にお い て三 教 の調 和 論、 第3・4聯 に お い て 儒 ・道 の二 教、 第5・6聯 にお いて 仏 教、 第7・ 8聯 に お い て 自然 に託 した無 常 観、 第9・10聯 にお いて 出 家 宣 言 が詠 わ れ て い る。 っ ま り、2聯4句 ご とに 内容 が 変 え られ て い るの で あ る。 この こ とは 『文 鏡 秘 府 論 」 天 巻 「調 声 」 に説 か れ て い る理 論 と一 致 す る40)。 『三 教 指 帰 」 十 韻 詩 へ の 改変 は 『文 鏡 秘 府 論 』 西 巻 「文 二 十 八 種 病 」 と 天 巻 「調 声 」 の理 論 に則 って い ると言 い得 る。 これ は誰 しも に認 め られ て しか るべ き事 実 で あ る。 そ して そ の改 変 作 業 は観 無 常 賦 や 生 死 海 賦 と同 様 に韻 文 にお け る音 韻 の 改善 作 業 で あ り、十 韻 詩 以 前 の 本 文 か ら続 い た文 芸 的 な改 善 作 業 の一 環 と して捉 え る のが 妥 当 で あ る。 つ ま り この こ と は 『三 教 指 帰 』 十 韻 詩 が、 と り もな お さず 大 師 に よ って 改 変 され た 大 師 の真 作 で あ る と い う こ と に他 な らな い。 以 上 に よ り、 筆 者 は 『三 教 指 帰 』 十 韻 詩 が 大 師 の 御 作 で あ る と い う こ とに疑 いが な い。

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(14) 三、 『三 教 指 帰 」 序 文 真 作 説 (一)『 三 教 指 帰 」序 文 に お け る 『文 鏡 秘 府 論 」南 巻 「論 文 意 」の 影 響 前 節 まで にお いて 『聾 瞥 指 帰 』 の本 文 と末 尾 の十 韻 詩 は文 芸 的 ・修 辞 的 な理 由 で 大 師 ご 自身 に よ って 『三 教 指 帰 』 に改 め られ た こ とを示 した。 残 る は序 文 の 真 偽 問 題 で あ る。 この問 題 を解 決 す る一 っ の方 法 と して、 筆 者 は 『文 鏡 秘 府 論 』 が 重 要 な鍵 を握 って い る と考 え る。 前 節 に お け る考 察 か ら、十 韻 詩 の 改 変 に は 『文 鏡 秘 府 論 』 の存 在 と影 響 が あ った とい う こ と は 疑 い得 な い。 裏 を返 せ ば、 『三 教 指帰 』 序 文 と 『文 鏡 秘 府 論 』 と の 関 連 性 が確 認 で きれ ば、 そ の ことが 『三 教 指 帰 』 序 文 も大 師 に よ って 改 変 され、 そ の改 変 時 期(=『 三 教 指 帰 』 の成 立)が 『文 鏡 秘 府 論 』 の編 纂 時 期 と関 係 して い る と い う こと の証 左 に な り得 るは ず で あ る。 『三 教 指 帰 』 序 文 と 『文 鏡 秘 府 論 』 との相 関性 にっ いて はす で に先 学 が 指 摘 して い る。 加 地 伸 行 氏 は 『三 教 指 帰 」 序 文 に お け る 「動 乎 中、 書 干 紙。」 の 典 故 と して 『文 鏡 秘 府 論 」 南 巻 「論 文 意 」 の 詩 は志 に本 つ くな り。心 に在 るを志 と為 し、言 に発 す るを 詩 と為 す。 うち あ ら 情 中 に動 き て(情 動 乎 中)、 言 に形 はれ、 然 る後 に、 之 を 紙 に書 くな り(書 之 於 紙 也)41)。(カッ コ筆 者) を 指摘 して い る。 ま た、 福 永 光 司氏 も全 く同 じ箇 所 を 示 して い る42)。「動 乎 中」 のみ で あ る の な ら、 そ の典 故 は 『詩 経 』 大 序 あ る い は 『禮 記 』 樂 記 篇 に求 め る こ と が で きる43)。しか し、 これ ら は 「書 干 紙 」 を一 節 に含 ま な いた め、 典 故 と して 『文 鏡 秘 府 論 」 南巻 の 一 節 に は及 ば な い。 両 者 の 緊 密 性 に対 して 加 地 氏 は、 (『文 鏡 秘 府 論 』 南 巻 「論 文 意 」 の一 節 は 【筆 者 補 】)本 文 の 「動 乎 中、 書 干 紙。」 と は、 あ ま りに も似 て い る。 もち ろん、 軽 々 に 断 ず る わ け に は行 か な い が、(中 略)そ の(『 三 教 指 帰 』 【筆 者 補 】)改 作 年 代 の 一 っ の証 拠 とな るで あ ろ う。 【一 】 『三 教 指 帰 』 序 文 の 文体 が、 ﹃三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 全 体 に 回顧 的 で あ る こ と、 【二 】 三 教 批 判 で は な くて、 三 教 評 価 を 強 調 して い る こ と、(こ れ は 『文 鏡 秘 府 論』 に強 く流 れ て い る。)が、 そ れ を さ らに裏 付 け るで あ ろ う艇)。 と述 べ て い る。 ま た、 上 の 『文 鏡 秘 府 論 』 南 巻 「論 文 意 」 の一 節 は王 昌齢 『詩 格 』 の 論 で あ り、 大 師 に よ って 将 来 され た書 物 で あ る こ と が 知 られ て い る45)。こ の こ と は と り もな お さ ず 「動 乎 中、 書 干 紙。」 の 典 故 と して 「論 文 意 」 の 一 節 を 引 用 で き る人 物 と して ま さ しく大 師 が 最 もふ さ わ しい とい う こと を示 してお り、「動乎 中、 書 干 紙 」。を 含 む 『三 教 指 帰 』 序 文 が 制 作 さ れ た時 期 は大 師 の帰 朝 後 で あ る と い うこ とを 意 味 す る。 加 地 氏 は 「動 乎 中、 書 干 紙。」 の 典故 と して上 に 引 い た 「論 文 意 」 の 一 節 に着 目 した。 しか し上 の一 節 を よ く見 る と、 『三 教 指 帰 』 序 文 の典 故 が も う一 つ 存 在 す る こ と に気 が 付 く。 そ れ は 『三 教 指 帰 」 序 文 の 「何 不 言 志46)。」 の典 故 と して、 「詩 は志 に本 つ くな り。心 に在 るを 志 と為 し、 言 に 発 す る を詩 と為 す。」(下 線 筆 者)の 部 分 で あ る。 『三 教 指 帰 簡 注 』 は 「何 不 言 志。」 の典 故 と して、 『禮 記 』 樂 記 篇 の 「詩 言 其志 也。」 と 『春 秋 左 氏 伝 」 嚢 公27年 の 「詩 以 言 志。」 を挙 げ る47)。福 永 氏 は 『春 秋 左 氏 伝 」 の 同 じ箇 所 と 『尚 書 」 舜 典 の 「詩 は志 を言 う。」 と 『論 語 」 公 冶 長 編 の 「孟 ぞ 各 お の 粛 の 志 を 言 わ ざ る。」 の 三 っ を 挙 げ る48)。『論 語 』 以 外 の 内 容 は、 「詩 」 は 「志 」 を 「言 」 う もの で あ る こ とを説 いて い る点 で 一 致 す る。 故 に 「論 文 意 」 の 一 節 は十 分 に典 故 と して の 資 格 が あ る。且 っ この 文 が 「動 乎 中、 書 干 紙。」 の典 故 で あ る一 文 の直 前 に あ る と い う こ と を 鑑 み れ ば、 「論 文 意 」 の一 文 は む しろ そ の他 の文 よ り も典 故 と して 適 し て い る と 言 え るだ ろ う。 もち ろん これ も王 昌 齢 『詩 格』 か らの 引用 で あ る。 『三 教 指 帰』 序 文 は 「何 不 言 志。」 の前 に 「人 之 窮 憤、」 が あ る。 こ の 「人 之 窺 憤、」 の典 故 と して 加 地 氏 は 『詩 経 」 蓼 薫 の 「我 心 写 分」 と 『論語 』 述 而 篇 の 「発 憤 忘 食」 を 挙 げ、 さ りに 「大 抵 賢 聖 発 憤 之 所 為 作 也 」 を 含 む 『史 記 』 太 史 公 序 に典 故 を 求 め て い る49)。福 永 氏 は 「爲 」 の典 故 と して 『詩 経 』郡 風 を挙 げて い るが、 「憤 」 の典 故 は挙 げ て い な い50)。っ ま り 「窺」

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(16) と 「憤 」 の両 方 を含 む一 節 は指 摘 さ れ て い な い。 そ の意 味 で は、 『文 鏡 秘 府 論 』 南 巻 「論 文 意 」 の 「詩 者 書 身 之 行 李、 序 當 時 之 憤 氣。」(下 線 筆 者) も典 故 の 候 補 と成 り得 るだ ろ う51)。ま た こ れ は 『三 教 指 帰 」 序 文 の 「唯 窺 憤 葱 之 逸 氣 」 と も緊 密 で あ る。 これ も ま た王 昌齢 『詩 格 』 の 文 で あ る。 加 地 氏 は さ らに、 『文 鏡 秘 府 論 」 序 文 の 「貧 道、 幼 に して 表 舅 に 就 き て や ほ 頗 や藻 麗 を學 び、 長 じて 西秦 に入 りて、 粗 ぼ鯨 論 を 聴 く52)。」 に 着 目 し、 「藻 麗 」 と は駐 催 文 の こ と を指 し、「飴 論 」 と は簡 潔 な 表 現方 法 を と る文 体 を 指 す と解 した53)。そ して そ の根 拠 に南 巻 「論 文意 」 の あ ら よ か な 古 文 は格 高 く、一 句 に意 を見 はす は、則 ち 「股 肱 良 き哉(股 肱良 哉)。」 あ ら 是 な り。其 の次 に爾 句 に意 を見 は す は則 ち、 「関 関 た る誰 鳩 は、 河 の 洲 に在 り(関 関 雅 鳩、 在 河 之 洲)。」 是 な り。(中 略)高 手 の作 勢 は、 こ も 一 句 ご と に更 こ も別 に意 を起 し、其 の次 は爾 句 に意 を起 す。 意 は涌 煙 の如 く、地 下 よ り天 に昇 り、向 後 に漸 く高 く漸 く高 く して、 階 して 上 るべ か らざ るな り。 下 手 は、 下 句 上 句 よ り も弱 く、 向背 を看 ず、 意 宗 を立 て ず、 皆 な堪 え ざ るな り。凡 そ文 章 は皆 な難 しか らず。 ま た辛 苦 せ ず。 『文 選 』 の詩 に 「朝 に誰 郡 の 界 に 入 り、 左 右 に我 が 軍 を 望 む (朝 入 謙 郡 界、 左 右 望 我 軍)。」 と云 へ るが如 し。皆 な此 くの 如 き例 は、 難 しか らず、 辛 苦 せ ざ るな り留)。 を 挙 げ る。 この指 摘 は ま こ とに 当 を得 て い る。 上 の 理 論 に基 づ け ば、 勝 れ た 文 章 と は辛 苦 せ ず に1・2句 とい う短 さで 意 を 表 して い る もので あ る と 言 え るだ ろ う。 そ して この 「格 高 」・「高 手 作 勢 」・「不 難 不 辛 苦 」 の表 現 は 対 句 にす る こ とを 強 制 しな い。 これ は修 辞 を豊 か に し、2句 ・4句 で 対 句 を厳 格 に守 る駐 催 文 と は対 照 的 で あ る。 実 に これ と類 似 した 表 現 を 『三 教 指 帰 」 序 文 に見 出 せ るの で あ る。 〈資 料10>『 三 教 指 帰 」 序 文 にお け る 「格 高 」・「高 手 作 勢 」・「不難 不辛 苦」 の表 現 【4言1句 】 伏 腐 鎖 仰。 遊聴 椀 市。 性 則 恨 戻。 【4言2句 】 人 之 写 憤、 何 不 言 志。 谷 不 惜 響、 明 星 来 影。 触 目勧 我、 ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 誰 能 係 風。 聖 者 駆 人、 教 網 三 種。 浅 深 有 隔、 並 皆 聖 説。 若 入 一 羅、 何 乖 忠 孝。 顧 其 習 性、 陶 染 所 致。 彼 此 両 事、 毎 日起 予55) 『三 教 指 帰 』 序 文 中 に あ る4言 の多 くが、 「格 高 」・「高 手 作 勢 」・「不 難 不 辛苦 」 の 表 現 で あ る こ とが わか る。 そ して 上 の 表 現 は 自叙 伝 ・回顧 録 の全 般 に及 ん で い る。 確 か に騎1麗文 や 対 句 と い う観 点 の み で 『三 教 指 帰 』 序 文 を見 れ ば、 自叙 伝 や 回 顧 録 の表 現 は 『聾 替 指 帰』 序 文 や本 文 に劣 る だ ろ う が、 「格 高 」・「高 手 作 勢 」・「不 難 不 辛 苦 」 とい う視 点 を加 え て 見 れ ば、 『三 教 指 帰 」 序 文 の大 半 を 占め る 自叙 伝 と回顧 録 の 表 現 は決 して 矛 盾 して い な い の で あ る。 これ に関 連 して偽 作 説 は 『三 教 指 帰 』 序 文 の 「拉 雪 蛍 於 猶 怠、 怒 縄 錐 之 不 勤56)。」 な どの 表 現 は今 で は偽 撰 と され る 『高 野 四 至 敬 白 文 』 の 表 現 の よ うに 「和 習 」 券 券 と漂 う代 物 で あ る と述 べ て い る57)。そ こで 『高 野 四 至 敬 白文 』・中 に あ る類 似 した六 言 の表 現 を抜 き出 す と6句 存 在 す る。 そ れ ら は 「指 妙 高 以 為 僖 」、「引輪 鐵 而 作 帯 」、「知 晋 賢 之 鏡 智 」、「豊 遍 智 之 在 我 」、 「観 華 蔵 於 心 海 」、「念 實 相 於 此 山」 で あ る58)。しか し、 こ れ らの6句 を 含 めて 『高 野 四 至 敬 白文 』 の多 くの表 現 は実 に 『沙 門 勝 道 歴 山水 榮 玄 珠 碑 』 の中 に存 在 し、大 師 の表 現 そ の もの を借 用 して い る の で あ る59)。遺 憾 な が ら、偽 作 説 は ま さ し くま ぎれ の な い大 師 の漢 文 を 「和 習 芽 芽 」 と裁 断 して しま って い る。 そ こで 大 師 の 文 章 中 に お け る六 言 句 を調 べ る と、 「拉 雪 蛍 於 猶 怠、 怒 縄 錐 之 不 勤。」 と同様 の表 現 を 窺 う こ とが で き る。以 下 そ の一 端 を 示 す。 <資 料11> 大 師 著 作 中 にお け る六 言 句 の 表 現 『遊 山 慕 仙 詩』 惜 義 理 之 未 書60) 『沙 門 勝 道 の 碑 』 笑 衡 岱 之 猶 卑 晒 毘 香 之 又 劣 惜 王 侯 之 不 遊61) 『大 和 州 盆 田 池 碑 銘 』 笑 昆 明 之 非 僖 晒 褥 達 之 猫 小62) 『被 修 公 家 仁 王 講 表 白 』 胎 芥 石 於 猶 短 咲 金 剛 乎 易 滅紹) この よ うに、 上 の 表 現 と 「拉 雪蛍 於 猶怠、 怒縄 錐 之 不 勤。」 が 同 一 の 構

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(18) 造 を取 って い る とな れ ば、 この2句 が大 師 の 御 作 で な い とす る の は困 難 で あ る。 以 上 に見 て き た よ う に、 『三 教 指 帰 』 序 文 は 『文 鏡 秘 府 論 』 南 巻 「論 文 意 」 に お け る王 昌 齢 『詩 格 』 の 文 を典 故 と し、 さ ら にそ の 理 論 に基 づ い て 表 現 さ れ て い る と言 い得 る。 (二)『 三 教 指 帰 』 序 文 に お け る 『弁 正 論 」 の 影 響 『三 教 指 帰 』 序 文 の 冒頭 「文 之 起、 必 有 由。」 の典 故 と して、 『三 教 指 帰 簡 注 』 は 『弁 正 論 』 の序 の 「論 之 起 焉、 必 有 以 」 を挙 げ る餌)。この 『弁 正 論 」 につ いて、 品 田聖 宏 氏 は以 下 の よ う に論 じて い る。 『弁 正 論 」 は大 師 に よ って将 来 され て い る こ とが 『御 請 来 目録 』 に よ っ て知 られ る65)。し か し、『弁 正 論 』 は 『奈 良 朝 現 在 一 切 経 疏 目録 』 に存 在 し66)、大 師 は 『弁 正 論 」 を再 将 来 され た こ と に な る。 こ こで 『聾 瞥 指 帰 』 の本文 中 にお いて、 『弁 正 論 』 か ら引 用 した と して疑 い の な い 文 が 五 箇 所 に あ り、 そ れ らは い ず れ も 『弁 正 論 』 第 六 巻 に 当 た る67)。し か し、 『広 弘 明 集 』 第 十 三 巻 に 『弁 正 論 』 第六 巻 が 丸 ご と収 め られ て お り68)、こ こか ら、『聾 瞥 指 帰 』 を 作 る際 に 大 師 は 『弁 正 論 』 で は な く 『広 弘 明 集 』 を ご覧 に な った と考 え る こ とが で き る。 そ して 『弁 正 論 』 の再 将 来 に よ って第 六 巻 以 外 も ご覧 にな る こ とが で き る よ うに な り、第 一 巻 か ら数 ヵ所 を 『十 住 心 論 』 に 引 用 され69)、 『三 教 指 帰 』 の題 目 「三 教 指帰 」 の 基 と して第 四巻 を 参 照 す る こ と が で き る よ うに な った70)。こ の よ うに品 田氏 は論 じて い る71)。 今 この 「文 之 起、 必 有 由。」 の典 故 と さ れ る 「論 之 興 焉、 良 有 以 。 」 は 『弁 正 論』 序 に 当 た り、 ま た 「三 教 指 帰 」 の典 故 と さ れ る 「考 三 教 之 指 帰72)。」 は 『弁 正 論 』 第 四巻 に 当 た る。 品 田氏 の説 に基 づ けば、 『弁 正 論 』 序 と第 四巻 は第 六 巻 で は な い こ と に よ っ て、 『三 教 指 帰 』 序 文 の 作 者 は 『弁 正 論 」 を再 将 来 さ れ た大 師 で あ る と考 え る のが 最 も妥 当 で あ り、 そ の 制作 時 は帰 朝 後 とな る73)。 ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 四、 『三 教 指 帰 」 の 成 立 年 代 上 の 検討 か ら、 『三 教 指 帰 』 の改 変 に は序 文 ・本 文 ・末 尾 の 十 韻 詩 の 全 て に亘 って 大 師 の将 来 本 と 『文 鏡 秘 府 論 』 が深 く関 与 して い る と言 え るだ ろ う。 中 で も 『文 鏡 秘 府 論 』 に お け る、天 巻 「調 声 」、南 巻 「論 文 意 」、西 巻 「文 二 十 八 種 病 」、北 巻 「句 端 」 か らの 影 響 を 窺 う こ と が で き た。 これ らの理 論 は い ず れ も 『三 教 指 帰 』 へ の改 変 作 業 時 に利 用 され た わ けで あ り、 この よ うに 『文 鏡 秘 府 論 』 全 般 に及 ぶ理 論 を使 い こ なせ た人 物 は、 ま さ し く 『文 鏡 秘 府 論 』 の編 纂 者 大 師 で あ る、 と考 え るの が 最 も適 して い る。 ま た上 に挙 げ て きた事 項 は い ず れ も 『三 教 指 帰 』 の 成 立 年 代 が 大 師 の帰 朝 後 で あ る こ とを示 して い る。且 っ 『文 鏡 秘 府 論 』 との 親 密 性 か ら、 『三 教 指 帰 』 は 『文 鏡 秘 府 論 』 の編 纂 過 程 あ る い は編 纂 して 間 もな い時 期 に成 立 し た と筆 者 は考 え る。 『文 鏡 秘 府 論』 の成 立 年 代 は 弘仁10-11年 頃 で あ る74)。 よ って、 『三 教 指帰 』 の 成 立 時 期 は、 弘仁10年(819、 大 師 御 歳46才)以 降 数 年 の間 で あ る と筆 者 は考 え る75)。 以 上 の考 察 か ら 『三 教 指 帰 」 が 大 師 の 真 作 で あ る こ とを立 証 す る こ とが で き た と筆 者 は考 え る。

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『聾嘗指帰」十韻詩 の音韻

(1)作。。 心。 漁。 孔 教。。 馳 憶。 狩。。 老。 風

tsak siam Bio k'uij kau 416 iak fiau 1au piuu

(2)。 双。 栄。 今。 生。 始。 並0怠。 来 葉。。 終

sari yiugij loam staj fiei berg dai lai yiep t Iuu

(3)。 方 現O。 種 覚。。 尊。 円 寂。 一。 切O。 通

pia fien tfioi k3k tsuan fiiuen dzek iet ts'ei t'u

(4)。 誓。 深。 梁 溺。O海。 慈O厚。 漉。 焚。 籠

3iei Siam hard ndek hai dziei fiau sai biuan lurk

(5)。 悲。 普 四。。 生 類。 憧。。 均 一。。 子。 衆

piui pto sii sim hui siuet kiuen iet tsiei tfiuli

(6) O誘。 他。 専。 為 業。 励O。 己。 兼 作。。 功

iau t'a tfiucn fiiue juiap hei kiei kem tsak kuD

(7)汎0 濫。。 船 六。 度。 蕩。 抜。。 車。 両。 空

p'uun lam d3lucn link do tsio bAt tfza hail k'uh

(8)。能 浄。。翔。 蓼 覚。 悪。 濁。 泳。。塵。 夢

nark dzieh ziaij leu kak ak dok firun 3ien mbiuh

(9)。両 諦。。非。 殊 処。 一。。心。 為 塞。。融

liars tei piuai 3iu trio iet Siam fiiue sak yiur

(10)庶0幾0。 擾0擾 輩0速。O仰。 如。 如。 宮

do kiwi nrie nrie puai suk piar rio rio kiug

*発 音記号 は藤堂明保氏編 『学研漢和大辞典』学習研究社 の中古 音(『広韻』)に依 る。 *文 字 の四つ角の丸印 は、左下 か ら右回 りに平上去入声 を表 す。 *便 宜 上、平声を○で、上去入声 (灰声)を ●で表す。 *左 端 の丸数 字 は、第何聯で あるかを示す。以上 は 『三教指帰』十韻詩 も同 じ。 ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 『三 教指帰』十韻詩 の音韻 (1) 。居。 諸 破O。 冥 夜。。 三 教。。 簑。 痩。 心

kio tfio p'ua meth yia Sam kau k'ien t'iei Siam

(2)性。 欲。。 有。 多。 種。 醤。 王 異O薬。。 鍼

sicn yiok Eau to trios iei fiiuaj yiei yiak tsiam

(3)。 綱。 常。 因0孔 述。O受 習。 入。。 椀。 林

kaD 3iaU ien k'urj d3iuet 31au zip niap fiuAi liam

(4)攣。。 輔。 聴。 公 授O。 依。 傳。 道。 観。 臨

peen tiuen ram kuij 3iau iai ts'uen dau kuan liam

(5)。 金。 仙一。 乗。 法。 義O益。 最O。 幽。 深

kiam lien let d3M piunp 16 iek tsuai ieu slam

(6)自。。 他。 兼 利O濟O。 誰 忘O獣00与。 禽

dzii t'a kem lu tsei 3iui mbiua:u fiau yio gram

(7)。 春。 花・ 枝O下 落。。 秋 露。 葉。。 前 『。沈

tfiucn hua fie fia lak ts'iau to yicp risen diam

(8) 逝。O水 不。。 能 住0。 廻。 風。 幾O吐。 音

3iei fiui piuat nail diu fiuai piuj laai t'o lam

(9)六。。 塵。 能 溺。。海 四。 徳。。所。 帰。 岸

liuk then nail ndek hai sii tak sio kiuai dzam

(10) 0己。 知。 三 界。 縛。。 何 不。O去。 縷。 箸

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(22) 註 1)両 指 帰 の 研 究 変 遷 にっ いて は、 米 田弘 仁 氏 の 「「聾 瞥 指 帰 』 「三 教 指 帰 』 研 究 の 現 状 と諸 問 題 」(『密 教 文 化 』193、 高 野 山 大 学 密 教 研 究 会、1995)に 詳 し い説 明 が な さ れ て い る。 2)和 多 秀 乗 先 生 「弘 法 大 師 空 海 の 遺 誠 ・遺 告 に っ い て(一)」(「 印 度 学 仏 教 学 研 究 』36-2)、 武 内孝 善 先生 「御 遺 告 の 成 立 過程 に っ い て」(「印 度 学 仏 教 学 研 究 』 43-2)、 稲 谷 祐 宣 氏 「空海 作 と伝 え る 「御遺 告 』 の諸 本 に っ い て」(『 印 度 学 仏 教 学 研 究 』12-2)、 門屋 温氏 「丹 生 都 比 売 小考 」(『東 洋 の思 想 と宗教 』8)。 3)太 田次 男 氏 「「聾 暫 指 帰 』 と 『三 教 指帰 』 との本 文 の 吟 味(上)一 付 ・『聾 啓 指 帰 』 の翻 字 及 び校 注 一 」(『成 田 山仏 教 研 究 所 紀 要 」17、 成 田 山新 勝 寺、1994)。 以 下、 当 論 文 を 「『成 田 山紀 要 」17」 と呼 び、 当論 文 所 載 の 『聾 瞥 指 帰 』 翻 字 本 を 「太 田本 」 と呼 ぶ。 同氏 「東 寺 菩 提 院三 密 蔵 三 教 勘 注 抄 巻 五 【鎌 倉 初 】 写 本 に っ いて 一 附 ・本 文 の翻 印 一 」(『成 田 山 仏 教 研 究 所 紀 要 』22、 成 田 山新 勝 寺、1999)。 以 下、 当 論 文 を 「『成 田 山紀 要 」22」 と呼 ぶ。 4)向 井 隆 健 氏 「「御 遺 告 」 成 立 順 と 『三 教 指 帰 」 序 文 と の関 係 一 上 山 春 平 著 『空 海 』 を読 ん で 一 」(「豊 山 学 報 』36・37合 併 号、 豊 山 宗 学 研 修 所、 平 成4年)、 河 内 昭 円 氏 「『三 教 指 帰 』 偽 撰 説 の提 示 」(「大 谷 大 学 研 究 年 報 』45、 大 谷 学 会、 平 成 6年)、 米 田 弘 仁 氏 「「三 教 指 帰 』 の真 偽 問 題 」(『密 教 文 化 」194、 高 野 山 大 学 密 教 研 究 会、1995)。 5)河 内 昭 円氏 前 掲 論 文、102頁。 米 田弘 仁 氏 前 掲 論 文、36頁。 6)太 田次 男 氏 「成 田 山 紀 要 』17、 太 田本。 7)太 田次 男 氏 『成 田 山 紀要 』22、74頁5-6行 目。 引 用 箇 所 に 注 と して 河 内 氏 の 前 掲 論 文 が挙 げ られ て い る。 お そ ら くは 『三 教 指 帰 」 偽 作 説 に対 す る批 判 の表 明 と 受 け止 め られ る が、 残 念 な が ら太 田 氏 の 河 内 氏 に 対 す る批 判 内 容 は記 さ れ て い な い。 8)筆 者 は両 指 帰 を比 較 す る際 に、 『聾 替 指帰 』 に 関 して は 『定 本 」 第 七 巻 と太 田 本 を 使 用 した。 『三 教 指 帰 』 に 関 して は、仁 平 本 は太 田 氏 「聾 啓指 帰 と三 教指 帰一 付 ・天 理 図 書 館 蔵 仁 平 四年 写 本 の翻 字一 」(「成 田 山仏 教 研 究所 紀 要 」12、 成 田 山 新勝 寺、1988)の 翻 字 本 を、 成 安 注 は佐 藤 義 寛 氏 著 『三 教 指帰 注 集 の 研 究 』 大 谷 大学、 平 成4年10月)の 刊 本 を、 敦 光 注 は太 田氏 の 「尊 経 閣文 庫 蔵 三 教 勘 注 抄 に っ い て 」(「成 田 山 仏 教 研 究 所 紀 要 』5、 成 田 山新 勝 寺、1980)と 「成 田 山 紀 要 』22 の翻 字 本 を、 建 長 本 は渡 辺 照 宏 ・宮 坂 宥 勝 氏 著 「日本 古 典 文 学 大 系71三 教 指 帰 性 霊 集 』(岩 波 書 店、 昭 和40年11月)を そ れ ぞ れ使 用 した。 そ の 他 の 写 本 類 は太 田本 に依 拠 させ て い ただ い た。 筆 者 は大 師 の手 に よ って 改 変 され た可 能 性 が あ る も の は積 極 的 に肯 定 す る立 場 に あ る。 そ の よ うな 態 度 で 回 収 した結 果、 成 安 注 本、 仁 平 本、 勘 注 抄 の 三 本 に お ﹃三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 い て 一 致 した もの(八 本 全 て が 同 じ場 合 も含 む)の み を集 め た 場 合 よ り も両 指 帰 で 異 な る文 字 の 数 は割 り増 しに な り、 合計 して238箇 所 に お い て 両 指 帰 と の 間 に 異 同 が 見 られ た。 9)こ の 点 で、 大 師 は本 文 を 改 作 され な か った とい う偽 作 説 に は根 本 的 な 誤 解 が あ るだ ろ う(米 田 氏 前 掲 論 文、44-45頁)。 10)「 訂 正」 と 「文 字 」 に よ る改 変 は 非文 学 的 な 改変 な の で、 こ こ か ら大 師 の お 考 え を 窺 う こ と は難 し い。 また、 「文字 」 は諸 本 が揃 って一 致 して い て も、 後 世 の 者 が異 体 字 で 書 写 した り刊 本 に した 可能 性 も考 え られ る の で、 全 て 大 師 の 改 作 で あ る と決 め っ け るの は危 険 で あ ろ う。 割 愛 部 分 に つ い て 若 干 言 及 す る。諸 本 に一 致 して 自注 が記 さ れ て い な い と い う こ とは、 大 師 ご 自身 が 自注 を 削 除 され た と考 え る のが 妥 当 で あ る。 筆 者 は 自注 削 除 の理 由 が 倭言 葉 と注 の 体 裁 に あ った の で は な い か と考 え る。 「布 奈 登 能 加 未 」 (ふ な との か み)、 「加 祢 乃 太 氣」(か ね の た け)、 「伊 志 都 知 能 太 氣 」(い しつ ち の た け)、 「須 美 乃 曵 乃宇 奈 古乎 美奈 」(す み の え の うな こお み な)、 「古 倍 乃 阿 麻 」 (こ べ の あ ま)な どは、 注 と はい え、 修 辞 豊 か な駐 催 文 の中 に 今 で 言 え ば ひ ら が な が続 け ざ ま に混 じ って い る こ とに な る。 ま た、 「阿 卑 」、「光 名 」、「優 婆 塞 」、 「加 祢 」、「太 氣 」、「乎 美 奈 」、「古 倍 」、「阿麻 」 な ど は本 文 と内 容 が重 複 して い る。 きた 注 の削 除 が本 文 の 内容 理 解 に あ ま り影 響 を来 さ な い の な らば、 全 体 の体 裁 を よ り 整 え る た め に これ らの 自注 が 削 除 さ れ て も不 自然 で はな いの で は な い か。 い ず れ に せ よ大 師 が削 除 され た の な ら、 「割 愛 」 以 外 の改 変 内 容 か ら考 え て、 こ れ ら の 自注 も文 芸 的 ・修 辞 的 な 理 由 で削 除 され た と筆 者 は考 え る。 11)『 定 本 弘法 大 師全 集 』 第七 巻、9頁11行 目(『 聾 瞥 指 帰 』)、48頁9-10行 目(「 三 教 指 帰 』)。太 田本17頁2-3行 目。 12)『 易 経 』 に 「言 行 は君 子 の枢 機 な り。枢 機 の発 は、 栄 辱 の 主 な り。 言 行 は、 君 子 の天 地 を動 か す所 以 な り。慎 ま ざ るべ けん や(可 不 慎 乎)。」(下 線 筆 者)と あ る(『 易 経 』 下、 岩 波 書 店、 昭和44年7月、227頁)。 13)「 定 本 弘 法 大 師全 集 』 第 七 巻、6頁7-8行 目(『 聾 瞥 指 帰 』)、44頁6行 目(『 三 教 指 帰 』)。太 田本8頁10行 目一9頁2行 目。 「病 」 か ら 「痛 」 へ の 改 変 は 表 現 上 の 改 変 で あ る。 14)駐 麗 文 と は、(1)対句 表現 に す る、(2)4字 を 主 と し、6字 を 効 果 的 に織 り交 ぜ て 抑 揚 の リズ ム を付 け る、(3)4字 句 に お け る第 二 ・四 字 目を平 灰 に して 調 子 を 整 え る、(4)典故 を用 い る、(5)引用 した典 故 が そ の 古 典 に お け る真 に 用 い た い部 分 を 代 替 す る 「断 語 」 を用 い る、 の五 点 を考 慮 して 作 られ る文 章 を言 う(岡 村 繁 著 「騨 文 」 「中 国 文 化 叢 書4文 学 概 論 』 大 修 館 書 店、 平 成 元年5月、124-130頁 参 照)。 15)「 定 本 弘 法 大 師 全 集 』 第 七 巻、29頁2-3行 目(「 聾 啓指 帰 』)、74頁7-8行 目(「 三 教 指 帰 』)。太 田本61頁3-5行 目。

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(24) 16)ロ ー マ字 表 記 は藤 堂 明保 氏 編 「学 研 漢 和 大 字 典』(学 習 研 究社、1998)に お け る中 古 音(『 広 韻 』)の そ れ を使 用 した。 『広 韻 』 を 使 って大 師 の字 句 を 調 べ る 妥 当 性 につ いて 言 及 す る。 大 師 の字 句 に お け る音 韻 を調 べ る際 に使 用 す る書 物 と して、 大 師 が編 纂 さ れ た 「笈 隷 万 象 名 義 』 以 上 に適 当 な も の は お そ ら く無 い で あ ろ う。 しか し 「笈 隷 万 象 名 義 』 の 翻 字 化 さえ な され て い な い現 状 で は、 そ の使 用 を断 念 せ ざ る を得 な い。 しか し専 門 家 に よ る先 考 研 究 で 「笈 隷 万 象 名 義 』 の音 韻(南 方-標準 語 で あ る 『玉 篇 』 の 音 韻 に 依 って い る)が、 六 朝 末 か ら随 初 に お け る北 方 標 準 語 で あ る 中古 音 (『切 韻 」 に代 表 され る)と ほ とん ど矛 盾 が な い こと がす で に明 らか に な って い る (周祖 誤 氏 「万 象 名 義 中 之 玉 篇 音 系 」 「問 学 集 』 上 冊、1996、 北 京)。 そ し て 南 北 で音 韻 に大 差 が な い 理 由 は 『文 鏡 秘 府 論 』 天 巻 「四 声 論 」 に窺 い知 る こと が で き る。 「四声 論 」 に よ る と、 南北 朝 は互 い に 異 な っ た四 声 の 興 りを 持 って い る こ とが ぎょう わ か る。 南 朝 で は周 韻(?一485)の と きに 四 声 は興 り、 沈 約(441-513)の と き に 「八 病 」 な ど の音 韻 の病 に基 づ く詩 が 確立 す る(永 明 体)。 一 方、 北 朝 で は常 景(?一550)の と き に 四声 の認 識 が あ った とす る。 こ こで 北 朝 の 歴 史 を 概 観 す る けい と、 北 朝 は鮮 卑 族 の拓 践 珪 が386年 に北 魏 を建 国 した こ と に始 ま る。 第 六 代 孝 文 帝(拓 践 宏)は494年 に都 を洛 陽 に遷 し、漢 化 政策 を 行 った。 そ の と き に 胡 語 は 禁 止 され、 漢 音 が 正 音 と さ れ た。 孝 文 帝 は さ らに南 朝 か ら文人 を 招 致 して い る。 っ ま り、 こ の と き以 降 に よ うや く北 朝 は漢 語 を使 い 出 す の で あ る。 結 局、 四 声 論 や 広 い 意 味 で の 漢 文 学 は南 朝 が 先 行 し、北 朝 が追 随 して い るの で あ る。 漢 文 学 の 主 流 が 南 朝 にあ る こ と は、 『玉 篇 』(梁 ・顧 野 王)、 『文 選 』(梁 ・昭 明 太 子)、 『文 きょう 心 離 龍 』(梁 ・劉認)な どが み な 南 朝 か ら輩 出 さ れ て い る こ とか ら も首 肯 さ れ る で あ ろ う。 ぎょう 北 魏 は534年 に東 魏 と西 魏 に分 か れ るが、 東 魏 の首 都 ・鄭 に お い て 文 人 が 相 次 い で 出 て 四 声 が よ うや く定 着 し た と い う こ と が 「四 声 論 」 に 論 じ られ て い る (「定 本 』 第 六 巻、26頁)。 以後、 東 魏 は北 斉 に、 西 魏 は北 周 に滅 ぼ さ れ る。 さ ら に北 斉 は577年 に北 周 に滅 ぼ され、 北 周 は581年 に階 に滅 ぼ され る。 陪 に至 るま で 北 朝 は鮮 卑 人 が 治 め て い るの で、 北 朝 は北 魏 以 来 一 貫 して 南 朝 か ら輸 入 した漢 音 の 影 響 下 に あ っ た と考 え る こ とが で き る。 故 に、 南(「 玉 篇 』、「笈 隷 万 象 名 義 』) と北(『 切 韻 』、「広 韻 』)の 音 韻 に大 差 が な い の で あ る。 以 上 は机 上 の理 屈 で あ る が、 筆 者 が実 際 に 『定 本 弘 法 大 師 全 集 』 に あ る大 師 の 韻 文 の 字 句 を 「広 韻 』(-藤堂 明 保 氏 「学 研 漢 和 大 字 典 』 の ロ ー マ字 化 し た も の) に基 づ い て 全 て 調 べ た と こ ろ、 僅 か な例 外 を 除 い て(例 え ば 『梵 網 経 開 題 』 に お い て 「事 」(『広 韻 』 で は dziei・ 去 声)が 「dei・去 声 」 と して 使 わ れ て い る箇 所 が あ り(「 定 本 』 第 四 巻、229頁)、 これ は福 州 方 言 の影 響 で あ る と思 わ れ る。) ﹃ 三 教 指 帰 ﹄ 真 作 説

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密 教 文 化 不 都 合 が 生 じな か った。 結 局、 『築 隷 万 象 名 義 』 の研 究 現 状 や 上 に 述 べ た 理 屈 と 実 際 の調 査 結 果 とを考 え 合 わ せ て、 大 師 の字 句 を 『広 韻 』 で調 べ る こ とに 問題 は な い と筆 者 は考 え る。 17)ま た、 「聾 書指 帰 』 に お い て 「蚕 蚕 萬 轟、 自 目 自 口、 宛 轄 相 連(4. 4. 4)。 断 断 千 狗、 從 面 從 足、 咀 噛 縫 聯(4. 4. 4)。」 で あ っ た文 の 「自 目 自 口」 と 「從 面 從 足 」 とを削 除 して、 「三 教 指 帰 』 に お い て 「蚕 蚕 萬 轟、 宛 轄 相 連(4. 4)。 断 断 千 狗、 咀 噛縫 聯(4. 4)。」 と した改 変 も 〈資 料3>と 全 く変 わ らな い。2句 を 省 く こ と に よ って押 韻 字 を含 む 「宛 轄 相 連 」と 「咀 噛 縫聯 」 が 偶 数 句 とな り、 「連 」(lien /34 仙 韻 ・平 声)と 「聯 」(lien/34仙 韻 ・平 声)と で 偶 数 句 末 の 押 韻 が 可 能 に な って い る(『 定 本 』 第 七 巻、30頁8-9行 目(『 聾 警 指 帰 』)、76頁8-9行 目(『 三 教 指 帰 』)。太 田本64頁6-8行 目)。 18)「 定 本 弘 法 全 集 』 第 七 巻、9頁7-10行 目(「 聾 瞥 指 帰』)、48頁5-8行 目(『 三 教 指 帰 」)。太 田本16頁4-10行 目。 当 該 箇 所 は対 偶 に よ る改 変 の 他 に、 表 現 上 に 「進寺 」 か ら 「入 寺 」 へ、 ま た 「復 登 」 か ら 「終 登 」 へ の 改 変 が あ り、 文 字 上 の 改 変 に 「耶 心 」 か ら 「邪 心 」 が あ る。 太 田 氏 は 『聾 啓 指帰 』 本 文 の 「勲 勲 之 思 恩 」 は 誤 写 で はな い と述 べ て い るが(太 田 本16頁、10の 注)、2句 前 の 「諄 諄 之 意 」 と の みせ けち 対 偶 か ら考 え て 一 字 減 らす べ き こ と に疑 い はな い。 『聾 瞥指 帰 』 本 文 に あ る見 消 の 通 り、 「思 」 は除 か れ るべ きで あ ろ う。 但 し 「三 教 指 帰 」 で は 「恩 」 は 使 わ れ ず、 「思 」 が 選 ば れ て い る。 これ は大 師 ご 自身 が訂 正 に訂 正 を 重 ね られ た と思 わ れ る。 つら なら 19)「文鏡秘府論』北巻 に句端を 「事 を属 ねて僻 を比 ぶるに、皆次 第有 り。事科 分 これ へだ の 別 に 至 る毎 に、 必 ず 言 を 立 て て以 て之 を 間 て、 然 る後 に義 勢 は相 承 く るを 得 べ く、 文 髄 は因 りて倫 貫 す るな り。」 と説 明 す る(「 定 本 』 第 六 巻、215頁4-5行 目)。 「文 鏡 秘 府 論』 北 巻 の 中 に 「償 若」 の句 端 が あ り(「定 本 』 第 六 巻、219頁2行 目)、 「若 償」 も これ と同 じで あ る と考 え て よ い だ ろ う。 20)賦 に お け る改 変 の 中 に韻 を考 慮 した改 変 が あ る こと は加 藤 純 隆 氏 に よ って す で に指 摘 さ れ て い る。 す な わ ち氏 は 「本 文 に入 って 推 敲 の跡 を 見 て も両 者(『 聾 替 指 帰 』 と 「三 教 指 帰 』)の 差 違 は各 所 に感 じ られ ます。 例 え ば 賦 の 脚 韻 の如 き も、 前 者(『 聾 啓指 帰 』)が 強 い て韻 を揃 え る の に努 めて い るの に 対 し、 後 者(「 三 教 指 帰 』)で は無 理 の無 い適 切 な文 字 に改 めて い る点 な どに も、 両 者 の 著 作 年 代 の 差 は感 じ られ ます。」(カ ッ コ筆 者)と 語 って い る(『 口語 訳 三 教 指 帰 一 仏 教 と儒 教 ・道 教 との対 論 一 』 世 界 聖 典 刊 行 協 会、 昭 和52年12月、223-224頁)。 21)『 定 本 弘 法 大 師 全 集 』 第 七 巻、35頁3-4行 目(『 聾 啓 指 帰』)、82頁8行 目(『 三 教 指 帰 』)。太 田本75頁10行 目一76頁1行 目。 22)「 定 本 弘 法 大 師 全 集 』 第 七 巻、32頁1-2行 目(「 聾 啓 指帰 」)、78頁5-6行 目(「 三 教 指 帰 』)。太 田本68頁1-3行 目。 「三 教 指 帰 』 にお け る 「有」 の省 略 は 音 韻 と は関

参照

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