• 検索結果がありません。

中 国 の 経 済 政 策 と 消 費 社 会 の 現 状

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中 国 の 経 済 政 策 と 消 費 社 会 の 現 状"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

学 位 ( 博 士 ) 論 文 要 旨

中 国 の 経 済 政 策 と 消 費 社 会 の 現 状

姜 粉 香

1.論文の目的

中国市場経済の導入は国民の生活を大きく変化させ,消費水準も驚 くほど上昇させたが,その消費の現れ方はまちまちである.都市部では すでに「大衆消費社会」が出現していて,大衆消費社会は大都市から 地方都市,小都市,農村へと空間的にも拡大していく傾向がある.都市 部の中でも収入の差,階層の差によって人々の消費の現れ方には違い

が出てきている.

本論文は,中国における消費社会の状況を中国の経済発展と経済政 策の変遷から明らかにすることを目的とする.改革開放以前の中国は,

中央集権的計画経済体制により,重工業優先発展戦略を実施した.開

放以後は対外開放政策を導入して市場経済体制に入り,中国の経済は

大きく発展を遂げた.経済の発展とともに様々な社会問題が現れ,中

国政府では調和のとれた社会の構築を通してこれらの問題の解決が図

られた.本論文ではまず中国政府で実施した経済政策のもとで発展し

てきた中国経済について,ロストウの『経済成長の諸段階』にもとづ

いて,いくつかの段階ごとに分けて検討している.身分制により,厳

しく制約された政治階層が標準であった中国の社会構造は急激な経済

発展に伴って,経済的要素が加えられた.経済成長は中国の全体的な

消費レベルを高くしたが,収入分配においての経済的格差は中国の消

費社会にも大きく影響を与えた.次に,経済発展の中で変わっていく

階層構造の変化と貧富の格差についてみていき,消費の変化について

人々の消費行動,消費に対する観点の実態から中国の格差問題につい

て近年の研究成果にもとづいて実態を明らかにしている.最後に中国

藩陽市民に対して行った消費生活に関するインタビュー調査データに

もとづいて,中国の経済発展の中で,人々の消費行動,消費に対する

(2)

社会学論考第34号2013.11

考え方がどのように変わって来ているのか,格差はどれほど広がって いるのかについて,市民の側から分析を行っている.

2.論文の章立て

序 章 本 論 文 の 目 的 と 構 成

第 一 章 中 国 の 経 済 発 展 と 政 策 展 開

第 二 章 計 画 経 済 期 の 伝 統 的 な 経 済 発 展 第 三 章 改 革 開 放 以 後 の 経 済 転 換 期

第四章科学発展観に代表される2002年以後

第 五 章 中 国 に お け る 階 層 と 格 差

第 六 章 中 国 に お け る 消 費 社 会 の 現 状 第 七 章 終 章

3.本論文の内容

序章では,本論文の目的として中国における経済発展の諸段階とそ れぞれを導いた政策展開の内実が主たる分析の対象となることと,そ れらをふまえた中国社会における階層と格差の問題をふまえて,中国 における消費社会の状況について論じた.そのうえで論文全体の構成 と第六章で行う調査対象地である藩陽市の概要,ならびにデータの性 質について解説がなされている.

第一章では,中国の経済発展と経済政策の展開として,中国の経済 発展段階をW・W・ロストウが『経済成長の諸段階』で述べた経済成 長段階説に対応させて分析した.まず,ロストウが述べた経済成長段 階説に対応させて,中国における経済発展段階を伝統的社会一封建統 治時代:秦(前221〜前206年)〜アヘン戦争(1840年),離陸のため の先行条件期一近代(1840〜1952年),離陸期一中華人民共和国の解 放以後(1952〜1978年),成熟への前進期一改革開放以後(1978年〜

1980年代半ば),高度大衆消費時代(1980年代後半〜)に分けて分析

を行った.そのうえで中華人民共和国の解放以後から中国政府の発展

観と戦略から見て,計画経済期の毛沢東時代における「共同富裕論」,

(3)

改革開放以後の鄙小平,江沢民時代の「先富論」,2002年以後の胡錦 涛時代における「調和のとれた社会」の三つの時代において中国政府 でどのような戦略的政策をとり,展開して来たのかについての概要を

述べた.

第二章では,中国経済の「離陸」の時期と位置づけられる計画経済

期 の 伝 統 的 な 経 済 発 展 に つ い て 描 い た . こ の 時 期 は 毛 沢 東 に よ る 「 共

同富裕論」が政策の主導原理となり,人民公社にすべての生産手段が 集中され,社員はすべて貧富を等しくすることが前提とされた.計画 経済期では「蓄積を高くし,消費を低くする」政策を実行し,重工業 を優先的に発展させた.まず,1953年に中国で実施された第一次5ヵ 年計画について,「社会主義的改造」と,「重点産業開発政策」を基本 方針とする「社会主義工業化」の2点にまとめた.そして1958〜61 年の大躍進(経済建設運動)と1966〜76年までの10年間の文化大革 命の失敗による中国への影響について述べた.

第三章では,「成熟への前進」としての改革開放以後の経済転換期

に つ い て 描 い た . こ の 時 期 で は ゆ た か に な れ る 人 は 先 に ゆ た か に な っ

て,後に続く人の手伝いをするという部小平の「先富論」が提出され た.鄙小平が中国発展の「三歩戦略」,次第に貿易・投資の自由化の実 現,市場機制を積極的に入れ,市場競争を励んだ.この戦略は経済の

高成長を一番重要で一番優先の目標としていた.経済発展にともない,

中 国 は 高 度 大 衆 消 費 社 会 へ と 展 開 し て 行 っ た . そ し て 都 市 と 農 村 に お い て 収 入 格 差 の 拡 大 が 形 成 し , 地 区 間 の 発 展 の 差 が 拡 大 し , 人 々 の 収 入分配の不平等の問題が現れた.

第四章では,科学発展観を代表とした2002年以後をテーマとして,

胡 錦 涛 時 代 に お け る 「 調 和 の と れ た 社 会 」 に つ い て 述 べ た . 中 国 経 済 の 発 展 と 改 革 を 深 め る こ と に お い て 直 面 し て い る 問 題 に つ い て W T O

加入後の新しい挑戦,非正規就業者数の増大,収入分配の変化,都市

と農村の格差問題,改革の深まりによる新体制を完善にする問題等の

と こ ろ か ら 捉 え た . そ こ で 科 学 的 発 展 観 に も と づ く ゆ と り の あ る 社 会 と 調 和 の と れ た 社 会 の 構 築 が 新 た な 政 策 理 念 と な り , 中 国 に お け る 就

(4)

社会学論考第34号2013.11

業状況と政府で行われた政策,収入分配に関する政府のコントロール, 中国の社会保障制度の拡大がなされるようになっていくことを述べた.

第五章では,中国の研究者による階層と格差の研究の展開について 分析を行った.中華人民共和国の成立以後,中国の学者たちは社会階 層の研究をしてきたが,第一節ではその発展過程を四つの段階に分け て考察した.第一段階は,中華人民共和国成立初期で,ここでは階級 体系の打破が試みられた.第二段階は,改革開放以降である.ここで は身分的階層は経済的階層への転換を経験した.第二節ではこの二つ の段階について描いたものである.そして,第三,第四節では中国の 社会階層構造の特徴と中国の社会階層における区分について分析した.

1980年代以降,国営企業,集団企業から職業を失った失業・半失業者 層が増えるようになったが,第五節では中国における失業・下崗労働 者層について述べた.「先富」政策が実施して30年以上も経った現在 まで,国民の収入レベルは比較的に大きく上がっているが,格差問題 も注目されるようになった.中国における格差問題について,消費生 活の側面から第六節では都市と農村間の消費の格差,第七節では都市

住 民 に お け る 異 な る 収 入 グ ル ー プ の 収 入 と 消 費 状 況 を , 中 国 統 計 年 鑑

のデータにもとづいて分析を行った.

第六章では,中国における消費社会の現状について論じた.第一節

では中国住民の消費水準と都市と農村住民のl人当たりの年生活消費

構 成 な ど の デ ー タ に 基 づ い て , 消 費 レ ベ ル が ど う 変 化 し た の か を 確 認 を し た . 第 二 節 で は , 消 費 の 変 化 に よ り 変 わ り つ つ あ る , 消 費 者 と 国 家 と の 関 係 , 消 費 者 と 市 場 と の 関 係 , 消 費 者 と 社 会 と の 関 係 か ら , 改

革開放以後消費者の権利が次第に高くなっていることを述べた.第三

節では中国の消費率が下がり続けているのは,収入分配の差が影響し

て い る こ と を 確 認 し た . 第 四 節 で は 中 国 の 藩 陽 市 に 住 ん で い る 都 市 住 民に対して,2006年と2012年の二回にわたって行ったインタビュー 調 査 に 基 づ い て の 分 析 で あ る . 調 査 デ ー タ か ら , 収 入 層 が 異 な る こ と に よ っ て , 人 々 の 食 品 , 日 常 用 品 , 服 装 な ど の 買 物 を す る 時 に 使 用 す る 場 所 , 住 宅 , 耐 久 消 費 財 な ど の 様 々 な 面 で 差 が つ く よ う に な り , 消

(5)

費に対する考え方も異なるようになった実情を明らかにした.

終章では,結論にかえて各章ごとの要旨をまとめ,今後の課題につ いて述べた.中国経済が改革開放の時代をへて,大きく発展し,人々 の生活水準も向上し,消費社会としての展開が見られることは確かで あるが,同時に階層的な格差の拡大や,なにより都市と農村の断絶が 存在するがゆえに,将来にわたってその発展は保障されているわけで はないことを論じた.今後は社会保障制度の整備などを通して,低収 入層の生活リスクを低くして,消費の公平性を確保していくことが求

められるという点を強調した.

(きょう

ふ ん こ う ・ 首 都 大 学 東 京 客 員 研 究 員 )

参照

関連したドキュメント

Kwansei Gakuin University..

業が約3 の2を占めるようになり,赤字額 が大きく膨らんだ。 1995年, 大を掴み,小を放つ (

財源は 43.5兆円∼58.7兆円が必要になる。その際、2015年度に消費税率を 10%

[r]

Bernanke, “The Economic Outlook and Monetary Policy”, August 27, 2010, Speech at the Federal Reserve Bank of Kansas City Economic Symposium, Jackson Hole,

5 月 6 日に、NY

In this paper, first, I grasp the present condition of energy consumption in the production process of China through comparing energy consumption by industry and energy input per same