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消 費者政 策 に関す る経済 ・経 営学 的考察

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消 費者政 策 に関す る経済 ・経 営学 的考察

田 智

AnEconomicandManagerialInquiry intoConsumerPolicy

Sugiura,Hiroaki Murota,Satoko

Abstract

ThisstudyanalyseshowtheoccurrenceofmassfoodpoisoningbySnowBland MilkProductschangeconsumer'sbehavior.Weexaminetheextensivepossibility ofconsumerpolicyfromeconomicalandmanagerialpointsofviewsusingthis case.Wealsoexaminetheimpactofthiscaseonmilkmarketandtime‑series variationsofconsumer'sbehaviorbyanalyzingfourkindsofstatistics.

Weclarifythattheconsumer'sattitudetoprocessinformationbythemselves inducerationalpurchasingbehaviorandemphasizethisattitudemustberequiredto be"autonomousconsumer"thatisoftenreferrediiithecontextofconsumerpolicy.

1.は じ め に

本 研 究 は,雪 印乳 業 大 阪 工 場 製 造 の 乳 製 品 等 を 原 因 とす る集 団 食 中毒(以 下,本 事 件 ま た は雪 印集 団 食 中毒 事 件)の 発 生 が,消 費 者 の 行 動 に どの よ う

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な 変化 を もた ら した の か に つ い て 分 析 し,そ こか ら導 か れ る消 費 者 政 策 の展 開 可能 性 につ いて 考 察 す る もの で あ る。

本 事件 の 社 会 的 影 響 に つ い て 検 討 を始 め た 当初 は,消 費 者 行 動 とマ ス ・メ デ ィア報 道 の 関 係 性,と りわ け消 費 者 に とっ て 望 ま し くな い 影 響 が 予 想 され る事 件 に関 す る報 道 量 と消 費 者 行 動 の 相 関 関 係 を 見 出 す べ く,本 事 件 お よび 子 会 社 雪 印 食 品 牛 肉 偽 装 事件 の イ ンパ ク トに つ いて 分 析 作 業 を行 っ て い た。

一 般 的 に 日本 の 消 費 者 は,思 考 様 式 お よび 行 動 様 式 にお い て マ ス ・メ デ ィア 報 道 の影 響 を受 けや す く(岡 本,1992),特 に 経 済 情 報 につ い て は そ の他 の情 報 と比 較 して そ の 傾 向 が 顕 著 で あ る こ と(駒 橋(2004)),食 品 の安 全 性 につ い て も消費 者 の リス ク認 知 は新 聞 報 道 に大 き く影 響 され る可 能 性 が あ る こ と

(西尾 ・佐藤(2007))が 指摘 され て い る。 また リス ク情 報 につ い て は,マ ス ・ メデ ィア報 道 へ の依 存 度 を高 めや す く,報 道 内 容 に関 わ らず 報 道 量 の増 加 に 伴 っ て,人 々 の リス ク に対 す る態 度 はネ ガ テ ィ ブ に な る こ と も既 存 研 究 に お い て 明 らか に され て い る とい う(吉 川他,2001)。 リス クの 受 容 とい う視 点 か ら雪 印 グ ル ー プ に よ る二 つ の事 件 を特 徴 づ け る な ら,「 事 件 に 関 す る情 報 量 」 の 違 い に よ っ て,消 費 者 の 「リス ク感 度 の 地 域 間 格 差 」 が 存 在 す る と推 測 で

き る。 そ の地 域 間 格 差 の程 度 を統 計 デー タ に よ って 明 らか に しよ う と した こ とが,研 究 の契 機 で あ っ た。

しか しな が ら,作 業 を進 め る中で 「雪 印 グル ー プ に関 す る報 道 量 と飲 用 牛 乳 の購 入 量 は反 比 例 す る」 とい う仮 説 で は説 明 し切 れ な い消 費 者 の行 動 が 見 出 され た。 消 費 者 行 動 と情 報 の関 係 性 につ い て よ り詳 細 な検 討 が 必 要 で あ る との 問題 意 識 か ら,本 研 究 で は消 費者 の 購 買 行 動 を規 定 す る要 因,と りわ け 同 じ消費 者 とい う属 性 を もっ グル ー プ 内 にお いて,何 が 行 動 の相 違 を も た ら して い る の か に つ い て検 討 す る こ とを,新 た な研 究 課 題 と して 設 定 す る こ と とした。 本 研 究 で は リス ク ・コ ミュニ ケー シ ョン的 ア プ ロー チ に基 づ き,以 下 の手 順 で 分 析 を進 め て い く。 観 察 対 象 を報 道 に連 動 しな い消 費 者 行 動 が 顕 著 に見 られ た 雪 印集 団 食 中毒 に絞 り,本 事 件 が 飲 用 牛 乳 市 場 に与 え た イ ンパ

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消費者政策 に関 する経済 ・経 営学的考察

ク トにつ い て,消 費 者 行 動 の時 系 列 的 変 化 を検 討 す る。4つ の統 計 デ ー タ を 比較 しつ つ,消 費者 行 動 の変 化 を もた らす 要 因 に つ い て更 に詳 細 な 検 討 を行 い,既 存 研 究 と比 較 しそ の要 因 に つ い て 考 察 して い く。

2.タ ー ニ ン グ ポ イ ン ト と し て の 雪 印 乳 業 集 団 食 中 毒 事 件

① 事 例 と して の 妥 当性

食 品企 業 に よ る不 祥 事 の イ ンパ ク トと消 費 者 行 動 の 関 係性 につ いて,雪 印 集 団 食 中毒 事件 を も とに分 析 して い く。 本 事 件 を事 例 と して取 り上 げ る理 由 は 以 下 の 通 りで あ る。 本 事 件 を取 り扱 う こ との 妥 当性 は,① 被 害 者 数 が 一 件 の 食 中 毒 事 件 と して は戦 後 最 大 級 で あ る と しば しば 報 じ られ た た め に,特 に衝 撃 が 大 きか っ た こ と,② 業 界 内 にお いて トップ シ ェ ア を誇 る企 業 で あ っ た こ と,③ 食 品 の 安 全 性 や 食 品 企 業 に対 す る信 頼 性 に関 す る議 論 が 沸 き起 こ る 口 火 を切 る こ と に な っ た こ とに 求 め る こ とが 出 来 る。 雪 印 集 団 食 中毒 事 件 に つ い て は,13,000人 以 上 が 被 害 者 と して 認 定 さ れ て お り,一 件 の 食 中 毒 事 件 と して は 戦 後 最 悪 の 規 模 で あ る。 食 中 毒 事 件 自体 に 注 目 して み る

と,常 に一 定 の 確 率 で発 生 は して い る もの で は あ る が,本 事 件 が い か に大 規 模 な もの で あ っ た の か を 示 す た め,一 般 的 な 被 害 状 況 に つ い て 概 観 して お く。1950年 代 以 降 の 統 計 に お い て は,年 間 で1,000〜3,000件 発 生 して お り,そ の1事 件 あ た りの 患 者 数 も お お よ そ15〜40人 の 間 で 推 移 して い る。

このぶ れ の大 き さは 食 中 毒 の原 因 の 多 くが 化 学 物 質 で は な く細 菌,毒 素 お よ び カ ビ類 に 由 来 す る もの で あ り,そ の 年 の 気 候 に大 き く変 動 され るた め で あ る。1990年 以 降 に つ い て み る と,1件 あ た りの 被 害 者 数 が500人 を超 え る よ う な大 規 模 な もの に 関 して は,毎 年6〜10件 発 生 して い る。 この よ うな 大規 模 事 故 の原 因 とな っ て い るの は主 に学 校 給 食,仕 出 し弁 当,事 業 所 で の 食 事,飲 食 店 お よび旅 館 で 提供 され る食 事 な どで あ る 。 そ の 多 くは原 材 料 の 輸 送 や 加 工 調 理 の 段 階 に お い て原 因 物 質 の増 殖 が起 こ っ た こ とが 原 因 で あ

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り,原 材 料 そ の もの を原 因 とす る大 規 模 な食 中毒 の 発 生 例 は非 常 に 少 な い1。

この よ うな統 計 上 の 数 字 か ら,本 事件 が い か に特 殊 な 事 件 で あ っ た か が わ か るだ ろ う。既 存 の リ ス ク研 究 に お い て は,子 供 に影 響 す る と感 じ られ る リス ク につ い て は大 人 に 影 響 す るそ れ に つ い て よ り も過 敏 な 反 応 を 引 き起 こす こ とが 指摘 され て い る。 栄 養 価 が高 く比較 的安 価 な加 工 乳 お よ び乳 飲 料 は,子 どもの い る家 庭 に お いて は必 要 不 可 欠 な もので あ り,そ の 代 替 品 とな る もの は少 な い。 ま た,生 乳 お よ び乳 製 品 は腐 敗性 の高 い 食 品 で あ り,高 度 な衛 生 管 理 が 求 め られ る 食 品 で あ る。 雪 印乳 業 は業 界 トッ プシ ェ アの 企 業 で あ る と 同 時 に,業 界 で 初 め てHACCP認 証 を受 け た工 場 を もつ 企 業 グル ー プで もあ る。 そ れ だ け に雪 印 製 品 の 安 全 性 に つ い て は多 くの 消 費 者 が 高 い信 頼 を寄 せ て い た に も関 わ らず,そ れ が裏 切 られ た とい う経 緯 が あ る。 後 の 食 品 を め ぐ る種 々 の議 論 を呼 ぶ た め に は,十 分 な イ ンパ ク トを備 え て い た とい え るだ ろ う。

② 事 件 概 要

2000年6月,雪 印 乳 業 大 阪 工 場 に お い て 製 造 され た 低 脂 肪 乳 を原 因 とす る食 中毒 の 発 症 が 確 認 され た 。 和 歌 山 県 にお い て 最 初 の発 症 者(児 童)が 確 認 され た後,食 中 毒 発 症 情 報 の公 開 に 日数 を要 した こ とや,製 品 回収 作 業 の 遅 れ が起 因 し,短 期 間 の うち に 発症 者 が 急 増 す る。 事 件 の原 因 究 明 の過 程 に お い て,同 工 場 の 衛 生 管 理 の 実態 や製 品 管 理 の杜 撰 さが次 々 と明 らか に な っ た 上 に,マ ス コ ミ会 見 の場 に お け る同社 幹 部 の 複 数 の不 手 際 が 大 々 的 に報 道 され,雪 印 に対 す る消 費 者 の不 信 感 は急 激 に高 ま っ て い っ た。 最 初 の 患 者 の 確 認 か ら約2ヵ 月 後,製 品 の 原 材 料 中 に含 まれ て い た毒 素 が食 中毒 の原 因 物 質 と判 明,同 年12月 に事 故 調 査 委 員 会 に よ って,杜 撰 な衛 生 管 理 と製 品 管 理,お よ び そ れ を お ざ な りに して きた組 織 体 質 の 複 合 的要 因 に よっ て発 生 し た 事故 で あ る と結 論 付 け られ て い る。

そ の約1年 半 後 の2002年1月 下 旬,子 会 社 の 雪 印食 品 が 国 内初 のBSE感

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消費者政 策に関す る経済 ・経 営学 的考察

牛 の確 認 を背景 とす る国産 牛 肉買 取 制度 を悪用 し,国 か ら補助 金 を詐 取 しよ う として いた こ とを,取 引 先社 長 が 告 発,不 正 が 公 とな る。 後 に雪 印食 品 は親会 社 で あ る雪 印 乳業 の経 営 不振 も背 景 とな り業 績 が悪 化,同 年4月 に廃 業 した。

二 つ の事 件 は雪 印 グル ー プの 解 体 とい う結 果 を招 い た に止 ま らず,食 品業 界,消 費 者,経 済 界 全 体 そ して 行 政 に対 して 大 き な衝 撃 を与 え た。 二 つ の事 件 につ い て は 「一 連 の 」 雪 印 事 件 も し くは 「懲 りな い 」 雪 印 グ ル ー プ とい う 烙 印が 押 され る こ とも一 と りわ け ゴ シ ップ的 な関 心 か ら本 件 を取 り上 げ る場 合 に は しば しば 一 あ った が,先 の 食 中毒 事 件 の 衝 撃 が あ ま りに も大 きか った とい う事 実 は 重 要 で あ る。 食 品 の安 全 性 につ いて 今 日で は 当然 の よ うに活 発 に議 論 され て い るが,こ の問 題 につ いて 消 費 者 が 敏 感 に 反 応 し企 業 も迅 速 に 自主 的 な 対応 を 取 る よ うに な っ た の は,こ れ らの 事 件 以 降 で あ る。 ま た消 費 者 行 政 に つ い て 漸 進 的 な変 化 しか 見 受 け られ な か っ た 中,2003年 に食 品 安 全 基 本 法 が 制 定 さ れ,そ の後 食 品安 全 委 員 会 が 設 置 され た こ と,翌 年 に は 消 費 者 保 護 基 本 法 を改 正 し消 費者 基 本 法 が 成 立 す るな ど の動 きは,明 らか に 本 事 件 を は じめ とす る食 の安 全 性 に関 わ る不 祥 事 が 引 き金 とな っ て い る。 ま た,経 済 同 友 会 が2003年 を 「CSR元 年 」 とす る と宣 言 して 以 降,CSR(企 業 の 社 会 的 責 任)と い う言 葉 は あ たか もブー ムの よ うに 広 く用 い られ る よ う

に な って い るが,CSRや 企 業 倫 理 に 対 して高 い関 心 が 寄 せ られ る背 景 に,食 品 関 連 企 業 を は じめ とす る企 業不 祥 事 の頻 発 ・発 覚 が あ る と考 え るの は 自然

な発 想 で あ ろ う。

3.統 計 デ ー タか ら見 た雪 印集 団食 中毒 事 件 の イ ンパ ク ト

本 事 件 が 社 会 に与 え た影 響 に つ い て,統 計 デー タ か ら そ の イ ンパ ク トの大 きさ を考 察 す る。 本 研 究 の特 徴 は,単 純 に牛 乳 の 生 産 量 を牛 乳 統 計 か ら見 る だ けで は な く,物 価 お よび家 計統 計 を最 大 限 に利 用 す る こ とで,事 件 の影 響 の大 きさ を多 面 的 に 測 ろ う とす る もので あ る。 得 られ た 知 見 と して,事 件 が

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与 え た影 響 に は地 域 間 格 差 が 見 られ,事 件 の 舞 台 に な っ た 地域 に 近 い地 域 ほ どよ り大 きな影 響 が あ っ た と考 え られ る。 た だ し,一 部 の デ ー タか らは この よ うな事 実 が 十 分 に確 認 で き なか っ た。

① 「牛 乳 乳 製 品 統 計 」 か ら見 た雪 印 事 件

農 林 水 産 省 統 計 情 報 部 の 『牛 乳 乳 製 品 統 計 』 を用 い て雪 印事 件 の イ ン パ ク トを捉 え た い。 同統 計 か ら飲 用 牛 乳(牛 乳 お よび加 工 乳)の 生 産 に 関 して,そ の 特 徴 を見 て い くこ とに しよ う。 最 初 に,『 牛 乳乳 製 品統 計 』 で 用 い られ る飲 用 牛 乳,牛 乳,加 工 乳 とい う用 語 の 定 義 を確 認 して お こ う。 飲 用 牛乳 は 牛 乳 と加 工 乳 を指 す 。 牛 乳 と加 工 乳 は成 分 的 に類 似 した もの で あ り,流 通 ・消 費 の 過 程 で これ を 一 体 的 に と らえ る場 合 が 多 いの で,両 者 を総 称 して飲 用 牛 乳 と呼 ぶ 。 牛 乳 とは 生 乳 に生 乳 以 外 の もの を混 入 す る こ とな く,厚 生 省 令 に定 め る成 分 規 格 並 び に製 造 及 び保 存 の 方 法 の基 準 に沿 っ て製 造 され た もの を い う。 加 工 乳 とは,生 乳,脂 肪 乳,全 粉 乳,脂 肪 粉 乳 等 の 乳 お よ び乳 製 品 の み を原 料 と し,水 以 外 の他 物 を混 入 しない で 製 造 した もの で,厚 生 省 令 に定 め る成 分規 格 並 び に製 造 及 び保 存 の 方法 の基 準 に沿 っ て 製造 され た もの をい う。

飲 用 牛 乳 の 生 産 量 変 化 率 を見 る場 合 に は,季 節 的 要 因 を考 慮 して前 年 同月 比 で 見 る こ とが 適 切 で あ る。1999年1月 か ら2003年12月 ま で の 前 年 同 月 比 変 化 率 の グ ラ フ を 図1に 示 す 。

雪 印 事 件 が 起 こ る前(2000年6月 まで)は,飲 用 牛 乳 ・牛 乳 ・加 工 乳 の変 化 率 の 動 きは ほ ぼ 同一 で あ るが,雪 印 事件 が 起 きた 後(2000年7月)か ら大 き な変 化 が 起 こ る 。 事 件 の原 因 と な っ た加 工 乳 に つ い て20%ポ イ ン ト以 上 の 著 しい減 少 が 見 ら れ る こ とに な った 。加 工 乳 に 対 す る需 要 の 減 少 は,牛 乳 の 需 要 拡 大 とい う代 替 効 果 を生 じ させ る こ とに もな っ た。 ただ し,代 替 効 果 が あ った と して も飲 用 牛 乳 その もの の 生産 規 模 は縮 小 して い る。 飲用 牛 乳 の 生 産 が 増 加 に転 じ た時 期 は,2002年 の 夏 以 降 で あ っ た 。

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消費者政 策に関す る経 済 ・経営学 的考察

図1飲 用 牛乳 の生産量変化率

② 牛 乳 価 格 と生 産 量 の変 化 率

牛 乳 価 格 と牛 乳 生 産 量 の 前 年 同 期 比 変 化 率 を 同 時 に グ ラフ に描 い て み よ う。 『消 費 者 物 価 指 数 年 報 』(総 務 省 統 計 局)の デ ー タか ら,牛 乳価 格 と して 牛 乳(加 工 乳 ・特 別 牛 乳 を 除 く,紙 容 器,1000mL,店 頭 売 り)の 価 格 を 採 用 し,前 年 同 期 比 変 化 率 を計 算 す る。

1+牛 乳生 産量 鴫 一牛 乳価 格 ×10

図2牛 乳生産量 と牛乳価格 の変化率

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牛 乳価 格 と牛 乳 生 産 量 の 変 化 率 を図2に 示 す。 牛 乳 価 格 の 変 動 幅 は も と も と大 きな もの で は な い の で,価 格 変 動 を見 や す くす るた め に,価 格 変 化 率 を 縦 に10倍 に 引 き伸 ば して 描 い て い る。 トレ ン ドと し て デ フ レ傾 向が 見 られ るた め,全 体 として マ イ ナ ス の変 化 率 とな って い るが,そ れ で も価 格 変 動 は 良 く分 か る。

これ らの デ ー タ を 見 て 興 味 深 い 点 は,牛 乳 の 生 産 が 価 格 の 変 化 に敏 感 に 反 応 して い る点 で あ る。 一 般 に価 格 が低 下(上 昇)す れ ば需 要 は増 加(減 少) す るが,需 要 の 変 化 が そ の ま ま生産 量 に反 映 され て い る。 そ の結 果,価 格 と 生産 量 は ち ょう ど逆 の動 きを見 せ て い る。

雪 印事 件 の イ ンパ ク トは,価 格 デ ー タに も如 実 に現 れ て い る。 事 件 直 後 の 2000年7月 に は1.5ポ イ ン ト近 い価 格 の 下 落 が 起 こ った 。 牛 乳 は鶏 卵 と並 ん で物 価 の優 等 生 と され,も と も と大 きな価 格 変 動 が あ ま り見 られ な い商 品 で あ る。 この よ うな 背 景 を踏 まえ る と,事 件 後 に発 生 した価 格 に対 す る イ ンパ ク トは 大 変 大 きな もの で あ っ た と考 え られ る。2000年7月 か ら2001年6月 まで の牛 乳 生産 量 の 増 加 は,先 述 の通 り加 工 乳 か らの 代 替 が 大 き く貢 献 して い る。

前 年 同期 比 を用 い て い る た め前 年 の大 き な変 動 の 影 響 が あ る こ とに注 意 し な け れ ば な らな い が,2002年 は価 格 の低 下 傾 向 に歯 止 め が か か っ た が,牛 乳 生 産 は 引 き続 き低 下 した。2003年 は再 び 価 格 の 低 下 傾 向 が 見 られ る よ う

に な っ たが,牛 乳 の 生 産 は回 復 して い る。

牛乳 価 格 変 動 の 地 域 差

小 売 物 価 統 計 』(総 務 省 統 計 局)を 用 い て,牛 乳価格変動 に地域 差が見 ら れ るか 確 認 しよ う。 『小 売 物 価 統 計 』 は消 費 者 物 価 指 数 を 計 算 す る時 の 基 礎 に な る統 計 で,地 域 別 に 見 た と して も正 確 性 が保 証 され て い る と見 て よ い。

牛 乳 価 格 と して,牛 乳(加 工 乳 ・特 別牛 乳 を除 く,紙 容 器 入 り,1000mL入 り,店 頭売 り)の 価 格 を採 用 す る。

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消費者政策 に関する経済 ・経営学 的考察

雪 印 食 中毒 事件 が 起 こ っ た 直後(2000年7月 以 降)に 注 目 して,主 要 都 市 別 の 価 格 変 動 を見 る こ とに し よ う。採 用 した 主 要都 市 は,札 幌 市,東 京 都 区 部,名 古 屋 市,大 阪 市,奈 良 市,和 歌 山 市,神 戸 市,福 岡 市 で あ る。価 格 変 化 率 は すべ て前 年 同期 比 の 変化 率 を採 用 し,季 節 性 の 除 去 を 行 っ て い る。 図

3は,札 幌 市,東 京 都 区 部,名 古 屋 市 の 牛 乳価 格 変 化 率 を 示 して い る。

1→ 一札 幌 市 → 一東 京都 区部+名 古屋 市1

図3牛 乳価格の地域別 変化率(札 幌市,東 京都 区部,名 古 屋市)

東 京 都 区部 で は事 件 の前 後 で価 格 の変 動 が ほ とん ど見 られ ず,極 め て安 定 的 な値 動 き を 示 して い る。 た だ し,2001年4月 か ら2002年7月 に か けて, 長 期 に わ た る価 格 の低 下 が 見 られ る。 東 京 都 区部 で は 事件 の価 格 へ の影 響 は ほ ぼ 見 られ な か っ た が,そ の他 の 主 要都 市 に注 目 す る と,影 響 に は地 域 差 が 見 られ る こ とが分 か る。

札 幌 市 で は 事件 前 か ら価 格 の 低 下傾 向 が続 い て お り,事 件後 に大 き く価 格 が 落 ち込 む とい う現 象 が 見 られ た わ けで は な い。 た だ し,元 々 低 下 傾 向 が あ る中 で の マ イ ナ ス が 見 られ る こ とか ら,事 件 の イ ンパ ク トが それ な りに あ っ た もの と解 釈 で き るだ ろ う。

名 古 屋 市 で は2000年 に 入 り牛 乳 価 格 の低 下 が 見 られ て い た が,事 件 後 し

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ば ら く経 過 した2000年9月 以 降 に 極 端 な価 格 の低 下 が 見 られ る こ とに な っ た 。2000年10月 に は マ イ ナ ス10.6%を 記録 した 。価 格 の 低 下 傾 向 は その 後

も収 ま らず,2001年8月 まで低 下 傾 向 に歯 止 め が か か らな か った 。

1→ 一 大 阪 市 鴫 一奈 良 市 触 一和 歌 山 市1

図4牛 乳価格の地域別変化率(大 阪市,奈 良市,和 歌 山市)

最 も極 端 な 値動 き を見 せ た の が,雪 印 事件 の舞 台 と もな っ た近 畿地 方 で あ る。 図4に 大 阪 市,奈 良 市,和 歌 山市 の牛 乳価 格 変化 率 を 示 して い る。 グ ラ フの 縦 軸 の 高 さが他 の 図 と異 な るので 大 阪市 の値 動 きが小 さ く見 え るが,大 阪 市 で は2000年7月 に マ イ ナ ス4.0%を 記 録 し,同 年9月 まで 大 き な マ イ ナ ス が 続 い た。 そ の 後2001年6月 まで微 弱 で は あ る も の の マ イ ナ ス が 続 く こ とに な る。

今 回 の事 件 で最 も大 きな価 格 変 動 を見 せ たの が 奈 良 市 で あ る。 極 めて 安 定 的 に推 移 して い た 牛 乳 価 格 は 事 件 後 突 然 下 落 を始 め,2000年8月 に は マ イ ナ ス14.7%を 記 録 した。 そ の後 もマ イ ナ ス10%以 上 とい う激 しい価 格 低 迷 が 続 き,2001年6月 に は マ イ ナ ス20.6%を 記 録 した 。 価 格 変 動 率 が プ ラ ス に転 じた の は2002年6月 に な って か らの こ とで あ っ た 。

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消 費者政策 に関 する経済 ・経 営学的考察

和 歌 山 市 に お い て は 元 々 価 格 の 低 下 傾 向 が 見 ら れ て い た が,事 件 後 に は 大 き な 下 落 が 起 こ り,2000年7月 に は マ イ ナ ス8.5%を 記 録 した 。 そ の 後 も マ イ ナ ス7%近 い 下 落 が 続 き,2001年10月 に な る ま で マ イ ナ ス が 続 く こ と に な る 。

図5牛 乳価格の地域別変化率(大 阪市,神 戸市,福 岡市)

図5は 大 阪市,神 戸 市,福 岡市 の牛 乳 価 格 変 化 率 を示 して い る。 図4と の 比 較 の た め,大 阪 市 の デ ー タ を再 掲 して い る。 神 戸 市 で は 事 件 後 の2000年 7月 に マ イ ナ ス3.2%を 記 録 し,同 年10〜ll月 に は マ イ ナ ス5.1%ま で下 落

した。 そ の後 若 干 の 回 復 を見 せ る こ と もあ っ た が,基 本 的 に は価 格 の 下落 は 続 き,2003年 に入 る まで 下 落 傾 向 は 続 い た と見 て よ い 。 神 戸 市 と和 歌 山 市 で は,極 め て長 期 に わ た っ て下 落 傾 向が 続 い た こ と に な る。

福 岡 市 に な る と事 情 が 一 変 し,事 件 に伴 う価 格 の 下 落 は ほ とん ど見 られ な か っ た 。 全 体 的 に若 干 の マ イ ナ ス 傾 向 が 見 られ る が,日 本 経 済 全 体 が デ フ レ状 態 に あ っ た こ と も考 えれ ば 比 較 的 安 定 的 に 価 格 は推 移 し た と考 え ら れ る。

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④ 家 計 調 査 か ら見 た 地 域 差

『家 計調 査 』(総 務 省 統 計 局)を 用 いて,牛 乳 の 購 入 量 と購 入 価 格 を地 域 別 に見 る試 み を行 こ と にす る。 同調 査 は サ ンプ ル数 が 少 な い の で 粗 い デ ー タに な って し ま うが,県 庁 所 在 市 別 に購 入 量 と価 格 の デ ー タが取 れ る こ とは 大 き な長 所 で あ る。 以 下 に掲 げ る図 は 県庁 所 在 市 別 品 目分 類 別 の デ ー タに 基 づ く もの2で あ るが,調 査 方 法 の変 更 に伴 い2002年1月 以 降 は 県庁 所 在 市 別 に 取 る こ とが で きな くな った 。

前節 と同様 に,札 幌 市,東 京 都 区部,名 古 屋 市,大 阪 市,奈 良 市,和 歌 山 市,神 戸 市,福 岡 市 の 各 都 市 に つ い て,牛 乳(加 工 乳 ・特 別 牛 乳 を 除 く,紙 容 器 入 り,1000mL入 り,店 頭 売 り)の 購 入 数量 と購 入 価 格 の デ ー タ を集 め, 前年 同期 比 の変 化 率 を 計 算 した。

1→一札 幌市0東 京都区部+名 古 屋市i

図6牛 乳 購入数量の地域別変化率(札 幌市,東 京都区部,名 古屋市)

図6は,牛 乳購 入 数 量 の変 化 率 を札 幌 市,東 京 都 区部,名 古 屋 市 につ い て 見 た もの で あ る。 サ ン プ ル 数 が 少 な い た め,変 化 率 の 変 動 幅 が 大 きい な ど デ ー タ が 粗 い点 は 否 め な い が,2000年7月 の 事 件 後,名 古 屋 市 に お い て 若 干 の購 入数 量 の減 少 が 見 られ た。 デ ー タの 振 幅 が 大 き いた め,有 意 な差 と し

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消 費 者 政 策 に 関 す る経 済 ・経 営 学 的 考 察 て 確 認 す る こ と は 困 難 だ と思 わ れ る 。

96牛 乳 価 格

20 15 10 5 0

‑5

‑10

‑15

→ 一 札幌市 一 東京 都区部+名 古屋市

図7牛 乳購入価格 の地域 別変化 率(札 幌市,東 京都区部,名 古屋市)

図7は,牛 乳 購 入 価 格 の 変 化 率 を札 幌 市,東 京 都 区部,名 古 屋 市 につ い て 見 た もの で あ る。2000年7月 の 事 件 後,札 幌 市 に お いて 若 干 の 購 入 価 格 の 低 下 が 見 られ るが,有 意 な 差 と して 確 認 す る こ とは 難 しい。

1+大 阪市+奈 良市+和 歌 山市1

図8牛 乳購入数量 の地域 別変化率(大 阪市,奈 良市,和 歌 山市)

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→ 一大 阪 市 一を 奈 良 市+和 歌 山 市

図9牛 乳購 入価格 の地域 別変化 率(大 阪市,奈 良市,和 歌 山市)

図8と 図9は,そ れ ぞ れ 牛 乳購 入 数 量 と購 入 価 格 の 変 化率 に つ い て,大 阪 市,奈 良 市,和 歌 山 市 に つ い て 見 た もの で あ る。2000年7月 の 事 件 後 に つ いて,購 入数 量 の 大 きな 変化 は 見 られ な か っ た 。購 入 数 量 の大 きな低 下 を仮 説 と して立 てて い た の で,こ の結 果 は意 外 な結 果 で あ っ た。

購 入 価 格 の 変 化 に つ いて は,和 歌 山 市 に お い て若 干 の 低 下 が 見 られ るが, 大 阪 市 や 奈 良市 で は そ の よ うな現 象 は確 認 で きな い。

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図10牛 乳 購 入 数 量 の 地 域 別 変 化 率(大 阪 市,神 戸 市,福 岡 市)

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消費者政策 に関す る経済 ・経営学的 考察 牛乳価格

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i+大 阪市+神 戸市+福 岡市1

図11牛 乳購入価格の地域別変化率(大 阪市,神 戸市,福 岡市)

図10と 図11,そ れ ぞれ 牛 乳 購 入数 量 と購 入 価 格 の 変 化 率 に つ い て,大 阪 市,神 戸 市,福 岡 市 につ いて 見 た もの で あ る。2000年7月 の 事 件 後 に つ い て, 購 入 数 量,購 入 価 格 の い ず れ に つ い て も大 き な変 化 は 見 られ なか っ た。 前 節 の結 果 も加 味 すれ ば,福 岡 市 に お い て は事 件 の 影 響 は ほ ぼ 見 られ なか った と 考 え る こ とがで き る。

4.消 費 者 行 動 の特 徴 に関 す る試 論

雪 印集 団食 中毒 事 件 の イ ンパ ク トにつ いて は次 の こ とが 指 摘 で き る。 事 件 発 生 直 後 に は報 道 量 が 著 し く増 加 す る3こ とか ら,「 牛 乳 乳 製 品統 計 」,「消 費 者 物 価 指 数 年 報 」 お よ び 「小 売 物 価 統 計 」 か ら は,① 消 費 者 に と って 望 ま し くな い事 象 に 関 す る情 報 量 と消費 者 行 動 に お け る危 険 回 避 的 行 動 は比例 す る,② 事 件 の イ ンパ ク トは 地 域 間 で 異 な り,事 件 の 発 生 地 か らの 近 さ に 比 例 して,消 費者 行 動 の 変 化 は 大 き くな る こ とが 明 らか に な っ た。 しか しな が ら 「家 計 調 査 」 に つ い て は,先 の特 徴 を見 出 す こ とは 出 来 なか っ た。 情 報 量 と危険 回避 的 行 動 が必 ず し も比 例 して い る とは い え ず,変 化 の 大 きい と予

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想 され た近 畿 地 区 の 多 くの 都 市 に お い て,購 入 数 量 に 大 きな変 化 が 見 られ な か った こ と は非 常 に 興 味 深 い 。

本 研 究 に お いて は,こ れ らの 分 析 結 果 か ら挑 戦 的 な 仮 説 を導 い て み た い。

それ は 「大 量 の"一 般"世 帯 と,家 計 調 査 の 対 象 とな る世 帯 で は,情 報 の 受 容 ・解 釈 の様 式 が 異 な る=家 計 調 査対 象世 帯 は リス ク を 自身 の 取 捨 選 択 行 動 に よ って コ ン トロ ー ル す る こ とが 可 能 で あ る(も し くは 自身 が そ うで あ る と 考 えて い る)傾 向 が あ る」 とい う もの で あ る。

この 仮説 につ い て 既 存 研 究 との 比較 を試 み る前 に,な ぜ 家 計 調 査 対 象 世 帯 は 「リス ク を 自身 の 取 捨 選 択 行 動 に よ っ て コ ン トロー ル す る」 能 力 を有 す る 可 能性 が 一 般 世 帯 と比 較 して 高 い と推 測 で き るの か に つ い て,簡 潔 に述 べ て お く必 要 が あ る だ ろ う。 家 計 調 査 に際 して は,全 国約8,000世 帯 が 調 査 対 象 世帯 と して 選 択 さ れ る。 調 査 対 象 とな っ た世 帯 は,購 入 した もの に つ い て 購 入物 品,数 量(個 数,重 量,単 位),時 期,そ の 用 途 お よび支 払 い方 法 等 を, 規定 の 調査 票 に そ の 都 度 記 載 す る こ とが 求 め られ る。 対 象 世帯 の選 択 は 無 作 為 抽 出 で は あ る もの の,結 果 として"手 間 の掛 か る記録 を つ け る こ とに 耐 え 得 る消 費者 の 居 る世 帯"の デ ー タが収 集 さ れ る。 この よ うな こ とか ら,消 費 行動 に 対 す る意 識 が 一 般 世 帯 とは 異 な る可 能 性 が あ る世 帯 の デ ー タ と言 え る の で は な い か 。

リス ク情 報 の解 釈 に つ い て,専 門家(技 術 者)と 素 人(一 般 市 民)の 間 に 大 き な 相 違 が あ る こ とは,リ ス ク認 知 研 究 に お い て は 常 識 とな っ て い る。

土 屋(2004)は こ の 相 違 が 発 生 す る理 由 に つ い て,知 識 を作 り出 す た め に 用 い て い る情 報 の 相 違 と同 時 に,技 術 に対 す る評 価 の 相 違 が あ る こ とを 指 摘 して い る。 技 術 に対 す る評 価 に つ い て は,専 門 家 で は,そ れ を扱 う企 業 や 国 に対 す る信 頼 性,経 済 的 ・社 会 的 貢 献 可 能 性 お よ び技 術 的 コ ン トロ ー ル 可 能性 とい っ た 有 用 性 か らの 評価 を 意 味 す る こ とが 多 く,一 方 素 人 で は, 管 理 能 力 や 緊 急 時 の 対 応 とい っ た 危 険 性 に注 目 した 評 価 で あ る場 合 が 多 い

とい う。

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消費者政策 に関す る経済 ・経営学的 考察

家 計 調 査 世 帯 に お い て は,こ こで 言 う とこ ろの 「専 門家 」 的 な 行 動 を見 出 す こ とが で き るの で は な い か。 す な わ ち,多 くの 消 費者 が 報 道 に よ っ て製 品 の 危険 性 に注 視 して い る中,家 計 調 査 対 象 世 帯 で 購 買量 に さ ほ ど変 化 が 見 ら れ な い の は,"ど の 製 品 で あ れ ば信 頼 で き るか","ど の よ うな購 買 行 動 を取 れ ば 自身 が被 害 者 と な る可能 性 を 減 らせ るか"と い っ た視 点 か ら,自 身 の購 買 行動 に つ い て熟 慮 して い るか らで は な いだ ろ うか 。

蒲 生(2006)に お い て は,消 費 者 の リス ク認 知 に お いて は当 該 事 象 と 自身 の 時 間 的 ・空 間 的 距 離(論 文 中 で は 「関 与 度 」)が 影 響 す る と述 べ られ て お り,リ ス ク の 程 度 は 望 ま し くな い 事 象 の 発 生 確 率 × 事 象 の 重 篤 度 × 関 与 度 に よ っ て 規 定 す る こ とが よ り実 態 に 即 して い る主 張 され て い る。 特 に こ こ で の 近 畿 地 区 に お け る家 計 調 査 世 帯 は,他 地 域 の 消 費 者 と比 較 した 場 合 に, 事 件 の 被 害 者 とな る高 い可 能 性(=事 件 と自身 の距 離 が 近 い)が あ りな が ら も,自 身 の 判 断 に よ って それ を回 避 す る よ うな選 択 購 買 を行 っ て い る と考 え られ る ので あ る。

ま た,消 費 者 の 知 識 と行 動 につ い て は,次 の よ う な興 味 深 い指 摘 も あ る。

佐 藤 他(2005)はBSE問 題 を事 例 に,消 費 者 の 得 た どの よ うな知 識 が 消 費 行 動 の 形 成 に関 与 して い るか につ いて 実 証 的 に明 らか に して い る。 こ の 中 で 食 品 の安 全 性 につ い て積 極 的 な情 報 収 集 ・検 討 を行 う消 費者 ほ ど安 全 性 に 関 す る知 識 を豊 富 に有 して お り,思 い込 みや 盲 目的 な行 動 が減 少 す る こ と,逆 に 誤 っ た知 識 は それ らの行 動 を助 長 す る こ とが 指 摘 さ れ て い る。 同 じ消 費者 と い うグ ル ー プ 内で 情 報 を収 集 す る態 度 の相 違 が それ ぞ れ行 動 に反 映 さ れ る と い う点 は非 常 に興 味 深 く,本 研 究 に お い て行 っ た デ ー タ分 析 に お い て も,情 報 収 集 ・検 討 に対 す る態 度 が,理 性 的 な購 買 行 動 を 促 進 す る可 能 性 を 見 出 す こ とが 出来 た。

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5.む す び に か え て 一 消 費 者 の 「自立 性 」 育 成 の た め に 一

従 来 の 消 費 者政 策 に関 す る議 論 は,「(事 業 者 と比 較 して)消 費 者 は情 報 力 や 交 渉 力 に お い て 不 利 な立 場 に あ る こ とか ら,そ の 格 差 を 縮 小 す る」(細 川, 2007:p.23)と い う ア プ ロ ー チか ら行 わ れ て きた 。 しか し今 日で は 「消 費 者 保 護 基 本 法 」 が2004年 に 「消 費 者 基 本 法 」 に 改 訂 さ れ た こ とに象 徴 され る よ うに,「 消 費 者 は 『自立 した主 体 』 と して 市 場 に参 画 し,積 極 的 に 自 ら の 利 益 を確 保 す る よ う行 動 す る必 要 が あ る」(細川,2007:同 頁)と して 見 な さ れ て い る。 消 費者 は 自立 した存 在 で あ る こ とは社 会 に お い て共 通 認 識 で あ る とい って も過 言 で は な い だ ろ う。 西 村(2005)は,企 業 の社 会 的責 任 ば か り で は な く,市 場 を と もに形 成 す る主 体 と して の消 費者 の社 会 的 責任 を 強 く認 識 し,崇 高 な 倫理 観 を もって 消 費 を行 うべ きで あ る と主張 して い る。 また 小 木(2004)は,も は や 保 護 され る べ き客 体 で はな くな っ た消 費 者 が そ の 主 体 性 を回 復 す るた め に は,情 報 に対 す る高 い取 捨 選 択 能 力 を持 つ こ とが 肝 要 で あ る と論 じて い る。

本 研 究 に お い て は,自 身 の 判 断 お よび 責任 に お い て食 中毒 の被 害 者 とな る リス ク を低 減 させ て い る消 費 者 の 存 在 に注 目 した。 この よ うな行 動 に つ い て は,一 面 で は"勇 気 あ る行 動,周 囲 に 流 され な い強 い 意 志"と い っ た よ う に,先 天 的 な 能 力 に期 待 し,情 緒 的 な解 釈 に頼 る こ と も時 に は可 能 か も しれ な い。 しか しな が ら,消 費 者 政 策 の 中 で も近 年 と りわ け そ の重 要 性 が認 識 さ れ,多 くの 方 法論 が 展 開 され て い る消 費 者 教 育 の 有 効 性 に注 目 す る こ とが実 践 的 で あ ろ う。 そ の場 合,"ど の よ うな 価 値 観 を持 た せ るか"と い うタ イ プ の 教 育 よ り もむ し ろ,"自 発 的 な情 報 収 集 に 対 す る イ ンセ ンテ ィ ブ を い か に 設 計 し育 成 す るか",と い っ た ア プ ロ ー チ が 有効 で あ る と考 え られ る。 情 報 収 集 に対 す る姿勢 が 正 しい知 識 を身 にっ け る上 で 重 要 な役 割 を果 た して い る

とい う点 か ら も,ま た本 当の 意 味 で"自 立 した主 体"を 目指 す とい う意 味 で

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消費者政 策に関す る経 済 ・経 営学 的考察

も,「 正 し い こ と」 を 教 授 す る の で は な く,「正 し い 情 報 に ア ク セ ス す る方 法 」

を教 授 す る こ とが 重 要 な の で は な い か 。

参 考文献

今 井 光 映,中 原 秀 樹 編 著(1994)『 消 費 者 教 育 論 』 有 斐 閣.

岡 本 浩 一(1992)『 リ ス ク 心 理 学 入 門 』 サ イ エ ン ス 社.

小 木 紀 之(2004)「21世 紀 型 消 費 者 教 育 の 展 開 」 『都 市 問 題 研 究 』 平 成16年4月 号, pp.20‑31.

蒲 生 恵 美(2006)「 消 費 者 意 識 の2層 性 を ふ ま え た リ ス ク コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 必 要 性 」 『目 白 総 合 科 学 研 究(目 白 大 学)』2号,pp.197‑207.

吉 川 肇 子,山 本 明,大 坪 寛 子(2001)「 リ ス ク ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お け る マ ス ・ メ デ ィ ア 」 『日 本 リ ス ク 研 究 学 会 誌 』Vol.13No.1,pp.27‑33.

佐 藤 和 夫,合 崎 英 男,吉 川 肇 子,澤 田 学(2005)「 食 品 安 全 性 に 関 す る 知 識 が 消 費 者 の 態 度 に 与 え る 影 響 」 『農 業 情 報 研 究 』Vo1.14No.1,pp.39‑50.

土 屋 智 子(2004)「 リ ス ク コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 実 践 に 向 け て 一 理 解 し 学 ぶ べ き は 誰 か 一 」 『 安 全 工 学 』VoL43No.5,pp.284‑289.

西 尾 健,佐 藤 京 子(2007)「 わ が 国 が 経 験 し た 食 品 の 安 全 性 に 関 連 す る 諸 事 例 の 社 会 的 関 心 度 合 い の 比 較 」 「日 本 リ ス ク 研 究 学 会 誌 』Vol.17No.1,pp.85‑93.

西 村 隆 男(2005)『 日 本 の 消 費 者 教 育 そ の 生 成 と 発 展 』 有 斐 閣.

細 川 幸 一(2007)『 消 費 者 政 策 学 』 成 文 堂.

注 記:樫 田 は 平 成20〜21年 度 科 学研 究 費補 助 金 若 手 研 究(ス タ ー トア ッ プ)「CSR と ス テー クホ ル ダ ー ・コ ミュ ニ ケー シ ョン ー 豊 か な 消 費 生 活 の実 現 に 向 け て 一」

(課題 番 号:20830128)を 受 け た。 本 研 究 の 成 果 の 一一 部 は その 助 成 に よ る もの で あ る。 こ こ に記 して 感 謝 い た します 。

1本 稿 にお け る食 中毒 に 関 す る デー タ は全 て 細 貝 祐 太 郎,松 本 昌雄 監 修(2001)

『 食 中毒(シ リー ズ 食 品安 全 性 セ ミナー1)』 中 央 法 規 に 基 づ い た。

2国 立 国 会 図 書 館 支 部 総 務 省 統 計 図 書 館 にて 利用 可 能 で あ る。

32000年7月 〜8月 に欠 けて の 雪 印 関 連 の報 道(新 聞 報 道)は,例 年 同時 期 と比

較 して桁 違 い に 多か っ た(約10倍 〜30倍)。9月 以 降,報 道 量 は減 少 す る もの の,

例 年 同時 期 お よ び 年 間 で 比 較 した場 合 はや は り多 か っ た。 本 事 件 に関 連 す る報 道

(20)

量(新 聞 報 道 量)の 時 系 列 的 変 化 の 詳 細 につ い て は,樫 田 智 子(2006)「 企 業 の

社 会 的 応 答 に 関 す るス テ ー ク ホ ル ダ ー ・ア プ ロ ー チ か らの 考 察(2005年 度 名 古

屋 大 学 大 学 院 博 士 学 位 請 求 論 文)」 に お いて 詳 細 を明 らか に して い る。

参照