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中小製造業における持続的競争優位の源泉 ――

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Academic year: 2021

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中小製造業,海外展開,下請け脱却,リソースベーストビュー,ダイナミックケイパビリティ

 実務の世界において,日本の中小製造業はこれまで技術力という資源を持ちながらも,大手 メーカーへ依存し,いわゆる下請け体制で企業活動を進めざるを得なかった,しかし,急速にグ ローバル化する潮流の中で,産業構造は変化し,従来の下請け構造を脱却し,外部環境の変化に 適応した戦略が求められるようになった。とりわけ,長期間にわたり苦しんだ円高への対応や新 興国の市場開拓などのために,中小製造業の海外への事業展開は急務となった。

 理論面においても,バーニーを代表とするリソースベーストビューでは企業の内部資源が競争 優位の源泉とされてきたが,急速に外部環境が変化する中では,そのような変化を乗り越えて持 続的に競争優位を獲得できる動態的要因からの説明が不可欠であるとして,ダイナミックケイパ ビリティが注目されている。その一方で,このダイナミックケイパビリティ研究にはまだ未解明 な部分が多くある。そこで,まず,国内外におけるダイナミックケイパビリティの既存研究をレ ビューするとともに,大企業に関するものがほとんどであるため,中小企業研究の観点からもダ イナミックケイパビリティの整理を行った。その結果,以下の

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点に関する研究がいまだ解明さ れていないということがわかった。

1. ダイナミックケイパビリティの理論研究においては,理論の拡張やフレームワークの導出

はなされているが,実証が進んでいないという点。

2. 実証研究においては事例を詳しくみているものの,ダイナミックケイパビリティの主要な

議論であるティースが定義する

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つの視点「センシング,シージング,リコンフィギュアリ ング」を明示的に用いた日本企業の研究は見当たらないという点。

3. 実証研究においても,その中心は大企業に関するものであって,中小企業のダイナミック

ケイパビリティを特定するものはほとんどないという点。

 そこで,本研究では企業の持続的な競争優位の源泉となるダイナミックケイパビリティを,上 記にあげた

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つの視点から,特定した。

 特定方法としては,持続的競争優位獲得のために産業構造の変化に対応して下請け脱却を図り,

海外に展開する国内中小製造業(金子製作所)の企業活動に関して詳細にインタビュー調査を行 い,インタビューで行った質問に対する回答と,先述したダイナミックケイパビリティの主要な 研究であるティースの定義(ダイナミックケイパビリティは機会と脅威を感知し,構成するセン シング,機会を活用する能力であるシージング,企業の有形・無形の資産を拡張したり,結合し たり,保護したり,必要なときには再構成することによって競争優位を維持するリコンフィギュ アリング,の

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つからなる)を照らし合わせて検証するという手法をとった。なお,ダイナミッ クケイパビリティは時間軸が必要であるが,時間軸を固定して行うアンケート調査は必ずしも適 切ではないため,事例を

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つとりあげ,詳細に見ていくことでダイナミックケイパビリティを特 定していくことにした。

中小製造業における持続的競争優位の源泉

――ダイナミックケイパビリティの観点から――

平 田 祥 子 修士論文 アブストラクト

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 この研究を行うことにより,以下にあげる理論・実務の両方面から意義を引き出せると考えた。

まず理論面では,これまで世界の大企業を中心に研究がなされてきたダイナミックケイパビリ ティという概念に,日本かつ中小企業,そしてティースの定義を用いた考察,というこれまで未 解明だった点を組み込み,新たな知見を示すことができた。また,実務面では,恒常的な下請け 体制のもとで,内向的になり活路を見失いつつある製造業にとって,中小製造業全体としての状 況を概観し,下請け脱却に成功した企業の事例を詳細に示すことで企業戦略を構築する一助とな ることである。

 結論としては,金子製作所におけるダイナミックケイパビリティとして以下の

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つが特定され た。

1. 金子製作所における機会と脅威を感知し,構成するセンシングとは,海外市場に視野を広

げると,潜在的な顧客は無限に存在するという機会がある一方で,現在の国内メーカー依存 型の下請け体制に先はないという脅威を感知し,国内市場に見切りをつけた経営者の危機感 と判断力が存在する。

2. 金子製作所における機会を活用する能力であるシージングとは,海外展開に進出する機会

があっても,多くの中小企業が視察に留まってしまうなか,積極的に進出を行ったという実 行力のことである。

3. 金子製作所における企業の有形・無形の資産を拡張したり,結合したり,保護したり,必

要なときには再構成することによって競争優位を維持するリコンフィギュアリングとは,既 存の

Core Technology,Key Person,Network

を活用し,顧客に合わせてドメインを変更し,

どんな製品の要望にも対応するという

Proactive

な戦略構築能力のことである。

 人口の減少,少子高齢化,グローバル化,産業構造の変化といった急激な競争環境の変化のも とでは,ダイナミックケイパビリティが持続的な競争優位獲得の源泉となる。本研究で特定した ダイナミックケイパビリティが同じ中小企業でも他の業界,地域,国を越えて普遍的に通じるも のであるのか,大企業にも応用可能であるのかといったことに関しては,今後の課題にしていき たい。

立教ビジネスレビュー 第 7 号(2014) 104-105

参照

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