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自己資本比率規制の改正とグローバル経済への影響

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(1)

著者 中井 教雄

雑誌名 社会科学

巻 42

号 2‑3

ページ 69‑101

発行年 2012‑11‑30

権利 同志社大学人文科学研究所

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012907

(2)

自己資本比率規制の改正とグローバル経済への影響

中 井 教 雄

本稿は,バーゼルⅢ・BIS規制から新たに導入されるカウンターシクリカル資本バッ ファー(以下CCB)による 2 国間の信用市場および実物市場への影響について理論分 析を行う。この理論分析により,CCBの導入が,自国における自己資本比率規制のプ ロシクリカリティ問題を緩和させる一方で,ある条件下においては,各国の信用市場 および実物市場の変動を拡大させる可能性があることを明らかにする。

本稿の主な結論は,以下の通りである。第 1 に,バーゼルⅡ・BIS規制下において,

自己資本比率規制のプロシクリカリティ問題により,景気拡大(後退)期に貸出利子 率が低下(上昇)するフィナンシャル・アクセラレータ効果(以下FA効果)が発生 するため,経済のボラティリティが拡大する。それに対し,バーゼルⅢ・BIS規制か ら導入されるCCBにより,景気循環のような通常の経済変動において,その振幅を抑 制することができる。

第 2 に,CCBには限度があり,景気後退期(特に経済・金融危機期)においてCCB が枯渇すると,金融緩和政策の有効性が低下する。その結果,各国の中央銀行は,景 気回復のためにより大規模な金融緩和政策を行う必要があるが,この政策により他国 の純輸出が減少するため,逆説的に各国の経済が連動して収縮する。すなわち,CCB は,景気拡大期において,経済変動を抑制して各国の経済連動性を低減させることが 可能であるのに対し,景気後退期において,経済変動の抑制および経済連動性の低減 には限界がある。

最後に,第 2 の結果を踏まえると,通常の景気後退期においても,中央銀行には,危 機期におけるCCBの枯渇を未然に回避するインセンティブが働くため,大規模な金融 緩和政策を行う可能性がある。この政策が実際に行われると,外国においても大規模 な金融緩和政策が実施されることにより,両国でFA効果が発生する。その結果,自 国で生じた景気後退は,両国の大規模な金融緩和政策およびFA効果を介して増幅さ れる。したがって,本来,各市場間のプロシクリカリティ問題を低減させるために導 入されたCCBは,むしろ各国の信用市場の変動を増幅させ,グローバル経済の連動性 を高めることにより,各国の実物市場の変動も拡大させる恐れがある。

上記の結果は,CCBの設定の際に各国の中央銀行による協調した政策が必要である ことを示唆しており,同時に,中央銀行が金融政策とCCB規制政策を兼務することの 問題点を指摘している。

(3)

1 はじめに

サブプライム問題の顕在化およびリーマン・ブラザーズの破綻を受けて,金融危機は 米国の金融市場にとどまらず,グローバル金融危機に拡大した。更に,今次金融危機は,

流動性危機あるいは信用不安などの金融問題を顕在化していく過程で,欧米を中心とし て,経済成長率の低下または失業率の上昇等の国際的に深刻な経済問題も生じさせた。

このような金融・経済危機の再発を防ぐため,国際的に金融規制改革の議論が進めら れた。その議論の中で最も重要な項目の 1 つであるのが,自己資本比率規制(BIS規制)

の改正である。バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は,2010 年 12 月に,より強靭な金融 規制として,バーゼルⅢ・BIS規制を考案し,2013 年 1 月からの段階的実施および 2019 年の完全施行を決定した1)

バーゼルⅢ・BIS規制では,主に 3 つの新たな規制手段が導入される2)。第 1 の規制手 段は,資本の質と水準の向上である。資本バッファーの損失吸収力を向上させるため,最 低所要自己資本比率規制での資本量の計算において,普通株等のTier1 比率(コアTeir1 比率)の最低水準が引き上げられ,Tier1 資本およびTier2 資本の適格要件も厳格化され ている3)

第 2 の規制手段は,流動性比率規制である。この規制は,「流動性カバレッジ比率(LCR: Liquidity Coverage Ratio)」と「安定調達比率(NSFR:Net Stable Funding Ratio)」

の 2 つの指標から構成される。これらは,それぞれ一定比率以上の短期金融資産と長期 金融負債の保有を金融機関に義務付けるための最低水準を示すものであり,銀行に流動 性を確保させることを目的とした規制である。

最後の新たな規制手段として,プロシクリカリティの緩和を目的としたカウンターシ クリカル資本バッファー(以下,CCB)の導入が挙げられる。これは,経済情勢に合わ せて,銀行に最低所要自己資本量の積み増しまたは取り崩しを求めるものである。すな わち,この規制の導入は,景気拡大(後退)期に最低所要自己資本比率を引き上げ(引 き下げ),クレジット・サイクルのプロシクリカリティを低減させることを目的としてい る4)

自己資本比率規制によるクレジット・サイクルのプロシクリカリティとは,次のよう なメカニズムを指す5)。バーゼルⅡ・BIS規制において,銀行のリスク資産の査定に対し て,基礎的内部格付手法あるいは先進的内部格付手法が適用される場合,リスクウェイ トは,資産のデフォルト率に依存する。そのため,景気後退期において,リスクウェイ

(4)

トの上昇により,リスクアセットが増加するので,自己資本比率は低下する。このとき,

銀行は,景気後退期に資本調達を行うことが困難であるため,貸出を減少させる。貸出 の減少は,企業部門の生産活動の低下をもたらし,経済情勢は更に悪化する。その結果,

資金循環の観点から経済に悪影響が生じ,リスクウェイトがさらに上昇し,このような 負の循環が継続する6)

ゆえに,CCBの導入は,このような自己資本比率規制のプロシクリカリティ問題を緩 和させることが期待されている。

これらの新たな規制の中で,最もマクロ経済情勢と密接に関連している要素は,CCB である。資本の質と水準の向上あるいは流動性比率規制については,個別金融機関が自 身のリスクテイキングに応じて(新株発行等により)対応可能であるのに対し,CCBに ついては,個別金融機関が自身のリスクテイキングによって受ける影響よりも,マクロ 経済ショックによる個々の金融機関に対する影響の方が大きくなる。

例えば,平時から景気拡大期に移行する経済を想定してみる。このとき,平時におい て相対的にリスクを多くとっていた金融機関が,景気拡大期によるCCBの積み増しに対 処する場合,経済情勢の改善によるリスクアセットの低減よりも,CCBの積み増しの影 響の方が大きくなる可能性がある。この場合,CCBにより,当該金融機関は,景気拡大 期における資金需要に完全に対応することができず,信用市場に非効率性が生じる恐れ がある。

さらに,CCBによる経済への影響には,自国だけでなく海外の金融市場および実物経 済への影響も存在する。そのため,このような規制が適正に機能しないことで悪影響を 受けるのは,当該規制が課されている国に留まらず,海外の金融・経済にも影響を及ぼ す可能性がある。

そこで,本稿では,バーゼルⅢ・BIS規制から新たに導入されるCCBによる 2 国間の 信用市場および実物市場への影響について理論分析を行う。この理論分析により,CCB の導入が,自国における自己資本比率規制のプロシクリカリティ問題を緩和させる一方 で,ある条件下(両国でCCBが枯渇すると同時に,大規模な金融緩和政策が実施される ケース)においては,各国の信用市場および実物市場の変動を拡大させる可能性がある ことを明らかにする。

本稿は,以下のように構成される。次節では,先行研究と本稿の関係について述べる。

第 3 節では,モデルのセットアップを行い,マクロ経済ショックおよび金融市場ショッ クによる実物市場および金融市場への影響について分析する。また,自己資本比率規制

(5)

下における金融政策による各市場への影響についても考察する。第 4 節では,第 3 節で 導出したモデルを基づき,景気後退期における金融政策およびCCBの効果について検証 し,その限界を明らかにする。最後に,本稿で得られたインプリケーションおよび今後 の課題について述べる。

2 先行研究と本稿の位置付け

本稿と先行研究との関係は,以下の通りである。Heid(2007)は,自己資本規制下に おける信用市場のシクリカリティの問題およびマクロ経済に対するプロシクリカルな影 響について検証している。その結果,銀行が最低所要資本量を超過して最大限保有する 資本バッファーが,資本規制によるボラティリティの影響を軽減する上で,重要な役割 を果たしていることが示されている。

Heid(2007)で検証されている資本バッファーは,カウンターシクリカルな要素を含 んでいるが,実際の銀行行動において,景気拡大期に規制以上に資本を積み立てるより もむしろ,配当として資本が流出されることが多い。このような問題に対処するために,

バーゼルⅢ・BIS規制では,CCBおよび資本保全バッファーが導入されている7)。 また,Covas and Fujita(2009)は,資本財の生産のための資金調達が,エージェン シー問題を引き起こすような一般均衡モデルを用いて,バーゼルⅡ・BIS規制下におけ る銀行の流動性供給による景気循環効果について定量分析を行っている。その結果,カ ウンターシクリカルな自己資本比率規制下において,産出量および社会厚生のボラティ リティが,プロシクリカルな自己資本比率規制下よりも縮小することが示されている。

それに対し,Repullo and Saurina(2011)は,CCBの機械的な適用が,GDP成長率 が高い場合に資本必要量を減少させ,GDP成長率が低い場合に資本必要量を増加させる ので,リスク感応的な銀行資本規制固有のプロシクリカリティを悪化させる可能性があ ると主張している。

本稿の理論分析と最も密接に関連している文献は,Yoshino and Hirano(2011)であ る。Yoshino and Hirano(2011)は,寡占的な信用市場における銀行の利潤極大化行動 を前提とした一般均衡モデルを用いて,銀行貸出を安定化させるための自己資本比率の 水準を理論的に導出している。その結果,導出されたカウンターシクリカルな最適自己 資本量が,銀行行動,各国のマクロ経済構造および各国に対する経済ショックによる影 響によって決定されるべきであると結論付けている。

(6)

また,中井(2012)では,CCBによる 2 国間の信用市場への影響について理論分析が 行われている。その結果,閉鎖経済において,CCBを付加した最低所要自己資本比率規 制が,従来のBIS規制による自国の信用市場に対するプロシクリカリティ効果を低減さ せる一方で,開放経済においては,CCBによるプロシクリカリティ低減効果が十分に発 揮されない状況が存在することを明らかにしている。

これらの先行研究を踏まえると,以下の点が述べられる。バーゼルⅡ・BIS規制から 導入されたリスクウェイトの計測方法により,自己資本比率規制によるプロシクリカリ ティ効果が増幅し,金融市場と実物経済の不安定性が増大した。そのため,リスクウェイ トの変動を介した,自己資本比率規制のプロシクリカリティ問題を低減させるためには,

CCBの導入が必要とされる。

また,2 国間における金融市場と実物経済に関する理論研究において,バーゼルⅢ・BIS 規制(特に,自己資本比率規制のプロシクリカリティ問題とCCBの関係)について検証 している文献は,Yoshino and Hirano(2011)以外には見られない。ゆえに,CCBが 2 国間の実物市場および信用市場に与える影響について考察することには,一定の意義が ある。

そこで,本稿は,各国の金融当局が自国の経済情勢と銀行行動のみを考慮してCCB規 制を課す場合,本来,各市場間のプロシクリカリティ問題を低減させるために導入された CCBが,むしろ各国の信用市場の変動を増幅させ,グローバル経済の連動性を高めるこ とにより,各国の実物市場の変動も拡大させる恐れがあることを明らかにする。

3 モデル

3.1 モデルのセットアップ

本稿は,Heid(2007)のフレームワークを 2 国間の経済モデルに展開し,このフレー ムワークにYoshino and Hirano(2011)およびCovas and Fujita(2009)で導出された 自己資本比率規制の制約式を導入する。また,本稿では,信用市場と財市場の同時均衡 をモデル化することにより,自己資本比率規制下における金融市場と実体経済の相互作 用について考察する。

本モデルには 2 つの国が存在し,各国にリスク中立的な銀行部門と企業部門が存在す る。以降の表記を簡略化するために,自国をA国とし,外国をB国とする。つまり,各 変数の下付きのAおよびBは,それぞれA国およびB国の変数を表している。図 1 は,

(7)

各国の市場構成を示している。

3.2 企業の生産活動および資金需要

各国の企業部門は,以下のように示される生産関数に従い,借入資金および労働を生 産要素として最終財を生産する。

yA=θA FA(LAd, NA) (1a)

yB=θB FB(LBd, NB) (1b)

ここで,yi(i=A, B)は産出量であり,θi(i=A, B)は全要素生産性(TFP)であり,

Ldi(i=A, B)は資金需要であり,Ni(i=A, B)は労働投入量である。各変数の下付き のAおよびBはそれぞれA国(自国)およびB国(外国)を表す。また,Fi(.)(i=A, B)は,微分可能で凸性を満たす増加関数とする。

企業は競争市場でプライステーカーとして行動する代表的企業として記述することが できる。この代表的企業(あるいは企業部門)の利潤最大化行動により,貸出利子率(rLA

およびrLB)は資金の限界生産性に等しくなり,賃金率(wAおよびwB)は労働投入量の 限界生産性に等しくなる。すなわち,以下の式が成り立つ。

rLA=θA

∂FA(LAd, NA

∂LdA (2a) rLB=θB

∂F(LB dB, NB

∂LBd (2b)

wA=θA

∂F(LA dA, NA

∂NA (3a) wB=θB

∂FB(LBd, NB

∂NB (3b)

本稿では,モデルの複雑化を回避するために,Heid(2007)のモデルに純輸出(XAお よびXB)を導入した総需要(ydAおよびyBd)を考え,以下のように簡略化して扱う8)

図 1 各国の市場構成

A B

財市場の均衡 財市場の均衡

yA=YA(yA, rLA)+X(eA(HA, HB, yA, yB)+εISA yB=Y(yB B, rLB)+XB(e(HA, HB, yA, yB)+εISB

信用市場の均衡 信用市場の均衡

LdA(yA, rLA)=L(yAs A, rLA, εLLA L(ydB B, rLB)=L(yBs B, rBL, εLLB

(8)

ydA=Y(yA A, rLA)+X(eA (HA, HB), yA, yB)+εISA (4a)

+ − + + − − +

ydB=Y(yB B, rBL)+X(eB (HA, HB), yA, yB)+εISB (4b)

+ − − + − + −

ここで,Yi(i=A, B)は,Bernanke and Blinder(1988)と同様に,各国の内需を表 している。すなわち,Yiは,各国の消費および投資から構成される。また,eは為替レー トであり,各国のベースマネーHi(i=A, B)に依存する。さらに,εISi (i=A, B)は,各 国内のマクロ経済ショック(例えば,技術革新などの正のショックあるいは自然災害な どの負のショック)を表している。ただし,εISAおよびεISBはそれぞれ,A国およびB国内 のマクロ経済における固有の外生ショックであり,他国に直接的には影響を与えないも のとする。

このとき,(4a)式および(4b)式はそれぞれ,(3a)式および(3b)式と整合的であ る。すなわち,(4a)式において,εISAが正のマクロ経済ショックである場合,総需要(ydA) が増加する。これに伴い,産出量(yA)を増加させると,(1a)式および(3a)式におい て,家計の賃金所得が増える。その結果,(4a)式において消費も増加する(これは関数 YAで示される)。同様に,(1b)式,(4b)式および(3b)式の関係についても,このよう な整合性が保たれる。

ここで,財市場の均衡について考える。各国の財市場において,yA=yAdおよびyB=ydB

という需給均衡式が成り立つ。よって,(1a)式と(4a)式または(1b)式と(4b)式に より,以下の式が成り立つ。

θA F(LA dA, NA)=Y(yA A, rAL)+X(eA (HA, HB), yA, yB)+εISA (5a)

+ + + − + + − − +

θB F(LB dB, NB)=Y(yB B, rBL)+X(eB (HA, HB), yA, yB)+εISB (5b)

+ + + − − + − + −

以上により,i(i=A, B)国の資金需要曲線(LD曲線)は,以下のように導出される。

Ldi=L(ydi i, rLi)  (6)

+ −

(9)

3.3 銀行の貸出行動

自己資本比率規制下における銀行行動の理論から資金供給曲線(LS曲線)を導出する には,大きく 2 つのアプローチが存在する。1 つは,Yoshino and Hirano(2011)のよう に,バランスシート制約および自己資本比率規制制約下において,銀行が利潤最大化を 行うという最適化問題を解くことによって導出するMicro Foundation型のアプローチで ある。いま 1 つは,藤井(2003)のように,信用乗数の公式に自己資本比率規制を導入 するマクロ金融論的なアプローチである。

本稿では,自己資本比率規制による銀行行動への影響について忠実に考察するために,

前者のアプローチを採用する。ただし,ベースマネーの増減による金融政策が各市場に 与える影響についても分析するために,前者のアプローチによって導出された資金供給 曲線を,Bernanke and Blinder(1988)および植田(2006, 第Ⅳ章)に倣い,マクロ的な 資金供給曲線(LS曲線)に拡張する。

各国の銀行は,リスク中立的であり利潤を最大化するものと仮定する。以下の表記を簡 略化するために,ここでは,i(i=A, B)国の銀行における資金供給関数を導出する。銀 行は,預金および自己資本により資金調達を行い,その資金で企業部門に貸出を行う。こ こで,モデルの構造を単純化するために,各国の銀行部門は,自国の預金市場および株式 市場でのみ資金調達を行い,自国の企業部門にのみ貸出を行うものと仮定する。よって,

各銀行は,以下のバランスシート制約(予算制約)に直面しているものとする。

Lsi=Di+Ei (7)

ここで,Lsi,DiおよびEiはそれぞれ,貸出(供給量),預金および自己資本を表して いる。

各国の銀行の利潤関数(πi)は,それぞれ以下のようになる。

πi=rLi Lsi−rEi Eic

2(Lsi2 (8)

ここで,rLiは貸出利子率である。また,rEiは資本コストとする9)。最後の項は,貸出費 用関数を表している。貸出費用関数の形状は両国で等しいものとし,cはその費用関数の パラメータである(0<c<1)10)

各銀行には,各国の規制当局から以下のように示される自己資本比率規制が課される。

(10)

ここで,μiをリスクウェイト,ϕを(従来の)最低所要自己資本比率,ϕiを各国の金融当 局が設定するCCBの最低所要自己資本比率とする11)

Ei

μi Lsi

侒ϕ+ϕi (9)

現行の自己資本比率規制(バーゼルⅡ・BIS規制)下において,銀行が内部格付手法

(基礎的内部格付手法または先進的内部格付手法)を採用するものと仮定する場合,リス クウェイトは,景気循環の影響を受ける12)。すなわち,景気循環の上昇局面において,産 出量(yi)が上昇するにつれ,リスクウェイト(μi)は低下する。よって,本稿では,次 式のように,リスクウェイト(μi)が産出量(yi)の減少関数であると仮定する。

∂μi

∂yi<0 (10)

また,本稿では,Yoshino and Hirano(2011)に倣い,CCB(ϕi)が産出量(yi)の 連続増加関数であると仮定し,次式のように定義する。

ϕi=ϕ(yi i) and ∂ϕi

∂yi侒0 (11)

上式は,∂ϕi∂yi>0 の場合,産出量が増加すると,CCBの積み増しが生じることを表現 している。すなわち,バーゼルⅢ・BIS規制では,景気上昇(下降)局面において,CCB を積み増す(取り崩す)ことによって,クレジット・サイクルのプロシクリカリティを 低減させる。一方,ϕi=0 かつ∂ϕi∂yi=0 の場合,(11)式は,CCBが存在しない従来の バーゼルⅡ・BIS規制を表している。

このとき,銀行は,(7)式および(9)式を条件として,(8)式を最大化する。すなわ ち,以下の最適化問題を解く。

max rLi Lsi−rEi Eic 2(Lsi2

s.t. Lsi=Di+Ei and  Ei

μi Lsi

侒ϕ+ϕi

この最適化問題を解くと,各国における銀行の最適資金供給量(Ls*i )は,次式のよう Lsi

(11)

に示される13)

Ls*irLi−r(ϕ+ϕEi iμi

c (12)

(12)式より,ミクロ的な銀行の資金供給曲線(LS曲線)は,以下のようになる。

Ls*i =Ls*i(rLi, yi) (13)

+ +

ここで導出された資金供給曲線におけるCCBの性質は,(13)式をyiについて偏微分 することによって,次式のように表される。

∂Ls*i

∂yi =−rEi

c(ϕ+ϕi∂μi

∂yirEi

c μi

∂ϕi

∂yi (14)

このとき,CCBの導入が,信用市場のプロシクリカリティ問題を低減させるという点 において有効に作用するということは,景気拡大(縮小)(yiの上昇(低下))に対して貸 出量は増加(減少)するが,従来の自己資本比率規制(バーゼルⅡ・BIS規制)下にお ける貸出量の変化よりも小さくなることを意味する。すなわち,以下の式が成り立つよ うにCCBを設定する限り,経済変動(yiの変化)による資金供給量の影響(プロシクリ カリティ問題)を低減させることができる。

ϕi μi

∂μi

∂yi∂ϕi

∂yi<−ϕ+ϕi μi

∂μi

∂yi (15)

ただし,このような形で導出された資金供給曲線では,金融政策(ベースマネーHiの 増減)による影響について考察することが困難である。そのため,Bernanke and Blinder

(1988)および植田(2006, 第Ⅳ章)に倣い,(13)式をマクロ的な資金供給曲線(LS曲 線)に拡張する。i国(i=A, B)の信用乗数をψiとする。このとき,ψiの性質が,(13)

式と整合するものと仮定すると,1 国の信用市場における資金供給曲線(LS曲線)は,

次式のように表される14)

(12)

Lsi=ψ(ri Li, yiHi (16)

+ +

以上により,i(i=A, B)国の資金供給曲線(LS曲線)は,以下のように導出される。

Lsi=L(ysi i, rLi, Hi, εLLi ) (17)

+ + + +

ここで,εLLi (i=A, B)は,各国内の金融市場ショック(例えば,金融技術の進展ある いは信用格付の信頼性の低下など)を表している。すなわち,これらの金融市場ショック は,リスクウェイトの変動を介して,各国の貸出供給量に影響を及ぼす。ただし,εLLA お よびεLLB はそれぞれ,A国およびB国内の信用市場における固有の外生ショックであり,

他国の信用市場に直接的には影響を与えないものとする。

最後に,自己資本比率規制(BIS規制)の変遷を踏まえて,CCBの導入とその効果に ついて考察する。バーゼルⅠ・BIS規制では,一般的にリスクウェイトは経済情勢の変 化(本モデルの場合,産出量(yi))に応じて変動しない。そのため,資金供給量は,資 金需要の変動要因と信用市場で決定される貸出利子率によって決定される。

また,バーゼルⅡ・BIS規制では,リスクウェイトは経済情勢の変化(本モデルの場 合,産出量(yi))と負の相関があるように設定されている。そのため,資金供給量の変 動要因には,先述の変動要因に加え,リスクウェイトの変化を通じた最低所要自己資本量 による影響も含まれる。よって,バーゼルⅡ・BIS規制下における経済情勢の変化によ る貸出量の変化量は,バーゼルⅠ・BIS規制下に比べてボラタイルになる。このように,

バーゼルⅡ・BIS規制下における自己資本比率規制の問題は,プロシクリカリティ問題 とも呼ばれおり,今次金融危機の要因の 1 つと認識され,CCBの導入に繋がったとの見 解もある15)

このような理由から,バーゼルⅢ・BIS規制では,CCBの導入が行われている。CCB を導入した自己資本比率規制下において,資金供給量の変動は,以下のようになる。

∂Lsi

∂yi

∂ψ∂μii

∂μi

∂yi∂ψi

∂ϕi

∂ϕi

∂yi

Hi (18)

(13)

このとき,CCBの導入が,信用市場のプロシクリカリティ問題を低減させるという点 において有効に作用するということは,資金供給がリスクウェイトの変動を介して経済 情勢と正の相関があるが,CCBの調整を介した経済情勢との負の相関により,従来の自 己資本比率規制下における貸出量の変化よりも小さくなることを意味する。すなわち,以 下の式が成り立つようにCCBを設定する限り,経済変動(yiの変化)による資金供給量 の影響(プロシクリカリティ問題)を低減させることができる。

0<∂ϕi

∂yi<−∂ψi

∂μi

∂μi

∂yi

∂ψ∂ϕii (19)

3.4 全体系の均衡

i(i=A, B)国における財市場の均衡は,それぞれ(5a)式および(5b)式より,以下 のように示されている。

yi=Y(yi i, rLi)+X(ei (HA, HB), yA, yB)+εISi (20)

一方,i国における信用市場の均衡は,(6)式および(17)式により,以下のように表 される。

L(ydi i, rLi)=L(ysi i, rLi, Hi, εLLi ) (21)

これまでの分析を踏まえ,これら 4 つの市場の同時均衡について考察する。以降の比 較静学分析での表記を簡略化するため,各市場の均衡式を以下のように表す。

A国の財市場(ISA曲線):z1=yA−(YA(yA, rLA)+X(eA (HA, HB), yA, yB)+εISA) (22)

A国の信用市場(LLA曲線):z2=L(ydA A, rLA)−L(yAs A, rLA, HA, εLLA ) (23)

B国の財市場(ISB曲線):z3=yB−(YB(yB, rLB)+XB(e(HA, HB), yA, yB)+εISB) (24)

B国の信用市場(LLB曲線):z4=L(ydB B, rLB)−L(yBs B, rLB, HB, εLLB ) (25)

よって,以下の式が成り立つ。ここで,各偏導関数は,補論で示されている。

(14)

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

∂z1

∂yA

∂z1

∂rLA

∂z1

∂yB

0

∂z2

∂yA

∂z2

∂rLA 0 0

∂z3

∂yA 0 ∂z3

∂yB

∂z3

∂rLB 0 0 ∂z4

∂yB

∂z4

∂rLB

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

dyA

drLA

dyB

drLB

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

∂z1

∂HA

∂z2

∂HA

∂z3

∂HA 0

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

dHA

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎝ 0

∂z2

∂HB

∂z3

∂HB

∂z4

∂HB

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

dHB

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

∂z1

∂εISA

0 0 0

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

ISA

        +

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎝ 0 0

∂z3

∂εISB 0

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

ISB

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎝ 0

∂z2

∂εLLA

0 0

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

LLA

⎛⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎝ 0 0 0

∂z4

∂εLLB

⎞⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

LLB (26)

このとき,ヤコビ行列式(|A|)は次式のようになる16)

|A|≡

⎡⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

∂z1

∂yA

∂z1

∂rLA

∂z1

∂yB

0

∂z2

∂yA

∂z2

∂rLA 0 0

∂z3

∂yA 0 ∂z3

∂yB

∂z3

∂rLB 0 0 ∂z4

∂yB

∂z4

∂rLB

⎤⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

∂y∂zA1

∂z2

∂rLA∂z1

∂rLA

∂z2

∂yA

)(

∂y∂zB3

∂z4

∂rLB∂z3

∂rLB

∂z4

∂yB

       −∂z1

∂yB

∂z2

∂rAL

∂z3

∂yA

∂z4

∂rLB>0 (27)

3.5 マクロ経済ショックおよび金融市場ショック

ここでは,自国(A国)のマクロ経済ショック(εISA)および金融市場ショック(εLLA ) が両国の産出量および貸出利子率に与える影響について検討する。これは,自国の外生 変数による外国の内生変数への影響について検証すれば,その検証結果を外国から自国 への影響に応用することができるためである。

(26)式および(27)式より,自国のマクロ経済ショック(εISA)が自国(A国)と外国

(B国)の産出量および貸出利子率に与える影響は,それぞれ以下のようになる17)。また,

この結果は,図 2 のように示される18)

(15)

dyA

ISA= 1

|A|

∂z2

∂rLA

∂y∂z3B

∂z4

∂rBL∂z3

∂rLB

∂z4

∂yB

>0 (28)

drLA

ISA= 1

|A|

∂z2

∂yA

∂z∂rLB3

∂z4

∂yB∂z3

∂yB

∂z4

∂rLB

(29)

If ∂LdA

∂yA∂LAs

∂yA then drLA

ISA>0, otherwise drLA

ISA<0 dyB

ISA=− 1

|A|

∂z2

∂rLA

∂z3

∂yA

∂z4

∂rBL

>0 (30)

drLB

ISA= 1

|A|

∂z2

∂rLA

∂z3

∂yA

∂z4

∂yB

(31)

If ∂LdB

∂yB∂LBs

∂yB then drLB

ISA>0,  otherwise drBL

ISA<0

(28)式より,自国における正のマクロ経済ショックが生じると,ISA曲線の右方シフ トを通じて,総需要が増加し産出量が拡大する。それに伴い,総供給における資金需要

図 2 正のマクロ経済ショック

(16)

が増大する。このとき,(29)式において,貸出利子率の変化は,自己資本比率規制の在 り方によって異なる。まず,リスクウェイトが経済情勢(yA)に依存しないバーゼルⅠ・

BIS規制下において,∂LdA ⁄∂yA>∂LAs∂yA=0 となる(これをLLAI曲線とする)ので,均 衡点は点Aから点Bにシフトする。すなわち,資金需要の増大により,貸出利子率は上 昇する。

それに対し,リスクウェイトが経済情勢(yA)の減少関数となるバーゼルⅡ・BIS規 制下において,∂LdA∂yA>∂LAs∂yA>0 の場合,LL曲線の傾きは,例えばLLAIII曲線のよ うに,LLAI曲線よりも緩やかになり,均衡点は点Aから点Cにシフトする。すなわち,

バーゼルⅡ・BIS規制下において,正のマクロ経済ショックは,バーゼルⅠ・BIS規制 下ほど貸出利子率を上昇させない一方で,産出量をより大きく拡大させる。

さらに,0<∂LAd∂yA<∂LAs∂yAとなる場合,LL曲線の傾きは,LLAII曲線のように負 となり,均衡点は点Aから点Dにシフトする19)。その結果,正のマクロ経済ショックは,

産出量を先程のケースよりも拡大させるだけでなく,貸出利子率を更に低下させる。すな わち,このケースは,より多くの資金供給をもたらし,均衡産出量を更に増大させること から,本稿では,このような現象を「バーゼルⅡ・BIS規制下におけるフィナンシャル・

アクセラレータ効果」(以下,「FA効果」)と呼ぶ20)。また,この効果は,負のマクロ経 済ショックが生じた場合,全く逆の現象(すなわち,産出量の減少→リスクウェイトの 増大→貸出利子率の上昇→更なる産出量の減少)を発生させることから,プロシクリカ リティ問題も内包していると言える。

最後に,バーゼルⅢ・BIS規制では,信用市場のプロシクリカリティ問題を低減させ るために,(19)式に示されるようなCCBが導入されている。ただし,(19)式は,プロ シクリカリティ問題を低減させるための条件であり,必ずしも上述のFA効果も抑制可能 であるとは限らない。FA効果を低減させるためには,CCBの設定が,以下の条件式を 満たさなければならない。

∂Ldi

∂yi∂Lsi

∂yi∂Ldi

∂yi

∂L∂μisi

∂μi

∂yi∂Lsi

∂ϕi

∂ϕi

∂yi

>0 (32)

よって,この条件と(19)式の条件を融合させると,次式が成り立つ。

∂L∂ydii∂Lsi

∂μi

∂μi

∂yi

∂L∂ϕisi∂ϕi

∂yi<−∂Lsi

∂μi

∂μi

∂yi

∂L∂ϕsii (33)

(17)

以上により,(33)式のように設定されたCCBは,信用市場におけるプロシクリカリ ティ問題を低減させることができるだけでなく,上述のFA効果も抑制することができ る。この結果は,LLAIII曲線として表され,均衡点は点Aから点Cへとシフトし,その変 化の大きさは,バーゼルⅠ・BIS規制下よりも大きくなるが,バーゼルⅡ・BIS規制下 のようなFA効果を生じさせることはない21)

一方,(30)式より,自国の所得の増加に伴い,外国から自国への輸入も増加する。こ れは,外国(B国)の純輸出の増大を意味するので,(ISB曲線の下方シフトにより)外 国の産出量も増加する(例えば,点A'から点B'または点C'へのシフト)。よって,外国 においても資金需要が増大する。ここでも,A国においてFA効果が発生する場合,B国 においてISB曲線の下方シフトが拡大するため,産出量および貸出利子率の変化も大きく なる(例えば,点A'から点D'へのシフト)。

このとき,(31)式において,貸出利子率の変化は,自己資本比率規制の在り方によっ て異なる。この結果は,上述の自国(A国)における貸出利子率の変化と同様に説明する ことができるので省略する。すなわち,外国(B国)においても,バーゼルⅡ・BIS規 制下におけるFA効果およびそれに伴うプロシクリカリティ問題が生じる可能性がある。

そのため,バーゼルⅢ・BIS規制下において,各国の金融当局は,自国の経済・金融情 勢を安定化するために,(33)式を満たすようなCCBを設定する必要がある。

先の分析と同様に,自国の金融市場ショック(εLLA )が自国(A国)と外国(B国)の 産出量および貸出利子率に与える影響は,それぞれ以下のようになる22)。また,この結 果は,図 3 のように示される。

dyA

LLA = 1

|A|

∂z1

∂rLA

∂z2

∂εLLA

∂y∂zB3

∂z4

∂rLB∂z3

∂rLB

∂z4

∂yB

>0 (34)

drLA

LLA =− 1

|A|

∂z2

∂εLLA

∂z4

∂rLB

∂y∂zA1

∂z3

∂yB∂z1

∂yB

∂z3

∂yA

∂y∂zA1

∂z3

∂rLB

∂z4

∂yB

<0 (35)

dyB

LLA =− 1

|A|

∂z1

∂rAL

∂z2

∂εLLA

∂z3

∂yA

∂z4

∂rBL

>0 (36)

drBL

LLA = 1

|A|

∂z1

∂rAL

∂z2

∂εLLA

∂z3

∂yA

∂z4

∂yB

(37)

(18)

If ∂LdB

∂yB∂LBs

∂yB then drLB

ISA>0,  otherwise drBL

ISA<0

(35)式に示されるように,自国における正の金融市場ショックの発生により,資金供 給量が増加し,バーゼルⅠ・BIS規制下において,LLAI曲線は下方にシフトする。その 結果,均衡点は点Aから点Bにシフトし,貸出利子率は低下する。このとき,限界生産 量の点から企業の資金調達量が増加するので,自国の産出量も増加する((34)式)。

それに対し,バーゼルⅡ・BIS規制下では,先の分析のように,LLAII曲線が右下がり になるケースが存在する。このとき,均衡点は点Aから点Cにシフトすることから,貸 出利子率の低下および産出量の増加は,バーゼルⅠ・BIS規制下よりも拡大する。これ は,自国における正の金融市場ショックの発生が自国の産出量を増加させることにより,

リスクウェイトの低下から資金供給量が増加し,結果として更なる貸出利子率の低下と 産出量の増大をもたらすためである。よって,このようなFA効果およびプロシクリカリ ティ問題を抑制するためには,少なくともLLAII曲線の傾きが正となるようなCCBの設 定を行う必要がある。なお,このような設定は,(33)式を満たせば十分である。

また,A国の産出量の増加は,上述のように,(B国の)純輸出の増加を通じて,外国

図 3 正の金融市場ショック

図 4 ベースマネー H A の増加(∂L d A  ⁄ ∂y A >∂L A s  ⁄ ∂y A )のケース)

参照

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