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Academic year: 2021

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FICオープンセミナー報告

著者 法政大学国際文化学部

出版者 法政大学国際文化学部

雑誌名 異文化. 論文編

巻 21

ページ 237‑278

発行年 2020‑04‑01

URL http://hdl.handle.net/10114/00023213

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異文化 21

●日時:2019 年 7 月 6 日(土) 14:30 ~ 17:45

●会場:市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー 3 階 BT0300

●内容: 映画『人形のいる風景-ドキュメント・オブ・百鬼どんど ろ』(2006 年)、『VEIN -静脈』(2011 年)2 作品の上映 と、渡邊世紀監督・松澤文子さんの対談

●参加人数:約 40 人

国際文化学部「SJ 国内研修」の研修地である伊那谷には、江戸時 代に伝来した人形浄瑠璃を受け継ぐ黒田人形・今田人形・早稲田人形・

古田人形の伊那谷 4 座が、いまも活動を続けている。ほかに、大鹿歌 舞伎・下條歌舞伎・中尾歌舞伎などの歌舞伎の伝統もある。

こうした伝統文化の存在が一つの背景になって 1979 年に始まった

「人形劇カーニバル飯田」は、その後「いいだ人形劇フェスタ」と名 称を変えながらすでに 40 年を超える歴史を有し、日本における最大 の人形劇の祭典として、国内外にその存在を知られるに至っている。

岡本芳一の「百鬼どんどろ」も、こうした人形文化の伝統とその発 展の文脈で捉えられるかもしれない。広島県呉市出身の岡本芳一は、

等身大の人形と踊るという、奇抜で前衛的な一人芝居の人形劇を創始 したが、リアカーを引きながら全国を公演行脚した末に落ち着いたの は、出身地の広島でも東京でもなく、人形文化の伝統があり、二つの アルプス(中央・南)が美しい上伊那郡飯島町であった。

今回の FIC オープンセミナーでは、この人形師岡本芳一と「百鬼 どんどろ」を取り上げた。2010 年、難病による岡本の早世で「百鬼 どんどろ」を生で観ることはかなわなくなったが、幸い渡邊世紀監督

人形師岡本芳一と「百鬼どんどろ」

―渡邊世紀監督の 2 つの映画作品を媒介に

SJ 委員会 FIC オープンセミナー

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が生前の岡本の姿を記録した『人形のいる風景-ドキュメント・オブ・

百鬼どんどろ』(2006 年)と『VEIN -静脈』(2011 年)という、2 本の優れた映像作品が残されているからである。

当日は、これら 2 本の映画鑑賞と、渡邊世紀監督および公演のプロ デュースなどで岡本芳一と交流のあった松澤文子さん(公益財団法人・

現代人形劇センター執行理事)両者の対談を通じて、岡本芳一の世界 が徐々に明らかになっていった。すなわち、観るものが自分の感情を そこに投影できるよう、岡本自身は人形をいわばカラにして、感情を 込めないことを心掛けたこと、遺作となった『VEIN -静脈』はそれ までの岡本作品とは表現が明らかに異なるが、その背景には血液が作 れないという自らの病への自覚からする人間の生と死、愛などに対す る痛切な認識があったであろうこと、舞台の上での厳しい姿とは異な り、日常の岡本芳一は少し抜けたところすらあるごく一般人だったこ と、等々である。岡本と活動をともにし、その後自立して人形遣いを 続けている黒谷都さんが、求めに応じて会場から随時発言してくれた こともありがたかった。

本イベントを企画した髙栁としては、伊那谷に人形浄瑠璃などの伝 統文化があることが、こうした新しい前衛的な芸術をも呼び寄せ、そ れがまた新たな文化創出につながっていることや、飯島町本郷の桃澤 さんという土地の名士が、この一見奇抜な人形遣いを受け入れ、自分 の梨畑の隣(もと選果場)を提供して庇護してきた事実が、江戸時代 末から明治にかけてやって来た放浪俳人井月を受け入れ、大事にした 伊那谷の風土ともつながっているように思われること、などをあらた めて確認する場となった。

本来なら、岡本芳一「百鬼どんどろ」の跡を継ぎ、自分なりの新展 開を模索している「百鬼ゆめひな」の飯田美千香さん(鹿児島県出身;

2013 年度の SJ 国内研修で、飯島町のアトリエでワークショップをさ せてもらいお世話になった)もお招きすれば、伝統と変革の問題によ

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り鋭く切り込めたものと思われるが、所要時間の関係で今回は断念し た。

幸い、飯田から参加された飯田人形劇フェスタ実行委員長の口から、

そうした催しをいずれ飯田で実施してみたい旨の希望が語られた。今 回の東京での催しが、ひいては飯田や飯島にも影響を与えるとすれば、

SJ 国内研修で毎年お世話になっている研修地にせめてものご恩返し をする意味で、また有益なことであろう。

奇しくも岡本芳一の命日に実施された今回のFICオープンセミナー が、時間や空間の枠を超えて、人と人とのつながりや文化間の交流に 寄与するとしたら、主催者として幸いなことである。人形劇文化につ いては、SJ 国内研修の事前学習でも毎年扱っているが、今後とも関 連イベントを適宜開催して、人形劇表現の可能性を探ってみたい。

【髙栁俊男、渡辺昭太】

(左)渡邊世紀監督、(右)松澤文子さん

参照

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