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韓国・済州島の水環境に関する予察的研究

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韓国・済州島の水環境に関する予察的研究

著者 小寺 浩二

出版者 法政大学文学部

雑誌名 法政大学文学部紀要

巻 80

ページ 65‑80

発行年 2020‑03‑13

URL http://doi.org/10.15002/00023065

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Ⅰ はじめに

 環太平洋造山帯に位置する日本には,数多くの 島嶼・火山が存在する。島嶼は,その多くが比較 的小規模で限られた空間であるため,農業・工業 などの人間活動にとどまらず,海塩の影響(後藤 ほか,1989)や,越境汚染の影響(尾関ほか,

2004)などが及んでいる。一方,火山には有力な 貯水能が存在する(山本,1970)とともに,噴火 史と周辺水環境の水質に相関があることが確認さ れている(濱ほか,2013・猪狩ほか,2018)。以 上を踏まえて,伊豆諸島,八重山諸島,長崎県島 嶼などの島嶼と,御嶽山,箱根山,浅間山などの 火山周辺の水環境研究を行ってきた。

 長崎県島嶼における研究では,五島列島(池上 ほか,2015),壱岐島(阿部ほか,2016),対馬(矢

巻ほか,2018)が過去に行われてきたが,西方に は韓国の火山島・済州島が位置する。これまでの 成果を踏まえ,済州島における水環境の水質やそ の形成要因を把握し,他の研究事例との比較を検 討したい。今回は,2018 年 12 月と 2019 年 6 月 に行った現地調査結果をもとに報告する。

Ⅱ 対象地域の概要

 韓国最南端に位置する済州島は,同国最大の島

(1,848km2)で約 66 万の人口を持つ。香川県と ほぼ同じ面積で,日本で最も大きい(本州など 4 島を除き)沖縄本島と比較すると,約 1.5 倍の広 さで人口は約 2 分の 1 である。標高 1,950m の漢 拏山(ハルラサン)を中心に,300 以上の小独立 火山がある。花崗岩の基盤上には,少量の安山岩 類,相面岩類を伴う玄武岩の溶岩類が覆っている

韓国・済州島の水環境に関する予察的研究

小 寺 浩 二

要 旨

 長年,日本国内の島嶼や火山地域の水環境の調査・研究を続けてきたが,特に最近は長崎県の島嶼に力を入 れ,五島列島,壱岐,平戸,対馬と継続的な調査を行ってきた。また,かつて行った伊豆諸島に関する研究で は,最終火山活動期と水質の関係を示すことができており,火山島であり対馬に近い済州島を比較研究する機 会を待っていた。幸いにして 2018 年 12 月と 2019 年 6 月に調査する機会を得たので,その概要を報告する。

 済州島は,全島をほとんど溶岩流が覆う火山島であるため,降水量の多い地域でありながら伏流河川が多い が,ある程度流れのある河川を調査することができた。島の地域によっては,伏流しやすい河川が多かったり,

地表流として流れる河川が多いなど,分布が分かれている。また,人口の多い都市域や,農地の周辺を流れる 河川では,その人為的影響が河川に及んでいることが明らかとなった。

 さらに,済州島での調査結果を受けて伊豆諸島三宅島での調査・研究を再開したので,直近のデータとして 比較のために提示した。今後は,済州島に関する統計情報・GIS データ等を収集・整理し解析を進めるととも に,多雨期や,山頂域での調査も検討したい。また,日本の火山島との比較研究も平行して進めるつもりであ る。

キーワード:韓国,済州島,国境,火山島,水環境,溶岩流,水質汚濁,河川管理

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(種子田ほか,1970)。一枚の溶岩流の厚さが 30

~50m に達するものもあり,長さ数 100m に達 する溶岩洞窟が多い(李,1982)。この溶岩洞窟 群は,韓国唯一のユネスコ世界自然遺産として認 定されている。また,世界ジオパークの認定も受 けており,済州島世界自然遺産センターでは,学 術情報の発信,地域文化に関する学習など,登山 や見学以外にも観光資源の開発に力を入れている

(大野,2016)。

 済州島は韓国本土から隔離された離島で,地理 的・歴史的にも固有の自然,文化を有するが,か つては辺境の島として,李氏朝鮮時代(1392~

1910 年)には流刑地とされるなど中央から疎外さ れてきた島であった。しかし,現在は周辺の海流 の影響によって,年間の平均気温が約 15℃で,温 帯湿潤気候区に属「韓国のハワイ」とも称される

リゾート観光地となっている。島の中央部には漢 拏山がそびえ,局地的な気候の変動が著しく現れ,

冬季の気象衛星図では,季節風による雲のカルマ ン渦が見られる。年間観光客は,国内外合わせて 約 1,500 万人である。済州島の主要産業は,かつ て柑橘類の果樹栽培,漁業などの第 1 次産業で あったが,現在は観光などの第 3 次産業が中心,

拡大傾向にあり,産業別就業者や,地域内総生産 の割合では約 8 割を占めている(新井,2013)。最 近では,特に中国人観光客の増加が著しい。

 国内外からの移住者も多く,韓国の他の地域と 比較して,著しい人口増加が続いている(人口増 加率 3% 以上:図 4)。

図3 人口の変化(済州特別自治道の資料から作成)

 水文環境についてみると,年降水量の平均は 1,872mm,蒸発散量の平均は 693mm と見積も られている(Lee,1996)。年降水量は近接する 九州北部地域より多く,韓国本土の降水量平均の 約 1.5 倍近くの量となる。大小 30 余りの河川が 漢拏山を中心に北流,あるいは南流している。し かし,溶岩類が広く分布するという地形・地質条 件を背景に,地層の透水性が非常に大きいため,

降水の多くは地下に浸透する。このため,河川の 大部分は恒常流が少なく,涸れ谷の状況を呈し,

降雨時のみ流出現象が起こる一時河川が大部分で ある。涵養・流出機構は,標高 1,200m 以上では 地下浸透と表層水が,1,200~500m では地下浸 透と伏流水がそれぞれ卓越する。500~200m で は稀に湧泉が出現し,200m 以下の海岸部感潮帯 に湧水群が形成されている。したがって,下流部 で水流がみられる河川は,標高 100~300m に位

図2 済州島の地質(島野ほか,1996)

図1 済州島の位置

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置する湧水を水源としている流れている(島野ほ か,1996)。

 土地利用に関しては,中央部の山岳地帯には森 林が拡がり,標高が低くなるにつれて草地,畑 地,宅地地域となる。1990 年代,人口は,北部 の済州市街が中心であったが,南部だけでなく,

東北部,西部にも宅地が広がっている(図 4:

2010 年)。

図4 土地利用の変化(上:1990年・下:2010年)

(Jin Woo Park et al, 2017)

Ⅲ 現地調査結果

 第 1 回目の調査は,2018 年 12 月 6~8 日にか けて,済州島の外周部を中心に,98 の地点で水 流の確認・水質調査を行った。しかし,水流・水 塊があり水質調査が実施できたのは 24 地点であ る。現地では気温,水温,pH,EC,COD,流量 を測定し,試料を持ち帰り,TOC,主要溶存成 分の分析を行った。

 第 2 回目の調査は,「身近な水環境の全国一斉 調査」 にあわせて 2019 年 6 月に同様の方法で実 施し,24 地点で水質調査を行った。

1.水文観測結果

( 1 ) 第1回調査(2018年12月)

1)調査地点・流量・水温

 水質調査を実施できた地点は北西部と南部に集中 していた。東部,南部では水流がなく,海岸線近くま で伏流する河川が多かった。南部の西帰浦周辺では,

正房瀑布などで流量が多く,水温は都市域で高い。

図6 流量と水温(2018.12)

図7 電気伝導度とCOD(2018.12)

図5 調査地点概略

(5)

2)電気伝導度とCODの分布

 海岸近くで,海水の影響を受けた高 EC の地点 が数点あり,北西部では,都市部の汚れや海塩の 影響で高 EC が分布。南部の西帰浦周辺では,

150µS/cm 以下。COD は都市部で高い。

3)pH(水素イオン濃度)

 多くの地点で 7.5 以下だったが,北部,南部に 8.0 以上の地点が 1 地点ずつあり,西南部の 3 地 点はすべて 7.8 以上を示した。

図8 pH分布(2018.12)

4)TOC(全有機炭素量)

 COD や EC と同様,南部に低く,北西部と南西 部に高い。南部でも一部都市域で高い。

図9 TOC分布(2018.12)

5)まとめ

 海水の影響を受けている 3 地点を除いて,北部 と南西部で EC や COD が高く,都市や農地の影 響が表れている。一方南部の EC は総じて低かっ たが pH が高い地点は多く,この地域の地下水の 性質が表れていると考えられる。

( 2 )第2回調査(2019年6月)

1)調査地点と流量

 12 月と比較して水温の高い地点が多いが,20℃

以下や 18℃以下の地点も多く,南部では 16℃以 下の地下水の影響が強い地点が広範囲にある。

図10 流量と水温(2019.6)

2)電気伝導度とCODの分布

 3 地点では 12 月と同様海水の影響があり,西 部の数地点を除き,EC・COD 共に値が低い。

図11 電気伝導度とCOD(2019.6)

3)pH(水素イオン濃度)

 12 月とほぼ同様の傾向を示したが,値は低い。

4)TOC(全有機炭素量)

 12 月とほぼ同様の傾向を示したが,一層地域 による差が際立っていた。1H で高いのは不思議 である。

5)まとめ

 地域や流量の違いによる水質の違いが見られた。

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2.水質分析結果

( 1 )第1回調査(2018年12月)

1)主要溶存成分バランスの分布

 海塩の影響の強い Na-Cl 型と火山性の地質の影 響の強い Ca-HCO3型に大きく分けられるが,さ らに硝酸(NO32-)の影響が強い地点と少ない地 点に分けられる。硝酸の値が高いのは,主に西部 の河川下流域に多く,先行研究による結果とよく 一致している。

2)主要溶存成分の組成

 5E,9J,16N は,塩水遡上による海水の位置に プロットされる。南部の 17N,18N,21W と西部 の 1H は,浅層地下水の性質を示し,26W の水道 水もほぼ同様の水質を示すことから,水源は浅層 地下水だと思われる。また,2H,3H,30D は,硝 酸イオン濃度が高いことから,他の地点と異なっ た位置にプロットされている。

図12 pH分布(2019.6) 図13 TOC分布(2019.6)

図14 主要溶存成分とEC・COD(CODは2018年12月)の分布

(7)

表1 現地調査と水質分析結果

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図15 主要溶存成分組成(上:2018年12月・下:2019年6月)

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( 2 )第2回調査(2019年6月)

1)主要溶存成分バランスの分布

 1 回目(2018 年 12 月)とほぼ同様の結果が出 ているが,10J,12J を除いて 12 月よりも溶存成 分濃度が高く,特に 1H,31D で著しい差が認め られた。

2)主要溶存成分の組成

 組成でも 12 月とほぼ同様の傾向が見られるが,

南部よりも,西北部の 1H,6E,10J,12J で特に浅 層地下水の性質が強く,硝酸の影響があるグルー プでは,特に 2H,29W で 12 月よりも高い値が検 出されて,極端な位置にプロットされている。

( 3 )硝酸汚染 1)地域毎の分布

 地域毎に地下水中の硝酸態窒素濃度を比較した 結果によると,島の西半分の地域では,10mg/ℓ 以上の値を示し,Hanlim 地区で 12mg/ℓ以上,

Daejeong 地区で 14mg/ℓ以上,Hankyung 地区 で最大の 16mg/ℓ以上となっている(Kimet al.,

2018)。

2)井戸毎の分布

 井戸毎の分布図で見ると,3mg/ℓ以上の汚染 井戸が全域に分布しているが,10mg/ℓ以上の井 戸は西部地区に限られ,やはり,Hanlim,Han- kyung,Daejeong 地区に多くの汚染井戸が分布 し て い る( 済 州 特 別 自 治 道 保 健 環 境 研 究 院,

2019)。

3)今回の調査結果

 2 回の調査結果をまとめた図によると,全域で ある程度の硝酸態窒素が検出されているが,特に Hanlim 地区の 2H と 3H で高く,季節変化はあま りなく高濃度を維持している。

( 4 )まとめ

 調査河川の中で,北部に 2 箇所(5E,9J),南 部に 1 箇所(16N)塩水が遡上している河川が あった。全体的には,浅層地下水の影響が強く河 川水の水質に表れていたが,地形の傾斜の違いか ら西部では農業の影響が,北部では都市排水の影

響が強く見られた。

 南部でも,都市や農業の影響で硝酸濃度が高い 地点もあった。季節変化は西部で大きく,貯水池 では COD や TOC が高い。しかし,全般的には 溶存成分濃度が低く,人口の割には良好な水環境 である。

図18 済州島内硝酸性窒素の分布(今回の調査)

図16 硝酸態窒素の地域別分布

  (Kim  , 2018)

図17 済州島内硝酸性窒素の分布

(済州特別自治道保健環境研究院,2019)

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3.各地域の概況

( 1 ) 河 川

 流量が少ない河川が多く,水はあっても流れは 僅かだったり,ほとんど停滞している地点もあっ たが,それも火山島の河川の特徴であり,季節変 化のある調査時期の記録として考察する。

写真1 流量の少ない河川(8E)

写真2 溶岩の基盤が露出する河床(10J)

 洪水対策と水辺環境の観点から,いくつかの河 川では河道改修工事中だった。

写真3 河道工事中の河川(33N)

( 2 ) 滝

 南部を中心に,いくつかの滝が分布し,観光名 所ともなっていた。天帝淵瀑布では,流水による 滝は見られなかったものの,地下水によって涵養 されていると考えられる淵に豊かな水が蓄えられ ており,周辺には見事な柱状節理が広がっている。

( 3 ) 漢拏(ハルラ)山 Hallasan

 済州島中心部の漢拏山に近づくと,河川はほと んどないが,登山道近くには小さな沢があり,2 箇所で採水ができた。

写真4 正房瀑布(27W)

写真5 天帝淵瀑布(28W)

写真6 登山道から漢拏山を望む

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( 4 ) 火山性の地形など

 ほぼ島全体が火山であるため,様々な火山地形 や火山による造形物を観察することができる。

 済州島東端の城山日出峰は,約 10 万年前の海 底噴火により誕生した寄生火山で,2007 年にユ ネスコ世界自然遺産に登録されてから,海外から の観光客も増え,年間 300 万人が訪れる人気観光 地になっており,観光道路で周回すると,海を隔 てて西側に分布する多くの寄生火山を遠望するこ ともできる。

 東北部にある「万丈窟」は,今から約 30 万年

~10 万年前に形成された世界で 10 番目に長い溶

岩洞窟で,約 1km の公開区間には溶岩流線や溶 岩鍾乳,溶岩石柱など,自然の力の不思議さが感 じられる造形物が多くある。

写真7 登山道沿いの沢(20W)

写真8 登山道沿いの沢のたまり水(19W)

写真9 城山日出峰

写真10 城山日出峰から陸繋砂州と寄生火山を

写真11 万丈窟の溶岩流線

写真12 世界で一番長い溶岩石柱(7.6m)

写真13 済州島の模型のような! 溶岩

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 済州島だけでなく,韓国の食事はどこでもおい しいが,沿岸の観光地では魚介類の飲食店が多 く,正房瀑布前の海岸には,ホヤやアワビなどの

魚介類をその場で捌いて刺身で提供する露店が営 業していた。

 調査の途中に立ち寄った城邑民族村には,伝統 的な民家が保存されており,南元邑では,道路沿 いにみかん農園が拡がっていた。

Ⅳ 伊豆諸島・三宅島との比較

 済州島での 2 回の現地調査を終え,比較のため に,伊豆諸島の伊豆大島・三宅島で改めて調査を 行った。2019 年 11 月の三宅島調査結果を示し比 較する。

写真16 南元邑のみかん農園

写真15 城邑民族村

写真14 正房瀑布前の海岸で

表2 三宅島自然水の調査結果と水質分析結果

(13)

図19 三宅島の各種自然水の溶存成分バランス

図20 三宅島自然水の水質組成

(14)

( 1 ) 主要溶存成分の分布

  池 や 沢 の 電 気 伝 導 度 は 200µS/cm 以 下 で,

Na-Cl 型を示し海塩の影響が強い。水道水源は,

EC300~1,600µS/cm とばらつくものの,地域に よって特徴的な水質を示した。大久保地区は,海 塩の影響が強く,水源の崖下湧水には風送塩が混 ざっていると考えられる。三池・八重間・大路第 1 水源の EC・水質バランスは似通っており,典 型的な Ca-HCO3型の地下水の性質を示している。

一方,大路第 4・第 5 水源には,Ca-HCO3型の地 下水に海水 NaCl と火山性地下水である Mg-SO4

型が合わさったイオンバランスとなっており,大 路池の水質は,その地下水にと海塩の混合により 形成されている。

 また,水道水と水源の水質を比較すると,水源 よりも水道水の濃度が高い地点が多いことから,

水源地下水の水質に季節変化があると考えられ,

継続的な調査が必要である。北部の水道水として 大路第 5 水源の水が引かれていると思われるのは 興味深い。

( 2 ) 溶存成分の組成の違い

 トリリニアダイアグラムで水質組成を見ると,

海塩の影響を受けた貯水池などと,火山性の地下 水の影響を受けた水道水で,明確な違いを認める ことができる。さらに興味深いのは,その中間の 位置に大久保水源が位置づけられることで,火山 性の地質の影響を受けた湧水と,海塩を含んだ雨 水が混ざっていることがわかる。

( 3 ) 済州島と三宅島の違い

 繰り返し噴火活動を続けてきた伊豆諸島には,

30 年以上前から通い,約 10 年前からは,噴火の 影響や島による水質の違いを調査し,様々な形で 発表してきた(小寺ほか,2014 など)。

 そうした中で,島全体が火山である伊豆大島・

三宅島・御蔵島などの調査結果から,最終火山活 動期と水質の関係についての傾向が見いだされ,

より古い火山島での調査・研究の機会を探ってい たところ,今回の調査をすることができた。

 済州島は沖縄本島の 1.5 倍の広さがあり,鳥取 県と同程度の人口があるため,火山島としてだけ

図21 火山の最終活動期と水質

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でなく,都市化の影響も河川水質には現れてい た。また,東西の地形傾斜は緩いことから,西部 を中心に農業が盛んで,施肥による硝酸汚染が激 しい地域もあり,硝酸が検出されない三宅島とは 異なっていた。

 一方,近年まで火山活動が活発な三宅島では,

火山性地下水の溶存成分濃度が明らかに高く,済 州島とは大きく異なっている。また,済州島で も,地形傾斜が急で,地下水の流動が激しい南部 地域では,EC が低く,溶存成分も少なかったが,

NaCl 成分比が高いことが不思議であった。しか し,硝酸イオンが検出されている地点もあり,降 水に含まれる海塩の影響であると考えると納得で きる。

( 4 ) 他の火山島との違い

 伊豆諸島の研究成果としてまとめた図では,

7,000 年前の活動期までの指標しかなかったため,

それより古い火山島の水質を表現することができ なかった。そこで,横軸を逆に取り,現在から遡 る形式とすることで,古い火山の水質も表現する ことができるようになった。今回の調査結果を当 てはめても,概略,整合性がとれており,こうし た指標をもとに,さらに検討を加えていきたい。

Ⅴ おわりに

 対馬を中心とした長崎県の島嶼研究を長年続け ながら,いつかは済州島の調査を行いたいという 思いが大学院のゼミの議論の中で具体化し,実際 に現地調査が実現した。

 また,現地調査の中で火山島としての特徴を実 感し,かつて伊豆・小笠原諸島で体系化した火山 最終活動期と水質の関係についても検証する貴重 な機会を得て,三宅島での新たな研究へと発展し た。

 島嶼研究・火山研究・水環境研究という 30 年 来の研究テーマが結びついてきたことに感激して いるが,済州島に関しては,まだ研究の途につい たばかりである。継続して調査を実施し大きな成

果につなげたい。

 註 1 済州島での調査結果は,法政大学大学院人文科 学研究科地理学専攻設置の「水文学演習」の実習とし て 2018 年 12 月に行った調査と「身近な水環境の一斉 調査」として 2019 年 6 月に実施した調査を元にしてい る。

 註 2 三宅島の調査結果は,法政大学大学院人文科学 研究科地理学専攻の 2019 年度「現地研究」(2019 年 9 月)と,その後の法政大学文学部地理学科設置の「自 然地理学演習 2」の実習(2019 年 11 月)の結果を元に している。

 註 3 現地調査・水質分析・分布図の作成などでは,

猪狩彬寛,矢巻剛,佐藤篤来,松本達志君の支援を受 けた。ここに記して感謝の意を表したい。

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Formanyyears,Ihavecontinuedtoinvestigateandstudythewaterenvironmentofislands andvolcanicareasinJapan.Recently,IhavebeenfocusingontheislandsofNagasakiPrefecture, andhavebeenconductingongoingsurveyswiththeGotoIslands,Iki,HiradoandTsushima.Inthe previousstudyontheIzuIslands,Iwasabletoshowtherelationshipbetweenthelastvolcanicac- tivityperiodandwaterquality,andIwaitedfortheopportunitytoconductacomparativestudyof JejuIsland,whichisavolcanicislandandclosetoTsushima.Fortunately,Ihadtheopportunityto investigateinDecember2018andJune2019,soIwillreportontheoutline.

JejuIslandisavolcanicislandthatisalmostentirelycoveredbylavaflow,sotherearemany underflowriversinspiteofprecipitation,butitwaspossibletoinvestigateriverswithsomeflow.

Dependingontheareaoftheisland,therearemanyriversthattendtoflowdown,andthereare manyriversthatflowassurfacecurrents.Inaddition,intheurbanareawithlargepopulationand theriverflowingaroundthefarmland,itbecameclearthattheanthropogenicinfluenceisaffecting theriver.

Furthermore,thesurveyandresearchatMiyakejima,IzuIslands,wasresumedinresponseto thesurveyresultsatJejuIsland,andthelatestdatawaspresentedforcomparison.Inthefuture,I willcollectandorganizestatisticalinformationandGISdataonJejuIsland,andproceedwiththe analysis.Iwillalsoinvestigatesurveysintherainyseasonandthesummitarea.Inaddition,Iintend toproceedwithacomparativestudywithJapanesevolcanicislands.

Keywords:SouthKorea,JejuIsland,border,volcanicisland,waterenvironment,lavaflow,water pollution,rivermanagement

PreliminaryStudyontheWaterEnvironmentinJejuIsland,Korea

KojiKODERA

Abstract

表 1 現地調査と水質分析結果
図 15 主要溶存成分組成(上:2018 年 12 月・下:2019 年 6 月)
図 20 三宅島自然水の水質組成

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